JP4863545B2 - 有機性汚泥の消化処理方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱アルカリ前処理を利用した有機性汚泥の消化処理方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
下水処理場などから発生する有機性汚泥の処理方法のひとつとして、嫌気性消化処理法が知られている。この方法は、有機性汚泥を嫌気性消化槽でメタン発酵させることにより有機物を分解すると同時に、有価資源であるメタンガスを回収することができる利点がある。
【0003】
本発明者は、この嫌気性消化槽の前段に熱アルカリ前処理槽を設置して有機性汚泥を熱アルカリ処理することにより、有機物の可溶化を促進して嫌気性消化槽における処理能力を向上させる方法を先に開発し、既に、特開平06-099199号公報、特開平04-326998号公報、特開平06-071297号公報、等として多数の特許出願済みである。
【0004】
しかしこの方法で有機物の可溶化を促進しても、処理すべき有機性汚泥の濃度が高くなり過ぎると嫌気性消化が完全に行えなくなる。このため従来は有機性汚泥のVS(汚泥中の全有機物濃度)を2%未満に抑えた運転がなされており、嫌気性消化槽の有機物負荷を2kg/m3・日以上とすることは困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決して、嫌気性消化槽の有機物負荷を従来よりも更に高めることができ、また有機性汚泥からの資源回収をより進めることができる有機性汚泥の消化処理方法及び装置を提供するためになされたものである。
【0006】
この課題を解決するために本発明者は検討を重ねた結果、嫌気性消化槽におけるメタン発酵を阻害する要因の一つである液中のアンモニアに着目した。アンモニアは特に遊離態アンモニアがメタン発酵の阻害になるといわれている。そして有機性汚泥のVSを従来よりも高め、かつ熱アルカリ前処理槽のpHを10以上とすることにより、熱アルカリ前処理槽あるいはその後段においてアンモニアガスを発生させ、アンモニアを液から分離できることを発見した。合わせてpHを10以上とすることにより、汚泥中有機物の可溶化率も向上することを発見した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機性汚泥の消化処理方法は上記の知見に基づいて完成されたものであって、汚泥中の全有機物濃度(VS)が2%を越えるように汚泥を遠心濃縮する工程と、該VSが2%を越える高濃度の有機性汚泥を、pHが10以上、温度が35〜100℃に制御された熱アルカリ前処理槽に導入して、該有機性汚泥に含有される有機物の可溶化を促進する工程と、該有機物の可溶化を促進する工程で同時に生成したアンモニア性窒素を、アンモニア除去装置に導き、アンモニアガスとして、前処理汚泥から分離除去する工程と、アンモニアガスを分離除去した後の前処理汚泥を、pHが7〜8.5に制御された嫌気性消化槽に導入してメタン発酵させる工程とからなり、該アンモニア除去装置と該熱アルカリ前処理槽との間でポンプによって汚泥の一部を循環させることを特徴とするものである。
該有機物の可溶化を促進する工程で同時に生成したアンモニア性窒素を、アンモニア除去装置に導き、アンモニアガスとして、前処理汚泥から分離除去する工程は、嫌気性雰囲気ガスによるガスパージ、吸引、気液接触の何れかの手段により行うことができる。
【0008】
また本発明の有機性汚泥の消化処理装置は、高濃度の有機性汚泥をpHが10以上、温度が35〜100℃の条件下で処理する熱アルカリ前処理槽と、この熱アルカリ前処理により発生するアンモニアガスを前処理汚泥から分離除去するアンモニア除去装置と、該アンモニア除去装置と該熱アルカリ前処理槽との間でポンプによって汚泥の一部を循環させる循環経路と、アンモニアガスを分離除去した後の前処理汚泥をpHが7〜8.5の条件下でメタン発酵させる嫌気性消化槽とからなることを特徴とするものである。
【0009】
上記した本発明の有機性汚泥の消化処理方法及び装置によれば、嫌気性消化槽におけるメタン発酵の阻害要因であるアンモニアをその前段で液中から除去することができるのでメタン発酵菌の活性が高まり、嫌気性消化槽における有機物負荷を従来よりも大幅に高めることができる。しかも、有機性汚泥からメタンガスとともにアンモニアガスも回収することができるから、資源回収の観点から見ても大きな利点がある。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を示すが、まず、図1を用いて、参考形態を説明する。
