このように、適合値の書き込まれたマップや数式を用いることによって、単段噴射(メイン噴射のみ)の場合と同様、多段噴射の場合も、都度のエンジン運転状態に適した噴射態様(噴射パターン)で、エンジンに対して燃料の供給を行うことが可能になる。しかしながら、こうした装置を用いて多段噴射を行った場合には、短いインターバル(間隔)で連続的に噴射が行われることによる影響で、単段噴射の場合と比べて、目標のエンジン運転状態に対する制御誤差がより大きくなってしまうことが、発明者によって確認されている。例えば連続的に噴射された各噴射(特にメイン噴射以外の微量のサブ噴射)は、その噴射の前後で噴射を行ったことにより様々な影響を受ける。その1つが燃料噴射弁(例えばインジェクタ)の噴射特性、特にその個体差に係るものである。
すなわち、例えばエンジン制御システムの各要素を大量生産して大量販売しようとする場合には通常、例えばエンジン間で、また多気筒エンジンの場合は気筒(シリンダ)間でも、上記燃料噴射弁を含めた各種の制御部品の特性について幾らかの個体差が生じることになる。しかし大量生産する場合にその全て(例えば大量生産されて車両に搭載された全てのシリンダ)について、個体差も加味した適合値(最適な噴射パターン)を求めることは、現行の生産システムで考えた場合、手間がかかり過ぎて実情に即したものとはいえない。したがって、適合値の書き込まれたマップや数式を用いた場合でも、個体差による影響の全てが考慮された制御を行うことは困難である。
しかも上述の多段噴射を行う場合には、単段噴射の場合とは異なり、通常の噴射特性とは別に、多段噴射(複数回の連続噴射)に係る噴射特性についても、個体差の影響を受けることが発明者によって確認されている。したがって、上記多段噴射を通じて狙いどおりのエンジン運転状態を高い精度で得るためには、単段噴射の噴射特性とは別に、多段噴射の噴射特性も考える必要がある。このため、前述した特許文献1に記載される装置を含めた従来の装置では、特に多段噴射の制御に適用した場合において、エンジン運転状態の制御を高い精度で行うことが困難となる。
また、噴射制御を高い精度で行う場合には、制御部品の経年変化等に起因する特性変化も無視することができないものとなる。この点、前述した特許文献1に記載される装置を含めた従来の装置では、初期の段階において高い精度で最適値が得られたとしても、その後の特性変化の影響については知ることができない。このため、時間の経過と共に最適値からのずれが懸念されるようになる。またこの場合において、予め実験値等により劣化係数(経時的な劣化の度合に係る係数)の適合値を求めておき、これをマップや数式等として保持する構成なども考えられる。しかし、こうした経時的な特性変化についても部品ごとに上述の個体差があるため、やはり完全にその影響を消し去ることは困難である。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、多段噴射を通じて狙いどおりのエンジン運転状態をより高い精度で得るべく、経時的な特性変化も含めた時々の噴射特性を取得することのできる燃料噴射制御装置及び燃料供給系の診断方法を提供することを主たる目的とするものである。
以下、上記課題を解決するための手段、及び、その作用効果について記載する。
第1の発明では、エンジンでの燃焼に供される燃料を噴射供給する燃料噴射弁についてその噴射動作を制御する燃料噴射制御装置であって、前記エンジンの所定シリンダが無噴射運転中であることを少なくとも実行条件の1つとして、そのシリンダに対して、少なくとも多段噴射の噴射パターンを含む複数種パターンの噴射を、所定の順序で実行する噴射実行手段と、少なくとも、前記複数種パターンの1つ又は組み合わせからなる第1の噴射単位と、別の1つ又は組み合わせからなる第2の噴射単位とのそれぞれについて、エンジン運転状態又はその相当値の前記無噴射運転時の値からの全ての噴射による変動度合の総和を、その噴射条件と共に取得する変動度合取得手段と、を備えることを特徴とする。
ところで、前述した多段噴射(複数回の連続噴射)に係る噴射特性は、噴射パターン(燃料噴射弁の噴射態様)ごとに特性が異なる。すなわち、例えば噴射段数の異なる噴射パターン(例えば1段の単段噴射と2段の多段噴射)や噴射時間の異なる噴射パターン、さらには噴射インターバル(噴射間隔)の異なる多段噴射パターン等においては、それぞれエンジン運転状態に与える変動度合(燃料噴射によるエンジン運転状態の変動量)が異なる。例えば2段の多段噴射パターンにおいて、後段の噴射により生じるエンジン運転状態の変動度合(変動量)は、前段の噴射がなされることによって正側又は負側にシフト(変動)することがある。そして、この際のシフト量やシフト方向(正側又は負側)が、両噴射(前段及び後段の噴射)の噴射タイミング(開始・終了)、噴射時間、及び噴射インターバル等によって変わることが、発明者によって確認されている。
発明者は、これらの点に着眼し、経時的な特性変化等も反映された時々の上記多段噴射に係る噴射特性を知る(取得する)ことのできる装置として、上記第1の発明の装置を発明した。この第1の発明の構成であれば、上記変動度合取得手段により、上記複数種パターンの各噴射単位(上記複数種パターンの1つ又は組み合わせと別の1つ又は組み合わせ)のそれぞれについて、上記エンジン運転状態又はその相当値の無噴射運転時の値からの全ての噴射による変動度合の総和(該噴射単位に含まれる全ての噴射による変動度合)を取得することができる。そして、こうして取得されるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和(以下、変動パラメータという)は、各噴射パターン(又はその組み合わせ)がどの程度エンジン運転状態を変動させるものかを示すものとなり、いわばエンジン運転状態を制御する際の指標となる。また、この変動パラメータは、基本的には、噴射単位中の全ての噴射による総噴射量に相関するものとなる。したがって、上記構成によれば、上記噴射条件(例えばその噴射に係るシリンダ番号、噴射圧力、噴射段数、噴射タイミング、噴射時間、噴射インターバルの少なくとも1つ等)と共に、上記変動パラメータが取得されるようになり、ひいては時々の噴射特性を把握することなどが可能になる。そしてそれにより、データ蓄積によるデータ解析のほか、上記噴射特性の補正や上記燃料噴射弁を含めた燃料供給系の故障診断等についてもこれを、より容易且つ的確に行うことができるようになる。
また、都度の噴射特性を取得する場合には、上記各噴射単位(それぞれ噴射パターンの1つ又は組み合わせ)の変動パラメータについて、あるいは必要に応じて比較前の処理としてこれに換算を行った後、両値の比較(例えばユーザによる比較又は所定の手段を通じて自動的に行われる比較)を行うことが有効である。こうすることで、比較する一方の噴射単位について、他方を基準にした上記変動パラメータのずれ度合(例えば差分や比率等)を求めることが可能になる。そして、それら両値のずれ度合に基づいて、都度の噴射特性(特に多段噴射に係る噴射特性)を検出することなどが可能になる。なお、上記比較の基準とする他方の噴射単位としては、真値との誤差が少ないもの(絶対的な正確性の高いもの)を用いることが好ましい。こうした構成であれば、上記一方の噴射単位の変動パラメータについて、その他方からの相対的なずれ度合を求めることで、絶対的なずれ度合も間接的に求められることになる。
上記エンジン運転状態としては、エンジン回転速度の他、例えば筒内圧センサやノックセンサ等により検出される燃焼状態(エンジントルクと相関)などを用いることができる。また、直接的なエンジン運転状態に代えて、例えば適宜のセンサ(例えばNOxセンサ)等により検出される特定排気成分(例えばNOx)の量や、当該エンジンの搭載された車両の挙動(例えば車両速度)等といったエンジン運転状態を間接的に示すエンジン運転状態の相当値を用いることもできる。さらに、エンジン運転状態を精度よく取得するため、これらパラメータの複数を組み合わせて用いるようにしてもよい。
第2の発明では、上記第1の発明の装置における前記変動度合取得手段が、前記噴射の実行条件及び前記第1の噴射単位及び前記第2の噴射単位がそれぞれ同一である状態で複数個の前記変動度合の総和を得て、その平均値として、前記変動度合の総和を取得するものであることを特徴とする。こうした構成であれば、都度の噴射条件等のばらつきによる誤差が低減され、より正確な変動パラメータ(前記変動度合の総和)を取得することができるようになる。
上記第1又は第2の発明の装置について、上記各噴射単位に係る噴射の種類(例えば各噴射パターンの噴射態様や、噴射単位における噴射パターンの組み合わせ態様等)や、当該装置の用途等によっては、第4の発明のように、前記変動度合取得手段により取得された各噴射単位についての変動度合の総和(変動パラメータ)を、所定の比較条件に合うように換算する換算手段を備える構成とすることが有効である。
こうした構成であれば、上記各噴射単位について所定の比較条件に合った換算値(変動パラメータの換算値)を自動的に得ることができるようになり、ひいては上述の変動パラメータの比較が容易となる。例えば比較する前に一方の値に所定の倍率を掛けるなどして、比較対象とするパラメータ以外の影響を排除することで、上記比較をより的確に行うことが可能になる。
また上記装置について、その実用性を考えた場合には、例えば第3の発明のように、
・第1又は第2の発明の装置において、前記変動度合取得手段を通じて取得された各噴射単位についての変動度合の総和(変動パラメータ)を比較することにより、これら両値のずれ度合を取得する噴射ずれ取得手段を備える構成。
あるいは第5の発明のように、
・第4の発明の装置において、前記換算手段を通じて換算された前記各噴射単位についての換算値を互いに比較することにより、これら両値のずれ度合を取得する噴射ずれ取得手段を備える構成。
あるいは第8の発明のように、
・前記噴射ずれ取得手段により取得されたずれ度合に基づいて、前記燃料噴射弁による噴射特性を検出する噴射特性検出手段を備える構成。
あるいは第9の発明のように、
・前記噴射ずれ取得手段により取得されたずれ度合に基づいて、前記エンジンの運転状態を目標値に近づけるように、前記燃料噴射弁の噴射における噴射量又は噴射タイミングに係るパラメータの補正を行う噴射特性補正手段を備える構成。
といった構成を採用することが有益である。これらの構成であれば、上記噴射ずれ取得手段、噴射特性検出手段、噴射特性補正手段を通じて、上述の比較や、上記燃料噴射弁による噴射特性の検出、さらには上記燃料噴射弁の噴射に係る補正などを、自動的に行うことが可能になる。
ここで、上記第3又は第5の発明の装置については、第6の発明のように、前記噴射ずれ取得手段を、前記噴射の実行条件及び前記第1の噴射単位及び前記第2の噴射単位がそれぞれ同一である状態での複数回の前記比較により複数個の前記両値のずれ度合を得て、その平均値として、前記両値のずれ度合を取得するものとした構成が有効である。こうした構成であれば、都度の噴射条件等のばらつきによる誤差が低減され、より正確な前記両値のずれ度合を取得することができるようになる。
第7の発明では、上記第3、第5、又は第6の発明の装置において、前記噴射ずれ取得手段を、所定の噴射パターンからなる1つの前記第1の噴射単位に対して、特定パラメータの大小のみで互いに相違する複数種の噴射パターンにてそれぞれ構成される複数の前記第2の噴射単位をそれぞれ組み合わせて、それら各組み合わせについて組み合わせごとに前記両値のずれ度合を取得するものとしたことを特徴とする。こうした構成にすることで、1つの噴射単位(第1の噴射単位)を基準にして、特定パラメータ(例えば噴射インターバルや噴射時間等)の各値について噴射特性を高い精度で取得することが可能になる。
また、上記第9の発明の装置については、第10の発明のように、前記噴射特性補正手段を、前記燃料噴射弁の噴射に係る補正として同噴射の噴射量に係るパラメータの補正を行うものとした構成が有効である。
前述したように、上記変動パラメータは、基本的には、全ての噴射による総噴射量に相関するものとなる。そこで上記構成のように、前記噴射に係る補正の際に噴射量に係るパラメータを補正するようにすれば、目標のエンジン運転状態に対する制御誤差を的確に補償する(実際のエンジン運転状態を目標値に近づける)ことが可能になる。
