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JP4882769B2 - 連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法及び連続鋳造鋳片の製造方法 - Google Patents
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連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法及び連続鋳造鋳片の製造方法 Download PDF

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本発明は、鋼の連続鋳造鋳片の中心部に発生する中心偏析を予め予測する方法、及び、この予測結果に基づき最適な鋳造条件を選択して中心偏析の軽微な連続鋳造鋳片を製造する方法に関するものである。
従来、鋼の連続鋳造鋳片、特に厚鋼板やラインパイプ材に向けられるスラブ鋳片などの連続鋳造鋳片においては、中心偏析が問題になる場合がある。この場合、鋳片の偏析の程度は、最終製品の品質に影響を与えるため、使用する連続鋳造機の選択や、鋳造速度、二次冷却条件などの鋳造条件の決定が重要になる。また、偏析低減のために、従来から種々の対策が実施されている。例えば、最終凝固部の凝固収縮分などを補うために、内部に未凝固部が残る鋳片に圧下を加える、いわゆる軽圧下技術(例えば特許文献1参照)などがその代表である。
このような、各種の条件を選択決定する際に、偏析の程度がどのようになるかを予測することは、極めて重要であり多数の提案がなされている。
例えば、特許文献2には、鋳片軸心部の硬度の測定結果から、中心偏析度を把握する方法が提案されている。また、特許文献3には、鋳片から採取した小試験片試料の分析結果から、統計的処理によって原素材における最大偏析度を得る方法が提案されている。また更に、特許文献4には、連続鋳造途中の未凝固鋳片の凝固殻厚みの実測値と計算値とを比較し、その差から鋳片の中心偏析度を推定する方法が提案されている。
更にまた、特許文献5には、伝熱計算で求めた鋳片の凝固プロファイルに基づいて、凝固先端部の未凝固溶鋼の非流動域面積とバルジング量とを求め、求めた非流動域面積及びバルジング量から中心偏析量を予測する方法が提案されている。
特開昭60−6254号公報 特開平9−178733号公報 特開昭61−27155号公報 特開2001−259812号公報 特開昭59−156557号公報
しかしながら、これらの従来技術には以下の問題点がある。
すなわち、特許文献2の硬度の測定結果から評価する方法、特許文献3の小試験片試料の分析結果から統計的処理によって評価する方法、及び、特許文献4の凝固殻厚みの測定値から評価する方法は、何れも実鋳片の分析或いは計測を必要とするものであり、これらを可能にする分析技術や計測技術が必要である。また、鋳造された或いは鋳造されつつある鋳片の中心偏析を評価する方法であって、事前に中心偏析度を評価して鋳造条件を最適化するといった目的には対応しない。
特許文献5による予測方法は、凝固先端部における未凝固溶鋼の非流動域面積とバルジング量との和から中心偏析を予測する方法であり、事前に中心偏析度を評価する方法であるが、中心偏析は必ずしもこれらの和と比例するものではない。すなわち、中心偏析は、バルジングなどによって生じた空隙に濃化溶鋼が吸引されて形成されることから、中心偏析度を予測するには、吸引される濃化溶鋼の濃化程度を把握する必要があるが、特許文献5ではそれを把握しておらず、正確に偏析度を予測できないという問題点がある。
このように、従来の中心偏析予測方法は、経験的な部分が多く、明確に定量化されていないのが実情である。各連続鋳造機において、鋳造速度、二次冷却強度、軽圧下の程度などによって、偏析が悪化するか或いは軽減するかは、定性的には或る程度分っているものの、各因子の影響を含めた、中心偏析の予測式といったものは未だ提案されていない。
