従来より、自動車の駆動力伝達部では、一方の伝達軸と他方の伝達軸とを連結し回転力を各車軸へと伝達する等速ジョイントが用いられている。近年において、等速ジョイントの軽量化のニーズが高まり、前記等速ジョイントの更なる小型化が希求されている。この場合、等速ジョイントの強度、耐久性、負荷容量等は、等速ジョイントを構成する各要素の基本寸法によってそれぞれ設定され、前記等速ジョイントの強度、耐久性、負荷容量等の諸特性をそれぞれ維持した状態で小型化に対応した寸法を設定することが要求されている。
この種の等速ジョイントの基本設定に関する技術的思想として、特許文献1には、外側継手部材、内側継手部材、8個のトルク伝達ボール及び保持器を備える固定型等速自在継手において、前記内側継手部材の軸方向幅(W)と、前記内側継手部材の案内溝の中心と前記トルク伝達ボールの中心とを結ぶ線分の長さ(PCR)との比Rw(=W/PCR)を0.69≦Rw≦0.84に設定することが開示されている。
また、特許文献2には、アウタレース、インナレース、6個のトルク伝達ボール及びケージを備える固定型等速自在継手において、駆動軸の直径をdとし、トルク伝達ボールの直径DB及び6個のトルク伝達ボールのピッチ円直径をDPとした場合、駆動軸の直径dに対するトルク伝達ポールの直径DBの比であるDB/dを0.65〜0.72に設定し、トルク伝達ボールの直径DBに対するピッチ円直径DPの比であるDP/DBを3.4〜3.8に設定することが開示されている。
ところで、この種の従来技術に係る等速ジョイントとして、例えば、非特許文献1には、継手軸(駆動シャフト及び被駆動シャフト)上において、継手中心の両側に等距離だけオフセットして配置されたアウタレースのボール溝中心とインナレースのボール溝中心とを有するツェッパ型等速ジョイントが開示されている。
このツェッパ型等速ジョイントでは、前記アウタレースのボール溝と前記インナレースのボール溝との相対的動作によって、保持器に保持された6個のボールが等速面又は継手軸間の二等分角面上に位置することにより、駆動接点が常に等速面上に維持されて等速性が確保されるとしている。
この場合、前記非特許文献1には、アウタレースのボール溝(案内溝)とボールとの負荷側接触点の共通法線と、インナレースのボール溝(案内溝)とボールとの負荷側接触点の共通法線とのなす角度であるくさび角を約15度〜17度に設定することが記載されている。これは、ツェッパ型等速ジョイントがジョイント角0度前後で偏角動作をする場合、摩擦によるボールのロックを防止するためである。
また、前記非特許文献1では、一般的に使用されるボール溝の断面(継手軸と直交する方向の断面)が円弧形状又は楕円弧形状に形成され、楕円弧形状のボール溝におけるボールとの接触角度は30度〜45度に設定され、最も一般的に採用されている接触角度は45度であることが記載されている。
さらに、特許文献3及び特許文献4には、アウタレース、インナレース、8個のボール及び保持器によって構成され、アウタレースの案内溝(トラック溝)の溝底が曲線状になった部位の中心が内径面の中心に対して、インナレースの案内溝(トラック溝)の溝底が曲線状になった部位の中心が外径面の中心に対して、それぞれ、軸方向に等距離(F)だけ反対側にオフセットした固定型等速自在継手が開示されている。
前記特許文献3では、オフセット量(F)と、アウタレースの案内溝の中心又はインナレースの案内溝の中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さ(PCR)との比R1(=F/PCR)を、0.069≦R1≦0.121の範囲内に設定することが記載されている。
さらに、前記特許文献4では、オフセット量(F)と、アウタレースの案内溝の中心又はインナレースの案内溝の中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さ(PCR)との比R1(=F/PCR)を、0.069≦R1≦0.121の範囲で、且つ各案内溝とボールとの接触角を37度以下に設定することが記載されている。
ところで、特許文献5には、外側継手部材、内側継手部材、8個のトルク伝達ボール及び保持器によって構成される固定型等速自在継手が開示され、前記外側継手部材のボール溝(トラック溝)の中心と内側継手部材のボール溝(トラック溝)の中心とが軸方向に等距離だけ反対側にオフセットされ、ボールトラックにおけるPCD隙間(外側継手部材のボール溝のピッチ円径と内側継手部材のボール溝のピッチ円径との差)を5〜50μmとすることが記載されている。
前記特許文献5では、PCD隙間を5〜50μmとすることにより、8個のトルク伝達ボールを備えた固定型等速自在継手において、高負荷時での耐久性の向上及び寿命ばらつきの安定化を実現することができるとしている。
さらに、特許文献5には、外側継手部材と保持器との間の径方向隙間を20〜100μmとし、前記保持器と内側継手部材との間の径方向隙間を20〜100μmとすることが記載されている。
ところで、この種の従来技術に係る等速ジョイントは、例えば、図24に示すように、球面状の内径面1aに複数本の曲線状案内溝1bを軸方向に形成したアウタ部材(外輪部材)1と、球面状の外形面2aに複数本の曲線状案内溝2bを軸方向に形成すると共に、内径面にスプライン2cを設けるインナ部材(内輪部材)2とを備えている。アウタ部材1の曲線状案内溝1bとインナ部材2の曲線状案内溝2bとによって、ボール転動溝が一体的に形成されると共に、このボール転動溝には、トルク伝達用のボール3が配されている。ボール3は、略リング状のリテーナ4に形成された保持窓4aにより保持されている。
この場合、アウタ部材1とインナ部材2とに角度を付与した時のジョイント強度は、リテーナ4の強度によって決定されている。従って、角度付加時のジョイント強度を向上させるためには、リテーナ4自体の強度を向上させる必要がある。
ここで、リテーナ4自体の強度を高めるためには、前記リテーナ4の断面積を増加させることで対応することができる。その方法としては、リテーナ4の内球径寸法を小さくする一方、外球径寸法を大きくさせることにより、前記リテーナ4の肉厚を増加させる方法(以下、第1の方法という)、ジョイントに角度をつける際に発生するボール3の飛び出し力に対し、該飛び出し力を受ける側の断面積を増加させる方法(以下、第2の方法という)、及び保持窓4a間に存在する柱部4bの断面積を増加させる方法(以下、第3の方法という)等が挙げられている。
