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JP4875250B2 - ポリエーテルケトンおよびその製造方法 - Google Patents
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JP4875250B2 - ポリエーテルケトンおよびその製造方法 - Google Patents

ポリエーテルケトンおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリエーテルケトンおよびその製造方法ならびに当該ポリエーテルケトンを架橋することによって得られる架橋型樹脂に関するものである。
【0002】
本発明のポリエーテルケトンは、多層配線基板、プリント基板用表面コーティング剤等の絶縁樹脂コーティング剤、モーター、トランス、コイル等において使用される巻線の絶縁被覆材料、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、トリプレート線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路などから構成された配線層を有する高周波用配線基板、薄膜の磁気素子、特にチップインダクタ、トランス、DC−DCコンバータなどの小容量(数ワット程度)の電源部品として用いられる薄膜磁気素子、多層配線基板、LSIなどの製造工程において、シリコンウェハー等の半導体の加工、貯蔵及び運搬の際に使用されるディスクキャリア、光導波路および薄型の大型画面用カラー表示装置等に用いられるプラズマディスプレイパネル用隔壁などの原料として有用である。
【0003】
【従来の技術】
高性能を有する含フッ素重合体は、フィルム、光学またはマイクロエレクトロニクス用被覆剤、ガス分離用膜等として利用される先端材料として極めて注目をあびている(Cassidy, P.E., Aminabbai, T.M. 及び Farley, J.M., J. Macromol. Sci.-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29 (2&3), pp.365-429 (1989))。重合鎖へのフッ素原子の導入は、重合体の溶解度、耐炎性、熱安定性およびガラス転移温度の増加をもたらし、さらに着色、結晶性、誘電率および吸湿性をも低下させる。このような利点があるので、ヘキサフルオロイソプロピリデン基含有ポリ(アリールエーテルケトン)(PEK)は、宇宙ならびにエレクトロニクス用に製造されかつ研究された(Tullos, G.L. 及び Cassidy, P.E., Macromolecules., 24 , p. 6059-6064 (1991))。最近、パーフルオロフェニレン基含有ポリ(アリールエーテルケトン)が、パーフルオロベンゾフェノンから合成された(Mercer, F.W., Fone, M.M., Reddy, V.N. 及び Goodwin, A.A., Polymer, 38(8), 1989-1995 (1997))。しかしながら、これらの重合体は、未だ溶解度ならびに耐炎性が充分ではないという欠点がある。
【0004】
また、フェニルエチニル部分を有する架橋型の含フッ素ポリ(アリレンエーテル)が製造された(Hyung-Jong Lee et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.36, pp.2881-2887 (1998))。上記文献には、4,4’−(ヘキサフルオロ−イソプロピリデン)ジフェノールを過剰のデカフルオロビフェニルと反応させた後、4−フェニルエチニルフェノールと反応させることによって合成された含フッ素ポリ(アリレンエーテル)が示された。しかしながら、ポリエーテルケトンについて開示された文献は見当たらない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、高い機械的強度および強靭性を有し、電気的特性、熱酸化安定性および溶解性に優れた新規なポリエーテルケトンを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、さらに透明性に優れ、かつ膜形成が容易であるポリエーテルケトンを提供することにある。
【0007】
本発明のさらなる目的は、上記ポリエーテルケトンを架橋することによって得られる架橋型樹脂を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、様々なポリマーについて鋭意検討を行なった結果、特定の構造を有するポリエーテルケトンの少なくとも一方の末端を、フェニルエチニル部分、プロパギルオキシ部分、シアネート部分及びオキサゾリン部分等の架橋基で置換することによって得られるポリマーは、高い機械的強度および強靭性を有し、電気的特性、熱酸化安定性、溶解性及び透明性に優れる上、架橋時に分子量の増加に伴い溶解性が低下するため、溶剤への溶出が抑えられて膜を容易に形成することができることを知得した。本発明者らはまた、このポリマーの架橋方法についても鋭意検討を行なった結果、公知の架橋方法が同様にして使用できるが、特に熱架橋、電子線架橋及び化学的架橋によって、ポリマーの架橋が行なえることをも知得した。これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記諸目的は、下記(1)〜(7)によって達成される。
【0010】
(1) 架橋基を有するポリエーテルケトン。
【0011】
(2) 上記架橋基は、下記式(I):
【0012】
【化13】
【0013】
および/または下記式(II):
【0014】
【化14】
【0015】
で示される、前記(1)に記載のポリエーテルケトン。
【0016】
(3) フッ素原子を含有する、前記(1)または(2)に記載のポリエーテルケトン。
【0017】
(4) 上記ポリエーテルケトンは、下記式(III):
【0018】
【化15】
【0019】
ただし、Xは、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わし;Yは、前記式(I)または前記式(II)で示される基を表わし;qは、0〜4の整数であり;nは、重合度を表し;mは、0または1の整数であり;およびR1は、下記式(IV):
【0020】
【化16】
【0021】
この際、X’は、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わし;q’は、0〜4の整数であり;pは、0または1の整数であり;およびR2は、2価の有機基を表わす、
で示されるものである、前記(1)〜(3)のいずれか一に記載のポリエーテルケトン。
【0022】
(5) 上記ポリエーテルケトンは、下記式(V):
【0023】
【化17】
【0024】
ただし、Xは、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わし;X’は、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基を表わし;Y及びY’は、それぞれ独立して、前記式(I)または前記式(II)で示される基を表わし;qは、0〜4の整数であり;q’は、0〜4の整数であり;nは、重合度を表し;ならびにR1は、下記式(VI):
【0025】
【化18】
【0026】
この際、X’及びq’は、上記式(V)における定義と同様であり;およびR2は、2価の有機基を表わす、
で示されるものである、前記(1)〜(3)のいずれか一に記載のポリエーテルケトン。
【0027】
(6) 前記(1)〜(5)のいずれか一に記載のポリエーテルケトンを架橋することにより得られる架橋型樹脂。
【0028】
(7) 塩基の存在下で、ハロゲン原子を有するポリエーテルケトンを、下記式(VII):
【0029】
【化19】
【0030】
で示されるフェニルエチニルフェノール化合物(以下、単に「フェニルエチニルフェノール化合物」とも称する)および/または下記式(VIII):
【0031】
【化20】
【0032】
で示されるプロパギルオキシフェノール化合物(以下、単に「プロパギルオキシフェノール化合物」とも称する)と反応することからなる、前記(2)に記載のポリエーテルケトンの製造方法。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
第一の態様によると、本発明は、フェニルエチニル、プロパギルオキシ、シアネート及びオキサゾリンなど由来の、架橋基、好ましくは上記式(I)で示される特定のフェニルエチニル由来の架橋基(以下、単に「フェニルエチニル基」と称する)および/または上記式(II)で示される特定のプロパギルオキシ由来の架橋基(以下、単に「プロパギルオキシ基」と称する)を有するポリエーテルケトンを提供するものである。
【0035】
本発明において、架橋基は、線状ポリマー中の特定の原子間に化学結合を形成して3次元網状構造を構成することができる基であれば特に制限されない。具体的には、フェニルエチニル由来の基、プロパギルオキシ由来の基、シアネート由来の基及びオキサゾリン由来の基などが挙げられる。これらのうち、フェニルエチニル由来の基及びプロパギルオキシ由来の基が好ましく、特に上記式(I)で示されるフェニルエチニル基及び上記式(II)で示されるプロパギルオキシ基が好ましい。
【0036】
この際、フェニルエチニル基は、上記式(I)で示される基、すなわち、フェノキシ基のo−、m−またはp−のいずれか1箇所にフェニルエチニル部分が結合した基である。これらのうち、フェノキシ基のパラ位にフェニルエチニル部分を少なくとも一方の末端に有するポリエーテルケトンが特に好ましい。
【0037】
また、プロパギルオキシ基は、上記式(II)で示される基、すなわち、フェノキシ基のo−、m−またはp−のいずれか1箇所にプロパギルオキシ部分が結合した基である。これらのうち、フェノキシ基のパラ位にプロパギルオキシ部分を少なくとも一方の末端に有するポリエーテルケトンが特に好ましい。
