JP4888751B2 - トリフルオロプロピルアミノペンタン誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタン及びその薬学的に許容される酸付加塩並びにそれらを有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリン等の中枢モノアミンの脳内での過剰な増加は、精神神経疾患、例えば精神分裂病、躁病、薬物乱用による精神症状の原因となる。これらの疾患の治療には、中枢モノアミン受容体への作用薬が用いられている。例えば、抗精神病薬では、ドパミン遮断作用を有するクロルプロマジン、ハロペリドール等の定型抗精神病薬が使用されている。しかし、これら定型抗精神病薬は陰性症状には効果がほとんどなく、錐体外路症状、悪性症候群、肥満等の副作用が問題となっている(医薬ジャーナル 第33巻 第4号 1997年 90-94頁)。そこで、陰性症状の治療並びに副作用の軽減を目的に、非定型抗精神病薬の開発が現在進んでおり(医薬ジャーナル 第37巻 増刊号 2001年 77-82頁)、一部薬剤については臨床使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
比較的副作用が少なく、陰性症状にも効果のある非定型抗精神病薬においても、副作用の問題は完全には解決されておらず、薬剤の効果が少ない難治療性患者の2/3は十分に改善されていないため、現状ではこうした患者の治療は困難を極めている(医学と薬学 第44巻 第5号 2000年 875-882頁)。そこで、より副作用が少なく、難治療性患者にも有効と考えられる、中枢モノアミン受容体作用薬とは異なる作用機序の薬剤が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ね、CAE/SAE効果(Catecholaminergic and Serotoninergic Activity Enhancer 効果)を阻害することにより、中枢モノアミン受容体に作用することなく、これらアミンの放出を阻害する本発明化合物を完成させた。CAE/SAE効果は膜電位依存性エクソサイトーシスの増強によるカテコールアミン及びセロトニン放出促進効果である[ライフサイエンス(Life Sciences) 58巻 945-952頁(1996)]。この CAE/SAE効果が過剰に促進されると、中枢モノアミンの異常増加による精神神経疾患、例えば精神分裂病、躁病、薬物乱用による精神症状が起こる可能性がある。そのため、CAE/SAE効果の阻害剤は、中枢モノアミン放出を阻害することにより、これら疾患の新たな治療薬となる可能性がある。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の方法によれば、下式
【0006】
【化2】
【0007】
の一級アミンとトリフルオロプロピオンアルデヒドを溶媒中、適当な還元剤の存在下、室温から還流温度の範囲で反応させることにより下式
【0008】
【化1】
【0009】
の1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタンが得られる。溶媒は反応を阻害しなければ何でも良く、例えば、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の有機溶媒を使用することができる。還元剤としては、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム等の複合水素化合物やボランを使用することができる。場合によっては酢酸を加えることも可能である。
【0010】
このようにして得られた上記の1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタンをジエチルエーテル等の有機溶媒中、薬学的に許容される酸と処理することにより、薬学的に許容される酸付加塩が得られる。必要ならば再結晶により、さらに高純度の精製品とすることができる。ここで薬学的に許容される酸は、例えば塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸等の無機酸、又は、グルコン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、マンデル酸等の有機酸を挙げることができる。 原料化合物である一級アミンはWO 99/07667に記載の方法等によって合成することができる。
【0011】
WO 00/26204に記載の化合物(-)- 1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-プロピルアミノペンタン[(-)-1-(Benzofuran-2-yl)-2-propylaminopentane : (-)BPAP]は CAE/SAE効果を有しており、中枢モノアミン枯渇剤であるテトラベナジンとの併用にもかかわらず、ラットのテトラベナジンによる条件回避反応の低下を、テトラベナジン単独投与に比べ有意に抑制した。この(-)BPAP の作用はCAE/SAE効果によって生理的に生じた中枢モノアミン放出促進に基づくものである。しかし、本発明化合物と(-)BPAPとテトラベナジンの3化合物を併用した場合、ラットの条件回避反応は、(-)BPAPとテトラベナジンの併用に比べ有意に低かった。これは、本発明化合物が(-)BPAPのCAE/SAE効果を阻害し、その結果テトラベナジンによる条件回避反応の低下を(-)BPAPが改善できなかったことを意味する。すなわち、本発明化合物は、CAE/SAE効果に基づく中枢モノアミン放出の阻害剤であると言える。このように、本発明化合物は、既存の中枢モノアミン受容体作用薬とは異なる作用機序、すなわちCAE/SAE効果に基づく中枢モノアミン放出の阻害作用を有しており、中枢モノアミンの増加による精神神経疾患、例えば精神分裂病、躁病、薬物乱用による精神症状の治療薬になると考えられる。
【0012】
本発明化合物及びその薬学的に許容される酸付加塩を上記医薬として用いる場合、通常担体、賦形剤、希釈剤、溶解補助剤等を添加物として、混合、溶解、練合、造粒、整粒、打錠、充てんなどの一般的な製剤技術を用いて製剤化し、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、注射剤などの形態で経口的又は非経口的に投与することが可能である。投与量は患者の症状、年齢、体重等により変わるが、通常、成人あたり経口で0.1〜100mgの範囲で、1回又は数回に分けて投与することができる。
【0013】
以下に、実施例を挙げて、本発明化合物について更に具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0014】
【実施例1】
1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタンの製造
