従来から、振動伝達系を構成する二つの部材間に介装されて、それら二つの部材を連結する防振連結体の一種として、防振連結されるべき部材のうちの一方に取り付けられる軸部材と、そのような軸部材の周りに、その軸直角方向外方に所定距離を隔てて配されて、二つの部材のうちの他方に取り付けられる外筒部材とが、それらの間に介装された本体ゴム弾性体にて連結されてなる構造の筒型防振装置が、知られている。また、近年では、防振装置の軽量化や低コスト化等のために、外筒部材の樹脂化が検討され、実際に、合成樹脂製の外筒部材を有する筒型防振装置が、例えば、自動車用のエンジンマウントやトルクロッドの取付ブッシュ等に用いられてきている。
ところで、この種の筒型防振装置においては、特許文献1等に明らかにされる如く、一般に、本体ゴム弾性体が、軸部材の周りに、その軸直角方向外方に離間配置された筒部と、軸部材の外周面に加硫接着されて、軸部材と筒部とを連結する連結部とを一体的に有する一体加硫成形品にて構成されて、かかる一体加硫成形品が、樹脂製の外筒部材の内周面に固着されている。また、そのような一体加硫成形品(本体ゴム弾性体)の筒部と連結部との間に、軸方向に貫通して延びる空所が設けられると共に、ストッパ部が、かかる空所内において、外筒部材側から軸部材側に向かって軸直角方向に突出せしめられた状態で、筒部に一体形成されている。
このような構造を有する従来の筒型防振装置では、空所の存在によって、本体ゴム弾性体の軸直角方向のばね特性が柔らかくされており、また、外筒部材と軸部材の軸直角方向における相対的変位量が、軸部材の外周面に加硫接着された連結部とストッパ部との当接により規制され、それによって、筒型防振装置にて防振連結される二つの部材の間で過大な変位が生ずることが、防止され得るようになっている。
そして、かかる筒型防振装置にあっては、外筒部材からのストッパ部の突出高さが適宜に変更されて、外筒部材と軸部材の軸直角方向における過大な相対的変位時に互いに当接せしめられるストッパ部の突出先端面と連結部の外面との間の軸直角方向での距離、所謂ストッパクリアランスが種々変えられることにより、本体ゴム弾性体の軸直角方向のばね特性や、外筒部材と軸部材の軸直角方向における相対的変位の規制量等がチューニングされ、以て、防振連結されるべき部材の種類や大きさ等に応じて、必要とされる防振特性やストッパ効果が確保されるようになっているのである。
そして、従来では、様々な種類や大きさの部材同士を防振連結するのに用いられる複数種類の筒型防振装置、つまり、防振特性やストッパ効果が互いに異なる複数種類の筒型防振装置を製造する場合に、通常、本体ゴム弾性体の形状が同じで、ストッパ部の突出高さのみが互いに異なる一体加硫成形品が、筒型防振装置の種類に対応して、それぞれ製作されることが多くあった。そして、そのような防振特性やストッパ効果が互いに異なる複数種類の筒型防振装置は、比較的に、個々の種類毎の流動数が少なく、多品種少量生産となるのが一般的である。そのため、かかる複数種類の筒型防振装置の製造の際に、本体ゴム弾性体の形状が同じで、且つストッパ部の突出高さのみが互いに異なる一体加硫成形品も、多数の種類のものが、それぞれ少量ずつ製作されていた。それ故、従来においては、防振特性やストッパ効果が互いに異なる複数種類の筒型防振装置の製造時に、本体ゴム弾性体とストッパ部とを一体的に有する一体加硫成形品を製作する上において、成形金型の製作費や生産時の段替え工数が不可避的に増大し、その結果、生産効率が低下することが避けられなかった。そして、それによって、筒型防振装置の製造コストの高騰と生産効率の低下とが惹起されていたのである。
また、従来の筒型防振装置にあっては、一般に、軸部材の外周面に加硫接着された本体ゴム弾性体とストッパ部とからなる一体加硫成形品の加硫成形時に、空所、所謂ストッパクリアランスが形成される。この際、金型の強度上の理由から、ストッパクリアランスを十分に小さくすることが困難で、ましてや、ストッパクリアランスをゼロとすること、つまり連結部とストッパ部とを互いに接触させた状態とすることは、到底、不可能であった。それ故、本体ゴム弾性体の軸直角方向のばね特性と、ストッパ部による外筒部材と軸部材の変位量規制特性とが、制限された範囲の中でしかチューニングされ得なかったのである。
かかる状況下、特許文献2には、軸部材の外周面に加硫接着された本体ゴム弾性体が、合成樹脂製の外筒部材の内周面に固着されると共に、本体ゴム弾性体とは別個の独立したゴム部材からなる二つのストッパ部材が、外筒部材の内側において、軸部材を間に挟んだ両側に設けられる空所を隔てて配置された状態で、外筒部材の内周面に固着されてなる構造の筒型防振装置が、明らかにされている。