なお、前記噴射量に係るパラメータとしては、噴射開始タイミング、噴射終了タイミング、噴射時間の少なくとも1つを用いることが有効である。特に噴射時間(燃料噴射弁の駆動時間と相関)は、直接的に噴射量に影響するものであり、パルス駆動の一般的なインジェクタ(燃料噴射弁)では、その通電時間の変更によって容易に、この噴射時間を補正(変更)することができる。また、噴射開始タイミングや噴射終了タイミングによって噴射量を可変とする場合には、例えば噴射終了タイミングが一定なら、噴射開始タイミングを変更することで、また噴射開始タイミングが一定なら、噴射終了タイミングを変更することで、噴射量を容易に変えることができる。もっとも、これらパラメータに限定されることなく、噴射量に係るパラメータであれば足り、例えば駆動動力の伝達に油圧室を介さない直動式のインジェクタ(例えば近年開発されつつある直動式ピエゾインジェクタ)等を用いて、噴射率(単位時間あたりに噴射される燃料量)を補正するようにしてもよい。
また、第11の発明のように、上記第9又は第10の発明の装置については、前記噴射特性補正手段を、前記燃料噴射弁の噴射に係る補正として、多段噴射パターンについての噴射インターバルを、前記エンジンの運転状態を目標値に近づけるように補正するものとした構成が有効である。
前述したように、多段噴射パターン(多段噴射の噴射パターン)にあっては、後段の噴射により生じるエンジン運転状態の変動量が、前段噴射の影響を受ける。そして、その影響の大きさや影響の方向(正又は負)は、前段の噴射と後段の噴射との間の噴射インターバルに応じて変わる(図12参照)。そこで上記構成のように、前記噴射に係る補正の際に、こうした噴射インターバルを補正するようにすれば、目標のエンジン運転状態に対する制御誤差を的確に補償する(実際のエンジン運転状態を目標値に近づける)ことが可能になる。
第12の発明では、上記第9〜第11のいずれかの発明の装置において、前記噴射特性補正手段の補正に係る補正係数又はその補正後の値を不揮発に保持可能とする補正係数保持手段を備えることを特徴とする。
こうした構成であれば、例えばエンジンが停止され(例えばイグニッションスイッチがオフされ)、当該装置に対する給電が遮断された後も、データ(補正係数の学習値)が不揮発に保持されるようになり、次回エンジン始動時も、前回エンジン始動時のデータに基づいて上記補正を行うことができるようになる。なお、この補正係数保持手段としては、例えば適宜の不揮発性メモリやバックアップRAM等を採用することができる。
なお、上記第1〜第12のいずれかの発明の装置に関し、前記所定シリンダが無噴射運転中であるか否かについては、他のアクチュエータに対する制御(指令)等で間接的に判断することも、エンジンや燃料供給系等の時々の状態をみて(センシングして)直接的に判断することもできる。
また、この無噴射運転中であるか否か以外の条件についてもこれを、上記実行条件として設定しておくことで、都度の噴射条件を統一することや、噴射条件ごとの噴射特性を検出することなども可能となる。この実行条件(前記噴射実行手段の実行条件)としては、例えば第13の発明のように、
・噴射圧力が所定の範囲内にあることをその成立要件の1つとするもの。
あるいは第14の発明のように、
・前記エンジンの回転速度が所定の範囲内にあることをその成立要件の1つとするもの。あるいは第15の発明のように、
・前記エンジンが減速中であることをその成立要件の1つとするもの。
あるいは第16の発明のように、
・トランスミッションに関する条件を含むもの。
あるいは、
・これらを任意に組み合わせた条件。
といった条件を採用することが有効である。こうした条件を採用することで、噴射実行時の条件(噴射圧力やエンジン回転速度等)を統一することや、これら条件(噴射圧力やエンジン回転速度等)の相違に応じた各噴射特性を検出することなどが可能となる。
また、上記第16の発明の装置においては、第17の発明のように、
・MT(手動操作方式の変速機)においてクラッチが切断状態にあることをその成立要件の1つとするもの。
あるいは第18の発明のように、
・AT(自動変速機)においてトルクコンバータ(T/C)のロックアップが解除状態にあることをその成立要件の1つとするもの。
といった条件を、前記噴射実行手段の実行条件として採用することが有効である。こうした条件を採用することで、例えば当該装置の搭載された車両の運転中(特に走行中)に上記噴射を行う場合であれ、駆動輪を介した路面からの外乱を抑制することが可能になる。そして、その噴射によって得た上記変動パラメータに基づいて上記燃料噴射弁の噴射特性を検出する場合には、路面からの外乱に起因した誤差が低減されることで、より精度の高い検出を行うことができるようになる。
第19の発明では、上記第1〜第18のいずれかの発明の装置において、前記噴射実行手段の実行条件を可変設定する噴射実行条件可変手段を備えることを特徴とする。こうした構成では、噴射実行条件可変手段により、上記実行条件が可変となるため、実行条件を変更してより柔軟に様々な用途に対応することが可能になる。また、こうした実行条件の変更と噴射特性の検出とを交互に行うことで、上記実行条件(噴射圧力やエンジン回転速度等)の相違に応じた各噴射特性を検出することなども容易となる。
第20の発明では、上記第1〜第19のいずれかの発明の装置において、前記変動度合取得手段が、所定の噴射パターンからなる前記第1の噴射単位と、該第1の噴射単位の噴射パターンに一乃至複数の噴射を加えた又は減じた噴射パターンからなる前記第2の噴射単位とについて、それぞれ前記変動度合の総和を取得するものであることを特徴とする。こうした構成にすることで、前記第1の噴射単位と前記第2の噴射単位との噴射パターンの相違する部分が、上記加えた又は減じた一乃至複数の噴射として明確になり、両者の比較が容易となる。そして、その比較により、相違部分である上記一乃至複数の噴射に関する噴射特性をより高い精度で取得することが可能になる。
第21の発明では、上記第1〜第20のいずれかの発明の装置において、前記変動度合取得手段が、所定の噴射パターンからなる前記第1の噴射単位と、その第1の噴射単位の噴射パターンに比して特定パラメータのみが異なる噴射パターンからなる前記第2の噴射単位との組み合わせについて、前記変動度合の総和を取得するものであることを特徴とする。こうした構成にすることで、特定パラメータ(例えば噴射段数や、噴射インターバル、噴射時間等)の相違に応じた噴射特性を高い精度で取得することが可能になる。
第22の発明では、上記第1〜第21のいずれかの発明の装置に関し、前記変動度合取得手段において、前記第1及び第2の噴射単位の少なくとも一方が、2段目以降の噴射として噴射タイミングをTDC(上死点)付近とする噴射を含んだ多段噴射パターンからなることを特徴とする。
前述した多段噴射に係る噴射特性を検出する上では、2段目以降の噴射が重要になる。そして、上記構成のように、噴射タイミングをTDC(上死点)付近とする噴射として、この2段目以降の噴射を実行するような構成とすることで、その噴射によりエンジン運転状態が大きく変動することになり、前記変動度合の総和を高い感度で得ることが可能になる。もっとも、前述した前段噴射による影響は、上記2段目以降の噴射の中でも特に最終段の噴射において顕著に現れるため、上記多段噴射に係る噴射特性をより的確に得る上では、上記2段目以降の噴射が当該噴射パターンにおける最終段の噴射である構成が特に有効である。
第23の発明では、上記第1〜第22のいずれかの発明の装置に関し、前記変動度合取得手段において、前記第1及び第2の噴射単位の少なくとも一方が、2段目以降の噴射としてその噴射時間を無効噴射時間(正常時に無噴射と噴射開始との境目となる時間)相当とする噴射を含んだ多段噴射の噴射パターンからなることを特徴とする。
こうした構成であれば、燃料量を低く抑えて運転性(ドライバビリティ)の悪化を抑制しながら、少なくとも噴射時間(ひいては噴射量)に係る噴射特性の一方向(噴射量でみて正側)のずれ度合については、これを的確に検出することができるようになる。例えば、実際の無効噴射時間が正常時よりも短くて本来「0」であるべき噴射量が正側にずれた場合、すなわち本来噴射されるべきでない噴射時間(通電時間)で噴射が行われた場合には、これをエンジン運転状態の変動(その変動度合は噴射時間又は噴射量のずれ度合に相当)として検出することが可能になる。なお、この構成についても、上記2段目以降の噴射を、当該噴射パターンにおける最終段の噴射とする構成が特に有効である。
第24の発明では、上記第1〜第22のいずれかの発明の装置に関し、前記変動度合取得手段において、前記第1及び第2の噴射単位が、それぞれ全ての噴射の噴射時間を微小とする噴射パターンからなることを特徴とする。
このように、全ての噴射の噴射時間(噴射量)を微小とすることで、運転性(ドライバビリティ)の悪化を抑制しつつ、上記変動パラメータ(前記変動度合の総和)を取得することが可能になる。
第25の発明では、上記第1〜第24のいずれかの発明の装置において、前記変動度合取得手段が、前記エンジンの通常運転時の制御において用いる噴射パターンについて、前記変動度合の総和を取得するものであることを特徴とする。
前述のように、エンジン制御においては一般に、所定の制御マップ(いわゆる適合マップ)が使用される。このマップには、通常、エンジンの通常運転時の制御において用いる噴射パターンが、予め実験等により最適値として書き込まれており、通常運転時には、このマップに基づいてエンジン制御が行われる。すなわち、実際のエンジン制御に役立てるためには、上記構成のように、こうした通常運転時の制御に用いる噴射パターンについて、上記変動パラメータ(前記変動度合の総和)を取得することが有効である。特に多段(2段以上)のサブ噴射(例えば、前述したパイロット噴射や、プレ噴射、ポスト噴射、アフター噴射等)を含む噴射パターンを上記通常運転時の制御に用いる場合には、より精密な噴射制御が要求されるようになる。このため、上記第1〜第24のいずれかの発明の装置は、こうした場合に適用して特に有効である。
第26の発明では、上記第1〜第25のいずれかの発明の装置において、前記変動度合取得手段により変動度合の総和を取得するに先立ち、前記第1及び第2の噴射単位の一方について真値との誤差を少なくする噴射補正を行っておく取得前補正手段を備えることを特徴とする。
こうした構成であれば、上記取得前補正手段による噴射補正で、前記第1及び第2の噴射単位の一方の噴射特性についてはこれを、真値との誤差の少ないもの(絶対的な正確性の高いもの)とすることができる。したがって上述のように、補正しない他方について、上記補正した一方からの相対的なずれ度合を求めることで、絶対的なずれ度合も間接的に求めることができるようになる。
第27の発明では、上記第1〜第26のいずれかの発明の装置に関し、前記変動度合取得手段において、前記第1及び第2の噴射単位に含まれる全ての噴射パターンが、それぞれパターン中の全ての噴射を1燃焼サイクル(例えば「720°CA」の期間)中に行う噴射パターンからなることを特徴とする。エンジン制御を高い精度で行うことのできるシステムを構築する上では、こうした噴射パターンが有益である。
また、多段噴射に係る噴射特性について、その検出や補正等を行う上では、第28の発明のように、
・前記噴射実行手段が、少なくとも、単段噴射又は多段噴射からなる互いに噴射段数の異なる複数種パターンの噴射を、所定の順序で実行するものであり、前記変動度合取得手段が、前記噴射段数の異なる複数種パターンの1つ又は組み合わせからなる第1の噴射単位と、別の1つ又は組み合わせからなる第2の噴射単位とについて、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものである構成。
あるいは第37の発明のように、
・前記噴射実行手段が、少なくとも互いに噴射インターバルの異なる2種類の多段噴射パターンの噴射を、所定の順序で実行するものであり、前記変動度合取得手段が、前記噴射インターバルの異なる2種類のパターンの一方及び他方からなる前記第1及び第2の噴射単位について、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものである構成。
あるいは第48の発明のように、
