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JP4877899B2 - 薬物徐放出性球状微粒子及びその製造方法 - Google Patents
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薬物徐放出性球状微粒子及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、脂溶性ビタミンと生体分解性高分子を、それぞれ薬物の溶剤と保持体として用いた、脂溶性薬物の徐放出性微粒子及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記薬物徐放出性微粒子を含む注射用製剤に関する。
脂溶性薬物を徐放出性製剤とする技術としては、リポソーム(脂質膜小胞)又はポリマーを担体とする微粒子に薬物を封入する方法が知られている。リポソームを用いる方法は、レシチン又はレシチンとコレステロール等の被膜で脂溶性薬物を封入するものであり、ポリマー微粒子を用いる方法は、ポリ乳酸等の生体分解性ポリマー微粒子に薬物を封入するものである。
リポソーム又はポリマーに脂溶性薬物を封入する場合、レシチンやポリマー等を有機溶媒に溶解させ、さらに脂溶性薬物を加えて溶解させた後、水に分散させて有機溶媒を蒸発させる。そして、リポソーム又はポリマー微粒子を水中に形成させることによって、脂溶性薬物をリポソーム又はポリマー微粒子に封入する方法が一般的である。
ここで、抗悪性腫瘍薬であるパクリタキセル等のタキソイド系化合物を、リン脂質であるホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン(レシチン)のリポソームに封入する技術が非特許文献1に開示されている。また、パクリタキセルを直径100〜200nmの水中油型(o/w)エマルション製剤とする技術が非特許文献2に開示されている。
一方、ポリマー微粒子を用いた徐放出性製剤として、アルブミン微粒子中にパクリタキセルを封入させた微粒子が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示される製剤では、生体分子であるアルブミンの微粒子に薬物を封入するため、添加物による副作用がなく、患者に高用量のパクリタキセルを投与することが可能とされている。
また、生分解性高分子が溶解された2種以上の乳相に薬物をそれぞれ溶解又は分散させて2種以上の1次乳相又はエマルションを製造する段階と、製造された2種以上の1次乳相又はエマルションを1種の水相に同時に又は連続的に分散される段階と、薬物が分散された酢酸セルロース等の生分解性高分子からなる担体に薬物を封入して、持続的に薬物の放出を調節しうる多重エマルション法による徐放出性微粒子球の製造方法が、特許文献2に開示されている。この特許文献2に開示される製造方法は、単一工程により多様な薬物放出特性を有する微粒子の混合体を製造することができ、各工程により製造された微粒子の薬物放出特性から、理論的な組み合わせにより一定期間、持続的な放出を誘導しうる微粒子製剤を提供するとされる。
さらに、プロスタノイド又はステロイドを、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体又はポリ乳酸微粒子に封入し、レシチン等の界面活性剤を前記微粒子の表面に吸着させた静脈注射用微粒子が、特許文献3に開示されている。この特許文献3に開示されている生体分解性ポリマー微粒子を脂溶性薬物の担体として用いることにより、脂肪微粒子を用いる場合と比較して十分な徐放効果が得られ、しかも薬物封入率にも優れるとされる。
特開2001−354559号公報 特開2002−20269号公報 特開2003−342196号公報 Amarnath Sharma et al., Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol.84, No.12, December (1995) Panayiotis P. Constantinides et al., Pharmaceutical Research, Vol.17, No.2 (2000)
