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JP4895138B2 - エンジン始動性能判定装置 - Google Patents
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Description

本発明は、エンジン始動性能判定装置に関し、特に、車両のエンジン始動時に、バッテリ出力電圧及びエンジン回転数を計測し、これらの計測結果に基づいてエンジンの始動性能を判定する装置に関する。
近年、内燃機関としてのエンジンを搭載した車両において、例えば、交差点での信号待ちの場合等、当該車両の一時停止時に、いわゆるアイドルストップを行う車両が増加する傾向にある。このような場合、アイドルストップを行った後、エンジンを再始動できなければ、いわゆるエンジンストール状態となり、信号が変わっても車両を発進させることができずに、交通渋滞を招く等の弊害を生じるのみならず、乗員にも交通事故の危険等を招く。従って、後で確実にエンジンを再始動できる場合にのみ上述したアイドルストップを行うことが求められ、そのためにもエンジンの始動性能を精度良く判定することが必要とされる。
従来、車両のエンジン始動時に、バッテリ出力電圧及びクランキング回転数を計測し、これらの計測結果に基づいてエンジンの始動性能を判定する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
即ち、この特許文献1に記載の装置は、車両のエンジン始動時に、バッテリ出力電圧及びクランキング回転数を計測し、これらの計測結果に基づいてエンジン始動性能やバッテリ状態を判定するものである。
特開2006−240541号公報
上記特許文献1に記載の装置では、エンジン温度の変化やバッテリ状態の変化を加味した将来のエンジン始動性能を判定することは全く考慮されていない。しかしながら、実際の車両においては、車両の使用場所や周囲温度の影響によってエンジン温度が大きく変化する場合があり、また、車両の使用期間や走行距離が長くなるに連れてバッテリの内部状態が変化することも多い。従って、上記特許文献1に記載の装置では、将来のエンジン温度の変化やバッテリ状態の変化を加味して高精度にエンジン始動性能を判定することはできなかった。かかる観点から、車両の使用場所や周囲温度の影響如何に拘らず、また、車両の使用期間や走行距離が長くなっても高精度にエンジン始動性能を判定することを可能とする技術の開発が望まれている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エンジン温度の変化やバッテリ状態の変化を加味して高精度にエンジン始動性能を判定し得る技術を提供することを目的とする。
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき、必要に応じて作用効果等を付記しつつ説明する。
1.エンジンと蓄電装置とが搭載された車両における前記エンジンの始動性能を判定するエンジン始動性能判定装置であって、
前記車両の当該エンジンを始動するごとに、当該エンジンの始動時における前記蓄電装置の出力電圧(V)とエンジン回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する交点算出手段と、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
前記エンジンを始動するごとに、前記交点算出手段により算出した前記V−Nの交点と前記エンジン温度検出手段が検出した前記エンジン温度とを含むエンジン始動時のデータセットを記憶する記憶手段と、
前記エンジン始動時より後の時点において、前記エンジン温度検出手段が検出した当該後の時点における前記エンジンの温度及び前記記憶手段に記憶した前記エンジン始動時のデータセットに基づいて、当該後の時点における前記V−Nの交点を予測する交点予測手段と、
前記交点予測手段により予測した前記V−Nの交点に基づいて、当該後の時点における前記エンジンの始動性能の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とするエンジン始動性能判定装置。
手段1によれば、将来のエンジン温度変化を加味して高精度にエンジン始動性能の判定を行うことができる。
2.エンジンと蓄電装置とが搭載された車両における前記エンジンの始動性能を判定するエンジン始動性能判定装置であって、
前記車両の当該エンジンを始動するごとに、当該エンジンの始動時における前記蓄電装置の出力電圧(V)とエンジン回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する交点算出手段と、
前記蓄電装置の内部状態量を検出する蓄電装置内部状態量検出手段と、
前記エンジンを始動するごとに、前記交点算出手段により算出した前記V−Nの交点と前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した前記内部状態量とを含むエンジン始動時のデータセットを記憶する記憶手段と、
前記エンジン始動時より後の時点において、前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した当該後の時点における前記内部状態量及び前記記憶手段に記憶した前記エンジン始動時のデータセットに基づいて、当該後の時点における前記V−Nの交点を予測する交点予測手段と、
前記交点予測手段により予測した前記V−Nの交点に基づいて、当該後の時点における前記エンジンの始動性能の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とするエンジン始動性能判定装置。
手段2によれば、将来の蓄電装置の内部状態量の変化を加味して高精度にエンジン始動性能の判定を行うことができる。
3.前記内部状態量は、前記蓄電装置の内部抵抗R又はΔRであることを特徴とする手段2に記載のエンジン始動性能判定装置。
手段3によれば、将来の蓄電装置の内部抵抗R又はΔRの変化を加味して高精度にエンジン始動性能の判定を行うことができる。
4.前記内部状態量は、前記蓄電装置のSOC又はΔSOCであることを特徴とする手段2に記載のエンジン始動性能判定装置。
手段4によれば、将来の蓄電装置のSOC又はΔSOCの変化を加味して高精度にエンジン始動性能の判定を行うことができる。
5.前記内部状態量は、前記蓄電装置の残存容量Ah又はΔAhであることを特徴とする手段2に記載のエンジン始動性能判定装置。
手段5によれば、将来の蓄電装置の残存容量Ah又はΔAhの変化を加味して高精度にエンジン始動性能の判定を行うことができる。
6.前記交点予測手段は、前記記憶手段が前記エンジン始動時のデータセットを少なくとも2回以上の所定回数記憶した場合に、該所定回数のデータセットを用いて、前記後の時点におけるV−Nの交点を予測することを特徴とする手段1乃至5の何れかに記載のエンジン始動性能判定装置。
