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JP4875296B2 - 静圧気体軸受パッド - Google Patents
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JP4875296B2 - 静圧気体軸受パッド - Google Patents

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Description

本発明は、静圧気体軸受とくに精密加工機及び検査測定装置等において、被加工物または原盤を高速で高精度に位置決めする移動ステージの精密位置決め装置等に用いられる静圧気体軸受パッドに関する。なお、本願明細書においては、便宜上、「静圧気体軸受パッド」のことを単に「軸受パッド」または「パッド」と称することがある。
静圧気体軸受は、低摩擦であり、振動がなく、また、清浄であることから、測定器具、精密工作機械、LSI製造装置等の直線案内用軸受あるいは回転軸受に広く用いられている。
そして、静圧気体軸受は、基本的には気体を噴出する軸受パッドと、軸受パッドに対向して配置された部材とから構成され、軸受パッドは、気体噴出口あるいはこれにつながる通気溝から気体を噴出し、軸受パッドと対向する部材との間に剛性を持った静圧気体膜を形成し、噴出気体は軸受パッドの外周から雰囲気(一般的には大気)へ排出される構造になっている。
図6は、この静圧気体軸受を高精度直進案内(移動ステージ)に適用した例を示す。同図に示すように、軸受Aはガイドaとスライダーbから構成され、スライダーbのガイドaに相対する面には通常複数の軸受パッドが設けられ、この軸受パッドからガイドaに向って気体を噴出して、ガイドaとスライダーbとの間にガイドaを支持する静圧気体膜を形成するように構成される。
この静圧気体軸受は、給気すなわち気体噴出の形式によって、オリフィス給気、薄給気、多孔質絞り、スロット絞り、表面絞りに分類され、さらに、オリフィスを使用した給気形式の絞りには、軸受パッド面に孔をあけて孔の円周と軸受隙間で形成された絞り効果を出す自成絞りと、軸受パッド面にくぼみ(ポケット)を設け、底に小さい絞り孔を通して給気するポケット付きオリフィス絞り、さらにはより小さな径の孔による毛細管の粘性抵抗により絞り効果を出す毛細管絞りなどがある。
その中で、軸受として静圧気体の圧力分布が均一で剛性が高く、安定した特性を得られる方式として、オリフィス絞りと自成絞りを複合的に利用した気体噴出口あるいは気体噴出口とこれにつながる通気溝を有するオリフィス絞り方式がある。
図7および図8は、この通気溝を有するオリフィス絞り方式を適用した軸受パッドcを軸受パッド面から見た概要を示す。
同図に示すように、軸受パッドcは通常、複数の気体噴出口dとこの気体噴出口dにつながる通気溝eを設けたもので、それぞれの気体噴出口dと通気溝eは軸受パッド面において前後左右対象に配置されている。この図7および図8に示す例は、方形の軸受パッドとして、物理的に等価な位置に気体噴出口dを配置しているものである。
そして、それぞれの気体噴出口dの口径は通常同じで、それぞれの気体噴出口dからの気体噴出流量が実質的に同じとなる「物理的に等価な位置」に配置されている。この気体噴出口dまたは通気溝eを設けた気体噴出口dの配置の「物理的に等価な位置」とは、何れの気体噴出口dから噴出される気体圧力が実質的に同一となる気体噴出口の配置位置と言い換えることもできる。
そして、このような静圧気体軸受の性能は、軸受パッドによる噴出気体の剛性、負荷容量、および気体流量などの諸特性によって表される。そして、非特許文献1には、これらの諸特性を軸受隙間内の気体の流れの連続条件を用いて軸受隙間内の圧力分布を求め、それを基に軸受性能を計算する手法が開示された。