尚、連続鋳造機や鋳造条件などの各種条件が、中心偏析の程度にどのような影響を与えるかについては、過去にモデル解析計算などが行われた例もあるが、実際の操業条件などを反映させて偏析を予測するという目的には対応できておらず、実生産への適用には問題があった。
また、偏析を表現するモデル式として、液相完全混合・固相内拡散無視を前提としたScheilの式(若しくはPffan の式)や、固相内拡散を考慮したBrody-Flemingsの式などがあることが知られている。しかしながら、これらの式はあくまでも、単一のデンドライト枝の凝固におけるミクロ偏析を扱ったものであり、凝固途中のマクロ的な残溶鋼の流動・集積などを伴う、中心偏析などのマクロ偏析を表現することはできない。つまり、マクロ偏析の表現には、それに適した計算モデルを構築する必要がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋼の連続鋳造鋳片の中心部に発生する中心偏析を、種々の条件を反映させて予め予測する方法を提供することであり、また、この予測結果に基づき最適な鋳造条件を選択して中心偏析の軽微な連続鋳造鋳片を製造する方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法は、鋼の連続鋳造鋳片の中心偏析を予測するに当たり、連続鋳造機のロール配置及び鋳片の鋳造条件に基づいてバルジング及び凝固収縮によって形成される最終凝固部における空隙の大きさを推定し、次いで、前記空隙の形成位置での鋳片中心部の固相率から流動限界固相率までの範囲の固相率に該当する残溶鋼の平均溶質濃度を算出し、この平均溶質濃度の残溶鋼が前記空隙を充填したとして、充填した残溶鋼の凝固進行に伴うミクロ偏析を計算し、このミクロ偏析の計算値に基づいて鋳片の中心偏析を予測することを特徴とするものである。
第2の発明に係る連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法は、第1の発明において、前記空隙の形成位置での鋳片中心部の固相率を0.05ないし0.3として計算することを特徴とするものである。
第3の発明に係る連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法は、第1または第2の発明において、前記空隙の大きさを400μmないし1500μmとして計算することを特徴とするものである。
第4の発明に係る連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、前記ミクロ偏析を計算する際に、空隙内の最終凝固部の面積が、鋳片の偏析を分析するための分析機器の分析面積と一致するように、ミクロ偏析計算時の凝固率を決定し、当該凝固率でミクロ偏析を計算することを特徴とするものである。
第5の発明に係る連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法は、第1ないし第4の発明の何れかにおいて、Mnの偏析度がCの偏析度の0.5〜0.6倍、Pの偏析度がCの偏析度の2.0〜2.6倍となるように、計算により得られたCの偏析度を修正することを特徴とするものである。
第6の発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、連続鋳造機で溶鋼を鋳造する前に、第1ないし第5の発明の何れか1つに記載の連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法を用いて中心偏析を予測し、予測される中心偏析が品質上要求される水準を満たすように鋳造条件を選択し、選択した鋳造条件で連続鋳造することを特徴とするものである。
本発明によれば、連続鋳造機の設備的条件や連続鋳造操業時の各種鋳造条件を反映させて、鋳片の中心偏析の程度を定量的に予測・評価することが可能となる。その結果、事前に最適な鋳造条件を選択して鋳造が行えるようになるのみならず、すでに鋳造した鋳片について、計算で求まる偏析の程度が実際と合致していない場合には、連続鋳造機の設備的な不具合や鋳造時の異常をチェックできるという効果もある。また、本発明により、ミクロ偏析の取り扱いでは再現不可能であった、マクロ偏析部での各種析出物の出現予測も可能になる。
