以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
図1は一例として運転席におけるシートベルト装置の装備状態を示し、図2はシートベルト用のリトラクタの構成を示し、図3は車両のシートベルト装置の制御システムの全体的な構成を示す。
図1において、シートベルト装置10は、乗員11の身体を座席12に拘束するベルト(ウェビング)13を備える。ベルト13は、乗員11の上体を拘束するベルト部分13aと、乗員11の腰部を拘束するベルト部分13bとから成る。ベルト部分13bの一端はアンカープレート14により車室下部の車体部分に固定されている。ベルト部分13aは、乗員11の肩近傍の箇所に設けられたスルーアンカー15で折り返され、その端部はリトラクタ16のベルトリールに連結されている。ベルト13の他方の共通端部にはタングプレート17が取り付けられている。このタングプレート17は、座席12の下側縁部に固定されたバックル18に着脱自在である。バックル18には、タングプレート17の連結を検出するバックルスイッチ19が設けられている。
図2に、シートベルト用のリトラクタ16の要部構成を示す。リトラクタ16は、ハウジング21内に回転自在に設けられたベルトリール(スピンドル)22と、ベルトリール22を回転駆動するモータ23とを備えている。ベルトリール22にはベルト13の上記ベルト部分13aの端部が結合され、ベルト部分13aはベルトリール22で巻き取られる。ベルトリール22の軸22aは動力伝達機構(ギヤ機構)24を介してモータ23の駆動軸23aに接続される。ベルトリール22は、動力伝達機構24を経由してモータ23で回転駆動される。またリトラクタ16は、ベルトリール22の軸22aに接続された巻取り位置検知部25を備える。
巻取り位置検知部25は、好ましくは、回転角センサを利用して構成される。回転角センサには、例えば、磁気ディスクと2個のホールICとを組み合わせて成る磁気センサが利用される。この回転角センサの最小分解角度は例えば4°であり、ベルトの長さに換算すると1.3〜1.6mm程度である。なお巻取り位置検知部25としては、回転角センサの代わりに、ベルト長センサを用いることもできる。
巻取り位置検知部25によれば、内蔵された回転角センサによってベルトリール22の回転角を検出し、これによりベルトリール22によるベルト巻取り位置(回転角)または回転位置を検知することが可能となる。巻取り位置検知部25で検知される回転角はベルト巻取り位置に対応する。また回転角に基づいてその変化を算出すると、回転速度が得られる。この回転速度はベルトの巻取り速度に対応する。巻取り位置検知部25から出力されるベルト巻取り位置に係る検知信号は制御装置26に入力される。
また電源27からモータ23へ供給される給電線には、通電量調整部28と電流センサ29が設けられている。通電量調整部28は、制御装置26の制御指令に従ってモータ23の駆動電流であるモータ通電量(I1)を調整する。電流センサ29は当該モータ通電量(I1)を検知する。電流センサ29から出力された検知信号は制御装置26に入力される。
本実施形態に係る制御装置26に基づくモータ23の駆動制御によれば、通常では巻取り位置に基づく制御を行い、所定条件下でモータ通電量に基づく制御を行う。すなわち、制御装置26は、巻取り位置検知部25から与えられる入力信号に基づいて目標巻取り速度(モータの目標回転速度)となるようにフィードバック制御するベルト巻取り位置に基づく制御モード(「巻取り速度制御モード」と記す)での制御機能と、電流センサ29で得られたモータ通電量I1をモニタし、所要のモータ駆動量を発生させるため当該モータ通電量を、電流目標値算出手段等で算出して設定された一定の目標値にするようにフィードバック制御する制御モード(「定電流制御モード」と記す)での制御機能とを有している。
制御装置26によってベルト巻取り動作等が制御されるリトラクタ16は、乗員11の位置および姿勢を保持するための電気式プリテンショナとして構成されている。
上記のシートベルト装置10およびこれに含まれるリトラクタ16等は、運転席側の装置であったが、助手席側にも同様なシートベルト装置およびリトラクタ等が装備されている。以下において「R側」は運転席側、「L側」は助手席側とする。