手段6によれば、当該車両の当該エンジンにおいて前記後の時点より以前の少なくとも2回以上の所定回数分のデータセット(実測値)によりエンジンの始動性能を判定するので、当該エンジン又は蓄電装置固有の自己学習によりエンジン温度又は蓄電装置の電気特性の経時変化に対応したエンジン始動性能の判定を行うことができる。また、少なくとも2回以上の分のデータセット(実測値)により後の時点におけるV−Nの交点を予測するので、交点予測の精度を確保することが可能である。
7.前記エンジン始動時のデータセットは、前記後の時点より以前の所定期間内に取得したもののみを用いることを特徴とする手段1乃至6の何れかに記載のエンジン始動性能判定装置。
ここで、後の時点より以前の所定期間とは、エンジン又は蓄電装置が経年劣化していないような期間をいう。エンジンも蓄電装置も経年劣化していくので、このような経年劣化を生じる前であれば、信頼性のあるエンジン始動時のデータセットを取得可能であるので、所定期間は長くなっても良い。経年劣化を生じた後であれば、当該時点の経年劣化の度合いと同じ度合いの期間を所定期間とすることが可能である。
手段7によれば、当該車両の当該エンジンにおいて前記後の時点より以前の所定期間内のデータセット(実測値)によりエンジンの始動性能を判定するので、エンジン温度又は蓄電装置の電気特性の経時変化に対応したエンジン始動性能の判定を行うことができる。
8.前記エンジン回転数(N)は、前記エンジンの始動時における蓄電装置の出力電圧(V)の変動を検出し、該変動の周期を所定の計算式に算入して求めることを特徴とする手段1乃至7の何れかに記載のエンジン始動性能判定装置。
手段8によれば、始動中のバッテリの出力電圧(V)の変動を検出することによりエンジン回転数(N)を算出し得るので、V−Nの交点を算出する上でVもNも蓄電装置の出力電圧から求めることができる。従って、より簡単な構成のエンジン始動性能判定装置を実現可能である。
9.エンジンと蓄電装置とが搭載された車両における前記エンジンの始動性能を判定するエンジン始動性能判定装置であって、
前記車両の当該エンジンを始動するごとに、当該エンジンの始動時における前記蓄電装置の出力電圧(V)とエンジン回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する交点算出手段と、
前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
前記蓄電装置の内部状態量を検出する蓄電装置内部状態量検出手段と、
前記エンジンを始動するごとに、前記交点算出手段により算出した前記V−Nの交点と、前記エンジン温度検出手段が検出した前記エンジン温度と、前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した前記内部状態量とを含むエンジン始動時のデータセットを記憶する記憶手段と、
前記記憶したデータセットに基づいて、エンジン温度、蓄電装置内部状態量ごとのV−Nマップを構築し、前記記憶手段に記憶させるV−Nマップ構築手段と、
前記エンジン始動時より後の時点において、前記エンジン温度検出手段が検出した当該後の時点における前記エンジンの温度、前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した当該後の時点における前記内部状態量及び前記記憶手段に記憶した前記V−Nマップに基づいて、当該後の時点における前記V−Nの交点を予測する交点予測手段と、
前記交点予測手段により予測した前記V−Nの交点に基づいて、当該後の時点における前記エンジンの始動性能の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とするエンジン始動性能判定装置。
手段9によれば、エンジンの温度変化とバッテリの内部状態変化の双方を加味して判定するので、更に、高精度にエンジン始動性能を判定することができる。
また、エンジン温度、蓄電装置内部状態量ごとに構築したV−Nマップに基づいて、後の時点におけるV−Nの交点を予測するので、より高精度にエンジン始動性能を判定し得る。
[1.エンジン始動性能判定要因]
まず、初めに、本発明者らは、エンジン始動性能が不良であると判定される場合、即ち、エンジンを始動できなくなる場合は、どのような要因が考えられるかについて解析した。図1は、車両における後述するECU・リレー(図5参照)に印加される電圧[Vecu]とエンジン回転数nとの関係(V−N特性)を示すグラフである。図中、符号Vrnoは、スタータ(始動モータ)への電力ラインのリレーがOFFしない電圧、符号Venrは、点火ECU(エンジンECU[図5参照]内の点火部)がリセットしない電圧、をそれぞれ表している。また、符号nIaは、エンジンの点火可能な回転数である。即ち、車両において、後述する蓄電装置(バッテリ)の能力が低下しその出力電圧値が所定の閾値以下となった場合には、点火ECU(エンジンECU内の点火部)がリセットしてエンジンに点火できなくなる。また、蓄電装置(バッテリ)の能力が更に低下しその出力電圧値が他の所定の閾値以下となった場合には、蓄電装置とスタータ(始動モータ)等を含む負荷とを接続する電力ラインに設けられたリレーをOFF制御することで蓄電装置を負荷から切り離してそれ以上の放電を無くして劣化を防止するようになっている。図1に示すグラフの縦軸におけるECU・リレーに印加される電圧[Vecu]が上記他の所定の閾値以下となった場合には、蓄電装置とスタータ(始動モータ)を接続するリレーがOFF制御されるので、イグニッションキーを回してもスタータ(始動モータ)は起動されずエンジンを始動できなくなる。また、エンジン始動時には、始動モータ(スタータ)の回転をクランク軸に伝達してクランク軸に初期回転を付与し、このクランク軸の初期回転中に点火装置により点火してエンジンを始動させるが、その回転数に点火可能な回転数があり、この回転数を下回ればエンジンを始動させることはできない。
さて、本発明者らによる解析の結果、実際の車両において、始動性能が不良であるとは、図1において、下記条件のいずれかが成立した状態であることが分かった。即ち、
(1)回転数一電圧関係式(V−N特性)から求められる回転数n=0で、スタータ(始動モータ)の突入電流による電圧低下が最大となる時の予測電圧Vp1が、上述したリレーOFFしない電圧Vrnoを下回っている。
(2)回転数一電圧関係式(V−N特性)から求められる回転数n=点火可能な回転数nIaで、クランキング電流による予測電圧Vp2が、上述したECUリセットしない電圧Venrを下回っている。
(3)回転数一電圧関係式(V−N特性)から求められるECUリセットとなる電圧でのスタータ(始動モータ)の予測回転数Vp3が、点火可能な回転数nIaを下回っている。
従って、エンジン始動性能の良否判定は、判定条件(1)(2)(3)の全て、ないしは1つ以上を持つことで達成できることが明らかとなった。
[2.実験による検証]