このような構造を有する筒型防振装置にあっては、例えば、共通化された単一種類の本体ゴム弾性体と共に、ストッパ部材として、厚さ(筒型防振装置に装着された状態下での外筒部材からの突出高さに相当する寸法)が互いに異なる各種のストッパ部材の中から適宜に選択されたものを用いることによって、ストッパクリアランスの大きさを、使用されるストッパ部材の厚さに応じて、容易に且つ任意に設定することが出来る。それ故、ストッパクリアランスが、小さな寸法であっても、或いはゼロであっても、所望の寸法で有利に確保され、以て、必要とされる防振特性やストッパ効果が、有効に発揮され得ることとなる。
そして、かくの如き構造によれば、防振特性やストッパ効果が互いに異なる複数種類の筒型防振装置を製造する際に、共通化された単一種類の本体ゴム弾性体の幾つかと、厚さが互いに異なる多数種類のストッパ部材とが、互いに別個に製作される。そのため、複数種類の筒型防振装置の製造に際して、本体ゴム弾性体とストッパ部とを一体的に有する一体加硫成形品の多数種類を、その種類の数に応じた数だけ、大型の成形金型を用いて製作する必要がある従来構造とは異なって、ストッパ部材のみを、製造されるべき防振装置の種類の数に応じた数だけ、比較的に小型の成形金型を用いて製作するだけで済む。そして、それによって防振特性やストッパ効果が互いに異なる複数種類の筒型防振装置を製造する際における一つ一つの筒型防振装置の製造コストが、有利に低く抑えられ得ると共に、その生産効率も効果的に高められ得るのである。
ところが、かかる従来の筒型防振装置にあっては、軸部材の外周面に加硫接着された本体ゴム弾性体と二つのストッパ部材とが、それらの間に空所が形成されるように、成形金型内の所定位置にセットされた後、溶融樹脂が、成形キャビティ内に射出等により充填され、固化せしめられて、外筒部材が成形されると同時に、かかる外筒部材の内周面に、本体ゴム弾性体と二つのストッパ部材とが固着されることにより製造されるようになっている。そのため、そのような製造作業の実施に際して、予め設定された大きさのストッパクリアランスが確保されるように、本体ゴム弾性体と各ストッパ部材とを、一つずつ、互いに離間させた状態で、正確に位置決めしつつ、成形金型内にセットしなければならず、しかも、そのような本体ゴム弾性体と二つのストッパ部材の成形金型内へのセット作業の前に、それら三つの部材の一つ一つに対して、各部材を樹脂製の外筒部材と接着させるための接着剤を塗布する接着処理作業をも行う必要があった。それ故、かくの如き従来の筒型防振装置においては、その製造時の作業工数が多くなって、製造作業の全体が極めて煩雑なものとなってしまうことが避けられなかったのである。
特開2003−200531号公報
特開平7−167185号公報
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に従う筒型防振装置の一実施形態としての自動車のエンジンマウントが、その横断面形態において示され、また、図2には、かかるエンジンマウントの縦断面形態が示されている。それらの図において、エンジンマウント10は、軸部材としての内筒金具12と、この内筒金具12の周りに径方向(軸直角方向)外方に所定距離を隔てて且つ所定量だけ偏心して位置せしめられた外筒部材14とを有し、更に、それら内筒金具12と外筒部材14とが、それらの間に介装された本体ゴム弾性体16によって、弾性的に連結されてなる構造とされている。
なお、本実施形態のエンジンマウント10においては、防振連結されるべき二つの部材たる、図示しないボデーとパワーユニットのうちの何れか一方に、内筒金具12が取り付けられる一方、それらボデーとパワーユニットのうちの何れか他方に、外筒部材14が取り付けられ、主として、図1において上下方向となる径方向(軸直角方向)に入力される振動荷重に対して、目的とする防振特性が発揮され得るようになっている。
より詳細には、内筒金具12は、厚肉の小径円筒形状を有しており、その内孔18内に、図示しない枢軸(例えば、取付ボルト等)が挿通されて、ボデー又はパワーユニットに取り付けられるようになっている。
