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JP4863397B2 - アンテナ装置 - Google Patents
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Description

本発明は、平行平板状導体を用いたスロットアンテナにおいて、平行平板の間を伝わるTEM波により励振されるようなスロット形状を用いて、水平偏波の電磁波の送受ができるようにするのに好適なアンテナ装置に関する。
従来から、コンピュータの拡張スロットとして、PC(Personal Computer)カード(以前は、PCMCIAカードという名称で利用されていた。)が広く利用されている。このカードは、薄板形状を有し、ノート型コンピュータのほとんどでは、机や膝の上に設置されるキーボードと平行に、すなわち、PCカードの上面と下面が略水平になるように、挿入される。
発明者らは、PCカードのような薄板形状に適用できるアンテナ装置の提案を、以下の文献に開示している。
飯草恭一・原田博司、可変リアクタ装荷スロットアレーアンテナの提案とビーム走査能力の基礎検討、信学技法、AP2006−94、101頁−106頁、2006年10月、電子情報通信学会
上記文献に開示される技術では、薄板状態の形状を有する直方体の表面に導体を貼付しつつ、その直方体上面(面積が最も広い二面のうちの一方)から3つの平行な帯状の部分の導体を除去し、上面に3つの隙間(スロット)ができるようにしている。
そして、スロットの1つの対向する長辺にまたがって給電部を設けるとともに、残りの2つのスロットの対向する長辺にまたがって可変リアクタを装荷し、可変リアクタに印加するDC(Direct Current)電圧を変化させることで、指向性を変化させている。
一方で、無線アドホック通信等の分野では、端末同士の間で通信を行う場合、無線同士の地面に対する高さは略等しいと考えられることから、ビームを水平面に走査できる機能が必要となる。
したがって、ノート型コンピュータとPCカードの組み合わせを上記の無線アドホック通信の端末として利用したい場合等には、薄板形状を有し、その広がり方向へのビーム走査が効率良くできる小型のアンテナ装置が強く望まれている。
一方で、上面と下面の間を伝搬するTEM波(Transverse Electro Magnetic Wave)を用いることで、スロットを励振することで、伝送効率を高めたい、との要望もある。
本発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、平行平板状導体を用いたスロットアンテナにおいて、平行平板の間を伝わるTEM波により励振されるようなスロット形状を用いて、水平方向に水平偏波の電磁波の送受ができるようにするのに好適なアンテナ装置を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するため、本発明の原理にしたがって、下記の発明を開示する。
本発明の第1の観点に係るアンテナ装置は、上面導体部、下面導体部、側面導体部、給電部を備え、以下のように構成する。
すなわち、上面導体部は、平板状の導体からなる。
一方、下面導体部は、上面導体部と略同形で、上面導体部と略平行に配置される平板状の導体からなる。
さらに、側面導体部は、上面導体部の周縁と下面導体部の周縁とに垂直に接続される帯状の導体からなる。
そして、給電部は、上面導体部と、下面導体部との間を進行するTEM波(Transverse Electro Magnetic Wave)を生じさせ、もしくは、これを検出する。
ここで、上面導体部から側面導体部を経て下面導体部に至る帯状の通信スロットが、少なくとも1つ設けられ、当該通信スロットの長手方向の経路の一部は、当該TEM波の進行方向に交差する。
また、本発明のアンテナ装置において、当該通信スロットの長手方向の経路は、上面導体部と、下面導体部と、において、当該TEM波の進行方向に対して互いに逆向きに折れ曲がりもしくは傾斜しているように構成することができる。
また、本発明のアンテナ装置において、当該通信スロットの長手方向の経路は、前記上面導体部と、前記下面導体部と、において、当該TEM波の進行方向に対して対称な形状を有するように構成することができる。
また、本発明のアンテナ装置において、給電部は、上面導体部もしくは下面導体部のいずれか一方に同軸ケーブルの被覆線を接続し、他方に当該同軸ケーブルの中心線を接続して、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出するように構成することができる。
