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JP4887866B2 - スピーカ、スピーカネットおよびスピーカネット設計装置 - Google Patents
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スピーカ、スピーカネットおよびスピーカネット設計装置 Download PDF

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Description

本発明は、スピーカおよびスピーカネットに関する。
スピーカには、その構造上の特徴から、いわゆる平面型スピーカといわれる種類に分類されるものがある。代表的なものに、静電型スピーカ(コンデンサスピーカ)がある。静電型スピーカは、特に、軽量、コンパクトに設計することができるという点において注目されている。静電型スピーカとは、典型的には、空隙を隔てて向かい合う2枚の平行平面電極と、電極の間に挿入され両端を固定された導電性のシート状の部材(以下、振動膜という)とから構成されるものである。このようないわゆるプッシュプル型の静電型スピーカにおける発音メカニズムは、典型的には次の通りである。平行平面電極および振動板に所定の電圧を印加すると、生じた電位差によって一方の電極側に引き寄せる力が振動板に働く。振動板は、両端が固定されているがある程度の弾性があるためその中央部分が変位することになり、結果として振動板は撓むことになる。この状態で、電位差を反転させると、振動板には逆方向の力が働き、振動体は逆方向に撓む。こうような電位差の反転を繰り返せば、振動板は振動する。このように、電極に適宜電圧を印加することよって、振動板の振動状態(振動数や振幅など)を変化させることができる。印加電圧値を入力信号に応じて変化させれば、振動板はそれに応じて振動し、結果として振動板から入力信号に対応した音声が発生することになる(特許文献1ないし3等を参照)。発生した楽音は、音響波透過性の良い電極(例えば金属板電極に空けられた貫通孔)を通り抜けて外部に放音される。
しかしながら、静電型スピーカを含むいわゆる平面型のスピーカにおいては、その構造上、発音体(例えば振動膜)にて生成される音響波の放射面積が大きくなるため、通常、振動膜の特性や振動状態に対応して、特定方向に出力レベルの極大値(メインローブおよびサイドローブ)が複数現れるような指向特性を有する音響波が発生することが知られている。
平面型スピーカにおいて、サイドローブの出力レベルが抑制された音響波、あるいは広い指向性の音響波を生成するための方法として、平面型のスピーカをスピーカユニットとして複数設け、各ユニットに供給する入力信号のレベルや遅延などを制御するというスピーカアレイの技術が知られている(非特許文献1を参照)。
特許第3353031号公報 特許第3277498号公報 特公平7−038758号公報 D. B. (Don) KeeleJr.著、"Implementation of Straight-Line and Flat-Panel BeamwidthTransducer (CBT) Loudspeaker Arrays Using Signal Delays" Audio Engineering Society, Convention Paper Presented at the 113th Convention, 2002 October 5/8 L. A., California, USA
しかしながら、例えば静電型スピーカを用いてスピーカアレイを構成する場合、電極および振動膜の組を複数用意するか、もしくは一枚の振動膜を分割してその領域ごとに独立して振動状態を制御できるようにする必要がある。さらに、各スピーカユニットに供給する信号のレベルやディレイを制御する電気回路も必要となる。これでは、スピーカ全体の構造が複雑になり製造コストも嵩む。このように、従来の平面型のスピーカにおいては、簡易な構成で所望の指向特性を実現することはできなかった。
本発明は、上述した背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で所望の指向特性を実現することのできるスピーカおよびスピーカに取り付け可能な音響波の特性を変更する装置を提供することを目的とする。
