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JP4895586B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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本発明は基体の表面に硬質被覆層を成膜してなる表面被覆切削工具に関する。
現在、切削工具は、WC基超硬合金、TiCN基サーメット等の硬質材料の表面に様々な硬質被覆層を成膜して摺動性、耐摩耗性、耐欠損性を向上させる手法が使われており、中でも物理気相合成法にて成膜された硬質被覆層は高硬度で耐摩耗性が高く、種々の用途に広く採用されている。かかる物理気相合成法の中において、特に、硬質被覆層の成膜方法として好適に用いられているアークイオンプレーティング法では、成膜時にドロップレットといわれる粗大溶融粒子が生成し、これが基体の表面に飛来し直径1μm以上もあるマクロ粒子となって硬質被覆層中に分散することが知られている。このマクロ粒子の発生は切れ刃のチッピングや欠損の要因となったり、切削加工面の平滑性が損なわれて切削工具の寿命が低下する要因となっている。
そこで、例えば、特許文献1では、アークイオンプレーティング法によって成膜された硬質膜(硬質被覆層)中のマクロ粒子を化学的または機械的に除去するか、またはレーザービームの照射によって微細孔に変えることによって、この微細孔が加工液(切削液)を保持する機能を有して硬質膜の摩擦・摩耗を低減できることが開示されている。
また、特許文献2では、アークイオンプレーティング法にて硬質皮膜(硬質被覆層)を成膜する方法において、ドロップレットをブラスト処理にて除去してポアを存在させたり、成膜時のアセチレンやメタンなどの反応ガスを化学量論比より多く反応させて硬質皮膜中に遊離カーボンを析出させた後でリン酸塩等でこの遊離カーボンを除去してポアを存在させることにより、ポアがミスト加工における切削油剤(切削液)の保持力を高めて硬質皮膜の摩擦・摩耗を抑制できることが開示されている。
特開2002−146515号公報 特開2005−153072号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2のように、硬質被覆層の表面に全面的にボイドを存在させる方法では、切屑を排出するすくい面においては硬質被覆層と切屑との潤滑性が十分であるが、切刃においてはボイドがチッピングや欠損の要因となりやすくなり、またボイド部分が切削されずに残存してしまい加工面が荒れるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためのものであり、その目的は、切屑処理性に優れ、かつ高い耐欠損性と良好な仕上面粗度を有する表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明は、切削液を用いて切削加工する湿式加工に用いる切削工具としては、すくい面においてはボイドを存在せしめて切削液の保持力を高めた方がよいものの切刃においては耐欠損性が高くしかも切削加工面粗度を平滑化するために硬質被覆層の表面にボイドを極力排除したほうがよいとの知見に基づくものである。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基体の表面に硬質被覆層を被覆した表面被覆切削工具において、前記硬質被覆層の少なくとも表面にボイドが分散するとともに、前記硬質被覆層の表面の切刃位置に存在する前記ボイドの面積比率が5面積%以下であるとともに、前記硬質被覆層の表面のすくい面位置に存在する前記ボイドの面積比率が8〜30面積%であることを特徴とするものである。
ここで、前記硬質被覆層の表面の前記切刃位置に存在する前記ボイドの面積比率が5面積%以下であることが、前記切刃の耐摩耗性および耐欠損性をさらに向上できる点で重要である
また、前記硬質被覆層の表面の前記すくい面位置に存在する前記ボイドの面積比率が〜30面積%であることが、すくい面における切屑処理の際の摩擦抵抗を低減できる点で重要である
なお、前記硬質被覆層の前記切刃位置における膜厚が前記すくい面位置における膜厚よりも薄いことが、切刃における耐欠損性が高く、かつすくい面において切屑によるこすれ摩耗によっても硬質被覆層が摩滅することなく良好な切屑処理ができる点で望ましい。
さらに、前記切刃が曲率半径R=0.005〜0.1mmのRホーニングを有する場合に、上記ボイドの分布が容易に実現できる。
本発明の表面被覆切削工具によれば、すくい面においては硬質被覆層表面にボイドが存在して切屑を排出する際の硬質被覆層の摩擦係数が低く切屑の排出性が良好であるとともに、切刃においては硬質被覆層表面のボイドの存在比率が低くて耐欠損性が高くかつ加工面が平滑化できるとともに、結果として優れた切削性能を発揮できるものである。
