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JP4865513B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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JP4865513B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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本発明は、基材上に被覆層を形成してなる表面被覆切削工具に関する。
切削工具を構成する基材は、その表面保護を目的とするとともに耐摩耗性や靭性等の諸特性の更なる向上を目的として、各種の被覆層でその表面を被覆することが行なわれてきた。中でもAl23を含む層は、化学的に安定であり被削材と溶着することがほとんどないことから、この種の基材を被覆する被覆層の表面層として従来より広く用いられてきた。
しかしながら、このようなAl23を含む層は、通常黒色の外観色となるため刃先の使用状態を識別することが困難であることから、この層の上に明瞭な色彩を有するTiN等からなる層をさらに形成させることが行なわれている。しかし、明瞭な色彩を有するTiN等からなる層は、被削材と溶着し易くその結果として耐摩耗性が低下したり、被削材の加工面の状態を悪化させる等といった問題を有していた。
一般に、被覆層の耐摩耗性等を向上させる手段として被覆層を構成する各層間の密着強度や基材との密着強度を高めることが提案されている(特許文献1〜4)。また、ある種の用途を対象としてそのような密着強度の最適化も検討されている(特許文献5〜8)。
しかしながら、上記のようなTiN等からなる層の溶着現象を抜本的に解決する手段は未だ提供されていない現状にある。
特開平02−269509号公報 特開平06−106402号公報 特開平06−108254号公報 特開平07−216559号公報 特開2005−103657号公報 特開2005−186221号公報 特開2005−212046号公報 特開2005−212047号公報
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、被覆層に被削材が溶着するという問題を低減した表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成される被覆層とを有するものであって、該被覆層は、1以上の層からなる内層とその内層上に形成される1以上の層からなる外層とを含み、該内層は、該外層と接する最上層として厚みが0.5μm以上のAl23を含む層を有し、該外層は、該内層の該最上層上に形成される中間下地層と、密着強度が20N以下である表面を構成する最外層とを含み、該中間下地層は、TiCで形成されることを特徴とする。
また、上記最外層は、Ti、Zr、Cr、およびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層であることが好ましい。
また、上記内層は、上記最上層以外に、元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、およびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層を含むことが好ましい。
また、上記表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはピンミーリング加工用刃先交換型切削チップのいずれかであることが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、上記のような構成を有することにより、被覆層に被削材が溶着するという問題を低減したものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成される被覆層とを有するものである。このような基本的構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、たとえばドリル(刃先交換型切削チップを備えた刃先交換型のドリルとソリッドドリルとの両者を含む。以下の各工具において同じ(すなわち特に断らない限り、刃先交換型のものとソリッドタイプのものとの両者を含む)。)、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはピンミーリング加工用刃先交換型切削チップとして極めて有用である。
<基材>
本発明の表面被覆切削工具の基材としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coおよび/またはNiを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb、Zr、Hf、Cr、V等の炭化物、窒化物、炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、または窒化硅素焼結体等をこのような基材の例として挙げることができる。このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やε相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。
