JP4890455B2 - イチイ属植物からパクリタキセルを得る方法 - Google Patents
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Description
[発明の要約]
したがって、本発明の目的は、パクリタキセルを含有する植物から高純度パクリタキセルを得る方法を提供する。これらの方法は、パクリタキセルの安定性を確実にするという利点を有し、パクリタキセルの含有量とは無関係にイチイの各種栽培品種またはその一部を使用することが可能になり、かつバイオマス中に存在するパクリタキセルを最大限に回収することが可能になる。本発明に記載する方法は、これまでの方法に優る幾つかの利点を提供する。例えば、パクリタキセルは、7位でのエピマー化(epimerization)、10位での脱アセチル化、および13位での側鎖の脱離などの劣化反応を受ける場合のあることが知られている。単離されるパクリタキセルの品質および収率の双方に影響を及ぼすこれらの劣化反応は、加熱、特に大量のアルコール系溶媒を含有する媒質中での加熱により生じる。本発明に記載する方法では、アルコールを、限られた量で、かつ希釈された状態で使用し、一般に、抽出工程中に加熱を必要としない。それゆえ、本明細書に記載する方法は、パクリタキセルの安定性を高める。
[図面の簡単な説明]
図1は、本発明方法の実施形態の概略を示す流れ図である。
[発明の詳細な説明]
本発明の方法には、パクリタキセルを含有する植物からパクリタキセルを得る方法が含まれる。図1は、本発明方法の実施形態の段階を略記した流れ図である。段階Aは、パクリタキセルを含有する植物材料からパクリタキセルを抽出することによってパクリタキセル抽出物を調製することを含む。次いで、カラムクロマトグラフィー分離装置を使用する段階B〜Eで、該パクリタキセル抽出物中のその他の構成成分からパクリタキセルを分離する。(i)の記号を付したそれぞれの段階は、パクリタキセル抽出物またはクロマトグラフィー画分から、固定相および溶離溶媒を備えたカラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを分離することを含む。(ii)の記号を付したそれぞれの段階は、前のクロマトグラフィー段階で得られる少なくとも1つの画分から、溶離溶媒を除去することを含む。好ましい実施形態では、その少なくとも1つの画分を、減圧にさらして溶離溶媒を除去する。図1中の標識(a)および(b)は、二者択一の経路を示す。例えば、各分離段階に対して経路(a)が続く場合には、少なくとも1つのパクリタキセル画分から溶離溶媒を除去しない。これと対照的に、各分離段階に対して経路(b)を採用する場合には、少なくとも1つのパクリタキセル画分から溶離溶媒を除去する。特定の実施形態では、特定の分離段階に対して経路(a)が続き、他の分離段階に対して経路(b)が続く場合もある。例えば、段階Bでは、経路(b)を採用して段階Bで得られる画分から溶離溶媒を除去することができ、一方、段階Cでは、経路(a)を採用して段階Cの溶離溶媒を除去しないで、その画分を直接的に段階Dでの分離にかける。段階Fは、最後のクロマトグラフィー段階から得られる少なくとも1つの画分を結晶化させることを含む。特定の実施形態では、段階E(ii)から得られる少なくとも1つの画分を段階Fで結晶化させる。図1には4つのクロマトグラフィー段階だけを示したが、結晶化の前にさらなるクロマトグラフィー段階が存在してもよい。結晶化段階に続いて乾燥段階があってもよい。
本発明の段階Aで使用する出発材料は、パクリタキセルを含有する植物材料である。適切な植物材料は、イチイ科(Taxaceae)すなわちイチイ属植物の植物部分から得ることができる。好ましくは、植物材料は、メディアイチイ(Taxus media)から準備される。適切なメディアイチイの変種には、T.x media「Hill」、T.x media「Henryi」、T.x media「Runyan」、T.cuspidata、T.x media「Halloran」、T.x media「Hatfield」、T.x media「Hicksii」、T.x media「Tauntonii」、T.x media「Dark Green Spreader」、T.x media「Wardii」、T.x media「Brownii」、T.x media「Densiformis」、T.x media「Nigra」、T.x cuspidata「Brevifolia」およびT.x cuspidata「Spreader」が含まれる。さらに、植物材料は、生または乾燥した、根、葉、枝、種子、樹皮、茎、またはこれらの混合物など、イチイ属植物の種々の部分から準備できる。好ましくは、植物材料は、約40〜約60(w/w)%の空中部分および約60〜約40(w/w)%の根から準備できる。植物材料は、パクリタキセルを含有する植物部分から、例えば、抽出、破砕または切断することによって得られる。具体的な実施形態において、抽出される予定の植物材料は、例えば直径10mmの網を備えたブレード式粉砕ラインを使用して破砕される。一実施形態において、植物材料は、少なくとも1種の抽出溶媒を使用して抽出される。適切な抽出溶媒としては、水性有機溶媒、例えばアセトン水などの水性溶媒が挙げられる。好ましくは、約40〜約60容積%のアセトンと約60〜約40容積%の水との混合物が使用される。水性アセトンは、パクリタキセルの劣化を防止できる。好ましくは、室温で抽出する。室温で抽出すると、パクリタキセルの劣化を防止できる。