また、本発明のアンテナ装置において、給電部は、上面導体部もしくは下面導体部のいずれか一方に設けられた開口に導波管を接続して、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出するように構成することができる。
また、本発明のアンテナ装置において、給電部は、上面導体部もしくは下面導体部のいずれか一方に給電スロットを設け、当該給電スロットの近傍にマイクロストリップラインを配置して、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出するように構成することができる。
また、本発明のアンテナ装置において、給電部は、上面導体部もしくは下面導体部のいずれか一方にCPW(Couplanar Waveguide)を設けて、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出するように構成することができる。
また、本発明のアンテナ装置は、可変リアクタ、制御部をさらに備え、以下のように構成することができる。
すなわち、当該通信スロットは複数であり、可変リアクタは、当該複数の通信スロットのいずれか少なくとも一つにおいて、当該通信スロットの長手方向の2辺において対抗する点のそれぞれの近傍に接続される。
一方、制御部は、可変リアクタのリアクタンス値を変化させて指向性を制御する。
また、本発明のアンテナ装置において、可変リアクタは、当該通信スロットの長手方向の経路と、当該TEM波の進行方向と、が交差する角が直角である場所の近傍に接続されるように構成することができる。
本発明によれば、平行平板状導体を用いたスロットアンテナにおいて、平行平板の間を伝わるTEM波により励振されるようなスロット形状を用いて、水平偏波の電磁波の送受ができるようにするのに好適なアンテナ装置を提供することができる。
以下に本発明の一実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
また、以下の説明では、電磁波を放射(送信)する場合をとりあげて説明することとする。電磁波の伝搬の対称性から、電磁波を検出(受信)する場合についても、同様の議論が成立するからである。
図1は、本発明のアンテナ装置の動作原理を説明する説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図に示すように、アンテナ装置101の上面導体部102と下面導体部103とは平行平板の導体であり、その側面には側面導体部104が配置され、これらの導体により、全体として、中空箱状導体からなる「平板状」形状をなしており、上面と下面の形状が長方形の場合には「高さが極めて低い四角柱」、上面と下面の形状が円の場合には「高さが極めて低い円柱」の形状となる。以下、上面導体部102と下面導体部103の広がり方向を「水平」とし、これに直角な方向を「垂直」と呼ぶことにする。
本図における中空箱状導体は直方体形状であるが、上面および下面の形状は任意であり、円形、扇型(ホーン型)など各種の形状を採用することができる。また、内部には、絶縁体等を充填しても良い。
スロット105は、上面導体部102から側面導体部104を経由して下面導体部103に至り、中空箱状導体の開口(開孔)となっている。また、本図では、スロット105は1つであるが、複数とするのが典型的である。
このような構造は、導体板や導体箔を折り曲げたり、プレス一体整形したりこれらを組み合わせた後に、適宜不要な領域(スロット105に相当する領域)を除去することにより構成することもできるし、プリント配線板におけるエッチング等の技術を応用して構成することも可能である。
同軸ケーブル401は給電部106に接続され、被覆線は上面導体部102に、芯線は下面導体部103に、それぞれ接続されている。給電部106を源に、上面導体部102と下面導体部103との間を、TEM波が進行する。すなわち、TEM波の進行方向113は、上面導体部102および下面導体部103に平行と考えることができる。
したがって、TEM波の電界111は、上面導体部102と下面導体部103との間で垂直方向になる。
アンテナ装置101の周縁部、すなわち、スロット105の近傍では、スロット105の長手方向の経路に沿って励振される磁流112が生じる。スロット105の経路の全長は、小型化を考慮して、TEM波の半波長程度からそれ以下に設計しておくのが典型的である。
励起される磁流112の総和を考えたときに、スロット105の上面導体部102における経路と下面導体部103における経路がTEM波の進行方向113と完全に平行であると、側面導体部104における経路の成分のみが残ることとなるが、上面導体部102と下面導体部103の間は極めて近いため、スロット105のTEM波による励振はほとんど生じない。
