以下、本発明の実施の形態によるゆらぎ発振器について説明する。図1は、本発明の実施の形態によるゆらぎ発振器10の全体構成図を示している。本ゆらぎ発振器10は、リング状に一方向結合された4個の確率共振素子20−1〜20−4を備えている。なお、確率共振素子を特に区別しない場合は単に確率共振素子20とする。また、確率共振素子20の数は4個に限定されず、2個、3個、又は5個以上としてもよい。
ここで、一方向結合とは、信号の流れる方向が一方向であることを意味する。図1の場合、確率共振素子20−1の出力端子は、確率共振素子20−2の入力端子に接続され、確率共振素子20−1の入力端子は、確率共振素子20−4の出力端子に接続されるというように、ある確率共振素子20の出力端子が、隣接する一方の確率共振素子20の入力端子に接続され、ある確率共振素子20の入力端子が、隣接する他方の確率共振素子の出力端子に接続されることで、各確率共振素子20がリング状に接続されている。したがって、ゆらぎ発振器10内を流れる信号は、確率共振素子20−1〜20−4の順に循環する。
図2は、図1に示す確率共振素子20の構成を示す図である。図2に示すように確率共振素子20は、ノイズ発生器21、信号加算器22、閾値判別部23、微分器24、及び出力部25を備えている。ノイズ発生器21は、例えばガウシアンホワイトノイズや熱雑音等の種々のノイズ信号を生成するファンクションジェネレータから構成されている。
信号加算器22は、n(nは正の整数)種類の入力信号と、ノイズ発生器21から出力されたノイズ信号とが入力され、入力されたノイズ信号と、n種類の入力信号とを重畳(加算)して入力信号にゆらぎを与え、閾値判別部23に出力する。ここで、n種類の入力信号は、入力端子221〜22nを介して入力される。
本ゆらぎ発振器10では、入力端子221には、例えば発振のトリガとなるトリガ信号が入力され、入力端子222には、例えば前段(信号経路の上流側)に接続された確率共振素子20からの出力信号が入力される。なお、これは一例であり、トリガ信号及び他の確率共振素子20から出力された信号を他の入力端子に入力してもよい。
閾値判別部23は、信号加算器22によりゆらぎの与えられた信号を所定の閾値と比較し、この信号が閾値以上の場合は、ハイレベルとなり、この信号が閾値未満の場合は、ローレベルとなるパルス信号を出力する。ここで、閾値はヒステリシスを有しており、パルス信号がローレベルからハイレベルに変化する際の値とハイレベルからローレベルに変化する際の値とが異なる。閾値にヒステリシスを持たせることは閾値判別部23を例えばシュミットトリガ回路で構成することで容易に実現することができる。
微分器24は、閾値判別部23から出力された信号を微分する。出力部25は、微分器24から出力された信号のレベルを調節する。なお、本実施の形態では、図2の左側に示す確率共振素子20を図2の右側の記号を用いて表す。また、各確率共振素子20において、ノイズ信号の強度と、微分器24の時定数と、結合定数とは同じ値に設定され、ゆらぎ発振器10が発振することができるような予め定められた値に設定されている。
図3は、ゆらぎ発振器10の動作原理の説明図であり、図3(a)は、信号加算器22から出力されたノイズが付与された信号S1と、閾値判別部23の閾値Vth1,Vth2(Vth1>Vth2)の変動とを示している。図3(b)は、閾値判別部23から出力された信号S3を示す。図3(c)は、微分器24から出力された信号S4を示す。図3(d)は、信号S4の拡大図である。
図3(a)の矢印YUで示す部分で信号S1が閾値Vth1を超えている。信号S1が閾値Vth1を超えると、信号S3はローレベル(VL)からハイレベル(VH)に切り換わる。これにより、確率共振素子20がオン状態になる。また、図3(a)の矢印YDで示す部分で信号S1が閾値Vth2を下回っている。信号S1が閾値Vth2を下回ると、信号S3はハイレベル(VH)からローレベル(VL)に切り替わる。これにより確率共振素子20がオフ状態になる。
信号S3は微分器24により微分され、信号S4として出力される。この場合、信号S4は微分器24の時定数によりグランドレベルに減衰され、次段に接続された確率共振素子20に入力される。
このようにして、ゆらぎ発振器10内では信号S4が再帰的に循環する。再帰的に循環する信号S4はゆらぎ発振器10の各確率共振素子20の微分器24の働きによって時間と共に減衰する。確率共振素子20がオン状態に切り替わってから時間が短いときは、信号S4の強度は強い。信号S4の強度が強いときは、リング状に接続された各確率共振素子20はオン状態に揃う。
例えば、ある確率共振素子20がオン状態に切り替わると、この確率共振素子20から正の方向にピークをもつ信号S4が出力される。これにより、リング状に接続された他の確率共振素子20の信号S3がハイレベルに揃い、全ての確率共振素子20からほぼ同期した正の方向にピークをもつ信号S4が出力される。
確率共振素子20がオン状態に切り替わってから時間がある程度経過すると、信号S4の減衰が進み信号S4の強度が弱くなる。そして、信号S4が減衰するにつれて、リング状に接続された確率共振素子20のうち、いずれかの確率共振素子20がオフ状態に切り替わる確率が高くなる。
例えば、図3(d)に示すように信号S4の強度が矢印Y1で示すあたりまでは、全ての確率共振素子20はオン状態に揃っているが、信号S4の強度が矢印Y1の強度よりも弱くなると、いずれかの確率共振素子20がオフ状態に切り替わる確率が高くなる。
そして、いずれか1の確率共振素子20がオフ状態に切り替わると、この確率共振素子20から負の方向にピークを持つ信号S4が出力される。これに伴って、他の確率共振素子20がオフ状態に切り替わり、全ての確率共振素子20からほぼ同期した負の方向にピークを持つ信号S4が出力される。以上のように各確率共振素子20がオン状態とオフ状態とを繰り返し切り替えることによってゆらぎ発振器10は発振する。
なお、信号S1はノイズ信号によりゆらぎが付与されたランダム性を有する信号である。そのため、各確率共振素子20は、オン状態に切り替わってからオフ状態に切り替わるまでの時間幅は確率的に定まるため、厳密には一定ではない。しかしながら、信号S1の強度が強いほど確率共振素子20はオフ状態に切り替わる確率が高くなるため、この時間幅は信号S1の強度が強いほど短くなる。つまり、この時間幅は、ノイズ信号の強度を適当な値に調節すると、大局的には信号S1のランダム性よりも強度に強く依存するようになる。そのため、ゆらぎ発振器10は、信号S1の強度に応じた周波数で発振することになる。また、オフ状態に切り替わるまでの時間幅がノイズ信号の強度を含む入力信号の強度に依存するため、入力信号の強度が変化するとそれに応じた周波数でゆらぎ発振器10は自励発振する。更に、微分器24の時定数が長くなるにつれて、確率共振素子20がオン状態に切り替わってからオフ状態に切り替わるまでの時間幅が長くなり、ゆらぎ発振器10からの出力信号の周波数が長くなる。したがって、確率共振素子20の時定数を適当な値に調節することで、ゆらぎ発振器10からの出力信号の周波数を所望の値に調節することができる。