・前記噴射実行手段が、少なくとも互いに噴射タイミング(開始や終了のタイミング)の異なる2種類のパターンの噴射を、所定の順序で実行するものであり、前記変動度合取得手段が、前記噴射タイミングの異なる2種類のパターンの一方及び他方からなる前記第1及び第2の噴射単位について、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものである構成。
あるいは第49の発明のように、
・前記噴射実行手段が、少なくとも互いに噴射時間の異なる2種類のパターンの噴射を、所定の順序で実行するものであり、前記変動度合取得手段が、前記噴射時間の異なる2種類のパターンの一方及び他方からなる前記第1及び第2の噴射単位について、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものである構成。
あるいは第50の発明のように、
・前記噴射実行手段が、少なくとも互いに噴射率の異なる2種類のパターンの噴射を、所定の順序で実行するものであり、前記変動度合取得手段が、前記噴射率の異なる2種類のパターンの一方及び他方からなる前記第1及び第2の噴射単位について、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものである構成。
等々の構成を採用することが特に有効である。これらの構成によれば、上記各パラメータ(噴射段数、噴射インターバル、噴射タイミング、噴射時間、噴射率)について、多段噴射に係る噴射特性を、比較的容易に、且つ的確に取得することが可能になる。
また、上記第28の発明の装置については、第29の発明のように、前記噴射実行手段が、少なくとも、単段噴射又は多段噴射からなる第1の噴射パターンの噴射を行うとともに、その後、該第1の噴射パターンとは異なる段数の単段噴射又は多段噴射からなる第2の噴射パターンの噴射を行うものであり、前記変動度合取得手段が、前記第1の噴射パターンからなる第1の噴射単位と前記第2の噴射パターンからなる第2の噴射単位とについて、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものであり、該変動度合取得手段により取得された各噴射単位についての変動度合の総和を、それぞれ所定の単位噴射回数あたりに換算する換算手段(第4の発明の換算手段に相当)を備える構成が有効である。すなわち、例えば1回噴射(単段噴射)と2回噴射(2段の多段噴射)とについて、1回(単位噴射回数)あたりの変動パラメータを求める場合には、1回噴射については、その噴射による変動パラメータΔE1をそのまま取得する。一方、2回噴射の場合は、各噴射による変動パラメータΔE21及びΔE22の総和「ΔE21+ΔE22」を1回(1段)あたりに換算して、「(ΔE21+ΔE22)/2」(変動パラメータの換算値)を取得する。
こうした構成によれば、例えば実際に噴射制御に用いる各噴射パターンについて、単位噴射回数(単位噴射段数)あたりの変動パラメータの換算値を得ることが可能になり、ひいては前述のように、噴射特性の検出や補正、あるいはデータ解析等を行うことが可能になる。また、こうした構成であれば、上記第1及び第2の噴射単位がそれぞれ1つの噴射パターンからなるものに限定される。このため、上記各噴射単位についての、単位噴射回数あたりの変動パラメータの換算値を、簡易な制御で得ることが可能になる。
またこの場合、第30の発明のように、前記第1の噴射パターン及び前記第2の噴射パターンの一方が、単段噴射からなるものであり、他方が、多段噴射からなるものである構成とすることが有効である。こうして、単段噴射と多段噴射とを比較することで、前述の多段噴射に係る噴射特性を、より的確に求めることができるようになる。
また、特にこの場合において、より簡易且つ的確に、上記多段噴射に係る噴射特性を求める場合には、第31の発明のように、前記第1の噴射パターン及び前記第2の噴射パターンの一方が、単段噴射からなるものであり、他方が、2段の多段噴射からなるものである構成が有効である。
一方、上記第28の発明の装置について、前記第1の噴射単位及び前記第2の噴射単位の一方に噴射パターンの組み合わせを用いる構成の一例としては、例えば第32の発明のように、前記噴射実行手段が、少なくとも、単段噴射又は多段噴射からなる所定段数n段の第1の噴射パターンと、単段噴射又は多段噴射からなる所定段数m段の第2の噴射パターンと、前記n段と前記m段との和である「n+m」段の多段噴射からなる第3の噴射パターンとを、所定の順序で実行するものであり、前記変動度合取得手段が、前記第1の噴射パターン及び前記第2の噴射パターンの組み合わせからなる第1の噴射単位と、前記第3の噴射パターンからなる第2の噴射単位とについて、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものである構成が有効である。しかもこの構成では、上記第1及び第2の噴射単位の一方として所定の噴射パターンの組み合わせを用いて、上記第1の噴射単位と第2の噴射単位とを全噴射パターンの段数の総数(噴射回数の総数)の等しいペアとしているため、比較前に上記変動パラメータの換算を行わずとも上記比較を的確に行うことが可能になる。なお、上記第28の発明の装置において、上記第1及び第2の噴射単位の両方に噴射パターンの組み合わせを用いることも可能である。
ところで、こうした噴射段数(噴射回数)についての特性検出に特化して上記変動パラメータを取得する構成に対しても、上記第26の発明を適用することはできる。そしてこの場合には、例えば第33の発明のように、上記第28〜第32のいずれかの発明の装置において、前記変動度合取得手段により変動度合の総和を取得するに先立ち、前記第1及び第2の噴射単位の一方について所定の基準値に対しての噴射補正を行っておく基準補正手段(第26の発明の取得前補正手段に相当)を備える構成となる。
またこの場合、第34の発明のように、前記基準補正手段により基準値に対して補正される前記噴射単位の一方を、単段噴射の噴射パターンからなるものとすることが有効である。こうした構成であれば、補正済みの上記単段噴射に係る噴射特性を基準にして、多段噴射に係る噴射特性の補正等が可能になる。
第35の発明では、上記第33又は第34の発明の装置において、前記変動度合取得手段を通じて取得された各噴射単位についての変動度合の総和、及び、その変動度合の総和を所定の単位噴射回数あたりに換算した各噴射単位についての換算値の一方について、前記第1の噴射単位と前記第2の噴射単位との間でその値を比較することにより、これら両値のずれ度合を取得する噴射ずれ取得手段(第3又は第5の発明の噴射ずれ取得手段に相当)と、前記噴射ずれ取得手段により取得されたずれ度合に基づいて、前記基準補正手段により補正された前記噴射単位の一方を基準にして補正されない他方について噴射補正を行う相対補正手段と、を備えることを特徴とする。こうした構成であれば、補正済みの上記噴射単位の一方を基準とする補正が、未補正の他方に対して自動的に行われるようになり、その未補正の他方についての絶対的なずれ度合を間接的に補正することが可能になる。
第36の発明では、上記第35の発明の装置において、前記相対補正手段により補正された噴射単位を基準にして、さらに別の噴射単位について噴射補正を行う連続補正手段を備えることを特徴とする。こうした構成にすることで、補正された噴射単位(ひいては、該噴射単位に含まれる噴射パターン)を次々と基準に用いて、的確な補正が連鎖的に行われるようになる。特に1段の噴射から、2段、3段、…と順に補正を行うようにすれば、噴射段数の大きな多段噴射パターンの補正についてもこれを、より的確且つ効率的に行うことができるようになる。
また一方、噴射インターバルについての特性検出に特化して上記変動パラメータを取得する上記第37の発明の装置に関しては、第38の発明のように、前記噴射インターバルに応じた前記エンジン運転状態の変動度合の総和の変化態様について所定の波形が記憶された記憶手段と、前記変動度合取得手段を通じて取得された各噴射単位についての変動度合の総和、及び、その変動度合の総和を所定の単位噴射回数あたりに換算した各噴射単位についての換算値の一方について、前記第1の噴射単位と前記第2の噴射単位との間でその値を比較することによりそれら両値のずれ度合を取得する際に、所定の噴射パターンからなる1つの前記第1の噴射単位に対して、噴射インターバルの大小のみで互いに相違する複数種の多段噴射パターンにてそれぞれ構成される複数の前記第2の噴射単位をそれぞれ組み合わせて、それら各組み合わせについて組み合わせごとに前記両値のずれ度合を取得する噴射ずれ取得手段(第7の発明の噴射ずれ取得手段に相当)と、を備え、前記第2の噴射単位の複数種の噴射インターバルには、少なくとも前記記憶手段に記憶された波形の規則性を示す部分に相当する一乃至複数の噴射インターバルが含まれている、というような構成とすることが有効である。
発明者の実験によると、噴射インターバルに応じたエンジン運転状態の変動度合の総和(変動パラメータ)の変化態様は波形で表すことができる(図12参照)。すなわち、この波形を求めることができれば、噴射インターバルの補正、ひいてはエンジン運転状態の補正を的確に行うことができるようになる。そして、その波形を求める際に特に重要となるものが、周期と位相である。これらは、規則性を示す部分の噴射インターバルから推定することが可能である。例えば規則性を示す部分の間隔は周期に対応する。また、規則性を示す部分の位置と基準波形(上記記憶手段に記憶された波形)とを比較することで、位相が分かる。この点、上記構成によれば、規則性を示す部分について、噴射インターバルと都度の変動パラメータとの関係を求め、その時々の特性と基準波形とのずれを求めることができるようになる。そしてこれにより、上記波形の周期及び位相の検出、ひいては燃料噴射に係る補正を的確に行うことができるようになる。また、上記波形を検出する際には、基準となる第1の噴射単位(所定の噴射パターン)に対して第2の噴射単位(多段噴射パターン)の噴射インターバルのみを順次変更し、それら第1及び第2の噴射単位について上記変動パラメータを順次取得していく構成が有効である。こうすることで、上記波形を的確に検出することが可能になる。またこの際、第2の噴射単位の噴射インターバルを、上記規則性を示す部分の近傍に集中的に設定するようにすれば、上記規則性を示す部分をより的確に検出することが可能になる。
また、この第38の発明の装置において、前記規則性を示す部分については、第39の発明のように、前記記憶手段に記憶された波形のピーク部分及び節部分の少なくとも一方を用いることが有効である。こうすることで、上記波形の規則性を示す部分の検出が容易となる。具体的には、第40の発明のように、
・前記変動度合取得手段により取得された各噴射単位についての変動度合の総和に基づき、それら両値のずれ度合が「0」になる点として、前記第2の噴射単位の噴射インターバルに応じた同第2の噴射単位の噴射パターンによる前記エンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和の変化態様を示す波形の節の位置を検出する節検出手段を備える構成。
あるいは第42の発明のように、
・前記変動度合取得手段により取得された各噴射単位についての変動度合の総和に基づき、それら両値のずれ度合が極大又は極小(負側の極大値)になる点として、前記第2の噴射単位の噴射インターバルに応じた同第2の噴射単位の噴射パターンによる前記エンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和の変化態様を示す波形のピークの位置を検出するピーク検出手段を備える構成。
といった構成(又はこれら構成の組み合わせ)を採用することで、上記波形の規則性を示す部分(ピークや節)を的確に検出することができる。
また、上記波形の周期や位相について基準波形からのずれを求める場合には、第41の発明のように、
・上記第40の発明の装置において、前記節検出手段により検出された節の位置に基づいて節同士の間隔を求める節間隔取得手段と、前記節間隔取得手段により取得された節間隔に基づいて、前記記憶手段に記憶された波形と、前記第2の噴射単位の噴射インターバルに応じた同第2の噴射単位の噴射パターンによる前記エンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和の変化態様を示す波形との波形間周期ずれを求める周期ずれ取得手段を備える構成。
あるいは第43の発明のように、
