JP4865543B2 - 生分解性ラップフィルム - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、包装用途に用いられる生分解性フィルム、特に家庭用の小巻ラップフィルムとして好適に使用される生分解性ラップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは今や生活と産業のあらゆる分野に浸透し、全世界の年間生産量は約1億トンにも達している。しかしその一方で、生産量に比例して使用済プラスチックの処理の問題も大きくなって来ている。
【0003】
従来、使用済プラスチックの大半は埋め立て等により廃棄処理されてきたが、プラスチックは一般に自然界において長期にわたって安定であり、しかも嵩比重が小さいため、埋立地の短命化が進む一方、自然の景観や野生植物の生活環境が損なわれたりするなど、様々な問題が生じている。
【0004】
近年、環境問題の高まりから枯渇性資源の有効活用が重要視されるようになり、自然環境に悪影響を及ぼさない生分解樹脂、すなわち土壌中や水中で加水分解や生成分解により徐々に崩壊・分解が進行し、最終的には微生物の作用によって無害な分解物となる生分解樹脂が注目されている。
【0005】
実用化され始めている生分解性樹脂としては、乳酸系樹脂、脂肪族ポリエステル、変性ポリビニルアルコール、セルロースエステル化合物、デンプン変性体やこれらのブレンド体を挙げることができる。なかでも乳酸系樹脂は、澱粉の発酵により得られる乳酸を原料とし、化学工学的に量産可能であり、しかも透明性・剛性・耐熱性等に優れていることから、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレートの代替材料として特に注目されている。
【0006】
ところで、家庭用の小巻ラップフィルムの主材料は、従来一般的に延伸したポリ塩化ビニリデン系樹脂や押出しキャストしたポリエチレン系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1系樹脂などであったが、最近、これら塩化ビニリデン系樹脂の代替材料としてポリ乳酸などの生分解樹脂を用いる研究が進み、種々の提案がなされている。
【0007】
例えば特開2000−185381号公報は、生分解性を有し、ノコギリ刃カット性、ハンドリング性、電子レンジ耐熱性、容器への密着性、ガスバリア性に優れたラップフィルムを提供すべく、ポリ乳酸を主体とするポリマーから主としてなる基材層の少なくとも片面に粘着層を設けてなるラップフィルムを提案している。しかし、このようにして製造されたフィルムは、実使用温度域において硬すぎるため、例えば容器に包装させた時にうまく容器に沿わないことがあり、本用途においては使いづらいという課題を有していた。
【0008】
特開2001−49098号公報は、透明性、耐熱性、柔軟性を有し、しかも、表面に可塑剤や粘着性付与剤がブリードアウトすることがなく、容器などとの密着性に優れた包装用フィルムを提供すべく、乳酸系樹脂100質量部と、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ロジン誘導体、及び、テルペン系樹脂からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を含んでなる粘着性付与剤1〜100質量部とを混合してなる、粘着性を有する乳酸系樹脂組成物を提案している。しかし、このような乳酸系樹脂組成物から作製したフィルムは、実用温度域においてフィルムが柔らかすぎて腰に欠けるため、カット性及び包装適性に問題が生じることがあり、本用途には使いづらいものであった。
【0009】
特開2001−106806号公報は、包装時の種々の要求特性(引き出し性、カット性、展張ハンドリング性、密着固定セット性、耐熱性、等他)に叶い使い勝手の良い生分解ラップフィルムを提供すべく、結晶融点が120〜250℃の乳酸系脂肪族ポリエステルに、特定の液状添加剤を添加し、引張弾性率が15〜180kg/mm2 、100℃における加熱収縮率X(%)と、同加熱収縮応力Y(g/mm2 )との関係が、(式1)0≦X<45、0≦Y<5、(式2)0≦X<2、55≦Y≦500、Y≦(1500−20X)/3、(式3)2≦X≦22.5、350<Y≦500、Y≦(1500−20X)/3、のいずれかの範囲内にあり、且つ耐熱性が120℃以上、密着仕事量が5〜50g・cm/25cm2 の特性を有する、密着性耐熱ラップフィルムを提案し、特開2000−26623号公報は、結晶融点が120〜250℃の乳酸系脂肪族ポリエステルに特定の液状添加剤を添加し、延伸する事により、引張弾性率が20〜150kg/mm2 で、100℃における加熱収縮率X%と同加熱収縮応力Yg/mm2 との関係が、Y≦(1400−20X)/3、2≦X≦45、5≦Y≦350の範囲内にあり、且つ耐熱性が120℃以上、密着仕事量が5〜30g・cm/25cm2 の特性を有する密着性耐熱ラップフィルムを提案している。これらはいずれも、カット性及び引き出し性に優れるラップフィルムとなるが、変形に対する復元挙動が瞬間的に起こるため、例えばフィルムを容器等に包装させたときに容器の形状に沿わずにフィルムが広がってしまうようになり、やはり本用途には使いづらい面があった。
【0010】
特開2002−210886号公報は、柔軟性を与える可塑剤が安定的に生分解性樹脂の中に留まり、高温時などの過酷な条件でも柔軟性を維持する生分解性フィルムを提供すべく、可塑剤を含有する生分解性樹脂のフィルムの両面に可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層を形成することを特徴とする柔軟化生分解性延伸フィルムを提案している。しかしこのフィルムでは、フィルムの両面に可塑剤の飛散・滲出を抑制する薄膜層がアクリル系であるため、生分解性フィルムとすることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