【0038】
本発明のポリエーテルケトンは、架橋基を有することを必須とするが、ポリエーテルケトンが複数の架橋基を有する場合には、各架橋基は、それぞれ、同一であってもあるいは異なるこのであってもよい。好ましくは、本発明のポリエーテルケトンは、フェニルエチニル基および/またはプロパギルオキシ基を有し、より好ましくはフェニルエチニル基および/またはプロパギルオキシ基を末端に有する。それ以外のポリエーテルケトンの構造は、所望の機械的強度、強靭性、電気的特性、熱酸化安定性、溶解性、透明性及び膜形成容易性などを考慮して適宜選択されるが、熱安定性、電気的特性及び溶解性などを考慮すると、好ましくはフッ素を含有する。より具体的には、上記式(III)で示される重合体(以下、単に「ポリエーテルケトン(A)」ともいう)及び上記式(V)で示される重合体(以下、単に「ポリエーテルケトン(B)」ともいう)が挙げられる。
【0039】
上記式(III)及び(V)で示されるポリエーテルケトンの各繰り返し単位は、下記式:
【0040】
【化21】
【0041】
で示されるp−テトラフルオロベンゾイレン基(本明細書では、単に「p−テトラフルオロベンゾイレン基」ともいう)及び下記式:
【0042】
【化22】
【0043】
で示されるオキシアルキレン基(本明細書では、単に「オキシアルキレン基」ともいう)がベンゼン環の任意の位置に(オルト位、メタ位またはパラ位に、特に好ましくはパラ位に)それぞれ結合し、ベンゼン環の任意の残位がXで置換されるまたは置換されない構造を有するものである。
【0044】
上記式(III)及び(V)において、Xは、ハロゲン原子、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子、好ましくはフッ素原子;低級アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチル等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、好ましくはメチル及びエチル、ならびにトリフルオロメチル等のこれらのハロゲン化アルキル基;低級アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、好ましくはメトキシ及びエトキシ、ならびにトリフルオロメトキシ等のこれらのハロゲン化アルコキシ基などを表わす。これらのうち、フッ素原子が特にXとして好ましく使用される。上述したように、Xは、p−テトラフルオロベンゾイレン基及びオキシアルキレン基が結合しない残位の水素原子の代わりに置換される基であるが、ベンゼン環へのXの結合数、即ち、式(III)及び(V)におけるqの値は、0〜4の整数である。なお、上記式(III)及び(V)において、Xが一つのベンゼン環中に複数個存在する、即ち、qが2〜4の整数である際には、Xは、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、好ましくは同一である。また、上記式(III)及び(V)において、Xは、各繰り返し単位において、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、好ましくは同一である。
【0045】
上記式(III)及び(V)において、Y及びY’は、架橋基、好ましくはフェニルエチニル基および/またはプロパギルオキシ基を表わす。この際、Y及びY’がフェニルエチニル基を表わす際には、Y及びY’は、フェノキシ基のo−、m−またはp−のいずれか1箇所にフェニルエチニル部分が結合した基のいずれであってもよいが、フェノキシ基のパラ位にフェニルエチニル部分が結合した基を表わすことが特に好ましい。また、Y及びY’がプロパギルオキシ基を表わす際には、Y及びY’は、フェノキシ基のo−、m−またはp−のいずれか1箇所にプロパギルオキシ部分が結合した基のいずれであってもよいが、フェノキシ基のパラ位にプロパギルオキシ部分が結合した基を表わすことが特に好ましい。なお、上記式(V)において、両末端のY及びY’は、同一であってもまたは異なるものであってもよいが、好ましくは同一である。
【0046】
また、上記式(III)において、mは0または1の整数である。
【0047】
また、上記式(III)において、R1は、上記式(IV)で表される基であり、上記式(V)においては、R1は、上記式(IV)中、pが1である、即ち上記式(VI)で表される基である。
【0048】
上記式(IV)、(V)及び(VI)において、X’は、ベンゼン環の水素原子に置換する原子又は基を示し、ハロゲン原子、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子、好ましくはフッ素原子;低級アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチル等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、好ましくはメチル及びエチル、ならびにトリフルオロメチル等のこれらのハロゲン化アルキル基;低級アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ等の炭素原子数1〜6、好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルコキシ基、好ましくはメトキシ及びエトキシ、ならびにトリフルオロメトキシ等のこれらのハロゲン化アルコキシ基などを表わす。これらのうち、フッ素原子が特にX’として好ましく使用される。また、上記式(IV)、(V)及び(VI)において、q’は、X’のベンゼン環への結合数を表わすが、q’の値は、0〜4の整数である。なお、上記式(IV)、(V)及び(VI)において、X’が一つのベンゼン環中に複数個存在する、即ち、q’が2〜4の整数である際には、X’は、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、好ましくは同一である。また、上記式(IV)、(V)及び(VI)において、X’は、各ベンゼン環において、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、好ましくは同一である。
【0049】
したがって、R1は、下記式(IX):
【0050】
【化23】
【0051】
で表される基(式(VI)の場合には、pは1である)であることが好ましい。
【0052】
また、上記式(IV)において、pは0または1の整数である。また、上記式(IV)及び(VI)において、R2は、2価の有機基を表わすが、具体的には、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、プロピレン(−CH2CH(CH3)−)、トリメチレン(−CH2CH2CH2−)、テトラメチレン(−CH2(CH22CH2−)、ペンタメチレン(−CH2(CH23CH2−)、ヘキサメチレン(−CH2(CH24CH2−)、プロペニレン(−CH2CH=CH−)、ビニレン(−CH=CH−)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサメチレン(−CH2(CF24CH2−)、及び2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタメチレン(−CH2(CF26CH2−)等の、炭素原子数が、通常、1〜12、好ましくは1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の、飽和若しくは不飽和アルキレン基;式:−CH2−CH2−O−CH2−CH2−で表わされる基;ならびにo−、m−またはp−ベンゼンジメチレン、o−、m−またはp−ベンゼンテトラフルオロジメチレン、o−、m−またはp−フェニレン、2価のナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−またはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、ビフェニルスルホン、フェノールフタレイン、および下記5式:
【0053】
【化24】
【0054】
で表わされる芳香族基などの2価の芳香族基が挙げられる。なお、本発明による2価の有機基において、炭素原子に直接結合する水素がハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されていてもよい。これらのうち、2価の芳香族基がR2として好ましく、より好ましくは、フェノールフタレイン、および下記7種:
【0055】
【化25】
【0056】
で示される芳香族基がR2として使用される。
【0057】
上記式(III)において、nは、重合度を表わし、具体的には、2〜5000、好ましくは5〜500である。さらに、本発明において、ポリエーテルケトン(A)は、同一の繰り返し単位からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であったもまたはランダム状であってもよい。
【0058】
また、上記式(V)において、nは、重合度を表わし、具体的には、2〜2000、より好ましくは5〜200である。さらに、本発明において、ポリエーテルケトン(B)は、同一の繰り返し単位からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であったもまたはランダム状であってもよい。
【0059】
本発明において好ましく使用されるポリエーテルケトン(A)は、下記式(X):
【0060】
【化26】
【0061】
で示されるものである。なお、上記式(X)において、R1、m、n及びYは、上記式(III)における定義と同様である。また、本発明のポリエーテルケトン(A)は、架橋構造を有するものであってもよい。
【0062】