しかしながら、上記の第1の方法及び第2の方法では、リテーナ4が重量物になったり、幅寸法が大きくなったりすると共に、ボール3が曲線状案内溝1bに食い込んでアウタ部材1の耐久性が低下する等の問題がある。しかも、リテーナ4が幅広になることにより、このリテーナ4をアウタ部材1に組み込むことができないおそれがある。
一方、上記の第3の方法では、柱部4bが長尺化して保持窓4aの開口面積が小さくなると、ボール3が前記柱部4bに接触し易く、前記ボール3の組み付け不良が発生するという問題がある。さらに、保持窓4aが小さ過ぎることにより、インナ部材2をリテーナ4内に容易に組み付けることができないという問題がある。
そこで、例えば、特許文献6には、保持窓4aに隅アール部4cが設けられると共に、この隅アール部4cの曲率半径Rとボール3の直径Dとの比R/Dが、0.22≦R/Dである等速自在継手が開示されている。
特開2001−330051号公報
特開2003−97590号公報
特開2003−4062号公報
特開平9−317784号公報
特開2002−323061号公報
特開2002−13544号公報
チャールズ・イー・コーニー・ジュニア(Charles E. Cooney,Jr)編、「UNIVERSAL JOINT AND DRIVESHAFT DESIGN MANUAL ADVANCES IN ENGINEERING SERIES NO.7」、(米国)、第2版、THE SOCIETY OF AUTOMOTIVE ENGINEERS,INC. 1991年、p.145−149
しかしながら、前記特許文献1に開示された技術的思想では、部品点数が多くなって製造コストが高騰すると共に、実際に実施した場合、生産技術的に難しいという問題がある。
また、前記特許文献2に開示された技術的思想では、トルク伝達ボールを保持するケージ(保持器)の強度を向上させるための寸法設定であって、等速ジョイントの小型化に寄与するものではないという問題がある。
ところで、アウタレースのボール溝とインナレースのボール溝とで形成されるボールトラックは、アウタレースの開口部の奥部側から開口部側に向かって軸方向に徐々に広がったくさび状に形成される。従って、アウタレース側及びインナレース側のそれぞれのボール溝が継手中心に対して等距離だけオフセットされた位置にあるため、両ボール溝の深さは軸方向において均一ではない。
前記非特許文献1に開示された構造では、アウタレース及びインナレースのそれぞれのボール溝の深さが浅くなるため、高作動角時や高負荷時に、ボールの接触楕円が前記ボール溝から外れて該ボール溝の肩部(端部)に乗り上げたり、あるいはボール溝の肩部の欠けや摩耗等が発生し、耐久性が劣化するというおそれがある。さらに、高負荷が付与されたときにボール溝とボールとの接触位置がインナリングの端部に近接し、接触楕円のはみ出しが発生して該ボール溝に対する接触面圧が大きくなることが想定される。
また、前記特許文献3及び特許文献4では、オフセット量(F)と、アウタレースの案内溝の中心又はインナレースの案内溝の中心とボールの中心とを結ぶ線分の長さ(PCR)との比R1(=F/PCR)を所定値に設定することが開示されているが、この場合、ボールの直径を小さく設定したり、等速ジョイント自体をより小型化して強度的に最弱な部品である保持器の肉厚を確保しようとすると、必然的にアウタレース及びインナレースの案内溝の深さが十分に確保されず、前記のように案内溝の肩部の欠けや摩耗等が発生するという問題がある。
なお、特許文献5では、8個のトルク伝達ボールを備えた等速自在継手と6個のトルク伝達ボールを備えた等速自在継手とではその基本構造が異なっており、前記PCD隙間の設定値もその構造に適した固有の値が存在すると記載されており、6個のトルク伝達ボールを備えた等速自在継手に関するPCD隙間等の設定値については、何ら開示乃至示唆されていない。
すなわち、この種の等速自在継手において、外側継手部材及び内側継手部材の相互に対向する一組のボール溝によって形成されるボールトラックに対するPCD(ピッチ円径)隙間をどのように設定するかは重要である。なぜならば、前記PCD隙間が小さすぎると、ボールをボールトラックに挿入する際のボールの組み付け作業が困難となり、また、ボールに対する拘束力が大きくなって前記ボールの円滑な転動動作が阻害されるからである。一方、PCD隙間が大きすぎると保持器の窓部とボールとの間で打音が発生したり、継手振動が増大するという問題があるからである。
さらに、前記特許文献6に開示された技術的思想では、保持器(リテーナ)のポケット(保持窓)に設けられた隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達用のボールの直径Dとの比R/Dを設定することにより、耐久性と強度の向上を図ることを目的としているものの、上記の条件設定だけでは、前記保持器の強度を十分に向上させることができないという問題がある。
本発明は、前記の種々の問題を考慮してなされたものであり、ボールとの接触による案内溝に対する面圧を低減して耐久性を向上させることが可能な等速ジョイントを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、案内溝の肩部の欠けや摩耗等の発生を防止して耐久性を向上させることが可能な等速ジョイントを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、6個のボールを備えた等速ジョイントにおいて、各種クリアランスやリテーナの保持窓のオフセット量を最適に設定することによってジョイント寿命に直結するアウタ側案内溝とボールとの間及びインナ側案内溝とボールとの間の面圧を低減して耐久性を向上させることが可能な等速ジョイントを提供することにある。
さらにまた、本発明の他の目的は、強度、耐久性、負荷容量等の諸特性を維持しながら、小型化に対応した各種の寸法設定をすることが可能な等速ジョイントを提供することにある。