図4は、結合定数を示したグラフであり、図4(a)はゆらぎ発振器10からの出力信号の発振周波数を示すグラフであり、図4(b)はゆらぎ発振器10からの出力信号のパワースペクトル強度のピークを示している。図4(a)において、縦軸は発振周波数を示し、横軸はノイズ信号の強度を示している。図4(b)において、縦軸はゆらぎ発振器10からの出力信号のパワースペクトル強度のピークを示し、横軸はノイズ信号の強度を示している。ここで、結合定数は、1の確率共振素子が隣接する確率共振素子に信号をどの程度伝達することができるかを示すものであり、具体的には後述する。
図4(a)に示すように結合定数が大きくなるにつれて、グラフの傾きが大きくなり、発振周波数が大きくなっていることが分かる。また、図4(a)の各グラフが示すように結合定数を一定にすると、ノイズ信号の強度が増大するにつれて、出力信号の周波数が大きくなっていることが分かる。
また、図4(b)に示すように、結合定数が増大するにつれて、ゆらぎ発振器10からの出力信号のパワースペクトル強度のピークが増大していることが分かる。また、図4(b)の各グラフにおいて、ノイズ信号の強度に対して出力信号のパワースペクトル強度のピークが上に凸のカーブを描いて変化しており、ノイズ信号の強度を過度に小さくする又は過度に大きくすると、出力信号のパワースペクトル強度が弱くなることが分かる。
なお、図3の説明では、閾値判別部23は、信号S1が閾値Vth1を超えたときにハイレベルの信号を出力し、信号S1が閾値Vth2を下回ったときにローレベルの信号を出力するものとしたが、これに限定されず、信号S1が閾値Vth1を超えたときにローレベルの信号を出力し、信号S1が閾値Vth2を下回ったときにハイレベルの信号を出力するものであってもよい。
図5は、図2に示す確率共振素子20の回路図を示している。図5に示すように確率共振素子20は、図2の信号加算器22に相当するミキサー回路201と、図2の閾値判別部23に相当するコンパレータ202と、図2の微分器24に相当する微分回路203と、図2の出力部25に相当する反転増幅回路204及び出力調整回路205とを備えている。
ミキサー回路201は、加算回路201−1及び反転増幅回路201−2を備えている。加算回路201−1は、図2の入力端子221に相当する入力端子TT1に入力されたノイズ信号と、入力端子222に相当する入力端子TT2に入力された前段に接続された確率共振素子20からの出力信号と、入力端子TT3に入力されたトリガ信号とを加算する。反転増幅回路201−2は、加算回路201−1により加算された信号を増幅する。
加算回路201−1は、オペアンプA11を備えている。オペアンプA11のマイナス端子は、抵抗R11〜R13を介して入力端子TT1〜TT3に接続されている。オペアンプA11のプラス端子は、接地されている。オペアンプA11は、出力端子及びマイナス端子間が抵抗R14を介して接続され、ネガティブフィードバックループが形成されている。
反転増幅回路201−2は、オペアンプA12を備えている。オペアンプA12のマイナス端子は、抵抗R15を介してオペアンプA11の出力端子に接続されている。オペアンプA12のプラス端子は接地されている。オペアンプA12の出力端子及びマイナス端子間は、抵抗R16を介して接続され、ネガティブフィードバックループが形成されている。
コンパレータ202は、オペアンプA21を備えるシュミットトリガ回路により構成されている。オペアンプA21のプラス端子は、抵抗R22を介して接地されている。オペアンプA21は、出力端子とプラス端子とが抵抗R21を介して接続され、ポジティブフィードバックループが形成されている。
微分回路203は、オペアンプA21の出力端子及び反転増幅回路204間に接続されたコンデンサC31と、一端がコンデンサC31に接続され、他端が接地された抵抗R31とを備えている。
反転増幅回路204は、オペアンプA41を備え、微分回路203から出力された信号の極性を反転させる。オペアンプA41のマイナス端子は、抵抗R41を介してコンデンサC31に接続されている。オペアンプA41のプラス端子は、接地されたている。オペアンプA41は、出力端子とマイナス端子とが抵抗R42を介して接続されている。反転増幅回路204は、コンパレータ202により反転された信号の極性を元に戻す。
出力調整回路205は、可変抵抗VR1を備える。可変抵抗VR1は、抵抗値を調節することで、反転増幅回路204から出力された信号のレベルを調整し、確率共振素子20間の結合定数を定める。
なお、結合定数は、「前段に接続された確率共振素子20からの出力信号のピークの強度/確率共振素子20がオン状態に切り替わるときの閾値判別部23の閾値で定義される。図3の例では、信号S1の正方向のピーク/閾値Vth1」となる。
このように構成された図1に示すゆらぎ発振器10は、以下のように動作する。例えば、確率共振素子20−1に対して、トリガ信号が入力されると、確率共振素子20−1は、オン状態となり急峻なピークを持つ信号S4を出力する。これにより、下流側に接続された確率共振素子20−2がオン状態になる。
このようにして、急峻なピークを持つ信号S4がリング状に結合された確率共振素子20−1〜20−4において順次伝達されると、確率共振素子20間の協調現象により、各確率共振素子20における信号の出力タイミングが同期し、各確率共振素子20は一定周期で自励発振する。つまり、確率共振素子20がオン状態になるタイミングがゆらぐことにより、各確率共振素子20は、同期しやすいタイミングを自律的に選んで発振する。そのため、確率共振現象に基づいて発火する神経細胞から構成され、自律的に周期的信号を送り出すニューラルネットワークによる発振器であるCPGと同様の原理により周期的信号を生成することができ、CPGを人工的に実現するうえで有用となる発振器を提供することができる。
次に、確率共振現象について説明する。確率共振現象は、閾値以下の微弱信号にノイズ信号を合成して合成信号を生成し、その合成信号を閾値処理すると、微弱信号が出力側に伝わる現象である。このとき、どれだけ信号が伝わったかをSN比(出力される信号の強度/ノイズ信号の強度)で表す。微弱信号の強度が一定であり、ノイズ信号の強度が弱いときは、合成信号が閾値を超える確率が小さく、SN比は小さくなる。
