以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのレーザプリンタ500の概略構成が示されている。
このレーザプリンタ500は、感光体ドラム511、帯電ローラ512、現像装置513、転写ローラ514、クリーニング装置515、定着装置516、光走査装置900、カセット518、レジストローラ対519、給紙コロ520、排紙ローラ対522、及びトレイ523などを備えている。
感光体ドラム511は、像担持体であり、その表面には光導電性を有する感光層が形成されている。すなわち、感光体ドラム511の表面が被走査面である。
帯電ローラ512、現像装置513、転写ローラ514及びクリーニング装置515は、それぞれ感光体ドラム511の表面近傍に配置されている。そして、感光体ドラム511の回転方向(図1における矢印方向)に沿って、帯電ローラ512→現像装置513→転写ローラ514→クリーニング装置515の順に配置されている。
帯電ローラ512は、感光体ドラム511の表面を均一に帯電させる帯電手段である。帯電手段としては「コロナチャージャ」を用いることもできる。
光走査装置900は、帯電ローラ512で帯電された感光体ドラム511の表面を、上位装置(例えばパソコン)からの画像情報に基づいて変調された光(走査光)LBで走査する。この光走査装置900による光走査により、感光体ドラム511の表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像(静電潜像)が形成される。この潜像は、いわゆるネガ潜像であり、感光体ドラム511の回転に伴って現像装置513の方向に移動する。なお、光走査装置900の構成については後述する。
現像装置513は、トナーが格納されているトナーカートリッジを有しており、感光体ドラム511の表面における光が照射された部分にだけトナーを付着させる。すなわち、現像装置513は、感光体ドラム511の表面に形成された潜像にトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された潜像(以下、便宜上「トナー画像」ともいう)は、感光体ドラム511の回転に伴って転写ローラ514の方向に移動する。
カセット518は、レーザプリンタ500の本体に着脱可能であり、その中には転写対象物としての転写紙Pが収納されている。このカセット518の近傍には給紙コロ520が配置されており、該給紙コロ520は、カセット518に収納されている転写紙Pの最上位の1枚を取り出す。
レジストローラ対519は、転写ローラ514の近傍に配置され、給紙コロ520により取り出された転写紙の先端部を捕捉する。そして、レジストローラ対519は、感光体ドラム511上のトナー画像が転写位置へ移動するタイミングに合わせて、転写紙を転写ローラ514と感光体ドラム511との間隙へ送り込む。送り込まれた転写紙は、転写ローラ514によりトナー画像と重ね合わされ、トナー画像が静電転写される。
トナー画像が転写された転写紙は、定着装置516へ送られ、定着装置516にてトナー画像が定着され、搬送路521を通り、排紙ローラ対522によりトレイ523上に排出される。
トナー画像が転写された後の感光体ドラム511の表面は、クリーニング装置515によりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
次に、前記光走査装置900の構成について説明する。
この光走査装置900は、図2に示されるように、光源1、カップリングレンズ2、開口板3、線像形成レンズ4、ポリゴンミラー5、2つの走査レンズ(6a、6b)、折り曲げミラー7、同期ミラー9、同期レンズ10、及び同期検知センサ11などを備えている。
光源1は、一例として図3に示されるように、40個の発光部が1つの基板上に形成されたVCSELアレイ100を有している。