家庭用の小巻ラップフィルムは、カッター刃を具備した紙箱の中に入った形で使用されるのが一般的である。包装する際には、ラップフィルムを紙箱から引き出し、紙箱に具備されたカッター刃に押し当ててフィルムにミシン目状の孔を開けてフィルムを引き裂き、この引き裂きを幅方向に伝播させてカットした後、例えば容器に盛った食品などを包んでフィルム端部を容器に密着させる(オーバーラップ)ようにして包装するのが一般的である。
【0012】
この際、フィルムが柔らか過ぎると、フィルムを幅方向にうまく引き裂くことができず、伸びてしまったり、或いは斜め方向に引き裂けたりすることがある。
【0013】
また、家庭用ラップフィルムは、冷蔵庫や冷凍庫での食品の保存や、電子レンジでの加熱下でも使用されるため、低温適性と高温適性とを備えている必要がある。特に電子レンジで加熱した時にはフィルムが100℃以上に加熱されることがあるため、耐熱性を備えていないと電子レンジ加熱時にフィルムが大きく変形して容器や容器内の食品に密着し過ぎてしまったり、フィルムが溶けて穴があいてしまったりするなどの不具合が生じることになる。
[0014] このため、家庭用小巻ラップフィルムには、透明性は勿論のこと、紙箱から引き出してカットする際のカット適性、包装する際の包装適性、電子レンジ加熱に耐える耐熱性等が要求される。
[0015] そこで本発明は、乳酸系樹脂が本来有している生分解性に加え、家庭用ラップフィルムの特性であるカット適性、包装適性、耐熱性を同時に具備した生分解性ラップフィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる課題を解決するため、本発明の生分解性ラップフィルムは、L体とD体の比率が88:12〜85:15若しくは12:88〜15:85であるポリ(DL−乳酸)と可塑剤とからなる乳酸系樹脂組成物を主成分として含有し、かつ結晶核剤を含有しない生分解性ラップフィルムであって、
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とするものである。
[0017] このような物性を備えた生分解性ラップフィルムであれば、家庭用ラップフィルムとしての使用用途に合った腰と柔らかさ、伸びと引張り強度のほか、電子レンジ加熱に耐える耐熱性を備えているため、家庭用ラップフィルムに求められるカット適性、包装適性、耐熱性を同時に具備した生分解性ラップフィルムとなる。
通常の温度における包装適性の面からは、さらに20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以下、特に0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
[0018] また、本発明の生分解性ラップフィル厶は、所定以上の結晶化度を備えてるのが好ましい。すなわち、JIS K−7121(ISO3146に相当)に従って、示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときの全結晶を融解するのに必要な融解熱量ΔHmと、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が10J/g以上であるのが好ましい。ΔHm−ΔHcが10J/g以上であれば、フィルムは所望の相対結晶化度に到達し、さらに好ましい包装適性や耐熱性を備えることになる。
【0019】
本発明の生分解性ラップフィルムは、乳酸系樹脂及び可塑剤を含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として製造することができ、その場合好ましくは、乳酸系樹脂組成物は乳酸系樹脂と可塑剤とを60:1〜99:1の質量割合で含有するものが好ましい。さらにその際、上記物性を備えた生分解性ラップフィルムの製造条件下では、L−乳酸からなるホモポリマーのような結晶化度の高い乳酸系樹脂を原料とすると可塑剤のブリードアウトが生じやすいため、L−乳酸からなるホモポリマーに比べて結晶化度の低い乳酸系樹脂を原料として使用するのが好ましい。
【0020】
なお、本発明が特定する数値範囲の上限値及び下限値から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている可能性があり、その場合も本発明の範囲に包含されるものとなる。
【0021】
また、本発明において「主成分とする」とは、その成分(2成分以上の場合にはその合計)が組成物中で50質量%、特に70質量%以上を占める成分である意である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例及び比較例の動的貯蔵弾性率を示すグラフである。
【図2】実施例及び比較例の損失正接(tanδ)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の一実施形態に係る生分解性ラップフィルムは、乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する生分解性ラップフィルムであって、
A−1:JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、
A−2:100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、
B−1:損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とするものである。
貯蔵弾性率の値に関しては、上述のように次の条件(A−1〜2)を備えていることが重要であり、さらに条件(A−3〜5)を備えているのが好ましい。
(A−1)
JIS K−7198 A法(ISO6721−4に相当)記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa以上であれば、ラップフィルムが適当な腰を備えるため、フィルムをカットする際に幅方向にうまく裂くことができる。また、変形に対する応力が小さ過ぎることもないため、容器等にオーバーラップする際にフィルムが局所的に伸びることがなくうまく包装することができる。他方、40℃における貯蔵弾性率の値が3GPa以下であれば、フィルムが硬過ぎることがなく適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができる。