本発明におけるエンジン始動性能判定の原理は、上述したエンジン始動時のV−N特性に大きく関係する。本発明者らは、将来のエンジン温度の変化や蓄電装置(バッテリ)の状態変化を加味しなければ、過去のエンジン始動時のV−N特性のデータから高精度に将来のある時点におけるエンジン始動性能を判定することはできないという基本認識を得た。そこで、エンジンの温度変化、バッテリの状態変化のそれぞれと上記したV−N特性の関係について考察する実験を行った。図2(a)は、エンジンの温度変化と上記V−N特性の関係について行った実験の条件と結果を示すグラフであり、図2(b)は、バッテリの状態変化と上記V−N特性の関係について行った実験の条件と結果を示すグラフである。
まず、図2(a)に示す実験では、エンジン温度が高温、0℃、低温1、低温2と変化(低下)した場合のV−N特性(V−Nの交点)を算出し、それらからエンジン温度が極低温に変化(低下)した時のV−N特性(V−Nの交点)を外挿予測してみた。また、同図には、エンジンを始動可能な電圧の閾値、回転数の閾値を、それぞれ縦軸に垂直に引いた太線、横軸に垂直に引いた太線で示している。図2(a)に示すように、エンジン温度低下に応じて、始動時V、Nともに低下することが分かった。そして、図2(a)に示す例では、エンジン温度が高温、0℃、低温1、低温2である間は、始動時V、Nともに、エンジンを始動可能な閾値を上回っており、従って、エンジン始動性能が良好と判定され得ることが分かった。しかしながら、エンジン温度が極低温に変化(低下)した場合に外挿予測される始動時V、Nの値では、Vはエンジンを始動可能な閾値を上回っているが、Nはエンジンを始動可能な閾値を下回り、即ち、始動可能な回転数が得られず、従って、エンジン始動性能が不良であると判定され得ることが分かった。このように、将来のエンジンの温度変化を加味しなければ、将来の時点におけるエンジンの始動性能を高精度に判定(将来予測)することはできない。
次に、図2(b)に示す実験では、バッテリの内部状態量として、バッテリの内部抵抗R及び充電率SOC(State Of Charge)が、内部抵抗は低いから高いまで、また、SOCは高いから低いまで、7段階に変化した場合のV−N特性(V−Nの交点)を算出し、それらからバッテリの内部抵抗Rが、更に高い量に変化した場合のV−N特性(V−Nの交点)を外挿予測してみた。また、同図にも、エンジンを始動可能な電圧の閾値、回転数の閾値を、それぞれ縦軸に垂直に引いた太線、横軸に垂直に引いた太線で示している。図2(b)に示すように、バッテリの内部抵抗Rの上昇及びSOCの低下に応じて、始動時V、Nともに低下ることが分かった。そして、図2(b)に示す例では、バッテリの内部抵抗R及びSOCが、上述したように、7段階に変化した場合は、始動時V、Nともに、エンジンを始動可能な閾値を上回っており、従って、エンジン始動性能が良好と判定され得ることが分かった。そして、バッテリの内部抵抗Rが、更に高い量に変化した場合に外挿予測される始動時V、Nの値では、V、N共にエンジンを始動可能な閾値をわずかに上回り、即ち、始動可能な電圧、回転数が得られ、従って、エンジン始動性能が良好であると判定され得ることが分かった。このように、将来のバッテリの内部状態変化を加味しなければ、将来の時点におけるエンジンの始動性能を高精度に判定(将来予測)することはできない。
更に、本発明者らは、同一車種における上記V−N特性を比較する実験を行った。即ち、図3(a)に示すように、走行距離が異なる同一車種の車両No.1から14について、図3(b)に示すように、バッテリの出力電圧[V]を変化させた場合のエンジン回転数[rpm]を測定し、プロットしてみた。図3からも明らかなように、車両ごとにV−N特性が異なることが分かった。従って、V−N特性に関するデータが仮に当該車種で得たデータであったとしても、予め記憶したデータでは、エンジン始動性能を高精度に判定(将来予測)することはできない。
[3.特徴]
以上、図2及び図3に示した実験結果からも、本発明者らはエンジン始動性能を高精度に判定(将来予測)するためには、エンジンの温度変化、或いはバッテリの内部状態変化を加味したエンジン始動性能の判定を行うと共に、予め記憶したデータではなく当該車両において実測した値に基づいて構築したV−N特性に関するデータを用いてエンジン始動性能を判定(予測)することが必要であるという知見を得るに至った。そこで、図4を参照して、かかる本発明のエンジン始動性能判定の特徴について説明する。図4は、当該車両における実測値により構築したV−N特性データに基づくエンジン始動性能の判定方法を説明する図である。図4のグラフにおいて、横軸は回転数[rpm]、縦軸はバッテリの出力電圧[V]を示す。図4において、nthは始動可能回転数閾値を示し、Vthは始動可能電圧閾値を示す。
そして、図中、今回値Cpと将来予測値Cfを結ぶ矢印は、エンジン温度変化時の予測を示す。即ち、図4のグラフは、エンジン始動ごとに取得した(1)エンジン始動時のV−Nの交点、(2)エンジン温度のデータセットに基づいて、将来のV−Nの交点を内挿及び外挿予測することを示している。
同図に示すように、今回値Cp、即ち、今回実測したV−Nの交点に関するデータを元に、エンジン温度変化の影響を考慮すると、将来予測値Cfを得ることができる。この将来予測値Cfが、同図に示すように、始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthをそれぞれ上回る場合には、当該将来時点におけるエンジン始動性能が良好であることを判定することができる。反対に、同図に示す場合とは異なり、将来予測値Cfが始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthを下回る場合には、当該将来時点におけるエンジン始動性能が不良であることを判定することができる。
以上は、エンジンの温度変化を加味したエンジン始動性能の判定を行う場合について述べたが、バッテリの内部状態変化を加味したエンジン始動性能の判定を行うようにしても良い。この場合には、図4中、今回値Cpと将来予測値Cfを結ぶ矢印は、バッテリ状態変化時の予測を示す。そして、図4のグラフは、エンジン始動ごとに取得した(1)エンジン始動時のV−Nの交点、(3)バッテリ状態量のデータセットに基づいて、将来のV−Nの交点を内挿・外挿予測することを示す。そして、エンジンの温度変化を加味する場合と同様に、今回値Cp、即ち、今回実測したV−Nの交点に関するデータを元に、バッテリ状態変化の影響を考慮すると、将来予測値Cfを得ることができる。この将来予測値Cfが、同図に示すように、始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthをそれぞれ上回る場合には、当該将来時点におけるエンジン始動性能が良好であることを判定することができ、反対に、同図に示す場合とは異なり、将来予測値Cfが始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthを下回る場合には、当該将来時点におけるエンジン始動性能が不良であることを判定することができるのは、エンジンの温度変化を加味する場合と同様である。
