本発明の実施態様について説明する。図1のように、溶液製膜設備10では、ポリマー11と溶媒12とを含むドープ13を、走行する支持体14に流延ダイ15から流出することにより流延膜16を形成する。流延膜16は支持体14からフイルム18として剥ぎ取られる。フイルム18は、テンタ20で幅方向に張力をかけた状態で搬送されながら乾燥され、テンタ20の下流の乾燥室22では、ローラで搬送されながら乾燥される。
支持体14や流延ダイ15が設けられる流延室23と吸着設備24とは、送り管25aと戻り管25bにより接続する。送り管25aは、流延室23にて流延膜16から蒸発した乾燥処理後空気26を吸着設備24へと導く。戻り管25bは、吸着設備24で生成した乾燥処理前空気27を流延室23へと導く。吸着設備24には、第1吸着塔31、第2吸着塔32が配される。乾燥処理後空気26には、ドープの溶媒の成分である化合物(以下、溶媒化合物と称する)が含まれる。第1吸着塔31、第2吸着塔32では、後述する脱着工程、吸着工程を交互に行い、これにより、乾燥処理後空気26から乾燥処理前空気27を生成する。送り管25aには、バルブ33a、33bやポンプ(図示しない)が設けられている。戻り管25bには、バルブ33cやポンプ(図示しない)が設けられている。
更に、第1吸着塔31、第2吸着塔32には、蒸気40が供給される送り管41aが接続する。この蒸気40の供給により第1吸着塔31、第2吸着塔32の吸着剤に付着する溶媒化合物を脱着し、脱着蒸気42を生成する。第1吸着塔31及び第2吸着塔32で生成した脱着蒸気42は、送り管41bにより、後述する熱回収設備に送られる。送り管41a、41bには、バルブ43a〜43cやポンプ(図示しない)が設けられている。
また、吸着設備24には、吸着制御部45が設けられ、吸着制御部45は、バルブ33a〜33c、43a〜43cやポンプに接続され、これらを制御する。吸着制御部45の制御の下、これらのバルブ33a〜33cやポンプの操作により、乾燥処理後空気26の供給先を第1吸着塔31と第2吸着塔32との間で切り替え、バルブ43a〜43cやポンプの操作により、脱着蒸気42を熱回収設備50に送る。また、吸着設備24から熱回収設備50に脱着蒸気42を送る際、吸着制御部45は、脱着蒸気発生信号S1を熱回収設備50の熱回収制御部59(後述する)に出力する。
第1,第2吸着塔31,32には、気体を内部に入れるための供給口と、当該気体を外部へ出すための排出口と、供給口と排出口とを接続する通気孔とが設けられる。この通気孔は、溶媒化合物を吸着する吸着剤が収容される収容部を備える。収容部には、吸着剤として、例えば活性炭が収納されている。図1では吸着塔の数を2とするが、吸着塔の数はこれに限定されない。
吸着工程では、溶媒化合物を含む乾燥処理後空気26が、供給口及び通気孔を経て、収容部に送られる。収容部では、乾燥処理後空気26に含まれる溶媒化合物が吸着剤により吸着される。この吸着により、乾燥処理後空気26は溶媒化合物の含有割合の低い乾燥処理前空気27となる。そして、所定の温度に調節された後に排出口から流延室23へ送られ、流延膜16を乾燥する乾燥処理に再利用される。また、脱着工程では、供給口から入った蒸気40が、通気孔を経て、収容部に送られる。収容部では、吸着剤により吸着された溶媒化合物が蒸気40により脱着される。この脱着により、蒸気40は、略100℃以上110℃以下の脱着蒸気42となって、送り管41bを介して、熱回収設備50に送られる。
吸着制御部45の制御の下、第1,第2吸着塔31,32では、吸着工程と脱着工程とが交互に繰り返し実施される。図2の(A)は第1吸着塔31、(B)は第2吸着塔32におけるタイミングチャートであり、それぞれ吸着工程を実施している状態(オン)と実施していない状態(オフ)とを実線L1で示し、脱着工程での第1,第2吸着塔31,32から流出する脱着蒸気42の流量を破線L2で示す。脱着蒸気42の流量は上方ほど高い値であることを示す。吸着制御部45により、第1吸着塔31と第2吸着塔32とにおける吸着工程及び脱着工程は、図2に示すように、互いに同期しないように実施される。これにより、溶液製膜設備10についての吸着工程と脱着工程とを連続して実施することができる。図2(C)に示す脱着蒸気発生信号S1は、第1吸着塔31と第2吸着塔32とのいずれかにおいて脱着蒸気42が発生するとオンになり、吸着制御部45から熱回収制御部59へ出力される。一方、第1吸着塔31と第2吸着塔32とにおいて脱着蒸気42が発生していないとき、脱着蒸気発生信号S1は、図2(C)に示すようにオフとなる。
(熱回収設備)
図1に示すように、熱回収設備50は、伝熱媒体51を用いて脱着蒸気42を冷却するコンデンサ52と、伝熱媒体51を蓄えるための蓄熱槽54と、伝熱媒体51の流路であり、コンデンサ52と蓄熱槽54との間を接続する伝熱媒体流路切替部55とを有する。また、蓄熱槽54には、蓄熱槽54からの伝熱媒体51がもつ熱エネルギを外部機器に送る熱交換器56が接続する。
(コンデンサ)
コンデンサ52は、脱着蒸気42が導入されるコンデンサ本体52aと、このコンデンサ本体52aの内部に備えられ、脱着蒸気42を冷却する伝熱媒体51が通過する冷却配管52bと、冷却配管52bと接続する伝熱媒体51の入口52c及び出口52dとを有する。また、コンデンサ52には、脱着蒸気42が凝縮して生成した液を化合物毎に分留する蒸留手段としての蒸留塔57が接続する。
(蓄熱槽)
蓄熱槽54は、伝熱媒体51を貯留する貯留部54aと、貯留部54aに貯留する伝熱媒体51をコンデンサ52へ流出する流出口54bと、コンデンサ52からの伝熱媒体51を貯留部54aへ流入する流入口54cと、貯留部54aに貯留する伝熱媒体51を熱交換器56に流出する流出口54dと、熱交換器56からの伝熱媒体51を貯留部54aへ流入する流入口54eとを有する。貯留部54aは、断熱性に富む材質を用いて、内径略3m、高さ略5mの略円柱状に形成される。貯留部54aの内周面には、温度センサ58が略垂直方向に並ぶように設けられる。流出口54b、流入口54eは、貯留部54aの下部側に設けられる。流入口54c、流出口54dは、貯留部54aの上部側に設けられる。温度センサ58は、熱回収制御部59と接続する。熱回収制御部59の詳細は後述する。
(熱交換器)