【0024】
このような観点から、この値は200MPa以上であるのがさらに好ましく、なかでも300MPa以上であるのが特に好ましい。また、上限値としては1000MPa以下であるのがさらに好ましく、なかでも900MPa以下であるのが特に好ましい。
(A−2)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa以上であれば、電子レンジで加熱した際、フィルムが加熱されて柔軟化し過ぎることがなく、容器や食品に密着し過ぎることもないし、また、フィルム自体が溶けて穴があくこともない。他方、100℃における貯蔵弾性率の値が500MPa以下であれば、常温での貯蔵弾性率が高過ぎることがないから、常温でラップする際に延びにくかったり、容器等の形状に沿ってうまく包装できないなど、常温での包装適性が問題になることがない。
【0025】
このような観点から、この値は50MPa以上であるのがさらに好ましく、特に60MPa以上であるのが好ましい。また、上限値としては400MPa以下であるのがさらに好ましく、特に300MPa以下であるのが好ましい。
(A−3)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率の値は1GPa〜4GPaであるのが好ましい。この値は、主にフィルムの腰に影響する指標である。柔軟性フィルムは、家庭用の小巻ラップフィルムと業務用の包装フィルムとに大別され、前者の場合には、室温(20℃付近)で柔らか過ぎると、フィルムをノコギリ刃で幅方向にうまく引き裂くことができず、伸びてしまったり、或いは斜め方向に引き裂けたりすることがあるため、室温(20℃付近)で適当な硬さ(腰)が要求される。20℃における貯蔵弾性率の値がかかる範囲内であれば、フィルムが硬すぎることがなく、適度に伸びるため、容器等の形状に沿ってうまく包装することができる。
【0026】
他方、業務用の包装フィルムは室温(20℃付近)での柔軟性が要求されるため、業務用の包装フィルムの20℃における貯蔵弾性率は一般的に200MPa〜800MPaである。
(A−4)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した60℃における貯蔵弾性率の値は100MPa〜800MPaであるのが好ましい。この値は主にフィルムの剛性、腰、フィルムの形状維持に影響する指標であるから、60℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜800MPaにあれば、フィルムが柔軟化し過ぎることがなく、自重で垂れるような現象も起こらないので容器や食品に密着し過ぎることもない。このような観点から、この値は110MPa以上であるのがさらに好ましく、特に150MPa以上であるのが好ましい。また、400MPa以下であるのがさらに好ましく、特に300MPa以下であるのが好ましい。
(A−5)
JIS K−7198 A法記載の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した120℃における貯蔵弾性率の値は1MPa以上であるのが好ましい。貯蔵弾性率が1MPa以下になるとフィルムが柔軟化し過ぎて、容器等を包装した場合に静止した状態でおくとフィルムが容器に粘着することがある。120℃における貯蔵弾性率が1MPa以上であれば、フィルムが柔軟化し過ぎることがなく、例えば容器に入れた油物を電子レンジで温める際に該フィルムで容器を包装した場合でもフィルムが容器に粘着することがない。
損失正接に関しては、上述のように次の条件(B−1)を備えていることが重要であり、さらに条件(B−2)を備えているのが好ましい。
(B−1)
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hzにて測定した損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にある必要がある。
【0027】
損失正接(tanδ)のピーク値は、力が加わった場合の変形の遅れを示す物性であり、応力緩和挙動を示すパラメータの一つである。すなわち、損失正接の値が小さいと応力緩和が速く、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こり、逆に損失正接の値が大きいと応力緩和が遅く、フィルムの変形に対する復元挙動が遅くなる。
【0028】
本実施形態のラップフィルムの当該ピーク値が0.1以上であれば、フィルムの変形に対する復元挙動が瞬間的に起こることがないから、例えばフィルムを伸ばしてオーバーラップする場合に伸ばす力を取り除いた瞬間に元に戻ってしまうことがなく、皺なく綺麗に包装することができる。他方、0.8以下であれば、復元挙動が遅過ぎることがないため、普通に使っている分には塑性的な変形を示すことがない。
(B−2)
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hzにて測定した20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以下の範囲にあるのが好ましい。この値は主にフィルムの包装適性に影響する指標である。日本の家庭の平均気温は20℃付近であることが多く、20℃における損失正接の値が0.5以下であれば皺無く綺麗に包装することができる。
本実施形態の生分解性ラップフィルムは、さらに次の条件(C−1、D−1)を備えているのが好ましい。
(C−1)
フィルム中の乳酸系樹脂成分の結晶化熱量ΔHcと融解熱量ΔHmとの差(ΔHm−ΔHc)、詳しくはJIS K−7121(ISO3146に相当)に従って、示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフイルムを昇温したときの全結晶を融解するのに必要な融解熱量ΔHmと、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が10J/g以上、特に12J/g以上、なかでも特に15J/g以上であるのが好ましい。