なお、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていても良く、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。
<被覆層>
本発明の被覆層は、基材上に形成されるものであり、靭性や耐摩耗性等の特性を向上させる作用を有するものである。このような被覆層は、基材の全面を覆うようにして形成されることが好ましいが、基材上に被覆層が形成されていない部分が含まれていても本発明の範囲を逸脱するものではない。
このような被覆層は、1以上の層からなる内層とその内層上に形成される1以上の層からなる外層とを含む。なお、このような被覆層は、従来公知の化学蒸着(CVD)法によって形成することもできるし、物理蒸着(PVD)法によっても形成することができ、その形成方法は特に限定されない。
このような被覆層は、0.6μm以上50μm以下の厚みを有することが好ましく、より好ましくはその上限が30μm、さらに好ましくは20μm、その下限が0.7μm、さらに好ましくは1.0μmである。0.6μm未満では刃先交換型切削チップの耐久性を向上させる作用等を十分に示さない場合があり、50μmを超えても該作用に大差なく経済的に不利となる場合がある。
<内層>
本発明の内層は、後述の外層に対して基材側に形成される層であり、1以上の層により構成される。したがって、内層のうち最も基材側に形成される層は基材上に直接接するようにして形成されることになる。
そして、このような内層は、外層と接する最上層として厚みが0.5μm以上のAl23を含む層を有することを要する。後述の通り、外層は切削加工時において剥離しやすいという特性を有するものであるため、切削加工時において表面に露出するのはこの内層の最上層であり、この最上層をAl23を含む層で構成することにより被削材に対する溶着性を低減することが可能となる。
ここで、Al23を含む層とは、その層の一部として少なくともAl23を含んでいること(50質量%以上含まれていればAl23を含むものとみなす)を意味し、ZrO2、Y23(Al23にZrやYが添加されたとみることもできる)等を含むことができるとともに、塩素、炭素、硼素、窒素等を含んでいても良い。一方、Al23を含む層は、不可避不純物を除く組成の全てがAl23である場合も含まれる。なお、Al23は、その結晶構造は特に限定されず、たとえばα−Al23、κ−Al23、γ−Al23またはアモルファス状態のAl23が含まれるとともに、これらが混在した状態も含まれる。
また、このようなAl23を含む層は、0.5μm以上の厚みを有していることを要する。0.5μm未満では、溶着性を十分に低減させることができなくなる。好ましくは、1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。一方、その厚みの上限は特に限定されないが、20μmを超えても上記作用に大差なく経済的に不利となる場合がある。
さらにこのような内層は、上記最上層(Al23を含む層)以外に、元素周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、Si、およびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層を1層以上含むことが好ましい。このような層を含むことにより、耐摩耗性等の諸特性が向上するとともに内層と基材との密着性を向上させることができる。
ここで、上記化合物の具体例を挙げると、たとえばTiC、TiN、TiCN、TiCNO、TiB2、TiBN、TiBNO、TiCBN、Ti23、TiZrCN、ZrC、ZrO2、HfC、HfN、TiAlN、AlCrN、CrN、VN、TiSiN、TiSiCN、AlTiCrN、TiAlCN、Al23、ZrCN、ZrCNO、AlN、AlCN、ZrN、TiAlCなどを挙げることができる。
なお、本発明において上記のように化合物を化学式で表わす場合、原子比を特に限定しない場合は従来公知のあらゆる原子比を含むものとし、必ずしも化学量論的範囲のもののみに限定されるものではない。たとえば単に「TiCN」と記す場合、「Ti」と「C」と「N」の原子比は50:25:25の場合のみに限られず、また「TiN」と記す場合も「Ti」と「N」の原子比は50:50の場合のみに限られない。これらの原子比としては従来公知のあらゆる原子比が含まれるものとする。
<外層>
本発明の外層は、内層上に形成される1以上の層であり、表面被覆切削工具(被覆層)の表面を構成する最外層として密着強度が20N以下である層を含むことを特徴とする。このような外層(すなわち最外層)を形成することにより、刃先の使用状態を識別することが容易であるにもかかわらず、表面被覆切削工具の表面に被削材が溶着することを極めて有効に低減することができる。