図3のブロック図を参照して、シートベルト装置10等の制御システムをハードウェアの観点から説明する。
図3において、前述した制御装置26はCPU等で構成されている。制御装置26を含むブロック30は、シートベルトによって乗員11の位置・姿勢を保持するための電気式プリテンショナユニットを示している。ブロック30では、制御装置(CPU)26の入力側に電源部31、車内ネットワーク(CAN)通信部32、回転角インターフェース(回転角I/F)部33、通信部34を備え、その出力側にR側モータ駆動制御部35、L側モータ駆動制御部36、記録部37を備えている。記録部37は各種のデータやプログラムを格納しているメモリである。
さらにブロック30の入力側には、シートベルト用リトラクタの一例として上記のリトラクタ16を示すブロックが設けられている。リトラクタ16は、前述した巻取り位置検知部25から出力される検知信号を制御装置26に送信するための回転角インターフェース(回転角I/F)部41を含む。回転角インターフェース部41は、ブロック30内の上記回転角インターフェース部33に接続され、回転角インターフェース部33に対して検知信号を送る。上記のリトラクタ16は、運転席側および助手席側等のそれぞれについて設けられている。
ブロック30の入力側には、さらに、ACC(Adaptive Cruise Control)ユニット(障害物検知装置等の制御ユニット)42、VSA(Vehicle Stability Assist)ユニット(車両挙動安定化制御ユニット)43、FI/AT(Fuel Injection / Automatic Transmission)ユニット44、SRS(Supplement Restraint System)ユニット(補助拘束装置ユニット)45等が設けられている。これらの入力側要素の中には、車速センサ等の車両走行状態検出ユニットも含まれる。ACCユニット42、VSAユニット43、FI/ATユニット44等は車内ネットワーク46を介してそれらの出力信号を車内ネットワーク通信部32に供給する。SRSユニット45は、R側バックル47RおよびL側バックル47Lからの各信号を受けるSRS制御部45aと、通信部45bとを有している。ここでR側バックル47Rは運転席側の上記バックル17に相当し、L側バックル47Lは助手席側に装備されたシートベルト装置のバックルである。R側バックル47RおよびL側バックル47Lから出力される各信号は、内蔵されるバックルスイッチの検知信号である。SRS制御部45aは、R側バックル47RまたはL側バックル47Lからの信号を受けると、通信部45bを介してその信号をブロック30の通信部32に送信する。またSRSユニット45は、車両走行時にシートベルトが正規に使用されていない場合には、警告灯48に対して警告信号を供給する。
前述した電流センサ29から出力された検知信号は、電流I/F部38を経由してディジタル信号として制御装置26内に供給される。
ブロック30の出力側には、R側モータ51とL側モータ52が設けられる。R側モータ51は、運転席側のシートベルト装置10の駆動用モータであり、R側モータ駆動制御部35に対応して配置されている。R側モータ駆動制御部35は、制御装置26からの制御指令信号に基づいて上記の電源(+V)27からの通電量を制御してR側モータ51に対して駆動電流を供給する。なおブロック53は接地部である。またL側モータ52は、助手席のシートベルト装置10の駆動用モータであり、L側モータ駆動制御部36に対応して配置されている。L側モータ駆動制御部36は、制御装置26からの制御指令信号に基づいて電源(+V)54からの通電量を制御してL側モータ52に対して駆動電流を供給する。またブロック55は接地部である。上記の接地部53,55は、車体の一部をなす接地端子である。
図4は、本実施形態に係るシートベルト装置10の制御システムの基本的な構成を概念的に示した機能ブロック図である。この制御システムは、主要素として、前述した巻取り位置検知部25および電流センサ29と、車両走行状態検知部61と、車両走行状態判定部62と、シートベルト装置制御部63と、ベルト駆動部64とから構成されている。
車両走行状態検知部61としては、車体前後方向加速度センサ、車体左右方向(横方向)加速度センサ、車速センサ、舵角センサ、車輪速センサ、ロール角センサ、旋回方向センサなどの複数の各種センサのうちの少なくともいずれか1つが用いられる。