しかし、レシチンからなるリポソームは、コレステロールとの相互作用により、硬いリポソームとして認識されているコレステロール含有リポソームであっても、当該リポソームを血管内に投与すると、速やかに封入薬物が放出される(初期バースト)。この現象は、レシチンとコレステロール間の相互作用の強さ、水の浸透圧及びマクロファージ等の細網内皮系による貧食によるものと考えられる。
血管内に投与された徐放出性リポソームが初期バーストすると、本来、徐放出により長時間かけて投与させるべき薬物が、急速投与されるのと同じ状態となる。極少量で薬理作用を示す抗悪性腫瘍薬等がリポソーム内に封入されている場合、初期バーストの発生により抗悪性腫瘍薬等が正常組織に障害を与える場合もある。
また、生体分解性ポリマーを脂溶性薬物の担体として用いる場合であっても、有機溶媒に溶解させた薬物と生体分解性ポリマーを水に分散させて調製されるナノ微粒子から、有機溶媒を速やかに除去することが困難であるために、ナノ微粒子の内部に有機溶剤が残存する可能性が高かった。このように水中からの有機溶剤を速やかに除去できないことは、脂溶性薬物の微粒子内への封入率を低下させる原因ともなっている。
また、脂溶性薬物を有機溶媒に溶解させると共に、脂溶性薬物の微粒子内への封入率を高めるために、界面活性剤等の添加物が使用されることもある。このような、添加剤は、生体にとって有害なものが多く、製剤中に残存することは、生体に悪影響を与える。
さらに、脂溶性薬物は、生体分解性ポリマーに速やかに、かつ、強固に吸着する性質を有するため、ナノ微粒子の内部面積よりも外表面積の方が大きいこともあり、薬物封入率が低い原因となっている。市販されている抗ガン剤(前立腺ガン、子宮内膜症及び思春期早発症治療薬)・酢酸リュープロレリン(武田薬品工業製)の微粒子(マイクロスフェア)の薬物封入率が14%であり、これが最大封入率の製剤とされている。また、学会発表のレベルでは、脂溶性薬物の徐放出性微粒子への封入率は、5%あればよいと考えられている。
本発明は、脂溶性ビタミンを薬物の溶剤、リポソーム又は生体分解性ポリマーを薬物の保持体として用いることにより、従来の薬物徐放出性製剤の有していた上記欠点を克服することを目的とする。すなわち、脂溶性薬物の封入率が高く、初期バーストが起こりにくく、有害な添加剤を使用しない脂溶性薬物の徐放出性微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、脂溶性薬物と生体分解性ポリマーを脂溶性ビタミンに溶解させ、それを水又は生理食塩水中に分散させてリン脂質の薄膜と接触させた後、超音波照射又はホモジナイズ操作すると、脂溶性薬物と生体分解性ポリマーを溶解した脂溶性ビタミンが、リン脂質の薄膜の内部に封入された、球形微粒子が形成することを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、
核と殻体から構成される微粒子であって、
前記核が脂溶性薬物と生体分解性ポリマーを溶解した脂溶性ビタミンであり、
前記殻体がリン脂質の薄膜により構成され、
前記生体分解性ポリマーがポリ乳酸又は乳酸/グリコール酸共重合体であり、
前記脂溶性ビタミンがトコトリエノール類又はトコフェロール類であり、
前記リン脂質が水素添加レシチンであり、
核が殻体に封入されており、直径が800nm以下であることを特徴とする薬物徐放出性球形微粒子に関する。
また、本発明は、
有機溶媒に溶解させたリン脂質を蒸発乾固させてリン脂質の薄膜を調製する工程(a1)と、
脂溶性ビタミンに脂溶性薬物及び生体分解性ポリマーを溶解させて薬物・ポリマー溶解脂溶性ビタミンを調製する工程(b1)と、
前記工程(b1)で調製された薬物・ポリマー溶解脂溶性ビタミンと水又は生理食塩水とを、前記工程(a1)で調製された前記リン脂質の薄膜と接触させる工程(c1)と、