この場合の気体噴出口は、何れも実質的に物理的に等価な位置であり、それぞれの気体噴出口による気体の噴出圧力は同一として計算・評価されている。ところが、係る個々の気体噴出口からの噴出気体圧力を均一にすることを前提にした複数の気体噴出口を物理的に等価な位置に配置した軸受は、バランスは良いが、減衰性、剛性等の特性面で問題がある。
そして、非特許文献2には、剛性の向上のために開発された2列円周溝付き気体噴出口を有する静圧気体軸受パッドにおいて、パッドの両端近傍に少数の気体噴出口とこれにつながる円周溝を設けることによって、気体噴出口数を少なくして、高効率、高剛性で少流量を狙った静圧気体軸受が開示されているが、これによっても、物理的に等価な位置での気体噴出口の配置による諸問題は解決できない。
一方、この静圧気体軸受を高精度直進案内に利用する際には静圧気体の剛性とともに高精度の停止位置を得るためには、静圧気体による振動減衰性能が重要な要素となる。ところが、気体軸受の場合、気体の持つ圧縮性と粘性係数が小さいために、非圧縮性の油等を用いた軸受に比較して減衰性が悪く、高精度・短時間に停止するのは困難である。その上、静圧気体による剛性と減衰性はトレードオフの関係にあり、剛性と減衰性を高いレベルで両立した軸受は困難である。
とくに、設計上、気体流量や負荷容量の制限がある場合には、一般的に剛性は低くならざるを得ないが、このような場合には極力減衰比を高めることが望まれる。この課題解決の手段として、特許文献2には、直径0.04〜0.4mmの細孔からヘリウムガスを噴射することが開示されている。この手段によって軸受面の圧力が空気よりも大きくなるために、特定の圧力範囲で振動減衰特性が改善されるが、軸受として高価になる問題がある。
また、特許文献3には、軸受間と溝深さを調整することで気体静圧による振動減衰能を改善することが開示されている。ところが、この手法で振動減衰能の改善を実効あるものとするためには軸受隙間が5μm以下である必要があり、これを実現するためには、相当の高い加工高精度が要求され、加工技術の問題、さらには加工コストが高くなる問題がある。
さらに、特許文献4では、静圧空気軸受スピンドルにおいて、物理的に等価な位置に配置した気体噴出口の中間位置に複数個の気体噴出口を円周方向に一列または複数列配置することによって、静圧の振動減衰特性を改善することが開示されている。しかしながら、中間部の圧力が両端部よりも高い圧力分布にしなければならないという制約とともに、その構造上、スピンドル以外の静圧気体軸受、とくに、平面軸受には適用できない問題がある。
特開昭58−134226号公報 特開2002−54634号公報 特開2004−144188号公報 特開平10−96423号公報 「気体軸受ハンドブック」(十合: 2002)第5章 「2列円周みぞ付き給気孔形静圧気体スラスト軸受(第一報、低給気圧領域における特性)」(小野他:日本機械学会論文集(C編)51巻468号:1985)
本発明の目的は、オリフィス絞り方式の静圧気体軸受において高剛性、それに、高減衰性を並立できる軸受パッド構造を提供することにある。
高精度直進案内機構に求められる要求特性は、運動精度(鉛直方向と水平方向真直度、それに、ローリング等)の改善と位置決めの整定時間の短縮であり、そのためには、静圧気体軸受の高剛性化と減衰性を高める必要がある。
本発明は、静圧気体軸受において気体薄膜による減衰性を高めるためには、気体粘性を効果的に利用することが必要であり、このためには、軸受面内の気体圧力を高くした上で隙間変動(振動)による軸受面内の気体の流れの変化が大きくなるような構造にすれば良いという考え方の下で完成した。