・上記第42の発明の装置において、前記ピーク検出手段により検出されたピークの位置に基づいてピーク同士の間隔を求めるピーク間隔取得手段と、前記ピーク間隔取得手段により取得されたピーク間隔に基づいて、前記記憶手段に記憶された波形と、前記第2の噴射単位の噴射インターバルに応じた同第2の噴射単位の噴射パターンによる前記エンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和の変化態様を示す波形との波形間周期ずれを求める周期ずれ取得手段を備える構成。
あるいは第44の発明のように、
・上記第37〜第43のいずれかの発明の装置において、前記変動度合取得手段により取得された各噴射単位についての変動度合の総和に基づき、前記記憶手段に記憶された波形と、前記第2の噴射単位の噴射インターバルに応じた同第2の噴射単位の噴射パターンによる前記エンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和の変化態様を示す波形との波形間位相ずれを求める位相ずれ取得手段を備える構成。
といった構成(又はこれら構成の組み合わせ)を採用することが有効である。また、これらの構成を適宜に組み合わせて、例えば上記節間隔から求めた波形間周期ずれと上記ピーク間隔から求めた波形間周期ずれとの平均値として、上記波形間周期ずれを求める構成とすることなども、検出精度を高める上で有効である。
また、第45の発明では、上記第44の発明の装置において、前記位相ずれ取得手段により取得された前記第2の噴射単位の噴射パターンについての位相ずれに基づいて、前記エンジンの運転状態を目標値に近づけるように噴射インターバルを補正する噴射インターバル補正手段を備えることを特徴とする。
位相ずれを補正する場合には、上記基準波形に基づいてインターバルを補正する方法が的確で容易である。そして、上記構成にすることで、こうした補正を自動的に行うことが可能となる。
また、第46の発明では、上記第44又は第45の発明の装置において、前記位相ずれ取得手段により取得された前記第2の噴射単位の噴射パターンについての位相ずれに基づいて、前記エンジンの運転状態を目標値に近づけるように噴射開始タイミングを補正する噴射開始タイミング補正手段を備えることを特徴とする。
また、第47の発明では、上記第44〜第46のいずれかの発明の装置において、前記位相ずれ取得手段により取得された前記第2の噴射単位の噴射パターンについての位相ずれに基づいて、前記エンジンの運転状態を目標値に近づけるように噴射終了タイミングを補正する噴射終了タイミング補正手段を備えることを特徴とする。
位相ずれの生じる原因の1つとして、燃料噴射弁の動作遅れ、すなわち指令から動作(噴射実行又は噴射停止の動作)を開始するまでの遅れが考えられる。したがって、上記位相ずれを補償する場合には、上記第46又は第47の発明の構成のように、噴射開始タイミングや噴射終了タイミングを補正する構成が有益である。
一方、第51の発明では、上記第1〜第50のいずれかの発明の装置において、前記エンジンの回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、前記変動度合取得手段が、前記回転速度検出手段により検出されたエンジン回転速度に基づいて、前記全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものであることを特徴とする。
前記エンジン運転状態の変動度合の総和(変動パラメータ)は、主にエンジン回転速度として現れる。そのため、この変動パラメータを容易且つ的確に求める上では、上記のように、回転速度検出手段により、エンジン回転速度を検出し、変動度合取得手段により、その検出したエンジン回転速度に基づいて、上記変動パラメータを取得する構成が有効である。
また、第52の発明では、この第51の発明の装置において、前記変動度合取得手段が、前記回転速度検出手段により検出されたエンジン回転速度を、慣性モーメントを用いてエネルギー相当量に換算することにより、エネルギー値として、前記全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものであることを特徴とする。
前述のように、前記噴射単位によるエンジン運転状態の変動度合の総和(変動パラメータ)は、主にエンジン回転速度として現れる。しかしながら、その現れ方は、エンジン回転速度に応じて(高速時と低速時とで)異なる。したがって、こうした変動パラメータを精度よく検出する上では、上記のように、例えば慣性モーメントなどを用いて、上記エンジン回転速度をエネルギー相当量に換算する構成が有効である。こうすることで、上記エンジン回転速度の相違に起因した検出ばらつきを抑制することが可能になる。
また、これら第51又は第52の発明の構成について、現状のエンジン制御システムへの適用を考えた場合には、前記回転速度検出手段についてはこれを、第53の発明のように、
・前記エンジンの出力軸としてのクランク軸の回転速度に基づいて、前記エンジンの回転速度を検出するもの。
あるいは第54の発明のように、
・前記エンジンの吸気弁又は排気弁を駆動するための動弁カム軸の回転速度に基づいて、前記エンジンの回転速度を検出するもの。
とする構成(又は、上記クランク軸とカム軸との両方の回転速度を用いる構成)が有効である。上記クランク軸の回転速度や動弁カム軸の回転速度を検出する手段は、一般的なエンジン制御において、エンジン回転速度の検出や気筒判別に用いられている(例えばクランク角センサやカム角センサ)。このため、上記構成によれば、こうした既存の設備を用いてより容易に上述の回転速度検出手段を実現することが可能になる。
また、上記第51〜第54のいずれかの発明の装置については、第55の発明のように、前記回転速度検出手段を、前記エンジンの全気筒で燃焼が行われる燃焼サイクル周期(例えば「720°CA」周期)に対応した周期での、前記エンジンの回転速度を逐次検出するものとした構成が有効である。
多気筒エンジンの場合、それら気筒間でフリクションの大きさが異なることがある。この点、上記構成であれば、全気筒で燃焼が行われる周期でのエンジンの回転速度を検出することにより、その検出値には全気筒の特性が平均化されて反映されるようになり、上記気筒間でのフリクションの相違(ばらつき)による検出誤差を抑制することが可能になる。
そして一般に、上記燃焼サイクル周期は、吸排気のタイミングに応じたものとなる。このため、第56の発明のように、上記第51〜第55のいずれかの発明の装置において、前記回転速度検出手段を、前記エンジンの吸気弁又は排気弁の動作周期の所定整数倍の周期での、前記エンジンの回転速度を逐次検出するものとすることも有効である。こうした場合にも、基本的には上記第55の発明の構成に準ずる効果が得られることになる。
また、上記第51〜第56のいずれかの発明の装置のように、前記エンジンの回転速度を検出する構成(特に第55又は第56の発明の装置のように、周期的にその検出を行う構成)としては、例えば第57の発明のように、
・前記回転速度検出手段によるエンジン回転速度の検出タイミングに対応した通過帯域を有するバンドパスフィルタを備え、前記回転速度検出手段が、前記バンドパスフィルタを通じて、前記通過帯域に対応したタイミングでの前記エンジンの回転速度を検出するものである構成。
あるいは第58の発明のように、
・前記回転速度検出手段によるエンジン回転速度の検出タイミングになったか否かを、前記エンジンの吸気弁又は排気弁の動作と同期して回転する動弁カム軸、又は該動弁カム軸に連動するクランク軸の回転角度に基づいて判断する回転速度検出タイミング判断手段を備え、前記回転速度検出手段が、前記回転速度検出タイミング判断手段によりエンジン回転速度の検出タイミングになった旨判断された時のエンジン回転速度を検出するものである構成。
といった構成が有効である。こうした構成であれば、上記エンジンの回転速度を的確に検出することが可能になる。
また一般に、エンジン出力(エンジンから出力される単位時間あたりのエネルギー)は、エンジン回転速度とエンジントルクとの積に比例する。したがって、前記噴射単位によるエンジン運転状態の変動度合の総和(変動パラメータ)を、エンジントルクに係るパラメータに基づいて得ることも可能である。そこで、第59の発明では、上記第1〜第58のいずれかの発明の装置において、前記シリンダ内の圧力を検出する筒内圧力検出手段を備え、前記変動度合取得手段が、前記筒内圧力検出手段により検出された前記シリンダ内の圧力に基づいて、前記全ての噴射によるエンジン運転状態又はその相当値の変動度合の総和を取得するものである構成とする。通常、シリンダ内の圧力は、エンジントルクの大きさを示すものとなるため、上記構成によっても、前記エンジンのシリンダ内の圧力に基づいて上記変動パラメータを的確に求めることは可能である。
ところで、上記エンジン回転速度(クランク軸の回転速度)や、上記シリンダ内の圧力はいずれも、適合マップ等に頼らずに直接的にセンシング可能(例えばクランク角センサや筒内圧センサで検出可能)であり、時々の値を高い精度で実測することができる。このため、経時的な特性変化の反映された時々の変動パラメータを高精度に得る上でも、上記第51〜第59のいずれかの発明の装置は有益である。
第60の発明では、上記第1〜第59のいずれかの発明の装置において、前記エンジンが、複数のシリンダを有する多気筒エンジンであり、前記燃料噴射弁が、これら複数のシリンダにそれぞれ設けられており、前記噴射実行手段及び前記変動度合取得手段が、それぞれ各シリンダについて前記噴射の実行及び前記変動度合の総和の取得を行うものであることを特徴とする。
前述の個体差に起因した燃料供給に係る誤差は、燃料噴射弁の設けられた複数のシリンダを備える多気筒エンジンにおいて、特に顕著となる。この点、上記構成であれば、こうした多気筒エンジンにおいても、シリンダごと(燃料噴射弁ごと)に噴射特性を求めることが可能になり、ひいてはその噴射特性に基づいて前述の個体差に起因した燃料供給に係る誤差を補償することが可能になる。
他方、第61の発明では、エンジンでの燃焼に供される燃料を噴射供給する燃料噴射弁を含めた同エンジンの燃料供給系が正常に動作しているか否かを診断可能とすべく、同燃料供給系の性能劣化度合を示す劣化パラメータを取得する燃料供給系の診断方法において、前記エンジンの所定シリンダが無噴射運転中であることを少なくとも実行条件の1つとして、前記燃料噴射弁により、そのシリンダに対して、少なくとも多段噴射の噴射パターンを含む複数種パターンの噴射を、所定の順序で実行し、前記複数種パターンの1つ又は組み合わせからなる第1の噴射単位と、別の1つ又は組み合わせからなる第2の噴射単位とのそれぞれについて、エンジン運転状態又はその相当値の前記無噴射運転時の値からの全ての噴射による変動度合の総和を得て、比較する一方の噴射単位について、他方を基準にした前記変動度合の総和のずれ度合を前記劣化パラメータとして取得することを特徴とする。
こうした方法によれば、劣化パラメータとしての上記変動パラメータのずれ度合を求めることが可能になり、ひいてはその両値のずれ度合に基づいて、都度の噴射特性(特に多段噴射に係る噴射特性)を検出することなどが可能になる。詳しい原理については、前述したとおりである。そして、このような方法を行う上では、上記第1〜第60のいずれかの発明の装置を用いることが有効である。
以下、本発明に係る燃料噴射制御装置及び燃料供給系の診断方法を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。ここでは、ディーゼルエンジン(内燃機関)を動力源として搭載した自動車(ディーゼル車)について、特に手動操作方式の変速機を搭載したMT(マニュアルトランスミッション)車について、この装置を適用した場合を想定して説明する。
はじめに、図1を参照して、この装置が適用されたエンジンシステムの詳細について説明する。この図1は、本実施形態に係る燃料噴射制御装置が適用された車両用エンジン制御システムの概略構成を示す構成図である。なお、本実施形態のエンジンとしては、多気筒のレシプロエンジンを想定しているが、この図1においては、説明の便宜上、1つのシリンダ(シリンダ#1〜#4のうちの1つ)のみを図示している。