超音波照射又はホモジナイズ操作によって、前記薬物・ポリマー溶解脂溶性ビタミンを、前記リン脂質の薄膜の内部に封入する工程(d1)とを含み、
前記リン脂質が水素添加レシチンであり、
前記脂溶性ビタミンがトコトリエノール類又はトコフェロール類であり、
前記生体分解性ポリマーがポリ乳酸又は乳酸/グリコール酸共重合体であり、
前記工程(d1)によって得られる球形微粒子の直径が800nm以下であることを特徴とする薬物徐放出性球形微粒子の製造方法に関する。
さらに、本発明は、
有機溶媒に溶解させたリン脂質及びコレステロールを蒸発乾固させて、リン脂質及びコレステロールから構成される薄膜を調製する工程(a2)と、
脂溶性ビタミンに脂溶性薬物、生体分解性ポリマー及び植物性油脂を溶解させて薬物・ポリマー・植物性油脂溶解脂溶性ビタミンを調製する工程(b2)と、
前記工程(b2)で調製された薬物・ポリマー・植物性油脂溶解脂溶性ビタミンと水又は生理食塩水とを、前記工程(a2)で調製された前記リン脂質及びコレステロールから構成される薄膜と接触させる工程(c2)と、
超音波照射又はホモジナイズ操作によって、前記薬物・ポリマー・植物性油脂溶解脂溶性ビタミンを、前記リン脂質の薄膜の内部に封入する工程(d2)とを含み、
前記リン脂質が水素添加レシチンであり、
前記脂溶性ビタミンがトコトリエノール類又はトコフェロール類であり、
前記生体分解性ポリマーがポリ乳酸又は乳酸/グリコール酸共重合体であり、
前記工程(d2)によって得られる球形微粒子の直径が800nm以下であることを特徴とする薬物徐放出性球形微粒子の製造方法に関する。
使用されるリン脂質は、空気中における安定性が高い水素添加レシチンである
生体分解性ポリマーは、生体適合性の高いポリ乳酸又は乳酸/グリコール酸共重合体である。
脂溶性ビタミンは、薬物保持体である生体分解性ポリマーを溶解し、さらにレシチンとの結合が強固であり、抗酸化力もあるトコトリエノール類又はトコフェロール類である。
核には、さらに大豆油等の植物性油脂を配合することも好ましい。
殻体は、レシチン及びコレステロールから構成される薄膜であることも好ましい。
脂溶性薬物としては、抗悪性腫瘍薬を挙げることができる。抗悪性腫瘍薬は、通常、点滴として静脈投与されるが、本発明の薬物徐放出性微粒子に封入し、注射用製剤として患部周辺に注射すれば、抗悪性腫瘍薬を長期間、患部周辺に投与することが可能となる。
抗悪性腫瘍薬としては、タキソイド系化合物又はイリノテカン系化合物が好ましい。
本発明の薬物徐放出性微粒子は、脂溶性薬物を脂溶性ビタミンに溶解させるため、有害な有機溶媒や添加物を用いて脂溶性薬物を溶解させる必要がない。また、脂溶性ビタミンは、有機溶媒と異なり、リン脂質の薄膜からなる微粒子の内部に残存するため、従来のリポソーム及び生体分解性ポリマーを用いた微粒子と比較して、脂溶性薬物の封入率及び導入率が高い。さらに、抗酸化力を有する脂溶性ビタミンを使用すれば、リン脂質の酸化を防止することができるために、保存中及び生体内における微粒子の安定性が高い。
また、本発明の薬物徐放出性微粒子は、リン脂質、脂溶性ビタミン間及び生体分解性ポリマー三者の間に強い相互作用(吸着)が働くために、生体内に投与された後、微粒子の初期バーストが起こりにくく、脂溶性薬物を油状の脂溶性ビタミン内に長期間、留めておくことができる。仮に、微粒子が貧食を受けても、生体分解性ポリマーに吸着した形で、脂溶性ビタミンに含まれる脂溶性薬物を、患部周辺の局所に留めておくことができる。
以下に、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本発明の薬物徐放出性微粒子の構造を、図1に示す。本発明の薬物徐放出性微粒子3は、リン脂質の薄膜2が、脂溶性薬物と生体分解性ポリマーを溶解させた脂溶性ビタミンからなる核1を内包する構造となっている。
上述したように、本発明では、脂溶性ビタミンを脂溶性薬物の溶媒として使用するため、核1には有機溶媒及び添加剤は、原則として含まれない。このため、生体内に投与しても有機溶媒及び添加剤による障害が発生しない。また、脂溶性ビタミンは、有機溶媒と異なり揮発しないため、核1内に残留する。このため、従来のリポソーム又は生体分解性ポリマーを用いる薬物徐放出性微粒子と比較して、微粒子内部に封入しうる脂溶性薬物量が多く、薬物封入率が高い。