すなわち、内層の最上層であるAl23を含む層は、黒色(もしくは黒色に近い暗色)の外観色を呈するところ、これとは異なる層を最外層として形成することにより、切削の初期においてはこの最外層が表面を構成することにより刃先が使用されたか否かを容易に識別することができるとともに、切削が開始されるとともにこの最外層は剥離するため、この最外層と被削材とが溶着することを防止することができる。このように被削材の溶着が防止されると結果的に被覆層(内層)の破壊が防止され、以って優れた耐摩耗性を得ることが可能となる。また同時に、被削材の加工面の状態を悪化させることも防止される。
そして、このように最外層を容易に剥離させるためには、その密着強度を20N以下にすることが必要である。ここで、本発明でいう密着強度とは、スクラッチ試験(試験条件の詳細は後述の実施例に記載した)により測定される密着強度をいう。
このような密着強度は、小さくなればなる程好ましく、あえてその下限を設定する必要はない。その下限の目安は最外層を構成する化合物の種類や基材の形状等に応じて、その最外層が成膜後自己剥離しない程度のものと規定することができる。
本発明の外層は、上記のような最外層のみを含む(換言すれば外層が最外層のみで構成される)ことができるとともに、この最外層と中間下地層とを含むこともできる。なお、上記のスクラッチ試験においては、最外層の剥離を測定するものであるが、中間下地層が形成される場合はこのような中間下地層(その全部または一部)が最外層とともに剥離される場合であっても、これを最外層の剥離とみなし、それにより測定される密着強度を最外層の密着強度とするものとする。勿論、最外層のみが剥離し、この中間下地層(あるいはその中間下地層の一部)が内層上に保持されるものであっても差し支えない。ただし、このような中間下地層は、実際の切削加工時においては切削が開始されるとともに剥離することが好ましい。被削材の溶着を防止するためである。
本発明の最外層は、内層の最上層であるAl23を含む層以外の組成の層である限り、原則としてその組成は特に限定されるものではない。特に、このような最外層は、Ti、Zr、Cr、およびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層であることが好ましい。これらの化合物は、金色等の色彩を有しており、黒色の外観色を呈するAl23を含む層との間で明瞭な色彩コントラストを発現することができ、以ってこの最外層が剥離したり変色することにより刃先の使用状態を容易に識別することができるからである。このような化合物としては、たとえばTiN、TiCN、TiBN、TiCNO、TiZrN、TiZrCrN、ZrN、ZrCN、TiC、CrN、CrCN、ZrC、HfN、HfCN、HfC等を挙げることができる。
なお、本発明の最外層は、上記のように従来公知の化学蒸着法によって形成することもできるし、物理蒸着法によっても形成することができ、その形成方法は特に限定されない。そして、その厚み、形成条件、および中間下地層の形成等の諸条件を適宜調整することによりその密着強度を20N以下に制御することが可能である。
このような最外層は、0.01μm以上20μm以下の厚みを有することが好ましく、より好ましくはその上限が10μm、さらに好ましくは5μm、その下限が0.1μm、さらに好ましくは0.2μmである。0.01μm未満では表面被覆切削工具の使用状態を十分に識別できない場合があり、20μmを超えても該作用に大差なく経済的に不利となる場合がある。
また、上記中間下地層は、最外層の下層として形成されるものであり、最外層の密着強度を調整する作用を有する層である。このような中間下地層は、特にその組成が限定されるものではないが、最外層と同様にTi、Zr、Cr、およびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層であることが好ましい。このような化合物としては、たとえばTiC、ZrC、ZrCN、TiCN、TiN、TiBN、TiCNO、Ti23、TiCO等を挙げることができる。
また、上記中間下地層は、内層の最上層として説明したAl23を含む層とそれ以外の層(たとえば元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、およびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層)とを各々1層以上積層した構造の層とすることもできる。これにより、上記の最外層の密着強度をさらに有効に低下させることができ、切削加工時においてその最外層を極めて容易に剥離させることができるようになる。なお、上記のように複数の層が積層される場合、その積層数(サイクル数)は特に限定されることはないが、数層から数十層とすることが好ましい。