一方、ノイズ信号の強度を強くすると、合成信号全体の強度がランダムに強められ、微弱信号の中で強度が強い部分は閾値を越える頻度が高くなり、微弱信号の中で強度が弱い部分は閾値を超える頻度が低くなる。その結果、微弱信号の情報が、合成信号が閾値を越える頻度として出力側に伝えられる。したがって、ノイズ信号の強度を強くするとSN比が向上する。但し、このSN比は、ノイズ信号がある強度のときに最大になる。また、ノイズ信号の強度を更に強くすると、合成信号はノイズ信号が支配的となり、ランダムに閾値を超え始め、SN比は低下する。
次に、確率共振素子20の動作原理について説明する。図6は、図5のコンパレータ202と微分回路203とを示した図である。なお、図6に示すR´,R´´,Cin,Rinはそれぞれ、図5に示すR22,R21,C31,R31に対応している。
確率共振素子20に入力された信号vinは、ノイズ信号ηと加算され、図6のvmix端子に入力される。ここで、vmix端子に入力された信号vmixは式(1)により表される。
vmix(t)=w・vin(t)+η(t) (1)
但し、w:は重み係数である。
確率共振素子20の微分方程式は式(2)により表される。
dv(t)/dt=f{vmix(t)−θ,α} (2)
θ:閾値、α:オペアンプの応答速度
式(2)の関数f{}は式(3)に示すSigmoid関数で与えられる。
f{v(t)−θ,α}=tanh[α{v(t)−θ}] (3)
Sigmoid関数は、vmix(t)が閾値θより小さい場合は「0」、vmix(t)が閾値θより大きい場合は「1」を出力する関数であり、コンパレータ202の動作を表す。図7は、式(3)のグラフを示している。このグラフでは、α=10、θ=±0.5である。図7に示すように、このSigmoid関数はヒステリシスを有している。すなわち、vがマイナス側から上昇し、0.5を超えると、Sigmoid関数の出力は1となる。vがプラス側から減少し、−0.5を下回ると、Sigmoid関数の出力は0となる。
コンパレータ202の出力vout(t)は、式(2)と式(3)とを合わせて書き直すと、式(4)により表される。
vout(t)=tanh[α{w・vin(t)+η(t)−θ}] (4)
そして、vout(t)は、vin2として、後段の微分回路203に入力される。
図8は、微分回路203の動作の説明図であり、図8(a)はvin2の波形図であり、図8(b)は微分回路203を示し、図8(c)は微分回路203からの出力であるvout2の波形図である。
コンパレータ202からの出力であるvin2は、図8(a)に示すように矩形波である。vin2が微分回路203を通過すると、vin2は微分回路203の時定数(CR)で減衰し、微分回路203から図8(c)に示すような波形のvout2が出力される。但し、Cin=C、Rin=Rとしている。
図8(b)に示すiは下記の式で表される。
i(t)=(vin2/R)・exp(−t/CR)
また、vout2は下記の式で表される。
vout2=R・i(t)
よって、上記2つの式から微分回路203の減衰は式(5)によって表される。
vout2=vin2(t)・exp(−t/CR) (5)
ここで、式(5)の減衰を式(6)に示すのこぎり波で近似すると、式(7)が得られ、これが確率共振素子20のマスター方程式となる。なお、以下に示すtsawはのこぎり波の減衰時間を表している。具体的には、tsawは、コンパレータ202の状態がローレベルからハイレベル(またはハイレベルからローレベル)に切り替わった瞬間を0とし、次にコンパレータのスイッチングが起こるまでの間の経過時間を表している。
vout2=dvin/dt=tanh[α{w・vin(t)+η(t)−θ}]・exp(−xsaw(tsaw)/CinRin) (7)
次に、確率共振素子20をリング状に結合したゆらぎ発振器10を数理的に説明する。図9は、ゆらぎ発振器10の説明図である。ゆらぎ発振器10を構成する確率共振素子20のうち注目する確率共振素子20を注目確率共振素子C20とする。
注目確率共振素子C20には、ノイズ信号と微弱信号としてのトリガ信号とに加えて前段の確率共振素子20から出力されたリングフィードバック信号が入力される。リングフィードバック信号の強度は、確率共振素子20の結合定数に依存して変化する。ここで、結合定数は、「リングフィードバック信号の強度のピーク/確率共振素子20がオン状態になる際の閾値」で定義される。そのため、結合定数が1以上の場合は、注目確率共振素子C20には閾値以上のリングフィードバック信号が入力される。
図9に示す注目確率共振素子C20において、入力信号として考えられるものは、外部から入力されるトリガ信号、リングループバック信号、及びノイズ信号である。なお、他のゆらぎ発振器10が接続されていれば、このゆらぎ発振器10からの出力信号も入力信号に含まれる。
これらの入力信号を注目確率共振素子C20のミキサー回路201で足し合わせて信号viとし、式(2)と同様にして信号viをコンパレータ202で閾値処理すると、信号viは、式(8)で表される微分方程式で表される。
但し、式(8)に示すvi´は注目確率共振素子C20のコンパレータ202からの出力信号である。また、θiは注目確率共振素子C20の閾値を示す。
更に、信号vi´を微分回路203に入力すると式(9)が得られる。
式(9)に示すviは注目確率共振素子C20からの出力信号、つまり、微分回路203を通過した後の信号である。
また、wijは、注目確率共振素子C20に入力信号を入力する各ノードと、注目確率共振素子C20との結合定数を示す。wijの添え字のiは注目確率共振素子C20を示し、jは注目確率共振素子C20に入力信号を入力する各ノードを示している。nは、注目確率共振素子C20に入力信号を入力するノードの個数を示す。
式(9)がゆらぎ発振器10のマスター方程式となる。図10は、式(9)を用いてゆらぎ発振器10の動作のシミュレーションを行ったときのシミュレーション結果を示すグラフである。このシミュレーションでは、図10に示すようにリング状に接続した4個の確率共振素子20から構成されるゆらぎ発振器10を用い、注目確率共振素子C20のみに外部からノイズ信号としてホワイトノイズを加えた。また、注目確率共振素子C20には、他のゆらぎ発振器10からの入力信号及びトリガ信号は入力されていない。また、シミュレーションにあたっては、式(9)の各種パラメータに対して、図11に示す値を与えた。
なお、図10において、上段のグラフは、注目確率共振素子C20のコンパレータ202からの出力信号を示し、下段のグラフは、注目確率共振素子C20からの出力信号を示している。
図10のグラフに示すように、注目確率共振素子C20から周期的に変化する信号が出力されており、ゆらぎ発振器10において発振現象が現れたことが確認できた。