最初のクロマトグラフィー段階、例えば段階Bに先立って、段階Aのようにしてパクリタキセル抽出物を調製する。一実施形態において、パクリタキセル抽出物は、溶媒を用いて植物材料からパクリタキセルを抽出することによって調製される。具体的な実施形態において、パクリタキセル抽出物は、植物材料の水性アセトン抽出物を処理することによって調製される。適切な抽出溶媒としては、限定はしないが、酢酸エチルなどの脂肪族エステル、またはクロロホルムもしくはジクロロメタンなどの塩素化溶媒が挙げられる。好ましい抽出溶媒は、ジクロロメタンである。具体的な実施形態では、上記溶媒の1つを用いてパクリタキセルを抽出する前に、水性アセトン抽出物を真空下で濃縮してアセトンを除去する。次いで、濃縮物を溶媒で希釈できる。この希釈溶媒としては、メチルアルコール、またはエチルもしくはプロピルアルコールなどの水溶性アルコール系溶媒が挙げられる。次いで、この希釈された濃縮物から、ジクロロメタンおよびその他上述の抽出溶媒などの抽出溶媒を使用してパクリタキセルを抽出する。パクリタキセル抽出物が形成される。
パクリタキセルは、パクリタキセル抽出物から、段階B〜Eのような図1に示した少なくとも4つのカラムクロマトグラフィー段階を適用することによって分離される。段階B(i)〜E(i)のそれぞれは、固定相および溶離溶媒を備えたクロマトグラフィー装置の使用を含む。それぞれの装置は、異なる固定相および溶離溶媒を用いる同一の装置でよい。適切な固定相としては、限定はしないが、中性アルミナおよびシリカゲルが挙げられる。考え得る溶離溶媒としては、限定はしないが、アセトン、ジクロロメタン、メタノール、n−ヘキサン、酢酸t−ブチル、クロロホルム、および酢酸エチルが挙げられる。
最後のクロマトグラフィー段階に続いて、その段階から得られる、パクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を段階Fで結晶化溶媒を使用して結晶化させ、パクリタキセルの結晶を得る。適切な結晶化溶媒としては、シクロヘキサン、アセトン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、酢酸t−ブチル、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、比率が1:1のシクロヘキサンとアセトンの混合物が使用される。一実施形態において、結晶化は、室温で行われる。一般に、結晶化は、24時間にわたって行われる。しかし、結晶化は、異なった時間にわたって行われる場合もある。結晶化に続いて、パクリタキセルの結晶を真空下に約50℃〜約60℃の温度で乾燥する。好ましくは、結晶を約48時間乾燥する。
実施例1
T.media「Hicksii」から得られた、約500kgの根ならびに約500kgの葉および小枝を含む、乾燥し、粉砕した植物材料1トンを、15,000Lの50%アセトン水を使用し、室温で抽出した。抽出物を真空下で約300Lまで濃縮した。次いで、150Lのメタノールを添加し、200Lのジクロロメタンで5回、抽出を実施した。一緒にした有機層を真空下で柔らかい残留物が得られるまで濃縮し、その残留物をジクロロメタンに再溶解し、180kgのシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにかけた。カラムを通して約2,700Lのジクロロメタンを流し、廃棄した。
実施例2
Taxus media「Dark Green Spreader」全植物からの約40kgの根、ならびに約60kgの葉および小枝からなる乾燥し、粉砕した植物材料100kgを、1,500Lの50%アセトン水を用い、室温で抽出した。抽出物を真空下で30Lまで濃縮した。次いで、15Lのメタノールを添加し、20Lのジクロロメタンで5回、抽出を実施した。ジクロロメタン抽出液を一緒にして、真空下で15Lまで濃縮した。
Claims (6)
- メディアイチイ(Taxus media)からパクリタキセルを得る方法であって、
(a)約40〜約60(v/v)%のアセトンを含む水性溶媒を用い、室温で植物材料を抽出することによって、メディアイチイ(Taxus media)から植物材料抽出物を調製すること、
(b)(a)で得られる植物材料抽出物からパクリタキセルを抽出することによってパクリタキセル抽出物を調製すること、