このような本発明のエンジン始動性能判定方法、即ち、当該車両における実測値により構築したV−N特性データに基づくエンジン始動性能の判定方法を用いることにより、第1の効果として、エンジン温度変化、或いはバッテリ状態変化を加味した将来のエンジン始動性能の判定が可能となる。また、第2の効果として、V−N特性データを当該車両における実測値に基づいて構築(自己学習)することによって、当該車両におけるエンジン始動モータやバッテリ等の電気系の特性の経時変化に対応したエンジン始動性能の判定が可能となる。
[4.構成]
以下、本発明のエンジン始動性能判定装置を具体化した実施形態について図面を参照しつつ具体的に説明する。
図5には、本実施形態に係るエンジン始動性能判定装置が適用される車両における、エンジン及び蓄電装置(バッテリ)と関連する主要部の構成が示されている。図5において、内燃機関としてのエンジン10は、ポート噴射式のガソリンエンジンである。また、エンジン10は、図示しない車両の動力発生装置であり、その出力軸(クランク軸12)が車両の駆動輪(図示せず)に機械的に接続されている。一方、発電装置20は、発電機としてのオルタネータ22と、オルタネータ22の出力を制御する制御回路としてのレギュレータ24とを備えて構成されている。ここで、オルタネータ22のロータは、エンジン10のクランク軸12と機械的に連結されており、クランク軸12の回転力によって回転する。
発電装置20のバッテリ端子TBには、鉛蓄電池としてのバッテリ30が接続されている。そして、バッテリ30には、これと並列に、スイッチ42を介して電気負荷44が接続されている。さらに、バッテリ30には、電気負荷として、エンジン10のクランク軸12に初期回転を付与する始動モータ(スタータ)40が接続されている。一方、バッテリ端子TBおよびバッテリ30間の給電ラインと、発電装置20のイグニッション端子TIGとは、イグニッションスイッチ46を介して接続されている。
上記バッテリ30の電気負荷としてのエンジンECU50及び電池ECU60は、それぞれマイクロコンピュータを主体として構成されており、内部に中央演算装置としてCPUや記憶装置としてのROM、RAMなども含んでいる。ここで、電池ECU60は、バッテリ30の温度を検出するバッテリ温度センサ54の検出値、さらにはバッテリ30の出力電圧を検出する電圧センサ56の検出値に基づき、バッテリ30の内部状態を監視する。尚、バッテリ30の能力が低下し、電圧センサ56の検出するバッテリ30の出力電圧値が所定の閾値以下となった場合には、バッテリ30と始動モータ(スタータ)40等を含む負荷とを接続する電力ラインに設けられたリレーRをOFF制御することでバッテリ30を負荷から切り離してそれ以上の放電を無くして劣化を防止するようになっている。
一方、エンジンECU50は、エンジン10や、発電装置20を制御対象とする。エンジンECU50は、エンジン10の温度を検出するエンジン温度センサ14の検出値に基づき、エンジン10の温度変化を監視する。尚、エンジンECU50は、電池ECU60から出力されるバッテリ30の内部状態(電池状態)を表す情報(例えばSOC:State of chargeなど)に基づき、発電装置20のバッテリ端子TBに印加される電圧(発電装置20の出力電圧)を制御する。詳しくは、エンジンECU50は、発電装置20の指令端子TRに、発電装置20の出力電圧の指令値(指令電圧)を出力する。これにより、レギュレータ24では、発電装置20の出力電圧を指令電圧に制御する。また、エンジンECU50は、発電装置20のモニタ端子TFを介して、発電装置20の発電能力を示す発電状態信号を取り込む。ここで、発電能力とは、レギュレータ24内のスイッチング素子のオン・オフの時比率(詳しくは、オン・オフ周期に対するオン時間の比:Duty)によって定量化される。
さらに、エンジンECU50は、車両の停止時において、エンジン10のアイドル回転速度制御を停止し、エンジン10を自動的に停止させるいわゆるアイドルストップ制御(自動停止処理)や、アイドルストップ制御からエンジン10を自動的に始動させる自動始動処理を行う。ここで、自動始動処理は、スタータ40を起動させることでエンジン10のクランク軸12に初期回転を付与した後、上述した点火装置41により点火する等の燃焼制御を行うことで実行される。尚、このような点火装置41により点火する等の制御は、図1に関して記述したエンジンECU(50)内の図示しない点火部が行う。
さて、本実施形態では、図5に示した構成において、エンジンECU50及び電池ECU60は、内部にエンジン始動性能判定部70を含んでいる。本実施形態に係るエンジン始動性能判定装置は、エンジン10と蓄電装置としてのバッテリ30とが搭載された上記車両におけるエンジン10の始動性能を判定する装置であり、主として、エンジンECU50及び電池ECU60内のエンジン始動性能判定部70と、エンジン10の温度を検出するエンジン温度検出手段としてのエンジン温度センサ14と、バッテリ30の出力電圧を検出する電圧センサ56とから構成されている。尚、エンジン回転数(N)は、クランキング回転数を検出して求める公知の方法により取得することができる。
エンジンECU50及び電池ECU60内のエンジン始動性能判定部70は、本実施形態の特徴部分であり、交点算出手段として、エンジン10を始動するごとに、始動時におけるバッテリ30の出力電圧(V)とエンジン10の回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)CV−N(図1,2,4参照)を算出する。また、算出した上記V−Nの交点のデータとエンジン温度センサ14が検出したエンジン温度のデータとをエンジン始動時のデータセットとして、記憶手段としてのエンジン始動性能判定部70内の図示しないEEPROM等に記憶する。さて、エンジン始動性能判定部70は、交点予測手段として上記エンジン始動時より後の時点において、エンジン温度センサ14が検出した当該後の時点におけるエンジン10の温度及び記憶した過去のエンジン始動時のデータセットに基づいて、当該後の時点におけるV−Nの交点を内挿・外挿予測する。そして、その予測したV−Nの交点(図4に示した将来予測値Cfに相当する)に基づいて、判定手段として当該後の時点におけるエンジン10の始動性能の判定を行う。判定は、その予測したV−Nの交点(将来予測値Cfに相当する)が、図4に示した始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthをそれぞれ上回るか否かにより行う。その予測したV−Nの交点(将来予測値Cfに相当する)が、始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthをそれぞれ上回る場合には、当該後の時点におけるエンジン始動性能が良好であると判定する。反対に、その予測したV−Nの交点(将来予測値Cfに相当する)が、始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthのいずれか一方を下回る場合には、当該後の時点におけるエンジン始動性能が不良であると判定する。