また、本発明において好ましく使用されるポリエーテルケトン(B)は、下記式(XI):
【0063】
【化27】
【0064】
で示されるものである。なお、上記式(XI)において、R1、n及びYは、上記式(IV)における定義と同様である。また、本発明のポリエーテルケトン(B)もまた、架橋構造を有するものであってもよい。
【0065】
本発明のポリエーテルケトンの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法、例えば、K. Kimura et al., Polymer Preprints, Vol. 39, No. 2, 1998に記載される方法及びHyung-Jong Lee et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.36, pp.2881-2887 (1998)に記載される方法を単独であるいはこれらの方法を組合わせた方法を使用することによって、製造できる。より具体的には、本発明のポリエーテルケトンは、塩基の存在下で、ハロゲン原子を有するポリエーテルケトンを、上記式(VII)で示されるフェニルエチニルフェノール化合物および/または上記式(VIII)で示されるプロパギルオキシフェノール化合物と反応することによって製造できる。したがって、第二の態様によると、本発明は、塩基の存在下で、ハロゲン原子を有するポリエーテルケトンを、上記式(VII)で示されるフェニルエチニルフェノール化合物および/または上記式(VIII)で示されるプロパギルオキシフェノール化合物と反応することからなる本発明のポリエーテルケトンの製造方法を提供するものである。
【0066】
以下、本発明の第二の態様の製造方法を、本発明の特に好ましい例である上記式(X)及び(XI)で示されるポリエーテルケトン(A)及び(B)に分けて、より詳細に説明する。
【0067】
まず、本発明の特に好ましい一例である上記式(X)で示されるポリエーテルケトン(A)の製造方法について以下に詳述する。なお、本発明による上記式(III)で示されるポリエーテルケトンは、下記方法と類似の方法によって同様にして製造でき、例えば、置換した化合物を代わりに出発原料として使用する、または下記合成方法において各工程間若しくは全工程終了後の生成物の相当するベンゼン環に所望の置換基を公知の方法を用いて導入するなどによって、当業者により同様にして調製できる。
【0068】
以下、本発明の特に好ましい一例である上記式(X)で示されるポリエーテルケトン(A)の製造方法を、mが0である、またはmが1でありかつpが0である上記式(X)で示されるポリエーテルケトン(A)(以下、「ポリエーテルケトン(A1)」と称する)と、mが1でありかつpが1である上記式(X)で示されるポリエーテルケトン(A)(以下、「ポリエーテルケトン(A2)」と称する)に分けて、詳述する。
【0069】
第一に、ポリエーテルケトン(A1)の製造方法の一実施態様を以下に記載する。
【0070】
すなわち、(1)まず、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドを、有機溶剤中でフリーデルクラフツ触媒の存在下で、例えば、メトキシベンゼンやエトキシベンゼン等のアルコキシベンゼンまたは4−メトキシジフェニルエーテルや4−エトキシジフェニルエーテル等の4−アルコキシジフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応させることにより、p−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルをそれぞれ得(工程1);(2)この反応産物を脱アルキル化反応することよって、下記式:
【0071】
【化28】
【0072】
ただし、qは0または1の整数である、
で示される2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物(以下、単に「2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物」と称する)を得た後(工程2);(3)このようにして得られた2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物を、塩基性化合物の存在下で有機溶媒中で、30〜250℃、好ましくは50〜200℃の反応温度で加熱し、重合することによって、下記式:
【0073】
【化29】
【0074】
で示されるハロゲン原子を有するポリエーテルケトンが得られる(工程3)。このハロゲン原子を有するポリエーテルケトンは、本発明のポリエーテルケトンの一であるポリエーテルケトン(A1)中のフェニルエチニル基の代わりにフッ素原子が置換された重合体であり、以下、「ポリエーテルケトン原料(A1)」と称する。さらに、(4)このようにして得られたポリエーテルケトン原料(A1)は、さらにフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物と反応させることによって、本発明のポリエーテルケトン(A1)が得られる(工程4)。
【0075】
上記工程1におけるフリーデルクラフツ反応において、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルの使用量は、化学量論的には2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドと等モルであるが、好ましくは2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モル当たり、0.8〜1.2モル、より好ましくは0.9〜1.1モルである。この際、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルの使用量が0.8モル未満では、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルに過剰に2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル基が導入されてしまう恐れがある。これに対して、アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルの使用量が1.2モルを越えると、未反応のアルコキシベンゼンまたは4−アルコキシジフェニルエーテルが多量に残る恐れがある。
【0076】
上記工程1のフリーデルクラフツ反応において効果的に使用されるフリーデルクラフツ触媒としては、塩化アルミニウム、塩化アンチモン、塩化第二鉄、塩化第一鉄、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、四塩化錫、塩化ビスマス、塩化亜鉛、塩化水銀及び硫酸等が挙げられる。また、フリーデルクラフツ触媒の使用量は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モルに対して、0.5〜10モル、好ましくは1〜5モルである。
【0077】
上記フリーデルクラフツ反応において使用される有機溶剤は、酸クロライドと反応しないものでなければならない。このような有機溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、二硫化炭素及びニトロベンゼン等が挙げられる。この有機溶剤における2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドの濃度は、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。反応は、反応系を撹拌状態に保ちながら、0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度で行なわれる。
【0078】
上記工程1の反応によって得られる生成物は、反応混合物に水を注加し、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたは四塩化炭素等の抽出剤で抽出した後、有機層を抽出物から分離し、抽出剤を留去することにより得られる。さらに、この生成物を、必要であれば、メタノールまたはエタノールで再結晶化することによって、白色結晶として得てもよい。
【0079】
次に、工程2の脱アルキル化処理について、以下に説明する。すなわち、脱アルキル化反応は、酸、アルカリまたは有機金属試薬などを用いて行うことができる。試薬としては、例えば、臭化水素、ヨウ化水素、トリフルオロ酢酸、ピリジンの塩酸塩、濃塩酸、ヨウ化マグネシウムエーテラート(magnesium iodide etherate)、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、三塩化ホウ素、三ヨウ化ホウ素、水酸化カリウム及びグリニヤール試薬などが挙げられる。試薬の使用量は、p−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対して、0.1モル以上、好ましくは0.1〜30モルである。
【0080】
上記工程2において、脱アルキル化反応は、無溶媒下で行われてもあるいは溶媒中で行われてもよいが、反応効率や反応制御などを考慮すると、溶媒中で行われることが好ましい。溶媒中で脱アルキル化反応を行う場合に効果的に使用される溶媒としては、例えば、水、酢酸、無水酢酸、ベンゼン及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。また、この溶媒中でのp−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)アルコキシベンゼンまたは4−アルコキシ−4’−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルの濃度は、1〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。反応は、0〜250℃、好ましくは50〜200℃の温度で行なわれる。