【0029】
ΔHm−ΔHcが10J/g以上であれば、生分解性フィルムは所望の相対結晶化度に到達し、好ましい包装適性や耐熱性を有することになる。
【0030】
ΔHmは、所定の昇温速度でフイルムを昇温したときの全結晶を融解させるのに必要な結晶融解熱量であり、ΔHcは、所定の昇温速度でフィルムを一次昇温したときの昇温過程で生じる結晶化の際に発生する熱量である。△Hm−△Hcは、フィルム中の乳酸系樹脂の結晶化度を示し、△Hm−△Hcが大きいほど中の乳酸系樹脂の結晶化度が高いことを示す。
(D−1)
ラップフィルムのMD方向(引取方向)に対するTD方向(MD方向の垂直方向)の引張応力比(σMD/TD)が、伸び率200%までの範囲において0.4〜2.5の範囲にあるのが好ましく、0.5〜2.0の範囲にあるのがさらによい。0.4〜2.5の範囲内であれば、生分解性フィルムで角張った包装体を包装してもコーナー付近に皺が入り難い。
(本実施形態の生分解ラップフィルムの組成)
本実施形態の生分解ラップフィルムは、乳酸系樹脂及び可塑剤を含有する乳酸系樹脂組成物を主成分として含有する。必要に応じて、さらに生分解性を備えたその他の樹脂成分を主成分として配合することもできる。
(乳酸系樹脂)
本実施形態に用いられる乳酸系樹脂は、構造単位がL−乳酸からなるホモポリマーであるポリ(L−乳酸)、D−乳酸からなるホモポリマーであるポリ(D−乳酸、L−乳酸及びD−乳酸の両方を構造単位とする共重合体であるポリ(DL−乳酸)のいずれか、或いはこれらのポリマーブレンドを用いることができる。
[0031] ただし、本実施形態の生分解ラップフィルムを製造する条件下では、ポリ(L−乳酸)のような結晶性の高いポリマーを原料に使用すると可塑剤のブリードアウトを生じ易いことが判明している。そこで、少なくともポリ(L−乳酸)よりも結晶性の低い乳酸系樹脂が好ましい。例えばポリ(DL−乳酸)、又は、ポリ(DL−乳酸)とポリ(L−乳酸)或いはポリ(D−乳酸)とのポリマーブレンド体などである。
[0032] ポリ(DL−乳酸)におけるDL構成比としては、例えばL体:D体=100:0〜85:15、若しくはL体:D体=0:100〜15:85であるのが好ましく、より好ましくは、可塑剤のブリードアウトの観点から、少なくとも後述する実施例4〜6で用いたL体:D体=88:12よりも結晶性が低い組成、すなわちL体:D体=88:12〜85:15、若しくはL体:D体=12:88〜15:85である。
なお、本発明においてホモポリマーとは、理想的にはL−乳酸又はD−乳酸が100%からなるポリマーであるが、重合に際し不可避的に異なる乳酸が含まれる可能性があるため、本発明ではL−乳酸又はD−乳酸を98%以上含むものをホモポリマーと呼ぶ。
【0033】
また、本実施形態に用いられる乳酸系樹脂は、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれかの乳酸と、α−ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸のいずれかとの共重合体であってもよい。
【0034】
この際、α―ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0035】
また、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0036】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等が挙げられる。
【0037】
乳酸系樹脂の重合法としては、縮重合法、開環重合法、その他の公知の重合法を採用することができる。
【0038】
例えば、縮重合法では、L−乳酸又はD−乳酸、或いはこれらの混合物を直接脱水縮重合して任意の組成を持った乳酸系樹脂を得ることができる。
【0039】
開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸系重合体を得ることができる。この際、ラクチドにはL−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、或いはL−乳酸とD−乳酸とからなるDL−ラクチドを用いることができ、これらを必要に応じて混合して重合することにより任意の組成、結晶性をもつ乳酸系樹脂を得ることができる。
【0040】
なお、本実施形態に用いられる乳酸系樹脂には、耐熱性を向上させるなどの必要に応じ、少量共重合成分として、テレフタル酸のような非脂肪族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールなどを加えてもよい。
【0041】
また、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを加えてもよい。
【0042】
本実施形態に用いられる乳酸系樹脂の質量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。5万以上の分子量であれば好適な実用物性が期待でき、40万以下であれば、溶融粘度が高すぎて成形加工性が劣るという問題もない。
【0043】
乳酸系樹脂の代表的なものとしては、三井化学製レイシアシリーズ、カーギル・ダウ製Nature Worksシリーズなどが挙げることができる。
(乳酸系樹脂以外の樹脂成分)
本実施形態の生分解ラップフィルムに用いる乳酸系樹脂組成物には、上述のように、必要に応じて生分解性を備えた脂肪族ポリエステル、生分解性を備えた芳香族ポリエステル、或いは生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステル等をポリマーブレンドしてもよい。
(生分解性を備えた脂肪族ポリエステル)