一方、外筒部材14は、例えば、繊維補強されたポリアミド樹脂等のように、入力荷重に耐え得る強度と剛性を有する合成樹脂材料を用いて形成されており、内筒金具12よりも短い軸方向長さとそれよりも大なる径を有する略厚肉円筒状の筒体部20と、この筒体部20の外周面上の二箇所に突設された略厚肉平板状の取付板部22,22とを一体的に有している。また、それら各取付板部22には、円筒形状を呈する金属製の取付スリーブ24が、板厚方向に延び、且つ取付板部22の厚さ方向両側の面において外方に開口する状態で、それぞれ埋設されている。かくして、外筒部材14が、二つの取付スリーブ24,24に挿通されたボルト等により、各取付板部22において、ボデー又はパワーユニットに取り付けられるようになっている。
そして、本実施形態では、そのような外筒部材14の筒体部20が、内筒金具12の径方向外方に所定距離を隔てて配されていると共に、これら外筒部材14の筒体部20と内筒金具12との間に、本体ゴム弾性体16が介装されているのである。なお、内筒金具12は、エンジンマウント10の自動車への装着状態下で、パワーユニット荷重が入力される方向とは反対の方向(図1における上方)に、外筒部材14の筒体部20の軸心から所定寸法だけ偏心して配されており、それによって、エンジンマウント10の自動車への装着時に、内筒金具12と外筒部材14の筒体部20との間にパワーユニット荷重が及ぼされた際に、内筒金具12と外筒部材14の筒体部20とが略同軸的に位置せしめられるようになっている。また、前記せるように、エンジンマウント10の自動車への装着状態下において、かかる内筒金具12と外筒部材14の筒体部20との間に対して、内筒金具12の略偏心方向に対応する径方向(図1における上下方向)に、主たる振動荷重が入力されるようになっている。
そして、本体ゴム弾性体16は、全体として、略厚肉円筒形状を有しており、その内周面に、内筒金具12が加硫接着された状態で、形成されている。即ち、ここでは、内筒金具12と本体ゴム弾性体16とが、一体加硫成形品26として、構成されている。
この一体加硫成形品26を構成する本体ゴム弾性体16には、図3及び図4から明らかなように、内筒金具12を主たる振動荷重の入力方向(内筒金具12の略偏心方向に対応する径方向)に挟んだ両側部分に位置して、それぞれ、本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通して延びる第一空所28と第二空所30とが、対称的に形成されている。第一空所28は、内筒金具12の偏心方向、つまり内筒金具12と外筒部材14の筒体部20との離間距離が小なる側において、本体ゴム弾性体16の周方向に略半周の長さで延びる略弓形状を有している。一方、第二空所30は、内筒金具12の偏心方向とは反対側の方向、つまり内筒金具12と外筒部材14の筒体部20との離間距離が大なる側において、内筒金具12側に位置する上底が、それとは反対側に位置する下底よりも短くされた略台形形状を有している。
かくして、ここでは、図1、図3、及び図4に示されるように、第一空所28と第二空所30との間に挟まれて位置する本体ゴム弾性体16の内周部分が、内筒金具12の外周面に加硫接着されて、内筒金具12と外筒部材14の筒体部20とを連結する連結部32とされている一方、第一及び第二空所28,30のそれぞれの外側壁部を構成する本体ゴム弾性体16の外周部分が、内筒金具12の周りに、その径方向(軸直角方向)外方に離間配置されて、外周面の全面において、外筒部材14の筒体部20の内周面に固着された筒部34として、構成されている。また、かかる連結部32が、内筒金具12側から外筒部材14の筒体部20側に向かって、偏心方向とは反対方向(図3における下方)に傾斜して延びる二つの梁状部分からなる略断面逆V字形状とされている。これにより、エンジンマウント10への振動荷重の入力時に、連結部32が、第一及び第二空所28,30内で剪断方向に弾性変形可能とされて、本体ゴム弾性体16の径方向(軸直角方向)のばね特性が柔らかくされている。
そして、図1及び図2に示されるように、本実施形態においては、特に、上記の如き構造を有して対称的に位置する本体ゴム弾性体16の第一空所28内と第二空所30内とに、連結部32の弾性変形を規制する第一ストッパ部36と第二ストッパ部38とが、それぞれ、特別な構造をもって設けられているのである。
すなわち、ここでは、図3及び図4より明らかな如く、本体ゴム弾性体16の筒部34の対称的に位置する周上の二箇所の部分、具体的には、内筒金具12の偏心方向に対応する径方向において、本体ゴム弾性体16の連結部32の内筒金具12を取り囲む部分を間に挟んで対向せしめられた筒部34の二つの対向部分が、内側に膨出されて厚肉化された第一厚肉部40と第二厚肉部42とされている。そして、第一厚肉部40には、第一貫通孔44が、また、第二厚肉部42には、第二貫通孔46が、それぞれ、各厚肉部40,42を厚さ方向に貫通して、形成されている。それら第一及び第二貫通孔44,46は、各厚肉部40,42の周方向長さよりも所定寸法だけ小さな幅と、各厚肉部40,42の軸方向長さよりも所定寸法だけ小さな長さとを有する矩形形状を有している。かくして、ここでは、第一空所28が、第一貫通孔44を通じて、また第二空所30が、第二貫通孔46を通じて、それぞれ外部に連通せしめられている。