なお、図2に示す確率共振素子20はノイズ発生器21から出力されたノイズ信号を信号加算器22に入力させているが、これに限定されず、図2の点線で示すようにノイズ信号を閾値判別部23に入力させて閾値判別部23の閾値をノイズ信号に従って変化させてもよい。この場合、信号加算器22により加算された信号が閾値と比較されることになるが、閾値はノイズ信号に従ってゆらぎが与えられているため、図2の構成と同様、確率共振現象を生じさせることができる。
図12は、図2に示す確率共振素子20のノイズ信号の強度を変化させたときの確率共振素子20の出力信号のパワースペクトルを示したグラフである。なお、このグラフの測定条件は、トリガ信号として、周波数が100Hz、振幅が70mVの正弦波を用い、ノイズ信号としてガウシアンホワイトノイズを用いた。また、閾値判別部23は、1Vのパルス信号を出力し、閾値を100mV、閾値のヒステリシス幅を約50mVとした。
図5に示す14個の波形は、それぞれ、ノイズ信号の強度を2.0V、1.8V、1.6V、1.4V、1.2V、1.0V、0.9V、0.8V、0.7V、0.6V、0.5V、0.4V、0.3V、0Vとしたときの確率共振素子20の出力信号のパワースペクトルを示している。図12に示すように、ノイズ信号の強度が増大するにつれて、出力信号の強度も増大していることが分かる。また、ノイズ信号の強度を0.5V〜2.0Vにしたときは周波数が100Hz付近でピークが観測された。
図13は、図2に示す確率共振素子20の出力信号のS/N比とノイズ信号の強度との関係を示したグラフであり、縦軸はS/N比を示し、横軸はノイズ信号の強度を示している。図13に示すように、このグラフは釣り鐘曲線を描いて変化していることが分かる。そのため、ノイズ信号の強度を調節することでS/N比を調節することが可能となる。
図14は図1に示すゆらぎ発振器10の波形図を示し、(a)はトリガ信号の波形図を示し、(b)は確率共振素子20−4から出力される信号の波形図を示している。なお、図14において、各確率共振素子20の閾値は100mV、ノイズ信号は強度が300mVのガウシアンホワイトノイズ、トリガ信号は振幅が500mV、結合定数は5とされている。
まず、期間TM1において、確率共振素子20−1にトリガ信号が入力されると共に、ノイズ信号が入力される。ここで、トリガ信号としては、周波数が1Hz、振幅が500mVの正弦波が採用されている。トリガ信号が入力されると、(b)に示すように、各確率共振素子20からは、トリガ信号に追従するように、パルス信号が出力されていることが分かる。そして、期間TM1が経過した時に、トリガ信号の入力が遮断されると、期間TM1よりも多少パルス幅が大きくなったパルス信号が一定周期で繰り返し出力され、ゆらぎ発振器10が発振していることが分かる。そして、各確率共振素子20においてノイズ信号が遮断されると、確率共振素子20−4からパルス信号が出力されず、発振が停止されていることが分かる。このように、本ゆらぎ発振器10によれば、いずれかの確率共振素子20にノイズ信号を入力した状態で、トリガ信号を入力すると、各確率共振素子20から一定周期のパルス信号が出力され、トリガ信号を遮断しても各確率共振素子20からほぼ一定周期のパルス信号が出力され、発振が持続されていることが分かる。また、トリガ信号を遮断すると、それに伴って、パルス信号が変化しており、入力信号の変更に伴って発振周期が自律的かつ柔軟に変更されていることが分かる。
図15は、図1に示すゆらぎ発振器10において、確率共振素子20−2,20−4の閾値判別部23から出力される信号の波形図を示し、(a)は確率共振素子20−2の閾値判別部23から出力される信号の波形図を示し、(b)は確率共振素子20−4の閾値判別部23から出力される信号の波形図を示している。なお、図15において、各確率共振素子20においてノイズ発生器21によりノイズ信号が常時出力されている。
図15(a)、(b)に示すように、確率共振素子20−2,20−4の閾値判別部23から位相、周波数、及び振幅がほぼ同じパルス信号が出力されていることが分かる。そのため、他の確率共振素子20−1,20−3の閾値判別部23からも同じパルス信号が出力されていることは明らかであり、いずれの確率共振素子20も同様に発振しており、同じ信号を取り出すことができる。
図16は、図1に示すゆらぎ発振器10において、ノイズ信号の強度を変化させたときに出力される信号を示した波形図であり、(a)〜(c)はノイズ信号の強度を800mV、500mV、300mVとしたときに確率共振素子20−4から出力される信号を示し、(d)はノイズ信号の強度を最初300mVとし、途中から200mVに変えたときに確率共振素子20−4から出力される信号を示している。また、図16(a)、(b)ではトリガ信号が入力されておらず、図16(c)、(d)ではトリガ信号が入力されている。
図16に示すように、ノイズ信号の強度が増大するにつれて、出力される信号の周波数が増大していることが分かる。また、ノイズ信号の強度が300mVから200mVに変化すると、直ぐに発振が停止されず、暫くしてから発振が停止されている。このように、ゆらぎ発振器10は、ノイズ信号の強度を強くすると発振周波数が高くなり、ノイズ信号の強度を弱くすると発振周波数が低くなり、ノイズ信号の強度を一定の値よりも低くすると、発振が停止することが分かる。また、ゆらぎ発振器10は、ノイズ信号の強度を発振が停止する強度である200mVに変化させても、直ぐに発振が停止せず、入力の変化に対して応答が直ぐに表れない実際のCPGに似た挙動を示していることが分かる。更に、ゆらぎ発振器10は、ノイズ信号の強度を一定の値(=500mV)より強くすると、トリガ信号を入力しなくても自律的に発振することができる。
図17は、図1に示すゆらぎ発振器10の入出力相互相関関数の周波数依存性を示したグラフである。図17の縦軸は、入出力信号の相互相関値の絶対値、すなわち、出力信号が入力信号とどれだけ相関があるかを表す指標を示しており、具体的には、図18及び図19で示すトリガ信号と出力信号との相互相関を示している。図17の横軸は周波数を示している。図17に示すように、このグラフは1Hzでピークとなる上に凸の曲線を描いて変化しており、ゆらぎ発振器10の共振周波数が1Hzであることが分かる。また、ピーク付近で緩慢なカーブを描いており、緩慢な特性を有していることが分かる。
図18、図19は、図1に示すゆらぎ発振器10において、トリガ信号の周波数を変えたときに、ゆらぎ発振器10から出力される信号の波形図を示しており、図18(a)〜(c)はトリガ信号の周波数を0.1Hz、0.2Hz、1Hzとしたときの波形図を示し、図19(a)〜(c)はトリガ信号の周波数を100Hz、500Hz、1kHzとしたときの波形図を示している。なお、図18(a)〜(c)、図19(a)〜(c)において上段はトリガ信号を示し、下段はゆらぎ発振器10から出力される信号を示している。また、図18(a)〜(c)、図19(a)〜(c)において、トリガ信号は振幅が300mVの正弦波であり、ノイズ信号は強度が300mVのホワイトガウシアンノイズである。