また、中心偏析などのマクロ偏析の程度を、実際のマクロ偏析形成のメカニズムに沿って構築したモデルによって精度良く予測することは、製造される鋳片の品質を予測できるばかりでなく、種々の条件を変えて計算してみることで、最適な製造条件を見出すことが可能にもなり、産業上の有用性は大きい。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明は、先ず、鋼の連続鋳造鋳片の中心偏析の原因となる、鋳片中心部に形成される空隙の大きさを計算し、次に、この空隙に流入する溶鋼の溶質濃度を、当該空隙の形成位置での鋳片中心部の固相率から流動限界固相率までの範囲の固相率に該当する残溶鋼(「液相」ともいう)の溶質濃度の平均値として定め、この溶質濃度の残溶鋼で充填された空隙(「偏析スポット」と呼ぶ)における凝固過程でのミクロ偏析を計算し、ミクロ偏析による偏析度(もともとの溶鋼濃度に対する濃化倍率)に基づいて中心偏析の程度を予測する方法である。
凝固過程において、ミクロ偏析は溶質の液相側への分配に起因して必ず発生するが、液相が移動しない場合には、マクロ的(例えば直径50μm程度の領域でみた場合)には均一であり、製品において問題にはならない。これに対して中心偏析はマクロ的に不均一な部分が形成される現象であり、ミクロ偏析と区別するためにマクロ偏析と呼ばれている。また、溶質濃度が初期濃度よりも濃化した溶鋼は濃化溶鋼と呼ばれており、凝固過程では溶質が液相側に分配されることから、凝固過程の固相と接触している液相がこの濃化溶鋼に該当する。
以下、図1に示す計算モデルの概念を説明する図を参照して各段階を詳細に説明する。尚、図1において、符号1はデンドライト状柱状晶(固相)、2はデンドライト状柱状晶1で囲まれた残溶鋼(液相)、3は空隙、4は空隙3に向かって移動する残溶鋼、5は偏析スポット、6は中心偏析部を表し、図1において、(A)は空隙3の形成、(B)は残溶鋼2の空隙3への移動、(C)は空隙3が残溶鋼2で充填されて形成される偏析スポット5、(D)は偏析スポット5の凝固の進行に伴って生ずる中心偏析部6を示している。
本発明では、先ず、連続鋳造機のロール配置、及び、鋳造速度、二次冷却での冷却の強さ(或いは、二次冷却における抜熱量)、鋳片のサイズ、鋳片の成分組成などの鋳造条件に基づき、バルジング量及び凝固収縮に起因して鋳片の最終凝固部に形成される空隙3の大きさを推定する(図1(A)参照)。ここで、バルジングとは、鋳片の未凝固部に作用する溶鋼静圧によって、内部に未凝固部を有する鋳片が膨らむ現象である。厳密には、凝固収縮などによる負圧領域の形成に伴って周辺の溶鋼が移動し充填することによって、空隙そのものは形成されない場合もありうるが、その場合でも、一旦、空隙形成を仮定し、次の段階でその空隙に溶鋼が流入するという2段階に区分して考えることは可能である。このような空隙3の形成を考えることにより、中心偏析の形成は理解しやすくなる。
連続鋳造機内でのバルジング量の計算については、バルジング挙動に関する実験的或いは解析的な計算式(例えば、「鉄と鋼」第67巻第8号1172ページ、藤井ら「連鋳鋳片におけるバルジングのクリープモデルによる解析」、日本鉄鋼協会鉄鋼基礎共同研究会「連続鋳造における力学的挙動」118ページ、宮原ら「低静圧下における鋳片のバルジング挙動」、同書128ページ、森田「熱弾塑性有限要素法によるバルジングの解析」などを参照)に基づいて、各種の計算モデルが提案されている。これと、連続鋳造機の仕様や二次冷却の条件などを考慮した伝熱凝固計算プログラムとを組み合わせることにより、各鋳造条件における連続鋳造機各位置でのバルジング量を計算することができる。
このように、本発明では、最初の段階で、設備・操業要因を抽出し、それを偏析程度の見積もりに反映させるようにしたので、これらの設備要因や鋳造条件を正確に評価できるようになる。