また、それら第一及び第二貫通孔44,46の各内周面における筒部34の軸心側(内筒金具12側)に偏寄した部位には、断面矩形形状をもって所定高さで突出し且つ全周に亘って周方向に連続してのびる係合突条48が、それぞれ、一体形成されている。
そして、本実施形態においては、図1及び図2に示されるように、第一貫通孔44と第二貫通孔46とに対して、本体ゴム弾性体16と同一のゴム材料からなる第一ストッパ部形成部材50と第二ストッパ部形成部材52とが、それぞれ嵌合されている。
第一ストッパ部形成部材50は、図1、図2及び図5から明らかなように、全体として、断面が略ホームベース型の五角形とされた長手の厚板形態乃至はブロック形態を呈している。そして、その厚さ乃至は高さ方向(図2中の上下方向)の一方側部分が、略厚肉矩形板状の第一嵌合部54とされている一方、その他方側部分が、かかる第一嵌合部54から所定の高さで一体的に突出し、且つ先端に向かうに従って次第に狭幅化された、略三角柱状の第一ストッパ部36とされている。
また、そのような第一ストッパ部形成部材50にあっては、第一嵌合部54側(図5における上側)の端面が、本体ゴム弾性体16の筒部34の外周面と同一の径を有する円弧面とされており、更に、かかる円弧面とされた端面に隣り合う四つの側面からなる外周面に対して、矩形の係合溝56が、全周に連続して延びるように形成されている。この係合溝56は、その深さと幅が、本体ゴム弾性体16の筒部34の第一貫通孔44の内周面に突設された係合突条48が突入して、係合可能な大きさとされている。
そして、第一ストッパ部形成部材50においては、第一嵌合部54の厚さ(図5にTs1 にて示される寸法)が、本体ゴム弾性体16の筒部34における前記第一厚肉部40の厚さ(図3にTg1 にて示される寸法)と略同じ寸法とされており、また、第一嵌合部54からの第一ストッパ部36の最大突出高さ(図5にHs1 にて示される寸法)が、第一厚肉部40と、第一空所28を隔てて第一厚肉部40と対向する前記連結部32部分との間の最小距離(図3にHg1 にて示される寸法)よりも所定寸法だけ小なる大きさとされている。
一方、図1、図2及び図6から明らかなように、第二ストッパ部形成部材52も、全体として、断面が略ホームベース型の五角形とされた長手の厚板形態乃至はブロック形態を呈し、その厚さ乃至は高さ方向(図2中の上下方向)の一方側部分が、略厚肉矩形板状の第二嵌合部58とされている一方、その他方側部分が、かかる第二嵌合部58から所定高さで一体的に突出し、且つ先端に向かうに従って次第に狭幅化された、略三角柱状の第二ストッパ部38とされている。
また、そのような第二ストッパ部形成部材52にあっても、第一ストッパ部形成部材50と同様に、第二嵌合部58側(図5における上側)の端面が、本体ゴム弾性体16の筒部34の外周面と同一の径を有する円弧面とされていると共に、外周面に対して、前記係合突条48が突入して、係合可能な矩形の係合溝56が、全周に連続して延びるように形成されている。
さらに、第二ストッパ部形成部材52においては、第二嵌合部54の厚さ(図5にTs2 にて示される寸法)が、本体ゴム弾性体16の筒部34における前記第二厚肉部42の厚さ(図3にTg2 にて示される寸法)と略同じ寸法とされており、また、第二嵌合部58からの第二ストッパ部38の最大突出高さ(図5にHs2 にて示される寸法)が、第二厚肉部42と、第二空所30を隔てて第二厚肉部42と対向する前記連結部32部分との間の最小距離(図3にHg2 にて示される寸法)よりも所定寸法だけ小なる大きさとされている。
そして、図1及び図2に示されるように、第一ストッパ部形成部材50が、外筒部材14の筒体部20の内周面に固着された本体ゴム弾性体16の筒部34の第一貫通孔44を通じて、第一ストッパ部36を第一空所28内に突入させた状態で、第一嵌合部54において、第一貫通孔44に嵌合せしめられている。また、第二ストッパ部形成部材52も、本体ゴム弾性体16の筒部34の第二貫通孔46を通じて、第二ストッパ部38を第二空所30内に突入させた状態で、第二嵌合部58において、第二貫通孔46に嵌合せしめられている。更に、そのような嵌合状態下で、各ストッパ部形成部材50,52にそれぞれ設けられた係合溝56内に、第一貫通孔44と第二貫通孔46の各内周面に設けられた係合突条48がそれぞれ突入せしめられて、それら係合突条48と係合溝56とが互いに係合せしめられている。