図18(c)、図19(a)、(b)に示すように、トリガ信号の周波数が1Hz、100Hz、500Hzの場合、ゆらぎ発振器10からの出力信号とトリガ信号とは周波数及び位相がほぼ一致し、出力信号がトリガ信号に追従できていることが分かる。図18(b)、(a)に示すようにトリガ信号の周波数が0.2Hz、0.1Hzと下がるにつれて、出力信号の周波数はトリガ信号の周波数に比べて大きくなり、出力信号がトリガ信号に追従できていないことが分かる。また、図19(c)に示すように、トリガ信号の周波数を1kHzと高くすると、パルスが一定周期で表れなくなり、ゆらぎ発振器10が発振できていないことが分かる。
これらのことから、ゆらぎ発振器10は、トリガ信号の周波数が一定範囲内にある場合は、トリガ信号に追従して発振することができるが、トリガ信号の周波数がある周波数より小さくなると、出力信号の周波数がトリガ信号の周波数より大きくなり、トリガ信号に追従して発振することができなくなることが分かる。また、トリガ信号の周波数がある周波数より大きくなると、ゆらぎ発振器10は発振できなくなることが分かる。
次に、本発明の実施の形態によるゆらぎ発振システムについて説明する。図20は、本ゆらぎ発振システム100の構成を示す図である。図20に示すようにゆらぎ発振システム100は、一方向結合された3個のゆらぎ発振器10−1〜10−3を備えている。各ゆらぎ発振器10は、4個の確率共振素子20−1〜20−4を備えている。
ゆらぎ発振器10−1の確率共振素子20−3の出力端子は、ゆらぎ発振器10−3の確率共振素子20−2の入力端子に接続され、ゆらぎ発振器10−2の確率共振素子20−3の出力端子はゆらぎ発振器10−3の確率共振素子20−4の入力端子に接続され、ゆらぎ発振器10−1からの出力信号がゆらぎ発振器10−3に伝達され、かつ、ゆらぎ発振器10−2からの出力信号がゆらぎ発振器10−3に伝達される。また、ゆらぎ発振器10−3の確率共振素子20−3から出力信号が取り出されている。
従って、ゆらぎ発振器10−3は、ゆらぎ発振器10−1からの出力信号と、ゆらぎ発振器10−2からの出力信号とによる影響を受けた周期的信号を出力信号として出力するため、1の神経細胞による出力が他の神経細胞の出力に影響を与えて自律的に発振するCPGのような原理によって発振することができ、複数のゆらぎ発振器10を種々の結合パターンで組み合わせることで、より精度良くCPGを実現することができる。
図21は、図20に示すゆらぎ発振システム100において、ノイズ信号強度を1.5Vとし、ゆらぎ発振器10−1の確率共振素子20−1に50Hz、500mVの正弦波をトリガ信号として入力したとき、ゆらぎ発振システム100から出力される信号の波形図を示している。図21の(a)〜(c)は、それぞれ、50Hzのトリガ信号に同期したゆらぎ発振器10−1からの出力信号、ノイズのみで発振しているゆらぎ発振器10−2からの出力信号、及びゆらぎ発振器10−3からの出力信号を示している。図21に示すように、ゆらぎ発振器10−3からの出力信号は、ゆらぎ発振器10−1からの出力信号と同様の信号であって、ゆらぎ発振器10−2からの出力信号が立ち下がった後の一定期間、ローレベル状態のゆらぎ発振器10−2からの出力信号の影響によりローレベル状態となった信号を出力していることが分かる。そのため、ゆらぎ発振器10−1からの出力信号と、ゆらぎ発振器10−2からの出力信号との影響を受け、それらの特徴を受け継いだ新しい発振パターンで発振した信号がゆらぎ発振器10−3から出力されていることが分かる。
なお、ゆらぎ発振システム100において、ゆらぎ発振器10の個数は3個に限定されず、2個又は4個以上であってもよい。この場合、図20に示すゆらぎ発振器10−1を構成する例えば確率共振素子20−2に1のゆらぎ発振器10を接続し、ゆらぎ発振器10−1を構成する例えば確率共振素子20−4に別の1のゆらぎ発振器10を接続するというように、ゆらぎ発振器10を枝分かれ状に接続してもよい。また、図20に示すゆらぎ発振器10−1を構成する例えば確率共振素子20−1に1のゆらぎ発振器10を接続し、この1のゆらぎ発振器10を構成する1の確率共振素子20に別の1のゆらぎ発振器10を接続するというように、シリアル接続された複数のゆらぎ発振器10をゆらぎ発振器10−3に接続してもよい。また、図20に示すゆらぎ発振器10−3の確率共振素子20−1に別の1のゆらぎ発振器10を接続してもよい。
また、各ゆらぎ発振器10を構成する確率共振素子20の個数も4個に限定されず、2個、3個、又は5個以上であってもよく、また、各ゆらぎ発振器10を構成する確率共振素子20の個数を同一としてもよいし、異なる個数にしてもよい。
次に、本発明の実施の形態による観測装置について説明する。図22は、観測装置200の構成を示す図である。図20に示すように観測装置200は、ゆらぎ発振器10と、センサ300と、モニタ装置400とを備えている。センサ300は、温度、湿度といった環境情報を検出するためのセンサである。モニタ装置400は、例えば、オシロスコープから構成され、確率共振素子20−3の出力端子と接続され、確率共振素子20−3からの出力信号をモニタする。
観測装置200においては、センサ300により、環境情報が検出されるとその検出信号が確率共振素子20−1に入力されるため、その検出信号の影響によりゆらぎ発振器10の発振周波数が変化する。一方、モニタ装置400は、確率共振素子20−3からの出力信号をモニタしているため、発振周波数の変化を表すことができ、微弱な環境情報の変化を検出することができる。
なお、図22に示す観測装置200においては、ゆらぎ発振器10の個数を1個としたがこれに限定されず、複数個のゆらぎ発振器10を図20に示すゆらぎ発振システムのように一方向結合させてもよい。また、ゆらぎ発振器10を構成する確率共振素子20の個数も4個に限定されず、2個、3個、又は5個以上としてもよく、複数のゆらぎ発振器10を用いる場合は、各ゆらぎ発振器10を構成する確率共振素子20の個数を同一にしてもよいし、異なる個数にしてもよい。
次に、本発明の実施の形態による制御システムについて説明する。図23は、本制御システムの構成を示す図である。本制御システムは、4つの制御ユニット500−1〜500−4と、8個の微分器30とを備えている。制御ユニット500−1は、ゆらぎ発振器10−1、センサ310、及びアクチュエータ410を備える。
ゆらぎ発振器10−1の確率共振素子20−3の入力端子及び出力端子は、それぞれ、微分器30,30を介してゆらぎ発振器10−2の確率共振素子20−1の出力端子及び入力端子に接続されており、制御ユニット500−1及び500−2が双方向結合されている。ゆらぎ発振器10−1の確率共振素子20−4の入力端子及び出力端子は、それぞれ、微分器30,30を介してゆらぎ発振器10−3の確率共振素子20−2の出力端子及び入力端子に接続されており、制御ユニット500−1及び500−3が双方向結合されている。