但し、適当な計算プログラムの適用が難しい場合や、計算の簡便さを求める場合(特に、使用する連続鋳造機が決まっていて、設備上の条件の変化がほとんどない場合や、鋳造条件がほとんど変わらない場合など)には、影響度の大きい、着目すべき要因のみについて精度良く計算しておけばよい。また、実際の鋳片を調査して存在する偏析スポット5のサイズに合わせ、計算で対象とする、最終凝固部に形成される空隙3の大きさを400μmないし1500μmとして計算することも可能である。
次に、以下に説明する2段階の計算で、鋳片の中心偏析つまりマクロ偏析の形成をモデル化する。
先ず、形成された空隙3に流入する残溶鋼2の溶質濃度を計算する(図1(B)参照)。そのために、流入する残溶鋼2が、どの程度の固相率に該当する範囲を起源としているかを判断し、判断した固相率の範囲における液相の溶質濃度を、各固相率毎にミクロ偏析の計算式を用いて求める。求めた各固相率の溶質濃度から、この固相率の範囲の平均溶質濃度を求める。そして、溶質濃度がこのようにして求めた平均溶質濃度である残溶鋼2が空隙3に流入するとして計算する。平均溶質濃度は、ミクロ偏析を求めるための計算式を積分するなどして求めることができる。
固相率の範囲は以下のように決定することができる。固相率の範囲の最小値は、空隙3の形成時の形成位置の鋳片中心部の固相率とする。これは、空隙3の形成の原因となるバルジングなどが発生するときの、鋳片中心部の固相率として求めることができる。この場合、空隙形成時の鋳片中心部の固相率を、0.05ないし0.3として計算を行うことが経験上、妥当である。一方、固相率の範囲の最大値は、一般に、流動限界固相率として知られている0.7前後の値を使用することが適当である。厳密には、凝固組織の形態や空隙形成状況などによって、どの程度の固相率に相当する残溶鋼2までが空隙3に吸引・流入するかは変化するが、それを正確に把握することは一般的には困難であるし、多くの実験例などから求められた流動限界固相率の値を用いることは妥当である。
尚、上記のミクロ偏析の計算において、ミクロ偏析を表す式として、Scheilの式(液相完全混合、固相拡散無視)を用いることも可能であるが、固相内拡散の速いフェライト相の凝固を扱う場合には、固相内拡散を考慮した式(例えば、Brody-Flemingsの式)を用いて計算したほうがより正確に求められることになる。しかし、ミクロ偏析の計算で、どの式を用いるかによって生じる結果の差異は、高固相率側(特に固相率0.9以上)で顕著であり、本発明の考え方のように、一般的に固相率0.7程度とされる流動限界固相率までの範囲で計算を行う場合には、用いるミクロ偏析の式による結果の差は小さく、どちらを用いても構わない。
上記の計算によって、形成された空隙3に溶質濃度の濃化した残溶鋼2が流入して形成される偏析スポット5の平均的な溶質濃度が計算可能となる(図1(C)参照)。
次に、その偏析スポット5の内部での更なる凝固の進行に伴うミクロ偏析を計算し、中心偏析部6における溶質の濃化程度を求める(図1(D)参照)。この偏析スポット5の内部での凝固計算については、上記計算により求めた偏析スポット5へ流入する残溶鋼2の溶質濃度を初期値として、凝固の進行に伴う溶質の分配についての計算を行う。
一般的には、前述のScheilの式やBrody-Flemingsの式などのミクロ偏析を表す式を用いて計算することができる。この場合、固相内拡散の速いフェライト相のような凝固を扱う場合には、固相内拡散を考慮した式(例えば、Brody-Flemingsの式)を用いて計算したほうがより正確に求められることになる。しかし、ミクロ偏析の計算で、どの式を用いるかによって生じる結果の差異は、高固相率側(特に固相率0.9以上)で顕著である。本発明においては、以下に示すように、極端な高固相率側まで計算する必要がないため、つまり或る程度の面積を有する範囲の偏析を考えればよく、一般的には、用いるミクロ偏析の式による結果の差は大きくない。