このように、本実施形態のエンジン始動性能判定装置によれば、将来のエンジン10の温度変化を加味して高精度にエンジン10の始動性能の判定を行うことができる。
以上に述べた例では、エンジンの温度変化を加味したエンジン始動性能の判定を行う場合について述べたが、バッテリの内部状態変化を加味したエンジン始動性能の判定を行うようにしても良い。即ち、本実施形態では、更に、上述したエンジン始動性能判定部70は、交点算出手段として、エンジン10を始動するごとに、始動時におけるバッテリ30の出力電圧(V)とエンジン10の回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する。また、蓄電装置内部状態量検出手段として、蓄電装置としてのバッテリ30の内部状態量を検出する。また、算出したV−Nの交点のデータと検出したバッテリ30の内部状態量のデータとをエンジン始動時のデータセットとして、記憶手段としてのエンジン始動性能判定部70内の図示しないEEPROM等に記憶する。さて、エンジン始動性能判定部70は、交点予測手段として上記エンジン始動時より後の時点において、蓄電装置内部状態量検出手段として検出した当該後の時点におけるバッテリ30の内部状態量及び記憶した過去のエンジン始動時のデータセットに基づいて、当該後の時点におけるV−Nの交点を内挿・外挿予測する。そして、その予測したV−Nの交点(図4に示した将来予測値Cfに相当する)に基づいて、判定手段として当該後の時点におけるエンジン10の始動性能の判定を行う。判定は、その予測したV−Nの交点(将来予測値Cfに相当する)が、図4に示した始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthをそれぞれ上回るか否かにより行う。その予測したV−Nの交点(将来予測値Cfに相当する)が、始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthをそれぞれ上回る場合には、当該後の時点におけるエンジン始動性能が良好であると判定する。反対に、その予測したV−Nの交点(将来予測値Cfに相当する)が、始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthのいずれか一方を下回る場合には、当該後の時点におけるエンジン始動性能が不良であると判定する。
このように、本実施形態のエンジン始動性能判定装置によれば、将来のバッテリ30の内部状態量の変化を加味して高精度にエンジン10の始動性能を判定することができる。
上記例において、蓄電装置内部量状態検出手段としてのエンジン始動性能判定部70は、バッテリ30の内部状態量として、バッテリ30の内部抵抗R又はΔRを検出する。バッテリ30の内部抵抗R又はΔRを検出することにより、将来のバッテリ30の内部抵抗Rの変化を加味して高精度にエンジン10の始動性能を判定することができる。また、バッテリ30のSOC又はΔSOC、或いはバッテリ30の残存容量Ah又はΔAhを検出するようにしても良い。バッテリ30のSOC又はΔSOCを検出することにより、将来のバッテリ30のSOCの変化を加味して高精度にエンジン10の始動性能を判定することができる。更に、バッテリ30の残存容量Ah又はΔAhを検出することにより、将来のバッテリ30の残存容量Ahの変化を加味して高精度にエンジン10の始動性能を判定することができる。
尚、以上に述べたバッテリ30の内部状態量としての、内部抵抗R又はΔR、SOC又はΔSOC、及び残存容量Ah又はΔAhのいずれか一つではなく、これらの内部状態量のうち2以上の内部状態量を検出するようにしても良い。これにより、バッテリ30の内部状態の変化を多方面から把握し、これら複数の内部状態変化を加味することで、より高精度にエンジン10の始動性能を判定することができる。
更に、本実施形態では、上記交点予測手段としてのエンジン始動性能判定部70は、記憶手段として上記エンジン始動時のデータセットを少なくとも2回以上の所定回数記憶した場合に、該少なくとも2回以上のデータセットを用いて、後の時点におけるV−Nの交点を内挿・外挿予測するのが望ましい。この望ましい形態では、上述したエンジン始動性能判定部70は、当該車両の当該エンジンにおいて後の時点より以前の少なくとも2回以上の分のデータ(実測値)によりエンジン10の始動性能を判定するので、当該エンジン10又はバッテリ30固有の自己学習によりエンジン温度又はバッテリ30の電気特性の経時変化に対応したエンジン10の始動性能の判定を行うことができる。交点予測の精度を確保するためにも、この所定回数は、例えば、10回程度であるのが望ましい。
また、上記エンジン始動時のデータセットは、後の時点より以前の所定期間内に取得したもののみを用いるのが好適である。ここで、後の時点より以前の所定期間とは、エンジン又は蓄電装置が経年劣化していないような期間をいう。エンジンも蓄電装置も経年劣化していくので、このような経年劣化を生じる前であれば、信頼性のあるエンジン始動時のデータセットを取得可能であるので、所定期間は長くなっても良い。経年劣化を生じた後であれば、当該時点の経年劣化の度合いと同じ度合いの期間を所定期間とすることが可能である。
これにより、当該車両の当該エンジン10において上記後の時点より以前の所定期間内のデータセット(実測値)によりエンジン10の始動性能を判定するので、エンジン10の温度又はバッテリ30の電気特性の経時変化に対応したエンジン10の始動性能の判定を行うことができる。
[5.動作]
次に、本実施形態に係るエンジン始動性能判定装置の始動性能判定データ取得処理について説明する。図6は、エンジン始動性能判定部70における始動性能判定データ取得処理のフローチャートである。この処理は、エンジン始動性能判定部70内のCPUがROM内に格納されたプログラムを、RAM領域を変数格納領域として使用しつつ実行することにより実現される。まず、始動性能判定データ取得処理が開始されると(ステップS1)、エンジンが始動されたか否かを判定し(ステップS2)、エンジンが始動された場合に(ステップS2でyes)、エンジン始動回数をカウントする(ステップS3)。即ち、今回のエンジン始動をカウントして、それまでの始動回数に1回をプラスする。次に、ステップS4乃至6のデータセットを検知・記憶する処理を行う。即ち、クランキング時のエンジン回転数Nを検知・記憶し(ステップS4)、クランキング時のバッテリ出力電圧Vを検知・記憶し(ステップS5)、エンジン温度Tを検知・記憶する(ステップS6)。これらのパラメータは、上述したエンジン始動性能判定部70内のRAMの変数格納領域に格納される。そして、上記のデ一タセットを所定の複数回記憶したか否かを判定し、特に、この回数が規定値である、例えば10回よりも多いか否かを判定する(ステップS7)。デ一タセットを規定値よりも多い複数回記憶した場合には(ステップS7でyes)、デ一タセット取得フラグがOFFか否かを判定し(ステップS8)、デ一タセット取得フラグがOFFとなった場合には(ステップS8でyes)、データセットを更新する、即ち、最過去のデータと最新のデータを入れ替え(ステップS9)、処理の開始に戻る。デ一タセット取得フラグがOFFでなければ(ステップS8でno)、データセットを取得完了し、データセット取得フラグをONにしてから(ステップS10)、処理の開始に戻る。このように、本実施形態によれば、例えば、10回という規定回数よりも多い回数分のエンジン始動時のデータセットを記憶し、且つ、それら蓄積されたデータセットを最新のものに更新するので、常に最新のデータにより精度の高い始動性能の判定が可能である。