脂溶性ビタミンとリン脂質の薄膜2の間、及びリン脂質の薄膜2と生体分解性ポリマーとの間には強い相互作用が働くため、従来の薬物徐放出性微粒子と異なり、初期バーストが起こりにくい。
脂溶性ビタミンに溶解させた生体分解性ポリマーは、脂溶性薬物を強固に吸着するため、脂溶性薬物を徐放出させる役割を果たす。このため、本発明の薬物徐放出性微粒子3は、薬物封入率が高いことと相俟って、1回の投与で長期間、脂溶性薬物を生体内で徐放出することが可能である。
さらに、脂溶性ビタミンとしてトコトリエノール、トコフェロール等の抗酸化力を有する脂溶性ビタミンを使用すれば、核1に含まれる脂溶性薬物、及びリン脂質の薄膜2の酸化を防止することもできる。
本発明に用いる生体分解性ポリマーは、水に難溶性でリン脂質と親和性があり、かつ、脂溶性ビタミンに溶解しうるものであれば、特に制限されず、単重合体又は共重合体であってもよい。好ましい具体例としては、ポリ乳酸及び乳酸/グリコール酸共重合体等を挙げることができる。
本発明の薬物徐放出性微粒子に封入する脂溶性薬物は、特に制限されるものではないが、抗悪性腫瘍薬(抗ガン剤)に好適である。
ここで、抗悪性腫瘍薬であるタキソイド系化合物は、細胞が分裂する際に与える影響から有糸分裂阻害剤とも呼ばれる化学療法剤である。代表的なタキソイド系化合物としては、パクリタキセル(商品名「タキソール」(登録商標))及びドセタキセル(商品名「タキソテール」(登録商標))があり、乳ガン、非小細胞肺ガン、卵巣ガン等の治療に広く使用されている。静脈への点滴投与に要する時間は、パクリタキセルが3時間以上、ドセタキセルが1時間以上とされている。
同じく、イリノテカン系化合物は、トポイソメラーゼ阻害剤として知られる化学療法剤である。代表的な薬物であるイリノテカン(商品名「カンプト」及び「トポテシン」、どちらも登録商標)は、大腸ガン、小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、卵巣ガン等の治療に広く使用されている。静脈への点滴投与に要する時間は、1時間半以上とされている。
例えば、市販のパクリタキセル注射用製剤は、パクリタキセルが非常に水に溶けにくいために、溶媒としてポリオキシエチレンヒマシ油と無水エタノールが使用されているが、ポリオキシエチレンヒマシ油は、パクリタキセルの体内動態と吸収性を大きく変化させ、さらにショック等の重篤な過敏症を引き起こすことも報告されている。
さらに、医療現場においては、5%ブドウ糖又は生理食塩水に混合して点滴されるために、チューブ内でポリオキシエチレンヒマシ油が結晶化することがあり、取り扱いが難しいこともよく知られている。
従って、本発明の薬物徐放出性微粒子を、パクリタキセルのような脂溶性の抗悪性腫瘍薬に適用すれば、上記市販製剤による問題点を解消することができる。
このように、広く使用されている抗悪性腫瘍薬を、本発明の薬物徐放出性微粒子に封入し、注射用製剤として患部周辺に注射することにより、抗悪性腫瘍薬の全身に対する副作用の心配がない、安全で効果的なガン治療が可能となる。また、患者を長時間点滴のために拘束する必要もなくなる。
以下に記載する実施例においては、脂溶性薬物のうち、タキソイド系化合物としてパクリタキセル及びドセタキセルを、イリノテカン系化合物としてイリノテカンを使用した。
次に、本発明の実施例1の製造方法を具体的に説明する。実施例1の製造に使用した構成成分及びその分量は、表1に示した。
Figure 0004877899
まず、ナス型フラスコにリン脂質として水素添加レシチンを入れ、クロロホルム1mLを加えて完全に溶解させた。その後、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固させた。クロロホルムを完全に除去するために、さらに減圧下、デシケーター内で3時間乾燥させ、レシチン薄膜を調製した。なお、ここでは水素添加レシチンを使用したが、これ以外にジパルミトイルホスファチジルコリンやジステアロイルホスファチジルコリンを使用することも可能である。