熱交換器56は、内部配管56aと内部配管56bとを有する。伝熱媒体51は内部配管56aを通過する。内部配管56bは、図示しない外部機器と接続する。熱交換器56では、内部配管56aを通過する伝熱媒体51と内部配管56bを通過する伝熱媒体との間で熱交換が行われ、これにより伝熱媒体51の熱が外部機器に伝わる。このような熱交換を行う熱交換器56としては、公知の熱交換器であればいずれを用いてもよい。この熱交換器56での熱交換を経て、冷却された伝熱媒体51は、後述する配管73を介して蓄熱槽54へ送られる。
(伝熱媒体流路切替部)
伝熱媒体流路切替部55は、戻し経路としての戻し配管60、供給経路としての供給配管61、循環経路としての循環配管62、各配管60〜62を用いてコンデンサ52と蓄熱槽54との間の伝熱媒体51の流路を切り替える熱回収制御部59、供給切替弁63、ポンプ65、及び温度センサ80、81とを有する。
戻し配管60は、流出口54bと入口52cとを接続する。供給配管61は、出口52dと流入口54cとを接続する。更に、循環配管62は、戻し配管60と供給配管61とを接続する。供給切替弁63は、供給配管61と循環配管62との接続部に設けられる。
供給切替弁63は、いわゆる三方制御弁であり、出口52dからの伝熱媒体51を蓄熱槽54の流入口54cに送る第1切替位置と、出口52dからの伝熱媒体51を循環配管62に送る第2切替位置との間を切り替え自在である。ポンプ65は、循環配管62との接続部よりも下流側の戻し配管60に設けられる。ポンプ65は、熱回収制御部59の制御下において、戻し配管60中の伝熱媒体51を所定の流量でコンデンサ52へ送り、供給切替弁63は第1切替位置と第2切替位置とのいずれかの位置に切り替えられる。
戻し切替弁68は、ポンプ65よりも下流側の戻し配管60に設けられる。また、配管69は、戻し切替弁68とポンプ65よりも上流側の戻し配管60とを接続する。戻し切替弁68は、いわゆる三方制御弁であり、ポンプ65からの伝熱媒体51を入口52cに送る第3切替位置と、ポンプ65からの伝熱媒体51を配管69に送る第4切替位置との間を切り替え自在である。熱回収制御部59の制御下において、戻し切替弁68は第3切替位置と第4切替位置とのいずれかの位置に切り替えられる。
蓄熱槽54の流出口54dと熱交換器56の内部配管56aとは、配管72により接続し、内部配管56bと流入口54eとは、配管73により接続する。配管72には、ポンプ74が設けられる。圧力制御弁75を備える配管76は、ポンプ74の下流側の配管72と供給切替弁63よりも下流側の供給配管61とを接続する。熱回収制御部59の制御下において、ポンプ74は、配管72中の伝熱媒体51を所定の流量で圧力制御弁75へ送る。
供給配管61には、温度センサ80、81が上流側から順次設けられ、配管72、73には温度センサ82、83がそれぞれ設けられる。また、配管72には圧力センサ87が設けられる。これらの温度センサ80〜83は、熱回収制御部59に接続する。圧力センサ87は、圧力制御弁75と接続する。圧力センサ87が検知する圧力値が所定値を超える場合には、圧力制御弁75は、配管76を介して、流出口54dからの伝熱媒体51を供給配管61へ送り、当該圧力値が所定値以下である場合には、圧力制御弁75は流出口54dからの伝熱媒体51を熱交換器56へ送る。これにより、配管72、73における伝熱媒体51の圧力を一定値以下にすることが出来る。
更に、配管73には、流量制御弁90が設けられる。流量制御弁90には、配管91が接続する。配管91には、薬液が貯留する槽92と、薬液を配管73へ送るポンプ93とが設けられる。ポンプ93は、熱回収制御部59の制御下、配管73を介して、配管91中の薬液を流入口54eへ送る。流量制御弁90は、熱回収制御部59の制御下において、薬液の配管73への供給開始、または供給停止の切替を行う。薬液とは、配管などの錆止めを防止する添加剤や、伝熱媒体の突沸を抑制する添加剤などが含まれる。
ポンプ65、73、91としては、公知のポンプであればよいが、用いる伝熱媒体51や薬液の粘性などの特性や温度などの環境条件などに適するものを用いればよい。また、上記の他、供給切替弁63による切り替えを行う場合には、ポンプ65として、長時間連続運転が可能なものを用いることが好ましい。ポンプ65、73は、蓄熱槽54からコンデンサ52へ流れる伝熱媒体51の圧力は、0.5±0.05MPaであり、蓄熱槽54からコンデンサ52へ流れる伝熱媒体51の圧力は、0.2MPa以下であることが好ましい。
熱回収制御部59は、温度センサ58、80〜83、圧力センサ87の検出値、並びに、吸着制御部45からの脱着蒸気発生信号S1を読み取り、これらの検出値に基づいて温度判定処理や脱着蒸気判定処理を行い、供給切替弁63、戻し切替弁68、ポンプ65、74、93を制御し、貯留部54aに貯留する伝熱媒体51の量や、貯留部54aにおける熱量の収支等を調節する。なお、温度判定処理や脱着蒸気判定処理の詳細は後述する。
※ 蓄熱槽内の温度分布を形成・維持するための制御方法並びにその因子について上記以外のものがありましたら、補充願います。補充のポイントとしては、本願発明の成立に必要な事項の記載は必須であり、本願発明においてあったほうがよい事項については記載したほうが好ましいと思います。
(伝熱媒体)
伝熱媒体51としては、コンデンサ52における脱着蒸気42の冷却や、蓄熱槽54における蓄熱や、熱交換器56における熱交換に適した伝熱媒体であればよい。この伝熱媒体51の具体的なものとして、上記要件を満たすことに加え、取り扱いが容易であることから、水を用いることが好ましい。また、貯留部54aでの温度分布を安定して形成させるために、伝熱媒体51として、密度の温度変化の大きい物質や、水にその物質を添加したものを用いることが好ましい。なお、これらのコンデンサ52と蓄熱槽54と熱交換器56における伝熱媒体51の温度が伝熱媒体の沸点の近傍或いはそれ以上になるときは、伝熱媒体51のキャビテーションが発生するため好ましくない。この場合には、伝熱媒体或いは各装置52、54、56の諸条件を適宜変更すればよい。伝熱媒体51として、水を用いる場合には、各装置52、54、56における温度を水の沸点より5℃以上低くすることが好ましく、より好ましくは装置52、54、56における温度を水の沸点より8℃以上低くすることが好ましい。