【0081】
上記工程3の重合反応で使用される有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメタノール等の極性溶媒やトルエンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、有機溶媒における2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物の濃度は、5〜50質量%、好ましくは、10〜30質量%である。
【0082】
なお、上記工程3において、トルエンや他の同様の溶媒を反応の初期段階に使用する際には、フェノキシド生成の際に副生する水を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除去できる。
【0083】
上記工程3において使用される塩基性化合物は、重縮合反応によって生成するフッ化水素を捕集することにより重縮合反応を促進するよう作用する。このような塩基性化合物としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸リチウム及び水酸化カリウムが挙げられる。この際の塩基性化合物の使用量は、使用される2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物1モルに対して、0.5〜10モル、好ましくは0.5〜5モルである。
【0084】
上記工程3において、重合反応終了後は、反応溶液より蒸発等により溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄することによって、所望の重合体が得られる。または、反応溶液を重合体の溶解度が低い溶媒中に加えることにより、重合体を固体として沈殿させ、沈殿物を濾過により分離することによって、ポリエーテルケトン原料(A1)を固体として得てもよい。または、重合反応後の反応溶液をそのまま工程4に使用してもよい。
【0085】
このようにして得られたポリエーテルケトン原料(A1)は、工程4によるフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物との反応によって、本発明のポリエーテルケトン(A1)が得られる。上記反応で使用されるフェニルエチニルフェノール化合物は、所望のポリエーテルケトン(A1)の末端のフェニルエチニル基の構造によって適宜選択され、好ましくは4−フェニルエチニルフェノールである。また、上記反応で使用されるプロパギルオキシフェノール化合物は、所望のポリエーテルケトン(A1)の末端のプロパギルオキシ基の構造によって適宜選択され、好ましくは4−プロパギルオキシフェノールである。
【0086】
本発明において、フェニルエチニルフェノール化合物及びプロパギルオキシフェノール化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が同様にして使用できる。例えば、フェニルエチニルフェノール化合物の好ましい一例である4−フェニルエチニルフェノールは、Hyung-Jong Lee et al., Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.36, pp.2881-2887 (1998)に記載される方法等の、公知の方法に従って合成される。簡単に述べると、4−ブロモフェノールを、ピリジン等の有機溶媒中で、窒素雰囲気下、攪拌しながら、無水酢酸と反応させることによって1−ブロモ−4−アセトキシベンゼンを得た後、このようにして合成された1−ブロモ−4−アセトキシベンゼンを、ジメチルアセトアミドやトリエチルアミン等の有機溶媒中で、窒素雰囲気下、トリフェニルホスフィン、PdCl2(PPh32及びCuIの存在下で、攪拌しながら、フェニルアセチレンと反応させることによって得られる。また、プロパギルオキシフェノール化合物の好ましい一例である4−プロパギルオキシフェノールは、例えば、ハイドロキノンを、エタノール等のアルコール中で、プロパギルクロライドと混合し、この混合液を、攪拌しながら、水酸化カリウム水溶液等のアルカリの存在下で、反応させることによって得られる。
【0087】
本発明において、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物は、そのままの状態で添加されてもよいが、ポリエーテルケトン原料(A1)との反応性を考慮して、有機溶媒中で、塩基の存在下で予め塩の形態とすることが好ましい。この際、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノールなどが挙げられ、メタノール及びエタノールが好ましい。また、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられ、これらのうち、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムが好ましい。
【0088】
有機溶媒の使用量は、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物を効率良く塩の形態にできるような量であれば特に制限されないが、有機溶媒におけるフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の濃度が、1〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%となるような量である。また、塩基の存在量もまた、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物を効率良く塩の形態にできるような量であれば特に制限されず、化学量論的にはフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物と等モルであるが、好ましくは、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物1モルに対して、1〜10モル、より好ましくは1〜5モルである。
【0089】
フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の添加量は、工程3において使用される2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物1モルに対して、好ましくは1モル以下、より好ましくは0.001〜1モルである。この際、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の添加量が1モルを超えても、添加に見合う効果が得られず、過剰のフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物が残存する。また、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の添加量が0.001モル未満であると、ポリエーテルケトン原料(A1)の一方の末端にあるフッ素原子を十分フェニルエチニル基および/またはプロパギルオキシ基に置換できない恐れがある。
【0090】
ポリエーテルケトン原料(A1)とさらにフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物(各々、塩を含む)との反応は、無溶媒下で行なわれてもあるいは溶媒中で行なわれてもよいが、反応性などを考慮すると、溶媒中で行なわれることが好ましい。この際使用される溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメタノール等の極性溶媒やトルエンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、反応を溶媒中で行なわれる際の溶媒の使用量は、ポリエーテルケトン原料(A1)とさらにフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物(各々、塩を含む)との反応が効率良く進行できる量であれば特に制限されないが、ポリエーテルケトン原料(A1)の濃度が、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%となるような量である。
【0091】
ポリエーテルケトン原料(A1)とさらにフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物(各々、塩を含む)との反応条件は、これらの反応が効率良く進行する条件であれば特に制限されないが、例えば、反応温度は、好ましくは30〜200℃、より好ましくは50〜150℃であり、反応時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは1〜24時間である。また、上記反応は、加圧下、常圧下または減圧下のいずれの圧力下で行なってもよいが、好ましくは常圧下で行われる。
【0092】
このようにして得られたポリエーテルケトン(A1)は、機械的強度、強靭性、電気的特性、熱酸化安定性、溶解性、透明性及び膜形成容易性などの様々な特性に優れるため、多層配線基板、プリント基板用表面コーティング剤等の絶縁樹脂コーティング剤、モーター、トランス、コイル等において使用される巻線の絶縁被覆材料、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、トリプレート線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路などから構成された配線層を有する高周波用配線基板、薄膜の磁気素子、特にチップインダクタ、トランス、DC−DCコンバータなどの小容量(数ワット程度)の電源部品として用いられる薄膜磁気素子、多層配線基板、LSIなどの製造工程において、シリコンウェハー等の半導体の加工、貯蔵及び運搬の際に使用されるディスクキャリア、光導波路および薄型の大型画面用カラー表示装置等に用いられるプラズマディスプレイパネル用隔壁などの原料として有用である。