同図1に示されるように、このエンジン制御システムは、コモンレール式の燃料噴射装置を備えたレシプロ式ディーゼルエンジン10を制御対象として、該エンジン10を制御するための各種センサ及びECU(電子制御ユニット)50等を有して構築されている。そして、ここで制御対象とされるエンジン10は、基本的には、シリンダブロックにより形成されたシリンダ(気筒)11(便宜上1つのみ図示)内にピストン13が収容されて構成されており、ピストン13は、コンロッド(コネクティングロッド)14を介して、エンジン10の出力軸としてのクランク軸15に連結されている。そして、シリンダ11内の燃焼室11aでの燃料(軽油)の燃焼により、各シリンダのピストン13を順に往復動させることで、それらピストン13に対して共通に設けられたクランク軸15が回転するようになっている。
また、シリンダ11内の燃焼室11aに対しては、燃焼室11aに連通するように吸気管(吸気通路)及び排気管(排気通路)が設けられており、吸気弁161と排気弁181とによりその接続部(開口部)が開閉されるようになっている。ここで、吸気弁161と排気弁181とは、カム軸16,18(動弁カム軸)に設けられたカムの回転に応じて駆動されるものである。また、それらカム軸16,18は、上記クランク軸15と機械的に連結されている。このシステムにおけるエンジン10は、4ストロークエンジンであり、これらカム軸16,18は、クランク軸15が2回転(720°CA回転)する間に1回転することになる。
ここで、上記クランク軸15には、図1中、ECU50の隣に拡大して示すように、ロータ15aが設けられている。このロータ15aには、複数の被検出部(歯部15b)が形成されている。詳しくは、ロータ15aには、基本的には歯部15bが略等間隔(ここでは、「30°CA」を例示)に形成されており、ロータ15aの一箇所には欠け歯部15cが設けられている。そして、こうしたクランク軸15付近には、エンジン回転速度(クランク軸15の回転速度に相当)等の検出に用いられるクランク角センサ41が設けられている。なお、このクランク角センサ41は、例えば上記歯部15bの通過を逐次検出する電磁ピックアップ式のセンサ等から構成されるものである。すなわち、エンジン回転速度の検出に際しては、上記ロータ15a、ひいては上記歯部15bが、クランク軸15の回転に応じて回転することを利用して、このクランク角センサ41により上記歯部15bの通過を逐次検出する。これにより、そのセンサ出力に基づき、クランク軸15の角度位置や回転速度を算出することができるようになる。
一方、上記吸気弁161を駆動するためのカム軸16には、ロータ16aが設けられている。このロータ16aにも、複数の被検出部(歯部16b)が形成されている。なおここでは、4つの歯部16bが等間隔に形成された例を示している。そして、このカム軸16付近には、気筒判別等に用いられるカム角センサ(いわゆるGセンサ)42が設けられている。なお、このカム角センサ42は、例えば電磁ピックアップ式のセンサ等から構成されるものである。すなわち、気筒の判別に際しては、このカム角センサ42により上記歯部16bの通過を逐次検出することで、エンジン10の気筒(シリンダ)を判別(4つのうちのいずれのシリンダであるかを判別)することができる。
また、上記クランク軸15は、駆動輪(路面上を走行する車輪)にも、手動操作方式の変速機であるマニュアルトランスミッション(MT)21のクラッチを介して機械的に連結されている。すなわち、運転者(ユーザ)が手動でこのMT21のクラッチを切断することによって、上記クランク軸15と駆動輪との連結を機械的に切断することができるようになっている。この際、運転者によってシフト位置の操作がなされる部分がシフト操作部23であり、このシフト操作部23の操作によって、MT21のシフト位置が変更されることになる。また、このシフト操作部23には、シフト操作位置を検出するためのシフト位置センサ23aが設けられている。
また一方、上記シリンダ11内において燃焼室11aには、同燃焼室11a内での燃焼に供される燃料(軽油)を噴射供給する電磁駆動式(又はピエゾ駆動式)の燃料噴射弁であるインジェクタ19が、さらに設けられている。ちなみに、このインジェクタ19は、所定の油圧室を介して適宜の駆動動力をニードルに伝達して、そのニードルの往復運動により開弁及び閉弁を行うものである。なお、ここでは便宜上、1つのシリンダ(シリンダ11)に設けられたインジェクタ19のみを図示しているが、こうしたインジェクタは、エンジン10の各シリンダに対して設けられている。
そして、それらエンジン10の各インジェクタが、高圧燃料配管を介して蓄圧配管としてのコモンレール31に接続されている。なお、このコモンレール31には、コモンレール圧センサ31aが設けられており、このコモンレール圧センサ31aによりコモンレール31内の燃料圧力(コモンレール圧)が検出可能とされている。また、図示は省略しているが、コモンレール31には電磁駆動式(又は機械式)の減圧弁が設けられており、コモンレール圧が過剰に上昇した場合にはこの減圧弁が開放されて減圧が行われるようになっている。
そして、このコモンレール31には、燃料供給ポンプとしての高圧ポンプ33が接続されている。また、この高圧ポンプ33の燃料吸入部には、電磁駆動式の吸入調量弁(SCV)33aが設けられている。この燃料供給系では、フィードポンプ35によって燃料タンク37から汲み上げられた低圧燃料が、吸入調量弁33aを介して上記高圧ポンプ33の燃料室に吸入されるようになっている。そして、この高圧ポンプ33により、コモンレール31に対して高圧燃料が逐次供給され、コモンレール31内に、噴射圧力に相当する高圧燃料が蓄えられるようになっている。なお、この高圧ポンプ33は、クランク軸15の回転に連動する(例えばクランク軸15の回転速度の「1/1」又は「1/2」等の比率で回転する)駆動軸により、燃料の吸入及び吐出を繰り返し行うものである。
そして、エンジン10においては、こうして蓄圧されたコモンレール31内の燃料が、上記インジェクタ19の開弁駆動により各シリンダに対して所要の量だけ随時噴射供給される。すなわち、同エンジン10の運転時には、吸気弁161の開動作により吸入空気が吸気管からシリンダ11の燃焼室11a内へ導入され、これがインジェクタ19から噴射供給された燃料と混ざる。そして、混合気の状態でシリンダ11内のピストン13により圧縮され、着火(自己着火)、燃焼し、排気弁181の開動作により燃焼後の排気が排気管へ排出されることになる。
こうしたシステムの中で電子制御ユニットとして主体的にエンジン制御を行う部分がECU50である。そして、このECU50は、周知のマイクロコンピュータ60を備えて構成され、上記各種センサの検出信号に基づいてエンジン10の運転状態やユーザの要求を把握し、それに応じて上記インジェクタ19等の各種アクチュエータを操作することにより、その時々の状況に応じた最適な態様で上記エンジン10に係る各種の制御を行っている。また、このECU50に搭載されるマイクロコンピュータ60は、基本的には、各種の演算を行うCPU(基本処理装置)62、その演算途中のデータや演算結果等を一時的に記憶するメインメモリとしてのRAM(Random Access Memory、図示略)、プログラムメモリとしてのROM(読み出し専用記憶装置)64、データ保存用メモリとしてのEEPROM(電気的に書換可能な不揮発性メモリ)66や、図示しないバックアップRAM(車載バッテリ等のバックアップ電源により給電されているRAM)、さらには外部との間で信号を入出力するための入出力ポート(図示略)等、といった各種の演算装置、記憶装置、及び通信装置等によって構成されている。そして、ROM64には、当該燃料噴射学習制御に係る燃料噴射学習プログラムを含めたエンジン制御に係る各種のプログラムや制御マップ等が、またデータ保存用メモリ(EEPROM66)には、エンジン10の設計データをはじめとする各種の制御データ等が、それぞれ予め格納されている。
ところで、本実施形態に係る上記システムでは、時々の状況に応じた補正係数を逐次学習(更新)することにより、前述した個体差や経年変化等による制御誤差を補正(フィードバック補正)するようにしている。以下、図2を参照して、本実施形態に係る燃料噴射制御の基本的な手順について説明する。なお、この図2の処理において用いられる各種パラメータの値は、例えばECU50に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。そして、これら各図の一連の処理は、基本的には、ECU50でROMに記憶されたプログラムが実行されることにより、エンジン10の各シリンダについて、それぞれ所定クランク角ごとに又は所定時間周期で逐次実行される。
同図2に示すように、この一連の処理においては、まずステップS11で、例えばエンジン回転速度(平均回転速度)やエンジン負荷等といったエンジン運転状態を示す各種のパラメータを読み込む。そして、続くステップS12では、ステップS11で読み込んだエンジン運転状態や、運転者によるアクセルペダル操作量等に基づいて(必要に応じて要求エンジン運転状態を別途算出して)噴射パターンを設定する。なお、この噴射パターンは、所定のマップ等(例えばROM64に記憶保持)に基づいて取得される。詳しくは、予め想定される各エンジン運転状態について実験等により最適パターン(適合値)を求めておく。こうすることで、このマップ(数式でも可)には、それらエンジン運転状態と最適パターンとの関係が書き込まれている。また、その噴射パターンは、例えば噴射段数(噴射回数)、噴射タイミング、噴射時間、噴射インターバル(多段噴射の場合の噴射間隔)等のパラメータにより定められるものであり、上記ステップS12では、都度のエンジン運転状態(ステップS11で取得)に応じた要求エンジン運転状態を満足するように、上記最適パターン(適合値)が設定される。例えば単段噴射の場合には噴射量(噴射時間)が、また多段噴射の噴射パターンの場合には各噴射の噴射量の総和が、それぞれ要求トルク等に応じて可変とされる。そして、その噴射パターンに基づいて、上記インジェクタ19に対する指令値(指令信号)が設定されることになる。これにより、車両の状況等に応じて、前述したプレ噴射、パイロット噴射、アフター噴射、ポスト噴射等がメイン噴射と共に実行されることになる。
続くステップS13では、別途学習処理により更新されている補正係数を、上記EEPROM66から読み出し、続くステップS14で、その読み出した補正係数に基づき、上記インジェクタ19に対する指令値(指令信号)を補正する。そして、続くステップS15で、その補正された指令値(指令信号)に基づいて、上記噴射段数、噴射タイミング、噴射時間、噴射インターバル等に係る指令値が決定され、それら各指令値に基づいてインジェクタ19の駆動が制御されることになる。
次に、図3〜図12を参照して、上記図2のステップS14にて用いられる補正係数の学習(更新)態様について詳述する。なお、図3、図4、図10、図11に示す一連の処理において用いられる各種パラメータの値も、例えばECU50に搭載されたRAMやEEPROM、あるいはバックアップRAM等の記憶装置に随時記憶され、必要に応じて随時更新される。そして、これら各図の一連の処理も、基本的には、ECU50でROMに記憶されたプログラムが実行されることにより、エンジン10の各シリンダについて、それぞれ所定クランク角ごとに又は所定時間周期で逐次実行される。
ところで、本実施形態の装置(ECU50)による補正係数の学習(更新)に係る処理は、大きくは、
・所定の噴射パターンの噴射について、その噴射パターンに含まれる全ての噴射によるエンジン運転状態の変動度合の総和(以下、変動パラメータという)を取得しつつ、その取得した変動パラメータを、その時々の噴射パターン等の噴射条件に対して関連付けながら所定の記憶装置(ここでは上記EEPROM66)に格納する処理(学習処理)。
・上記学習処理により記憶装置に格納された変動パラメータに基づいて、予め所定の記憶装置(ここでは上記EEPROM66)に記憶されている燃料供給(燃料噴射)に係る補正係数を更新する処理(補正処理)。
の2種類の処理からなる。ここではまず、図3及び図4を主に参照して、上記学習処理について詳述する。なお、図3及び図4は、それぞれ当該学習処理の処理手順を示すフローチャートである。詳しくは、図3の処理で当該学習処理に係る実行条件(学習実行条件)の成否が判定され、その実行条件が成立する場合にのみ、図4に示す一連の処理として学習処理が実行されることになる。
同図3に示すように、図3の処理では、まずステップS21で、