車両走行状態判定部62は、前述の制御装置26の演算処理機能により実現され、車両走行状態検知部61から供給される検知信号を、予め用意された基準値と比較することにより自車の走行状態についての判定処理を行う。
シートベルト装置制御部63は、前述した制御装置26の演算処理機能と、R側モータ駆動制御部35およびL側モータ駆動制御部36とから構成されるものである。シートベルト装置制御部63は、主要な制御機能要素として、上記の巻取り速度制御モードを実行する手段(巻取り速度制御実行手段)63aと、上記の定電流制御モードを実行する手段(定電流制御実行手段)63bとを有している。またベルト駆動部64は、前述のリトラクタ16であり、より詳しくは前述のR側モータ51とL側モータ52である。
図5と図6を参照して本実施形態に係るシートベルト装置10の基本的な動作制御を説明する。図5はシートベルト装置制御部63によって実施される基本動作のフローチャートを示す。この基本動作は、装着状態にあったシートベルトをバックル解除を行って外し、その後にリトラクタで巻き取るときの動作である。また図6は、バックル解除で外したシートベルトをリトラクタで巻き取らせて収納動作させるときの制御モードの変化を示すグラフである。図6の座標系において、横軸は「巻取り位置」を示し、縦軸は「目標巻取り速度(モータの目標回転速度)」を示す。また図6の座標系において、横軸の原点位置に相当する箇所は制御動作上「バックル解除」を意味している。
図5において、最初の判定ステップS101ではリトラクタ16によるベルト巻取り動作についての「作動要求」があるか否かが判定される。すなわち、装着状態のシートベルト3について「バックル解除」がなされたとき、バックルスイッチ19のオフ状態により「作動要求」が発せられる。判定ステップS101の実行は提起的に行われる。判定ステップS101でYESのときには次の判定ステップS102に進み、NOであるときには当該処理のプロセスを終了する。
次の判定ステップS102では、上記のベルト巻取り動作の作動要求について、ベルト巻取り速度につき所定の巻取り速度以下であることの制御要求があるか否かが判定される。ここで「所定の巻取り速度」としては例えば20mm/秒である。ベルト巻取り速度については、前述した巻取り位置検知部25で得られるベルト巻取り位置に係る検知信号に基づいて、巻取り位置の変化分としてのベルト巻取り速度に係る情報が取得される。
判定ステップ102で判定される「所定巻取り速度以下」の技術的な意味は、巻取り位置検知部25で検知された巻取り位置の情報が制御装置にフィードバックされ、そのデータに基づいて算出されたベルト巻取り速度が或る低速度状態(例えば20mm/秒)になったか否かということである。この低速度状態は、例えばベルトを収納する動作でその巻取り速度が遅くなった場合には、巻取り速度制御モードでの制御では目標巻取り速度を一定に保持することが困難になる基準となる速度状態である。従ってシートベルトの巻取り動作では、原則的に巻取り速度制御モードで制御を実行することとし、上記の低速度状態になったときには巻取り速度制御モードから定電流制御モードへ移行するように制御する。
図6に示すように、バックル解除の後、ベルトの巻取り速度は次第に低下してくる。実際上、回転角センサで構成される巻取り位置検知部25によれば、出力される1パルスはベルトの引出し・巻取り量に換算すると1mmであり、例えば、巻取り速度を20mm/秒の一定速度で実現しようとする場合、1000ミリ秒で20パルスが必要となる。このため、20mm/秒以下の低速度での巻取り速度制御モードでのフィードバック制御による巻取り動作制御では、パルス間隔が広くなり、フィードバック制御のための間隔が粗くなる。その結果巻取り速度制御モードでの巻取り動作の制御では、ベルトの目標巻取り速度を一定に保つことができなくなる。さらに、低速ではフィードバック制御が不連続になる。その理由は、モータに供給される駆動電流が小さくなると、モータに発生するトルクが小さくなり、モータの駆動力がベルトリールの回転に反映されるまでの応答性が鈍くなるからである。
そこで前述したように、ベルト巻取り動作において、所定の低速度状態(20mm/秒)以下になったときには、巻取り動作の制御を、巻取り速度制御モードから定電流制御モードに移行させ、シートベルトの巻取り速度を一定に保持する。