なお、蒸留塔57では、コンデンサ52から送られてきた液を溶媒化合物と少量の水とに分留する。分留された溶媒化合物はドープの溶媒12として再び使用される。水は脱着蒸気42の他、溶液製膜設備10の内部空気に含まれていた水に由来し、排水95として処分される。ドープの溶媒が複数の成分よりなる場合には、溶媒化合物毎に分留されるので、複数の溶媒化合物を所定の配合に混合してから、これをドープの溶媒として再利用する。
次に、本発明の作用について説明する。図1のように、溶液製膜設備10では、溶液製膜方法が行われる。流延室23では、流延ダイ15からドープ13が支持体14上に流延し、支持体14上には流延膜16が形成する。この流延膜16を所定条件で乾燥した後、剥ぎ取り、フイルム18とする。フイルム18は、テンタ20や乾燥室22に送られ、所定の条件で乾燥する。乾燥処理が施され、残留する溶媒成分が十分に除去されたフイルム18は、ローラに巻き取られる。
溶液製膜方法における乾燥工程を行う流延室23、テンタ20、乾燥室22では、所定の温度に調節された乾燥処理前空気27が導入され、乾燥処理が行われる。この乾燥処理により、流延膜16やフイルム18に残留する溶媒が蒸発する。流延室23には、蒸発した溶媒化合物を含む乾燥処理後空気26が生成する。この乾燥処理後空気26は、吸着設備24に送られる。
吸着制御部45の制御の下、第1吸着塔31や第2吸着塔32では、吸着工程や脱着工程が行われる。吸着工程では、第1吸着塔31や第2吸着塔32に送られた乾燥処理後空気26は、収容部の吸着剤と接触する。この接触により、乾燥処理後空気26に含まれる溶媒化合物は、吸着剤に吸着する。脱着工程では、温度100℃以上150℃以下の蒸気40が第1吸着塔31や第2吸着塔32に送られる。第1吸着塔31や第2吸着塔32に送られた蒸気40は収容部の吸着剤と接触する。この接触により、蒸気40は吸着剤に付着する溶媒化合物を脱着させる。この脱着により、蒸気40と溶媒化合物とを含み、温度100℃以上110℃以下の脱着蒸気42となる。この脱着蒸気42は、送り管41aを介してコンデンサ本体52aに送られる。吸着設備24の吸着制御部45は、脱着蒸気42の排出時、脱着蒸気発生信号S1をオンにして熱回収制御部59に出力する。
貯留部54aに貯留する伝熱媒体51に温度差があると、その温度差に起因する密度差によって、高温の伝熱媒体51は貯留部54aの上部に位置し、低温の伝熱媒体51は貯留部54aの下部に位置するようになり、貯留部54a内の伝熱媒体51には略70℃から93℃までの温度分布が形成する。
溶液製膜設備10の運転開始とともに、熱回収設備50は、熱回収処理を開始する。熱回収処理では、図3のように、第1に、熱回収制御部59の制御の下、供給切替弁63が第2切替位置に、戻し切替弁68が第4切替位置にセットされ、ポンプ65、74がオンする。これにより、伝熱媒体流路切替部55内の伝熱媒体51が、戻し配管60と配管69とを循環する。こうして、熱回収設備50は、伝熱媒体51を蓄熱槽54に送ることなくして、戻し配管60と配管69との間を循環する熱遮断状態になる(ステップS100、S110)。熱遮断状態の熱回収設備50では、伝熱媒体51がコンデンサ52に送られないため、コンデンサ52通過時の伝熱媒体51の熱エネルギの損失を抑えることができる。
次に、熱回収制御部59は、脱着蒸気判定処理を行う。脱着蒸気判定処理では、熱回収制御部59が、吸着制御部45からの脱着蒸気発生信号S1を検知しているか否かを判定する(ステップS120)。熱回収制御部59が脱着蒸気発生信号S1を検知しない場合は、熱回収制御部59の制御の下、戻し切替弁68が第4切替位置に切り替えられ(ステップS180)、再び脱着蒸気判定処理が行われる(ステップS120)。一方、熱回収制御部59が脱着蒸気発生信号S1を検知する場合には、熱回収制御部59の制御の下、戻し切替弁68が第3切替位置に切り替えられる(ステップS130)。これにより、熱回収設備50は、コンデンサ52からの伝熱媒体51が蓄熱槽54に送られずに、戻し配管60、供給配管61、循環配管62を循環する熱遮断状態となる。
熱遮断状態では、ポンプ65が、戻し配管60を介して、流出口54bから冷却配管52bに伝熱媒体51を連続して送る。コンデンサ本体52aには脱着蒸気42が流入し、冷却配管52bには伝熱媒体51が流入する。これにより、脱着蒸気42と伝熱媒体51との間で熱交換が行われ、コンデンサ52や伝熱媒体流路切替部55を循環する伝熱媒体51の温度が上昇する。また、コンデンサ52での熱交換より、脱着蒸気42は凝縮する。蒸留塔57では、この凝縮した液をさらに冷却することにより、脱着蒸気42から溶媒12と排水95とに分留する。溶媒12は、ドープ13の調整のために再利用される。
熱遮断状態の熱回収設備50において、熱回収制御部59は、温度判定処理を行う。温度判定処理では、熱回収制御部59は、温度センサ81からの検出温度Txを読み取り、検出温度Txと閾値Tcとのいずれが大きいかの判定処理を行う(ステップS140、S150)。温度Txが所定の閾値Tc以上である場合には、熱回収制御部59は供給切替弁63を第1切替位置に切り替える(ステップS160)。これにより、低温の伝熱媒体51が流出口54bからコンデンサ52へ送られ、コンデンサ52を介して、高温となった伝熱媒体51が流入口54cへ流入するため、コンデンサ52と蓄熱槽54との間における伝熱媒体51の循環が開始し、脱着蒸気42の熱が蓄熱槽54に送られる状態(以下、熱供給状態と称する)となる。一方、温度Txが所定の閾値Tc未満である場合には、供給切替弁63を第2切替位置、戻し切替弁68を第4切替位置に切り替え、熱回収設備50はステップS120に戻る(ステップS170、S180)。
熱供給状態において、熱回収制御部59は、処理終了信号が熱回収制御部59に入力されるまで、温度判定処理を行う(ステップS200)。処理終了信号が熱回収制御部59入力されると、熱回収処理が終了する。
閾値Tcは、熱回収制御部59に設定される値であり、熱回収設備50の運転前に予め設定されていても良いし、運転中に調節・変更できるものであってもよい。閾値Tcとしては、流出口54dから流出させたい伝熱媒体51の温度Ty、蓄熱槽54の構造、寸法、熱容量、並びに伝熱媒体51の物性(熱容量、沸点など)などを考慮して決めることが好ましい。