このような中間下地層(複数の層が積層されて構成される場合も含む)は、上記のように従来公知の化学蒸着法によって形成することもできるし、物理蒸着法によっても形成することができ、その形成方法は特に限定されない。また、その厚みは、0.01μm以上30μm以下とすることが好ましく、より好ましくはその上限が25μm、さらに好ましくは20μm、その下限が0.1μm、さらに好ましくは1μmである。0.01μm未満では、上記のような作用を示さない場合があり、30μmを超えても該作用に大差なく経済的に不利となる場合がある。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下において、被覆層(内層および外層)を構成する各層は特に断らない限りCVD法により形成し、その条件は以下の表1の通りである。
Figure 0004865513
表1中、「混合ガス組成」とはCVDにより層を形成する際に用いたガスの組成であり、「温度」および「圧力」とはその際の温度および圧力を示す。
表1において、「TiN(最下層)」とは、基材上に直接接するようにしてTiN層(TiNで構成される層を示す。特に断らない限り以下の各記載において同意)を形成する場合の条件を示し、「TiN(最下層以外)」とは、それ以外の積層位置にTiN層を形成する場合の条件を示す。また、MT−TiCNとは、比較的低い成膜温度(medium temperature CVD法)でTiCN層(以下単にMT−TiCN層と記す)を形成する場合を示す。κ−Al23とは、κ型の結晶構造を有するAl23で構成される層(以下単にκ−Al23層と記す)の形成条件を示し、α−Al23とは、α型の結晶構造を有するAl23(以下単にα−Al23層と記す)で構成される層の形成条件を示す。
<実施例1>
まず、2質量%のTiC、2質量%のTaC、1質量%のNbC、5質量%のCo、およびその残部がWCからなる組成の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1450℃、1時間の条件で焼結を行ない、その後刃先稜線部に対してSiCブラシホーニング処理により刃先処理(すくい面と逃げ面との交差部各々に対して半径が約0.05mmのアール(R)を付与したもの)をすることにより、刃先交換型切削チップCNMA120412(JIS B 4120−1998)の形状と同形状の超硬合金製の基材を得た。なお、この基材の表面には脱β層は形成されていなかった。
次いで、この基材の全面に対して、基材の表面側から順に、内層として0.3μmのTiN層、10.0μmのMT−TiCN層、0.3μmのTiBN層、および8.0μmのα−Al23層(後述の外層と接する最上層である)をそれぞれ形成した。
さらに引き続き、外層として下記の表2に記載した外層形成条件(たとえばNo.101の「TiC/15分」とは、内層を形成後、引き続きTiCを形成する表1の条件を15分間継続した後、表1の条件で各最外層を形成したことを示す。他の例において同意。なお、空欄のものは内層形成後直接最外層を形成したことを示す。)で表2記載の最外層(厚み0.3μm)を上記α−Al23層の全面上にそれぞれ形成した(すなわち、上記のようにして内層を形成した複数の基材の各々に対して、表2記載の最外層を形成した)。なお、これらの内層と外層とは、同一のCVD装置内から基材を取り出すことなく連続して形成した。
このようにして、基材と該基材上に形成される被覆層とを有する表2記載の表面被覆切削工具を得た。表2中、No.101〜108の表面被覆切削工具が本発明の実施例であり、No.109〜116の表面被覆切削工具が比較例である。
これらの実施例の表面被覆切削工具において、該被覆層は、1以上の層からなる内層とその内層上に形成される外層とを含み、該内層は、該外層と接する最上層として厚みが0.5μm以上のAl23を含む層を有し、該外層は、表面を構成する最外層が表2記載の密着強度を有していた。
なお、表2記載の密着強度は、下記条件のスクラッチ試験により算出した。また、被覆層の断面をラッピングし、光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察したところ、外層(すなわち内層の最上層であるAl23を含む層(すなわちα−Al23層)上に形成される層)としては表2記載の最外層のみが観察された。
<スクラッチ試験>
スクラッチ試験機:CEM−REVETEST(ナノテック社製)
テーブルスピード:0.17mm/秒
荷重スピード:100N/分
圧子(ダイヤモンド)曲率半径:0.2mm
圧子(ダイヤモンド)稜線角度:120°
具体的測定条件:最外層が剥離した位置を光学顕微鏡とアコースティックエミッションセンサーで検出し、その剥離した位置と荷重負荷を開始した位置との距離から密着強度を測定した。
そして、上記のようにして得られた表面被覆切削工具である刃先交換型切削チップを工作機械のコレットに取り付けられたホルダに取り付け、以下の条件による切削試験を行なった。
<切削条件>
ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)製)
被削材:FCD450丸棒(直径:250mm、HB=240)
切削速度:280m/分
送り:0.40mm/rev.