すなわち、上記計算方法において、最終的な偏析度を評価する際の、偏析スポット5での凝固率(固相率)を、偏析の分析を行うための分析器機の分析面積に合わせて設定し、設定した凝固率(固相率)におけるミクロ偏析の偏析度で評価することが望ましい。例えば、鋳片段階での偏析分析を行う際、対象とする鋳片の偏析スポット5の大きさが500μmで、分析を行う機器がX線マイクロアナライザ(EPMA)であり、そのビーム径が50μmである場合、凝固率(固相率)を0.9とすると、液相の大きさが約50μmとなってX線マイクロアナライザのビーム径と同等になり、計算結果と分析結果とを比較・対比することができる。
上記計算による偏析スポット5の偏析度は、凝固後の溶質の拡散を考慮したものではなく、凝固直後の数値である。実際の鋳片は、凝固後、数時間或いは十数時間費やして常温まで温度降下する。この間に、鋳片では固相内拡散が生じ、偏析度は低下する。特にCは、固相内での拡散速度が速く、偏析度が低下する。この理由から、実際の鋳片の偏析度を調査すると、Mnの偏析度はCの偏析度の0.5〜0.6倍、Pの偏析度はCの偏析度の2.0〜2.6倍となる。従って、鋼の連続鋳造鋳片の中心偏析を予測するに当たり、Mnの偏析度がCの偏析度の0.5〜0.6倍、Pの偏析度がCの偏析度の2.0〜2.6倍となるように、計算により得られたCの偏析度を修正することが好ましい。このように修正することで、より一層中心偏析を精度良く予測することができる。尚、平衡分配係数などの考え方に従えば、MnはCよりも偏析程度が軽く、PはCと同等かCよりも偏析しやすい傾向にあることは自明であり、その程度を具体的に比較評価するために、このような定量化は極めて有効である。
そして、上記に説明した中心偏析の予測方法を用いることによって、製造される鋳片の偏析レベルが把握でき、把握した偏析レベルが品質上要求される水準を満たさないときには、鋳造条件を変更して再度偏析レベルを計算し、品質上要求される水準を満たす鋳造条件を選択し、その選択した鋳造条件で鋳造することによって、中心偏析の軽微な鋳片を安定して製造することが可能となる。
このように、本発明によれば、連続鋳造機の設備的条件や連続鋳造操業時の各種鋳造条件を反映させて、鋳片の中心偏析の程度を定量的に予測・評価することが可能となり、その結果、事前に最適な鋳造条件を選択して鋳造することが可能となり、中心偏析の少ない高品質の鋳片を安定して製造することが可能となる。
C:0.05質量%(以下「%」と記す)、Mn:1.35%、P:0.003%、Si:0.30%、Cu:0.01%、Ni:0.27%の化学成分である鋳片の中心偏析を、本発明を用いて予測した結果を説明する。この成分系では、凝固はδフェライト単相で進行・完了する。
この成分系における各合金元素の平衡分配係数としては、熱力学計算ソフトで求められた以下の値を使用した。すなわち、各合金元素の平衡分配係数は、それぞれ、C:0.16、Mn:0.69、P:0.14、Si:0.57、Cu:0.80、Ni:0.81である。
ここで、前述した森田による、両端固定の弾性梁が等分布荷重を受けるというモデルに基づく、下記の(1)式に示すバルジング量の計算式を用いて、対象とする連続鋳造機におけるバルジング量を計算した。但し、(1)式において、δ:ロール間のバルジング量、P:溶鋼静圧、E:ヤング率、L:ロールピッチ、s:凝固シェル厚である。
バルジング量の計算結果を図2に示す。図2に示すように、最終凝固部近傍におけるバルジング量は、0.3〜0.5mm程度となることが分かった。また、対象とする連続鋳造機の実鋳片を調査したところ、マクロ偏析粒のサイズは最大で500μm程度であったことから、鋳片の中心偏析を予測するに当たり、空隙のサイズを500μmと仮定した。
そこで、本発明の計算モデルにおいては、想定する連続鋳造条件で形成される空隙のサイズを500μmとし、また、空隙形成位置の鋳片中心部の固相率を0.1として、固相率が0.1から流動限界固相率(固相率:0.7)までの範囲の各固相率における液相の溶質濃度を平均化した値と同一の溶質濃度の残溶鋼が前記500μmの空隙に流入集積した場合に、その偏析スポットの偏析度を各元素について、前述のScheilの式を用いて計算した。計算結果は以下の値になった。すなわち、偏析度は、それぞれ、C:1.39、Mn:1.16、P:1.54、Si:1.23、Cu:1.10、Ni:1.09であった。但し、Cのミクロ偏析の計算には、平衡凝固の式(液相・固相完全混合)を用いている。