乳酸系樹脂以外の生分解性を備えた脂肪族ポリエステルとしては、例えば、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合して得られる脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル等を挙げることができる。
【0044】
上記「脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル」には、脂肪族ジオールであるエチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールのいずれか或いはこれらのうちの二種類以上の組み合せからなる混合物と、脂肪族ジカルボン酸であるコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカン二酸等のいずれか或いはこれらのうちの二種類以上の組み合せからなる混合物とを縮合重合して得られる脂肪族ポリエステルを用いることができる。必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップさせて得られるポリマーを用いることもできる。
【0045】
この脂肪族ポリエステルの質量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。
【0046】
具体的な例としては、昭和高分子社製ビオノーレシリーズ、イレケミカル社製EnPolなどが挙げられる。
【0047】
上記「環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル」には、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等のいずれか或いはこれらのうちの二種類以上の組合せからなる成分を重合したものを用いることができる。
【0048】
この脂肪族ポリエステルの質量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。
具体的な例としては、ダイセル化学工業社製セルグリーンシリーズが挙げられる。
【0049】
上記「合成系脂肪族ポリエステル」には、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等との共重合体等を用いることができる。
【0050】
この脂肪族ポリエステルの質量平均分子量の好ましい範囲は、5万から40万、より好ましくは10万から25万である。
(生分解性を備えた芳香族ポリエステル)
生分解性を備えた芳香族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール成分からなる生分解性を有する芳香族ポリエステルを用いることができる。
【0051】
この際、芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、「脂肪族ジオール」としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0052】
なお、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分或いは脂肪族ジオール成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0053】
本実施形態において、最も好適に用いられる芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、脂肪族ジカルボン酸成分はアジピン酸であり、脂肪族ジオール成分は1,4−ブタンジオールである。
(生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステル)
生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、および脂肪族ジオール成分からなる生分解性を有する芳香族脂肪族ポリエステルを挙げることができる。
【0054】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸等が挙げられ、脂肪族ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。なお、芳香族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0055】
以上の中でも最も好適に用いることができる芳香族ジカルボン酸成分はテレフタル酸であり、脂肪族ジカルボン酸成分はアジピン酸であり、脂肪族ジオール成分は1,4−ブタンジオールである。
【0056】
なお、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールからなる脂肪族ポリエステルは生分解性を有することが知られているが、芳香族脂肪族ポリエステルにおいて生分解性を発現させるためには芳香環の合間に脂肪族鎖が存在することが必要である。そのため、本実施形態に用いられる生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステルの芳香族ジカルボン酸成分は、50モル%以下にすることが好ましい。
【0057】
乳酸系樹脂以外の生分解性を備えた芳香族脂肪族ポリエステルの代表的なものとしては、ポリブチレンアジペートとテレフタレートの共重合体(BASF社製エコフレックス)やテトラメチレンアジペートとテレフタレートの共重合体(EasmanChemicals製EastarBio)などが挙げることができる。
【0058】
なお、耐衝撃性及び耐寒性の改良効果の観点から、上記の脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は0℃以下であるのが好ましく、その配合量は30質量%以下となるようにするのがよい。
(可塑剤)
可塑剤は、乳酸系樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させ軟質化させる機能を備えたものであるが、本実施形態で用いる可塑剤として、乳酸系樹脂との相溶性や生分解性の観点から、下記(A)〜(I)に示す化合物の中から選ばれる1種或いは2種類以上の組み合わせからなるものが好ましく、なかでも特に下記(F)が好ましい。