切込み:1.5mm
乾式/湿式:乾式
切削時間:15分
そして、各刃先交換型切削チップの刃先の状態(被削材の溶着の有無)を観察するとともに逃げ面平均摩耗量(VB)を測定した。その結果を以下の表2に示す。刃先の状態の観察において、被削材の溶着が少ないもの程被削材の加工面が美麗であった。また、逃げ面平均摩耗量が小さいもの程耐摩耗性に優れていることを示している。
Figure 0004865513
表2より明らかな通り、本発明の実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、刃先の被覆層への被削材の溶着が低減されており、耐摩耗性に優れていた。よって、本発明の構成の表面被覆切削工具が優れた効果を示すことが確認された。これに対して比較例の表面被覆切削工具において、刃先に被削材が多量に溶着しかつ耐摩耗性が劣るのは、最外層の密着強度が20Nを超えるためと考えられる。
<実施例2>
まず、基材として次の2種を準備した。すなわち、その1種は後述の連続切削試験に使用するものであり、次のようにして作製した。
まず、3質量%のTiC、2質量%のTaC、0.5質量%のNbC、8質量%のCo、およびその残部がWCからなる組成の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1420℃、1時間の条件で焼結を行ない、その後刃先稜線部に対してSiCブラシホーニング処理により刃先処理(すくい面と逃げ面との交差部各々に対して半径が約0.05mmのアール(R)を付与したもの)をすることにより、刃先交換型切削チップCNMA120412(JIS B 4120−1998)の形状と同形状の超硬合金製の基材を得た。なお、この基材の表面には13μmの脱β層が形成されていた。
また、他の1種は後述の断続切削試験に使用するものであり、次のようにして作製した。すなわち、まず8質量%のTaC、2質量%のTiC、10質量%のCo、およびその残部がWCからなる組成の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1380℃、1時間の条件で焼結を行ない、その後刃先稜線部に対してSiCブラシホーニング処理により刃先処理(すくい面と逃げ面との交差部各々に対して半径が約0.05mmのアール(R)を付与したもの)をすることにより、刃先交換型切削チップSEMT13T3AGSN−N(住友電工ハードメタル(株)製)の形状と同形状の超硬合金製の基材を得た。なお、この基材の表面には脱β層は形成されていなかった。
次いで、上記2種それぞれの基材の全面に対して、基材の表面側から順に、内層として0.4μmのTiN層、6.0μmのMT−TiCN層、0.3μmのTiBN層、および1.5μmのκ−Al23層(後述の外層と接する最上層である)をそれぞれ形成した。
さらに引き続き、外層として下記の表3に記載した外層形成条件(条件に関する記載は表2と同じ)で表3記載の最外層(厚み0.4μm)を上記κ−Al23層の全面上にそれぞれ形成した(すなわち、上記のようにして内層を形成した複数の基材の各々に対して、表3記載の最外層を形成した)。なお、これらの内層と外層とは、同一のCVD装置内から基材を取り出すことなく連続して形成した。
このようにして、上記の基材2種それぞれについて、基材と該基材上に形成される被覆層とを有する表3記載の表面被覆切削工具を得た。表3中、No.201〜208の表面被覆切削工具が本発明の実施例であり(ただし「*」の符号を付したものは参考例である)、No.209〜216の表面被覆切削工具が比較例である。
これらの実施例の表面被覆切削工具において、該被覆層は、1以上の層からなる内層とその内層上に形成される外層とを含み、該内層は、該外層と接する最上層として厚みが0.5μm以上のAl23を含む層を有し、該外層は、表面を構成する最外層が表3記載の密着強度を有していた。
なお、表3記載の密着強度は、実施例1と同様にして算出した。また、被覆層の断面をラッピングし、光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察したところ、外層(すなわち内層の最上層であるAl23を含む層(すなわちκ−Al23層)上に形成される層)としては表3記載の最外層のみが観察された。
そして、上記のようにして得られた表面被覆切削工具である刃先交換型切削チップをそれぞれ1個ずつ、工作機械のコレットに取り付けられたホルダまたはカッターに取り付け、それぞれの基材ごとに以下の条件による切削試験を行なった。
<連続切削試験>
チップ:CNMA120412
ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)製)
被削材:SCM435丸棒(直径:250mm、HB=270)
切削速度:280m/分
送り:0.40mm/rev.