このVCSELアレイ100は、主走査方向に対応する方向(以下では、便宜上「M方向」ともいう)から副走査方向に対応する方向(以下では、便宜上「S方向」ともいう)に向かって傾斜角αをなす方向(以下では、便宜上「T方向」という)に沿って10個の発光部が等間隔に配置された発光部列を4列有している。そして、これら4列の発光部列は、S方向に等間隔に配置されている。すなわち、40個の発光部は、T方向とS方向とに沿って2次元的に配列されている。なお、本明細書では、「発光部の間隔」とは2つの発光部の中心間距離をいうものとする。また、M方向及びS方向のいずれにも直交し、光源1からポリゴンミラー5に向かう光束の進行方向を、以下では、便宜上「W方向」とする。
ここでは、一例として、発光部列における、T方向に関する発光部の間隔d1は24.0μm、S方向に関する発光部列の間隔ds2は24.0μmであり、傾斜角αは5.74°である。そこで、40個の発光部をS方向に延びる仮想線上に正射影したときの発光部の間隔は等間隔となり、その値ds1は2.4μmである。そして、M方向に関する発光部の間隔dmは23.9μmである。
各発光部は、一例として、発振波長が790nmであり、設計上の発振波長(ここでは、λ0=780nm)よりも10nm大きく、基準温度(T0=25℃)に対して温度が1℃上昇すると、発振波長が0.062nmだけ長波長側へずれるという特性を有している。
また、便宜上、最も−S側にある発光部を発光部v1、最も+S側にある発光部を発光部v40とする。
カップリングレンズ2は、焦点距離が約45mmであり、光源1から射出された光束を略平行光とする。
カップリングレンズ2は、一例として、主走査方向に対応する方向の近軸曲率半径が98.97mm、副走査方向に対応する方向の近軸曲率半径が98.97mmの入射面と、主走査方向に対応する方向の近軸曲率半径が−31.07mm、副走査方向に対応する方向の近軸曲率半径が−31.07mmの射出面を有するガラス製のレンズである。このガラスは、一例として、780nmの光に対する基準温度での屈折率が1.511913であり、温度が基準温度から20℃上昇したときの屈折率が1.511934であり、線膨張係数が7.5×10−6/Kの物性を有するガラスである。
カップリングレンズ2は、入射面及び射出面のいずれも非球面であり、カップリングされた光束の波面収差を十分に補正している。
なお、光源1とカップリングレンズ2は、線膨張係数が2.3×10−5/Kの材料を用いた保持部材(図示省略)によって保持されている。
開口板3は、一例として主走査方向に対応する方向の幅が6.4mm、副走査方向に対応する方向の幅が1.18mmの長方形状の開口部を有し、カップリングレンズ2を介した光束を整形し、感光体ドラム511上におけるビームスポット径を決定する。
なお、本明細書では、「ビームスポット径」は、ビームスポットの光強度分布におけるラインスプレッド関数を用いて定義される。ビームスポットの中心を基準とし、主走査方向に対応する方向の座標Y、副走査方向に対応する方向の座標Zにおけるビームスポットの光強度分布をf(Y、Z)とすると、副走査方向に対応する方向のラインスプレッド関数LSZ(Z)は、次の(1)式で示される。なお、積分は主走査方向に対応する方向におけるビームスポットの全幅について行われる。
また、主走査方向に対応する方向のラインスプレッド関数LSY(Y)は、次の(2)式で示される。なお、積分は副走査方向に対応する方向におけるビームスポットの全幅について行われる。
ラインスプレッド関数LSZ(Z)及びラインスプレッド関数LSY(Y)は、通常、略ガウス分布型の形状であり、主走査方向に対応する方向及び副走査方向に対応する方向のビームスポット径は、これらのラインスプレッド関数が、その最大値の1/e2以上となる領域の主走査方向に対応する方向及び副走査方向に対応する方向の幅で与えられる。
ラインスプレッド関数により上記の如く定義されるビームスポット径は、ビームスポットをスリットで等速光走査し、スリットを通った光を光検出器で受光し、その受光量を積分することにより容易に測定可能であり、このような測定を行う装置も市販されている。
線像形成レンズ4は、開口板3の開口部を通過した光束をポリゴンミラー5の偏向反射面近傍に副走査方向に関して結像する。
線像形成レンズ4は、樹脂製のレンズである。この樹脂は、一例として、780nmの光に対する基準温度での屈折率が1.523961であり、温度が基準温度から20℃上昇したときの屈折率が1.522188であり、線膨張係数が7.0×10−5/Kの物性を有する樹脂である。