本発明の熱回収設備50は、温度判定処理を行い、伝熱媒体51の温度に応じて、供給切替弁63を第1切替位置と第2切替位置とのいずれかに切り替え、伝熱媒体51の温度が閾値Tc以上の場合に熱供給状態となり、伝熱媒体51の温度が閾値Tc未満の場合に熱遮断状態となる。このため、熱回収設備50は、ポンプ65の連続運転を行いながら、閾値Tcより低い温度の伝熱媒体51を蓄熱槽54に流入することを防ぎ、脱着蒸気42からの熱エネルギを効率よく蓄熱槽54に溜めることができると同時に、蓄熱槽54内の伝熱媒体51の温度分布を一定に維持することが出来る。また、熱交換器56にて、熱を奪われた低温(略70℃以上75℃以下)の伝熱媒体51は、流入口54eへ流入するが、流入口54eが貯留部54aの下部に設けられているため、貯留部54a内の伝熱媒体51の温度分布は略一定に保たれる。したがって、貯留部54aの上部に設けられる流出口54dから熱交換器56へ流出する伝熱媒体51の温度は高温(90℃以上92℃以下)で一定に保たれる。すなわち、蓄熱槽54は、間欠的に発生する脱着蒸気42の熱エネルギを、熱エネルギとして熱交換器56に連続して供給することができる。
また、本発明の熱回収設備50は、脱着蒸気判定処理を行うことにより、熱回収設備50は、ポンプ65の連続運転を行いながら、脱着蒸気42の熱により伝熱媒体51を暖め、且つ、コンデンサ52の通過における伝熱媒体51の熱エネルギの損失を抑えることができる。
本実施形態に示すよう熱回収設備50において、脱着蒸気42がコンデンサ52に供給されない間に、伝熱媒体51がコンデンサ52に送られると、貯留部54aに貯留する伝熱媒体51の熱エネルギ量が減少するだけでなく、温度分布に乱れが生じ、流出口54dから一定の高温の伝熱媒体51を流出することが困難になる。この問題を避けるためには、脱着蒸気42がコンデンサ52に供給されない間、流入口54cから貯留部54aへの伝熱媒体51の流入を停止すればよい。しかしながら、この伝熱媒体51の流入の停止の制御は、ポンプ65によって行われ、脱着蒸気42の発生に合わせてポンプ65を間欠的に運転することは、ポンプ65の短寿命化につながるため好ましくない。本発明の熱回収設備50では、温度判定処理や脱着蒸気判定処理を行うため、ポンプ65の長寿命化を図りながら、熱回収設備50における無駄な熱エネルギの損失を低減し、貯留部54aに貯留する伝熱媒体51の温度分布を一定に維持し、間欠的な熱エネルギを回収して、連続した熱エネルギとして供給することができる。
温度Txとして、温度センサ81が検出する温度の他、温度センサ80が検出する温度、及びこれらのセンサ80、81の検出値を組み合わせて用いることも可能である。検出値を組み合わせて用いる場合として、例えば、これらの検出値の平均値を温度Txとすることなどが挙げられる。
上記実施形態では、脱着蒸気42の発生を、脱着蒸気発生信号S1の検知により判別すると記載したが、本発明はこれに限られず、送り管41bに流量計を設け、この流量計の検出値Qxと閾値Qcとを比較して脱着蒸気判定処理を行っても良い。なお、閾値Qcの設定方法として、コンデンサ52を通過後の伝熱媒体51の温度が、Tc以下にならないような流量の値としてもよいし、脱着蒸気42がコンデンサ52に流量するか否か、すなわち閾値Qcを0とし、検出値Qxより大きいときは戻し切替弁68を送り状態のままに、検出値Qxが0であるときは、熱回収制御部59は、戻し切替弁68を循環状態に切り替えても良い。
供給切替弁63を切り替える基準として、上記のような伝熱媒体51の温度Txの代わりに、コンデンサ52に流入する脱着蒸気42の流量Qxとしてもよい。この場合における脱着蒸気42の流量の閾値などは、製造条件等により適宜決定すればよい。また、流出口54bから流出する伝熱媒体51の熱量Q1と、流入口54cから流入する伝熱媒体51の熱量Q2との差(Q2−Q1)が0以上であるか否かで供給切替弁63を切り替えても良い。同様にして、流出口54dと流入口54eにおける伝熱媒体の熱量の収支を考慮し、蓄熱槽54が保持する熱量が一定値以上であるか否かで供給切替弁63を切り替えても良い。更に、これらを組み合わせて、供給切替弁63の切り替えを行っても良い。
上記実施形態では、供給切替弁63と戻し切替弁68とが三方制御弁である記載したが、本発明はこれに限られない。三方制御弁に替えて、例えば、流路を遮断するゲート弁を複数設け、流路の切り替えを行うことにより、上記実施形態と同等の効果を発揮することができる。
なお、上記実施形態では、ポンプ65を戻し配管60に設けるとしたが、本発明はこれに限らず、ポンプ65を供給配管61に設けてもよい。
熱回収制御部59により、貯留部54aの温度分布の所定の範囲に維持し、流出口54dから流出する伝熱媒体51の温度を一定に保つと記載したが、これに限らず、設置位置の異なる流出口を複数設け、これらの流出口と供給配管61を接続する配管及び弁を設けてもよい。そして、温度センサ58などからの検出温度に応じて、この弁を操作し、伝熱媒体51を、その温度に応じる貯留部54aの位置に流出することができる。なお、上記内容は、流出口54dに限られず、流出口54bや流入口54c、54dにも適用できる。
上記実施形態では、図の煩雑化を避けるために、図1には、コンデンサ52を1つしか示していないが、コンデンサ52と蒸留塔57との間に、1つ或いは2つ以上のコンデンサを設置してもよい。例えば、コンデンサを3つ用いる場合は、脱着蒸気42の温度を下流に行くに従い低くして熱交換を行ってもよい。熱効率の観点より、これらのコンデンサを用いて脱着蒸気42を略10℃まで冷却し、脱着蒸気42から奪った熱を蓄熱槽54に回収することが好ましい。
上記実施形態では、吸着剤から溶媒化合物の脱着する脱着前空気として、蒸気を用いると記載したが、本発明はこれに限られない。一般に、沸点の高い溶媒化合物になるほど、その脱着には高い温度を必要とするため、脱着前空気の温度は、この溶媒化合物の沸点に応じて設定することが好ましい。加えて、脱着前空気としては、溶媒化合物の含有濃度が低いガスを用いることが好ましい。
外部機器として、例えば、吸着塔から生成する乾燥処理前空気27の予備加熱器や、流延室23、テンタ20や乾燥室22の温度調節器や、後述する排水95から蒸気40をつくるための加熱器など用いることができる。また、この外部機器は溶液製膜設備の装置に限られず、装置自身の運転に熱が必要なものであればよい。
なお、上記実施形態では、流延室23で生成した乾燥処理後空気26から溶媒化合物を回収するための吸着工程や脱着工程を行うと記載したが、テンタ20や乾燥室22で生成した乾燥処理後空気について吸着工程や脱着工程を同様に行うことが可能である。また、脱着蒸気42に代えて、この脱着蒸気を、本発明に適用することも可能である。