(A)H5C3(OH)3−n(OOCCH3)n(但し、0<n≦3)
これは、グリセリンのモノアセテート、ジアセテート又はトリアセテートであり、これらの混合物でも構わないが、nは3に近い方が好ましい。
(B)グリセリンアルキレート(アルキル基は炭素数2〜20、水酸基の残基があってもよい)
例えば、グリセリントリプロピオネート、グリセリントリブチレート等が挙げられる。
(C)エチレングリコールアルキレート(アルキル基は炭素数1〜20であり、水酸基の残基があってもよい)。
【0059】
例えば、エチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(D)エチレン繰り返し単位が5以下のポリエチレングリコールアルキレート (アルキル基は炭素数1〜12、水酸基の残基があってもよい)。
【0060】
例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
(E)脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20)
例えば、ステアリン酸ブチル等が挙げられる。
(F)脂肪族ジカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)、中でも数平均分子量100〜2000のものが好ましい。具体的には、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート等が挙げられる。
(G)脂肪族トリカルボン酸アルキルエステル(アルキル基は炭素数1〜20、カルボキシル基の残基があってもよい)。
【0061】
例えば、クエン酸トリメチルエステル等が挙げられる。
(H)質量平均分子量2万以下の低分子量脂肪族ポリエステル
例えば、コハク酸とエチレングリコール/プロピレングリコール縮合体(大日本インキ(株)によって「ポリサイザ−」の商品名で販売されている)等が挙げられる。
(I)天然油脂及びそれらの誘導体
例えば、大豆油、エポキシ化大豆油、ひまし油、桐油、菜種油等が挙げられる。
【0062】
上記乳酸系樹脂組成物中の乳酸系樹脂と可塑剤との混合比率は、質量比で乳酸系樹脂:可塑剤=60〜99:40〜1が好ましく、特に70〜90:30〜10が好ましい。
【0063】
可塑剤の量が、乳酸系樹脂:可塑剤=99:1よりも多ければ、ラップフィルムとして必要な程度に軟質化することができる。他方、乳酸系樹脂:可塑剤=60:40よりも少なければ、溶融押出時に粘度が下がり過ぎたり、ブリードアウト等の経時的な問題を生じることがない。
【0064】
上記生分解性ラップフィルムを構成する乳酸系樹脂組成物には、上記の乳酸系樹脂組成物のほかに、必要に応じて、この発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、抗酸化剤、粘着剤、防曇剤、UV吸収剤、光安定剤、顔料、着色剤、滑剤、加水分解防止剤、消匂剤などの添加剤を処方することができる。
【0065】
本実施形態にかかる生分解性ラップフィルムは、例えば溶融押出によるフィルム成形法によって製造することができる。
【0066】
フィルム原料とする組成物は、予め同方向2軸押出機、ニーダー、ヘンシェルミキサーなどを用いてプレコンパウンドしても構わない。各原料をドライブレンドした後、直接フィルム押出機に投入しても構わない。可塑剤等の液状成分は、固体成分とは別にポンプ等を用いて押出機のベントロから注入することもできる。
【0067】
フィルム原料となる組成物を溶融して押出した後は、例えばキヤステイングドラム上で急冷してフイルムを成形し、フィルム成形後一定時間熱を加える処理を施すようにすればよい。必要に応じて、フィルム成形後加熱縦延伸ロールを用いて縦延伸したり、必要に応じてテンターを用いて延伸したりしてもよい。また、キャスト法以外に、インフレーション法、延伸法を採用することもできる。
【0068】
上記製造方法において、本実施形態が要求する物性、すなわち周波数10Hz、ひずみ0.1%にて動的粘弾性測定法により測定した20℃、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃における貯蔵弾性率、ΔHm−ΔHc、並びに損失正接(tanδ)のピーク値を上記範囲に調整するには、乳酸系樹脂組成物の組成(例えばLD比)、可塑剤の種類、乳酸系樹脂組成物と可塑剤の配合比率、成形加工条件、特にフィルム成形後の加熱条件の組合わせよって調整することができる。
【0069】
フィルム成形後に熱を加える処理は、用いる乳酸系樹脂の種類に応じて適切な条件を選択して行い、この処理によってフィルム結晶化度を高めてΔHm−ΔHcを10J/g以上、特に20J/g以上にするのが好ましい。
ポリ(DL−乳酸)などの結晶化度の低い乳酸系樹脂を原料に用いた場合、フィルム成形後、所定の温度で6時間以上養生するのが好ましい。この際、養生温度はJIS K−7121に従って示差走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間とする必要がある。好ましくは、当該ガラス転移温度よりも30℃以上高い温度で12〜24時間、さらに好ましくは当該ガラス転移温度よりも35〜40℃高い温度で12〜24時間保管し養生する。すなわち、結晶化度の低い乳酸系樹脂の場合は、穏やかな条件で時間をかけて結晶化度を高める必要がある。
【0070】
その一方、ポリ(DL−乳酸)とポリ(L−乳酸)或いはポリ(D−乳酸)とのポリマーブレンドの場合には、上記の如き養生によって結晶化度を高めることも可能であるが、ポリ(DL−乳酸)に比べて結晶化度が高いため、高温・短時間で加熱処理しても結晶化度を所定範囲に高めることができる。この際の加熱処理条件としては、例えば60〜120℃で1〜200秒、70〜110℃で2〜30秒、80〜100℃で3〜20秒の加熱処理も可能である。この際、加熱方法としては、直接加熱以外に、高周波や超音波などのエネルギー波での加熱方法を採用することもできる。