次に、脂溶性薬物としてパクリタキセルを、超音波照射(Bransonic 12)しながら油状のトコトリエノール中に完全に溶解させた。さらに、トコトリエノールに生体分解性ポリマーとして乳酸/グリコール酸共重合体を加え、超音波照射しながら完全に溶解させた。なお、トコトリエノール以外に、トコフェロールを使用することも可能である。
次に、パクリタキセル及びポリ乳酸−グリコール酸共重合体を含む油状トコトリエノールを、1時間、暗所で放置後、ナス型フラスコの内壁面に付着したレシチン薄膜に、前記油状トコトリエノール(薬物と生体分解性ポリマーを溶解させている)を接触(付着又は噴射)させる。なお、ナス型フラスコ内は、予め水素添加レシチン及びトコトリエノールの酸化を防ぐために窒素置換しておくことが好ましい。
さらに、ナス型フラスコ内に精製水(60℃)を添加し、30分間、超音波照射(Bransonic 12)することにより、パクリタキセル及びポリ乳酸−グリコール酸共重合体を含む油状トコトリエノール及びレシチン薄膜を微粒子化し、レシチン薄膜からなる微粒子内部に当該油状トコトリエノールを封入した。その結果、薬物徐放出性微粒子を含む懸濁液が得られた。ただし、この操作は、暗所で行うことが好ましい。
なお、超音波照射する代わりに、ホモジナイザー(Branson Sonifier model 250; 出力25W)を用いて、前記トコトリエノールを微粒子化しても、同等の薬物徐放出性微粒子を含む懸濁液が得られた。この操作も、暗所で行うことが好ましい。
得られた薬物徐放出性微粒子は、顕微鏡観察及びメンブランフィルターろ過操作を行った結果、直径が800nm以下(約100nm〜800nm)であった。なお、今回使用した超音波照射機器又はホモジナイザーよりも、より高性能の機器を使用すれば、粒子サイズをさらに小さくすることが可能である。
本発明の薬物徐放出性微粒子は、直径が100nm以下であることが好ましい。直径が100nmを超えると、例えば、細網内皮系に取り込まれ貧食されやすいといった不都合が現れるからである。
[空試験用微粒子]
空試験用微粒子として、パクリタキセルを使用しないこと以外、実施例と同じ操作を行って微粒子を製造し、空試験用微粒子を含む懸濁液を得た。
[比較例1]
比較例1として、市販のパクリタキセル製剤(ブリストル・マイヤーズ株式会社製タキソール(登録商標)注)をそのまま使用した。
ここで、本発明の薬物徐放出性微粒子を実験動物に投与し、その効果及び初期バーストの有無を確認する試験を行った。以下に、具体的な実験方法等について説明する。
(実験例1:延命効果)
実験例1として、実施例1の薬物徐放出性微粒子を含む懸濁液をマウスに投与し、空試験用微粒子及び比較例1と比較しつつ、卵巣ガンの治療薬としての評価を行った。
まず、6週齢雌性Balb/c ヌードマウスの腹腔内に、ヒト卵巣ガン細胞(SKOV3)を移植した。SKOV3は、パクリタキセル感受性株である。
次に、移植7日目の前記ヌードマウスに、第1群は、実施例1の懸濁液、空試験用微粒子の懸濁液及び比較例1の第1群はパクリタキセルとして10mg/kg、第2群は20mg/kgの用量でそのまま腹腔内投与し、以降5日毎に1回、計4回、同じ用量で腹腔内投与を繰り返して、各注射剤のヌードマウスに対する延命効果を判定した。その実験条件を表2に示し、延命試験の結果を図2に示す。
Figure 0004877899
対照試験である空試験用微粒子の懸濁液の投与試験と比較して、比較例1を投与した移植マウスの生存日数は、第1群及び第2群共に大きく短縮(0.3〜0.5倍)した。これは、比較例1に溶媒として含まれるポリオキシエチレンヒマシ油の細胞毒性によるものと推察された。一方、実施例1の懸濁液を投与した第2群の移植マウスでは、空試験用微粒子の懸濁液の投与試験と比較して、生存日数の延長(1.5〜2.0倍)が認められた。