ゆらぎ発振器10−3の確率共振素子20−3の入力端子及び出力端子は、それぞれ、微分器30,30を介してゆらぎ発振器10−4の確率共振素子20−1の出力端子及び入力端子に接続されており、制御ユニット500−3及び500−4が双方向結合されている。ゆらぎ発振器10−3の確率共振素子20−2の入力端子及び出力端子は、それぞれ、微分器30,30を介してゆらぎ発振器10−2の確率共振素子20−4の出力端子及び入力端子に接続されており、制御ユニット500−2及び500−4が双方向結合されている。すなわち、ゆらぎ発振器10−1〜10−4は格子状に双方向結合されている。
したがって、ゆらぎ発振器10−1の出力信号がゆらぎ発振器10−3の出力信号に影響を与え、ゆらぎ発振器10−3の出力信号がゆらぎ発振器10−1の出力信号に影響を与えるというように、ゆらぎ発振器10−1〜10−4は相互に影響を及ぼしながら発振周波数を変更する。
ゆらぎ発振器10−1は、4個の確率共振素子20−1〜20−4から構成されている。確率共振素子20−1には、センサ310による検出信号が入力され、かつ、確率共振素子20−4の出力信号が入力される。ゆらぎ発振器10−1の確率共振素子20−1の出力端子はアクチュエータ410に接続されている。なお、制御ユニット500−2〜500−4は制御ユニット500−1と同一構成であるため、説明を省略する。
センサ310は、温度、湿度等の環境情報を検出し、検出信号をゆらぎ発振器10−1に出力する。アクチュエータ410は、ゆらぎ発振器10−1からの出力信号に従って、例えばトカゲの動作やヘビの動作を再現するような多関節ロボットの各関節を動作させる。本実施の形態では、多関節ロボットは第1〜第4の関節を有しているため、アクチュエータ410〜440は、それぞれ第1〜第4の関節を動作させる。
このように構成された制御システムにおいては、例えば、センサ310により検出された環境情報が変化すると、それによって、ゆらぎ発振器10−1の発振周波数が変化し、その変化に伴ってゆらぎ発振器10−2〜10−3の発振周波数が変化し、アクチュエータ420〜440の動作が変化する。ここで、ゆらぎ発振器10−1〜10〜4は上記のように確率共振現象に基づいて動作しているため、これらをネットワーク接続することで、ゆらぎ発振器10−1〜10〜4を実際のCPGのように発振させることができると共に、第1〜第4の関節が全く独立ではなく、相互に影響を及ぼし合うように動作させることができ、多関節ロボットを実際の生体のように動作させ、生体の動作をリアルに再現することができる。
なお、図23においては、制御ユニットの個数を4個としたが、これに限定されず、2個、3個、又は5個以上にしてもよい。この場合も、制御ユニットの個数を4個とした場合と同様に、複数の制御ユニットを格子状に双方向結合させればよい。
次に、本発明の他の実施の形態による制御システムについて説明する。本他の実施の形態における制御システムは、水中を遊泳するヘビ型ロボットを制御する制御システムである。なお、このヘビ型ロボットは、他の研究者により開発されたものである。他の研究者は、既存のコンピュータを用いて位相のずれた正弦波を生成し、位相のずれた正弦波をヘビ型ロボットの各セグメントに入力させることで、このヘビ型ロボットを制御した。
一方、本発明者は、以下に示すゆらぎ発振器10からなる制御システムを用いてこのヘビ型ロボットの制御している。
図24は、ヘビ型ロボットの外観構成図を示している。図24に示すようにヘビ型ロボットは、リボン状の胴体部BDを備えている。胴体部BDは、本体部BD1と、本体部BD1の表面及び裏面において、胴体部BDを複数(例えば7個)のセグメントに区画するように形成された電極とを備えている。ここで、本体部BD1は、印加された電圧によって屈曲する部材により構成され、本実施の形態では、例えばイオン導電性高分子(Ionic Polymer Metal Composite)により構成されている。また、胴体部BDには各セグメントに対応して7個の浮き輪F1が紐を介して取り付けられている。浮き輪F1が水面に浮くことで、胴体部BDは水面から一定の水位を保持して遊泳することができる。
図25は、胴体部BDの断面図を示し、図25(a)はオフの状態を示し、図25(b)はオンの状態を示している。図25に示すように胴体部BDは、本体部BD1を挟むようにして、例えば短冊状の2枚の電極P1,P2が形成されている。ここで、本体部BD1は、イオン導電性高分子ゲル内に陽イオンと水分子とが分散された構造を有している。電極P1,P2としては、例えば金が採用されている。
図25(a)に示すように電極P1,P2間に電圧が印加されていないオフの状態では、陽イオンと水分子は、偏りなく存在しているため、胴体部BDは屈曲していない。一方、図25(b)に示すように、電極P1がプラス、電極P2がマイナスとなるように、電極P1,P2間に電圧が印加されると、陽イオン及び水分子は、電極P2側に引き寄せられる。これにより、胴体部BDは電極P1側に屈曲する。
本体部BD1の表面には、複数の電極P1が配列され、本体部BD1の裏面には、電極P1と対向するように電極P1と同一サイズの複数の電極P2が配列されている。これにより、胴体部BDは、複数のセグメントに区画される。
なお、図24では、胴体部BDは表面に7個の電極P1が配列され、裏面に7個の電極P2が配列され、7個のセグメントに区画されている。
図26は、本発明の他の実施の形態による制御システムを示した図である。図26に示す制御システムは、7個のセグメントに対応して設けられた7個のゆらぎ発振器10−1〜10−7と、各ゆらぎ発振器10−1〜10−7間に接続された6個の微分器30とを備えている。すなわち、制御システムは、微分器30を介して一方向結合された7個のゆらぎ発振器10−1〜10−7を備えている。
具体的には、ゆらぎ発振器10−1の確率共振素子20−3の出力端子が微分器30を介してゆらぎ発振器10−2の確率共振素子20−1の入力端子に接続されるというように、ゆらぎ発振器10−1〜10−7が一方向結合されている。
なお、図26においては、制御システムは7個のゆらぎ発振器10により構成されているが、これに限定されず、2個、3個、又は5個以上のセグメント数に応じた個数のゆらぎ発振器10により構成してもよい。