【0071】
なお、ΔHm−ΔHcを増大させるためには、延伸倍率を上げて配向結晶化を促進することも可能であるが、電子レンジ向けのラップフィルムの使用用途を考えると養生或いは加熱処理によって結晶化度を高めるのが好ましい。
【0072】
引張応力比(σMD/TD)を上記範囲に調整するためには、インフレーション法においては、引取り速度とブロー比が重要であり、ブロー比を1.2〜5.0の範囲にすることが好ましい。また、キャスト法においては、押出引落し率を1.0〜10.0にすることが好ましい。また、延伸法においては、縦延伸倍率を1.5〜5.0に、横延伸倍率を2.0〜6.0にすることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0074】
フィルムのMD方向とは引取り方向(流れ方向)、TD方向とは当該MD方向の直角方向(幅方向)を示す。
【0075】
なお、実施例及び表1に示す測定値は、次に示すような条件で測定を行い算出した。
<動的粘弾性測定>
JIS K−7198 A法(ISO6721−4に相当)に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製粘弾性スペクトロレオメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、ひずみ0.1%、温度20℃及び0℃で、シート状物のMD方向について測定した。
<ΔHm−ΔHc>
パーキンエルマー社製示差走査熱量測定装置(DSC−7)を用い、JIS K−7121(ISO3146に相当)に基づいて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときの昇温測定を行い、得られたサーモグラムより結晶化に伴う発熱量(ΔHc:J/g)と結晶の融解に伴う吸熱量(ΔHm:J/g)の差より算出した。
<引っ張り応力比(σMD/TD)>
フィルムのMD方向とTD方向について、JIS K−7113に準じて引張速度200mm/分で引張試験を行い、MDの応力(Pa)をTDの応力(Pa)で除すことにより算出した。
<カット性>
フィルムを紙筒に巻いて市販のノコギリ刃付きのカートンケースに入れ、フィルムをカートンケースから引き出してノコギリ刃カット性を評価した。
【0076】
評価基準はカット性が良いものを○、カットできるがカット性がやや劣るものを△、フィルムが伸びてカット性が良くないものを×とした。
<耐熱性>
陶磁器製の皿にエビの天ぷら(長さ16mm程度)2尾を入れ、フィルム包装し、500Wの電子レンジに入れて3分間加熱し、熱による破れ具合を観察し、以下の基準で評価した。
[0077] ○:穴があかなかった。
[0078] △:少し穴があいたり、変形したが、使用上問題の無いレベルであった。
[0079] ×:大きな穴があいたり、大きな変形をし、使用上問題となるレベルであった。
<包装適性>
陶磁器製の皿にフィルムを包装した場合の包装適性を、以下の基準で評価した。
[0080] ○:適度に包装できるレベル。
[0081] △:少し皺が入るが実用上問題の無いレベル。
[0082] ×:フィルムが容器に沿わず広がってしまい実用上問題となるレベル。
【0083】
[表1]
(参考例1)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2(表中のTEC)、分子量270、SP値11.46[fedors法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例2)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedors法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例3)
L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedors法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例1)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedors法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例2)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedors法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(実施例3)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedors法])を質量比で7wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例4)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20万)とを、4031D:4050=50wt%:50wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedors法])を質量比で40wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
(参考例5)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、L体:D体=95:5のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4050(分子量20)と、L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)とを、4031D:4050:4060=45wt%:45wt%:10wt%でドライブレンドし、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedors法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した後、60℃にて24時間養生させた。