図1において、1は熱アルカリ前処理槽、2は嫌気性消化槽である。下水処理場から発生する初沈汚泥、余剰汚泥や、食品工場等から発生する蛋白含有汚泥などの有機性汚泥は、ポンプ等によってまず熱アルカリ前処理槽1に流入する。なお、以下に示すように汚泥の種類によって各槽の好ましい条件が異なるが、これは初沈汚泥では炭水化物が主成分であり、余剰汚泥(蛋白含有汚泥も同様)では蛋白質が主成分であるためである。
【0011】
前記したように、従来は流入する有機性汚泥(流入汚泥)のVSを2%未満に抑えていたのであるが、本発明ではVSが2%を越える高濃度の有機性汚泥を、熱アルカリ前処理槽1に流入させる。一般に高濃度汚泥ほど消化した場合にアンモニア濃度が高くなりメタン発酵反応への阻害が顕著となるが、本発明においてはアンモニア除去装置を設けるため、より高濃度の有機性汚泥を対象にするほど、通常の高濃度消化処理方法と比較して、メタン発酵反応における効果が大きくなる。従って濃縮の容易な初沈汚泥の場合にはVSを3%以上とし、余剰汚泥の場合にはVSを2%以上とすることが好ましい。
【0012】
また本発明では、流入汚泥のVSを従来よりも高めたことと関連して、熱アルカリ前処理槽1のpHを従来よりも高い10以上とする。初沈汚泥の場合にはpHを10〜12程度、余剰汚泥の場合にはpHを10〜11程度とすることが好ましい。このようなpHが維持されるように、NaOH等のアルカリが熱アルカリ前処理槽1内に添加される。また適宜の加熱手段によって、熱アルカリ前処理槽1は35〜100℃に加熱される。具体的には、初沈汚泥の場合には35℃程度、余剰汚泥の場合には70℃程度が好ましい。
【0013】
このような条件で有機性汚泥を熱アルカリ処理すると、有機性汚泥中の有機物は従来と同様に可溶化されるのであるが、それと同時にアンモニア性窒素が生成する。そこでこのアンモニア性窒素を、アンモニア除去装置5によりアンモニアガスとして液から分離除去する。このアンモニアガスは有価資源として、例えば汚泥処理場の脱硝などに再利用することができる。
【0014】
アンモニアガスの分離方法としては、種々の方法が考えられる。例えば図2に示すように、熱アルカリ前処理槽1の内部に溜まったアンモニアガスあるいは汚泥中のアンモニア態窒素を、不溶性嫌気性の例えば窒素ガスパージにより取り出す方法がある。ここで空気の代わりに嫌気性の窒素ガスを用いたのは、後段の嫌気性消化槽2が好気的雰囲気となり、嫌気性菌の活性低下を招くことを防止するためにおこなうものである。従って一般的には初期に空気等の不溶性好気性雰囲気ガスを封入しても長期間の運転により嫌気性雰囲気が形成されるため、長期的にみればこれらのガスを用いることは可能である。
【0015】
また図3に示すように、熱アルカリ前処理槽1の内部に溜まったアンモニアガスを、ブロワ3で吸引する方法する方法を採用することもできる。この方法によれば、アンモニアガスを単独で取り出せるが、気液界面の接触面積が小さくなる場合にはアンモニア除去が十分に行えず律速になる場合がある。
【0016】
さらに図4に示すように、気液接触によりアンモニアガスを取り出すこともできる。図4の方法では、熱アルカリ処理槽1から流出した前処理汚泥を、多段式の流路に沿って流下させつつ下方から吹き込まれる嫌気性雰囲気ガス等と接触させ、ガス(アンモニアガス+嫌気性雰囲気ガス)と前処理汚泥とを分離することができる。しかし図2〜図4の方法によると、アンモニアの液中からの分離により熱アルカリ前処理槽1のpHが低下し、本来の目的である汚泥中有機物の可溶化率が低下する欠点もある。
【0017】
そこでさらに望ましい分離方法として、図5〜図7に示すようにアンモニア除去装置5の前後にU字状のガスシール4を設ける方法がある。図5の例では中間部分に設けられたアンモニア除去装置5から、アンモニアガスをブロワ3でパージする。図6の例ではアンモニアガスをブロワ3で吸引する。さらに図7の例では、アンモニア除去装置5として気液接触装置を用い、アンモニアガスを気液接触により分離する。これらの方法によれば、アンモニア除去に伴うpH低下の影響が熱アルカリ前処理槽1に及びにくい利点がある。なお、図1ではこれらの種々の分離手段をアンモニア除去装置5として示した。当然このようにアンモニア除去装置を設ける場合には、熱アルカリ前処理槽と同等あるいはそれ以上の温度とする方がアンモニア除去が効率的に進むため、ジャケット水等による加温を考える。またアンモニア除去装置のpHはアンモニア除去の影響により、熱アルカリ前処理槽のpHよりも低くなる。