【0093】
第二に、上記式(X)において、mが1でありかつpが1であるポリエーテルケトン(A2)の製造方法の一実施態様を以下に記載する。
【0094】
すなわち、(1’)まず、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドを、有機溶剤中でフリーデルクラフツ触媒の存在下で、ジフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応させることよって、下記式:
【0095】
【化30】
【0096】
で示される4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(以下、単に「4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル」または「BPDE」と称する)を得(工程1’);(2)このようにして得られた4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(BPDE)を、塩基性化合物の存在下で有機溶媒中で、下記式:
【0097】
【化31】
【0098】
ただし、R2は上記式(IV)における定義と同様である、
で示される2価のフェノール化合物(以下、単に「2価のフェノール化合物」とも称する)と共に加熱、重合することよって、下記式:
【0099】
【化32】
【0100】
で示されるハロゲン原子を有するポリエーテルケトンが得られる(工程2’)。
このハロゲン原子を有するポリエーテルケトンは、本発明のポリエーテルケトンの一であるポリエーテルケトン(A2)中のフェニルエチニル基の代わりにフッ素原子が置換された重合体であり、以下、「ポリエーテルケトン原料(A2)」と称する。さらに、(4)このようにして得られたポリエーテルケトン原料(A2)は、さらにフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物と反応させることによって、本発明のポリエーテルケトン(A2)が得られる(工程3’)。
【0101】
上記工程1’のフリーデルクラフツ反応において、ジフェニルエーテルの使用量以外については、上記工程1における記載と同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、上記工程1’において、ジフェニルエーテルの使用量は、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライド1モル当たり、0.4〜0.6モル、好ましくは0.45〜0.55モルである。すなわち、ジフェニルエーテルの使用量が0.4モル未満では、ジフェニルエーテルに過剰に2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル基が導入されてしまう恐れがある。これに対して、ジフェニルエーテルの使用量が0.6モルを越えると、未反応のジフェニルエーテルが多量に残る恐れがある。
【0102】
上記工程2’の反応条件は、BPDEと2価のフェノール化合物とが効率良く重合されてポリエーテルケトン原料(A2)が得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、20〜150℃、好ましくは50〜120℃である。この際、このように低温度で反応することで副反応を抑制し、重合体のゲル化を防止することができる。
【0103】
上記工程2’の重合反応で使用される有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメタノール等の極性溶媒やトルエンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、有機溶媒における4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルの濃度は、5〜50質量%、好ましくは、10〜30質量%である。
【0104】
なお、上記工程2’の重合反応において、トルエンや他の同様の溶媒を反応の初期段階に使用する際には、フェノキシド生成の際に副生する水を、重合溶媒に関係なく、トルエンの共沸物として除去できる。
【0105】
上記工程2’において使用される塩基性化合物は、重縮合反応によって生成するフッ化水素を捕集することにより重縮合反応を促進するよう作用し、さらにフェノール化合物をより反応性の高いアニオンに変える作用がある。このような塩基性化合物としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸リチウム及び水酸化カリウムが挙げられる。また、上記重合反応において、塩基性化合物の使用量は、使用される4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対して、1〜20モル、好ましくは1〜10モルである。
【0106】
上記工程2’の重合反応において使用される2価のフェノール化合物としては、上記式で示されるものであれば特に制限されないが、例えば、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン(以下、「6FBA」という)、ビスフェノールA(以下、「BA」という)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下、「HF」という)、ビスフェノールF(以下、「BF」という)、ハイドロキノン(以下、「HQ」という)、レゾルシノール(以下、「RS」という)および2−(3−オキシフェニル)−2−(4’−オキシフェニル)プロパン(以下、「3,4’−BA」という)などが挙げられる。
【0107】
また、上記工程2’において、2価のフェノール化合物の使用量は、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルと反応して目的物が得られる量であればよく、好ましくは4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルと等モルである。
【0108】
上記工程2’において、ポリエーテルケトン原料(A2)の重合度(式(III)や(X)におけるnの値)は、モノマーである2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル化合物及び2価のフェノール化合物の仕込み量を適宜設定することによって、調節できる。
【0109】
上記工程2’において、重合反応終了後は、反応溶液より蒸発等により溶媒の除去を行ない、必要により留出物を洗浄することによって、所望の重合体が得られる。または、反応溶液を重合体の溶解度が低い溶媒中に加えることにより、重合体を固体として沈殿させ、沈殿物を濾過により分離することによって、ポリエーテルケトン原料(A2)を固体として得てもよい。または、重合反応後の反応溶液をそのまま工程3’に使用してもよい。
【0110】
このようにして得られたポリエーテルケトン原料(A2)は、工程3’によるフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物との反応によって、本発明のポリエーテルケトン(A2)が得られる。上記反応で使用されるフェニルエチニルフェノール化合物は、所望のポリエーテルケトン(A2)の末端のフェニルエチニル基の構造によって適宜選択され、好ましくは4−フェニルエチニルフェノールである。また、上記反応で使用されるプロパギルオキシフェノール化合物は、所望のポリエーテルケトン(A2)の末端のプロパギルオキシ基の構造によって適宜選択され、好ましくは4−プロパギルオキシフェノールである。
【0111】
なお、上記反応における工程3’は、ポリエーテルケトン(A1)の製造方法における上記工程4と同様であるので、その説明を省略する。
【0112】
このようにして得られたポリエーテルケトン(A2)は、機械的強度、強靭性、電気的特性、熱酸化安定性、溶解性、透明性及び膜形成容易性などの様々な特性に優れるため、多層配線基板、プリント基板用表面コーティング剤等の絶縁樹脂コーティング剤、モーター、トランス、コイル等において使用される巻線の絶縁被覆材料、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、トリプレート線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路などから構成された配線層を有する高周波用配線基板、薄膜の磁気素子、特にチップインダクタ、トランス、DC−DCコンバータなどの小容量(数ワット程度)の電源部品として用いられる薄膜磁気素子、多層配線基板、LSIなどの製造工程において、シリコンウェハー等の半導体の加工、貯蔵及び運搬の際に使用されるディスクキャリア、光導波路および薄型の大型画面用カラー表示装置等に用いられるプラズマディスプレイパネル用隔壁などの原料として有用である。
【0113】
次に、上記式(XI)のポリエーテルケトン(B)の製造方法を以下に説明する。
【0114】
すなわち、(1”)まず、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイルクロライドを、有機溶剤中でフリーデルクラフツ触媒の存在下で、ジフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応させることよって、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(以下、単に「4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル」または「BPDE」と称する)を得(工程1”);(2)このようにして得られた4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(BPDE)を、塩基性化合物の存在下で有機溶媒中で、2価のフェノール化合物と共に加熱、重合することよって、下記式:
【0115】
【化33】
【0116】
で示されるハロゲン原子を有するポリエーテルケトンが得られる(工程2”)。このハロゲン原子を有するポリエーテルケトンは、本発明のポリエーテルケトンの一であるポリエーテルケトン(B)中のフェニルエチニル基の代わりにフッ素原子が置換された重合体であり、以下、「ポリエーテルケトン原料(B)」と称する。さらに、(4)このようにして得られたポリエーテルケトン原料(B)は、さらにフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物と反応させることによって、本発明のポリエーテルケトン(B)が得られる(工程3”)。
【0117】
上記工程1”のフリーデルクラフツ反応は、上記工程1’における記載と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0118】
上記工程2”のフリーデルクラフツ反応において、2価のフェノール化合物の使用量以外については、上記工程2’における記載と同様であるので、ここでは説明を省略する。なお、上記工程2”において、2価のフェノール化合物の使用量は、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルと反応して目的物が得られる量であればよく、化学量論的には4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテルの方がやや過剰に存在する。好ましくは、2価のフェノール化合物の使用量は、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対して、0.8〜1モル、好ましくは0.85〜1モルである。この際、2価のフェノール化合物の使用量が1モルを超えると、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル量が少なく、上記工程2’で得られるようなポリエーテルケトン原料(A2)が所望とするポリエーテルケトン原料(B)に加えて副生し、収率が低下する。逆に、2価のフェノール化合物の使用量が0.8モル未満であると、余剰の2価のフェノール化合物を分離する工程が必要となる。
【0119】
このようにして得られたポリエーテルケトン原料(B)は、工程3”によるフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物との反応によって、本発明のポリエーテルケトン(B)が得られる。上記反応で使用されるフェニルエチニルフェノール化合物は、所望のポリエーテルケトン(B)の末端のフェニルエチニル基の構造によって適宜選択され、好ましくは4−フェニルエチニルフェノールである。また、上記反応で使用されるプロパギルオキシフェノール化合物は、所望のポリエーテルケトン(B)の末端のプロパギルオキシ基の構造によって適宜選択され、好ましくは4−プロパギルオキシフェノールである。
【0120】
なお、上記反応における工程3”は、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の添加量以外については、ポリエーテルケトン(A1)の製造方法における上記工程4と同様であるので、その説明を省略する。
【0121】
上記工程3”において、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の添加量は、工程2”において使用される4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル1モルに対して、好ましくは2モル以下、より好ましくは0.001〜2モルである。この際、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の添加量が2モルを超えても、添加に見合う効果が得られず、過剰のフェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物が残存する。また、フェニルエチニルフェノール化合物および/またはプロパギルオキシフェノール化合物の添加量が0.001モル未満であると、ポリエーテルケトン原料(B)の双方の末端にあるフッ素原子を十分フェニルエチニル基および/またはプロパギルオキシ基に置換できない恐れがある。
【0122】
このようにして得られたポリエーテルケトン(B)は、機械的強度、強靭性、電気的特性、熱酸化安定性、溶解性、透明性及び膜形成容易性などの様々な特性に優れるため、多層配線基板、プリント基板用表面コーティング剤等の絶縁樹脂コーティング剤、モーター、トランス、コイル等において使用される巻線の絶縁被覆材料、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、トリプレート線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路などから構成された配線層を有する高周波用配線基板、薄膜の磁気素子、特にチップインダクタ、トランス、DC−DCコンバータなどの小容量(数ワット程度)の電源部品として用いられる薄膜磁気素子、多層配線基板、LSIなどの製造工程において、シリコンウェハー等の半導体の加工、貯蔵及び運搬の際に使用されるディスクキャリア、光導波路および薄型の大型画面用カラー表示装置等に用いられるプラズマディスプレイパネル用隔壁などの原料として有用である。
【0123】
第三の態様によると、本発明は、本発明の第一の態様のポリエーテルケトンを架橋することによって得られる架橋型樹脂を提供するものである。本発明のポリエーテルケトンは架橋時に溶解性が低下し、これにより溶剤への溶出が抑えられて膜等の様々な形状に容易に成形できるという知見に基づくものである。
【0124】
第三の態様において、本発明の第一の態様のポリエーテルケトンを、溶媒を使用して膜等に成形する場合には、ポリエーテルケトンを溶媒中に溶解し、スピンコーティングやディッピングなどの公知の成膜方法によって成膜した膜などを加熱する方法が使用できる。この際使用される溶媒、ポリエーテルケトンを均一に溶解(または分散)できるものであれば特に制限されるものではなく、使用されるポリエーテルケトンの種類によって適宜選択できるが、例えば、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びクレゾールなどが挙げられ、これらのうち、トルエン、N−メチルピロリドン及びジメチルアセトアミドが好ましく使用される。上記溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合液の形態で使用されてもよい。また、溶媒を使用する際の溶媒の使用量は、ポリエーテルケトンを均一に溶解(または分散)できる量であれば特に制限されないが、溶媒におけるポリエーテルケトンの濃度が、好ましくは1〜70(w/v)%、より好ましくは5〜50(w/v)%となるような量である。また、本発明のポリエーテルケトンは、加熱することで無溶媒下で成形することもできる。さらに、ポリエーテルケトンの架橋は、窒素、ヘリウム及びアルゴンなどの、不活性雰囲気中で行なわれることが好ましい。
【0125】
第三の態様において、ポリエーテルケトンの架橋方法は、特に制限されるものではなく、公知の架橋方法が使用できる。具体的には、熱架橋、電子線架橋及び化学架橋などが挙げられる。これらのうち、操作の容易性から、熱架橋が好ましい。
【0126】
また、ポリエーテルケトンの架橋条件は、特に制限されず、使用されるポリエーテルケトンや溶媒の種類や量等によって適宜選択されればよいが、例えば、ポリエーテルケトンを熱架橋する場合の、架橋温度は、通常、100〜500℃、好ましくは150〜400℃であり、架橋時間は、通常、0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間である。また、ポリエーテルケトンの架橋は、常圧下または減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行なうことが望ましい。
【0127】
第三の態様において、架橋時に、ポリエーテルケトンや溶媒に加えて、所望の用途によって、他の成分を添加してもよい。他の成分としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂および塩化ビニル樹脂等の樹脂、着色剤、重合調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、耐衝撃性向上のためのゴム、あるいは剥離剤等を挙げることができる。
【0128】
ポリエーテルケトンの架橋後の架橋密度は、架橋後の架橋型樹脂の所望の物性、例えば、膨潤度や弾性などによって適宜決定することができる。
【0129】
また、ポリエーテルケトンは、架橋前は様々な溶剤に優れた溶解性を有するため、様々な形状に成形することができるが、具体的には、ポリエーテルケトンは、溶液流延法、溶媒キャスト法、押出成形、射出成形、熱ラミネート成形、プレス成形、カレンダー成形、注型製膜法などの方法を用いて、様々な形状、例えば、板状、膜状、シート状あるいはフィルム状に成形することができる。また、ポリエーテルケトンを、キャスティング(流延法)、スピンコーティング(回転塗布法)、ロールコーティング、スプレイコーティング、バーコーティング、フレキソ印刷、およびディップコーティングなどの方法を用いて、基板上に塗布された後、架橋を施されてもよい。
【0130】