アルゴン雰囲気下、1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-アミノペンタン(1.13g, 5.6mmol)の1,2-ジクロロエタン(30mL)溶液に室温撹拌下で3,3,3-トリフルオロプロピオンアルデヒド(620mg, 5.6mmol)及び水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(1.77g, 8.3mmol)を加え、室温で13時間撹拌した。この黄色懸濁溶液に室温撹拌下、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を加え、酢酸エチル(100mL)で抽出した。有機層を水(30mL)続いて飽和食塩水(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後減圧濃縮した。残渣の黄色液体をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/Hexane=1/4)で精製し、黄色液体の1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタン(1.21g, 73%) を得た。
【0015】
MS(EI) m/z 300[(M+1)+]
IR(neat) 2940, 2860, 1585, 1455, 1260, 1142, 1006, 945, 803, 750 cm-1
NMR(CDCl3)δ0.93(t,3H,J=7.1Hz),1.15-1.60(m,4H),2.10-2.36(m,2H),2.75-3.03(m,5H),6.45(s,1H),7.12-7.30(m,2H),7.36-7.45(m,1H),7.45-7.47(m,1H) ppm
【0016】
【実施例2】
1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタン塩酸塩の製造
1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタン(1.20g, 4.0mmol)のジエチルエーテル(25mL)溶液に氷冷撹拌下、飽和塩化水素ジエチルエーテル溶液(2.5mL)を加えた。析出した結晶をろ取し、ジエチルエーテル(5mLx3)で洗浄した。この白色結晶(1.35g, 99%)をジエチルエーテル(20mL)より再結晶し、白色粉末状結晶の塩酸塩(1.21g, 89%)を得た。
【0017】
m.p. 174.5〜176.0℃
MS(EI) m/z 299(M+)
IR(KBr) 3520, 3040, 2950, 2860, 2710, 1455, 1254, 1170, 1003, 749 cm-1
NMR(CDCl3)δ0.94(t,3H,J=7.4Hz),1.40-1.73(m,2H),1.73-2.02(m,2H),2.86-3.11(m,2H),3.11-3.33(m,2H),3.26(dd,2H,J=7.4,15.1Hz),3.40-3.67(m,1H),3.48(dd,2H,J=5.4,15.1Hz),6.67(s,1H),7.15-.33(m,2H),7.44(d,1H,J=8.1Hz),7.52(dd,1H,J=2.4,7.4Hz),9.77(br,2H) ppm
元素分析:C16H20NOF3・HClとして
理論値 C : 57.23 H : 6.30 N : 4.17 (%)
実測値 C : 57.20 H : 6.27 H : 4.10 (%)
【0018】
【実施例3】
シャトルボックスにおけるラットの条件回避反応への作用
ライフサイエンス 58巻 817-827頁 (1996) に記載の方法を用いて、テトラベナジン処置により学習能力の低下した雌雄ラット(200〜220g)のシャトルボックスにおける条件回避反応(Conditioned Avoidance Reflex : CARs) への作用を検討した。 装置は、サイコファーマコロジア(Psychopharmacologia) 10巻 1-5頁 (1996) に従って組み立てられ、体重200〜220gの雌雄ラットを用い、条件刺激(Conditiond Stimulus : CS、光とブザー音)を受けて、仕切りを通り抜けるよう訓練した。もし失敗すれば無条件刺劇(Unconditioned Stimulus : US)であるフットショック(1mA)を与えた。ラットがUSに対し、5秒以内に反応しなければ逃避不成功(Escape Failure : EFs)とした。ラットには1日100試行、5日間の訓練を行った。各試行は15秒間の試行間隔と続く15秒間のCSから構成された。CSの最後の5秒間はUSの5秒間と重なった。CARs、EFsは自動的に測定され、分散分析により解析された。テトラベナジンを生理食塩液に溶解し、試験の1時間前に1mg/kg の用量で皮下投与して、ラットの条件回避反応を低下させた。(-)BPAPを生理食塩液に溶解し、テトラベナジンと同時に0.05, 0.1, 0.25, 0.5, 1, 2.5, 5又は10mg/kgの用量で皮下投与し、(-)BPAPのテトラベナジンによる条件回避反応の低下に対する抑制作用(CARs, EFs)を測定した。またテトラベナジンと同時に0.1mg/kgのBPAPと1mg/kgの本発明化合物を一緒に投与し、CARsを測定した。
【0019】
テトラベナジンと各用量の(-)BPAPを併用した場合のCARs、EFsを表1に示した。テトラベナジンと0.1mg/kgの(-)BPAPの併用群及びテトラベナジンと0.1mg/kgの(-)BPAPと1mg/kgの本発明化合物の3化合物併用群のCARsの結果を図1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1より、(-)BPAPは投与量0.05mg/kgからテトラベナジン単独投与に比べて有意にCARsを増加させ、同時に有意にEFsを低下させた。投与量0.5mg/kgからは食塩水投与と同等かそれ以上にCARsを増加させ、同時にEFsを食塩水投与より低下させた。すなわち、(-)BPAPはテトラベナジンにより誘発された条件回避反応の低下を有意に改善させることが認められた。図1より、テトラベナジンと(-)BPAPと本発明化合物の3化合物併用群はテトラベナジンと(-)BPAPの併用群に比べ有意にCARsが低かった。すなわち、(-)BPAPによるCAE/SAE効果は本発明化合物で有意に阻害されることが認められた。
【0022】
【発明の効果】
本発明化合物である1-(ベンゾフラン-2-イル)-2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)アミノペンタンは、(-)BPAP のCAE/SAE効果に対して阻害作用を示した。本発明により中枢モノアミン過剰による精神神経疾患のこれまでとは異なる作用機序に基づく治療薬となりうる新規合成化合物を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明化合物の、CAE/SAE効果に対する阻害作用を示すグラフである。
Claims (5)
- 有効量の請求項1記載の化合物及び少なくとも1種類の薬学的に許容される添加物を含有する医薬組成物。
- 請求項1記載の化合物を有効成分として含有する中枢モノアミン放出阻害剤。
- 請求項1記載の化合物を有効成分として含有する精神神経疾患治療薬。
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