しかしながら、スロット105の上面導体部102における経路と下面導体部103における経路にTEM波の進行方向113と交叉する部分がある場合には、側面導体部104における経路の成分に加えて、当該交叉する部分の成分が残るため、スロット105のTEM波による励振を生じさせることができる。特に、交叉する方向が上下の面で逆になっている場合、すなわち、スロット105の形状がTEM波の進行方向113に対して上下の面で対称になっている場合には、励振される磁流の向きが強め合うことになる。
このため、アンテナ装置101の外部にも電界114が発生して、水平偏波の放射が水平方向に発せられる。ここで、アンテナ装置101内部のTEM波による電界111は垂直方向であるが、外部の電界114との方向は、水平方向である。
本図に示す例では、スロット105の数は1個となっているが、スロット105の数は任意であり、複数にしてスロット105に可変リアクタを装荷し、指向性を制御できるようにすることも可能である。
以下では、各種のスロット形状について、各スロット105の近傍を拡大して示す図を参照しながら説明する。
図2は、側面導体部104に対してTEM波が垂直に進行する場合のV字型のスロット105の形状を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
スロット105は、上面導体部102から側面導体部104に対してある角度をもって交わり、側面導体部104を垂直に通過した後、下面導体部103に対してそのままその角度をもって交わる。したがって、上からスロット105を透かして見ると、V字形となっている。
一方、TEM波の進行方向113は、側面導体部104に対して垂直である。したがって、スロット105は、上面導体部102と下面導体部103において、TEM波の進行方向113と交叉する(平行でない)ことになる。また、スロット105が折れ曲がる方向は、上面導体部102と下面導体部103において、TEM波の進行方向113を挟むように、対称に逆向きになっている。
図3は、側面導体部104に対してTEM波が垂直に進行する場合の折り曲げ型のスロット105の形状を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
スロット105の端部は、上面導体部102と、下面導体部103において、直角に逆向きに折れ曲がっている。したがって、スロット105を透かして見ると、T字形となっている。
一方、TEM波の進行方向113は、側面導体部104に対して垂直である。したがって、スロット105は、上面導体部102の下面導体部103において、その端部がTEM波の進行方向113と交叉する(ほぼ直角である)ことになる。また、スロット105が折れ曲がる方向は、上面導体部102と下面導体部103において、TEM波の進行方向113を挟むように、対称に逆向きになっている。
図4は、側面導体部104に対してTEM波が垂直に進行する場合のγ字型のスロット105の形状を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
スロット105の端部は、上面導体部102と、下面導体部103において、直角に逆向きに滑らかに曲がっている。したがって、スロット105を透かして見ると、γ字形となっている。
一方、TEM波の進行方向113は、側面導体部104に対して垂直である。したがって、スロット105は、上面導体部102の下面導体部103において、TEM波の進行方向113と交叉する(平行でない)ことになる。また、スロット105が折れ曲がる方向は、上面導体部102と下面導体部103において、TEM波の進行方向113を挟むように、対称に逆向きになっている。
上記の例は、いずれも上面と下面とで、スロット105の形状が、側面導体部104におけるスロット105を通過するTEM波の進行方向113に対して対称な形状となっていたが、対称とする必要はない。たとえば上面と下面とで、スロットの長さや曲り具合等を変更したり、形状そのものを互いに異なるものとしても良い。たとえば、上面導体部102と下面導体部103とで、一方のスロット105の形状が図2〜図4のいずれかであり、他方のスロット105の形状がそれ以外のものである等のように、上面と下面とで形状が異なる組み合わせである。
また、図2、図4の例では、スロット105は、側面導体部104に対して垂直な部分を有していたが、必ずしもこの必要はなく、TEM波の進行方向113に対して交叉するような部分が存在すれば良い。
図5は、上面と下面とで同じ形状を有するスロット105を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図(a)は、TEM波の進行方向113が側面導体部104に対して垂直でない場合のスロット105の形状を表すものであり、スロット105は、側面導体部104に対して垂直に伸びている。したがって、TEM波の進行方向113とスロット105とは、上面導体部102および下面導体部103において、交叉する(平行でない)ことになる。