またさらに、本発明の他の目的は、リテーナの強度を良好に確保すると共に、組み付け作業性を向上させることが可能な等速ジョイントを提供することにある。
前記の目的を達成するために、本発明は、相交わる2軸の一方に連結され、内径面を有すると共に軸方向に延在する複数の第1案内溝が形成され、一端部が開口するアウタ部材と、
前記2軸の他方に連結され、軸方向に延在し前記第1案内溝と同数の第2案内溝が形成されたインナリングと、
前記第1案内溝と前記第2案内溝との間で転動可能に配設され、トルクを伝達する6個のボールと、
前記各ボールを収納する保持窓が形成されたリテーナと、
を備える等速ジョイントにおいて、
前記アウタ部材に形成された前記第1案内溝は、軸方向と直交する横断面が単一の円弧形状からなり、前記ボールと1点で接触するように形成され、
前記インナリングに形成された前記第2案内溝は、軸方向と直交する横断面が楕円弧形状からなり、前記ボールと2点で接触するように形成され、
前記第1案内溝のピッチ円径をアウタPCDとし、前記インナリングの第2案内溝のピッチ円径をインナPCDとした場合、前記アウタPCDと前記インナPCDとの差(アウタPCD−インナPCD)からなるPCDクリアランスが0〜100μmの範囲内で設定されることを特徴とする。
さらに、本発明は、相交わる2軸の一方に連結され、球面からなる内径面を有すると共に軸方向に延在する複数の第1案内溝が形成され、一端部が開口するアウタ部材と、
前記2軸の他方に連結され、軸方向に延在し前記第1案内溝と同数の第2案内溝が形成されたインナリングと、
前記第1案内溝と前記第2案内溝との間で転動可能に配設され、トルクを伝達する6個のボールと、
前記各ボールを収納する保持窓が形成されたリテーナと、
を備える等速ジョイントにおいて、
前記アウタ部材に形成された前記第1案内溝は、軸方向と直交する横断面が単一の円弧形状からなり、前記ボールと1点で接触するように形成され、
前記インナリングに形成された前記第2案内溝は、軸方向と直交する横断面が楕円弧形状からなり、前記ボールと2点で接触するように形成され、
前記第1案内溝のピッチ円径をアウタPCDとし、前記インナリングの第2案内溝のピッチ円径をインナPCDとした場合、前記アウタPCDと前記インナPCDとの差(アウタPCD−インナPCD)からなるPCDクリアランスが0〜100μmの範囲内で設定され、
前記アウタ部材に形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる前記第1案内溝の曲率中心(H)と前記インナリングに形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる前記第2案内溝の曲率中心(R)とは、前記球面中心(K)からそれぞれ軸方向に沿って反対側に等距離(T)だけオフセットした位置に配置され、
前記ボールの直径(N)と前記第1案内溝及び第2案内溝のオフセット量(T)とは、その比(T/N)をVとして、0.12≦V≦0.14の関係式を充足するように設定されることを特徴とする。
本発明によれば、アウタ部材の第1案内溝の横断面を円弧形状に形成してボールに対して1点接触とし、且つインナリングの第2案内溝の横断面を楕円弧形状に形成してボールに対して2点接触とすることにより、従来技術と比較して、ボールとの接触による第1及び第2案内溝に対する面圧を低減して耐久性を向上させることができる。
この場合、前記第1案内溝の横断面における溝半径(M)及び第2案内溝の横断面における溝半径(P、Q)とボールの直径(N)との比を、それぞれ、0.51〜0.55の範囲に設定し、且つ第1案内溝のボールとの接触角度を鉛直線(L)を基準として零度とし、さらに第2案内溝とボールとの接触角度(α)を鉛直線(L)を基準として13度〜22度の範囲に設定することにより、面圧を低減させてより一層耐久性を向上させることができる。
なお、より一層好ましくは、前記第2案内溝とボールとの接触角度(α)を、鉛直線(L)を基準として15度〜20度の範囲に設定するとよい。
また、本発明によれば、PCDクリアランスが0μmよりも小さくなるとアウタ部材の孔部内に対するボールの組み付け性が悪化すると共にボールの円滑な転動動作が阻害され、耐久性が劣化するためである。一方、前記PCDクリアランスが100μmを超えると高負荷時にボールと第1及び第2案内溝との接触楕円が溝端である肩部からはみ出してしまい、面圧が増大すると共に肩部の欠けが発生して耐久性が劣化するからである。
この場合、前記アウタ部材の内径面におけるアウタ内球径と前記リテーナの外面におけるリテーナ外球径との差と、前記リテーナの内面におけるリテーナ内球径とインナリングの外面におけるインナ外球径との差とを加算することによって形成される球面クリアランス[(アウタ内球径)−(リテーナ外球径)]+[(リテーナ内球径)−(インナ外球径)]を、50〜200μmの範囲内で設定するとよい。
前記球面クリアランスが50μm未満であると、アウタ部材の内面とリテーナの外面との間及びインナリング外面とリテーナの内面との間の潤滑不良によって焼き付けが発生して悪影響を及ぼすからである。一方、前記球面クリアランスが200μmを超えるとアウタ部材及びインナリングとリテーナとの間で打音が発生して商品性に悪影響を及ぼすからである。
また、前記リテーナに形成された保持窓の窓幅中心を、前記リテーナの外面及び内面の球面中心から前記リテーナの軸方向に沿って20〜100μmの範囲内でオフセットした位置に設定するとよい。
リテーナの窓幅中心と球面中心とのオフセット量が20μmより小さくなるとボールに対する拘束力が不足して等速性を確保することが困難となり、100μmより大きくなると、拘束力が過大となってボールの円滑な転動動作が阻害されて耐久性が劣化するからである。
さらに、本発明によれば、ボールの直径(N)と第1及び第2案内溝の曲率中心(H、R)のオフセット量Tとの比V(T/N)を前記関係式(0.12≦V≦0.14)を充足するように設定することにより、前記第1及び第2案内溝の端部に形成された肩部の乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を好適に防止して、等速ジョイントの耐久性を向上させることができる。