ところが、等価な位置に気体噴出口を配置した場合、気体薄膜の減衰性を高めるために、気体噴出口の口径を大きくしたり、また、圧力を単に大きくする方法では、軸受面内の圧力が一様に上昇し、隙間変動に伴う気体流れの変化は小さく、軸受面内の気体の流れの変化を大きくする効果が小さく、さらには、静圧気体軸受の基本的な要求特性である剛性の低下や発振を引き起こし易いという問題がある。
本発明は、軸受パッド面に配置された複数の気体噴出口の中、少なくとも1つの気体噴出口を他の気体噴出口に対して物理的に非等価な位置に配置することによって、上記課題を解決した。
本発明にいう気体噴出口の配置位置を物理的に非等価な位置とするとは、前記背景技術において説明した「物理的に等価な位置」に対する用語であって、「物理的に等価な位置」が、それぞれの気体噴出口からの気体噴出流量が実質的に同じとなる気体噴出口の配置位置を意味するのに対して、「物理的に非等価な位置」とは、軸受パッド面に形成された気体噴出口の中で、特定の気体噴出口からの気体噴出流量が実質的に異なる場合であり、同一径の気体噴出口では気体の圧力が、他の気体噴出口からの気体圧力と実質的に同一とならない配置、または噴出口径が異なる場合には気体圧力が同じでも気体噴出流量が異なることを含んで意味したものである。
この物理的に非等価な位置に複数の気体噴出口を配置することの具体的な態様の一つとしては、軸受パッド面に配置された同一径の気体噴出口を幾何学的に非等価な位置に配置することや、幾何学的に等価な位置の気体噴出口の口径を変えて、それぞれの気体噴出口からの気体流量を変えるという手段を採用できる。
これによって、軸受面、すなわち、軸受パッド面の各位置における気体噴出口からの気体の圧力変化の程度が異なり、すなわち、噴出される気体流量の変化が異なるので、隙間変動すなわち振動の発生に対し、隙間変動により、軸受面内の気体の流れの変化が大きくなり、これによる粘性による減衰効果を上げることが可能となる。
本発明に適用される気体噴出口は、基本的には、オリフィス絞り方式のものを意味し、気体噴出口そのものとこの噴出口に連ながる通気溝を設けた構造のものも含まれ、軸受パッド面のオリフィス絞り方式の複数の気体噴出口は、少なくとも部分的には、この気体噴出口に連結した通気溝を形成することができる。
この気体噴出口につながる通気溝は、元来気体噴出口から噴出された気体によって形成された気体薄膜の剛性を増大させるためのものであるが、この通気溝を延長、深く、広くすることは、気体粘性による減衰効果を小さくし、場合によっては圧縮性に起因する発振を誘発する問題も生じる。
このため、本発明においては、減衰性を向上させるためには、この通気溝を延長し、深くし、さらに広くすることに代わって、非等価な位置に気体噴出口を配置し、軸受面の圧力を増すことおよび気体の流れを制御することによって気体薄膜の減衰効果を上げるものである。
さらに、本発明の軸受パッドの軸受パッド面に設ける気体噴出口と通気溝は任意の場所に設けることができるが、その前提として、軸受パッドとそれに対向する部材との隙間が均一になる対称性は保持するものである。
具体的に、複数の軸受パッドを直進案内のスライダーに組み込む場合には、非対称性の軸受パッドを対称的に組み合わせて、スライダーのガイドとの浮上が均一になるように設計することも可能である。
そして、さらに、非等価な位置に配置した少なくとも1つの気体噴出口からの気体噴出流量が、物理的に等価な位置に配置された気体噴出口の流量に対して10%以上異なる気体流量とすることによって軸受の剛性と減衰性を高いレベルで並立することができる。10%未満の場合には、隙間変動に伴う気体の流れの変化が不足し十分な減衰効果が得られにくい。
そして、このように気体流量を異なるものにすることは、気体噴出口あるいは通気溝の位置、通気溝の形状等を等価な位置と非等価な位置とで異なるようにすることで得られるが、物理的に等価な位置に配置された気体噴出口と、物理的に非等価な位置に配置した気体噴出口の径が異なるようにすることがより好ましい。つまり、剛性の低下を引き起こし難く、隙間変動すなわち振動の発生による気体噴出口の圧力変化が、噴出口径が同じ場合に比較して更に大きく異なってくるので、隙間変動に伴う気体の流れの変化がより大きくなる。