本図(b)は、TEM波の進行方向113が側面導体部104に対して垂直である場合のスロット105の形状を表すものであり、スロット105は、側面導体部104に対して斜めに伸びている。したがって、TEM波の進行方向113とスロット105とは、上面導体部102および下面導体部103において、交叉する(平行でない)ことになる。
図6は、スロット形状の端部を曲げた方向と、放射電力パターンとの関係を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。なお、本図では、理解を容易にするため、符号を省略している。
本図に示す放射電力パターンは、アンテナ放射指向性をモーメント法(IE3D)により計算したものであり、本図(a)〜(c)の上段はスロット形状を表し、下段は形成される放射電力パターンを示す。各図に示されるアンテナ装置は、薄い正方形形状であり、その各辺の中点から中央に向けてスロットが4つ設けられている。
本図(a)は、スロットに折り曲げがない場合、本図(b)は、スロット端部の折り曲げが上面と下面で同じ方向の場合、本図(c)は、スロット端部の折り曲げが上面と下面で反対方向の場合を示すものである。
本図(a)のように端部の折り曲げがない場合は、中心から外側に広がる進行波電力に対する放射電力の比τは3.4×10-6%であり、ほとんど放射されない。一方、本図(b)のように上下で同じ向きに折り曲げると、水平方向への放射はほとんどないが、垂直方向へ放射されることが分かり、τは4.9×10-4%である。このほか、本図(c)のように上下で逆に折り曲げると、水平方向へ電波が放射され、τも2.2%に増加する。
本図(b)(c)の形状は、本願において提案されるスロット形状に相当するものであり、上記のような放射電力パターンと用途とが適合するように、適宜形状を選択することができる。
(可変指向性アンテナ)
以下では、スロットに可変リアクタを装荷することによってアンテナ装置を指向性にする際のシミュレーション例(設計例)について、詳細に説明する。
図7は、本実施形態で用いる可変リアクタの例を示す回路図である。以下、本図を参照して説明する。
本図(a)に示す可変リアクタ201は、2つのバラクタ(可変容量ダイオードあるいはバリキャップと呼ばれることもある。)301を逆直列に接続したものであり、制御部(図示せず)によるDC電圧は、高い抵抗302を介して、バラクタ301が逆直列に接続された点に印加される。抵抗302は、DC電圧の制御線にRF電流が流れるのを防止するためのものである。
ここで、スロット105の長手方向の対向する辺の導体は、DC電圧的に同じ電位であるので、バラクタ301を一つだけ装荷してもDC電圧を印加することはできない。本図に示すように逆直列対にすることによってはじめて、DC電圧を印加することが可能となる。
また、このような逆接続を利用することにより、高調波歪みを低減することができるほか、印加するDC電圧に対するリアクタンス値可変幅が、単一バラクタ301のときの可変幅の2倍になる、という利点がある。
このほか、本図(b)に示す可変リアクタ201のように、コンデンサ303とバラクタ301を直列接続し、抵抗302を介してDC電圧の制御線に接続することで、形成することも可能である。また、インダクタとバラクタの組み合わせにより構成することも可能である。
図8は、設計対象となるアンテナ装置の構成を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図に示すアンテナ装置101の上面導体部102、下面導体部103、側面導体部104は、プリント配線板をエッチング等して構成することが可能である。
アンテナ装置101の外形は、上面導体部102と下面導体部103が中心から頂点までの距離Aの正方形形状で、厚さhの薄い直方体形状をしている。各頂点を通過するようにスロット105が設けられている。幅Wのスロット105は、頂点から正方形の中心に向かうように長さLだけ伸びた後、直角に折れ曲がって長さsだけ伸びる。上面導体部102と下面導体部103とでは、スロット105の端部の折れ曲り方向は逆になっている。
また、スロット105に沿って正方形の頂点から距離dだけ離れた場所で、スロット105を跨ぐように、可変リアクタ201が接続されている。
同軸ケーブル401が下面導体部103側から伸びていて、下面導体部103には被覆線が、上面導体部102には芯線が、それぞれ接続されている。また、整合を改善するため、半径b、幅b-aの円環スロット402が設けられている。
また、以下の設計では、動作周波数を500MHzとする。4つの可変リアクタ201に印加するDC電圧を変化させることで、可変リアクタ201のリアクタンスを変化させれば、アンテナ装置101の放射電力パターンが変化し、指向性等を制御することが可能である。