本発明は、スピーカの放音面を板状部材で覆うスピーカネットにおいて、前記板状部材上に設定される第1から第n(nは正の整数)の領域であって、第k(k=2〜nの整数)の領域は、第(k−1)の領域の周囲を囲うように設定され、前記各領域内においては同一形状の複数の開口部が同一間隔で設けられ、かつ、前記開口部の形状または配置間隔の少なくともいずれかは前記領域ごとに異なり、記スピーカから放音された音響波の各周波数帯における指向特性が均一化されるように、前記第kの領域における前記開口部の断面積または配置間隔の少なくともいずれかは、前記第(k−1)の領域における前記開口部の断面積または配置間隔よりも大きくなっていることを特徴とするスピーカネットを提供する。
本発明によれば、電気的なフィルタ回路を用いることなく、板状部材に領域ごとに異なる大きさまたは配置間隔の異なる孔を形成したスピーカネットを音響波の伝播面に配置することにより、スピーカネットを通過する音響波の空間的な特性を変更することができる。
好ましい態様において、前記第kの領域における前記開口部の断面積または配置間隔の少なくともいずれかは、前記第(k−1)の領域における前記開口部の断面積または配置間隔よりも大きい。
好ましい態様において、前記複数の領域の形状は各々正方形である。別の好ましい態様において、前記複数の領域の形状は各々円である。
本発明は、他の観点において、振動膜と板状電極とを有する静電型スピーカであって、前記板状部材上に設定される第1から第n(nは正の整数)の領域であって、第k(k=2〜nの整数)の領域は、第(k−1)の領域の周囲を囲うように設定され、前記各領域内においては同一形状の複数の開口部が同一間隔で設けられ、かつ、前記開口部の形状または配置間隔の少なくともいずれかは前記領域ごとに異なり、記スピーカから放音された音響波の各周波数帯における指向特性が均一化されるように、前記第kの領域における前記開口部の断面積または配置間隔の少なくともいずれかは、前記第(k−1)の領域における前記開口部の断面積または配置間隔よりも大きくなっていることを特徴とする静電型スピーカを提供する。
本発明は、さらに他の観点において、スピーカの放音面を板状部材で覆うスピーカネットを設計する装置であって、音響波の指向特性を特定する指向特性特定手段と、前記指向特性特定手段にて特定された指向特性に基づいて、前記板状部材に複数の二次元領域を設定する領域設定手段と、前記領域設定手段にて設定された複数の二次元領域に対応する透過係数を各々算出する係数算出手段と、前記係数算出手段にて算出された透過係数に基づき、前記スピーカから放音された音響波の各周波数帯における指向特性を均一化するために、前記第kの領域における前記開口部の断面積または配置間隔の少なくともいずれかは、前記第(k−1)の領域における前記開口部の断面積または配置間隔よりも大きくなるように、各二次元領域に形成する開口部の形状および配置間隔を決定する手段とを有するスピーカネット設計装置を提供する。
以下、本発明の好適な態様について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る静電型スピーカ1の基本構造の斜視図である。同図に示すように、静電型スピーカ1は、振動膜10とこれに対向する2つの平行平面電極20(以下、単に電極20という)とから大略構成される。
振動膜10は、例えば、PET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)、PP(polypropylene、ポリプロピレン)などのフィルムに金属膜を蒸着しあるいは導電塗料を塗布した例えば厚さ数ミクロン〜数十ミクロン程度の導電性膜であり、塩化ビニル、アクリル(メチルメタアクリレート)、ゴム等の絶縁材料により形成された固定手段(図示せず)において、所定の張力が振動膜10に作用した状態で、例えばその四辺が静電型スピーカ1の筐体(図示せず)に固定される。
電極20は、厚さtの金属板などの導電性板状部材に複数の貫通孔(同図ではHで示されている)を開けたパンチングメタルであって、静電型スピーカ1の筐体(図示せず)に固定される。このとき、振動膜10から両電極20までの距離jは等しくなるように配置されることが好ましい。換言すれば、対向する電極間のちょうど中間の位置が振動膜10(正確には無変位状態における振動膜10)の固定位置となる。
また、静電型スピーカ1は、図示せぬ電源を備え、互いに反対の極性の電圧をそれぞれの電極20に印加するとともに、振動膜10にバイアス電圧を印加することができるようになっている。また、静電型スピーカ1は、外部から音声信号を入力する入力部を備え、この音声信号に応じて印加電圧の反転タイミングを変化させることにより、振動膜10に音声信号に応じた振動をさせることができるようになっている。振動膜10の振動によって発生した音響波は、電極20を通り抜けてスピーカ外部に放音される。