ここで、前記硬質被覆層の表面の切刃位置に存在するボイドの面積比率が5面積%以下であることによって、前記ボイドが原因でチッピングや欠損が発生することを低減できて前記切刃の耐欠損性をさらに向上させることができる。
また、前記硬質被覆層の表面のすくい面位置に存在するボイドの面積比率が〜30面積%であることによって、すくい面における耐摩耗性と切削液の保持力とを両立させて切屑処理の際の摩擦抵抗を低減できる。
なお、前記硬質被覆層の前記切刃位置における膜厚を前記すくい面位置における膜厚よりも薄くすることによって、切刃における耐欠損性が高く、かつすくい面において切屑によるこすれ摩耗によっても硬質被覆層が摩滅することなく良好な切屑処理ができる。
さらに、前記切刃が曲率半径R=0.005〜0.1mmのRホーニングを有する場合に、理由は不明であるが上記ボイドの分布が容易に実現できる傾向にある。
本発明の表面被覆切削工具の一例について、本発明の表面被覆切削工具の(a)概略斜視図、(b)概略断面図である図1、および本発明の表面被覆切削工具の一例を示す顕微鏡写真である図2を用いて説明する。
図1、図2によれば、本発明の表面被覆切削工具(以下、単に工具と略す)1は、主面にすくい面3を、側面に逃げ面4を、すくい面3と逃げ面4との交差稜線に切刃5を有し、基体2の表面に硬質被覆層6を成膜した構成となっている。
硬質被覆層6は、周期律表第4、5、6族元素、AlおよびSiから選ばれる1種以上の金属元素と、窒素、炭素、硼素および酸素から選ばれる1種以上の非金属元素との化合物の少なくとも1層にて構成されている。
本発明によれば、硬質被覆層6の少なくとも表面にボイド8が分散するとともに、硬質被覆層6の切刃5の表面に存在するボイド8の面積比率が、硬質被覆層6の表面のすくい面3位置に存在するボイド8の面積比率に比べて小さいことを特徴とするものである。
これによって、切刃5においては耐欠損性が高くおよび加工面粗度が小さくできるとともに、すくい面3においてはボイド8の存在によって切屑を排出する際の硬質被覆層6の摩擦係数が低く、結果として優れた切削性能を発揮できる。
つまり、硬質被覆層6の表面全体にボイド8が存在する場合には、ボイド8がクラックの起点となりやすくて切刃5における耐欠損性が低下する。逆に、硬質被覆層6の表面全体にボイド8が存在しない場合には、すくい面3における切屑の摩擦抵抗が大きくなり、摩耗が進行したり、切屑がすくい面3に溶着してしまうことがある。すなわち、いずれの場合にも切削性能を高めることができない。
なお、硬質被覆層6の表面に存在するボイド8の面積比率は、硬質被覆層6の表面についての走査型顕微鏡写真等の組織写真5μm以上×10μm以上の領域にて観察されるボイド8の面積比率を、ルーゼックス画像解析法によって測定することによって求めることができる。なお、面積比率の算出については任意領域の3箇所以上について測定し、その平均値から算出する。
また、ボイド8のサイズは、平均直径が0.2〜10μm、平均深さが0.1〜2μmであることが、切削液の保持性が高くかつ硬質被覆層の耐摩耗性がさほど低下しない点で望ましい。
ここで、硬質被覆層6の表面の切刃5の位置に存在するボイド8の面積比率が5面積%以下であることが、衝撃が最もかかる切刃5においてクラックの起点となるボイド8の影響が低減できて切刃5の耐欠損性をさらに向上できる点で望ましい。さらに、硬質被覆層6の切刃5の位置における算術平均粗さ(Ra)は0.12μm以下であることが切刃5の耐欠損性が高く、かつ切削加工時の切削抵抗を低減できるために望ましい。なお、硬質被覆層6の切刃5の位置における算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601’01に準拠して触針式表面粗さ測定器を用いて、カットオフ値:0.25mm、基準長さ:0.8mm、走査速度:0.1mm/秒にて測定することができる。
また、硬質被覆層6の表面の切刃5位置に存在するボイド8の面積比率5面積%以下とすることにより、ボイド8が原因でチッピングや欠損が発生することを低減できて切刃5の耐欠損性をさらに向上できる。硬質被覆層6の表面の切刃5位置に存在するボイド8の面積比率の好ましい範囲は4面積%以下である。さらに、硬質被覆層6の表面のすくい面3の位置に存在するボイド8の面積比率が〜30面積%であることが、すくい面における耐摩耗性と切削液の保持力とを両立させて、すくい面3における切屑処理の際の摩擦抵抗を低減できる点で重要である。硬質被覆層6の表面のすくい面3の位置に存在するボイド8の面積比率の好ましい範囲は8〜20面積%である。