上記の判定ステップS102でNOであるときには巻取り速度制御モードに基づく回転角フィードバック制御を実行し(ステップS103)、YESであるときには定電流制御モードに基づく定電流フィードバック制御を実行する(ステップS104)。
ステップS103またはステップS104が実行された後、制御の継続が必要であるかが判定され(ステップS105)、YESのときには上記の制御ステップを繰返し、NOのときには駆動を停止する(ステップS106)。
図6では、範囲71で実行される制御が巻取り速度制御モードに基づいて実行されるベルト巻取り制御である。この範囲71は、「バックル解除」を起点(原点O)としており、ベルト巻取り動作制御での目標巻取り速度は次第に低下してくる。巻取り位置が点Aの位置に来ると、当該点Aは上記の低速度状態すなわち20mm/秒に相当するものであり、ここで制御が巻取り速度制御モードから定電流制御モードへ切り替えられ、制御モードが変更される。点A以降の範囲72では定電流制御モードでの巻取り制御が実行される。点Aに対応するベルト巻取り速度Vsは上記の20mm/秒である。
図5に示した制御手順では、巻取り位置検知部25で検知されたベルト13の巻取り位置(回転角)を基準(点Aに相当)にして制御モードを切り替えるようにしていたが、切替えの基準は巻取り速度(回転速度)によって設定することもできる。
次に、図7に示したフローチャートを参照して、シートベルト装置制御部63によって実施されるシートベルト装置10の他の動作制御の例を説明する。図7に示した制御は、目標位置追従制御において、制御途中にベルトの巻取り速度が規定される場合の制御である。この場合においても、ベルトの巻取り動作での制御が主要な制御事項である。
図7のフローチャートでの初期の部分は、乗員11が座席12に座り、ベルト13を自身の体に装着してタングプレート17をバックル18に接続し、バックルスイッチ19がオンした以後の制御動作の流れを示している。なおこの例ではR側モータ51の例で説明する。
乗員11が座席12に座り、ベルト13を体に巻き付け、タングプレート17をバックル18(R側バックル47R)に結合すると、ベルト13が乗員11の体に装着される。このとき、バックルスイッチ19がオンする(ステップS11)。
乗員11の体にベルトが装着されたシートベルト装置10では、基本的な動作として、ステップS12で、乗員11の個人的な情報と設定情報とが取得される。乗員情報と設定情報は事前に用意されており、図3に示した記録部37に保持されているものとする。乗員情報としては、性別情報、体格情報等である。設定情報としては、乗員11の意思により好みとして設定された情報である。
次に続くステップS13,S14では、取得した乗員情報および設定情報に基づいて、R側モータ51を動作させ、ベルトリール22によるベルト巻取作動を行い(ステップS13)、シートベルト装着のフィット状態が良好になるまで(ステップS14)調整が行われる。判定ステップS14でYESと判定された場合には、基準位置が記憶される(ステップS15)。当該基準位置に係るデータは上記の記録部37に保存される。
次に、判定ステップS16において、車両の走行状態について変化があるか否かが判定される。判定ステップ16でNOである場合にはこの制御動作フローはすぐに終了し、YESである場合にはステップS17以降が実行される。
車両の走行状態の変化を確認する判定ステップS16は、後述するように、車両走行中であってシートベルト装置10の適正動作制御が要求されている間は、定期的に実行される。
判定ステップS16による判定は、主に車両走行状態検知部61と車両走行状態判定部62により行われる。判定ステップS16によって判定される車両走行状態の内容には種々のものが含まれる。「車両の走行状態」としては、例えば、横滑り、急減速等の緊急状態の他、やや大きな操舵操作・アクセル操作等の通常運転状態の変化が含まれる。また、乗員が左右に振られるような走行状態もある。例えば、横加速度が所定以上になった場合(かつロック機構が作動しないような値程度が好ましい)、所定以上のステアリング操作があった場合、または旋回中に車輪に空転が生じた場合等である。なお、上述のステアリング操作には、乗員によるものの他、自動操舵および外力による走向の変化も含まれる。