また、一つの軸受パッドで均一隙間を保持する場合の好ましい形態は、軸受パッド面の外形が2回回転対称性をもつ角形または円形であり、軸受パッド面の中央部に2回回転対称性をもつ第一の通気溝を、その直交する2つの線対称軸を軸受パッド面の外形の直交する2つの線対称軸と一致させて配置し、線対称性を有するパターンの第二及び第三の通気溝を、その線対称軸を第一の通気溝の直交する2つの線対称軸の中の1つと一致させ、且つ第一の通気溝の両側に独立して配置し、すべての独立した通気溝毎に気体噴出口を設けた形態である。ここで、2回回転対称性をもつということは、直交する2つの線対称軸をもつことに等しい。
第一〜第三の通気溝の具体的な配置形態としては、軸受パッド面中央部に直線、Hの字等の2回回転対称性をもつ第一の通気溝を配置し、さらに、直線、円弧、エの字、コの字等の線対称性をもつパターンまたは任意のパターンを線対称に組み合わせた集合からなる第二及び第三の通気溝を第一の通気溝の両側に線対称に配置し、すべての独立した通気溝毎に気体噴出口を一つまたは複数設けた形態とすることができる。
これにより、気体噴出口からの噴出気体においては、隙間変動に伴う気体の流れの変化が大きくなることにより、効果的に気体の粘性効果を高め、より高い減衰性を引き出すことができる。
通気溝のパターンまたはその組み合わせ、各通気溝の深さ、幅および気体噴出口の径は、軸受パッドの外形や大きさ、気体流量、負荷容量、剛性、減衰比などに関する要求特性、スライダー等の形状などによる気体噴出口位置の制約を勘案して適当な形態を選択することができる。なお、スライダー等を均一に浮上させることを前提にすると、気体噴出口の総数が2個の場合は、それらを等価な位置に配置するしかないため、非等価な位置に少なくとも1つの気体噴出口を配置するには、気体噴出口の総数は3個以上となる。
本発明の軸受パッドは、気体噴出口が物理的に等価な位置に配置された従来の軸受パッドと比較して剛性と減衰比をはるかに高いレベルで両立することができる。
そして、剛性が高く、減衰性の良い本発明の軸受パッドを用いることによって精密加工機及び検査測定装置等において被加工物又は原盤を高速で高精度に位置決めする移動ステージをより高精度かつ整定時間の短いステージとすることができる。
以下、本発明を図6に示す静圧気体軸受支持高精度直進案内に適用した実施例によって実施の形態を説明する。
実施例その1
図1は、本発明に係る軸受パッド10の第1の例を気体噴出面側から見た図である。
軸受パッド10には第一噴出口1が軸受パッド面5の中心に配置され、これに通ずる第一の通気溝3が「H」の字で形成されている。この第一の通気溝3は2回回転対称性を有している。さらにこの第一の通気溝3の直交する2つの線対称軸は、軸受パッド面の外形の直交する2つの線対称軸と一致している。
また、第二噴出口2Aと第三噴出口2Bが2カ所に配置され、第二噴出口2Aと第三噴出口2Bのそれぞれには、これに通ずる第二の通気溝4Aと第三の通気溝4Bとが直線状に形成されている。第二の通気溝4Aと第三の通気溝4Bは線対称性を有し、それぞれの線対称軸が第一の通気溝3の直交する2つの線対称軸の1つと一致しており、かつ第一の通気溝3の両側に独立して配置されている。
第二噴出口2Aと第三噴出口2Bの各々は、第二の通気溝4Aと第三の通気溝4Bの形(幅、長さ、及び深さ)が同じでしかも噴出口径が同じである時は物理的に等価な位置にあり、第一噴出口1に対しては通気溝の形が違うので物理的に非等価な位置にある。