このように、本発明の実施例1の懸濁液を注射剤として、そのまま腹腔内投与すれば、卵巣ガンのモデル動物に対して、市販のパクリタキセル製剤よりも非常に優れた延命効果が得られることが確認された。
(実験例2:血中移行性)
実験例2として、実施例1の懸濁液及び比較例1を、ddY系雌性マウスの腹腔内にそのまま投与し、投与後の血中パクリタキセル濃度を比較した。投与量は、どちらの注射剤もパクリタキセルとして20mg/kgである。
血中パクリタキセル濃度の定量に先立ち、マウスの血液を、図3に示す処理方法によって処理した。すなわち、血液をディスポタイプの遠心チューブに採取し、10000rpmで2分間遠心分離した。次に、上清である血漿75μLを採取し、内部標準液75μLとクロロホルム3 mLを添加し、振とうした。
次に、3000rpmで10分間遠心分離し、クロロホルム層をフラスコに分取した。クロロホルムを蒸発させた後、フラスコ内に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の移動相100μLを加えて残渣を溶解させた。この溶液をHPLCによって分析し、パクリタキセルを定量した。なお、HPLCの定量条件は、表3に示す通りであり、定量結果を図4に示す。
Figure 0004877899
腹腔内投与した後の血中パクリタキセルのピーク面積の、内部標準物質のピーク面積に対する比率を、投与後120時間まで測定したところ、比較例1の懸濁液を投与したマウスでは、速やかに血中にパクリタキセルが移行して、投与後8時間で比率がゼロになった。この結果は、比較例1のパクリタキセルは、投与後すぐに血中に移行し、投与後8時間で血中から消失したことを示している。
一方、実施例1の懸濁液を投与したマウスでは、投与後120時間まで、血中にパクリタキセルは検出されなかった。この結果は、実施例1のパクリタキセルを封入した薬物徐放出性微粒子は、投与後120時間は破壊されずに(初期バーストが起こらずに)残存しているか、又は仮に初期バーストが起こった場合であっても、乳酸/グリコール酸共重合体及びトコトリエノールとの強い相互作用のために、パクリタキセルが血中に移行せず腹腔内に留まって、血中に移行しないでいることを示唆している。
実施例2として、パクリタキセル(分子量854)のプロドラッグである2’-エチルカーボネート体(分子量924)を用いて、実施例1と同様の操作を行い、パクリタキセルのプロドラッグを水素添加レシチンの薄膜に封入し、薬物徐放出性微粒子を含む懸濁液を製造した。
(実験例3:薬物封入率及び薬物導入率)
実施例2の懸濁液を用いて、薬物封入率及び薬物導入率をin vitro実験により評価した。
(1) 薬物封入率は、in vitroラット血清中48時間後に残存したパクリタキセルのプロドラッグ体濃度を、作製した微粒子懸濁液中の薬物濃度で除して求めた。このプロドラッグは、in vitroラット血清中では15分間でパクリタキセルに変換されるということが、発明者の過去の実験結果から判明していた。このため、ラット血清と混合した48時間後に薬物封入率を算出した。この場合、微粒子に封入されているプロドラッグのみが、2’-エチルカーボネート体として残存し、それ以外は、全てパクリタキセルに変換されていることになる。
ここで、薬物封入率の実験方法を、図5に示す。なお、定量条件は、表3と同じである。プロドラッグを定量した結果、実施例2の懸濁液は、17%のプロドラッグが残存していることが判明した。従って、薬物封入率は、最低でも17%あると考えられた。
(2) 次に、薬物導入率の実験方法を、図6に示す。実施例2の懸濁液をゲル濾過して、カラムから溶出する微粒子体を採取した。この溶出液中のプロドラッグを定量し、(溶出液中の薬物濃度)/(作製した微粒子懸濁液中の薬物濃度)×100という計算式により、薬物導入率(%)を算出した。なお、ゲル濾過の条件は、表4に示した通りであり、プロドラッグの定量条件は、表3と同じである。
Figure 0004877899