判定ステップS16において「車両の走行状態に変化あり」と判定されたときには、当該車両の走行状態の変化に対応して予め設定されているシートベルト拘束状態に対応する目標位置の設定を行う(ステップS17)。通常の場合、車両の走行状態が不安定になり緊急状態が発生するので、ベルト拘束を高める方向で目標位置が設定される。ステップS17で目標位置が設定されると、当該目標位置に対応するようにR側モータ51の巻取り動作を制御する上でのモータ保持電流が決定される。次のステップS18では、R側モータ51によるベルト巻取り量を変える保持電流の制御が開始される。
シートベルト装置10の基本的な動作例として、R側モータ51は所要の通電量で駆動され、これによりベルトリール22がベルト13のベルト部分13aを巻取り、当該ベルト部分13aをリトラクタ16に引き込む。R側モータ51の所要の通電量を保持電流として維持することにより、ベルト巻取り量が望ましい目標位置に設定される。
目標位置に設定するための保持電流の制御は、より詳しくは、図7に示すようにステップS19〜S26,S31,S32によって、制御対象である保持電流で決まる「現在値」が「目標位置」と安定した状態で一致するまでベルト巻取りの制御が継続される。すなわち、判定ステップS19において当該現在値が目標位置と一致しないときには、次の判定ステップS20で両者の差(ずれ)が所定以上であるか否かを判定する。判定ステップS20でYESの場合には、判定ステップS21に移行する。判定ステップS20でNOの場合には、判定ステップS22でその時点までの補正量が許容値以下であるか否かが判定される。補正量が許容値以上である場合には上記のステップS21に移行する。補正量が許容値を超えない場合には、目標位置が修正される(ステップS23)。目標位置が修正された後ステップS21に移行する。
判定ステップS21では、現在値と目標位置との大小関係が判定される。現在値が目標位置よりも小さい場合(YESの場合)にはステップS31,S32,S34を実行することを条件にモータ通電量を増加し(ステップS24)、現在値が目標値よりも大きい場合(NOの場合)には即座にモータ通電量を減少する(ステップS25)。ステップS24,S25が実行された後には、判定ステップS26に移行する。
通電量増加のステップS24を実行するにあたっては、まずステップS31で「通電量上限設定」のルーチン処理を実行する。ステップS31によるルーチン処理によってモータへの通電量の上限(上限電流値)が設定される。ステップS31の詳細内容は図8に示され、後述される。モータ通電量の上限が設定されると、当該上限は後のステップS32,S34等で使用される。
上記の「通電量上限設定」のルーチン処理が行われる理由は次の通りである。シートベルトの巻取り速度を規定する方法としては「通電量を規定する」という制御の方法と「巻取り速度」自体を目標として制御するという方法がある。図7に示した制御では、目標位置を基準にした制御を行うことが基本であるので、「巻取り速度」を直接に見るのではなく、通電量の上限を設定することで目標速度の上限を定めるようにしている。図8は、当該目標速度の上限を定めるためのフローチャートを示している。
「通電量上限設定」のルーチンステップS31が実行された後、設定された「上限」が所定値以下であるか否かが判定され(ステップS32)、所定値以下であると判定された場合(YES)には、所定の定電流でベルト巻取り動作制御を実行する(ステップS33)。ステップS33の処理の実行後には、判定ステップS26に移行する。またステップ判定ステップS32でNOであるときには、次の判定ステップS34に移行する。
判定ステップS34では、現在のモータ通電量と変化分(増加分)を加えた電流値が、設定されている上限(巻取り速度)を超えないか否かが判定される。判定ステップS34でYESであるときには、通電量を適宜な量だけ増加させるステップS24が実行される。判定ステップS34でNOであるときには、上記の判定ステップS26に移行する。こうして、判定ステップS34を設けることにより、目標位置との位置ずれがあっても、モータ通電量を、設定された上限近傍で維持することによりベルトの巻取り速度を所定速度以下に維持することができる。