なお、上記実施形態では、外部機器に熱を与えるために、熱回収設備50とともに熱交換器56を用いると記載したが、本発明はこれに限られず、熱回収設備50と熱交換器56とを用いて、乾燥処理前空気27のプレ加熱を行っても良い。次に、乾燥処理前空気27のプレ加熱に、脱着蒸気42の排熱を利用する実施形態について説明する。なお、以下、上述した実施形態と異なる部分について詳細の説明を行い、同様の部材や装置には同一の符号を付し、その詳細の説明は省略する。
図4のように、溶液製膜設備100では、ポリマー11と溶媒12とを含むドープ13を流出する流延ダイ15と、流出したドープ13から流延膜16を形成する支持体14と、流延膜16をフイルム18として支持体14から剥ぎ取る剥取ローラ17と、フイルム18を乾燥するテンタ20と、テンタ20から送られたフイルム18を乾燥する乾燥室22とからなる。また、溶液製膜設備100には、吸着回収装置と、回収設備とが接続し、吸着回収装置と回収設備との間には熱回収設備50が接続する。
(支持体)
流延ダイ15の下方には、回転ローラに掛け渡された支持体14が設けられている。回転ローラは図示しない駆動装置により回転し、この回転に伴い支持体14は無端で走行する。支持体14は、その移動速度、すなわち流延速度が10m/分以上200m/分以下で移動できるものであることが好ましい。また、支持体14の表面温度を所定の値にするために、回転ローラに伝熱媒体循環装置が取り付けられていることが好ましい。支持体14は、その表面温度が−20℃以上40℃以下に調整可能なものであることが好ましい。本実施形態において用いられている回転ローラ内には伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、その中を所定の温度に保持されている伝熱媒体が通過することにより、回転ローラの温度を所定の値に保持されるものとなっている。
支持体14の幅は特に限定されるものではないが、ドープ13の流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものを用いることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。支持体14は、ステンレス製であることが好ましく、十分な耐腐食性と強度とを有するようにSUS316製であることがより好ましい。また、支持体14の全体の厚みムラは0.5%以下のものを用いることが好ましい。
なお、回転ローラを直接支持体として用いることも可能である。この場合には、回転ムラが0.2mm以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。この場合には、回転ローラの表面の平均粗さを0.01μm以下とすることが好ましい。そこで、回転ローラの表面にクロムメッキ処理などを行い、十分な硬度と耐久性を持たせる。なお、支持体(支持体14や回転ローラ)の表面欠陥は最小限に抑制する必要がある。具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールは1個/m2以下であり、10μm未満のピンホールは2個/m2以下であることが好ましい。
流延ダイ15、支持体14などは流延室23に収められている。流延室23には、その中の温度を所定の値に保つため温調設備が取り付けられている。安定したドープ13の流延を行うため、流延室23の温度が10℃以上30℃以下であることが好ましい。また、流延室23内で気化している有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)や凝縮液化した溶媒を回収する回収装置が流延室23に設けられている。凝縮器で凝縮液化した有機溶媒は、回収装置により回収される。その溶媒は再生装置(図示しない)で再生された後に、ドープ調製用溶媒として再利用される。また、流延する際に形成される流延ビードの背面部の圧力調整を行うために減圧チャンバが流延ダイ15に取り付けられていることが好ましい。減圧チャンバには、減圧装置が取り付けられており、減圧度を調整可能なものとしている。
流延膜16は、自己支持性を有するものとなった後に、フイルム18として剥取ローラ17で支持されながら支持体14から剥ぎ取られる。剥ぎ取り時の残留溶媒量は乾量基準で20重量%以上250重量%以下であることが好ましい。フイルム18は、テンタ20に送られる。なお、テンタ20に送る前のフイルム18を、多数のローラが設けられている渡り部に搬送してもよい。この渡り部では下流側のローラの回転速度を上流側のローラの回転速度より速くすることによりフイルム18にドローテンション(流延方向の張力)を付与させることができる。
テンタ20に送られる直前のフイルム18の乾量基準での溶媒含有量は50重量%以上150重量%以下であることが好ましい。
テンタ20はピンなどの把持手段を有する。フイルム18は、この担持手段により両縁を担持されながら、所定の方向へ案内される。テンタ20中を案内されるフイルム18には、乾燥風がフイルム18にあたり、これにより、フイルム18に含まれる溶媒が蒸発する。このようにして、テンタ20の通過により、フイルム18は所定の程度まで乾燥が進行する。この乾燥風の温度は、100℃以上120℃以下であることが好ましい。
フイルム18は、テンタ20で所定の残留溶媒量(乾量基準で1重量%以上10重量%以下)まで乾燥された後にフイルム18として送り出される。フイルム18の両側端部が、耳切装置により切断される。切断されたフイルムは、図示しないカッターブロワによりクラッシャに送られる。クラッシャによりフイルムの側端部は、粉砕されてチップとなる。このチップをドープ調製用に再利用することがコストの点から有利である。なお、このフイルムの両縁を切断する工程は、省略することもできるが、前記流延工程から前記フイルムを巻き取る工程までのいずれかで行うことが好ましい。