線像形成レンズ4の入射面は、主走査方向に対応する方向の近軸曲率半径が∞、副走査方向に対応する方向の近軸曲率半径が118.5mmのシリンドリカル面である。
線像形成レンズ4の射出面は、一例として図4に示されるように、主走査方向に対応する方向に短軸、副走査方向に対応する方向に長軸を持つ同心楕円状の溝が形成された回折面である。なお、上記長軸の方向は、搭載される光走査装置の特性に応じて自由に選択することができる。
この回折面の位相関数φ(Y,Z)は、次の(3)式で示される。
φ(Y,Z)=C1・Y2+C2・Z2 ……(3)
ここでは、C1=−0.001999851、C2=−0.002183171、である。
回折面は、回折効果を有する面(以下、便宜上「第1の面」ともいう)と屈折効果を有する面(以下、便宜上「第2の面」ともいう)とが合成された面形状を有している。
一例として図5に示されるように、第1の面の形状13は、所定の屈折面の形状12を適切な段差及びピッチで折り返した形状である。従って、第1の面はパワーを有する。
第2の面の形状は、第1の面のパワーを相殺するような面形状である。ここでは、第2の面の形状は、主走査に対応する方向の曲率半径が131mm、副走査に対応する方向の曲率半径が120mmのトーリック面の形状である。これにより、線像形成レンズ4の回折面は、主走査方向に対応する方向及び副走査方向に対応する方向ともにノンパワーとなる。
なお、ここでは、第1の面のパワーと第2の面のパワーは絶対値が等しいので、第1の面のパワーの指標としてトーリック面の曲率半径(以下では、「基板曲率半径」ともいう)の値を用いることができる。
これにより、回折面における複数の回折溝はマルチステップ状になる。
ところで、回折面を、屈折面の面形状を適切な段差及びピッチで折り返した形状とすると、レンズの周辺部に向かってピッチが徐々に小さくなるため、回折面を成形するための金型の製作が難しい。しかしながら、互いに反対のパワーを有する第1の面と第2の面とを合成して回折面を作成すると、回折面における折返し部分が鈍角となり、金型製作に有利となる。特に、本実施形態のように、回折面の面形状をマルチステップ状にすると、一例として図6に示されるように、折返し部分の角度が直角となり、光軸に対称な階段状の形状となり、金型製作上の簡便性が更に向上する。
また、回折面は、次の(4)式が満足されるように設計されている。ここで、ΔS(Δλd)は、VCSELアレイの発振波長λの設計波長λ0からのずれΔλdに起因する副走査方向に関する走査光の合焦位置と感光体ドラム511との距離(以下では、便宜上「副走査ピント位置ずれ」ともいう)であり、ΔS(ΔT)は、基準温度T0に対する環境温度Tの変化ΔTに起因する副走査ピント位置ずれである。
ΔS(Δλd)×ΔS(ΔT)<0 ……(4)
ここで、ΔS(ΔT)及びΔS(Δλd)について、図7(A)〜図8(B)を用いて説明する。
図7(A)及び図7(B)は、Δλd=0、T=T0+ΔTの場合の副走査ピント位置ずれが示されている。図7(A)における符号1´は発振波長がλ0のVCSELアレイを有している光源であり、符号4´は回折面が形成されていない線像形成レンズであり、符号6は走査レンズである。環境温度が変化すると、光源1´から射出される光束の波長λは変化する。ここでは、この環境温度の変化による波長変化をΔλtとする。なお、VCSELアレイの自己発熱による波長変化もΔλtに含まれるものとする。また、環境温度が変化すると、光学系全体のパワーも変化する。この環境温度の変化によるパワー変化をΔxとする。すなわち、環境温度が変化すると、発振波長及び光学系全体のパワーが同時に変化するため、波長変化Δλtによる副走査ピント位置ずれをΔS(Δλt)、パワー変化Δxによる副走査ピント位置ずれをΔS(Δx)とすると、ΔS(ΔT)=ΔS(Δλt)+ΔS(Δx)と書くことができる(図7(B)参照)。なお、光学系全体のパワー変化は、(1)光学素子の形状及び光学素子間隔の熱膨張、(2)光学素子の分散、(3)温度変化に起因する光学素子の屈折率変化、によるものである。そこで、例えば、環境温度の変化を補償するために回折面を設ける場合に、ΔS(Δλt)=−ΔS(Δx)となるように回折面形状を設計すると、ΔS(ΔT)=0となり温度補償が実現されることになる。