後述するように等価ステアリングベクトルモデルを使えば、構造に依存する部分については、IE3D等によるシミュレーション計算を一度だけ計算しておけば良いが、所望の指向性等を実現する制御状態を求めるためには、さまざまなリアクタンス値の組み合わせでアンテナ特性を繰り返し計算する必要がある。
さて、Xm (m=1,…,M)に対するアンテナ特性の依存性は、等価ステアリングベクトルモデルを用いて計算することが可能である。
電界E(θ,φ)、絶対利得Ga(θ,φ)、動作利得Gw(θ,φ)、電圧定在波比vswrは次式により計算する。
Figure 0004863397
Figure 0004863397
Figure 0004863397
Figure 0004863397
Figure 0004863397
Figure 0004863397
ここで、
vsは、送信で考えた場合の給電開放電圧を、
Zsは、給電線路の特性インピーダンス(実数)を、
vmは、m番目のポートの電圧(m=0は給電ポートを表す)を、
Mは、可変リアクタの数(ここではM=4)を、
Γは、反射係数を、
それぞれ表す。
また、特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブル401による給電線を想定し、
Zs = 50
とする。
ポート間インピーダンスZm,nと、等価ステアリングベクトルu(v) m(θ,φ)は構造パラメータであり、リアクタンス値Xmには依存しないので、一度だけ計算しておけば良い。
上記のように、これらの構造パラメータはモーメント法(IE3D)を用いて解析し、500MHz周波数帯を想定する。ただし、構造パラメータは、波長に対するアンテナ寸法の比が同じなら、基本的に変わらない。
一方、リアクタンス値については、
Xm = -1/ωCm
の関係が成立するから、同じ電気容量可変幅で実現できるリアクタンス可変幅は、高周波になるほど狭くなる。すなわち、周波数の影響はリアクタンスの制御特性に表れる。
さて、リアクタンス値とアンテナ特性との関係は、上記のようにに非線形であり、リアクタンス値制御で制限される実現可能な励振状態が限られているため、最急勾配法を用いて最適制御状態を求めることとする。なお、収束状態は初期値に依存し、局所解に落ち込む可能性があるため、アンテナ特性のリアクタンス値依存性を2次元平面の等高線グラフに表して、グローバルな最適状態であるかを確かめる。
ただし、2次元平面の等高線グラフで確認できるのは、2つの座標値なので、依存性を調べたいリアクタンス値を2つ選択し、それ以外は適当な値に設定する。
具体的には、
(1)まず、最急勾配法でリアクタンス値の収束値を求め、
(2)この収束値に「それ以外」のリアクタンス値を設定し、
(3)調べたい「2つ」のリアクタンス値を座標値として、アンテナ特性の等高線表示をして、
(4)最適領域が別にある場合は、その領域内の点を初期値として最急勾配法を再度行う
という手順を繰り返すのである。
図9は、アンテナ装置101の波長λに対する寸法諸元を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
Type 1からType 5までの5種類のアンテナ寸法を考慮するが中央の同軸ケーブル401の芯線の太さ(2r)は0.00667λである。
さて、Type 1では、可変リアクタ201は、正方形の頂点からスロット105に沿って距離d = 0.17333λだけ離れた場所に装荷されるが、これはLよりも大きいから、実際には、スロット105の端部の折り曲げられた部分(TEM波の進行方向に垂直な部分)に装荷されることになる。
以下では、まず、ビーム形成能力について検討する。図10は、Type 1のアンテナ装置101において、スロット方向(0度)の動作利得Gwが最大になるように最急勾配法を適用した結果の、ほぼ収束状態のアンテナ特性を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図からわかるように、整合については、vswrが1.2以下であり、動作利得が約6.5dBiであることがわかる。アンテナ直径(2A)が半波長以下であることを考えると、6.5dBiの利得は十分な値と考えられる。
図11は、Type 1のアンテナ装置101において、スロットの間方向(45度)の絶対利得Gaが最大になるように最急勾配法を適用した結果の、ほぼ収束状態のアンテナ特性を示す説明図であり、図12は、この場合の絶対利得パターンを示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図からわかるように、絶対利得は約3.5dBiにとどまっていることから、スロット間方向にビームは形成しにくいことが分かる。