次にフイルム18は、多数のローラが備えられている乾燥室22に送られる。フイルム18は、多数のローラに巻き掛けられながら乾燥室22内を搬送される。これらローラの回転速度を調整することでフイルム18の流延方向に張力を付与することもできる。乾燥室22内の温度は、特に限定されるものではないが、50℃以上160℃以下の範囲であることが好ましい。乾燥室22に送られるフイルム18は、溶媒の残留溶媒量が少ないため、乾燥室22における乾燥処理の温度をテンタ20における乾燥処理に比べて高温にするほうが好ましい。また、乾燥室22を出たフイルム18は、巻取り室にてローラで巻き取られる。なお、耳切装置と乾燥室22との間に予備乾燥室(図示しない)を設け、フイルム18を予備乾燥すると、乾燥室22においてフイルム温度が急激に上昇することによるフイルム18の形状変化を抑制できる。
(吸着設備)
吸着設備110は、熱交換器111と加熱器112と吸着塔113、114とボイラ118と吸着制御部119とを有する。この吸着塔113、114は、それぞれ吸着剤を有し、前述した第1、第2吸着塔と同等の機能を有する。吸着塔113、114と乾燥室22との間には、熱交換器111と加熱器112とが設けられ、乾燥室22と、各部111〜114とが配管で接続される。
熱交換器111には、乾燥室22から送られた乾燥処理後空気26が送られる。乾燥室22における高温の乾燥処理によって、この乾燥処理後空気26には、溶媒とともにドープに添加した添加剤が含まれることが多い。熱交換器111は、乾燥処理後空気26から熱を奪い、吸着塔113へ乾燥処理後空気26を送る。この乾燥処理後空気26の冷却により、乾燥室22での乾燥時に溶媒とともに蒸発した添加剤(TPPなど)が凝縮される。このようにして、熱交換器111は、乾燥処理後空気26から添加剤等を除去し、添加剤が除去された乾燥処理後空気26を吸着塔113へ送る。なお、熱交換器111において凝縮した添加剤は、ドープ13の調製のために再利用される。
熱交換器111は、乾燥室22からの乾燥処理後空気26が流入する第1室111aと吸着塔113、114からの乾燥処理前空気27が流入する第2室111bと、第1室中111aの乾燥処理後空気26の熱エネルギを第2室111b中の乾燥処理前空気27に与える熱交換素子111cとを有する。熱交換素子111cとしては回転し、この回転により熱交換素子111cの部分が第1室111aと第2室111bとを交互に通過するような形態であるものが好ましい。なお、この熱交換素子111cとしては、略円盤状のものが好ましい。
吸着塔113、114は、吸着剤を収納している。吸着塔113、114に乾燥処理後空気26を送ると、乾燥処理後空気26に含有する溶媒化合物は、吸着剤によって吸着される。この吸着により、乾燥処理後空気26は、乾燥処理前空気27となる。この乾燥処理前空気27は、熱交換器111や加熱器112により、所定の温度まで加熱され、乾燥室22へ送られる。
ボイラ118は、水の加熱等により蒸気40を生成する。そして、この蒸気40は吸着塔113、114に送られる。吸着塔113への蒸気40の供給により、吸着剤に付着する溶媒化合物が脱着し、これにより蒸気40から脱着蒸気42が生成する。
また、吸着塔113、114は、前述したコンデンサ52や蓄熱槽54などから構成される熱回収設備50に接続する。吸着塔113、114で生成した脱着蒸気42は、熱回収設備50に送られる。また、熱回収設備50には蒸留塔57が接続する。
吸着制御部119は、吸着塔113、114、弁115、116、並びに熱回収設備50に接続する。弁115は、熱交換器111と吸着塔113、114とを接続する配管に設けられる。弁115は、熱交換器111からの乾燥処理後空気26を吸着塔113に送る第1切替位置と、熱交換器111からの乾燥処理後空気26を吸着塔114に送る第2切替位置とのいずれかに切替自在である。弁116は、吸着塔113、114と接続し、蒸気40が送られる配管に設けられる。弁116は、蒸気40を吸着塔113に送る第1切替位置と、蒸気40を吸着塔114に送る第2切替位置とのいずれかに切替自在である。吸着制御部45の制御の下、弁115を第1切替位置に、弁116を第2切替位置にする、或いは、弁115を第2切替位置に、弁116を第1切替位置にすることにより、脱着工程や吸着工程が、吸着塔113、114とのいずれかで行われる。そして、この切替を適宜行うことにより、吸着設備24と同様の吸着工程や脱着工程を行うことができる。
(回収設備)
テンタ20には、回収設備120が接続する。回収設備120は、熱交換器122と、凝縮器123と、プレ加熱器125と加熱器126と送風器128とフィルタ129とを有する。回収設備120は、図示しない送風器によりテンタ20内の乾燥処理にて生成する乾燥処理後空気200を回収し、送風器128によりテンタ20に新たな乾燥処理前空気201を供給する。テンタ20を通過するフイルム18は、乾燥処理前空気201により乾燥処理を施され、溶媒の残留溶媒量が所定量まで低減する。
(熱交換器)
熱交換器122は、テンタ20から送られた乾燥処理後空気200、及び後述する乾燥処理前空気201を通過させる。乾燥処理後空気200、及び乾燥処理前空気201の通過により、熱交換器122内で熱交換が行われる。
(凝縮器)
凝縮器123は、熱交換器122を通過した乾燥処理後空気200を冷却し、この冷却により乾燥処理後空気200に含有する溶媒化合物が凝縮する。この凝縮により、乾燥処理後空気200から溶媒化合物と乾燥処理前空気201とが生成する。なお、この凝縮時には、乾燥処理後空気200を略−10℃以上−3℃以下まで冷却することが好ましく、−7℃以上−5℃以下まで冷却することがより好ましい。
乾燥処理前空気201は熱交換器122に送られる。熱交換器122は、乾燥処理後空気200から熱を奪い、この奪った熱を乾燥処理前空気201に与える。また、溶媒化合物は所定の処理を経て、回収され、ドープ13の調整用の溶媒12として再利用される。熱交換器122からプレ加熱器125に送られる乾燥処理前空気201の温度は、略35℃以上45℃以下であることが好ましい。
(プレ加熱器)
プレ加熱器125は、内部配管125a、125bとを有する。内部配管125aは熱回収設備50と接続するため、熱回収設備50からの伝熱媒体51が内部配管125aを通過する。内部配管125bは熱交換器122と接続するため、熱交換器122にて加熱処理が施された乾燥処理前空気201が内部配管125bを通過する。内部配管125aに伝熱媒体51が、内部配管125bに乾燥処理前空気201が通過することにより、伝熱媒体51と乾燥処理前空気201との間で熱交換が行われる。このときに伝熱媒体51の温度が、乾燥処理前空気201の温度よりも高くすることにより、プレ加熱器125は、乾燥処理前空気201を更に加熱することができる。