切込み:2.0mm
乾式/湿式:湿式(水溶性油)
切削時間:10分
<断続切削試験>
チップ:SEMT13T3AGSN−N
カッター:WGC4100R(住友電工ハードメタル(株)製)
被削材:SCM440ブロック材(HB=300)
切削速度:250m/分
送り:0.30mm/刃
切込み:2.0mm
乾式/湿式:湿式(水溶性油)
切削距離:5m
そして、各刃先交換型切削チップの刃先の状態(被削材の溶着の有無)を観察するとともに逃げ面平均摩耗量(VB)を測定した。その結果を以下の表3に示す。刃先の状態の観察において、被削材の溶着が少ないもの程被削材の加工面が美麗であった。また、逃げ面平均摩耗量が小さいもの程耐摩耗性に優れていることを示している。
Figure 0004865513
表3より明らかな通り、本発明の実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、刃先の被覆層への被削材の溶着が低減されており、耐摩耗性に優れていた。よって、本発明の構成の表面被覆切削工具が優れた効果を示すことが確認された。
<実施例3>
まず、2質量%のTaC、9質量%のCo、およびその残部がWCからなる組成の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1400℃、1時間の条件で焼結を行ない、その後刃先稜線部に対してSiCブラシホーニング処理により刃先処理(すくい面と逃げ面との交差部各々に対して半径が約0.03mmのアール(R)を付与したもの)をすることにより、刃先交換型切削チップTNMG160404R−HM(住友電工ハードメタル(株)製)の形状と同形状の超硬合金製の基材を得た。なお、この基材の表面には脱β層は形成されていなかった。
次いで、この基材の全面に対して、基材の表面側から順に、内層として0.3μmのTiN層、4.0μmのMT−TiCN層、0.4μmのTiBN層、および2.0μmのα−Al23層(後述の外層と接する最上層である)をそれぞれ形成した。
さらに引き続き、外層として下記の表4に記載した外層形成条件(条件に関する記載は表2と同じ)で表4記載の最外層(厚み0.4μm)を上記α−Al23層の全面上にそれぞれ形成した(すなわち、上記のようにして内層を形成した複数の基材の各々に対して、表4記載の最外層を形成した)。なお、これらの内層と外層とは、同一のCVD装置内から基材を取り出すことなく連続して形成した。
このようにして、基材と該基材上に形成される被覆層とを有する表4記載の表面被覆切削工具を得た。表4中、No.301〜305の表面被覆切削工具が本発明の実施例であり(ただし「*」の符号を付したものは参考例である)、No.306〜308の表面被覆切削工具が比較例である。
これらの実施例の表面被覆切削工具において、該被覆層は、1以上の層からなる内層とその内層上に形成される外層とを含み、該内層は、該外層と接する最上層として厚みが0.5μm以上のAl23を含む層を有し、該外層は、表面を構成する最外層が表4記載の密着強度を有していた。
なお、表4記載の密着強度は、実施例1と同様にして算出した。また、被覆層の断面をラッピングし、光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察したところ、外層(すなわち内層の最上層であるAl23を含む層(すなわちα−Al23層)上に形成される層)としては表4記載の最外層のみが観察された。
そして、上記のようにして得られた表面被覆切削工具である刃先交換型切削チップを工作機械のコレットに取り付けられたホルダに取り付け、以下の条件による切削試験を行なった。
<切削条件>
ホルダ:PTGNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)製)
被削材:SUS304丸棒(直径:250mm)
切削速度:150m/分
送り:0.25mm/rev.