この場合、前記ボールの直径(N)とオフセット量(T)との比V(T/N)が0.12未満であると第1案内溝と第2案内溝とによって形成されるくさび角が極小状態となり、非回転動作時におけるボールのロック状態が発生し易くなり、組み付け時の作業性が悪化する。一方、前記ボールの直径(N)とオフセット量(T)との比V(T/N)が0.14を超えると第1及び第2案内溝の深さが浅くなってしまうため、第1及び第2案内溝の端部に形成された肩部の乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を阻止することが困難となる。
さらにまた、本発明によれば、前記アウタPCDと前記インナPCDとが同一であるアウタ・インナPCDの寸法(Dp)と、前記インナリングの孔部の内壁面に形成されたインナセレーション内径部の直径(D)との比(Dp/D)が1.9≦(Dp/D)≦2.2の範囲内で設定されると好適である。前記アウタ・インナPCD(Dp)と前記インナセレーション内径部の直径(D)との寸法比(Dp/D)が1.9未満であるとインナリングの肉厚が薄くなり過ぎて強度が低下するという不具合があり、一方、前記寸法比(Dp/D)が2.2を超えると等速ジョイントを小型化することができない。
また、前記ボールの直径(Db)と、前記アウタPCDと前記インナPCDとが同一であるアウタ・インナPCDの寸法(Dp)との比(Db/Dp)が0.2≦(Db/Dp)≦0.5の範囲内で設定されると好適である。この場合、前記寸法比(Db/Dp)が0.2未満であるとボールの直径が小さくなり過ぎて耐久性が低下するという不具合があり、一方、前記寸法比(Db/Dp)が0.5を超えるとボールが大きくなりアウタ部材の肉厚が相対的に薄くなって強度が低下する。
さらに、前記アウタ部材の外径(Do)と、前記アウタPCDと前記インナPCDとが同一であるアウタ・インナPCDの寸法(Dp)との比(Do/Dp)が1.4≦(Do/Dp)≦1.8の範囲内で設定されると好適である。この場合、前記寸法比(Do/Dp)が1.4未満であるとアウタ部材の肉厚が薄くなって強度が低下するという不具合があり、一方、前記寸法比(Do/Dp)が1.8を超えるとアウタ部材の外径が大きくなって小型化を達成することができない。
前記アウタPCDと前記インナPCDとが同一であるアウタ・インナPCDの寸法(Dp)と、前記インナリングの孔部の内壁面に形成されたインナセレーション内径部の直径(D)との比(Dp/D)が1.9≦(Dp/D)≦2.2の範囲内で設定され、且つ、前記ボールの直径(Db)と、前記アウタ・インナPCDの寸法(Dp)との比(Db/Dp)が0.2≦(Db/Dp)≦0.5の範囲内で設定され、且つ、前記アウタ部材の外径(Do)と、前記アウタ・インナPCDの寸法(Dp)との比(Do/Dp)が1.4≦(Do/Dp)≦1.8の範囲内で設定されると好適である。
さらにまた、本発明によれば、前記保持窓が、前記リテーナの周方向に開口長さ(WL)を有すると共に、前記開口長さ(WL)と前記ボールの直径(N)との比(WL/N)は、1.30≦WL/N≦1.42の範囲内で設定されると好適である。前記保持窓は、曲率半径Rの角部を有すると共に、前記曲率半径(R)と前記ボールの直径(N)との比(R/N)は、0.23≦R/N≦0.45の範囲内で設定されることが好ましい。
0.23≦R/Nの関係に設定されることにより、保持窓間の柱部の最大主応力荷重を低減してリテーナの強度を向上させることができる。一方、R/N≦0.45の関係に設定されることにより、保持窓の角部が大きくなり過ぎて、ボールやインナリングの組み込み不良が発生することを有効に防止することができる。
なお、前記第1案内溝及び前記第2案内溝は、長手方向に沿って湾曲形状部と直線形状部(S1、S2)とを有するように形成されるとよい。また、前記第1案内溝及び前記第2案内溝は、長手方向に沿って湾曲形状部のみを有するように形成されることが好ましい。
アウタ部材の第1案内溝の横断面を円弧形状に形成してボールに対して1点接触とし、且つインナリングの第2案内溝の横断面を楕円弧形状に形成してボールに対して2点接触とすることにより、ボールとの接触による案内溝に対する面圧を低減して耐久性を向上させることができる。
また、アウタ部材及びインナリングにそれぞれ形成された第1及び第2案内溝の肩部の欠けや摩耗等の発生を防止すると共に、ボールとの接触による案内溝に対する面圧を低減して耐久性を向上させることができる。
本発明に係る等速ジョイントについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において参照符号10は、本発明の実施の形態に係る等速ジョイントを示す。なお、以下の説明において、縦断面とは、第1軸12及び第2軸18の軸方向に沿った断面をいい、横断面とは、前記軸方向と直交する断面をいう。
この等速ジョイント10は、第1軸12の一端部に一体的に連結されて開口部14を有する有底円筒状のアウタカップ(アウタ部材)16と、第2軸18の一端部に固着されてアウタカップ16の孔部内に収納されるインナ部材22とから基本的に構成される。
図1及び図3に示されるように、前記アウタカップ16の内壁には球面からなる内径面24を有し、前記内径面24には、軸方向に沿って延在し、軸心の回りにそれぞれ60度の間隔をおいて6本の第1案内溝26a〜26fが形成される。
前記アウタカップ16に形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状からなる第1案内溝26a(26b〜26f)は、図2に示されるように、点Hを曲率中心としている。この場合、前記点Hは、内径面24の球面中心K(ボール28の中心点Oを結ぶ仮想面(ボール中心面)と継手軸27とが直交する交点)から軸方向に沿ってアウタカップ16の開口部14側に距離T1だけオフセットした位置に配置される。
前記アウタカップ16に形成された第1案内溝26a〜26fの横断面は、それぞれ、図4に示されるように、ボール28の中心Oを通る鉛直線L上に曲率中心Aを有する単一の円弧形状からなり、前記第1案内溝26a〜26fは、後述するボール28の外面と、図面上、1点Bで接触するように形成される。