ここで、切刃5は曲率半径Rが0.005mm未満のシャープエッジであってもよいが、切刃5が曲率半径R=0.005〜0.1mmのRホーニングを有する場合のほうが、理由は不明であるが上記特定のボイド8の分布が容易に実現できる傾向にある。切刃5のRホーニングの好ましい範囲は、曲率半径R=0.02〜0.05mmである。
さらに、硬質被覆層6の膜厚が0.2〜5.0μmであることが、硬質被覆層6の耐欠損性が高くて膜剥離を防止できるとともに、硬質被覆層6が十分な潤滑性と耐摩耗性を有するため望ましい。なお、硬質被覆層6の切刃5の位置における膜厚をすくい面3の位置における膜厚よりも薄くすることによって、被削材の衝撃が最も大きい切刃5における耐欠損性が高く、かつすくい面3において切屑によるこすれ摩耗によっても硬質被覆層6が摩滅することなく良好な切屑処理ができる。硬質被覆層6の切刃5の位置における膜厚の好ましい範囲は0.5〜2μm、硬質被覆層6のすくい面3の位置における膜厚の好ましい範囲は1.5〜2.5μmである。
なお、基体2としては、炭化タングステンや、炭窒化チタンを主成分とする硬質相とコバルト、ニッケル等の鉄族金属を主成分とする結合相とからなる超硬合金、サーメット、窒化ケイ素や酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス、多結晶ダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素からなる硬質相とセラミックスや鉄族金属等の結合相とを超高圧下で焼成する超高圧焼結体等の硬質材料が好適に使用される。
(製造方法)
次に、本発明の表面被覆切削工具の製造方法について説明する。
まず、工具形状の基体を従来公知の方法を用いて作製する。
次に、この基体表面に、周期律表第4、5、6族元素、AlおよびSiから選ばれる1種以上の金属元素と、窒素、炭素および酸素から選ばれる1種以上の非金属元素との化合物からなる硬質被覆層を成膜する。
なお、成膜方法として、イオンプレーティング法やスパッタリング法等の物理気相合成(PVD)法を用いる。成膜方法の数例の詳細について説明すると、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とを含む複合硬質層をイオンプレーティング法で作製する場合には、金属チタンおよび金属アルミの2種類の金属ターゲットを独立として用いるか、またはチタンアルミ(TiAl)合金をターゲットに用い、アーク放電やグロー放電などにより金属源を蒸発させイオン化すると同時に、窒素源の窒素(N)ガスや炭素源のメタン(CH)/アセチレン(C)ガスと反応させて成膜する。このとき、硬質被覆層の緻密度や基体との密着力を高めるため、および硬質被覆層6中に所定のマクロ粒子10を分散させるために、30〜200Vのバイアス電圧を印加しながら成膜することが望ましい。
ここで、本発明における硬質被覆層6中のボイド8の分布状態を実現する方法の一例としては、成膜した硬質被覆層6中のマクロ粒子10の分布を変えることにより実現が可能となり、具体的には、成膜の途中または終了時にガスボンバード処理を行なう方法が好適である。この方法によれば、ガスボンバード処理ではエッジ部が選択的に研磨されることから、成膜された硬質被覆層6の切刃5表面におけるマクロ粒子10を選択的に除去することができ、成膜終了後において、硬質被覆層6の切刃5の表面に存在するマクロ粒子10の面積比率を、硬質被覆層6の表面のすくい面3位置に存在するマクロ粒子10の面積比率に比べて少ない構成とすることができる。
その後、成膜した硬質被覆層6に対して、ブラスト処理、ブラシと研磨剤を用いた研磨加工等の機械研磨加工によって硬質被覆層6の表面に存在するマクロ粒子10を除去する。この時、マクロ粒子10は硬質被覆層6のマクロ粒子10以外の正常部に埋め込まれた部分ごと除去されることから、マクロ粒子10が除去された部分にはボイド8が形成される。そして、研磨加工された硬質被覆層6におけるボイド8の分布は研磨加工する前の硬質被覆層6のマクロ粒子10の分布を反映するために、研磨加工された硬質被覆層6におけるボイド8の分布は、硬質被覆層6の切刃5の表面に存在するボイド8の面積比率を、硬質被覆層6の表面のすくい面3位置に存在するボイド8の面積比率に比べて少ない構成とすることができる。
平均粒径0.8μmの炭化タングステン(WC)粉末を主成分として、平均粒径1.2μmの金属コバルト(Co)粉末を10質量%、平均粒径1.0μmの炭化バナジウム(VC)粉末を0.2質量%、平均粒径1.0μmの炭化クロム(Cr)粉末を0.6質量%の割合で添加し混合して、プレス成形により溝入切削工具形状(GBA43R300NY)に成形した後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間焼成して超硬合金を作製した。さらに、作製した超硬合金にブラシ加工にて刃先処理(ホーニング)を施した。