図8(A)及び図8(B)は、λ=λ0+Δλd、T=T0の場合の副走査ピント位置ずれが示されている。図8(A)における符号1´´は発振波長λが設計波長λ0よりもΔλd大きいVCSELアレイを有している光源である。発振波長の変化は、回折面を持たない光学素子に対してほとんど影響しないため、この場合のパワー変化Δx´は、ほぼ0である。従って、この場合の副走査ピント位置ずれは、ΔS(Δλd)が支配的である(図8(B)参照)。
実際では、ΔS(Δλd)は、ΔS(Δλt)よりも圧倒的に大きい。そのため、ΔS(Δλd)は、環境温度の変化を考慮する以前に光学性能を劣化させる。組付け時にピント調整を行ったとしても、ピントと倍率は両立できないので、高精度な倍率安定性が求められるVCSEL搭載光走査装置にとっては致命的とも言える。
図9(A)及び図9(B)には、上記(4)式が満足されていない場合の例が示されている。図9(A)の場合は、発振波長の設計波長からのずれを考慮するまでもなく、環境温度の変化による光学性能の劣化が増強される。図9(B)の場合は、発振波長の設計波長からのずれによって著しい光学性能の劣化が起こる。
そこで、上記(4)式が満足されるような回折面とすることにより、温度補償と発振波長のずれ補償とをバランスさせることが可能である。
本実施形態では、基板曲率半径が120mmであり、図10に示されるように、上記(4)式が満足されている。そして、感光体ドラム511の表面における複数の光スポットのうち最も外側の光スポット(ここでは、発光部v1あるいは発光部v40からの光束による光スポット)の副走査方向に関する位置ずれ(便宜上、「最外ビーム副走査位置ずれ」ともいう)は、温度変化及び発振波長のずれ双方に対して2μm以下を達成している。すなわち、本実施形態では、上記(4)式が満足されているため、環境温度の変化による副走査ピント位置ずれ、及び発振波長のずれによる副走査方向に関する倍率変化を、いずれも抑制することが可能となる。そして、上記(4)式が満足されない場合は、温度変化及び発振波長のずれ双方に対して光学性能が劣化している。なお、基板曲率半径が18.6mmのときは、ΔS(ΔT)がほぼ0となるため、温度補償解と呼ばれている。
光源1とポリゴンミラー5との間の光路上に配置される光学系は、偏向器前光学系とも呼ばれている。本実施形態では、偏向器前光学系は、カップリングレンズ2と開口板3と線像形成レンズ4とから構成されている。
図2に戻り、ポリゴンミラー5は、一例として内接円の半径が7mmの4面鏡を有し、各鏡がそれぞれ偏向反射面である。なお、このポリゴンミラー5は、厚さ1.9mmの防音ガラス(不図示)で囲まれている。この防音ガラスの素材のガラスは、カップリングレンズ2の素材のガラスと同じである。
走査レンズ6aは、主走査方向の近軸曲率半径が−110.142mm、副走査方向の近軸曲率半径が−472.788mmの入射面と、主走査方向の近軸曲率半径が−57.939mm、副走査方向の近軸曲率半径が−500mmの射出面を有している。
走査レンズ6bは、主走査方向の近軸曲率半径が−5000mm、副走査方向の近軸曲率半径が93.8mmの入射面と、主走査方向の近軸曲率半径が724.16mm、副走査方向の近軸曲率半径が−60.71mmの射出面を有している。
走査レンズ6a及び走査レンズ6bは、いずれも樹脂製のレンズである。この樹脂は線像形成レンズ4の素材と同じ物性を有する樹脂である。
また、走査レンズ6a及び走査レンズ6bの各面は非球面形状の面であり、いずれの面も、主走査方向に次の(5)式で示される非円弧形状を有し、光軸及び副走査方向を含む仮想的な平面に平行な断面(以下、「副走査断面」という)の曲率が次の(6)式に従って主走査方向に変化する面である。
ここで、Xは光軸方向のデプス、Rmは主走査方向の近軸曲率半径、Yは光軸からの主走査方向の距離、Kは円錐定数、A1、A2、A3、A4、A5、…は係数、Rs0はY=0での副走査方向の近軸曲率半径、B1、B2、B3、…は係数である。