なお、実際上、回転トルクを伝達する際に負荷が付与された時には、ボール28の外面と第1案内溝26a〜26fとは点接触ではなく、面接触する。
前記横断面における第1案内溝26a〜26fの両側には前記内径面24が連続して形成され、前記第1案内溝26a〜26fと端部と内径面24との境界部分には面取りされた一組の第1肩部30a、30bが形成される。
前記アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fに対するボール28の接触角度は、鉛直線Lを基準として零度に設定されている。また、前記第1案内溝26a〜26fの横断面における溝半径Mとボール28の直径Nとの比(M/N)は、0.51〜0.55に設定されるとよい(図4参照)。
インナ部材22は、外周面の周方向に沿って前記第1案内溝26a〜26fに対応する複数の第2案内溝32a〜32fが形成されたインナリング34と、前記アウタカップ16の内壁面に形成された第1案内溝26a〜26fと前記インナリング34の外径面35(図4参照)に形成された第2案内溝32a〜32fとの間で転動可能に配設され、回転トルク伝達機能を営む複数(本実施の形態では、6個)のボール28と、前記ボール28を保持する複数の保持窓36が周方向に沿って形成されアウタカップ16と前記インナリング34との間に介装されたリテーナ38とを有する。
前記インナリング34は、中心に形成された孔部を介して第2軸18の端部にスプライン嵌合され、あるいは第2軸18の環状溝に装着されるリング状の係止部材40を介して第2軸18の端部に一体的に固定される。該インナリング34の外径面35には、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fに対応して配置され、周方向に沿って等角度離間する複数の第2案内溝32a〜32fが形成される。
前記インナリング34に形成され軸方向に沿った縦断面が曲線状に形成された前記第2案内溝32a〜32fは、図2に示されるように、点Rを曲率中心としている。この場合、前記点Rは、内径面24の球面中心K(ボール28の中心点Oを結ぶ仮想面(ボール28の中心面)と継手軸27とが直交する交点)から軸方向に沿って距離T2だけオフセットした位置に配置される。
アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fの曲率中心である点Hと、インナリング34の第2案内溝32a〜32fの曲率中心である点Rは、内径面24の球面中心K(ボール28の中心面と継手軸27との交点)からそれぞれ反対側に向かい且つ軸方向に沿って等距離(T1=T2)だけオフセットした位置に配置される。前記点Hは、球面中心Kを基準としてアウタカップ16の開口部14側に位置し、前記点Rは、アウタカップ16の奥部46側に位置し、前記点Hの曲率半径及び点Rの曲率半径は、たすき掛け状に交差するように設定される(図2参照)。
この場合、ボール28の直径をNとし、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26f及びインナリング34の第2案内溝32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量(球面中心Kから軸方向に沿った離間距離)をそれぞれTとし、前記直径Nと前記オフセット量Tとの比をVとしたとき、前記比V(=T/N)は、0.12≦V≦0.14の関係式を充足するように、前記ボール28の直径Nとオフセット量Tとが設定されると好適である。
前記第2案内溝32a〜32fの横断面は、図4に示されるように、水平方向に沿って所定距離だけ離間する一対の中心C、Dを有する楕円弧形状からなり、前記第2案内溝32a〜32fは、ボール28の外面と、図面上、2点E、Fで接触するように形成される。なお、実際上、回転トルクを伝達する際に負荷が付与された時には、ボール28の外面と第2案内溝32a〜32fとは点接触ではなく、面接触するように形成される。
前記横断面における第2案内溝32a〜32fの両側には前記外径面35が連続して形成され、前記第2案内溝32a〜32fと端部と外径面35との境界部分には面取りされた一組の第2肩部42a、42bが形成される。
第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αは、鉛直線Lを基準として左右に等角度αだけ離間するように設定される。この場合、前記第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αを、図7に示されるように、13度〜22度の範囲で設定すると耐久性が良好となり、さらに、前記第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αを、15度〜20度の範囲で設定すると極めて良好な耐久性が得られる。また、前記第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径P、Qとボール28の直径Nとの比(P/N、Q/N)は、0.51〜0.55に設定されるとよい(図4参照)。
前記ボール28は、例えば、鋼球によって形成され、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fとインナリング34の第2案内溝32a〜32fとの間に周方向に沿ってそれぞれ1個ずつ転動可能に配設される。このボール28は、第2軸18の回転トルクを、インナリング34及びアウタカップ16を介して第1軸12に伝達すると共に、第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fに沿って転動することにより、第2軸18(インナリング34)と第1軸12(アウタカップ16)との間の交差する角度方向の相対的変位を可能とするものである。なお、回転トルクは、第1軸12と第2軸18との間でいずれの方向からでも好適に伝達される。