このようにして、本発明の架橋型樹脂は、高い機械的強度および強靭性を有し、電気的特性、熱酸化安定性、溶解性及び透明性に優れる上、様々な形状に賦形できるので、多層配線基板、プリント基板用表面コーティング剤等の絶縁樹脂コーティング剤、モーター、トランス、コイル等において使用される巻線の絶縁被覆材料、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、トリプレート線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路などから構成された配線層を有する高周波用配線基板、薄膜の磁気素子、特にチップインダクタ、トランス、DC−DCコンバータなどの小容量(数ワット程度)の電源部品として用いられる薄膜磁気素子、多層配線基板、LSIなどの製造工程において、シリコンウェハー等の半導体の加工、貯蔵及び運搬の際に使用されるディスクキャリア、光導波路および薄型の大型画面用カラー表示装置等に用いられるプラズマディスプレイパネル用隔壁などの原料として有用である。
【0131】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0132】
構造解析は、クロロホルムを溶媒として用いて測定した分取型GPC[装置:Japan Analytical Industry Co.,Ltd.製、モデル:LC−908;カラム:JAIGEL 2H,1H]を用いて分離した後、行なった。
【0133】
また、構造解析は、CDCl3を溶媒として用いて、1H−NMR(500MHz)、19F−NMR(470MHz)または13C−NMR(モデル化合物125MHz、ポリマー75MHz)スペクトルを、Varian社製 Unity−500で記録することによっても、分析した。
【0134】
さらに、構造解析は、日本分光製、FT/IR−350型フーリエ変換赤外分光光度計を用い、KBr錠剤法またはフィルムで、赤外分光スペクトルを記録することによっても、分析した。
【0135】
熱安定性は、窒素雰囲気下に20℃/分の昇温速度で示差走査型熱量計(DSC−7)(パーキンエルマー(Perkin-Elmer)社製)を用いて、ガラス転移温度(Tg)を測定することによって行なった。
【0136】
動的粘弾性は、株式会社オリエンテック製、自動動的粘弾性測定機、RHEOVIBRON DDV−II−EPを用いて、110Hz、昇温速度2℃/分で測定した。
【0137】
溶解試験は、各ポリマーから溶媒キャスト法でフィルムを作製し、これを1cm×1cmの大きさに切断した後、トルエン10ml中に室温で24時間浸し、その後取り出して減圧乾燥し、溶出前後のポリマーフィルムの重量を比べることによって行なった。
【0138】
X線回折は、X線回折装置(リガク株式会社製、ガイガーフレックス2013)を用いて測定した。なお、測定範囲は50°〜10℃であり、スキャンスピードは1°/分とした。
【0139】
固有粘度の測定は、0.5g/dlの濃度かつ25℃の温度でジメチルアセトアミド(DMAc)中でオストワルド粘度計(Ostwald−Fenske粘度計)を用いることによって、行なった。
【0140】
軟化温度(Ts)は、ヤナコ機器開発研究所製、融点測定機MP−500Dを用いて測定した。
【0141】
合成例1
20ml容のなす型フラスコに、4−フェニルエチニルフェノール(0.9g)を仕込み、これに等モルの水酸化カリウム(0.26g)を含むメタノール溶液10mlを加え、室温で1時間攪拌した。さらに、この反応溶液について、エバポレーターでメタノールを蒸発させ、ポンプで吸引することにより完全に乾燥させることによって、4−フェニルエチニルフェノールのカリウム塩を得た。
【0142】
合成例2:4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)(BPDE)ジフェニルエーテルの合成
ジフェニルエーテル6.8g、塩化アルミニウム26.8gおよび乾燥ジクロロエタン60mlを、滴下ロートおよび塩化カルシウム(CaCl2)乾燥管を備えた250ml容の三つ口フラスコに仕込んだ。2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾクロライド18.5gおよび乾燥ジクロロエタン15mlよりなる溶液を、攪拌しながらゆっくりフラスコ中に滴下した。滴下終了後、反応混合物を室温で一晩攪拌した。少量の水を、反応混合物に非常にゆっくり加え、15分間攪拌し続けた。ついで、反応混合物を250mlの水中に注加し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を集めて、水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、蒸発させた。活性炭処理しメタノールからの再結晶により、4,4’−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)ジフェニルエーテル(以下、「BPDE」という)を白色結晶として得た(収率61.2%)。BPDEの融点は、125〜127℃であった。
【0143】
【化34】
【0144】
合成例3:4−プロパギルオキシフェノールの合成
溶媒として使用される水及びエタノールを、それぞれ、三ツ口フラスコに入れ、液体中に窒素ガスを吹き込みながら、3日間還流させた後、蒸留精製し、脱溶存酸素を行なった後、使用した。
【0145】
100ml容の三ツ口フラスコに、滴下漏斗、還流管及び攪拌翼を取り付け、窒素置換を行なった。この三ツ口フラスコに、11.011g(0.1モル)のハイドロキノン、7.451g(0.1モル)のプロパギルクロライド及び19.3mlの上記で調製された脱溶存酸素エタノールを入れ、オイルバス中で加熱して、プロパギルクロライドを完全に溶解させた。滴下漏斗に、19.3mlの上記で調製された脱溶存酸素蒸留水及び5.6108g(0.1モル)の水酸化カリウムを入れた。フラスコ内をモーターで激しく攪拌しながら、滴下漏斗から、水酸化カリウム水溶液をゆっくり時間をかけて滴下した。滴下終了後、20時間還流して、溶媒のエタノールのみを留去した。
【0146】
次に、この反応液を、ジクロロメタンを用いて分液し、副生成物を除去した。水相を塩酸で酸性にし、水及びジクロロメタンを用いてさらに分液を繰り返すことによって、有機相の洗浄を行なった。さらに、エバポレーターにより有機相を濃縮し、この濃縮液を沸騰したヘキサンで抽出した後、ヘキサンを留去することによって、1.4gの黄色の液体として4−プロパギルオキシフェノールを得た。この際の収率は9.45%であった。また、このようにして得られた4−プロパギルオキシフェノールの構造は、IR及びNMR分析によって確認した。
【0147】
合成例4
20ml容のなす型フラスコに、合成例3で得られた4−プロパギルオキシフェノール(1.4g、9.45ミリモル)を仕込み、これに等モルの水酸化カリウム(0.53g)を含むメタノール溶液10mlを加え、室温で1時間攪拌した。さらに、この反応溶液について、エバポレーターでメタノールを蒸発させ、ポンプで吸引することにより完全に乾燥させることによって、4−プロパギルオキシフェノールのカリウム塩を得た。
【0148】
実施例1
還流管及びDean−stark trapを備えた10mlのなす型フラスコに、2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン(6FBA)(0.43g)、等モルの炭酸カリウム(0.177g)、N−メチルピロリドン(NMP)(4.6ml)、ならびにトルエン(3.6ml)を仕込んだ。この混合物を、窒素気流下、攪拌しながら160℃に加熱し、3時間共沸脱水を行ない、6FBAのカリウム塩を合成した。量論量の水がでてきたら、トルエンを蒸留し、徐冷した。80℃になったところで、合成例2で得られたBPDE(0.75g)を添加し、そのまま20時間攪拌しながら反応させた。
【0149】
次に、所定時間反応を行なった後、合成例1で得られた4−フェニルエチニルフェノールのカリウム塩(0.0622g)を添加し、120℃に加熱し、15時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応生成物をメタノールに注ぐことにより、固化させた。さらに、この反応により得られたポリマーを濾別し、蒸留水、メタノールで洗浄して、減圧乾燥した。回収したポリマーをDMAcに30wt/vol%になるように溶かし、メタノールへ攪拌下ゆっくりと注ぎ再沈殿法により精製した。完全に固化するまで放置した。沈殿固化したポリマーを濾過、減圧乾燥した。
【0150】
さらに、残存塩及び溶媒を取り除くために、蒸留水につけ、3時間沸騰させることにより沸水抽出を行った。沸水抽出は3回行った。ポリマーを濾過し、メタノールで洗浄してから減圧乾燥することによって、Y及びY’は、下記式:
【0151】
【化35】
【0152】
で表される基であり;R1は、下記式:
【0153】
【化36】
【0154】
で表される基であり、この際、R2は、下記式:
【0155】
【化37】
【0156】
で表される基である、
上記式(XI)で示されるポリマー(1)が0.818g得られた(収率:72.5%)。
【0157】
このようにして得られたポリマー(1)のIRスペクトル及び1H−NMRスペクトルで分析し、結果をそれぞれ図1及び2に示す。
【0158】
実施例2
実施例1の方法において、6FBAの量を0.44gに変更し、炭酸カリウムの量を0.181gに変更し、また、4−フェニルエチニルフェノールのカリウム塩の量を0.0311gに変更する以外は実施例1と同様にして、合成を行ない、上記式(XI)で示されるポリマー(2)を0.76g得た(収率:67.3%)。
【0159】
実施例3
実施例1の方法において、0.43gの6FBAの代わりに0.45gの9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(HF)を使用する以外は実施例1と同様にして、合成を行ない、Yは、下記式:
【0160】
【化38】
【0161】
で表される基であり;R1は、下記式:
【0162】