これによって、第一ストッパ部36と第二ストッパ部38とが、第一空所28と第二空所30のそれぞれの内部において、内筒金具12の外周面に加硫接着された連結部32部分に対して、各ストッパ部36の各嵌合部54,58からの突出高さ:Hs1 ,Hs2 に応じた距離を隔てて対向するように位置決めされている。また、後述する如く、エンジンマウント10の製造時において、第一及び第二ストッパ形成部材50,52が、外筒部材14の筒体部20に固着される前の本体ゴム弾性体16(一体加硫成形品26)の第一及び第二貫通孔44,46にそれぞれ嵌合された際に、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52(第一及び第二嵌合部54,58)が、第一及び第二貫通孔44、46内から容易に離脱せしめられないようにされて、それら第一及び第二ストッパ部形成部材50,52(第一及び第二嵌合部54,58)の第一及び第二貫通孔44,46への嵌合状態が良好に維持されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、係合突条48と係合溝56とにて、係合機構が構成されている。
そして、そのようにして第一及び第二貫通孔44,46に嵌合された第一ストッパ形成部材50と第二ストッパ部形成部材52とが、第一嵌合部54と第二嵌合部58の円弧面とされた各端面の全面において、外筒部材14の筒体部20の内周面に固着されている。
かくして、本実施形態においては、第一ストッパ部36と第二ストッパ部38とが、第一空所28と第二空所30のそれぞれの内部において、外筒部材14の筒体部20側から内筒金具12側に向かって、主たる振動荷重の入力方向に対応した径方向に、各ストッパ部36,38の各嵌合部54,58からの突出高さ:Hs1 ,Hs2 と同一高さで突出して、設けられている。
そして、それによって、本実施形態のエンジンマウント10にあっては、主たる振動荷重の入力方向に対応した径方向(軸直角方向)における外筒部材14の筒体部20と内筒金具12との相対的変位量が、内筒金具12の外周面に加硫接着された連結部32部分と第一及び第二ストッパ部36,38との当接により規制され、以て、外筒部材14と内筒金具12とにそれぞれ取り付けられるボデーとパワーユニット(共に図示せず)との間で過大な変位が生ずることが、防止され得るようになっている。
また、ここでは、外筒部材14の筒体部20と内筒金具12との相対的変位の規制量となるストッパクリアランスのうち、第一空所28内のストッパクリアランスが、第一空所28を隔てて互いに対向する第一厚肉部40と連結部32との間の最小距離:Hg1 から、第一ストッパ部36の第一嵌合部54からの突出高さ:Hs1 を差し引いた大きさに設定されている一方、第二空所30内のストッパクリアランスが、第二空所30を隔てて互いに対向する第二厚肉部42と連結部32との間の最小距離:Hg2 から、第二ストッパ部38の第二嵌合部58からの突出高さ:Hs2 を差し引いた大きさに設定されている。
ところで、かくの如き構造を有する本実施形態のエンジンマウント10を製造する際には、例えば、以下の手順に従って、作業が進められることとなる。
すなわち、先ず、図3及び図4に示される如き構造を有する一体加硫成形品26を成形して、準備する。なお、この一体加硫成形品26は、例えば、本体ゴム弾性体16を構成する所定のゴム材料を用いると共に、内筒金具12をインサート品として用いた公知の射出成形を実施することによって、容易に成形される。
また、それとは別に、図5及び図6に示される如き構造を有する第一ストッパ部形成部材50と第二ストッパ部形成部材52とを、それぞれ成形して、準備する。これら第一及び第二ストッパ部形成部材50,52の成形に際しても、例えば、公知の射出成形等が、実施される。
次に、図7の(a)及び(b)に示される如く、上記のようにして準備された一体加硫成形品26における本体ゴム弾性体16の第一貫通孔44と第二貫通孔46とに、第一ストッパ部形成部材50と第二ストッパ部形成部材52とを嵌合させる。これにより、第一ストッパ部36と第二ストッパ部38とが、各貫通孔44,46を通じて、第一空所28内と第二空所30内とに突入せしめられた状態で、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52が一体加硫成形品26に組み付けられてなる組付体59を形成する。