図8A及び図8Bに示されるように、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fに6個のボール28がそれぞれ点接触した状態における前記第1案内溝26a〜26fのピッチ円径をアウタPCDとし、インナリング34の第2案内溝32a〜32fに6個のボール28がそれぞれ点接触した状態における前記第2案内溝32a〜32fのピッチ円径をインナPCDとした場合、前記アウタPCDと前記インナPCDとの差によってPCDクリアランスが設定される(アウタPCD−インナPCD)。
また、図9A〜図9Cに示されるように、アウタカップ16の内径面24におけるアウタ内球径とリテーナ38の外径面におけるリテーナ外球径との差と、リテーナ38の内径面におけるリテーナ内球径とインナリング34の外径面におけるインナ外球径との差とを加算することによって球面クリアランスが設定される。
換言すると、球面クリアランス=[(アウタ内球径)−(リテーナ外球径)]+[(リテーナ内球径)−(インナ外球径)]によって設定される。
さらに、図10に示されるように、リテーナ38の保持窓36の窓幅中心(リテーナ38の軸方向を幅とする)と、前記リテーナ38の外面38a及び内面38bの球面中心とがリテーナ38の軸方向に沿って所定距離だけオフセットした位置に配置されている。
本実施の形態に係る等速ジョイント10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果について説明する。
第2軸18が回転すると、その回転トルクはインナリング34から各ボール28を介してアウタカップ16に伝達され、第1軸12が前記第2軸18と等速性を保持しながら所定方向に回転する。
その際、第1軸12と第2軸18との交差角度(作動角)が変化する場合には、第1案内溝26a〜26fと第2案内溝32a〜32fとの間で転動するボール28の作用下にリテーナ38が所定角度だけ傾動して前記角度変位が許容される。
この場合、リテーナ38の保持窓36に保持された6個のボール28が等速面又は第1軸12、第2軸18間の二等分角面上に位置することにより、駆動接点が常に等速面上に維持されて等速性が確保される。このように、第1軸12及び第2軸18の等速性を保持しつつ、それらの角度変位が好適に許容される。
本実施の形態では、ボール28の直径Nと、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26f及びインナリング34の第2案内溝32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量(球面中心Kから軸方向に沿った離間距離)Tとの比V(=T/N)が、0.12≦V≦0.14の関係式を充足するように設定される(図2参照)。
この場合、前記ボール28の直径Nとオフセット量Tとの比Vが0.12未満であると第1案内溝26a〜26fと第2案内溝32a〜32fとによって形成されるくさび角が極小状態となり、非回転動作時におけるボール28のロック状態が発生し易くなり、組み付け時の作業性が悪化するという不具合がある。
一方、前記ボール28の直径Nとオフセット量Tとの比Vが0.14を超えると第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの深さが浅くなってしまうため、第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの端部に形成された第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bの乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を阻止することが困難となる。
このように、ボール28の直径Nと第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量Tとを前記関係式(0.12≦V≦0.14)を充足するように設定することにより、第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの端部に形成された第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bの乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を好適に防止して等速ジョイント10の耐久性をより一層向上させることができる。
図5は、本実施の形態に係る等速ジョイント10の縦断面における部分拡大を示し、ボール28の直径Nと第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量Tとの関係について前記関係式を充足させることにより、オフセット量T1が小さく設定されている。一方、図6は、比較例に係る等速ジョイント100の縦断面における部分拡大を示し、オフセット量T2が本実施の形態と比較して大きく設定されている(T1<T2)。
この場合、継手軸27に直交しボール28の中心を通る直線Sに対して約15度だけ傾斜した部位におけるアウタカップ16の第1案内溝26a〜26fの深さを比較した場合、本実施の形態の第1案内溝26a〜26fの深さDP1は、比較例の第1案内溝の深さDP2よりも大きく形成することができるため(DP1>DP2)、第1案内溝26a〜26fの端部に形成された第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bの乗り上げ又は欠けや摩耗等の発生を好適に防止することができる。
さらに、本実施の形態では、アウタカップ16の第1案内溝26a〜26fの横断面を円弧形状に形成してボール28に対して1点接触とし、且つインナリング34の第2案内溝32a〜32fの横断面を楕円弧形状に形成してボール28に対して2点接触とすることにより、従来技術と比較して、ボール28との接触による第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fに対する面圧を低減して耐久性を向上させることができる。