更に、本実施形態では、エンジン始動性能判定部70がエンジンの始動性能を判定したことにより、エンジンECU50がアイドルストップの制御を行う。図7は、エンジン始動性能判定部70を含むエンジンECU50によるアイドルストップの制御処理を示すフローチャートである。この処理は、エンジンECU50内のCPUがROM内に格納されたプログラムを、RAM領域を変数格納領域として使用しつつ実行することにより実現される。まず、アイドルストップの制御処理が開始されると(ステップS1)、車両が停止したか否かを判定し(ステップS2)、車両が停止していない場合には(ステップS2でno)、アイドルストップの必要が無いので、処理の開始に戻る。
車両が停止した場合には(ステップS2でyes)、データセット取得フラグがONであるか否かを判定する(ステップS3)。即ち、図6に述べた処理において、規定回数分の最新のデータが取得済みである場合にのみエンジン再始動の可否を判定するためである。データセット取得フラグがONである場合には(ステップS3でyes)、エンジン再始動の可否を判定するために、V−Nの交点を内挿・外挿予測する(ステップS4)。そして、この内挿・外挿予測した結果に基づき、アイドルストップした後にエンジンを再始動することができるか否かを判定する(ステップS5)。エンジンを再始動することができると判定した場合には(ステップS5でyes)、アイドルストップを実施、即ち、エンジンを停止し(ステップS6)、処理の開始に戻る。反対に、エンジンを再始動することはできないと判定した場合には(ステップS5でno)、アイドルストップは実施せず、即ち、エンジンを停止せずに(ステップS7)、処理の開始に戻る。このように、本実施形態によれば、図6に述べた処理において、規定回数分の最新のデータが取得済みである場合にのみエンジン再始動の可否を判定し、上述したように、今回検知したエンジン温度を加味して、V−Nの交点を内挿・外挿予測し、その結果に基づき、アイドルストップした後にエンジンを再始動できるか否かを判定するので、エンジン温度の変化を加味した精度の高い始動性能の判定が可能である。そして、かかる精度の高い判定(事前予測)に基づいてアイドルストップの可否を決定するので、確実に再始動できる場合にのみアイドルストップを行うことが可能である。従って、アイドルストップを行った後、エンジンを再始動できずに、いわゆるエンジンストール状態となる事態を有効に防止できる。その結果、交差点の信号待ち等でも確実に車両を発進させることができ、交通渋滞や乗員の交通事故の危険等を未然に防止することに繋がる。
[6.変形例]
尚、以上に述べた例では、エンジン回転数(N)のデータは、クランキング回転数を検出して求める公知の方法により取得したが、エンジン回転数(N)をバッテリの出力電圧(V)から算出することも可能である。
かかる構成では、クランキング回転数を検出することは不要となる。従って、バッテリ30の出力電圧を検出する電圧センサ56だけを用いれば良いので、より簡略に本実施形態のエンジン始動性能判定装置を構成することが可能である。
以下、図8を参照して、この始動中のバッテリの出力電圧(V)の変動を検出することによりエンジン回転数(N)を算出する方法について述べる。図8には、エンジン始動時におけるバッテリの出力電圧(V)の電圧波形が示されている。即ち、同図には、エンジン始動時に、始動モータ(スタータ)が起動し、その回転が伝達されたクランク軸が回転(クランキング)を始めた時のバッテリの出力電圧(V)の電圧波形が示されている。かかるエンジン始動時のクランキング中において、シリンダの上支点、下支点によるエンジンフリクションの大きさの違いから始動モータ(スタータ)に必要とされるモータトルクは周期的に変動し、それに伴いバッテリの出力電圧(V)も周期的に変動する。
ここで、(あ)電圧変動が上昇から下降に変化するタイミングから、(い)次の電圧変動が上昇から下降に変化するタイミングまでの時間(か)を測定する。同様に、(い)〜(う)の時間を(き)、(う)〜(え)の時間を(く)として測定する。このバッテリの出力電圧(V)の変動の時間(か)〜(く)は、前述のようにシリンダの上死点、下死点の位置の変化時間を示している。従って、エンジンの気筒数や各気筒のシリンダ配置により、所定の計算を行うことにより、エンジン回転数(N)を算出することができる。
例えば、V8エンジンの場合、エンジンクランク1回転あたりのシリンダのフリクション変化回数は4回である、つまり、上死点から上死点への移動に伴う、バッテリの出力電圧(V)の変動の時間が、周期=120msと測定された場合、エンジン回転数(N)(rpm)は、60(秒)/(周期(秒)*エンジンクランク1回転あたりのシリンダのフリクション変化回数)で表される。従って、以下の数式1よりエンジン回転数(N)(rpm)は、125(rpm)となる。
[数1] N=60/(120/1000*4)=125(rpm)――――(1)
このように、始動中のバッテリの出力電圧(V)の変動を検出することによりエンジン回転数(N)を算出することが可能である。このように、本変形例によれば、エンジンの始動時におけるV−Nの交点を算出する上で、VもNも蓄電装置の出力電圧から求められる、具体的には、バッテリ30の出力電圧を検出する電圧センサ56だけを用いて算出することができる。従って、より簡単且つ低コストに本実施形態のエンジン始動性能判定装置を構成することが可能である。
以上に述べたように、本変形例では、エンジン回転数(N)は、エンジンの始動時における蓄電装置の出力電圧(V)の変動を検出し、該変動の周期を上述した所定の計算式に算入して求めるようにしている。これにより、始動中のバッテリの出力電圧(V)の変動を検出することによりエンジン回転数(N)を算出し得るので、V−Nの交点を算出する上でVもNも蓄電装置の出力電圧から求めることができる。従って、より簡単な構成のエンジン始動性能判定装置を実現可能である。具体的には、図5において、バッテリ30の出力電圧を検出する電圧センサ56を用いて始動中のバッテリ30の出力電圧(V)の変動を検出すれば良いので、より簡略に本実施形態のエンジン始動性能判定装置を構成することが可能である。