アクチュエータ410〜470は、それぞれ、図25に示す7個にセグメント分けされた胴体部BDの各セグメントに対応している。アクチュエータ410〜470は、電極P1がゆらぎ発振器10−1〜10−7を構成する各確率共振素子20−4の出力端子に接続され、電極P2が接地されている。そして、アクチュエータ410〜470は、ゆらぎ発振器10−1〜10−7からの出力信号に従って、胴体部BDを動作させる。なお、アクチュエータ410〜470は、確率共振素子20−4に限らず、他の確率共振素子20−1〜20−3に接続してもよい。また、1のゆらぎ発振器10に対して、例えば、確率共振素子20−2,20−4の各々にアクチュエータ410を接続するというように、2個以上のアクチュエータ410を接続してもよい。
微分器30は、確率共振素子20を構成する微分器24よりも時定数が大きく設定されており、入力側に接続されたゆらぎ発振器10内を循環する信号と、出力側に接続されたゆらぎ発振器10内を循環する信号とを周波数を同一として位相をずらすことができる。すなわち、微分器30の微分時間は、確率共振素子20を構成する微分器24の微分時間よりも長くなる。そのため、ゆらぎ発振器10内を循環する信号は、微分器30から出力される信号よりも周波数が大きくなる。これにより、微分器30の出力側に接続されたゆらぎ発振器10内を循環する信号の位相と、微分器30の入力側に接続されたゆらぎ発振器10内を循環する信号の位相とがずれる。
そのため、各セグメントには位相のずれた信号が入力され、胴体部BDを蛇行するように動作させることが可能とり、ヘビ型ロボットを遊泳させることができる。
図27は、図26に示す制御システムを構成するゆらぎ発振器10−1,10−2の波形図を示し、(a)はゆらぎ発振器10−1の確率共振素子20−3の閾値判別部23からの出力信号を示し、(b)は微分器30からの出力信号を示し、(c)はゆらぎ発振器10−2の確率共振素子20−3の閾値判別部23からの出力信号を示している。
図27に示すように、ゆらぎ発振器10−1からの出力信号は、微分器30によって微分され、微分器30の時定数に依存して減衰し、ゆらぎ発振器10−2に入力される。図27(b)に示す期間t1では、ゆらぎ発振器10−2はゆらぎ発振器10−1の出力信号を受けて協調的にハイレベル状態になるが、微分器30の働きによりゆらぎ発振器10−1の出力信号が減衰するため、期間t3では、ゆらぎ発振器10−2は再び自由に発振する。
同様に、図27(b)に示す期間t2では、ゆらぎ発振器10−2はゆらぎ発振器10−1の出力を受けてローレベル状態になるが、期間t4では、ゆらぎ発振器10−2は再び自由に発振する。このような働きにより、後段のゆらぎ発振器10−2は、前段の発振器10−1の動作影響を受けつつも自由に発振タイミングを決めることができ、これがゆらぎ発振器10−1及び10−2からなるゆらぎ発振システムの柔軟性と協調性の元になっている。なお、発振のタイミングを決めるt1,t2の幅は、微分器30の時定数によって決まる。ゆらぎ発振器10−2,10−3、及びゆらぎ発振器10−3,10−4もゆらぎ発振器10−1,10−2の場合と同様に動作するため、説明を省略する。
図28は、ノイズ信号の強度を1Vとしたときに図26に示すゆらぎ発振器10−1〜10−4の各々から出力される、具体的にはゆらぎ発振器10−1〜10−4を構成する各確率共振素子20−3の閾値判別部23からの出力信号の波形図を示している。図28に示すように、各ゆらぎ発振器10において出力信号(発振パターン)の位相がずれるため、隣り合うアクチュエータ410を連鎖的に動作させることができる。また、図28中矢印で示す部分に不規則な発振がみられる。これは、後段のゆらぎ発振器10−4が前段のゆらぎ発振器10−3の出力に同期するためであり、ゆらぎ発振器10−1〜10−4の間で位相差が大きくなりすぎないように自律的に発振が調整されていることが分かる。
次に、図26に示す制御システムの動作を確認するために行ったシミュレーションについて説明する。図29は、シミュレーションに用いたヘビ型ロボットのシミュレーションモデルを示した図である。図29に示すようにシミュレーションモデルは、5個のノードN1〜N5と、各ノードN1〜N5間を接続する4本のエッジE1〜E4とを備えている。
ノードN1は固定点である。ノードN2〜N5は図26に示すアクチュエータ410〜440に対応する可動点である。エッジE1〜E4は、ノードN1〜N5からの仮想的な力を受けてノードN1〜N5を中心に回転する。なお、図29に示すx軸は、ゆらぎ発振器10−1〜10−4からの出力信号が印加される前において、一直線上に並んだエッジE1〜E4の長手方向を示し、y軸は、x軸と直交する方向を示している。
図30は、図29に示すシミュレーションモデルに、図26に示す制御回路を構成するゆらぎ発振器10−1〜10−4からの出力信号を入力したときのシミュレーションモデルの動きを示したグラフである。図29(a)〜(d)はそれぞれ、ゆらぎ発振器10−1〜10−4からの出力信号のシミュレーションモデルへの印加を開始してから、一定時間経過する毎のシミュレーションモデルの状態を示している。図29(a)〜(d)に示すようにエッジE1〜E4が連鎖するように動作していることが分かる。
このように、図26に示す制御システムによれば、ゆらぎ発振器10−1〜10−7が微分器30を介して一方向結合されているため、ゆらぎ発振器10−1〜10−7において、発振パターンの位相差が大きくなりすぎないように位相をずらすことが可能となり、ゆらぎ発振器10−1〜10−7に接続されたアクチュエータ410〜470を連鎖的に動作させることができ、多関節ロボットであるヘビ型ロボットをヘビやトカゲのようにリアルに動作させることが可能となる。
なお、上記実施の形態では、図1に示すように、複数の確率共振素子20をリング状に一方向結合するようにゆらぎ発振器10を構成したが、これに限定されず、図2に示す1個の確率共振素子20でゆらぎ発振器10を構成してもよい。この場合、確率共振素子20の出力端子及び入力端子221間にフィードバックループを形成し、かつ、発振が生じるように閾値判別部23の閾値を所定の値に調整すればよい。
上述の実施の形態の技術的特徴は以下のようにまとめることができる。
(1)上述のゆらぎ発振器は、入力された信号にノイズ信号を重畳してゆらぎを与え、この信号を閾値と比較した後、微分することでパルス信号を出力する確率共振素子を複数備え、前記複数の確率共振素子は、1の確率共振素子の出力端子が次段の確率共振素子の入力端子に接続され、前記1の確率共振素子の入力端子が前段の確率共振素子の出力端子に接続されるようにリング状に一方向結合されていることを特徴とする。
このゆらぎ発振器においては、1の確率共振素子に対して、信号が入力されると、入力された信号にノイズ信号が足し合わされてゆらぎが与えられ、閾値と比較された後、微分された信号が出力される。出力された信号は、下流側に接続された確率共振素子に入力され、再度、ノイズ信号が足し合わされ、閾値と比較された後、微分されて出力される。すなわち、各確率共振素子から出力された信号は、下流側に接続された確率共振素子に対して確率的な信号を出力させる。