HPLCを用いてプロドラッグを定量した結果、実施例2の薬物封入率は、約98%であった。このように、本発明の実施例2の懸濁液は、従来の抗悪性腫瘍薬を封入した微粒子における薬物封入率の最大値である14%を超える、高い薬物封入率を示した。また、薬物導入率は、ほぼ100%であった。薬物導入率が非常に高かったことから、実施例2の薬物徐放出性製剤においては、プロドラッグ及び乳酸/グリコール酸共重合体を溶解させた遊離トコトリエノールが、レシチン微粒子の内部に封入されているだけではなく、レシチン微粒子の外表面にも吸着されていることが推察された。
次に、本発明の実施例3の製造方法を具体的に説明する。実施例3の製造に使用した構成成分及びその分量は、表5に示した。
Figure 0004877899
本実施例においては、リン脂質であるジパミルトイルホスファチジルコリンと、コレステロールを、ナス型フラスコ内でクロロホルム1mLに完全に溶解させ、その後、ロータリーエバポレーターを用いて蒸発乾固させた。クロロホルムを完全に除去するために、さらに減圧下、デシケーター内で3時間乾燥させ、レシチン/コレステロール薄膜を調製した。
次に、脂溶性薬物としてイリノテカンを、超音波照射(Bransonic 12)しながら油状のα−トコフェロール中に完全に溶解させた。さらに、α−トコフェロールに生体分解性ポリマーとしてのポリ乳酸と、植物性油脂である大豆油を加え、超音波照射しながら完全に溶解させた。
次に、イリノテカン、ポリ乳酸及び大豆油を含む油状α−トコフェロールを、1時間、暗所で放置後、ナス型フラスコの内壁面に付着したレシチン/コレステロール薄膜に、前記油状α−トコフェロール(薬物、生体分解性ポリマー及び植物性油脂を溶解させている)を接触(付着又は噴射)させる。なお、ナス型フラスコ内は、予めジパミルトイルホスファチジルコリン及びα−トコフェロールの酸化を防ぐために窒素置換しておくことが好ましい。
さらに、ナス型フラスコ内に60℃に加温した15%グリセリンを添加し、30分間、超音波照射(Bransonic 12)することにより、イリノテカン、ポリ乳酸及び大豆油を含む油状α−トコフェロール及びレシチン/コレステロール薄膜を微粒子化し、レシチン/コレステロール薄膜からなる微粒子内部に当該油状α−トコフェロールを封入した。その結果、薬物徐放出性微粒子を含む懸濁液が得られた。
上記実施例3によっても、実施例1と同様の薬物徐放出性微粒子が得られた。実施例3について、実施例1と同様に微粒子の直径を計測した結果、450nm以下(約100nm〜450nm)であり、実施例1と比較して、実施例3は微粒子の直径が小さかった。
実施例4として、表5のイリノテカンの代わりにドセタキセルを使用すること以外、実施例3と同様の製造方法によって、薬物徐放出性微粒子を製造した。この実施例4の粒度分布を実施例1と同様に計測した結果、実施例3とほぼ同じであった。
実施例5として、表5のジパミルトイルホスファチジルコリン2mgの代わりに、水素添加レシチン(卵黄由来)2mgを使用すること以外、実施例3と同様の製造方法によって、薬物徐放出性微粒子を製造した。この実施例5の粒度分布を実施例1と同様に計測した結果、実施例3とほぼ同じであった。
以上、説明したように、本発明の薬物徐放出性微粒子は、従来技術の問題点であった、低い薬物封入率、初期バースト、有機溶媒等の添加剤による毒性、薬物の血中への移行による全身への副作用等を克服するものである。脂溶性薬物として抗悪性腫瘍薬を封入し、患部周辺に注射剤として投与することにより、副作用を最小限に抑制しつつ、患部に長期間抗悪性腫瘍薬を投与することができるため、ガン患者の治療に対して、従来にない延命効果が期待できる。
本発明の薬物徐放出性微粒子及びその製造方法は、医薬品分野における薬物徐放出性注射用製剤及びその製造方法として有用である。
本発明の薬物徐放出性微粒子の構造を示す図である。 実験例1の延命効果の結果を示す図である。 実験例2の血液処理方法を示す図である。 実験例2のパクリタキセルの定量結果を示す図である。 実験例3の薬物封入率の実験方法を示す図である。 実験例3の薬物導入率の実験方法を示す図である。
符号の説明
1:核
2:リン脂質の薄膜