(c)該パクリタキセル抽出物から
(i)固定相としてのシリカゲル、およびジクロロメタン単独またはジクロロメタンとメタノールの混合物を含む溶離溶媒を備えた第1カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(c)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、ジクロロメタンおよび/またはメタノールを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(d)段階(c)(ii)で得られる少なくとも1つの画分から
(i)固定相としての中性アルミナ、およびアセトンを含む溶離溶媒を備えた第2カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(d)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、アセトンを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(e)段階(d)(ii)で得られる少なくとも1つの画分から
(i)固定相としてのシリカゲル、およびn−ヘキサンとアセトンの混合物を含む溶離溶媒を備えた第3カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(e)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、n−ヘキサンおよびアセトンを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(f)段階(e)(ii)で得られる少なくとも1つの画分から
(i)固定相としてのシリカゲル、および酢酸t−ブチルを含む溶離溶媒を備えた第4カラムクロマトグラフィー装置を使用して、少なくともセファロマニンを除去し、かつパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(f)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、酢酸t−ブチルを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(g)段階(f)(ii)で得られる少なくとも1つの画分を、結晶化溶媒としてシクロヘキサンとアセトンの混合物を使用して、室温で24時間にわたって結晶化させ、パクリタキセルの結晶を得ること、ならびに
(h)(g)で得られるパクリタキセルの結晶を真空下で48時間乾燥すること、
を含む方法。 - 段階(b)におけるパクリタキセル抽出物の調製が、さらに
(a)植物材料抽出物を減圧下で濃縮してアセトンを除去し、濃縮物を形成すること、
(b)該濃縮物をメチルアルコールで希釈すること、
(c)該濃縮物をジクロロメタンで抽出してジクロロメタン抽出物を形成すること、および
(d)該ジクロロメタン抽出物を減圧下で濃縮してパクリタキセル抽出物を形成すること、
を含む、請求項1に記載の方法。 - メディアイチイ(Taxus media)からパクリタキセルを得る方法であって、
(a)約40〜約60(v/v)%のアセトンを含む水性溶媒を用い、室温で植物材料を抽出することによって、メディアイチイ(Taxus media)から植物材料抽出物を調製すること、
(b)(a)で得られる植物材料抽出物からパクリタキセルを抽出することによってパクリタキセル抽出物を調製すること、
(c)該パクリタキセル抽出物から
(i)固定相としてのシリカゲル、およびジクロロメタンとメタノールの混合物を含む溶離溶媒を備えた第1カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、
(ii)段階(c)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、残留物を得ること、および
(iii)段階(c)(ii)で得られる残留物をアセトンに溶解してアセトン−残留物の組成物を得ること
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(d)段階(c)(iii)で得られるアセトン−残留物の組成物から
(i)固定相としての中性アルミナおよびアセトンを含む溶離溶媒を備えた第2カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(d)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、アセトンを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(e)段階(d)(ii)で得られる少なくとも1つの画分から