[7.他の実施形態]
以上の実施形態では、エンジンの温度変化、或いはバッテリの内部状態変化のいずれかを加味したエンジン始動性能の判定を行う例について説明したが、エンジンの温度変化とバッテリの内部状態変化の双方を加味したエンジン始動性能の判定を行うことも可能である。このような本発明の他の実施形態の特徴について、図9を用いて説明する。図9は、上述した図4と同様の図であり、本発明のかかる他の実施形態におけるエンジン始動性能の判定原理を示す概念図である。
即ち、エンジン始動性能を、更に、高精度に判定(将来予測)するためには、エンジンの温度変化とバッテリの内部状態変化の双方を加味したエンジン始動性能の判定を行うことが望ましい。この場合にも、予め記憶したデータではなく当該車両において実測した値に基づいて構築したV−N特性に関するデータを用いてエンジン始動性能を判定(予測)するのは勿論である。かかるエンジン始動性能判定の特徴について説明する。図9は、当該車両における実測値により構築したV−N特性データに基づくエンジン始動性能の判定方法を説明する図である。上述した図4と同様に、図9のグラフにおいて、横軸は回転数[rpm]、縦軸はバッテリの出力電圧[V]を示す。また、nthは始動可能回転数閾値を示し、Vthは始動可能電圧閾値を示す。
図9において、一点鎖線は、エンジン温度変化時の予測を示し、点線は、バッテリ状態変化時の予測を示す。即ち、図9は、エンジン始動ごとに取得した(1)エンジン始動時のV−Nの交点、(2)エンジン温度、(3)バッテリ状態量のデータセットに基づいて、マップを構築することを示している。そして、同図に示すように、今回値Cp、即ち、今回実測したV−Nの交点に関するデータを元に、エンジン温度変化の影響、バッテリ状態変化の影響をそれぞれ考慮すると、将来予測値Cfを得ることができる。この将来予測値Cfが、同図に示すように、始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthをそれぞれ上回る場合には、当該将来時点におけるエンジン始動性能が良好であることを判定することができる。反対に、同図に示す場合とは異なり、将来予測値Cfが始動可能回転数閾値nth、始動可能電圧閾値Vthを下回る場合には、当該将来時点におけるエンジン始動性能が不良であることを判定することができる。
このような本発明の他の実施形態におけるエンジン始動性能の判定、即ち、当該車両における実測値により構築したV−N特性データに基づくマップを参照してエンジン始動性能の判定を行うことにより、第1の効果として、エンジン温度変化とバッテリ状態変化の双方を加味した将来のエンジン始動性能の判定が可能となる。また、第2の効果として、V−N特性データに基づくマップを当該車両における実測値に基づいて構築(自己学習)することによって、当該車両におけるエンジン始動モータやバッテリ等の電気系の特性の経時変化に対応したエンジン始動性能判定が可能となる。この本発明の他の実施形態では、エンジンECU50及び電池ECU60内のエンジン始動性能判定部70は、エンジン10と蓄電装置30とが搭載された車両におけるエンジン10の始動性能を判定するエンジン始動性能判定装置であって、エンジン10を始動するごとに、エンジン10の始動時における蓄電装置30の出力電圧(V)とエンジン回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する交点算出手段、エンジン10の温度を検出するエンジン温度検出手段と、蓄電装置30の内部状態量を検出する蓄電装置内部状態量検出手段、エンジン10を始動するごとに、交点算出手段により算出した上記V−Nの交点と、エンジン温度検出手段が検出した上記エンジン温度と、蓄電装置内部状態量検出手段が検出した上記内部状態量とを含むエンジン始動時のデータセットを記憶する記憶手段、記憶したデータセットに基づいて、エンジン温度、蓄電装置内部状態量ごとのV−Nマップを構築し、記憶手段に記憶させるV−Nマップ構築手段、上記のエンジン始動時より後の時点において、エンジン温度検出手段が検出した当該後の時点におけるエンジン10の温度、蓄電装置内部状態量検出手段が検出した当該後の時点における内部状態量及び記憶手段に記憶した上記V−Nマップに基づいて、当該後の時点におけるV−Nの交点を予測する交点予測手段、及び交点予測手段により予測した上記V−Nの交点に基づいて、当該後の時点におけるエンジン10の始動性能の判定を行う判定手段として機能するように構成される。本実施形態によれば、エンジンの温度変化とバッテリの内部状態変化の双方を加味して判定するので、更に、高精度にエンジン始動性能を判定することができる。また、エンジン温度、蓄電装置内部状態量ごとに構築したV−Nマップに基づいて、後の時点におけるV−Nの交点を予測するので、より高精度にエンジン始動性能を判定し得る。
尚、本実施形態によれば、マップを構築するために比較的大きなデータ量を記憶し処理する必要はあるが、より高精度にエンジン始動性能を判定することができる利点も大きい。
ところで、実際には、エンジン始動性能に影響を与える因子としては、他にエンジン内部のフリクションもある。従って、かかるエンジン内部のフリクションをも考慮することは可能である。しかしながら、エンジン内部のフリクションはエンジン温度やバッテリ状態よりも遥かに長い時間をかけて変化する要因なので、上述したエコランの制御に適用する場合等、比較的近い将来のエンジン始動性能を予測(推定)するのであれば、エンジン温度変化とバッテリ状態変化の双方を加味すれば十分であると解される。
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、アイドルストップの制御を行う、いわゆるエコランを行うためにエンジン始動性能の判定を行う例を示したが、エンジン始動性能の判定は、他の制御目的のためにも行うことができるのは勿論である。
本発明は、車両のエンジン始動時に、バッテリ出力電圧及びエンジン回転数を計測し、これらの計測結果に基づいてエンジンの始動性能を判定する装置に適用可能である。
ECU・リレーに印加される電圧[Vecu]とエンジン回転数nとの関係(V−N特性)を示すグラフである。 (a)は、エンジン温度変化とV−N特性の関係を示すグラフであり、(b)は、バッテリ状態変化とV−N特性の関係を示すグラフである。 同一車種におけるV−N特性を比較した実験結果を示す図であり、(a)は、実験に用いた試験車両(同一車種)の車両No.とその走行距離を示す表であり、(b)は、その電圧[V]を変化させた場合のエンジン回転数[rpm]を測定し、プロットしたグラフである。 本発明の実施形態に係るエンジン始動性能判定装置におけるエンジン始動性能判定方法の特徴を説明するための図である。 本発明の実施形態に係るエンジン始動性能判定装置の構成を示す図である。 本発明の実施形態に係るエンジン始動性能判定装置におけるエンジン始動性能判定部の実行するエンジン始動性能判定データ取得処理を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るエンジン始動性能判定装置におけるエンジン始動性能判定部を含むエンジンECUの実行するアイドルストップ制御処理を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るエンジン始動性能判定装置における始動中の電圧変動からエンジン回転数を検出する方法を説明するための図である。 本発明の他の実施形態に係るエンジン始動性能判定装置におけるエンジン始動性能判定方法の特徴を説明するための図である。