<ブリード促進試験>
上記実施例1〜3及び参考例1〜5で得られたフィルムについて次のようなブリード促進試験を行った。すなわち、MD方向10cm、TD方向10cmのフィルムを、40℃、40%RH雰囲気中に30日間放置し、フィルム表面への可塑剤の浮き出しの有無を目視で確認した。
【0084】
その結果、参考例1,2及び4に比べ、実施例1,2,3、参考例3及び5が優れていた。その中でも実施例1、2、3は全くブリードが確認されず特に優れていた。
(比較例1)
L体:D体=99:1のポリ(L−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4031D(分子量20万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてクエン酸トリエチル(森村商事製シトロフレックス2、分子量270、SP値11.46[fedors法])を質量比で30wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
【0085】
結晶化度が低く、40℃での弾性率が20.8MPaと低く、カット性に劣り、耐熱性評価では少し穴が空いたが実用上問題ないレベルのフィルムとなった。
(比較例2)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedors法])を質量比で10wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
【0086】
本フィルムは40℃での弾性率が350MPaとなり、カット性はやや劣るものの実用上問題ないレベルであったが、全く結晶化してないため100℃での弾性率は1MPa以下となり、耐熱性評価では大きな穴があき、さらに陶磁器や天ぷらにフィルムが粘着する結果となった。
(比較例3)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedors法])を質量比で15wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
【0087】
本フィルムは40℃での弾性率が11.6MPaと低く、カット性に劣るフィルムであった、また、100℃での弾性率は、結晶化していないため12.9MPaと低く、耐熱性評価では大きな穴が開くフィルムとなった。
(比較例4)
L体:D体=88:12のポリ(DL−乳酸)であるカーギルダウ社製乳酸系樹脂NatureWorks4060(分子量19万)と、滑剤としてステアリン酸アルミニウム0.1phrを混合し、三菱重工製40mmΦ小型同方向2軸押出機を用いて、ベントロより可塑剤としてアジピン酸エステル(旭電化製 PX−884、分子量650、SP値11.3[fedors法])を質量比で7wt%注入しながら、190℃、200rpmにて溶融して押出し、キャスト法にて温度200℃で10μmのフィルムを成形した。
【0088】
本フィルムは40℃での弾性率が1.6GPaと高く、カット性に優れるが、100℃での弾性率は、結晶化していないため19.6MPaと低く、耐熱性評価では大きな穴が開くフィルムとなった。
Claims (5)
- L体とD体の比率が88:12〜85:15若しくは12:88〜15:85であるポリ(DL−乳酸)と可塑剤とからなる乳酸系樹脂組成物を主成分として含有し、かつ結晶核剤を含有しない生分解性ラップフィルムであって、
JIS K−7121に従って示差熱走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときのガラス転移温度と、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量のピーク温度との間の温度で養生してなることを特徴とし、かつ、
JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した40℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜3GPaの範囲にあり、100℃における貯蔵弾性率の値が30MPa〜500MPaの範囲にあり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.1〜0.8の範囲にあることを特徴とする生分解性ラップフィルム。 - JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した20℃における貯蔵弾性率の値が1GPa〜4GPaの範囲にあり、20℃における損失正接(tanδ)の値が0.5以下であることを特徴とする請求項1記載の生分解性ラップフィルム。
- JIS K−7198 A法の動的粘弾性測定法により、周波数10Hz、ひずみ0.1%にて測定した60℃における貯蔵弾性率の値が100MPa〜800MPaの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の生分解性ラップフィルム。
- 乳酸系樹脂組成物は、乳酸系樹脂と可塑剤とを60:1〜99:1の質量割合で含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性ラップフィルム。
- JIS K−7121に従って示差走査型熱量計を用いて昇温速度10℃/分でフィルムを昇温したときの全結晶を融解するのに必要な融解熱量ΔHmと、昇温中の結晶化に伴い発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm−ΔHc)が、10J/g以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性ラップフィルム。
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