【0018】
図2、図4、図5、図7の例においては、窒素等の嫌気性雰囲気ガスを用いてガスパージを行なうため、このガスの流れを図8に示すような閉鎖循環系とし、別途分離されたアンモニアを吸収する吸収槽を設けることが望ましい。
【0019】
このようにしてアンモニアガスが分離除去された前処理後の汚泥は、従来と同様に嫌気性消化槽2に送られ、メタン発酵される。しかし従来とは異なり、液中から予めアンモニアが除去されているために嫌気性消化槽2においてメタン発酵が阻害されることはなく、流入汚泥のVSを従来よりも高めたにもかかわらず、効率よくメタン発酵が行われる。このとき発生したメタンガスは、有価資源として回収される。
【0020】
なお効率よくメタン発酵を進行させるためには、嫌気性消化槽2のpH%を、7〜8.5としておくことが好ましい。より詳細には、初沈汚泥の場合には7.0〜7.8程度、余剰汚泥の場合には7.8〜8.1程度とすることが望ましい。温度は中温発酵の場合には35℃程度、高温発酵の場合には55℃程度とする。このように嫌気性消化槽2のpHは特別な操作を行わなくとも自然に下がる。その理由は、メタン発酵により生成する炭酸ガスが液中に溶解し、消化汚泥を酸性側に移行させるためである。
【0021】
以上に述べたように、本発明によれば流入汚泥のVSを従来より高めたにもかかわらず効率よくメタン発酵が行われるので、嫌気性消化槽2における有機物負荷を、従来の2kg/m3・日から3kg/m3・日以上にまで大幅に高めることができる。またこの方法を応用すれば2段直列の嫌気性消化槽がある場合にその間にアンモニア除去装置5を設けて後段の嫌気性消化を活性化させることが可能である。あるいは嫌気性消化槽2から流出する消化汚泥の一部をアンモニア除去装置5に循環させてアンモニアの除去を促進させ、嫌気性消化を活性化させることが可能である。
【0022】
以上に説明した参考形態では、図1に示すように熱アルカリ前処理槽1から自然流下により後段のアンモニア除去装置5に導き、アンモニアを除去した後の前処理汚泥を全て嫌気性消化槽2に自然流下させた。しかし、本発明では、図9や図10に示すように、アンモニア除去装置5と熱アルカリ前処理槽1との間でポンプ等によって汚泥の一部を循環させている。このように前処理汚泥からアンモニアを除去することにより、熱アルカリ前処理槽1におけるアンモニウム塩,アンモニウムイオン,非解離アンモニアの平衡がより非解離アンモニア側へ移行し、アンモニア除去装置においてより多量のアンモニアガスの分離が可能となる。アンモニア除去装置5は図9のように熱アルカリ前処理槽1の後段においても、図10のように熱アルカリ前処理槽1と並列に設けても良い。
【0023】
以下にアンモニア除去に関する実験結果を示す。用いた実験装置は、1L容量の熱アルカリ前処理槽と10L容量の嫌気性消化槽に、アンモニア除去装置を組み合わせたものである。まず下水処理場の余剰汚泥を遠心濃縮してVSが3%に濃縮された有機性汚泥とし、pH10.5、温度70℃に制御された熱アルカリ前処理槽に1日に1Lの割合で入れて処理した。この時アンモニア除去装置において1日当り400mg−Nのアンモニアガスが発生したのでこれを分離回収した。
【0024】
このようにして得られた前処理汚泥を、pH8.0、温度37℃に制御された嫌気性消化槽に入れて消化日数10日間で処理したところ、メタン発酵が効率よく進行し、有機物の消化率は56%であった。また10L/日のメタンガスと、1L/日の炭酸ガスとが回収された。10L容量の嫌気性消化槽における有機物負荷は1日当たり30gであり、これは通常用いられる単位に換算すると3kg/m3・日となる。
【0025】
次に、同じ実験装置を用いて同じ負荷でアンモニアを分離させない従来法による試験を行った。下水処理場の余剰汚泥をVSが3%になるよう調整し、pH10.5、温度70℃に制御された熱アルカリ前処理槽に1日に1Lの割合で入れて処理したが、熱アルカリ前処理ではガスの発生は全くなかった。この前処理汚泥を、pH8.0、温度37℃に制御された嫌気性消化槽に入れて10日間メタン発酵処理した。この場合の有機物の消化率は40%であった。また7.0L/日のメタンガスと、0.7L/日の炭酸ガスとが回収された。アンモニア除去装置がないことでメタンガスの発生が少なかったのはアンモニア阻害による結果だと判断できる。
【0026】