この場合、本実施の形態では、第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径(M、P、Q)とボール28の直径Nとの比(M/N、P/N、Q/N)を、それぞれ、0.51〜0.55の範囲において設定し、且つ第1案内溝26a〜26fのボール28との接触角度を鉛直線Lを基準として零度とし、さらに第2案内溝32a〜32fとボール28との接触角度αを鉛直線Lを基準として13度〜22度の範囲に設定することにより、面圧を低減させてより一層耐久性を向上させることができる。
前記第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径(M、P、Q)とボール28との直径Nの比を、0.51〜0.55とした理由は、0.51未満であると溝半径(M、P、Q)とボール28の直径Nとが近接すぎるためにベタ当たり(全面接触)に近似した状態となりボール28の転がりが悪くなるために耐久性が劣化する、一方、0.55を超えると逆にボール28の接触楕円が小さくなるために接触面圧が高くなり耐久性が劣化するからである。
なお、前記ボール28の直径Nと縦断面における第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fの曲率中心(点H、点R)のオフセット量Tとの比V(T/N)、第2案内溝32a〜32fとボール28との接触角度α、及び、前記第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fの横断面における溝半径(M、P、Q)とボール28との直径の比は、それぞれ、シミュレーションと実験とを何度も繰り返した結果、最適なものが求められたものである。
さらに、第2案内溝32a〜32fに対するボール28の接触角度αを13度〜22度の範囲に設定した理由は、前記接触角度αが13度未満であるとボール28に対する荷重が増大することにより面圧が高くなり耐久性が劣化する、一方、前記接触角度αが22度を超えると第2案内溝32a〜32fの端部(第2肩部42a、42b)とボール28の接触位置が近接することとなり、接触楕円のはみ出しが起こり面圧が高くなって耐久性が劣化するからである。
さらに、本実施の形態では、アウタPCDとインナPCDとの差(アウタPCD−インナPCD)によって形成されるPCDクリアランス(図8A及び図8B参照)を、0〜100μmとし、好ましくは、0〜60μmに設定するとよい。前記PCDクリアランスを0〜100μmとしたのは、0μmよりも小さくなるとボール28の組み付け性が悪化すると共にボール28の円滑な転動動作が阻害され、耐久性が劣化するためである。一方、前記PCDクリアランスが100μmを超えると高負荷時にボール28と第1及び第2案内溝26a〜26f、32a〜32fとの接触楕円が溝端である第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bからはみ出してしまい、面圧が増大すると共に第1及び第2肩部30a、30b、42a、42bの欠けが発生して耐久性が劣化するからである。この場合、図11の実験結果に示されるように、前記PCDの設定範囲を0〜60μmとすることにより、極めて良好な耐久性が得られる。
さらにまた、本実施の形態では、図9A〜図9Cに示されるように、[(アウタ内球径)−(リテーナ外球径)]+[(リテーナ内球径)−(インナ外球径)]によって設定される球面クリアランスを50〜200μmとし、好ましくは、50〜150μmに設定するとよい。50μm未満であるとアウタカップ16の内面とリテーナ38の外面38aとの間及びインナリング34の外面とリテーナ38の内面38bとの間の潤滑不良によって焼き付けが発生して悪影響を及ぼすからである。一方、200μmを超えるとアウタカップ16及びインナリング34とリテーナ38との間で打音が発生して商品性に悪影響を及ぼすからである。この場合、図12の実験結果に示されるように、前記球面クリアランスの設定範囲を50〜150μmとすることにより、極めて良好な耐久性が得られる。
さらに、本実施の形態では、図10に示されるように、リテーナ38の保持窓36の窓幅中心(リテーナ38の軸方向を幅とする)が、前記リテーナ38の外面38a及び内面38bの球面中心からリテーナ38の軸方向に沿って20〜100μmだけオフセットした位置に配置されている。リテーナ38の窓幅中心と球面中心とのオフセット量が20μmより小さくなるとボール28の拘束力不足によって等速性を確保することが困難となり、100μmより大きくなると、拘束力が過大となってボール28の円滑な転動動作が阻害されて耐久性が劣化するからである。この場合、図13の実験結果に示されるように、前記リテーナ38の窓幅中心と球面中心とのオフセット量の設定範囲を40〜80μmとすることにより、極めて良好な耐久性が得られる。
この結果、本実施の形態では、6個のボール28を備える等速ジョイント10において、高負荷時であっても、ボール28による接触楕円のはみ出しを抑制して耐久性を向上させることができる。
次に、等速ジョイント10の各種寸法の設定について、詳細に説明する。
この場合、図8A及び図8Bに示される前記アウタPCDと前記インナPCDとが等しく(アウタPCD=インナPCD)、アウタPCDとインナPCDとの差が零に設定されているものとする。なお、以下の説明では、アウタPCDとインナPCDとの両方を併せて「アウタ・インナPCD」という。
インナセレーション内径部39の直径(D)を任意に設定し、前記インナセレーション内径部39の直径(D)に基づいてインナリング34の最小肉厚であるアウタ・インナPCDの寸法を設定する(図14及び図15参照)。
なお、前記インナセレーション内径部39の直径(D)とは、インナリング34の孔部の中心を通り、一方のインナセレーション内径部39の谷部の底部と他方のインナセレーション内径部39の谷部の底部との間の寸法(最大径)をいう(図15参照)。前記インナリング34の最小肉厚によって所定の結合強度が確保される。前記アウタ・インナPCDの値は、図16に示されるように、インナセレーション内径部39の直径とアウタ・インナPCDとの関係に係る特性直線Lから求められる。