なお、図1には、電極20を2つ用いて振動膜10に引力と斥力とを同時に振動膜10に作用させる場合について示してあるが、電極20を1つのみ用いてよい。要は、電極20を用いて入力音声信号の時間変化に応じて時間変化する電場が形成され、帯電した振動膜10がこの電場から静電力をうけて変位することができる状態にあればよい。すなわち、本発明においては、電気伝導度や弾性率といった振動膜10の物質定数、振動膜10の固定方法や振動膜10におよぼす張力の大きさなどの要素について限定されない。また、同図においては、両方の電極20には同じように孔が空けられている例を示しているが、これに限らず、一方の電極20(音響波放出側の電極)に孔を形成する一方、反対側(背面)の電極20は孔が開いていない金属板を用いてもよい。すなわち、振動膜10にて発生した音響波がどちらか一方の電極を介して外部に放音されるように構成されていればよい。ただし、金属板上で孔の形成されている振動膜10になるべく均一の静電力を作用させるため、両電極20は同じ構造(すなわち同じ位置に孔が形成された金属板)であることが好ましい。
本発明においては、電極20に形成される孔の構造に特徴があり、この点について以下詳細に説明する。図2は電極20を上方(下方)から見た図である。同図に示すように、電極20においては、外側から順に、換言すれば内側の領域の周囲に外側の領域が形成されるように(内側の領域の周囲を外側の領域が囲うように)、外周が正方形状の領域A、B、C、Dが定義されている。そして、各領域において、同じ大きさ(断面の直径)の孔Ha、Hb、Hc、Hdが複数個、所定のパターンで形成される。このように、本願の電極20においては、同一の孔が一様に分布しているのではなく、孔の大きさや間隔、その配置パターンが電極20上の領域によって異なる(つまり非一様に分布している)ことを特徴とする。なお、ここでいうパターンとは、例えば並列型(碁盤目状)、角千鳥型(45°千鳥抜き)、千鳥型(60°千鳥抜き)などの配列の形状をいう。図2には、全ての領域において並列抜きのパターンで孔が形成されている例を示す。同図において、領域Aにおいては、直径がd、最近接間隔(ピッチ)がaである配列となっている例を示している。このように、本発明においては、音響波の通過面に設けられる電極20に設ける孔の分布パターンを、実現すべき指向特性または周波数特性に応じて設定することにより、この電極を通過する音響波の指向特性や周波数特性を変化させることができるフィルタとしての機能を電極に持たせたことを特徴とする。
電極20への進入前後における音響波指向特性や周波数特性の変化の度合いは、電極20に設けられる孔のパターン(孔の形状や配置位置)によって異なる。以下、上述した領域の数および領域の大きさ(面積)を決定する方法、および孔の配置方法(孔の形状や配置パターン)を決定する方法について詳細に説明する。
これに先立ち、音響波の周波数と、その音響波の発生する振動膜の有効面積と各周波数帯における指向特性と、電極の孔の形状や数と音響波の透過係数との関係を示しておく。なお、特に明示しない限り、孔の形状とは、孔の断面の形状、断面積、直径、深さを含む概念である。また、本発明においては貫通孔の深さも場所に応じて変更しうるが、この場合は当然その部分の電極20の厚さtが場所に応じて変化することになる。
(1)指向性度と周波数と有効面積の関係
指向性係数(音響波の指向性の鋭さを表す指標)Qは、周波数をf、音響波の発生する振動膜の有効面積(図2においては正方形形状である各領域の面積)をSとすると、一般的には次のように表すことができる。
Figure 0004887866
一例としては、振動膜として無限大バッフルを有する半径aの円形ピストン振動を考えた場合、中心軸上の指向性係数は、次のように表せることが知られている。
Figure 0004887866
上式中、cは音速、aは振動板半径、J1は1次ベッセル関数をそれぞれ表す。上式中、g(x)はxの単調増加関数であって、その2回微分値が極大値をとるx(この点を特徴点xとよぶ)が存在する。換言すると、関数g(x)はx=xにおいて傾きが急激に変化する。この関数の概略形状を図3に示す。
以上をまとめると、指向性係数Qは、f*S^(−1/2)の関数であって、周波数fが高いほど、また有効面積Sが小さいほど、音響波の指向性は鋭くなるということである。従って有効面積Sが一定ならは、ある周波数以上になると、指向性が急激に鋭くなる。例えば、S=1mの場合、周波数fが100〜200Hzより小さい帯域においては指向係数Qがほぼ一定となるが、それ以上の周波数帯においては急激に指向係数Qが増大する。
(2)透過係数(TI)と孔の形状や配置などとの関係