・噴射圧力(コモンレール圧)が所定範囲内にあること。なお、この噴射圧力は、上記コモンレール圧センサ31a等により検出されるものである。
・エンジン10の回転速度(クランク軸15の回転速度)が所定範囲内にあること。なお、このエンジン回転速度は、上記クランク角センサ41等により検出されるものである。
・エンジン10が過渡運転状態ではないこと。例えば、エンジン回転速度の偏差(回転速度偏差)が所定の閾値(例えば「100rpm」)よりも小さくて且つ、アクセルペダル操作量の偏差(アクセル偏差)が所定の閾値(例えば「5%」)よりも小さい場合に、過渡運転状態ではないと判断する。なお、これらエンジン回転速度及びアクセルペダル操作量の偏差は、例えば適宜の記憶装置(例えばRAM)に格納しておいた直前の測定値(前回値)と現在の測定値(今回値)との比較により、それら測定値の差分(「今回値−前回値」の絶対値)として求めることができる。
・エンジン10が無噴射運転中であること(=エンジン10が減速中であること)。一般のエンジン制御において、エンジン10が十分に加速された状態で、アクセルペダルが操作量「0」(非操作状態)とされた場合には、エンジン10が減速状態になるとともに、燃料カット(無噴射)が実行される。本実施形態でも、このような燃料カット制御を行うようにしている。
・当該学習処理に係る各種センサが正常であること。
の各条件の成否を判定する。
そして、このステップS21での判定結果に基づき、続くステップS22で、上記学習実行条件が成立しているか否かを判断する。詳しくは、このステップS22では、上記条件の全てを同時に満足するか否かを判断する。そして、このステップS22において、これら全ての条件を同時に満足すると判断された場合には、実行条件が成立しているとして、続くステップS221にて、学習許可フラグに「1」を設定(学習許可フラグ=1)した後、この図3の一連の処理を終了する。他方、ステップS22において、上記条件のうち1つでも満たさない旨判断された場合には、実行条件が成立していないとして、ステップS222にて、学習許可フラグに「0」を設定(学習許可フラグ=0)した後、この図3の一連の処理を終了する。
一方、図4の処理では、上記実行条件が成立するまで繰り返し最初のステップS31で、学習実行条件の成否、すなわち学習許可フラグに「1」が設定されているか否かが判断されている。そして、上記図3の一連の処理により学習許可フラグに「1」が設定され、このステップS31にて学習許可フラグに「1」が設定されている旨判断されると、次のステップS32へ進むようになる。
ステップS32では、例えば所定のテーブル(1次元マップ)等に基づいて、噴射パターンを設定する。詳しくは、このテーブルには、エンジン10の通常運転時の制御において用いられる噴射パターン(制御マップ)と同一の(又はそれに準ずる)噴射パターン(噴射段数(噴射回数)、噴射タイミング、噴射時間、噴射インターバル等)が、例えばデータ番号N(初期値は「1」)ごとに定められている。すなわち最初の実行では、このテーブルに基づいて、データ番号「1」の噴射パターンが設定される。
続くステップS33では、ステップS32で設定された噴射パターンにより、エンジン10の4つのシリンダ#1〜#4のうち、対象とする特定のシリンダ(例えば1番シリンダ#1)に対して燃料の噴射を行う。なお、この燃料の噴射は、上記インジェクタ19を通じて行われる。そして、続くステップS34で、そのステップS33での噴射(全ての噴射)によるエンジン運転状態の変動度合の総和(以下、変動パラメータという)を算出し、その算出した変動パラメータを、データ番号Nと共に上記EEPROM66へ格納する。なお、詳しくは後述するが、この変動パラメータは、別途(例えば「720°CA」周期で)検出している時々のエンジン回転速度NEに基づいて算出される。
次に、続くステップS35で、噴射実行回数を示すカウンタM(初期値は「0」)をインクリメント(M=M+1)する。また、続くステップS36では、このカウンタMと所定の閾値SH(例えば「10」)とを比較することにより、所定の回数(=閾値SH)の噴射が実行されたか否かを判断する。そして、このステップS36でカウンタMの値が閾値SH未満である(M<閾値SH)旨判断された場合には、いったん図4の一連の処理を終了した後、まだ上記学習実行条件が成立していれば、再びステップS31〜S35の処理を経て、上記燃料噴射の実行、さらにはカウンタMのインクリメントが順に実行されることになる。こうして、所定の回数(=閾値SH)の噴射が実行されるまで、これらステップS31〜S35の処理が繰り返し実行される。そして、1つの噴射パターン(データ番号Nのパターン)について、所定の回数(=閾値SH)の噴射が実行され、所定の数(=閾値SH)の変動パラメータが上記EEPROM66に格納されると、今度は上記ステップS36でカウンタMの値が閾値SH以上である(M≧閾値SH)旨判断され、続くステップS37へ移行するようになる。
こうして、データ番号「1」の噴射パターンについて、所定の数(=閾値SH)の変動パラメータが得られたら、今度はデータ番号「2」の噴射パターンについて、所定の数(=閾値SH)の変動パラメータを得るべく、ステップS37で、データ番号Nをインクリメント(N=N+1)する。そして、続くステップS38で、学習許可フラグ及びカウンタMをリセット(「0」を設定)し、いったん図4の一連の処理を終了した後、まだ上記学習実行条件が成立していれば、再びステップS31〜S37の処理を経て、今度はデータ番号「2」の噴射パターンについて、所定の数(=閾値SH)の変動パラメータが取得されることになる。
本実施形態では、上記テーブルに予め定めておいた各噴射パターンによる燃料噴射を上記のように順次実行していくこととする。そうして、それら噴射パターンについて、それぞれ全ての噴射(パターン中の全噴射)によるエンジン運転状態の変動度合の総和(変動パラメータ)を、その噴射条件(噴射パターンを示すデータ番号N)と共に取得、保存するようにしている。
次に、図5及び図6を参照して、上記図4の処理による燃料噴射態様について説明する。なお、図5及び図6はそれぞれ、上記図4中のステップS32で設定される噴射パターンの一例(a)と、その噴射パターンによる噴射タイミング近傍でのエンジン運転状態(b)及び変動パラメータ(c)の推移を例示するタイムチャートである。これら各図に示されるように、これら各例では、エンジン運転状態として、エンジン回転速度NEを検出するようにしている。そして本実施形態では、データ番号「1」の噴射パターンとして、図5に例示する噴射を行った後、データ番号「2」の噴射パターンとして、図6に例示する噴射を行うこととする。
まず図5を参照して、データ番号「1」の噴射パターンについて説明する。なお、この図5(a)において、(a−1)は噴射指令(インジェクタ19に対する指令信号)、(a−2)は噴射率(単位時間あたりに噴射される燃料量)をそれぞれ示すタイムチャートである。
同図5(a)、詳しくは同図5(a−1)及び(a−2)中に実線L1,L2にて示されるように、この噴射パターンは、噴射段数「1段」の微小量の単段噴射であり、詳しくは噴射開始タイミングt1、噴射終了タイミングt2、そして微小の噴射時間T1(=t2−t1)、の噴射からなる。すなわち、図5(a−1)中に実線L1にて示す噴射指令(パルス幅はインジェクタ19の通電時間に相当)により噴射が行われると、図5(a−2)中に実線L2にて示すような噴射率特性が得られ、その噴射率特性にて領域R1で示される量(噴射量)の燃料が噴射されることになる。なお、上記噴射率特性は、実際のエンジン制御においては測定されていない特性である。ただし、この特性が必要な場合には、例えば指令信号等に基づいてこれを推定することができる。また、周知の筒内圧センサを用いるようにすれば、直接的により高い精度で、実際の噴射開始タイミングや噴射終了タイミングをはじめとする上記噴射率特性を求めることも可能である。また一方、上記噴射に際しては、上記インジェクタ19の動作遅れ、すなわち指令(図5(a−1)に示すパルスの立ち上がりや立ち下がり)から、同インジェクタ19が燃料噴射動作を開始、完了する(図5(a−2)に示す燃料噴射の実行、停止)までに、幾らかの遅れが生じることになる。
そしてこの噴射により、エンジン回転速度NEが、図5(b)中に破線L3aにて示す無噴射時の値から実線L3にて示す値へ変わる(変動する)ことになる。図5(c)には、その噴射によるエンジン回転速度の変動度合の総和(上記変動パラメータΔNE)の推移として、エンジン回転速度NEの変動態様が示されている。同図5(c)に示されるように、上記データ番号「1」に係る噴射パターンの噴射により、減速運転で安定していた無噴射時のエンジン回転速度NEに対して正(プラス)側への変動が、すなわち図中の破線L4aにて示す無噴射時の値から実線L4にて示す値への変動が生じることになる。
次に、図6を参照して、データ番号「2」の噴射パターンについて説明する。なお、この図6(a)においても、(a−1)は噴射指令、(a−2)は噴射率をそれぞれ示すタイムチャートである。またさらに、図6(a−3)には、多段噴射において、後段の噴射にて生じるエンジン運転状態の変動度合(変動量)が前段の噴射から受ける影響(うねり特性)を、タイムチャートとして示している。
同図6(a)、詳しくは同図6(a−1)及び(a−2)中に実線L11,L12にて示されるように、この噴射パターンは、噴射段数「2段」の微小量の多段噴射であり、前段噴射及び後段噴射は、両方とも1燃焼サイクル(「720°CA」の期間)中に行われる。詳しくは、この噴射パターンは、噴射開始タイミングt11、噴射終了タイミングt12、微小の噴射時間T11(=t12−t11)の前段噴射(最初の噴射)と、噴射開始タイミングt14、噴射終了タイミングt15、微小の噴射時間T12(=t14−t15)の後段噴射(最終段の噴射)とからなり、両噴射の噴射インターバル(噴射間隔)は、図6(a−1)中に示されるように、噴射インターバルIBLに設定されている。なおここで、上記前段及び後段の各噴射は、データ番号「1」の噴射パターンと同一のパターン、すなわち噴射開始タイミングt1(=t11=t14)、噴射終了タイミングt2(=t12=t15)、噴射時間T1(=T11=T12)として設定されている。
そして、図6(a−1)中に実線L11にて示す噴射指令により噴射が行われると、図6(a−2)中に実線L12にて示されるような噴射率特性が得られ、その噴射率特性において領域R11及びR12で示される量(噴射量)の燃料の噴射が、それぞれ上記前段及び後段の噴射として行われることになる。なお、これら前段及び後段の噴射に際しても、上記インジェクタ19についての動作遅れが生じることになる。
そしてこの噴射により、エンジン回転速度NEが、図6(b)中に破線L13aにて示す無噴射時の値から実線L13にて示す値へ変わる(変動する)ことになる。図6(c)には、その噴射パターンに含まれる全ての噴射(上記前段及び後段の噴射)によるエンジン回転速度の変動度合の総和(上記変動パラメータΔNE)の推移として、このエンジン回転速度NEの変動態様が示されている。
同図6(c)に示されるように、この場合も、上記データ番号「2」に係る噴射パターンの全噴射により、減速運転で安定していた無噴射時のエンジン回転速度NEに対して正(プラス)側への変動が、すなわち図中の破線L14aにて示す無噴射時の値から実線L14にて示す値への変動が生じることになる。ただし、このデータ番号「2」に係る噴射パターンでは、後段の噴射により生じるエンジン運転状態の変動度合(変動量)が、前段の噴射がなされることによって正側又は負側にシフト(変動)することがある。図6(a−3)には、前段噴射の終了(タイミングt13)と共に現れる実線L10にて、その前段の噴射による影響度合(うねり特性)が示されている。そして、この図6(a−3)に示す特性、すなわち上記前段噴射による後段噴射特性のシフト量やシフト方向(正側又は負側)等は、両噴射(前段及び後段の噴射)の噴射タイミング(開始・終了)、噴射時間、及び噴射インターバル等によって変化することになる。
次に、図7〜図9を参照して、上記図4中のステップS34における、上記変動パラメータの算出態様について説明する。