第一の通気溝3の深さは100μm、溝幅は、「H」の字の横線部0.6mm、「H」の字の縦線部0.3mmである。一方、第二及び第三の通気溝4A、4Bの深さは100μm、溝幅は0.3mmである。また、第二、第三噴出口2A,2Bの軸受パッド外周までの距離は4mmである。
この図1に示す軸受パッド10において、それぞれの噴出口1、2A、2Bの大きさを変化させた表1に示す実施例と比較例についての剛性と減衰比(振動数1150Hz時)を測定した。
まず、本発明にいう非等価性を、図1に示す第二噴出口2Aまたは第三噴出口2Bの噴出流量の第一噴出口1の噴出流量に対する噴出流量比を測定し、これによって、噴出流量の差を
(1−噴出流量比)×100%
によって求めた。
例えば、表中の番号1の実施例の場合、噴出流量比が0.24であるので、噴出流量の差は76%となる。
剛性は、以下の方法によって測定した。
真空与圧を与えられるようにした軸受パッドをサブミクロンレベルの平面度を有する定盤上に定盤面を対向面となるように設置した。
真空与圧と軸受パッドの上に種々の重量の錘を載せ、所定の圧力の空気を定盤面に噴出供給した。この時、軸受パッドの上部の高さ変動を電気マイクロメータの変位センサーを用いて測定した。
真空与圧および錘と軸受パッドの合計重量の負荷に対する軸受パッドの上部の高さ変動、すなわち、浮上隙間の関係より剛性を下記の式に基づいて計算した。
(浮上隙間1+浮上隙間2)/2における剛性 =
−(負荷1−負荷2)/(浮上隙間1−浮上隙間2)
単位剛性は、軸受面の面積により、剛性を除することにより算出した。
単位剛性=剛性/軸受面積
また、減衰比の測定は以下の方法に基づいて行った。
剛性の測定の場合と同様に、所定の構造の軸受パッドを作製し、これをサブミクロンの平面度を有する定盤上に定盤面を対向面となるように設置した。
軸受パッドの上部に高さ変動を測定する変位センサーを設置したのち、軸受パッドの上に特定の共振周波数に相当する重量の錘を載せ、所定の圧力の空気を定盤面に供給し、所定の隙間となるように真空与圧を調整した。
錘の上部を、先端に加振力測定用のロードセルを有するインパクトハンマーにより加振し、変位センサーより出力された振動波形をFFT装置により解析し、共振周波数および減衰比を得た。
噴出流量比は、気体噴出口への供給配管側を別々に供給しその配管の途中にそれぞれ流量計を設け、流量を測定した。
表1に得られた剛性と減衰比を示す。
Figure 0004875296
同表に示す番号1、3〜6、8、9に示す本発明の実施例の場合、従来では達成の難しかった値の単位面積当たりの剛性と減衰比を得ることができた。例えば、表1の番号1に示す実施例は、剛性が2.5N/μm/cmを超え、かつ0.05程度の減衰比となっている。
これに対して、番号2の比較例は、図1において第二噴出口2Aと第三噴出口2Bを省略した基本的には気体噴出口が「物理的に等価性の位置」に配置された場合である。周知の先に挙げた非特許文献1に記載の流体力学に基づく差分法近似を用いて行ったシミュレーションでの単位面積当たりの剛性は高い数値になるが、自励振動してしまい軸受として利用できない。
表1において、番号3〜6の実施例に示すように、本発明に基づいて、軸受パッド面に設けられた気体噴出口が「物理的に非等価な位置」に配置されており、また、それぞれの噴出口径が2種以上である特徴が、比較例の場合の実質的に「物理的に等価な位置」に配置された気体噴出口によって形成された気体薄膜と対比して、剛性と減衰比が効果的に両立していることが分かる。
同じく表1において、番号7に示す比較例は、図7の従来例に示す「物理的に等価な位置」に配置された例を示すもので、剛性と減衰比において劣る。
番号8、9の実施例は、各々、図1において、第二、第三噴出口2A、2Bの中心から軸受パッドの外周までの距離を2mm、3mmに変えた場合の例で、この場合も、3N/μm/cmを超える剛性を得られることが示されている。
実施例 その2