振動膜によって発生した音響波の通過面に所定の孔が形成された板(電極20)をおいた場合に、その孔を透過した音響波の出力レベル(換言すれば音響波の減衰のされにくさ)を表す指標TIを、単位面積あたりに形成された孔の数をn、孔の直径をd、電極の厚さをt、最近接する孔の間隔をa、開口率(板において孔が占める面積の割合)をPとし、周波数が一定という条件において、以下のように導入する。
Figure 0004887866
最近接間隔aは配置パターンによって異なるが、開口率を用いて次式のように表される。
Figure 0004887866
ここで、kは配置パターンによって決まる量で、千鳥配置の場合はk=9.5、並列配置の場合はk=8.9である。
(数2)から明らかなように、電極20の厚さtが一様であるとすれば、孔の数が大きく、孔の面積(直径)が大きく、間隔が狭いほど、音響波の透過係数は大きくなる(すなわち、減衰されにくくなる)といえる。また、指標TIが同じ値であれば、周波数が高いほど減衰は大きく、指標TIが小さいほど高音域での減衰は大きくなることが知られている。
上述したように、仮に電極20上に同じ形状および直径の孔を一定の間隔で配置したとすると、周波数によって指向特性が異なる。具体的には、(数1)で説明したように、低い周波数帯域の音響波は指向性が緩やかであるから幅広い方向に伝播する一方、高周波数帯の音響波は指向性が強く、所定の方向に伝播することになる。
以下では、本発明の静電型スピーカ1を用いて各周波数帯において指向性が一定で、且つ高周波数帯にサイドローブが現れないような指向特性を有する音響波を生成することを目的として、図4および図5を用いて、電極20に形成する孔の形状や配置を決定する場合について説明する。
図4は、本発明に係る孔パターン設計装置100の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、孔パターン設計装置100は、制御部110と入出力I/F120と記憶部130とから構成される。入出力I/F120は、キーボードやディスプレイなどから構成され、ユーザから指向特性に関する指示を受け付ける。記憶部130は、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶装置であって、制御部110において孔の配置や各孔の形状を計算する際に参照される各種情報が格納される。制御部110はCPU等から構成され、機能モジュールとして領域決定部111、透過係数決定部112、孔パターン決定部113を内包する。
図5に孔パターン設計装置100の動作例を示す。まず、ユーザが静電型スピーカ1にて、上述した所望の指向特性に関する情報を入力する(ステップS10)。例えば、各周波数帯域における指向性度や、サイドローブの音圧値が所定値以下となる周波数といった情報である。
続いて、領域決定部111は領域の設定を行う(ステップS20)。具体的には、電極20上に設けるべき領域の数および各領域の直径を決定する。まず、分割する周波数帯域の数および値を所定の方法で決定する。これらの値はステップS10においてユーザによって指定されてもよいし、固定値として設定されていてもよい。そして、この周波数帯域の数を領域の数と決定する。図2では、分割する帯域の数が4に決定された例を示している。例えば、周波数帯として0〜500Hz(帯域f1)、500Hz〜2000Hz(帯域f2)、2000Hz〜8000Hz(帯域f3)、8000Hz以上(帯域f4)が決定されたとする。
次に、各周波数の音響波に透過させるべき領域を(数1)に基づいて決定する。この例では、各周波数帯域の指向性係数をでできるだけ等しくするという目的に沿って、高い周波数帯ほど内側にある面積Sの小さい領域を割り当てる。すなわち、面積が最小の領域は最も内側にある領域Dであるから、指向特性が最も高い周波数帯に対しては領域Dが割り当てられる。こうして、結果として、帯域f4には領域Dが、帯域f3には領域C〜Dが、帯域f2には領域B〜Dが、帯域f1には領域A〜Dがそれぞれ割り当てられることになる。このようにして、周波数帯と領域とが1対1に対応付けられる。
次に、各領域の面積Sを(数1)を用いて計算する。具体的には、(数2)に基づき各周波数帯において指向係数Qがほぼ一定である領域に対応する面積Sを算出する。具体的には、それぞれ周波数fが与えられたときに特徴点xに対応するSを求めればよい。例えば、f=500Hz以下については全面積であるS=1mに対応すると求まる。このSの値が0〜500Hz(帯域f1)に対応する領域Aの面積となる。このようにして、領域A、B、Cの面積を求める。例えば、f=500Hzに対応するのはS=0.151m、f=2000Hzに対応するのはS=0.009m、f=8000Hzに対応するのはS=0.0006mと算出され、各領域の面積Sが全て決定する。なお、電極の大きさ(最外領域Aの面積)が予め指定されている場合は、求めた各領域の面積に所定の規格化定数を乗じればよい。要は、各領域の面積の比を、その周波数帯における指向係数がなるべく等しくなるように設定するのが好ましい。