【化39】
【0163】
で表される基であり、この際、R2は、下記式:
【0164】
【化40】
【0165】
で表される基である、
上記式(XI)で示されるポリマー(3)を0.76g得た(収率:66.5%)。
【0166】
実施例4
実施例1の方法において、6FBAの量を0.41gに変更し、炭酸カリウムの量を0.169gに変更し、また、4−フェニルエチニルフェノールのカリウム塩の量を0.1244gに変更する以外は実施例1と同様にして、合成を行ない、上記式(XI)(Y、R1及びR2は、実施例1における定義と同様)で示されるポリマー(4)を0.45g得た(収率:40.1%)
上記実施例1〜4で得られたポリマー(1)〜(4)の特性を、下記表1に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
実施例5
実施例1で得られたポリマー(1)0.5gをトルエン4.5g中に溶解し、トルエンを用いた溶媒キャスト法で、架橋型ポリマー(1)のフィルムを作製した。次に、このようにして作製されたフィルムをスライドガラス上にのせ、そのまま3つ口フラスコの中に入れた。フラスコ内を10分間窒素置換した後、320℃で所定時間架橋反応を行なった。架橋反応時間(合計4時間)に対するガラス転移温度の変化を図3に示す。
【0169】
また、下記表2に示される架橋時間で架橋されて作製されたフィルムについて、溶解試験を行ない、トルエン中に室温で24時間浸した時のフィルムの溶出前後の重量を比べ、不溶分を求め、その結果を下記表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
表2の結果から、本発明のポリマー(1)は、120分間架橋処理されると、反応(架橋)率は90%を超え、完全に溶解性がなくなっていたことから、本発明のポリマー(1)は、320℃の温度条件においては、120分間架橋処理されると、架橋により耐薬品性を発揮できることが示される。
【0172】
実施例6
実施例2〜4と同様にして製造されたポリマー(2)〜(4)について、実施例5と同様にして架橋反応を行ない、各ポリマーの架橋反応時間に対するガラス転移温度の変化を、それぞれ、図4〜6に示す。
【0173】
実施例7
還流管及びDean−stark trapを備えた50mlのなす型フラスコに、0.215gの2,2−ビス(4−ビドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン(6FBA)(0.640ミリモル)、0.086gの炭酸カリウム(0.640ミリモル)、2.36mlのN−メチルピロリドン(NMP)、ならびに1.5mlのトルエンを仕込んだ。この混合物を、窒素気流下、攪拌しながら160℃に加熱し、3時間共沸脱水を行ない、6FBAのカリウム塩を合成した。量論量の水がでてきたら、トルエンを蒸留し、徐冷した。80℃になったところで、0.375gの合成例2で得られたBPDE(0.672ミリモル)を添加し、そのまま20時間、攪拌しながら反応させた。
【0174】
次に、所定時間反応を行なった後、0.039gの合成例4で得られた4−プロパギルオキシフェノールのカリウム塩を添加し、120℃に加熱し、12時間反応させた。反応終了後、反応生成物をメタノールに注ぐことにより、完全に固化したものを、濾別し、酢酸水溶液、蒸留水及びメタノールで洗浄して、減圧乾燥した。回収したポリマーをDMAcに30wt/vol%になるように溶かし、メタノール中に攪拌下ゆっくりと注ぎ、再沈殿法により精製した。沈殿物を減圧乾燥することによって、Y及びY’は、下記式:
【0175】
【化41】
【0176】
で表される基であり;R1は、下記式:
【0177】
【化42】
【0178】
で表される基であり、この際、R2は、下記式:
【0179】
【化43】
【0180】
で表される基である、
上記式(XI)で示される薄茶色のポリマー(5)が0.35g得られた(収率:61.4%)。
【0181】
このようにして得られたポリマー(5)のIRスペクトルで分析し、結果を図7に示す。
【0182】
実施例8
実施例7に記載の方法と同様にして得られたポリマー(5)0.5gをトルエン4.5g中に溶解し、トルエンを用いた溶媒キャスト法で、架橋型ポリマー(5)のフィルムを作製した。次に、このようにして作製されたフィルムをスライドガラス上にのせ、そのまま3つ口フラスコの中に入れた。フラスコ内を10分間窒素置換した後、250℃で2時間架橋反応を行なった。
【0183】
架橋反応終了のフィルムを、トルエン中に室温で24時間浸漬して、溶解試験を行なったところ、溶解するものは認められなかった。これから、本発明の架橋型樹脂は、溶剤への溶出が有意に抑えられることが示される。
【0184】
また、架橋反応前後のガラス転移温度を測定したところ、架橋反応前は163℃であったのに対して、架橋反応後は179℃にまで上昇したことから、熱に対する安定性が向上したことが示される。
【0185】
さらに、架橋反応前後のポリマーの軟化を試験したところ、架橋前のポリマーは180℃で軟化したが、架橋後のポリマーは450℃まで変化が認められず、これから、本発明の架橋型樹脂は熱に対して安定性があることが示される。
【0186】
【発明の効果】
上述したように、本発明は、架橋基、好ましくは上記式(I)および/または上記式(II)で示される基を有するポリエーテルケトンに関するものであり、特に上記式(III)及び(V)で示されるポリエーテルケトンに関するものである。本発明のポリエーテルケトンは、高い機械的強度及び強靭性、優れた電気的特性を有し、通常使用される種々の溶媒に対して優れた溶解度、ならびに耐熱性、耐炎性等の優れた熱安定性、ならびに優れた被覆形成性を有するので、電子部品に対する被覆剤として有用であるばかりでなく、注型品にも好適である。
【0187】
また、本発明のポリエーテルケトン架橋することによって得られる架橋型樹脂は、架橋時に分子量の増加に伴い溶解性が低下し、これにより溶剤への溶出が抑えられて膜等の様々な形状に容易に成形できる。したがって、本発明の架橋型樹脂は、多層配線基板、プリント基板用表面コーティング剤等の絶縁樹脂コーティング剤、モーター、トランス、コイル等において使用される巻線の絶縁被覆材料、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、トリプレート線路、コプレーナ線路、誘電体導波管線路などから構成された配線層を有する高周波用配線基板、薄膜の磁気素子、特にチップインダクタ、トランス、DC−DCコンバータなどの小容量(数ワット程度)の電源部品として用いられる薄膜磁気素子、多層配線基板、LSIなどの製造工程において、シリコンウェハー等の半導体の加工、貯蔵及び運搬の際に使用されるディスクキャリア、光導波路および薄型の大型画面用カラー表示装置等に用いられるプラズマディスプレイパネル用隔壁などの原料として有用であることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、実施例1において、ポリマー(1)のIRスペクトルを示す。
【図2】は、実施例1において、ポリマー(1)の1H−NMRスペクトルを示す。
【図3】は、実施例5において、ポリマー(1)の架橋反応時間に対するガラス転移温度の変化を示す。
【図4】は、実施例6において、ポリマー(2)の架橋反応時間に対するガラス転移温度の変化を示す。
【図5】は、実施例6において、ポリマー(3)の架橋反応時間に対するガラス転移温度の変化を示す。
【図6】は、実施例6において、ポリマー(4)の架橋反応時間に対するガラス転移温度の変化を示す。
【図7】は、実施例7において、ポリマー(5)のIRスペクトルを示す。

Claims (5)

  1. 下記式(XI)
    ただし、Y及びY’は、それぞれ独立して、下記式:
    または下記式:
    で示される基を表わし;nは、重合度を表し、2〜2000であり;ならびにRは、下記式(IX)
    この際、pは、1であり;およびRは、o−、m−もしくはp−ベンゼンジメチレン、o−、m−もしくはp−ベンゼンテトラフルオロジメチレン、o−、m−もしくはp−フェニレン、2価のナフタレン、2価のビフェニル、2価のアントラセン、2価のo−、m−もしくはp−テルフェニル、2価のフェナントレン、2価のジベンゾフラン、2価のビフェニルエーテル、2価のビフェニルスルホン、2価のフェノールフタレイン、または下記式:
    で表わされる2価の芳香族基を表す、
    で示されるものである、ポリエーテルケトン。
  2. 前記式(IX)において、R が下記式:
    で表される2価の芳香族基である、請求項1に記載のポリエーテルケトン。
  3. 請求項1または2に記載のポリエーテルケトンを架橋することにより得られる架橋型樹脂。
  4. 塩基の存在下で、下記式:
    ただし、R は、下記式(IX)
    この際、pは、1であり;およびR は、o−、m−もしくはp−ベンゼンジメチレン、o−、m−もしくはp−ベンゼンテトラフルオロジメチレン、o−、m−もしくはp−フェニレン、2価のナフタレン、2価のビフェニル、2価のアントラセン、2価のo−、m−もしくはp−テルフェニル、2価のフェナントレン、2価のジベンゾフラン、2価のビフェニルエーテル、2価のビフェニルスルホン、2価のフェノールフタレイン、または下記式:
    で表わされる2価の芳香族基を表す、
    で示される化合物である、ハロゲン原子を有するポリエーテルケトンを、下記式:
    で示されるフェニルエチニルフェノール化合物および/または下記式:
    で示されるプロパギルオキシフェノール化合物と反応することからなる、請求項1または2に記載のポリエーテルケトンの製造方法。
  5. 前記式(IX)において、R が下記式:
    で示される2価の芳香族基である、請求項4に記載のポリエーテルケトンの製造方法。
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