(i)固定相としてのシリカゲル、およびn−ヘキサンおよびアセトンを含む溶離溶媒を備えた第3カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(e)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、n−ヘキサンおよびアセトンを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(f)段階(e)(ii)で得られる少なくとも1つの画分から
(i)固定相としてのシリカゲル、および酢酸t−ブチルを含む溶離溶媒を備えた第4カラムクロマトグラフィー装置を使用して、少なくともセファロマニンを除去し、かつパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(f)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、酢酸t−ブチルを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(g)段階(f)(ii)で得られる少なくとも1つの画分を、結晶化溶媒としてシクロヘキサンとアセトンの混合物を使用して、室温で24時間にわたって結晶化させ、パクリタキセルの結晶を得ること、ならびに
(h)(g)で得られるパクリタキセルの結晶を真空下で48時間乾燥すること、
を含む方法。 - 前記メディアイチイ(Taxus media)が、T.media Hicksiiを含む、請求項3に記載の方法。
- メディアイチイ(Taxus media)からパクリタキセルを得る方法であって、
(a)約40〜約60(v/v)%のアセトンを含む水溶液を用い、室温で植物材料を抽出することによって、メディアイチイ(Taxus media)から植物材料抽出物を調製すること、
(b)(a)で得られる植物材料抽出物からパクリタキセルを抽出することによってパクリタキセル抽出物を調製すること、
(c)該パクリタキセル抽出物から
(i)固定相としての中性アルミナ、およびジクロロメタンおよびメタノールを含む溶離溶媒を備えた第1カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(c)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、ジクロロメタンおよびメタノールを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(d)段階(c)(ii)で得られる少なくとも1つの画分から
(i)固定相としてのシリカゲルおよびジクロロメタンおよびメタノールを含む溶離溶媒を備えた第2カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、
(ii)段階(d)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、残留物を得ること、および
(iii)段階(d)(ii)で得られる残留物をアセトンに溶解してアセトン−残留物の組成物を得ること、
を含めてパクリタキセルを分離すること、
(e)段階(d)(iii)で得られるアセトン−残留物の組成物から
(i)固定相としてのシリカゲル、およびn−ヘキサンおよびアセトンを含む溶離溶媒を備えた第3カラムクロマトグラフィー装置を使用してパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(e)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、n−ヘキサンとアセトンの混合物を除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(f)段階(e)(ii)で得られる少なくとも1つの画分から
(i)固定相としてのシリカゲル、および酢酸t−ブチルを含む溶離溶媒を備えた第4カラムクロマトグラフィー装置を使用して、少なくともセファロマニンを除去し、かつパクリタキセルを含有する少なくとも1つの画分を得ること、および
(ii)段階(f)(i)で得られる少なくとも1つの画分を減圧にさらし、酢酸t−ブチルを除去すること、
を含めて、パクリタキセルを分離すること、
(g)段階(f)(ii)で得られる少なくとも1つの画分を、結晶化溶媒としてシクロヘキサンとアセトンの混合物を使用して、室温で24時間にわたって結晶化させ、パクリタキセルの結晶を得ること、ならびに
(h)(g)で得られるパクリタキセルの結晶を真空下で48時間乾燥すること、
を含む方法。 - 前記メディアイチイ(Taxus media)が、T.media「dark green spreader」を含む、請求項5に記載の方法。
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