表2に示す番号10、11および14の実施例は、図1において第一、第二、及び第三の通気溝3、4A、4Bの溝深さを30μm、溝幅はすべて1mmとし、気体流量(消費量)を、表1に示す例では、2.2〜5.0Nl/minとしたのに対し、1.4〜1.7Nl/minと減少させた場合を示している。
番号12、13の比較例は、図1において、第二、第三噴出口2A、2Bがない場合の例を示す。
同表に示すように、気体流量(消費量)を減少させた場合においても、本発明の実施例に係る10、11および14は、12、13の比較例と比較して、減衰比がより高い軸受を得ることができることを示している。
Figure 0004875296
図2は、流体力学に基づく差分法近似を用いて行ったシミュレーションによる気体による減衰効果を示す図である。
この図2は、図1における第一噴出口1と、第二、第三噴出口2A、2Bを横切る線上の減衰圧力の平均値に対する各位置の減衰圧力を相対値として示す。減衰圧力が大きいほど減衰性に優れていると言える。
同図において、実線は番号11に示す実施例の場合を、点線は番号13に示す比較例の場合を示す。
比較例のグラフにおいて、減衰圧力は通気溝部と外縁部において低く、通気溝部近傍及び外縁部近傍でいったん高くなった後、通気溝及び外縁部からさらに遠ざかると次第に小さくなる傾向が読み取れる。
実施例のグラフにおいて、図1に示す第二、第三噴出口2A、2Bに、気体薄膜の減衰性に悪影響を与える第二及び第三の通気溝4A、4Bが追加されているにも関わらず、減衰圧力が高められていることが分かる。
この結果から、図1に示す構造では、本発明の要件にいう「気体噴出口の少なくとも一つ以上を非等価な位置に配置すること、及び噴出口径を2種以上とすること」、具体的には、番号11に示す実施例においては、第二、第三噴出口2A、2Bを第一噴出口1よりも小径としたことによって、気体薄膜の剛性の低下を招かず、減衰性の向上を効果的に達成していることが分かる。また、番号14の実施例では、剛性は低いが減衰性が、番号12と13の比較例よりも3〜4倍に高められていることが分かる。
このことは、図1に示す軸受パッド10の構造は、中央部の「H」の字の第一の通気溝3が軸受剛性の発現を担い、両側の直線状の第二、第三の通気溝4A,4Bが減衰性を高める効果を担っていると言える。
具体的には、番号9の実施例で直線状の第二、第三の通気溝4A,4Bの中央にある第二噴出口2Aまたは2Bの圧力(隙間5μmで0.37MPa)は、「H」の字の第一の通気溝3の中央にある第一噴出口1の圧力(隙間5μmで0.26MPa)よりも高く、また隙間が5μmと6μmの時の圧力の差は、直線上の直線状の第二、第三の通気溝4A,4Bの中央にある第二噴出口2Aまたは2Bで約0.03MPaであるのに対し、「H」の字の第一の通気溝3の中央にある第一噴出口1では約0.04MPaであり、隙間変動により軸受面内の気体の流れに変化が生じ、気体の粘性効果による減衰性を引き出していると考えられる。
実施例その3
図3は、気体噴出口が物理的に非等価な位置に配置された軸受パットの他の例を示し、表3はこの軸受パット20を使用した実施例を番号15に、比較例を番号16に示す。
同図に示すように、第一噴出口1が軸受パッド20の中心に配置され、これに通ずる第一の通気溝3が直線状に形成されている。第二噴出口2Aと第三噴出口2Bが両周縁の2カ所に配置され、これに通ずる第二及び第三の通気溝4A、4Bが「コ」の字状に形成されている。第二噴出口2Aと第三噴出口2Bは物理的に等価な位置にあり、第一噴出口1に対して、第二噴出口2Aと第三噴出口2Bが、物理的に非等価な位置にある。これらの通気溝3、4A,4Bの深さは60μm、溝幅は0.3mmである。
表3は、軸受隙間が7μmの場合の剛性及び減衰比、噴出流量比を示す。
Figure 0004875296