切込み:2.0mm
乾式/湿式:湿式(水溶性油)
切削時間:5分
そして、各刃先交換型切削チップの刃先の状態(被削材の溶着の有無)を観察するとともに逃げ面平均摩耗量(VB)を測定した。その結果を以下の表4に示す。刃先の状態の観察において、被削材の溶着や境界欠損が少ないもの程バリが少なかった。また、逃げ面平均摩耗量が小さいもの程耐摩耗性に優れていることを示している。
Figure 0004865513
表4より明らかな通り、本発明の実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、刃先の被覆層への被削材の溶着が低減されており、耐摩耗性に優れていた。よって、本発明の構成の表面被覆切削工具が優れた効果を示すことが確認された。
<実施例4>
実施例1のNo.101とNo.102の表面被覆切削工具において、最外層の厚みを以下の表5に記載した厚みとすることを除き、他は全て同様にして表面被覆切削工具を得た(No.101−2〜No.101−5は、No.101に対応することを示し、No.102−2〜No.102−5は、No.102に対応することを示す)。
これらの表面被覆切削工具について、実施例1と同様にして最外層の密着強度を測定し、かつ実施例1と同様の切削試験を行なった。その結果を以下の表5に示す。No.101、101−2、101−3、102、102−2、102−3の表面被覆切削工具が本発明の実施例である。なお、各表面被覆切削工具の被覆層の断面をラッピングし、光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察したところ、外層(すなわち内層の最上層であるAl23を含む層上に形成される層)としては実施例1と同様、最外層のみが観察された。
Figure 0004865513
表5より明らかな通り、本発明の実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、刃先の被覆層への被削材の溶着が低減されており、耐摩耗性に優れていた。よって、本発明の構成の表面被覆切削工具が優れた効果を示すことが確認された。
<実施例5>
まず、基材として次の2種を準備した。すなわち、その1種は後述の連続切削試験に使用するものであり、次のようにして作製した。
まず、3質量%のTiC、4質量%のTaC、0.5質量%のNbC、10質量%のCo、およびその残部がWCからなる組成の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1420℃、1時間の条件で焼結を行ない、その後刃先稜線部に対してSiCブラシホーニング処理により刃先処理(すくい面と逃げ面との交差部各々に対して半径が約0.05mmのアール(R)を付与したもの)をすることにより、刃先交換型切削チップCNMA120404(JIS B 4120−1998)の形状と同形状の超硬合金製の基材を得た。なお、この基材の表面には脱β層は形成されていなかった。
また、他の1種は後述の断続切削試験に使用するものであり、次のようにして作製した。すなわち、まず0.5質量%のCr32、10質量%のCo、およびその残部がWCからなる組成の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1380℃、1時間の条件で焼結を行ない、その後刃先稜線部に対してSiCブラシホーニング処理により刃先処理(すくい面と逃げ面との交差部各々に対して半径が約0.05mmのアール(R)を付与したもの)をすることにより、刃先交換型切削チップSEET13T3AGSN−N(住友電工ハードメタル(株)製)の形状と同形状の超硬合金製の基材を得た。なお、この基材の表面には脱β層は形成されていなかった。
次いで、上記2種それぞれの基材の全面に対して、基材の表面側から順に、内層として0.5μmのTiN層、3.0μmのMT−TiCN層、0.3μmのTiBN層、および2.5μmのα−Al23層(後述の外層と接する最上層である)をそれぞれ形成した。
さらに引き続き、上記α−Al23層の全面上に外層として以下の表6に記載した条件(表6中の記載は表1に準ずる。ただし「時間」とはCVD法による蒸着の継続時間を示す)に従ってCVD法による蒸着を行なった後、最外層として厚み0.4μmのTiN層をそれぞれ形成した(すなわち、上記のようにして内層を形成した基材の各々に対して、上記CVD法による蒸着を行なった後、最外層として厚み0.4μmのTiN層をそれぞれ形成した)。なお、これらの内層と外層とは、同一のCVD装置内から基材を取り出すことなく連続して形成した。
このようにして、上記の基材2種それぞれについて、基材と該基材上に形成される被覆層とを有する表面被覆切削工具を得た。表6中、No.501〜508の表面被覆切削工具が本発明の実施例であり(ただし「*」の符号を付したものは参考例である)、No.509〜514の表面被覆切削工具が比較例である。
これらの実施例の表面被覆切削工具において、該被覆層は、1以上の層からなる内層とその内層上に形成される外層とを含み、該内層は、該外層と接する最上層として厚みが0.5μm以上のAl23を含む層を有し、該外層は、表面を構成する最外層が以下の表7記載の密着強度を有していた。