一方、各スロット方向にビームを形成すれば、整合回路がなくても、約6.5dBiのビームを走査できることが分かる。
また、スロット数を増やせば、より細かいステップでビームを走査できると考えられる。
利得6.5dBiは、既存の7素子エスパアンテナの利得にほぼ等しいが、その体積は約9.4%に小型化することができ、地板を必要としないので、既存の小径エスパアンテナに比べても、小型化が可能である。
次に、周波数特性について検討を加える。周波数特性は可変リアクタ201の回路構成に依存する。以下では、インダクタとバラクタの直列接続性で構成する場合を考える。
可変リアクタ201は、500MHzでの固定インダクタンス値を113nHとし、4つの可変リアクタ201の可変電気容量の値を、順に0.748pF,0.9pF,0.828pF,9pFとする。図13は、この場合のアンテナ装置101の周波数特性を示す説明図であり、図14は、この場合のアンテナ装置101の動作利得の変化を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図からわかるように、2%の比帯域で、vswrの整合は、ほぼ2以下、動作利得は、5dBi以上の性能が確保されている。
比帯域の特性に関しては、たとえば5GHzで固定インダクタンス値11.3nHとし、可変電気容量の値を順に0.0748pF,0.9pF,0.0828pF,0.9pFと(周波数がa倍になると、固定インダクタンス値および可変電気容量が1/a倍になるように)設計すれば、周波数によらず、上記と同じ特性が得られる。
ついで、アンテナ装置の基本的な構造依存性を調べる。まず、スロット105の太さに対する依存性について検討するため、電圧定在波比vswrと、水平面内における最大絶対利得Ga(θ,φ)の、リアクタンス値X1とX3依存性を示す等高線図を考える。
X2、X4は、最急勾配法で0度方向の動作利得を最大化した収束リアクタンス値により決めるが、実際の収束リアクタンス値のX2とX4は等しくないため、両者の平均をとって、X2 = X4として、固定している。
図15は、Type 1で、X2 = X4 = 320Ωとした場合のアンテナ特性を示す等高線図である。以下、本図を参照して説明する。
本図を見ると、整合の良いリアクタンス領域と、高い指向性利得のとれるリアクタンス領域と、が一致していることが分かる。これにより、整合回路を用いなくても、良い動作利得を得ることができる。
図16は、スロット105の太さを2倍にしたType 2で、X2 = X4 = 140Ωとした場合のアンテナ特性を示す等高線図である。以下、本図を参照して説明する。
Type 1とType 2を比較すると、スロット105の太さ、すなわち、ストット開口が2倍に変化しても、整合や指向性に大きな変化はないことが分かる。
また、スロット105を太くすると、一般に、等高線で囲まれるリアクタンス領域が、狭くなる傾向があることが分かる。
次に、可変リアクタ201の装荷位置に対する依存性について検討する。図17は、正方形の頂点からスロット105に沿って可変リアクタ201の装荷場所に至るまでの距離dを、0.08333λと小さくしたType 3のアンテナ特性を示す等高線図である。なお、X2 = X4 = 2230Ωとしている。以下、本図を参照して説明する。
Type 1は、スロット105の端部の折り曲げた先(TEM波の進行方向113と交叉する部分)に可変リアクタ201が装荷されているのに対し、Type 3は、スロット105のTEM波の進行方向113と平行な部分に可変リアクタ201を装荷したものである。
本図を見ると、Type 1に比べて、同じ等高線を示すリアクタンス値の範囲が約2倍に広くなっていることがわかる。
したがって、可変リアクタの装荷点のオフセットを適切に設定すれば、制御に必要なリアクタンス可変範囲を小さくすることができるのである。
さらに、スロット105の長さに対する依存性を検討する。図18は、Type 3のスロット105に対して、0.01667λだけ短いスロット105を有するType 4のアンテナ特性を示す等高線図である。なお、X2 = X4 = 1920Ωとしている。以下、本図を参照して説明する。
本図を見ると、リアクタンス範囲は、Type 3に比べてさらに2倍に広くなっている一方で、最大絶対利得が約5dBiに低下し、整合もvswrが2以下の領域がなくなっている。整合の良い領域と、指向性の良い領域がずれるため、動作利得も最適な約2.4dBiにとどまる。
したがって、スロット105の長さの調整が設計の上で重要であることが分かる。
次に、円環スロットの有無による影響について知らべる。図19は、Type 1が有する円環スロット402を削除したType 5のアンテナ特性を示す等高線図である。なお、X2 = X4 = 1290Ωとした。以下、本図を参照して説明する。