次に、各領域に設ける孔の形状や配置間隔などを含む配置パターンを決定する。まず、透過係数決定部112において、各領域について、対応する周波数の値に基づいて透過係数TIの値を決定する(ステップS30)。TIは、上述したように、その領域を通過する音響波の減衰しにくさを表す指標である。ただし、音響波の減衰レベルATは、TIだけではなく周波数に依存する。すなわち、減衰レベルATは周波数fとTIの関数である。本態様においては、指定された指向特性に係るサイドローブ抑制度などの情報に基づいて各周波数帯域に設定すべき減衰レベルATをまず決定し、ここから各領域に対応する周波数(上述した例では500Hz、2000Hz、8000Hz)に対応したTIをそれぞれ決定する。より具体的には、予めATの周波数依存性およびTI依存性をシミュレーションや実験によって予め算出しておき、記憶部30内に図6に示すような減衰レベルとTIと周波数とを対応付けて記憶したテーブルTを格納しておき、このテーブルTを参照してTIを決定する。この結果、例えば、領域A、B、C、DについてそれぞれTIが15、65、3009、10840と決定される。
この例から判るように、本態様においては、各周波数に応じて外側の領域から順に小さなTIが設定される。この結果、電極20には、外側の領域においては、低周波数帯の音響波は減衰することなく通過する一方、高周波数はカットされるような周波数フィルタ機能を有することになる。そして、内側の領域に行くに従って減衰せずに通過する音響波の周波数帯は広くなる。図2の例でいえば、最外の領域Aにおいては最低周波数帯である0〜500Hz以下の音響波のみが通過し、最も内側の領域Dにおいてはほぼ全周波数帯(理想的には10000Hz以上)の音響波が通過するように構成した例を示している。
次に、孔パターン決定部113にて、決定したTIの値に基づいて孔の直径dや間隔aを(数2)および(数3)を用いて算出する(ステップS40)。(数3)から判るように、与えられた1つのTIの値に対してdやaなどの決定の仕方には無数の組み合わせがある。その組み合わせの一例を示したものが図7である。図7(a)は、電極20の厚さtおよび孔の直径dを一定にする一方、孔の間隔aを異ならせた例である。この場合、各領域には同じ大きさの孔が形成されるが、その間隔(すなわち孔の存在確率密度)が領域ごとに異なることになる。このように同じ形状の孔を形成する場合は、加工コストが安くて済むというメリットがある。一方、図7(b)は、各領域においてできるだけ開口率が等しくなるようにdおよびaを決定した例である。この場合、領域ごとに孔の大きさと間隔の両方が異なることになる。このように開口率を一様にすると、振動膜10に作用する静電力が安定するため音質が向上するというメリットがある。
上述の通り、本発明においては、周波数帯域を設定し、周波数帯域ごとに異なる音波放射面積を有する領域を割り当てることによって指向特性を均一化することができる。さらに、各領域において異なる配置分布や大きさももつ孔を形成することで、電極20にいわば複数のローパスフィルタの集合体としての機能を与え、これを音響波の伝播面に設けることで指向性の高い周波数帯域のレベルを減衰させ音響波全体として指向性を鈍化させることができる。
また、上述した例では領域の形状および電極の形状は正方形であるとしたが、例えば図8に示すように円であってもよい。ただし低周波数のみを透過させる効果を生じさせる領域を外縁部に、高周波領域を透過させる領域をその内側に囲うように順次設ける点は同じである。また、孔の形成パターンについても、領域ごとに異ならせても構わない。例えば、図8に示すように、領域Aにおいては孔が角千鳥型で配置されている一方、領域B、C、Dにおいては、孔が同心円状に配置されていてもよい。また、上述した例では、内側の領域を包含するような形でその外側に順次領域を形成したが、領域の形成方法はこれに限らず、例えば、図9に示すように、擬一次元的に囲うように形成してもよい。また、上述したように「領域」という概念を導入して電極の領域を離散化するのではなく、孔の大きさや配置の分布を所望の所望特性に応じて連続的に変化させてもよい。また、孔の形状は円筒形(すなわち断面が円)である必要はない。