この場合、インナセレーション内径部39の直径をDとしアウタ・インナPCDをDpとすると(図14及び図15参照)、前記アウタ・インナPCD(Dp)と前記インナセレーション内径部39の直径(D)との寸法比(Dp/D)は、1.9≦(Dp/D)≦2.2の範囲内で設定されると好適である。
前記寸法比(Dp/D)が1.9未満であるとインナリング34の肉厚が薄くなり過ぎて強度が低下するという不具合があり、一方、前記寸法比(Dp/D)が2.2を超えると等速ジョイント10を小型化することができないからである。
また、図17に示されるように、アウタカップ16のカップ部の外径とアウタ・インナPCDとの関係に係る特性直線Mに基づいて、前記アウタカップ16の外径を設定する。この場合、図14及び図15に示されるようにアウタカップ16の外径をDoとすると、前記アウタカップ16の外径(Do)とアウタ・インナPCD(Dp)との寸法比(Do/Dp)は、1.4≦(Do/Dp)≦1.8の範囲内で設定されると好適である。
前記寸法比(Do/Dp)が1.4未満であるとアウタカップ16の肉厚が薄くなって強度が低下するという不具合があり、一方、前記寸法比(Do/Dp)が1.8を超えるとアウタカップ16の外径が大きくなって小型化を達成することができないからである。
さらに、図18に示されるように、第2軸18の軸線方向に沿ったインナリング34のリング幅とアウタ・インナPCDとの関係に係る特性直線Nに基づいて、前記インナリング34のリング幅を設定する。この場合、インナリング34のリング幅をWとすると、インナリング34のリング幅(W)とアウタ・インナPCD(Dp)との寸法比(W/Dp)は、0.38≦(W/Dp)≦0.42の範囲内で設定されると好適である。
さらにまた、図19に示されるように、ボール28の直径とアウタ・インナPCDとの関係に係る特性直線Qに基づいて、ボール28の直径を設定する。この場合、図14及び図15に示されるようにボール28の直径をDbすると、前記ボール28の直径(Db)とアウタ・インナPCD(Dp)の寸法比(Db/Dp)は、0.2≦(Db/Dp)≦0.5の範囲内で設定されると好適である。
前記寸法比(Db/Dp)が0.2未満であるとボール28の直径が小さくなり過ぎて耐久性が低下するという不具合があり、一方、前記寸法比(Db/Dp)が0.5を超えるとボール28が大きくなりアウタカップ16の肉厚が相対的に薄くなって強度が低下するという不具合がある。なお、前記ボール28を保持するリテーナ38の内球径及び外球径は、それぞれレイアウトによって任意に設定される。
このように、各寸法をそれぞれ設定することにより、強度、耐久性、負荷容量等の諸特性を維持しながら、小型化に対応した等速ジョイント10の各種の寸法設定をすることができる。
次に、リテーナ38に形成された保持窓36の周方向に開口長さ(WL)とボール28の直径(N)との関係について図20〜図23に基づいて、以下詳細に説明する。
図20に示されるように、アウタカップ16の内径面24には、軸方向(矢印X方向)に沿って延在し軸心の回りにそれぞれ60度の間隔をおいて6本の第1案内溝26a〜26fが形成され、前記各第1案内溝26a〜26fは、長手方向(矢印X方向)に沿って湾曲形状部から一体に設けられる直線形状部S1を有する。
インナリング34の外径面35には、軸方向に沿って延在し前記第1案内溝26a〜26fと同数の第2案内溝32a〜32fが形成される。前記各第2案内溝32a〜32fは、長手方向(矢印X方向)に沿って湾曲形状部から一体に設けられる直線形状部S2を有すると共に、前記各直線形状部S1、S2は、矢印X方向に沿って互いに反対方向に設けられる。
図21及び図22に示すように、リテーナ38は、略リング形状を有しており、それぞれボール28を保持する6個の保持窓36が周方向に沿って等角度間隔に形成される。
各保持窓36は、図22に示すように、リテーナ38の周方向に開口長さ(WL)を有すると共に、前記開口長さ(WL)とボール28の直径(N)との比WL/Nは、1.30≦WL/N≦1.42の関係に設定される。各保持窓36は、曲率半径Rの角部36aを有すると共に、前記曲率半径Rとボール28の直径(N)との比R/Nは、0.23≦R/N≦0.45の関係に設定される。
等速ジョイント10では、図22に示すように、リテーナ38の各保持窓36において、前記リテーナ38の周方向の開口長さ(WL)とボール28の直径(N)とが、WL/N≦1.42の関係に設定されている。このため、リテーナ38は、保持窓36間の柱部136の周方向長さを有効に維持することができ、前記リテーナ38の肉厚を大きく設定する必要がなく、前記柱部136の断面積を向上させることが可能になる。
従って、リテーナ38は、例えば、内球径寸法を小さく、且つ外球径寸法を大きく設定したり、軸方向の幅寸法が長尺化したりすることがなく、前記リテーナ38の強度を良好に向上させることができるという効果が得られる。
しかも、等速ジョイント10では、保持窓36の開口長さ(WL)とボール28の直径(N)とが、1.30≦WL/Nの関係に設定されている。これにより、各保持窓36の開口面積を増大させることが可能になり、ボール28の組み込み不良やインナリング34の組み付け不良等を有効に阻止することができる。このため、等速ジョイント10では、簡単な構成で、組み立て作業性の向上が容易に図られるという利点がある。
さらに、保持窓36の角部36aの曲率半径Rとボール28の直径(N)とが、0.23≦R/Nの関係に設定されることにより、前記保持窓36間の柱部136の最大主応力荷重を低減して前記リテーナ38の強度を向上させることができる。
一方、R/N≦0.45の関係に設定されることにより、保持窓36の角部36aが大きくなり過ぎて、ボール28やインナリング34の組み込み不良が発生することを有効に阻止することが可能になる。
さらにまた、等速ジョイント10では、第1案内溝26a〜26fが長手方向に沿って直線形状部S1を有すると共に、第2案内溝32a〜32fが長手方向に沿って直線形状部S2を有している。従って、等速ジョイント10の最大作動角を有効に大きく設定することができる。
なお、図23に示されるように、前記第1案内溝26a〜26f及び第2案内溝32a〜32fが、長手方向に沿って湾曲形状部のみを有するように形成してもよい。