さらに、同じ実験装置を用いて余剰汚泥VS2%2kg/m3・日の低負荷(低濃度)でアンモニアを分離させない従来法による試験を行った。pH9.0、温度70℃に制御された熱アルカリ前処理槽に1日に1Lの割合で入れて処理したが熱アルカリ前処理ではガスの発生は全くなかった。この前処理汚泥とpH8.0、温度37℃に制御された嫌気性消化槽に入れて10日間メタン発酵処理した。この場合の有機物消化率は50%であった。また5.8L/日のメタンガスと0.58Lの炭酸ガスが回収された。
【0027】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の有機性汚泥の消化処理方法及び装置によれば、従来は2kg/m3・日程度にとどまっていた嫌気性消化槽の有機物負荷を、3kg/m3・日程度まで大幅に引き上げることができる。またこれとともに、有機性汚泥から多量のメタンガス及びアンモニアガスを回収することができるから、資源回収の観点や地球温暖化防止の観点からも優れた効果がある。特に前にガスシールを備えたアンモニア除去装置を用いれば、熱アルカリ前処理槽からのアンモニアガス発生が抑制されるため、熱アルカリ前処理槽でpHが低下することがなく、汚泥中有機物の可溶化率の低下を防止できる利点がある。また特に後にガスシールを備えたアンモニア除去装置を用いれば、アンモニア除去装置で発生したアンモニアガスの嫌気性消化槽への移動・再溶解を抑制するとともに、嫌気性消化槽で発生した消化ガスのアンモニア除去装置への移動を抑制して消化ガスのより完全な回収が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例の工程を示すブロック図である。
【図2】ガスパージによるアンモニア分離方法を示す説明図である。
【図3】吸引によるアンモニア分離方法を示す説明図である。
【図4】気液接触によるアンモニア分離方法を示す説明図である。
【図5】ガスシールとガスパージを組み合わせたアンモニア分離方法を示す説明図である。
【図6】ガスシールと吸引を組み合わせたアンモニア分離方法を示す説明図である。
【図7】ガスシールと気液接触を組み合わせたアンモニア分離方法を示す説明図である。
【図8】アンモニア除去装置とアンモニア吸収装置によるアンモニア分離・回収方法を示す説明図である。
【図9】本発明の工程を示すブロック図である。
【図10】アンモニア除去装置の他の配置例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 熱アルカリ前処理槽、2 嫌気性消化槽、3 ブロワ、4 ガスシール、5 アンモニア除去装置
Claims (4)
- 汚泥中の全有機物濃度(VS)が2%を越えるように汚泥を遠心濃縮する工程と、
該VSが2%を越える高濃度の有機性汚泥を、pHが10以上、温度が35〜100℃に制御された熱アルカリ前処理槽に導入して、該有機性汚泥に含有される有機物の可溶化を促進する工程と、
該有機物の可溶化を促進する工程で同時に生成したアンモニア性窒素を、アンモニア除去装置に導き、アンモニアガスとして、前処理汚泥から分離除去する工程と、
アンモニアガスを分離除去した後の前処理汚泥を、pHが7〜8.5に制御された嫌気性消化槽に導入してメタン発酵させる工程とからなり、
該アンモニア除去装置と該熱アルカリ前処理槽との間でポンプによって汚泥の一部を循環させることを特徴とする有機性汚泥の消化処理方法。 - 該有機物の可溶化を促進する工程で同時に生成したアンモニア性窒素を、アンモニア除去装置に導き、アンモニアガスとして、前処理汚泥から分離除去する工程は、
嫌気性雰囲気ガスによるガスパージ、吸引、気液接触の何れかの手段を用いることを特徴とする請求項1記載の有機性汚泥の消化処理方法。 - 高濃度の有機性汚泥をpHが10以上、温度が35〜100℃の条件下で処理する熱アルカリ前処理槽と、
この熱アルカリ前処理により発生するアンモニアガスを前処理汚泥から分離除去するアンモニア除去装置と、
該アンモニア除去装置と該熱アルカリ前処理槽との間でポンプによって汚泥の一部を循環させる循環経路と、
アンモニアガスを分離除去した後の前処理汚泥をpHが7〜8.5の条件下でメタン発酵させる嫌気性消化槽とからなることを特徴とする有機性汚泥の消化処理装置。 - 該アンモニア除去装置が、その前後にガスシールを備えたものである請求項3記載の有機性汚泥の消化処理装置。
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