上述した例においては、本発明に係る孔の設計方法を静電型スピーカの電極に適用した例を示したが、これに限らない。例えば、本発明の方法で板状部材(材質は問わない)に孔を形成すれば、この板は上述したように指向特性変更フィルタおよび周波数フィルタとして機能する。したがって、この板をスピーカネットとしてスピーカの前面(放音面)に取り付ければ、スピーカから放音された音の指向特性や周波数特性を変化させることができる。ここで異なる孔パターンが形成された複数のスピーカネットを予め用意しておき、音響環境等に応じて要求される指向特性あるいは周波数特性に適合したスピーカネットを選択して取り付けるといった応用が可能であることはいうまでもない。また、このようなスピーカネットを製造するにあたっては、まず板状部材を用意し、これに貫通孔を1つずつ形成していく方法に限られない。要するに、上述した方法に従って音波が透過する領域(開口部)の配置を決定し、それ以外の領域では音波を透過させないようになっていればよく、例えば金属ワイヤ部材を編みこむ等の工程を経ることによってこのような開口部と非開口部とを形成してもよい。
本発明に係る静電型スピーカ1の大略構造の斜視図である。 電極20に形成された孔のパターン例を説明するための図である。 指向性係数を表すグラフである。 本発明に係る孔パターン設計装置100の機能構成を説明するためのブロック図である。 孔パターン設計装置100の動作例を示すブロック図である。 記憶部130に格納されるテーブルTの記憶内容を示す図である。 各領域における孔パターンのデータを示す図である。 各領域における孔パターンのデータを示す図である。 電極20に形成された他の孔のパターン例を説明するための図である。 電極20に形成された他の孔のパターン例を説明するための図である。
符号の説明
1・・・静電型スピーカ、10・・・振動膜、20・・・電極、100・・・孔パターン設計装置、110・・・制御部、111・・・領域決定部、112・・・透過係数決定部、113・・・孔パターン決定部、120・・・入出力I/F、130・・・記憶部。

Claims (5)

  1. スピーカの放音面を板状部材で覆うスピーカネットにおいて、
    前記板状部材上に設定される第1から第n(nは正の整数)の領域であって、第k(k=2〜nの整数)の領域は、第(k−1)の領域の周囲を囲うように設定され、前記各領域内においては同一形状の複数の開口部が同一間隔で設けられ、かつ、前記開口部の形状または配置間隔の少なくともいずれかは前記領域ごとに異なり、
    記スピーカから放音された音響波の各周波数帯における指向特性が均一化されるように、前記第kの領域における前記開口部の断面積または配置間隔の少なくともいずれかは、前記第(k−1)の領域における前記開口部の断面積または配置間隔よりも大きくなっている
    ことを特徴とするスピーカネット。
  2. 前記スピーカは振動膜と当該振動膜と対向して設けられる平面電極とを有する静電スピーカであり、
    前記板状部材は前記電極である
    ことを特徴とする請求項に記載のスピーカネット。
  3. 前記複数の領域の形状は、正方形または円である
    ことを特徴とする請求項1または2のいずれか一つに記載のスピーカネット。
  4. 振動膜と板状電極とを有する静電型スピーカであって、
    前記板状電極上に設定される第1から第n(nは正の整数)の領域であって、第k(k=2〜nの整数)の領域は、第(k−1)の領域の周囲を囲うように設定され、前記各領域内においては同一形状の複数の開口部が同一間隔で設けられ、かつ、前記開口部の形状または配置間隔の少なくともいずれかは前記領域ごとに異なり、
    記スピーカから放音された音響波の各周波数帯における指向特性が均一化されるように、前記第kの領域における前記開口部の断面積または配置間隔の少なくともいずれかは、前記第(k−1)の領域における前記開口部の断面積または配置間隔よりも大きくなっている
    ことを特徴とする静電型スピーカ。
  5. スピーカの放音面を板状部材で覆うスピーカネットを設計する装置であって、
    音響波の指向特性を特定する指向特性特定手段と、
    前記指向特性特定手段にて特定された指向特性に基づいて、前記板状部材に複数の二次元領域を設定する領域設定手段と、
    前記領域設定手段にて設定された複数の二次元領域に対応する透過係数を各々算出する係数算出手段と、
    前記係数算出手段にて算出された透過係数に基づき、前記スピーカから放音された音響波の各周波数帯における指向特性を均一化するために、前記第kの領域における前記開口部の断面積または配置間隔の少なくともいずれかは、前記第(k−1)の領域における前記開口部の断面積または配置間隔よりも大きくなるように、各二次元領域に形成する開口部の形状および配置間隔を決定する手段と
    を有するスピーカネット設計装置。
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