なお、表7記載の密着強度は、実施例1と同様にして算出した。また、被覆層の断面をラッピングし、光学顕微鏡(倍率:1000倍)で観察したところ、No.504、505、506、507、508、513、および514においては、上記内層の最上層であるα−Al23層と最外層との間に中間下地層が形成されていること(No.504と505はTiC層、それ以外のNo.はTi23層)が観察されたのに対して、それ以外の表面被覆切削工具においては外層(すなわち内層の最上層であるα−Al23層上に形成される層)としては最外層として0.4μmのTiN層のみが観察された。
そして、上記のようにして得られた表面被覆切削工具である刃先交換型切削チップを工作機械のコレットに取り付けられたホルダまたはカッターに取り付け、それぞれの基材ごとに以下の条件による切削試験を行なった。
<連続切削試験>
チップ:CNMA120404
ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)製)
被削材:SUS316丸棒(直径:250mm)
切削速度:150m/分
送り:0.25mm/rev.
切込み:1.2mm
乾式/湿式:湿式(水溶性油)
切削時間:20分
<断続切削試験>
チップ:SEET13T3AGSN−N
カッター:WGC4100R(住友電工ハードメタル(株)製)
被削材:FCD450ブロック材
切削速度:150m/分
送り:0.30mm/刃
切込み:2.0mm
乾式/湿式:乾式
切削距離:4.5m
そして、各刃先交換型切削チップの刃先の状態(被削材の溶着の有無)を観察するとともに摩耗量(連続切削試験は境界摩耗量(VN)(逃げ面から測定)、断続切削試験は逃げ面平均摩耗量(VB))を測定した。その結果を以下の表7に示す。刃先の状態の観察において、被削材の溶着が少ないもの程被削材の加工面が美麗であった(溶着が少ないもの程境界の欠損は軽微であり、溶着が多くなると境界の欠損は大きくなった。また断続切削試験では溶着が少ないものについてはチッピングはほとんど発生しなかったが、溶着が多くなるとチッピングが発生したり欠損する場合があった)。また、逃げ面平均摩耗量が小さいもの程耐摩耗性に優れていることを示している。
Figure 0004865513
Figure 0004865513
表7より明らかな通り、本発明の実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、刃先の被覆層への被削材の溶着が低減されており、耐摩耗性に優れていた。よって、本発明の構成の表面被覆切削工具が優れた効果を示すことが確認された。
なお、本発明の実施例の表面被覆切削工具において、最外層の0.4μmのTiN層に代えて、それぞれ0.4μmのTiCN層、TiBN層、ZrN層、ZrCN層に置き換えても、本実施例同様の優れた効果が示された(最外層の密着強度は±2Nの範囲内であり、摩耗量は境界摩耗量(VN)、逃げ面平均摩耗量(VB)それぞれ±0.1mmの範囲内であった)。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (4)

  1. 基材と、該基材上に形成される被覆層とを有する表面被覆切削工具であって、
    前記被覆層は、1以上の層からなる内層とその内層上に形成される1以上の層からなる外層とを含み、
    前記内層は、前記外層と接する最上層として厚みが0.5μm以上のAl23を含む層を有し、
    前記外層は、前記内層の前記最上層上に形成される中間下地層と、密着強度が20N以下である表面を構成する最外層とを含み、
    前記中間下地層は、TiCで形成されることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記最外層は、Ti、Zr、Cr、およびHfからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層であることを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記内層は、前記最上層以外に、元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、およびBからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物によって形成される層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記表面被覆切削工具は、ドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはピンミーリング加工用刃先交換型切削チップのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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