ここで、この鋳片の中心偏析(マクロ偏析)を、ビーム径50μmのX線マイクロアナライザで分析する場合、その分析条件で検出される最大偏析度は、500μmの偏析スポットが残り50μmまで凝固したときの残溶鋼の偏析度ということになる。換言すれば、偏析スポット内での凝固率が0.9の時点の偏析度となる。この考え方で、凝固率が0.9の時点での各元素の偏析度(50μmの最大偏析部の濃度の、もともとの溶鋼濃度に対する濃化倍率)を計算すると、以下のようになった。すなわち、偏析度は、それぞれ、C:5.69、Mn:2.37、P:11.18、Si:3.32、Cu:1.74、Ni:1.70であった。
ここで、Cに関しては、固相内拡散が速いため、鋳片の熱処理などによって、偏析度は低下する。本発明の計算モデルを使用する場合、結果と実際との対応には、このような影響をも考慮する必要がある。例えば、上記鋳片が鋳造後、1100℃×2時間の熱処理を受ける場合、他の元素はほとんど拡散せず、偏析度は変化しないが、Cについては最大偏析度が4.46まで緩和された。この計算結果において、Mnの偏析度はCの偏析度の0.5〜0.6倍、Pの偏析度はCの偏析度の2.4〜2.6倍の範囲に合致していた。
本発明の計算モデルの概念を説明する図である。 バルジング量の計算結果を示す図である。
符号の説明
1 デンドライト状柱状晶
2 残溶鋼
3 空隙
4 移動する残溶鋼
5 偏析スポット
6 中心偏析部

Claims (6)

  1. 鋼の連続鋳造鋳片の中心偏析を予測するに当たり、連続鋳造機のロール配置及び鋳片の鋳造条件に基づいてバルジング及び凝固収縮によって形成される最終凝固部における空隙の大きさを推定し、次いで、前記空隙の形成位置での鋳片中心部の固相率から流動限界固相率までの範囲の固相率に該当する残溶鋼の平均溶質濃度を算出し、この平均溶質濃度の残溶鋼が前記空隙を充填したとして、充填した残溶鋼の凝固進行に伴うミクロ偏析を計算し、このミクロ偏析の計算値に基づいて鋳片の中心偏析を予測することを特徴とする、連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法。
  2. 前記空隙の形成位置での鋳片中心部の固相率を0.05ないし0.3として計算することを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法。
  3. 前記空隙の大きさを400μmないし1500μmとして計算することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法。
  4. 前記ミクロ偏析を計算する際に、空隙内の最終凝固部の面積が、鋳片の偏析を分析するための分析機器の分析面積と一致するように、ミクロ偏析計算時の凝固率を決定し、当該凝固率でミクロ偏析を計算することを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法。
  5. Mnの偏析度がCの偏析度の0.5〜0.6倍、Pの偏析度がCの偏析度の2.0〜2.6倍となるように、計算により得られたCの偏析度を修正することを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載の連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法。
  6. 連続鋳造機で溶鋼を鋳造する前に、請求項1ないし請求項5の何れか1つに記載の連続鋳造鋳片の中心偏析予測方法を用いて中心偏析を予測し、予測される中心偏析が品質上要求される水準を満たすように鋳造条件を選択し、選択した鋳造条件で連続鋳造することを特徴とする、連続鋳造鋳片の製造方法。
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