まず図7を参照して、エンジン10の各シリンダ#1〜#4(1番シリンダから4番シリンダまで)の動作態様について説明する。なお、この図7は、これらシリンダ#1〜#4の燃焼サイクルと、その燃焼サイクルの進行に伴うクランク軸の位置及びエンジン回転速度の推移を示す図である。なお、上記学習処理の実行は、燃料カット(無噴射)状態が前提となっているため、この図7においては「燃焼行程」を割愛している。また、同図7においては、燃料カットによるエンジン回転速度の低下を、説明の便宜上、無視して示している。
同図7に示されるように、4ストロークエンジンである上記エンジン10では、吸入・圧縮・燃焼・排気の4行程による1燃焼サイクルが「720°CA」周期で逐次実行される。そして、エンジン回転速度は、上記燃焼サイクルの進行に伴い、各シリンダのTDC(上死点)付近(クランク軸位置=「ピーク」)において周期的に極小となる。
次に、図8及び図9を参照して、上記エンジン回転速度NEの変動度合の検出態様及び算出態様について説明する。なお、図8及び図9は、上記図4のステップS33で燃料噴射を行う前と後とについて、それぞれエンジン回転速度NE及びその変動度合(変動パラメータΔNE)の推移を示すタイムチャートである。ここでは、上記燃料カットによるエンジン回転速度の低下分も含めたものとして、エンジン回転速度の推移を示している。また、これら各図中の「#1」や「#3」で示すタイミングは、それぞれ1番シリンダ、3番シリンダのTDC(上死点)を示している。
同図8に示すように、本実施形態では、「720°CA」周期で、時々のエンジン回転速度NEを検出している。詳しくは、3番シリンダのTDCに相当するタイミングt21,t22,t23,t24で、それぞれエンジン回転速度NE(t21),NE(t22),NE(t23),NE(t24)を取得し、それら時々のエンジン回転速度NEに基づいて、時々の変動パラメータΔNEを算出している。
なお、上記時々のエンジン回転速度NEは、例えば上記クランク角センサ41により検出されるクランク軸15の回転速度に基づいて逐次検出することができる。また、上記カム角センサ42により検出されるカム軸16の回転速度によっても、高い精度で検出することができる。本実施形態では、これらクランク軸15の回転速度及びカム軸16の回転速度のいずれか一方(又は両方)に基づいて、上記エンジン回転速度NEを逐次(「720°CA」周期で)検出する。またこの際、エンジン回転速度の検出タイミングになったか否かを、エンジン10の吸気弁161(排気弁でも可)の動作と同期して回転する動弁カム軸16又は該動弁カム軸16と連動するクランク軸15の回転角度に基づいて判断し、この判断によりエンジン回転速度の検出タイミングになった旨判断された時のエンジン回転速度を検出することとする。
以下、図9に示す燃料噴射後の場合を例にとり、上記変動パラメータΔNEの算出態様について詳述する。
同図9(a)及び(b)に示されるように、この例では、タイミングt23の手前のタイミングt23aで、上述の噴射(図4のステップS33)、すなわち1番シリンダ#1に対する燃料噴射が行われる。なお、この例での噴射タイミングt23aは、その噴射の対象となる1番シリンダのTDCに相当する。例えば、先の図5に示した単段噴射を実行する場合には、インジェクタ19の動作遅れ等も考慮して、実際の噴射開始が上記TDC付近となるように、噴射開始タイミングt1を設定する。また一方、先の図6に示した多段噴射を実行する場合には、後段噴射(最終段の噴射に相当)の噴射開始が上記TDC付近となるように、噴射開始タイミングt14を設定する。
そしてこの噴射により、タイミングt23a後のエンジン回転速度NEの推移は、先の図8に示した無噴射時のグラフ(図9中に二点鎖線L22にて示すグラフ)ではなく、図9中に実線L21で示すグラフ、すなわち上記噴射による影響の反映されたグラフとなる。すなわちこの例では、同図9中に実線L21で示すグラフに対応して、上記タイミングt21〜t24でのエンジン回転速度NE(t21),NE(t22),NE(t23),NE(t24)が取得されることになる。そして、本実施形態では、これら取得される時々のエンジン回転速度に基づいて、図9(c)に示すような式、すなわち下記(式1)により、「720°CA」の周期での変動パラメータΔNEを算出している。
(式1)「ΔNE=ΔNE2a−ΔNE2≒[(ΔNE1+ΔNE3)/2]−ΔNE2」
なお、同図9(c)中にも示されるように、この(式1)において、エンジン回転速度の変動度合ΔNE1、ΔNE2、ΔNE2a、ΔNE3は、
ΔNE1=NE(t21)−NE(t22)
ΔNE2=NE(t22)−NE(t23)
ΔNE2a=NE(t22)−NE’(t23)
ΔNE3=NE(t23)−NE(t24)
のように、エンジン回転速度NE’(t23)と上記各エンジン回転速度とによって定義されるものである。そして、エンジン回転速度NE’(t23)は、噴射の無い場合(二点鎖線L22)における上記タイミングt23でのエンジン回転速度NEに相当するものであり、上記変動パラメータΔNEを近似で算出するために仮想的に設定されている。
上記(式1)に示されるように、本実施形態では、上記噴射直後の回転速度検出タイミングt23における、実際(実線L21)のエンジン回転速度NE(t23)と、噴射の無い場合(二点鎖線L22)のエンジン回転速度NE’(t23)との差分(NE(t23)−NE’(t23))として、上記図4のステップS33での噴射(噴射パターンに含まれる全噴射)による上記変動パラメータΔNEを算出するようにしている。ただし、仮想的に設定された上記エンジン回転速度NE’(t23)については、これを直接的に検出することはできないため、上記噴射が行われる前の燃焼サイクルでのエンジン回転速度NEの変動度合ΔNE1と、上記噴射が行われた後の燃焼サイクルでのエンジン回転速度NEの変動度合ΔNE3とを用いて、近似的に算出(推定)するようにしている(図9参照)。
また、本実施形態では、こうして求めた変動パラメータΔNEを、図9(d)に示すような式(式2)により、上記変動パラメータΔNEをエネルギー相当量に換算して、この変動パラメータをエネルギー値(変動パラメータΔE)として取得するようにしている。
(式2)「ΔE=I×(ΔNE/Δt)」
なお、この(式2)において、Iは慣性モーメントであり、基本的には、エンジン10(特にフライホイール等)の設計値によって定まるものである。また、上記「ΔNE/Δt」は、噴射時の角速度(エンジン回転速度)を二階微分したものに相当する。またここで、Δtは、上記噴射タイミングt23aから上記噴射直後の回転速度検出タイミングt23までの時間に相当する。したがってこの例では、クランク軸15が1番シリンダのTDCから3番シリンダのTDCまでの「180°CA」だけ回転する際にかかる時間として、上記時間Δtが求められる。すなわち、この時間Δtは、噴射時のエンジン回転速度NEを用いて、
Δt=(180/360)/NE=1/(2NE)
のように表すことができる。
このように、本実施形態では、「720°CA」の周期で、時々のエンジン回転速度NEを検出しており、先の図4のステップS33では、図5及び図6に示したような態様で噴射を行い、続くステップS34では、それら図5及び図6に示した各噴射パターンについて、それぞれ上記変動パラメータを算出する。そして、この算出に際してはまず、上記(式1)を用いて、「720°CA」の周期で検出される時々のエンジン回転速度NEの変動度合ΔNE1〜ΔNE3に基づき、変動パラメータΔNEを取得する。次に、上記(式2)を用いて、その変動パラメータΔNEをエネルギー相当量に換算することにより、エネルギー値として、上記変動パラメータΔEを取得する。
上記ステップS34では、こうして上記各噴射パターン(データ番号「1」,「2」)について、それぞれ全ての噴射(データ番号「1」では1つの噴射、データ番号「2」では2つの噴射)によるエンジン運転状態の変動度合の総和(変動パラメータΔE)が、繰り返し取得されることになる。そして、各噴射パターンについて、図4中の閾値SHの数(例えば「10個」)ずつ、この変動パラメータΔEが、データ番号N(「1」又は「2」)と共に上記EEPROM66へ格納されることになる。なお、上記変動パラメータΔEは、上記シリンダ#1〜#4について各別に求められ、シリンダ(シリンダ番号)ごと個別に(識別可能に)管理される。具体的には、例えばシリンダ番号の別に用意されたメモリ領域(例えば複数の記憶装置、あるいは単一の記憶装置上の複数領域)に分類して記憶されることより、それら各データが識別可能に管理される。
次に、図10〜図12を主に参照して、上記補正処理の2種類の態様について詳述する。なお、図10及び図11は、それぞれ当該補正処理の処理手順を示すフローチャートである。そして、これら各処理でも、上記図4の処理と同様、まず当該補正処理に係る実行条件(補正実行条件)の成否が判定され、その実行条件が成立する場合にのみ、それら各図に示す一連の処理が実行されることになる。まず図10を参照して、上記補正処理の一態様(補正1)について詳述する。
同図10に示すように、この一連の処理においては、まずステップS41で、上述の実行条件の成否を判断し、この条件が成立したことに基づいてステップS42へ移行する。この実行条件は、任意に設定可能であるが、ここでは一例として、補正(補正係数の更新)に使用するデータ、すなわち例えば上記データ番号「1」,「2」に係る噴射パターン(それぞれ第1及び第2の噴射単位に相当)の変動パラメータΔE(以下、データA,Bという)が、上記EEPROM66へ格納されたことを実行条件とする。したがって、本実施形態では、上記データA,BがEEPROM66へ格納されることにより、このステップS41に続くステップS42以降の補正処理が実行されることになる。
その補正処理においては、まずステップS42で、上記データA,B(変動パラメータΔE)を上記EEPROM66から読み出す。ただし、本実施形態では、各データが閾値SH(図4)の数ずつ取得されるため、それぞれ平均値を最終的なものとして1つずつのデータA,Bを得る。例えばデータA(又はデータB)が10個取得された場合には、それら10個の総和(合計)を「10」で除算して平均値を得る。
続くステップS43では、上記最終的な1つずつのデータA,Bを、それぞれ所定の単位噴射回数(単位噴射段数)あたりに換算する。例えば1回を単位噴射回数とする場合には、噴射段数「1段」の単段噴射(図5参照)に係るデータAはそのままにして、噴射段数「2段」の多段噴射(図6参照)に係るデータBについてはこれを「1/2」倍して1回(1段)あたりの変動パラメータΔEとする。
続くステップS44では、上記ステップS43で換算したデータA,Bを比較することにより、これら両値のずれ度合を取得する。具体的には、両値の差分をとってそれを両値のずれ度合ΔK(=A−B)とする。そして、続くステップS45で、そのステップS44で取得したずれ度合ΔKに基づいて、上記図2のステップS14にて用いられる補正係数を更新する。
例えばデータA(データ番号「1」)を基準としてこれに、データB(データ番号「2」)を合わせるように、データ番号「2」に係る噴射パターン(2段の多段噴射)の補正係数を更新(変更)する。詳しくは、上記ずれ度合ΔKは、基本的には、それらデータ番号「1」,「2」の噴射パターン間での噴射量のずれ度合ΔQと比例関係にある(ΔK∝ΔQ)。このため、上記補正係数の更新に際しては、それら噴射パターン間の噴射量のずれ(ずれ度合ΔQ)を補償すべく、例えば噴射時間(インジェクタ19の通電時間に相当)に係る補正係数を変更することで、その噴射量を補正(増量又は減量)する。これにより、多段噴射を通じて狙いどおりのエンジン運転状態をより高い精度で得ることができるようになる。
もっとも、この補正例はあくまで一例であり、ここで補正するものは、上記噴射時間(通電時間)には限定されない。例えば噴射開始タイミングや噴射終了タイミングによっても、噴射量を可変とすることができる。例えば噴射終了タイミングが一定なら、噴射開始タイミングを変更することで、また噴射開始タイミングが一定なら、噴射終了タイミングを変更することで、噴射量を変えることができる。また、先の図6(a−3)に示した前段噴射による影響(うねり特性)を補償すべく、噴射タイミング(開始・終了)、噴射時間、及び噴射インターバル等を補正することによっても、目標のエンジン運転状態に近づける(制御の精度を高める)ことは可能である。