(加熱器)
加熱器126は、プレ加熱器125から送り出される乾燥処理前空気201が通過する第1内部配管と、所定の温度の伝熱媒体が通過する第2内部配管とを有する。第1内部配管に乾燥処理前空気201が通過し、第2内部配管に所定の温度の伝熱媒体が通過することにより、加熱器126にて乾燥処理前空気201と伝熱媒体との間で熱交換が行われる。こうして、加熱器126は、プレ加熱器125から送り出される乾燥処理前空気201を更に加熱し、テンタ20へ送る。
(送風器)
乾燥処理前空気201は、送風器128により、加熱器126からテンタ20へ送られる。送風器128とテンタ20との間には、フィルタ129が設けられる。フィルタ129は、送風器128から送られる乾燥処理前空気201から異物等を取り除く。
次に、本実施形態の作用について説明する。溶液製膜設備100では、流延ダイ15により、支持体14上にドープ13が流延され、流延膜16が形成する。支持体14上の流延膜16は冷却され、ゲル化が進行する。このゲル化の進行により流延膜16には自己支持性が発現する。剥取ローラ17を用いて、自己支持性が発現した流延膜16をフイルム18として支持体14から剥ぎ取る。フイルム18はテンタ20に送られる。テンタ20では、乾燥処理前空気201がフイルム18にあたり、これにより、フイルム18に含まれる溶媒が蒸発し、フイルム18の乾燥が進行する。テンタ20での乾燥処理を経て、フイルム18はフイルム18となる。その後フイルム18は乾燥室22に送られる。乾燥室22では、乾燥処理前空気27がフイルム18にあたり、これにより、フイルム18に含まれる溶媒が蒸発し、フイルム18の乾燥が進行する。その後、フイルム18は、巻取りローラにより巻き取られる。
吸着設備110は、図示しない送風器により、乾燥室22で蒸発した溶媒化合物を含む乾燥処理後空気26を熱交換器111に送る。吸着制御部119は、弁115や弁116を操作して、吸着塔113、114のうち一方に熱交換器111からの乾燥処理後空気26を送り、そこで吸着工程を行い、他方に蒸気40を送り、そこで脱着工程を行う。
吸着工程では、乾燥処理後空気26に含まれる溶媒化合物が吸着剤により吸着され、これにより乾燥処理後空気26が乾燥処理前空気27となる。この乾燥処理前空気27は、熱交換器111や加熱器112により、所定の温度まで加熱され、乾燥室22へ送られる。
脱着工程では、吸着剤に付着する溶媒化合物が蒸気40により脱着される。溶媒化合物を吸着した蒸気40は、脱着蒸気42となってコンデンサ52に送られる。この脱着工程が行われる際には、図2のように、吸着制御部119から脱着蒸気発生信号S1がオンとなって、熱回収設備50内の熱回収制御部59に出力される。
脱着蒸気発生信号S1が熱回収設備50内の熱回収制御部59に入力すると、コンデンサ52と蓄熱槽54との間で伝熱媒体51が循環する。コンデンサ52では、脱着蒸気42とコンデンサ52内の伝熱媒体51とが熱交換を行い、これにより、脱着蒸気42の温度は下降し、伝熱媒体51の温度は上昇する。脱着蒸気42から奪った熱は、伝熱媒体51により蓄熱槽54で蓄えられる。なお、脱着蒸気42は、蒸留塔57に送られ、排水95と溶媒12とに分留される。
回収設備120は、テンタ20で蒸発した溶媒化合物を含む乾燥処理後空気200を熱交換器122に送る。熱交換器122は、乾燥処理後空気200から熱を奪い、乾燥処理後空気200を凝縮器123に送る。凝縮器123は、乾燥処理後空気200を冷却し、乾燥処理後空気200から溶媒化合物を凝縮する。この凝縮により、乾燥処理後空気200から溶媒化合物が取り除かれ乾燥処理前空気201となる。この溶媒化合物は所定の処理を経て、溶媒12として再利用される。乾燥処理前空気201は、熱交換器122に送られ、乾燥処理後空気200から奪った熱が与えられる。その後、乾燥処理前空気201は、プレ加熱器125に送られる。蓄熱槽54に蓄えられた伝熱媒体51は、プレ加熱器125に送られる。プレ加熱器125では、伝熱媒体51と乾燥処理前空気201との間で熱交換が行われる。これにより、乾燥処理前空気201は、脱着蒸気42から奪った熱により、加熱される。その後、乾燥処理前空気201は、加熱器126に送られ暖められる。そして、送風器128により、所定の温度まで暖められた乾燥処理前空気201は、フィルタ129を介して、乾燥室22へ送られる。
回収設備120では、フイルム18から溶媒化合物を蒸発させるために、乾燥処理前空気201の温度を略100℃以上120℃以下にする必要がある。ところが、加熱器126において、熱交換器122にて加熱された乾燥処理前空気201を上記温度まで一度に加熱することは、伝熱媒体の沸騰等に起因するキャビテーションが発生し、熱エネルギ輸送が困難になるため好ましくない。更に、加熱器126の内部配管を通過する伝熱媒体と乾燥処理前空気201との温度差が大きくなるため好ましくない。この温度差が大きくなると、加熱器126に大きな熱衝撃が生じ、この熱衝撃により加熱器126や内部配管が破損するためである。したがって、本発明では、熱交換器122と加熱器126との間に、乾燥処理前空気201を略75℃以上90℃以下に加熱するためのプレ加熱器125を設け、プレ加熱器125が乾燥処理前空気201を加熱するための熱エネルギとして、脱着蒸気42からの熱エネルギを利用するため、上記問題を解決しつつ、エネルギ効率を向上することができる。また、乾燥処理前空気201を上記温度範囲まで加熱するためには、熱回収設備50から送られる伝熱媒体51の温度は、90℃以上93℃以下であることが好ましい。
上記実施形態では、ドープを冷却して流延膜に自己支持性を発現させる方式について記載したが、本発明はこれに限らず、流延膜の乾燥により自己支持性を発現させる方式でもよい。ただし、本願発明の効果は、冷却方式に用いたほうがより顕著に発現する。なぜならば、冷却方式では、テンタ20を通過するフイルム18により多くの溶媒が含まれて、テンタ20から溶媒化合物を回収する量がより多いためである。また、この支持体としては、ドラムに限らず、バンド状のものでもよい。
上記実施形態では、熱回収設備50が回収した熱をプレ加熱器125に供給すると記載したが、本発明はこれに限らず、熱回収設備50が回収した熱を、加熱器112や蒸気40をつくるボイラ118などに用いても良い。また、回収設備120と同様の回収設備を流延室23に接続し、流延室23内の気体に含まれる溶媒化合物を回収する場合には、この回収設備により回収された空気の加熱のために、熱回収設備50が回収した熱を用いても良い。