本図を見ながらType 1と比べると、指向性の影響はほとんどないが、整合のとれる領域が狭くなっていることが分かる。また、別のアンテナ寸法では、円環スロットの有無による整合特性の変化がより顕著であることがわかっている。
また、円環スロットの内径aと外径bの調整により整合を改善することができる。
(給電部の構成)
上記実施形態では、下面導体部103に同軸ケーブル401の太さと同じ太さの開口を設け、その開口の縁に同軸ケーブル401の被覆線を接続するとともに、開口を通過して同軸ケーブル401の芯線を上面導体部102に接続することとしていたが、このほかにも、種々の接続手法が考えられる。以下では、種々の手法を図とともに説明するが、理解を容易にするため、各図では、大きさを誇張して表現している。
第1の手法は、導波管を用いる手法である。図20は、導波管を用いて給電を行う様子を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図の例では、上面導体部102の中央に四角の開口を設け、ここに、四角の断面を持つ導波管451を接続して、導波管451を介して、電磁波を送受する。
第2の手法は、スロット給電を用いる手法である。図21は、スロット給電を用いて給電を行う様子を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図の例では、上面導体部102の中央に細長いスロット452が設けられている。電磁波の送受に用いるスロット105が「通信スロット」であるのに対して、スロット452は「給電スロット」である。
そして、スロット452から微小に離間した位置に、細長いU字型のマイクロストリップライン453が配置されている。両者の間には、絶縁体薄膜などが配置されるのが典型的である。
マイクロストリップライン453は、一つの回路をなしているため、これを用いて給電スロット452からTEM波を引き出したり、給電スロット452内へTEM波を送り込んだりすることができる。
このほか、マイクロストリップライン453として、上記のようなU字形の線を引き回すのではなく、たとえばベロ状の形状の導体を配置することとしても良い。これは、CPW(CoPlanar Waveguide)を用いる手法と類似している。
図22は、CPWを設けて給電を行う様子を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。
本図の例では、上面導体部102の一部を、幅あるT字型の周囲を辿るように帯状に除去して、CPW 454を形成している。そして、CPW 454の経路方向に沿って電磁波を送受することによって、TEM波の引き出し、送り込みができるようにするのである。なお、CPW 454の形状は、この例に限られない。
このように、種々の給電手法を採用することができる。
以上説明したように、本発明によれば、平行平板状導体を用いたスロットアンテナにおいて、平行平板の間を伝わるTEM波により励振されるようなスロット形状を用いて、水平偏波の電磁波の送受ができるようにするのに好適なアンテナ装置を提供することができる。
本発明のアンテナ装置の動作原理を説明する説明図である。 側面導体部に対してTEM波が垂直に進行する場合のV字型のスロットの形状を示す説明図である。 側面導体部に対してTEM波が垂直に進行する場合の折り曲げ型のスロットの形状を示す説明図である。以下、本図を参照して説明する。 側面導体部に対してTEM波が垂直に進行する場合のγ字型のスロットの形状を示す説明図である。 上面と下面とで同じ形状を有するスロットを示す説明図である。 スロット形状の端部を曲げた方向と、放射電力パターンとの関係を示す説明図である。 本実施形態で用いる可変リアクタの例を示す回路図である。 設計対象となるアンテナ装置の構成を示す説明図である。 アンテナ装置の波長λに対する寸法諸元を示す説明図である。 Type 1のアンテナ装置において、スロット方向(0度)の動作利得Gwが最大になるように最急勾配法を適用した結果の、ほぼ収束状態のアンテナ特性を示す説明図である。 Type 1のアンテナ装置において、スロットの間方向(45度)の絶対利得Gaが最大になるように最急勾配法を適用した結果の、ほぼ収束状態のアンテナ特性を示す説明図である。 絶対利得パターンを示す説明図である。 アンテナ装置の周波数特性を示す説明図である。 アンテナ装置の動作利得の変化を示す説明図である。 Type 1のアンテナ特性を示す等高線図である。 Type 2のアンテナ特性を示す等高線図である。 Type 3のアンテナ特性を示す等高線図である。 Type 4のアンテナ特性を示す等高線図である。 Type 5のアンテナ特性を示す等高線図である。 導波管を用いて給電を行う様子を示す説明図である。 スロット給電を用いて給電を行う様子を示す説明図である。 CPWを用いて給電を行う様子を示す説明図である。