なお、前述せるように、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52の第一及び第二貫通孔44,46への嵌合状態で、各ストッパ部形成部材50,52の外周面に設けられた係合溝56に、第一及び第二貫通孔44,46の内周面に設けられた係合突条48が係合せしめられて、かかる嵌合状態が良好に維持される。そのため、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52と一体加硫成形品26との組付状態も容易には解消されないようになっている。
また、上記のようにして組付体59が形成されると同時に、第一ストッパ部36の第一嵌合部54からの突出高さ:Hs1 や第二ストッパ部38の第二嵌合部58からの突出高さ:Hs2 に基づいて、第一空所28内や第二空所30内のストッパクリアランスのそれぞれの大きさが設定されるようになる。
次いで、かくして形成された組付体59の外周面の全面に対する接着処理作業を実施する。ここでは、かかる接着処理作業として、一体加硫成形品26(本体ゴム弾性体16)の筒部34の外周面の全面と、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52における第一及び第二嵌合部54,58の端面の全面とに対して、公知の接着剤を塗布する作業が、一作業の中で一挙に行われることとなる。
その後、図8の(a)に示されるように、外筒部材14の外面形状に対応する内面形状を有して、公知の射出成形金型60に形成された成形キャビティ62のうち、筒体部20の形成部分の内側に、組付体59の全体をセットする一方、取付板部22(図1参照)の形成部分に、別途準備された二つの取付スリーブ24,24をそれぞれセットする。また、このとき、組付体59における一体加硫成形品26(本体ゴム弾性体16)の第一空所28内と第二空所30内とに、それら各空所28,30に対応した形状を有するコア型63が、それぞれ収容位置せしめられる。
そして、それに引き続き、図8の(b)に示されるように、組付体59と二つの取付スリーブ24,24がセットされた成形キャビティ62内に、溶融樹脂材料64を射出、充填する。その後、かかる溶融樹脂材料64を、成形キャビティ62内で冷却、固化せしめて、外筒部材14を成形すると共に、この外筒部材14の筒体部20の内周面に、組付体59の外周面(筒部34の外周面の全面と、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52における第一及び第二嵌合部54,58の端面の全面)が固着させる。これにより、目的とする、図1及び図2に示される如き構造を備えたエンジンマウント10を得る。その後、かかるエンジンマウント10が射出成形金型60から離型されて、使用に供されることとなる。
このように、本実施形態のエンジンマウント10においては、本体ゴム弾性体16と内筒金具12とからなる一体加硫成形品26と、第一及び第二ストッパ部36,38を有する第一及び第二ストッパ部形成部材50,52とが、互いに別個の独立した部材にて構成されて、それら一体加硫成形品26と第一及び第二ストッパ部形成部材50,52との組付時に、第一及び第二空所28,30内のストッパクリアランスが、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52における第一及び第二ストッパ部36,38のそれぞれの突出高さ:Hs1 ,Hs2 に基づいて、それぞれ設定される。
それ故、かかるエンジンマウント10にあっては、単に、一体加硫成形品26とは別個に成形される第一及び第二ストッパ部形成部材50,52の第一及び第二ストッパ部36,38の突出高さ:Hs1 ,Hs2 を変更するだけで、ストッパクリアランスの大きさを任意の大きさに容易に変えることが出来、しかも、例えば、内筒金具と本体ゴム弾性体とからなる一体加硫成形品の金型成形による加硫成形時に、各空所が形成されるような構造とされた従来装置とは異なって、一体加硫成形品26の成形に用いられる金型の強度の低下を招くことなく、ストッパクリアランスの大きさを十分に小さくしたり、或いはゼロとしたりすることが可能となる。そして、その結果として、本体ゴム弾性体16の径方向(軸直角方向)のばね特性や、外筒部材14と内筒金具12の径方向における相対的変位の規制量等が、より幅広い範囲で容易にチューニングされ得、以て、必要とされる防振特性やストッパ効果が、極めて有利に確保され得ることとなるのである。