なお、上記実施形態の溶液製膜設備10、100にて用いられるポリマー11や溶媒12などは、特に限定されない。以下、セルロースアシレートフイルムを製造する場合に用いられるポリマーや溶媒などについて説明する。
[原料]
本実施形態においては、ポリマーとしてセルロースアシレートを用いており、セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。そして、セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)の全てを満足するものがより好ましい。なお、以下の式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基の水素原子に対するアシル基の置換度を表わし、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。なお、TACの90重量%以上が0.1mm〜4mmの粒子であることが好ましい。
(I) 2.5≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
また、本発明に用いられるポリマーはセルロースアシレートに限定されるものではない。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位,3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位,3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1である)を意味する。
全アシル化置換度、即ち、DS2+DS3+DS6は2.00〜3.00が好ましく、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DS6/(DS2+DS3+DS6)は0.28以上が好ましく、より好ましくは
0.30以上、特に好ましくは0.31〜0.34である。ここで、DS2はグルコース単位の2位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「2位のアシル置換度」とも言う)であり、DS3は3位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「3位のアシル置換度」とも言う)であり、DS6は6位の水酸基のアシル基による置換度(以下、「6位のアシル置換度」とも言う)である。
本発明のセルロースアシレートに用いられるアシル基は1種類だけでも良いし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていても良い。2種類以上のアシル基を用いるときは、その1つがアセチル基であることが好ましい。2位,3位及び6位の水酸基による置換度の総和をDSAとし、2位,3位及び6位の水酸基のアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとすると、DSA+DSBの値は、より好ましくは2.22〜2.90であり、特に好ましくは2.40〜2.88である。また、DSBは0.30以上であり、特に好ましくは0.7以上である。さらにDSBはその20%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは25%以上が6位水酸基の置換基であり、30%以上がさらに好ましく、特には33%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位の置換度が0.75以上であり、さらには0.80以上であり特には0.85以上であるセルロースアシレートも挙げることができる。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液(ドープ)が作製できる。特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低く、濾過性の良い溶液の作製が可能となる。
セルロースアシレートの原料であるセルロースは、リンター,パルプのどちらから得られたものでも良いが、リンターから得られたものが好ましい。
本発明のセルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でも良く特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していても良い。これらの好ましい例としては、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどがより好ましく、特に好ましくはプロピオニル、ブタノイルである。
ドープを調製する溶媒としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。なお、本発明において、ドープとはポリマーを溶媒に溶解または分散して得られるポリマー溶液,分散液を意味している。
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フイルムの機械的強度など及びフイルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶媒全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶媒組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶媒が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができる。
なお、セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号の[0140]段落から[0195]段落に記載されている。これらの記載も本発明にも適用できる。また、溶媒及び可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レターデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号の[0196]段落から[0516]段落に詳細に記載されている。