符号の説明
101 アンテナ装置
102 上面導体部
103 下面導体部
104 側面導体部
105 スロット(通信スロット)
106 給電部
111 TEM波の電界
112 励振される磁流
113 TEM波の進行方向
114 外部の電界
201 可変リアクタ
301 バラクタ
302 抵抗
303 コンデンサ
401 同軸ケーブル
402 円環スロット
452 スロット(給電スロット)
453 マイクロストリップライン
454 CPW

Claims (9)

  1. 平板状の導体からなる上面導体部、
    前記上面導体部と略同形で、前記上面導体部と略平行に配置される平板状の導体からなる下面導体部、
    前記上面導体部の周縁と前記下面導体部の周縁とに垂直に接続される帯状の導体からなる側面導体部、
    前記上面導体部と、前記下面導体部との間を進行するTEM波(Transverse Electro Magnetic Wave)を生じさせ、もしくは、これを検出する給電部
    を備え、
    前記上面導体部から前記側面導体部を経て前記下面導体部に至る帯状の通信スロットが、少なくとも1つ設けられ、
    当該通信スロットの長手方向の経路の一部は、当該TEM波の進行方向に交差する
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  2. 請求項1に記載のアンテナ装置であって、
    当該通信スロットの長手方向の経路は、前記上面導体部と、前記下面導体部と、において、当該TEM波の進行方向に対して互いに逆向きに折れ曲がりもしくは傾斜している
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  3. 請求項2に記載のアンテナ装置であって、
    当該通信スロットの長手方向の経路は、前記上面導体部と、前記下面導体部と、において、当該TEM波の進行方向に対して対称な形状を有する
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記給電部は、前記上面導体部もしくは前記下面導体部のいずれか一方に同軸ケーブルの被覆線を接続し、他方に当該同軸ケーブルの中心線を接続して、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出する
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記給電部は、前記上面導体部もしくは前記下面導体部のいずれか一方に設けられた開口に導波管を接続して、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出する
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  6. 請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記給電部は、前記上面導体部もしくは前記下面導体部のいずれか一方に給電スロットを設け、当該給電スロットの近傍にマイクロストリップラインを配置して、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出する
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  7. 請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記給電部は、前記上面導体部もしくは前記下面導体部のいずれか一方にCPW(CoPlanar Waveguide)を設けて、当該TEM波を生じさせ、もしくは、これを検出する
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載のアンテナ装置であって、
    当該通信スロットは複数であり、当該複数の通信スロットのいずれか少なくとも一つにおいて、当該通信スロットの長手方向の2辺において対抗する点のそれぞれの近傍に接続される可変リアクタ、
    前記可変リアクタのリアクタンス値を変化させて指向性を制御する制御部
    をさらに備えることを特徴とするアンテナ装置。
  9. 請求項8に記載のアンテナ装置であって、
    前記可変リアクタは、当該通信スロットの長手方向の経路と、当該TEM波の進行方向と、が交差する角が直角である場所の近傍に接続される
    ことを特徴とするアンテナ装置。
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