走査レンズ6aの入射面の円錐定数及び各係数が表1に示されている。
走査レンズ6aの射出面の円錐定数及び係数が表2に示されている。
走査レンズ6bの入射面の円錐定数及び各係数が表3に示されている。
走査レンズ6bの射出面の円錐定数及び係数が表4に示されている。
折り曲げミラー7は、走査レンズ6bを介した光束の光路を感光体ドラム511の表面に向けて折り曲げる。これにより、感光体ドラム511の表面にビームスポットが形成される。このビームスポットは、ポリゴンミラー5の回転に伴って感光体ドラム511の長手方向に移動する。すなわち、感光体ドラム511上を走査する。
ポリゴンミラー5と感光体ドラム511との間の光路上に配置される光学系は、走査光学系とも呼ばれている。本実施形態では、走査光学系は、走査レンズ6aと走査レンズ6bと折り曲げミラー7とから構成されている。なお、折り曲げミラー7と感光体ドラム511の間には、厚さ1.9mmの防塵ガラス(不図示)が配置されている。この防塵ガラスは、前記防音ガラスと同じ物性を有するガラスでできている。
ところで、上記各光学素子の位置関係が図11に示されている。そして、図11における符号d1〜d11の具体的な値(単位mm)の一例が表5に示されている。
また、前記W方向と、ポリゴンミラー5の偏向反射面により感光体ドラム511の表面における像高0の位置(図11における符号p0の位置)へ向けて反射される光束の進行方向とのなす角(図11におけるθ)は59度である。
図2に戻り、ポリゴンミラー5で偏向され、有効走査領域外に向かう光束の一部は、同期ミラー9及び同期レンズ10を介して同期検知センサ11で受光される。同期検知センサ11は、受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。この同期検知センサ11の出力信号に基づいて、走査開始のタイミングが決定される。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によると、光源1、カップリングレンズ2、線像形成レンズ4、ポリゴンミラー5、及び走査光学系を備え、線像形成レンズ4の射出面は、上記(4)式が満足されるように設計されている回折面である。これにより、環境温度の変化による副走査ピント位置ずれ、及び発振波長のずれによる副走査方向に関する倍率変化を、いずれも抑制することができる。従って、結果として、高コスト化を招くことなく、所望の走査特性を安定して確保することが可能となる。
ところで、回折面が樹脂で成形される場合には、回折面の形状と凹凸が逆の形状が切削により形成された成形用の金型(あるいは金駒)が用いられる。本実施形態によると、線像形成レンズ4の回折面における複数の回折溝はマルチステップ状である。これにより、回折面を成形するための金型(あるいは金駒)の製作が容易となる(図12参照)。
また、本実施形態によると、線像形成レンズ4の回折面は、主走査方向に対応する方向に短軸、副走査方向に対応する方向に長軸を持つ同心楕円状の溝が形成された回折面である。これにより、長軸方向及び短軸方向に対して互いに独立に回折面の効果を発現することができる。
また、本実施形態によると、線像形成レンズ4は、屈折面と回折面とを有し、光源1側の面が屈折面であり、ポリゴンミラー5側の面が回折面である。これにより、散乱光・反射光・不要次数の回折光が光源に戻るのを抑制している。仮に、回折面が光源1側に設けられていると、入射光束の光軸に対して垂直な入射面を有することになるので、入射光束が入射面で強い反射を起こし、それが光源に戻り、干渉を誘発するおそれがある。
また、本実施形態によると、光源1が複数の発光部を有しているため、同時に複数の走査が可能となる。従って、高速及び高密度の光走査が可能となる。
また、本実施形態によると、部品点数を増加させることなく高安定な光走査装置を実現することができる。そのため、光走査装置の生産に関わる材料の使用量を増やす必要がなく、その結果として資源採掘量及びプラスチックゴミ排出量に関して環境負荷の増大を抑制することが可能となる。