表3において、番号15の実施例は単位剛性が2.5N/μm/cmで、減衰比は0.03である。
これに対して番号16の比較例は、図3において第一噴出口1がない場合を示す。この比較例は、シミュレーションによる単位剛性は実施例と同等であるが、0.01未満の減衰比であり減衰性の悪いものであった。
実施例その4
図4に示す軸受パッド30は、気体噴出口の少なくとも一つが、その噴出流量が10%以上他の気体噴出口と異なる非等価な位置に配置された例を示す。
軸受パッド30は軸受面(軸受パッド面5)が長方形であり、第一噴出口10Aと第二噴出口10Bが短辺側に、第三噴出口20Aと第四噴出口20Bが長辺側に配置され、各噴出口につながる第一の通気溝3が「口」の字状に形成されている。
同図において、第一噴出口10Aと第二噴出口10Bは物理的に等価な位置にあり、第三噴出口20Aと第四噴出口20Bも物理的に等価な位置にあるが、第一噴出口10A、第二噴出口10Bに対して、第三噴出口20Aと第四噴出口20Bが、物理的に非等価な位置にある。第一の通気溝3の深さは20μm、溝幅は1mmに形成されている。
表4は、図4に示す軸受パッドによる噴出気体の軸受隙間が5μmの場合の剛性と減衰比、噴出流量比を示す。
Figure 0004875296
同表において、番号18に示す実施例は、図4の中央部に径が60μmの第五噴出口を追加するとともに、第一から第四の噴出口10A、10B、20A、20Bの口径を小さくして単位剛性を番号17に示す比較例にほぼ一致させ、減衰比を比較しやすくしたもので、第五噴出口の第一、第二噴出口10A、10Bに対する噴出流量比は0.42であり、番号17に示す比較例に対し減衰比が大幅に改善されていることが分かる。
これに対して、番号17に示す比較例は、第一、第二噴出口10A、10Bに対する第三、第四噴出口20A、20Bの噴出流量比は0.98であり、したがって噴出流量の差は2%であり、単位剛性が2.6N/μm/cmで、減衰比は0.02であるに過ぎない。
比較例のように、非等価な位置に配置された噴出口であっても、噴出流量の差が2%と小さい場合、減衰比の改善効果は比較的小さい。
この実施例より、気体噴出口の少なくとも一つは、その噴出流量が10%以上他の気体噴出口と異なる「非等価な位置」に配置されていることが望ましいことが分かる。
参考例
通常の給気圧力より格段に高い給気圧でも発振せず高剛性の軸受として使用可能な軸受パッドの参考例を以下に説明する。図5と表5に参考例の構造と特性を示す。
参考例は、図5に示すように軸受パッド面5の中央部にHの字状の第一の通気溝3、及び「エ」の字状の第二および第三の通気溝4A、4Bを該Hの字状の第一の通気溝の中央部直線部分を対称線とした線対称に配置し、これらの3つの通気溝それぞれに噴出口を各1個ずつ設け、第二、第三の通気溝4A、4Bに設けた第二、第三噴出口2A、2Bの噴出口径が第一の通気溝3に設けた第一噴出口1の噴出口径未満とした構造である。各通気溝3、4A、4Bの溝深さは40μm、溝幅は0.3mmである。
表5に示す特性は軸受隙間5μmとした場合である。一般的な給気圧である0.4MPaにおいては0.15という非常に高い減衰比を示し、給気圧を1.0MPaとして
も比較的高い減衰比0.04(当然ながら発振しない)と、非常に高い単位剛性6.0N/μm/cmを示すものである。
Figure 0004875296
軸受隙間が小さいときには、第一の通気溝3に設けた第一噴出口1からの気体の流れは、第二、第三の通気溝4A、4Bとそれに設けた第二、第三噴出口2A、2Bが主となって形成する気体膜の圧力により、第二、第三の通気溝4A、4Bの領域への流れが妨げられ、Hの字の両側への流れが支配的であるが、軸受隙間が広い場合には第二、第三の通気溝4A、4Bとそれに設けた第二、第三噴出口2A、2Bが主となって形成する気体膜の圧力が低下するため、第一の通気溝3に設けた第1噴出口1からの気体の一部は、 第二、第三の通気溝4A、4Bの領域(Hの字の上下方向)へ流れ、第二、第三の通気溝4A、4Bを通って外縁部へ流出するようになる。すなわち隙間変動による軸受面内の気体の流れに大きな変化が生じ、気体の粘性による減衰性を効果的に引き出していると考えられる。