また、そのように、本実施形態のエンジンマウント10においては、一体加硫成形品26とは別個の部材からなる第一及び第二ストッパ部形成部材50,52の第一及び第二ストッパ部36,38の突出高さ:Hs1 ,Hs2 を変更するだけで、ストッパクリアランスの大きさを任意の大きさに変えることが出来る。そのため、例えば、共通化された単一種類の一体加硫成形品26の幾つかを製作し、また、第一ストッパ部36や第二ストッパ部38の突出高さ:Hs1 ,Hs2 が互いに異なる第一ストッパ部形成部材50と第二ストッパ部形成部材52とをそれぞれ複数種類ずつ製作することにより、ストッパクリアランスの大きさが種々異なる複数種類のエンジンマウント10の製造に、容易に対応することが可能となる。
そして、それ故、本実施形態のエンジンマウント10の構造によれば、本体ゴム弾性体に対してストッパ部が一体成形されてなる従来装置の構造とは異なって、ストッパクリアランスの大きさが種々異なる複数種類のエンジンマウントの製造に対応するために、共通化された単一種類の本体ゴム弾性体16(一体加硫成形品26)を製作する一方、ストッパ部36,38の突出高さが種々異なる複数種類のストッパ部形成部材50,52をそれぞれ製作することで、様々な高さのストッパ部が一体成形された本体ゴム弾性体と内筒金具との一体加硫成形品を、多数製作する必要が、有利に解消され得る。その結果、ストッパクリアランスの大きさが種々異なる複数種類のエンジンマウントの製造に際して、ストッパ部形成部材50,52のみを複数種類製作するだけで済むようになり、そのために、成形金型の小型化が可能となって、金型の作製コストが有利に低減され得る。また、ストッパ部形成部材50,52自体も小さいものであるところから、その製品取り数も多く為すことが可能となり、生産効率の向上も図られ得る。従って、ストッパクリアランスの大きさが種々異なる複数種類のエンジンマウント10、即ち、防振特性やストッパ効果が互いに異なる複数種類のエンジンマウント10を製造する際における一つ一つのエンジンマウント10の製造コストが有利に低く抑えられ得ると共に、生産性の向上も有利に実現され得るのである。
また、本実施形態に係るエンジンマウント10にあっては、その製造時に、互いに別個の部材からなる一体加硫成形品26と第一及び第二ストッパ部形成部材50,52とに対する接着処理作業が、それら一体加硫成形品26と第一及び第二ストッパ部形成部材50,52とが組み付けられてなる組付体59の外周面の全面に対して、一作業の中で一挙に行われる。しかも、一体加硫成形品26と第一及び第二ストッパ部形成部材50,52とを、外筒部材14を与える成形キャビティ62内にセットする作業も、組付体59の全体をセットする一作業によって行われる。それ故、例えば、一体加硫成形品26と第一及び第二ストッパ部形成部材50,52の接着処理作業や成形キャビティ内へのセット作業のそれぞれを、それらの一つずつに、三回に分けて行う必要がある従来装置に比して、製造時の作業工数が有利に削減されて、製造作業の簡略化が有利に図られ得る。そして、その結果として、生産性の向上が、極めて効果的に達成され得ることとなるのである。
さらに、かかるエンジンマウント10では、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52が、第一及び第二貫通孔44,46に嵌合されて一体加硫成形品26に組み付けられた状態下において、各ストッパ部形成部材50,52の係合溝56に、各貫通孔44,46の内周面に設けられた係合突条48が係合せしめられて、第一及び第二ストッパ部形成部材50,52と一体加硫成形品26との組付状態が容易には解消されないようになっている。そのため、成形金型60の成形キャビティ62内への組付体59のセット作業が、スムーズに且つ容易に行われ得る。しかも、かかるセット作業に際して、第一及び第二ストッパ部36,38の第一及び第二空所28,30内への突入高さや突入位置が変わってしまうことも有利に防止され、以て、所望の防振特性やストッパ効果が、より有利に且つ安定的に確保され得ることとなる。