その後、車両の走行状態が安定しているか否かが判定される(判定ステップS26)。走行状態が安定していない場合にはステップS19に戻り、上記のステップS19〜S25,S31〜S34が繰り返される。走行状態が安定しない間は、現在値と目標位置を一致させる制御が行われる。
判定ステップS19において現在値と目標位置とが一致したときには判定ステップS26に即座に移行する。
判定ステップS26において走行状態が安定であると判定された場合には、次の判定ステップS27に移行する。判定ステップ27では、シートベルト装置10のリトラクタ16においてロック機構(図示せず)が作動しているか否かが判定される。ロック機構が作動していない場合には判定ステップS29に移行し、ロック機構が作動している場合にはロック解除制御(ステップS28)を実行した後に判定ステップS29に移行する。なおロック機構は図2では示さなかったが、通常、ベルトリール22の軸22aに関連させて装備されている。
判定ステップS29では、車両走行中であってシートベルト装置10の適正動作制御が必要か否かを判定する。判定ステップS29において、YESの場合には車両の走行状態の変化を確認する判定ステップS16に戻り、NOの場合にはシートベルト装置10のベルト巻取りに係る動作制御を終了する。
上記のごとくしてR側モータ51を利用して成る電気式プリテンショナが構成され、この電気式プリテンショナによりベルト13の巻取り動作制御を行うことにより、乗員11の位置および姿勢は適正に保持される。この場合にも、巻取り速度が低下したときには図5と図6を参照して説明したベルト巻取りの動作制御が実行される。
図8を参照して上記の処理ステップS31の内容を説明する。図8に示したフローチャートによれば、判定ステップS41に示すごとく走行状態の変化量の大小に応じてまず上限値の範囲を大きく振分け、さらにその後のステップS42,S43,S44では「目標とのずれ量」の大小に応じて上限値の範囲をさらに細かく振分けている。その結果、最終的には4つの段階で通電量の上限値が設定される。第1は通電量の上限がない場合(ステップS45)、第2は通電量の上限値が大きい場合(ステップS46)、第3は通電量の上限値が中程度である場合(ステップS47,S48)、第4は通電量の上限値が小程度である場合(ステップS49)である。
上記において、判定ステップS41では走行状態変化量ではなく、その代わりに乗員体格等で基準を決めることもできる。またステップS42〜S44での巻取り速度の基準は例えば前述した巻取り速度Vsである。なおモータ通電量(PWM duty)の上限を設定することにより巻取り速度の最大値を規定することができる。
次に図9に示したフローチャートを参照して、シートベルト装置制御部63によって実施されるシートベルト装置10の更なる他の動作制御の例を説明する。図9に示した制御は、最初からベルト巻取り速度に基づいて制御(目標速度追従制御)を行う場合において、目標とする巻取り速度が途中で変更され、かつ当該巻取り速度が所定値以下になる場合を示している。
図9において、最初のステップS51で作動トリガが有効であるか否かが判定される。判定ステップS51の「作動トリガ」はバックル18の結合状態が解除されたことである。この作動トリガが有効であるときには、まず最初に、モータ通電量が所定電流以上になるように電流制御でベルト巻取りを行い、その後(制御の経過時間tがt2になった時)にベルト巻取り速度制御に切り替え、そこから経時的にベルト巻取り速度を低下させるように目標巻取り速度を時間変化させながらベルト巻取りを行う。
そこで、判定ステップS51でYESと判定された後に、電流制御によるベルト巻取りのための「通電開始」のステップS52が実行される。次のステップS53でタイマをスタートさせる。このときタイマの時間(t)はt0として設定される。さらに次のステップS54ではモータの通電量(I)をI0として設定する。
判定ステップS55では、タイマによって計時された時間(t)が、予め設定された所定の時間t1以上であって所定の時間t2未満であるか否かが判定される。時間t2は前述のごとく制御の内容を電流制御からベルト巻取り速度制御に切り替えるための経過時間を意味している。