符号の説明
10 エンジン、 30 バッテリ、 50 エンジンECU、
60 電池ECU、 70 エンジン始動性能判定部、 14 エンジン温度センサ、
56 電圧センサ、 N エンジン回転数、 V バッテリの出力電圧、
V−N 座標上の交点(V−Nの交点)、 Cp 今回値、 Cf 将来予測値

Claims (9)

  1. エンジンと蓄電装置とが搭載された車両における前記エンジンの始動性能を判定するエンジン始動性能判定装置であって、
    前記車両の当該エンジンを始動するごとに、当該エンジンの始動時における前記蓄電装置の出力電圧(V)とエンジン回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する交点算出手段と、
    前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
    前記エンジンを始動するごとに、前記交点算出手段により算出した前記V−Nの交点と前記エンジン温度検出手段が検出した前記エンジン温度とを含むエンジン始動時のデータセットを記憶する記憶手段と、
    前記エンジン始動時より後の時点において、前記エンジン温度検出手段が検出した当該後の時点における前記エンジンの温度及び前記記憶手段に記憶した前記エンジン始動時のデータセットに基づいて、当該後の時点における前記V−Nの交点を予測する交点予測手段と、
    前記交点予測手段により予測した前記V−Nの交点に基づいて、当該後の時点における前記エンジンの始動性能の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とするエンジン始動性能判定装置。
  2. エンジンと蓄電装置とが搭載された車両における前記エンジンの始動性能を判定するエンジン始動性能判定装置であって、
    前記車両の当該エンジンを始動するごとに、当該エンジンの始動時における前記蓄電装置の出力電圧(V)とエンジン回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する交点算出手段と、
    前記蓄電装置の内部状態量を検出する蓄電装置内部状態量検出手段と、
    前記エンジンを始動するごとに、前記交点算出手段により算出した前記V−Nの交点と前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した前記内部状態量とを含むエンジン始動時のデータセットを記憶する記憶手段と、
    前記エンジン始動時より後の時点において、前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した当該後の時点における前記内部状態量及び前記記憶手段に記憶した前記エンジン始動時のデータセットに基づいて、当該後の時点における前記V−Nの交点を予測する交点予測手段と、
    前記交点予測手段により予測した前記V−Nの交点に基づいて、当該後の時点における前記エンジンの始動性能の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とするエンジン始動性能判定装置。
  3. 前記内部状態量は、前記蓄電装置の内部抵抗R又はΔRであることを特徴とする請求項2に記載のエンジン始動性能判定装置。
  4. 前記内部状態量は、前記蓄電装置のSOC又はΔSOCであることを特徴とする請求項2に記載のエンジン始動性能判定装置。
  5. 前記内部状態量は、前記蓄電装置の残存容量Ah又はΔAhであることを特徴とする請求項2に記載のエンジン始動性能判定装置。
  6. 前記交点予測手段は、前記記憶手段が前記エンジン始動時のデータセットを少なくとも2回以上の所定回数記憶した場合に、該所定回数のデータセットを用いて、前記後の時点におけるV−Nの交点を予測することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のエンジン始動性能判定装置。
  7. 前記エンジン始動時のデータセットは、前記後の時点より以前の所定期間内に取得したもののみを用いることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載のエンジン始動性能判定装置。
  8. 前記エンジン回転数(N)は、前記エンジンの始動時における蓄電装置の出力電圧(V)の変動を検出し、該変動の周期を所定の計算式に算入して求めることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のエンジン始動性能判定装置。
  9. エンジンと蓄電装置とが搭載された車両における前記エンジンの始動性能を判定するエンジン始動性能判定装置であって、
    前記車両の当該エンジンを始動するごとに、当該エンジンの始動時における前記蓄電装置の出力電圧(V)とエンジン回転数(N)の座標上の交点(V−Nの交点)を算出する交点算出手段と、
    前記エンジンの温度を検出するエンジン温度検出手段と、
    前記蓄電装置の内部状態量を検出する蓄電装置内部状態量検出手段と、
    前記エンジンを始動するごとに、前記交点算出手段により算出した前記V−Nの交点と、前記エンジン温度検出手段が検出した前記エンジン温度と、前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した前記内部状態量とを含むエンジン始動時のデータセットを記憶する記憶手段と、
    前記記憶したデータセットに基づいて、エンジン温度、蓄電装置内部状態量ごとのV−Nマップを構築し、前記記憶手段に記憶させるV−Nマップ構築手段と、
    前記エンジン始動時より後の時点において、前記エンジン温度検出手段が検出した当該後の時点における前記エンジンの温度、前記蓄電装置内部状態量検出手段が検出した当該後の時点における前記内部状態量及び前記記憶手段に記憶した前記V−Nマップに基づいて、当該後の時点における前記V−Nの交点を予測する交点予測手段と、
    前記交点予測手段により予測した前記V−Nの交点に基づいて、当該後の時点における前記エンジンの始動性能の判定を行う判定手段と、を有することを特徴とするエンジン始動性能判定装置。
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