また、本実施形態においては、本体ゴム弾性体16に、第一及び第二の二つの空所28,30が、内筒金具12を間に挟んで、主たる振動荷重の入力方向の両側に形成されると共に、それら各空所28,30内に、第一及び第二ストッパ部36,38が、それぞれ設けられているところから、主たる振動荷重の入力時に、十分な防振特性と優れたストッパ効果とが、より有利に発揮され得る。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、前記実施形態では、本体ゴム弾性体16の内筒金具12を挟んだ径方向の両側に、第一空所28と第二空所30とが、対称的に設けられていたが、そのような空所は、従来と同様な構造において一つ又は複数設けられ得るものであり、その配設形態は、適宜に設定される。また、空所が複数設けられる場合には、各空所の大きさが、同一の大きさであっても、互いに異なる大きさであっても良い。
また、空所が複数設けられる場合において、ストッパ部は、必ずしも全ての空所内に設けられている必要はなく、要求されるストッパ効果等に応じて、幾つかの空所内に、適当な大きさにおいて設けられることとなる。
さらに、前記実施形態では、ストッパ部36,38を有するストッパ部形成部材50,52が、本体ゴム弾性体16と同一のゴム材料を用いて構成されていたが、ストッパ部形成部材50,52の形成材料としては、エンジンマウント10に要求される防振特性やストッパ効果等に応じて、本体ゴム弾性体16とは異なる種類のゴム材料やエラストマ材料、或いは弾性を有する樹脂材料等の各種の弾性体材料が使用可能である。また、第一ストッパ部形成部材50と第二ストッパ部位形成部材52とを、互いに異なる種類の弾性体材料にて形成しても、何等差し支えない。
更にまた、ストッパ部形成部材50,52の全体形状やそれらに設けられた各ストッパ部36,38の形状も、例示のものに何等限定されるものではない。勿論、ストッパ部形成部材50,52が嵌合せしめられる各貫通孔44,46の大きさや形状も、ストッパ部形成部材50,52の形状や大きさに応じて、適宜に変更されるところである。
また、本体ゴム弾性体16の形状も、従来から公知の筒型防振装置に設けられる本体ゴム弾性体の形状が、何れも採用され得ることは、言うまでもないところである。そして、そのような本体ゴム弾性体16の形状に応じて、空所や貫通孔の配設位置が適宜に決定されることとなる。
さらに、ストッパクリアランスの大きさも、筒型防振装置に要求される防振特性やストッパ効果等に応じて、適宜に変更されるところである。従って、例えば、図9に示されるように、第一空所28内の第一ストッパ部36の先端と、第二空所30内の第二ストッパ部38の先端とを、第一空所28と第二空所30とにて挟まれた連結部32に接触させて、ストッパクリアランスをゼロと為すことも出来る。このように、ストッパクリアランスの大きさがゼロとされた筒型防振装置66は、例えば、トルクロッドの取付スリーブ内に挿入されて、取り付けられる防振ブッシュ等として、好適に利用される。なお、図9に示される実施形態に関しては、図1及び図2に示される前記第一の実施形態と同様な構成とされた部材及び部位について、図1及び図2と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略した。
更にまた、ストッパ部形成部材50,52の嵌合部54,58の外周面と、本体ゴム弾性体16の貫通孔44,46の内周面との間に形成される係合機構は、例示の構造の他、係合溝56を貫通孔44,46の内周面に設ける一方、係合突条48を嵌合部54,58の外周面に設けてなる構造や、それ以外の公知の構造が、適宜に採用され得る。
更にまた、外筒部材についても、合成樹脂製で、且つ軸部材の周りに、その軸直角方向外方に離間して配されて、本体ゴム弾性体にて軸部材と連結されたのものであれば、その具体的な構造が、何等限定されるものではなく、例えば、図9に示されるような筒体部20のみにて構成されていても良い。
また、内筒金具12と外筒部材14は、例示の如く、偏心して位置せしめられる他、図9に示されるように、同軸的に位置せしめられた形態において、本体ゴム弾性体16にて、互いに連結せしめられる。
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車のエンジンマウントその製造方法及び自動車の連結ロッドの防振ブッシュに適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、各種の自動車用或いは自動車用以外の筒型防振装置とその製造方法とに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に含まれるものであることは、言うまでもないところである。