上記の時間tが、時間t1以上t2未満であるときには、モータ通電量IがI0以上であるか否かが判定され(ステップS56)、I0よりも小さいときにはモータ通電量が増加され(ステップS57)、その後にステップS58に移行する。ステップS56で、モータ通電量Iが電流値I0以上であるときには、即座にステップS58に移行する。また判定ステップS55でNOである場合には、同様にステップS58に移行する。
ステップS58は、タイマによって計時された時間(t)が時間t2に等しいか否かが判定される。判定ステップS58でYESであるときには、t=t2の時のベルト巻取り速度(Vt=t2)を目標とするベルト巻取り速度(Vtarget)とする(ステップS59)。すなわち、作動トリガが有効になり、定電流によるベルト巻取り制御を開始した後、所定時間(t2)が経過したら、その時点でのベルト巻取り速度を初期値とする。判定ステップS58でNOであるときには、次の判定ステップS60に移行する。
判定ステップS60では、タイマによって計時された時間(t)が時間t2より大きいか否かが判定される。判定ステップS60でYESであるときにはステップS61に移行し、NOであるときには判定ステップS68に移行する。
ステップS61では、目標とするベルト巻取り速度(Vtarget)を「Vt=t2−C(t−t2)」という式で求めた値としている。ベルト巻取り速度(Vt=t2)は前述した意味であり、項「C(t−t2)」はゼロに収束させるための要素である。
判定ステップS62では、求めたベルト巻取り速度Vtargetが所定速度V1以下であるか否かが判定される。判定ステップS62でYESである場合には、定電流制御に切り替えられ定電流制御が実行され、モータ通電量(I)は特定の電流値I1にセットされて(ステップS63)、判定ステップS68に移行する。判定ステップS62で、NOである場合には直接に次の判定ステップS64に移行する。
判定ステップS64の後には判定ステップS65が実行される。判定ステップS64ではベルト巻取り速度Vが目標のベルト巻取り速度Vtargetと等しいか否かが判定される。次の判定ステップS65では、判定ステップS64でYESである場合にベルト巻取り速度Vが目標のベルト巻取り速度よりも大きいか否かが判定される。判定ステップS64でNOである場合には判定ステップS65に移行する。判定ステップS65でYESである場合にはモータ通電量が減少され(ステップS67)、NOである場合にはモータ通電量は増加させられる(ステップS66)。その後、判定ステップS68に移行する。
判定ステップS68では、所定の時間(t3)が経過したか否か、または作動トリガが無効になったか否かが判定される。判定ステップS68でYESである場合には、通電停止(ステップS69)を実行して制御を終了する。判定ステップS68でNOである場合にはステップS55の処まで戻ってそれ以降の上記の各ステップを繰り返す。
判定ステップS69は、ベルトの弛みを取り除いた後の処理を意味している。ここでは、所定の時間経過したことにより終了するか、または作動トリガが有効の間、継続して巻取り速度がゼロになるように制御が行われる。
図9に示された上記の制御の内容によれば、バックル18の結合状態が解除された直後のベルトの弛み取りでは、定電流制御なので、乗員が保持していたり、引っかかりがあっても急激な巻取りを行うことはない。また連続的にベルト巻取り速度を低下させることにより、収納位置の近傍での内装材への傷付けを防止することができる。
図10に、図9に示された制御に基づく巻取り速度(V)の変化グラフを示す。図10で横軸は経過時間(t)を意味し、縦軸はベルト巻取り速度(V)を示している。変化グラフ81において、時間領域(A)はステップS55〜S57による制御で生じる変化部分であり、時点(B)はステップS58,S59による制御で生じる変化部分であり、時間領域(C)はステップS60〜S68による制御で生じる変化部分である。
図9に示されたシートベルト制御の内容に従えば、明示的に目標速度が与えられてその値に向けて速度を追従させようとする制御中に、目標速度の値が所定値よりも小さいときには「速度制御」ではなく「電流制御」とする点に特徴がある。すなわち、時刻t2において目標速度が所定値以下であれば、速度に対する追従制御を中止し、I=I1での定電流制御に切り替える。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。