このようにして作製した基体に対してアークイオンプレーティング法により表1に示す種々の組成にて硬質被覆層を成膜した。また、一部の試料については、成膜の途中または終了時に窒素ガスおよびアルゴンガスの混合ガスを用いたボンバード処理を表1の条件で行なって、成膜された硬質被覆層の切刃表面におけるマクロ粒子を除去した。
その後、成膜された硬質被覆層の表面を平均粒径5μmのアルミナ砥粒を使った湿式マイクロブラスト法を用いて表1の条件にてブラスト処理した。
得られた試料に対して、切刃およびすくい面のランド位置における硬質被覆層の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ボイドの面積比率を測定した。なお、表1中のボイドの面積比率は、顕微鏡写真について、切刃の稜線に対して平行な方向に100μm×切刃の稜線に対して垂直な方向に5μmの領域内におけるボイドの面積比率をルーゼックス画像解析法にて求め、任意3箇所における平均値をボイドの面積比率として表1に示した。また、硬質被覆層の膜厚は、切削工具の断面SEM写真より求めた。さらに、硬質被覆層の表面の切刃位置における算術平均粗さRaを接触式の表面粗さ計で任意3箇所について測定し、その平均値から求めた。具体的な測定方法は、JIS B0601’01に準拠して触針式表面粗さ測定器を用いて、カットオフ値:0.25mm、基準長さ:0.8mm、走査速度:0.1mm/秒にて測定した。
次に、得られた溝入切削工具形状のスローアウェイチップ(切削工具)を用いて以下の切削条件にて切削試験を行った。結果は表2に示した。
切削方法:断続旋削
被削材 :SCM440、4本の5mm幅溝入り
切削速度:100m/min
送り :0.2mm/rev
切り込み:2mm
切削状態:湿式
評価方法:2000回の衝撃を与えた段階での切刃およびすくい面の状態および欠損に至るまでの衝撃回数
Figure 0004895586
Figure 0004895586
表1、表2より、成膜の途中または終了時にボンバード処理をせず、硬質被覆層の表面全体にボイドが多く発生した試料No.9は、早期にチッピングが発生して工具寿命が短いものであった。また、スパッタ法にて成膜して成膜の途中または終了時にボンバード処理をせず、硬質被覆層の表面全体にボイドが一様な試料No.10でも、早期にチッピングが発生して工具寿命が短いものであった。さらに、成膜の途中または終了時にボンバード処理することに代えて成膜後にブラスト処理を行い、硬質被覆層の表面全体のボイドを一様に低減した試料No.11でも、すくい面において切屑の溶着が発生して工具寿命が短いものであった。
これに対して、本発明の範囲内である硬質被覆層の表面のすくい面位置におけるボイドの面積比率が切刃位置におけるそれよりも多い試料No.1〜8では、いずれも摩擦抵抗が低く切屑処理性が良好であり、かつ切刃における耐欠損性にも優れた良好な切削性能を発揮した。中でも、硬質被覆層の表面の切刃位置に存在するボイドの面積比率が5面積%以下で、かつ硬質被覆層の表面のすくい面位置に存在するボイドの面積比率が10〜30面積%の試料No.1〜3、7では特に衝撃回数を延ばすことができて工具寿命が長いものであった。
本発明の表面被覆切削工具の好適例を示す(a)概略斜視図、(b)要部拡大断面図である。 本発明の表面被覆切削工具の一例を示す図面代用写真である。
符号の説明
1 表面被覆切削工具
2 基体
3 すくい面
4 逃げ面
5 切刃
6 硬質被覆層
8 ボイド
10 マクロ粒子

Claims (3)

  1. 基体の表面に硬質被覆層を被覆した表面被覆切削工具において、前記硬質被覆層の少なくとも表面にボイドが分散するとともに、前記硬質被覆層の表面の切刃位置に存在する前記ボイドの面積比率が5面積%以下であるとともに、前記硬質被覆層の表面のすくい面位置に存在する前記ボイドの面積比率が8〜30面積%であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記硬質被覆層の前記切刃位置における膜厚が前記すくい面位置における膜厚よりも薄いことを特徴とする請求項に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記切刃が曲率半径R=0.005〜0.1mmのRホーニングを有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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