本発明により、格段に高い給気圧を利用することが可能になり、気体軸受では従来考えられなかった非常に高い剛性を持ち、減衰性も良い静圧気体軸受を実現できる。
本発明の軸受パッドの軸受面(軸受パッド面)は、球面、円筒形状の曲面でも良いことは、本発明の主旨から明らかである。また、本発明の軸受パッドを軸受単体として形成し、これを移動ステージのスライダー部分に組み付けて利用しても良いし、スライダーに本発明の軸受パッドを直接構成しても良い。
上記本発明の説明においては、主として、本発明の軸受パッドを静圧気体軸受支持高精度直進案内に適用する例に基づいて説明したが、本発明の特徴である高剛性と減衰性を並立する特徴を利用して、回転スピンドルのスラスト軸受やラジアル軸受にも好適である。
本発明に係る軸受パッドの第1の実施例を気体噴出面側から見た図である。 本発明に係る軸受パッドによって形成される気体薄膜の減衰圧力を比較例との対比で示す。 本発明に係る軸受パッドの他の例を示す。 本発明に係る軸受パッドのさらに他の例を示す。 本発明に関連する軸受パッドの参考例を示す。 静圧気体軸受を適用した高精度直進案内を示す。 従来の軸受パッドを平面から見た図である。 従来の軸受パッドの他の例を示す。
符号の説明
1、10A 第一噴出口
2A、10B 第二噴出口
2B、20A 第三噴出口
20B 第四噴出口
3 第一の通気溝
4A 第二の通気溝
4B 第三の通気溝
5 軸受パッド面
10,20,30 本発明の軸受パッド
40 軸受パッド

Claims (3)

  1. 軸受パッド面に物理的に等価な位置に配置された気体噴出口と、この気体噴出口に対して物理的に非等価な位置に配置した少なくとも1つの気体噴出口を有し、物理的に非等価な位置に配置した少なくとも1つの気体噴出口からの気体噴出流量が、物理的に等価な位置に配置された気体噴出口からの気体噴出流量と10%以上異なるオリフィス絞り方式のみによる静圧気体軸受パッドであって、
    軸受パッド面の外形が2回回転対称性をもつ角形または円形であり、
    軸受パッド面の中央部に2回回転対称性をもつ第一の通気溝を、その直交する2つの線対称軸を軸受パッド面の外形の直交する2つの線対称軸と一致させて配置し、
    線対称性を有するパターンの第二及び第三の通気溝を、その線対称軸を第一の通気溝の直交する2つの線対称軸の中の1つと一致させ、且つ第一の通気溝の両側に独立して配置し、
    すべての独立した通気溝毎に気体噴出口を設けた静圧気体軸受パッド
  2. 軸受パッド面の中央にHの字状の第一の通気溝と、直線状の第二および第三の通気溝を第一の通気溝の中央部直線部分を対称線とした線対称で第一の通気溝の中央部直線部分と平行な向きに配置し、
    第一から第三の通気溝のそれぞれの中央に気体噴出口を設け、
    第二および第三の通気溝に設けた気体噴出口の径が第一の通気溝に設けた気体噴出口の径以下となるように形成されている請求項に記載の静圧気体軸受パッド。
  3. 軸受パッド面中央に直線状の第一の通気溝、およびコの字状の第二および第三の通気溝を第一の通気溝の両側にコの字が向き合うように第一の通気溝を対称線とした線対称に配置し、これらの3つの通気溝それぞれの中央に気体噴出口を各1個ずつ設け、第一の通気溝に配置した気体噴出口の径が、第二、第三の通気溝に設けた気体噴出口の径以下となるように形成されている請求項に記載の静圧気体軸受パッド。
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