また、本実施形態に係るレーザプリンタ500によると、高コスト化を招くことなく、所望の走査特性を安定して確保することができる光走査装置900を備えているため、結果として高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成することが可能となる。
また、本実施形態によると、光源1が複数の発光部を有しているため、同時に複数の走査が可能となり、画像形成の高速化を図ることができる。
なお、上記実施形態では、線像形成レンズ4が、回折面を有する場合について説明したが、これに限定されるものではない。偏向器前光学系が、回折面を有していれば良い。なお、一般的に、偏向器前光学系に含まれるカップリング光学系の誤差は、被走査面上のビームスポットに最も大きく影響する。そこで、カップリング光学系の誤差が大きいときには、カップリングされた後の光束が回折面に入射するのが好ましい。
また、上記実施形態では、走査光学系の走査レンズが2つの場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではなく、走査光学系の走査レンズが1つであっても良いし、走査レンズが3つ以上であっても良い。
なお、上記実施形態では、回折面における中心に最も近い段差に囲まれた領域である第0輪帯に入射する光束の径が第0輪帯の径よりも大きい場合について説明したが、一例として図13に示されるように、第0輪帯に入射する光束の径が第0輪帯の径よりも小さくても良い。例えば、前記基板曲率半径が150mmのときには、第0輪帯に入射する光束の径は第0輪帯の径よりも小さい。この場合には、4aの光束径は第0輪帯の径よりも小さいため、屈折レンズと等価な作用しか受けないが、4bの光束は回折面の作用を受けることができる。すなわち、VCSELアレイ100から射出される多数の光束のうち外側にあるものに対して、回折の効果を選択的に付与することが可能である。
また、上記実施形態では、感光体ドラム511から転写紙へのトナー画像の転写が、感光体ドラム511から転写紙へ直接的に行われる直接転写方式の場合について説明したが、感光体ドラム511から一旦中間転写ベルト等の中間転写媒体に転写した後、この中間転写媒体から転写紙へ転写する中間転写方式であっても良い。
また、上記実施形態では、像担持体がドラム状の場合について説明したが、これに限らず、シート状やベルト状であっても良い。例えば、シート状の光導電性の感光体として酸化亜鉛紙を用いても良い。
なお、上記実施形態では、画像形成装置としてレーザプリンタ500の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光プロッタやデジタル複写装置であっても良い。
また、像担持体として銀塩フィルムを用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により銀塩フィルム上に潜像が形成され、この潜像は通常の銀塩写真プロセスにおける現像処理と同等の処理で可視化することができる。そして、通常の銀塩写真プロセスにおける焼付け処理と同等の処理で転写対象物としての印画紙に転写することができる。このような画像形成装置は光製版装置や、CTスキャン画像等を描画する光描画装置として実施できる。
また、像担持体としてビームスポットの熱エネルギにより発色する発色媒体(ポジの印画紙)を用いた画像形成装置であっても良い。この場合には、光走査により可視画像を直接、像担持体に形成することができる。
要するに、上記光走査装置900を備えた画像形成装置であれば、結果として高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成することが可能となる。
また、カラー画像を形成する画像形成装置であっても、カラー画像に対応した光走査装置を用いることにより、高コスト化を招くことなく、高品質の画像を安定して形成することが可能となる。
一例として、カラー画像を形成することができるタンデムカラー機が図14に示されている。このタンデムカラー機は、ブラック用の感光体ドラムK1、帯電器K2、現像器K4、クリーニング手段K5、及び転写用帯電手段K6と、シアン用の感光体ドラムC1、帯電器C2、現像器C4、クリーニング手段C5、及び転写用帯電手段C6と、マゼンタ用の感光体ドラムM1、帯電器M2、現像器M4、クリーニング手段M5、及び転写用帯電手段M6と、イエロー用の感光体ドラムY1、帯電器Y2、現像器Y4、クリーニング手段Y5、及び転写用帯電手段Y6と、光走査装置900Aと、転写ベルト80と、定着手段30などを備えている。