このようにして出力された信号が、リング状に結合された確率共振素子間で伝達されると、確率共振素子間の協調現象により、各確率共振素子がオン状態となるタイミングが同期し、各確率共振素子は一定周期で自励発振する。つまり、確率共振素子がオン状態になるタイミングがゆらぐことにより、各確率共振素子は、同期しやすいタイミングを自律的に選んで発振する。そのため、確率共振現象に基づいて発火する神経細胞から構成され、自律的に周期的信号を送り出すニューラルネットワークによる発振器であるCPGと同様の原理により周期的信号を生成することができ、CPGを人工的に実現するうえで有用となる発振器を提供することができる。
また、本ゆらぎ発振器は、従来の発振器のように抵抗やコンデンサから定まる時定数によって発振周波数が決定されないため、発振周期を自律的かつ柔軟に変更することができる発振器を提供することができる。更に、本ゆらぎ発振器は、駆動源としてノイズ信号を利用したノイズ駆動型の発振器であるため、回路を構成する半導体素子の駆動電圧等を低くすることができ、低消費電力、かつ、ノイズに対してロバストな発振器を提供することができる。
(2)前記確率共振素子は、入力された信号にノイズを重畳する重畳回路と、前記重畳回路を閾値と比較する比較回路と、前記比較回路から出力された信号を微分する微分器とを備えることが好ましい。
この場合、簡便な構成により確率共振素子を構築することができる。
(3)前記確率共振素子は、1の確率共振素子が隣接する確率共振素子に信号をどの程度伝達することができるかを示す結合定数を調節するための出力部を更に備えることが好ましい。
この場合、結合定数を調節することで、ゆらぎ発振器からの出力信号の発振周波数を調節することができる。
(4)前記ゆらぎ発振器からの出力信号の発振周波数は、前記ノイズ信号の強度、前記微分器の時定数、及び前記確率共振素子間の結合定数のうち少なくともいずれか1つを調節することで、変更されることが好ましい。
この構成によれば、ゆらぎ発振器からの出力信号の発振周波数を所望する周波数に調節することができる。
(5)前記確率共振素子は、各確率共振素子を発振させるためのトリガとなるトリガ信号が入力される端子を更に備えることが好ましい。
この場合、各確率共振素子を発振させるためのトリガ信号が入力される端子を備えているため、トリガ信号を入力してより確実に発振させることができる。
(6)上述のゆらぎ発振システムは、各々、上述のゆらぎ発振器から構成される第1及び第2のゆらぎ発振器を備え、前記第1のゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子は、入力端子が前記第2のゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子の出力端子に接続されていることを特徴とする。
このゆらぎ発振システムにおいては、第1のゆらぎ発振器の出力信号が第2のゆらぎ発振器に入力されるように第1及び第2のゆらぎ発振器が接続されているため、第1のゆらぎ発振器の出力信号によって、第2のゆらぎ発振器の出力信号に影響を与えることが可能となり、より現実のCPGに近い発振器を提供することができる。
(7)上述の観測装置は、上述のゆらぎ発振器と、環境情報を検出し、検出信号を前記ゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子の入力端子に出力するセンシング手段と、前記ゆらぎ発振器の出力信号をモニタするモニタ手段とを備えることを特徴とする。
この観測装置においては、センシング手段により、環境情報が検出されるとその検出信号がゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子に入力されるため、その検出信号の影響によりゆらぎ発振器の発振周波数が変化する。一方、モニタ手段は、確率共振素子からの出力信号をモニタしているため、発振周波数の変化を表すことができる。つまり、確率共振素子を用いて環境情報が検出されているため微弱な環境情報を精度良く検出することができる。
(8)上述の制御システムは、上述のゆらぎ発振器と、前記ゆらぎ発振器の出力信号によって制御されるアクチュエータとを備える第1及び第2の制御ユニットと、前記第1の制御ユニットにおけるゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子と、前記第2の制御ユニットにおけるゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子との間に介設された微分器とを備えることを特徴とする。
この制御システムにおいては、ゆらぎ発振器を用いた全く新規な発想に基づく制御システムを提供することができる。
(9)前記第1及び第2の制御ユニットは、前記第1の制御ユニットにおけるゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子の入力端子及び出力端子が、各々、微分器を介して前記第2の制御ユニットにおけるゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子の出力端子及び入力端子に接続されるように双方向結合されていることが好ましい。
この場合、第1の制御ユニットと第2の制御ユニットを相互に連携させながら、アクチュエータを駆動させることができる。
(10)前記第1及び第2の制御ユニットは、前記第1の制御ユニットにおけるゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子の出力端子が、微分器を介して前記第2の制御ユニットにおけるゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子の入力端子に接続されるように一方向結合されていることが好ましい。
この場合、第1の制御ユニットを構成するゆらぎ発振器及び第2の制御ユニットを構成するゆらぎ発振器が微分器を介して一方向結合されているため、第1の制御ユニットを構成するゆらぎ発振器及び第2の制御ユニットを構成するゆらぎ発振器において、発振パターンの位相差が大きくなりすぎないように位相をずらすことが可能となり、第1及び第2のアクチュエータを連鎖的に動作させることができる。
(11)前記第1及び第2の制御ユニットは、各々、環境情報を検出し、検出信号を前記ゆらぎ発振器を構成する1の確率共振素子の入力端子に出力するセンシング手段を更に備えることが好ましい。
この構成によれば、アクチュエータの動作による環境情報の変化がセンシング手段により検出され、その環境情報の変化によって各制御ユニットを構成するゆらぎ発振器の出力を変化させ、他のアクチュエータの動作を変化させるといった全くの新規な発想に基づく制御システムを提供することができる。