3:薬物徐放出性微粒子

Claims (10)

  1. 核と殻体から構成される微粒子であって、
    前記核が脂溶性薬物生体分解性ポリマーを溶解した脂溶性ビタミンであり、
    前記殻体がリン脂質の薄膜により構成され、
    前記生体分解性ポリマーがポリ乳酸又は乳酸/グリコール酸共重合体であり、
    前記脂溶性ビタミンがトコトリエノール類又はトコフェロール類であり、
    前記リン脂質が水素添加レシチンであり、
    核が殻体に封入されており、直径が800nm以下であることを特徴とする薬物徐放出性球形微粒子。
  2. 前記核が、さらに植物性油脂を含むことを特徴とする請求項に記載の薬物徐放出性球形微粒子。
  3. 前記殻体が、さらにコレステロールを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の薬物徐放出性球形微粒子。
  4. 前記脂溶性薬物が、抗悪性腫瘍薬であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の薬物徐放出性球形微粒子。
  5. 前記抗悪性腫瘍薬が、タキソイド系化合物又はイリノテカン系化合物である、請求項4に記載の薬物徐放出性球形微粒子。
  6. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の薬物徐放出性球形微粒子を含む懸濁液である注射用製剤。
  7. 有機溶媒に溶解させたリン脂質を蒸発乾固させてリン脂質の薄膜を調製する工程(a1)と、
    脂溶性ビタミンに脂溶性薬物及び生体分解性ポリマーを溶解させて薬物・ポリマー溶解脂溶性ビタミンを調製する工程(b1)と、
    前記工程(b1)で調製された薬物・ポリマー溶解脂溶性ビタミンと水又は生理食塩水とを、前記工程(a1)で調製された前記リン脂質の薄膜と接触させる工程(c1)と、
    超音波照射又はホモジナイズ操作によって、前記薬物・ポリマー溶解脂溶性ビタミンを、前記リン脂質の薄膜の内部に封入する工程(d1)とを含み、
    前記リン脂質が水素添加レシチンであり、
    前記脂溶性ビタミンがトコトリエノール類又はトコフェロール類であり、
    前記生体分解性ポリマーがポリ乳酸又は乳酸/グリコール酸共重合体であり、
    前記工程(d1)によって得られる球形微粒子の直径が800nm以下であることを特徴とする薬物徐放出性球形微粒子の製造方法。
  8. 有機溶媒に溶解させたリン脂質及びコレステロールを蒸発乾固させて、リン脂質及びコレステロールから構成される薄膜を調製する工程(a2)と、
    脂溶性ビタミンに脂溶性薬物、生体分解性ポリマー及び植物性油脂を溶解させて薬物・ポリマー・植物性油脂溶解脂溶性ビタミンを調製する工程(b2)と、
    前記工程(b2)で調製された薬物・ポリマー・植物性油脂溶解脂溶性ビタミンと水又は生理食塩水とを、前記工程(a2)で調製された前記リン脂質及びコレステロールから構成される薄膜と接触させる工程(c2)と、
    超音波照射又はホモジナイズ操作によって、前記薬物・ポリマー・植物性油脂溶解脂溶性ビタミンを、前記リン脂質の薄膜の内部に封入する工程(d2)とを含み、
    前記リン脂質が水素添加レシチンであり、
    前記脂溶性ビタミンがトコトリエノール類又はトコフェロール類であり、
    前記生体分解性ポリマーがポリ乳酸又は乳酸/グリコール酸共重合体であり、
    前記工程(d2)によって得られる球形微粒子の直径が800nm以下であることを特徴とする薬物徐放出性球形微粒子の製造方法。
  9. 前記工程(a1)又は(a2)の脂溶性薬物が、抗悪性腫瘍薬であることを特徴とする請求項7又は8に記載の薬物徐放出性球形微粒子の製造方法。
  10. 前記抗悪性腫瘍薬が、タキソイド系化合物又はイリノテカン系化合物であることを特徴とする請求項に記載の薬物徐放出性球形微粒子の製造方法。
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