光走査装置900Aは、前記光走査装置900の偏向器前光学系と同様の偏向器前光学系を有している。
各感光体ドラムの周囲に、感光体ドラムの回転方向(図14中の矢印の方向)に沿って、対応する帯電器、現像器、転写用帯電手段、及びクリーニング手段がそれぞれ配置されている。各帯電器は、対応する感光体ドラムの表面を均一に帯電する。この帯電器によって帯電された感光体ドラム表面に光走査装置900Aにより光束が照射され、感光体ドラムに静電潜像が形成されるようになっている。そして、対応する現像器により感光体ドラム表面にトナー像が形成される。さらに、対応する転写用帯電手段により、記録紙に各色のトナー像が転写され、最終的に定着手段30により記録紙に画像が定着される。すなわち、各色のトナー画像を同一のシート状記録媒体に転写・定着して合成的にカラー画像や多色画像を得ることができる。
例えば、光走査装置900Aが、ブラック用の光源(光源K)とシアン用の光源(光源C)とマゼンタ用の光源(光源M)とイエロー用の光源(光源Y)を有する場合に、ポリゴンミラーを各色で共通としても良い。これにより、比較的高価なポリゴンミラーの数が減少し、低コスト化を促進することができる。また、ポリゴンミラーは光走査装置における最大の発熱源であるため、ポリゴンミラーの数の減少により光走査装置の温度上昇を抑制することができる。そして、光走査装置の温度上昇が抑制されることにより、面発光レーザにおける望まないモードホップを低減することができる。この場合に、光走査装置の構成としては、各色の光束がポリゴンミラーの回転軸を含む副走査断面に対して略対称に入射する方式(いわゆる「対向走査方式」)や、各色の光束がポリゴンミラーの同一反射面によって偏向される方式(いわゆる「片側走査方式」)などがある。
偏向反射面を2段有するポリゴンミラー5を用いた対向走査方式の構成例が図15に示されている。ここでは、光源Kからの光束及び光源Yからの光束は、それぞれ上段の偏向反射面で偏向され、光源Cからの光束及び光源Mからの光束は、それぞれ下段の偏向反射面で偏向されている。なお、図15における符号6Kはブラック用の走査レンズであり、符号6Cはシアン用の走査レンズであり、符号6Mはマゼンタ用の走査レンズであり、符号6Yはイエロー用の走査レンズである。
また、上記走査方式は、光源からの光束がポリゴンミラーの偏向反射面の法線に平行に入射する形態に限られない。ポリゴンミラーの偏向反射面の法線に対し角度を持って光源からの光束が入射しても良い。本明細書ではこの方式を「斜入射方式」と呼ぶこととする。図16には、対向走査方式で斜入射方式の構成例が示されている。ここでは、光源Kからの光束はポリゴンミラー5で偏向され、走査レンズ6a1と6bKを介して感光体ドラムK1上に集光される。光源Cからの光束はポリゴンミラー5で偏向され、走査レンズ6a1と6bCを介して感光体ドラムC1上に集光される。光源Mからの光束はポリゴンミラー5で偏向され、走査レンズ6a2と6bMを介して感光体ドラムM1上に集光される。光源Yからの光束はポリゴンミラー5で偏向され、走査レンズ6a2と6bYを介して感光体ドラムY1上に集光される。斜入射方式の利点は、偏向反射面が1段のポリゴンミラーで4つの光源からの光束の偏向が可能であるため、更に低コスト化を図ることができる。但し、斜入射方式を適用する場合には、走査線の曲がりと波面収差の劣化が生じるため、斜入射方式に対応した走査レンズを用いる必要がある。
1…光源、2…カップリングレンズ(第1光学系)、3…開口板、4…線像形成レンズ(第2光学系)、5…ポリゴンミラー(偏向器)、6a…走査レンズ(走査光学系の一部)、6b…走査レンズ(走査光学系の一部)、100…VCSELアレイ(面発光レーザアレイ)、500…レーザプリンタ(画像形成装置)、511…感光体ドラム(像担持体)、900…光走査装置、900A…光走査装置、K1,C1,M1,Y1…感光体ドラム(像担持体)。