次に、先の図5及び図6を参照して、上記図10の処理による補正態様(詳しくは補正係数の更新態様)の、より詳細な具体例について説明する。なお、この例においては、まず上記データ番号「1」の噴射パターンを所定の基準値に対して補正した後、その補正済みの噴射パターンに対して、上記データ番号「2」の噴射パターンを補正するようにしている。まず図5を参照して、上記データ番号「1」の噴射パターンに係る補正の一態様について説明する。
同図5(c)に示されるように、このデータ番号「1」に係る噴射パターンの噴射を実行すると、減速運転で安定していたエンジン回転速度NE(同図5(c)中の破線L4a)に対し、同図5(c)中に実線L4にて示されるようなエンジン回転速度の変動度合が生じる。このエンジン回転速度の変動度合は、上記(式1)及び(式2)を通じて検出、算出され、最終的にエネルギー値である変動パラメータΔEとして取得される。そして、上記図10の補正処理においては、その変動パラメータΔE(データB)が、ステップS42で、EEPROM66から読み出される。また、これとは別に、図5(c)中に一点鎖線L4bで示されるような所定の基準値(データA)も、例えばROM64から読み出される。なお、この基準値としては、例えば予め実験等により求められた所定値(適合値)を用いることができる。
そして、ステップS44では、同図5(c)に示されるように、これらデータA,Bの差分をとり、それを両値のずれ度合ΔK1(=A−B)とする。次いで、ステップS45では、そのずれ度合ΔK1に基づいて、データ番号「1」に係る噴射パターンの補正係数を更新する。詳しくは、上記基準値(データA)に対してずれ度合ΔK1を補償すべく、例えば噴射時間t1〜t2を、図5(a−1)中に破線L1aにて示すように、噴射時間t1〜t2aへ補正する。こうすることで、その噴射率特性、ひいてはその噴射量を、図5(a−2)中に破線L2aにて示すように増量することができる。なお、図中の領域R1aは、その補正による噴射量の増量分を示している。
次に、図6を参照して、上記データ番号「2」の噴射パターンに係る補正の一態様について説明する。なお、前述したように、この補正は、上記補正したデータ番号「1」の噴射パターンに対して行われる。
すなわち、このデータ番号「2」に係る噴射パターンの噴射は、上記データ番号「1」の噴射パターンの補正後に実行される。そしてこの場合は、上記図10のステップS42で、この図6に示す前段及び後段の両噴射による変動パラメータΔE(データB)が、上記EEPROM66から読み出される。そしてここでは、その補正の基準とするデータAとして、上記データ番号「1」の噴射パターンの補正後のデータ(補正係数に対応する変動パラメータΔE)を用いることとする。なお、この補正後のデータ(データA)は、図6(c)中に一点鎖線L14bにて示す変動パラメータΔNEに相当する(ただし変動パラメータΔEに換算して使用)。
そして、続くステップS43では、平均値としてのデータA,Bを、それぞれ所定の単位噴射回数あたりに換算する。ここでは2回を単位噴射回数として、噴射段数「1段」の単段噴射に係るデータAについてはこれを「2」倍して2回あたりの変動パラメータΔEとする。これにより、このデータAは、図6(c)中に一点鎖線L14cにて示す変動パラメータΔNEに対応する値となる。一方、噴射段数「2段」の多段噴射に係るデータBはそのままにする。
また、ステップS44では、同図6(c)に示されるように、これらデータA,Bの差分をとって、それを両値のずれ度合ΔK2(=A−B)とする。そして、続くステップS45では、そのずれ度合ΔK2に基づいて、データ番号「2」に係る噴射パターンの補正係数を更新する。詳しくは、上記データ番号「1」の噴射パターンに係るデータ(データA)に対してずれ度合ΔK2を補償すべく、例えば噴射時間t14〜t15を、図6(a−1)中に破線L11aにて示すように、噴射時間t14〜t15aへ補正する。こうすることで、その噴射率特性、ひいてはその噴射量を、図6(a−2)中に破線L12aにて示すように増量することができる。なお、図中の領域R12aは、その補正による噴射量の増量分を示している。
上記のように、この例では、データ番号「1」の噴射パターンの補正後に、その補正済みのデータ番号「1」の噴射パターンと未補正のデータ番号「2」に係る噴射パターンとの変動パラメータΔE(データA,B)をそれぞれ取得し、補正済みのデータA(単段噴射)を基準にして、データB(多段噴射)の補正を行うようにしている。このような構成によれば、真値との誤差が少ない補正済みのデータAを基準にして、データBが相対的に補正されることになる。このため、そのデータBについても、真値との誤差(絶対的なずれ度合)が間接的に補償されることになる。また、これと同様に、今度は補正済みのデータ番号「2」に係る噴射パターンを基準にして、別の噴射パターン(例えば3段の多段噴射)の補正を行うようにすれば、補正された噴射パターンを次々と基準に用いて、的確な補正が連鎖的に行われるようになる。特に1段の噴射から、2段、3段、…と順に補正を行うようにすれば、噴射段数の大きな多段噴射の補正(噴射特性の補正)についてもこれを、より的確且つ効率的に行うことができるようになる。
次に、図11及び図12を参照して、上記補正処理の別の一態様(補正2)について詳述する。
同図11に示すように、この一連の処理においては、まずステップS51で、上述の実行条件の成否を判断し、この条件が成立したことに基づいてステップS52へ移行する。なお、このステップS51の処理は、先の図10のステップS41の処理に準ずるものである。ここでは一例として、上記データ番号「1」,「2」の噴射パターンに加えて、上記データ番号「2」の噴射パターンに比して噴射インターバルIBL(図6)のみが異なる複数種の噴射パターンを、すなわち噴射インターバルの大小(長短)のみで互いに相違する複数種の噴射パターンを、所定の数(例えば図12に示す18個)だけ取得したことを実行条件の成立要件とする。なお、これら噴射パターンも、上記データ番号「1」,「2」の噴射パターンと同様、上記図4の処理(学習処理)により、例えばそれらに続くデータ番号「3」,「4」,「5」,…として取得され、上記EEPROM66へ格納されるものである。
次に、ステップS52では、先の図10のステップS42〜S44の処理に準ずる処理を経て、上記データ番号「1」,「2」の各噴射パターン(それぞれ第1及び第2の噴射単位に相当)による変動パラメータΔEを、それぞれ上記データA,Bとして読み出してこれに、比較前処理として適宜の換算処理を施した後、それら換算値(変動パラメータΔEの換算値)について、上記ずれ度合ΔKを算出、取得する。
また、続くステップS53では、上記ステップS52で取得したずれ度合ΔK(複数ある場合はその全て)に基づいて、上記ずれ度合ΔKと上記第2の噴射単位の噴射インターバルとの関係を示す波形(波形情報)を求める。そして、続くステップS54で、そのステップS53の処理により目的とする波形情報が得られたか否かを判断する。
この際、ステップS54で目的とする波形情報が得られていない旨判断された場合には、いったん図11の一連の処理を終了する。そしてその後、まだ上記補正実行条件が成立していれば、再びステップS51〜S53の処理を経て、上記ずれ度合ΔKの取得(ステップS52)、さらには波形(波形情報)の算出(ステップS53)が順に実行されることになる。ただし、ステップS52では、2回目は、データ番号「1」,「3」の組み合わせ、3回目は、データ番号「1」,「4」の組み合わせ、4回目は、データ番号「1」,「5」の組み合わせ、…といったように、上記データ番号「1」に係る1つの噴射パターン(第1の噴射単位)に対して、データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…に係る、噴射インターバルのみが異なる複数種の噴射パターン(第2の噴射単位)をそれぞれ組み合わせて、それら各組み合わせについて順に上記変動パラメータΔE(換算値)のずれ度合ΔKを取得する。こうして、上記ステップS54で目的とする波形情報が得られた旨判断されるまで、上記ステップS51〜S53の処理が繰り返し実行されることになる。他方、上記ステップS54で目的とする波形情報が得られた旨判断された場合には、続くステップS55において、その波形情報に基づいて、所定の基準波形との位相ずれ及び周期ずれを算出する。
ここで、図12を参照して、上記波形(波形情報)の取得及び算出に係る処理(ステップS53〜S55)の一例について詳述する。なお、図12(a)〜(c)は、それぞれ上記第2の噴射単位(データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…に係る噴射パターン)について、その変動パラメータΔE(縦軸)と、噴射インターバルIBL(横軸)との関係を示すタイムチャートであり、その横軸は「ΔK=0」の境界(これよりも上が正側のずれ、下が負側のずれに相当)を示している。また、同図12中において、一点鎖線L30にて示される波形は、噴射インターバルに応じたエンジン運転状態の変動度合(前段及び後段の噴射による変動度合の総和)の変化態様の基準となる所定の波形(基準波形)であり、例えば上記ROM64又はEEPROM66等の適宜の記憶装置(記憶手段)に予め記憶されている。
同図12(a)に示されるように、この例では、上記ステップS52で読み出される第2の噴射単位(データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…に係る噴射パターン)の複数種の噴射インターバルIBLが、所定の部分に集中的に設定されている。より詳しくは、その噴射インターバルIBLには、上記基準波形(一点鎖線L30)の規則性を示す部分(正側ピーク部分P1、負側ピーク部分P2、節部分P3)に相当する噴射インターバルだけが含まれる。なお、これらのデータは、例えば先の図4のステップS32で用いるテーブルに予めこうした噴射パターンを書き込んでおくことで取得することができる。
そして、上記図11に示される一連の処理において、上記ステップS53では、上記第1の噴射単位(データ番号「1」に係る噴射パターン)の変動パラメータΔEと、上記第2の噴射単位(データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…に係る噴射パターン)の各変動パラメータΔEとをそれぞれ比較することにより得られる、各ずれ度合ΔKに基づいて、それらずれ度合ΔKと上記第2の噴射単位の噴射インターバルIBLとの関係を示す波形(波形情報)が算出される。そして、続くステップS54では、目的とする波形情報、すなわち同波形(測定波形)と上記基準波形との位相ずれ及び周期ずれを算出するために必要となる波形情報が、上記ステップS53の処理により得られたか否かが判断される。なお、この測定波形(波形情報)は、上記システム(図1)の燃料供給系(特にインジェクタ19)について、その経時的な特性変化も含めた時々の噴射特性を示すものとなる。
そうして、続くステップS55では、上記ステップS54を通じて得た波形情報に基づき、上記測定波形と上記基準波形との間の波形間位相ずれ及び波形間周期ずれがそれぞれ算出される。
具体的には、例えば位相ずれを求める際には、上記ずれ度合ΔKに基づいて、上記測定波形の位相ずれ(上記基準波形からのずれ)を求める。すなわち、上記ずれ度合ΔKが極大になる点として、測定波形の正側ピークP1a,P1bの位置(噴射インターバル)を検出する。また、上記ずれ度合ΔKが極小になる点として、測定波形の負側ピークP2a,P2bの位置(噴射インターバル)を検出する。また、上記ずれ度合ΔKが「0」になる点として、測定波形の節P3a,P3bの位置(噴射インターバル)を検出する。そして、それら検出した正側ピークP1a,P1b、負側ピークP2a,P2b、及び節P3a,P3bの各位置(各噴射インターバル)と、上記基準波形の対応する各位置とをそれぞれ比較する(例えば差分をとる)ことにより、両者の位相ずれ、すなわち測定波形の位相ずれ(基準波形からのずれ)を求める。なお、両者に波形間位相ずれが生じている場合は、測定波形と基準波形(一点鎖線L30)とが、例えば図12(b)に示されるような関係になる。
また、周期ずれを求める際には、上記ずれ度合ΔKに基づいて、同波形(測定波形)の周期ずれ(上記基準波形からのずれ)を求める。すなわち、例えば上記検出した節P3a,P3bの位置(各噴射インターバル)に基づいて、それら節P3a,P3b同士の間隔T33を求める。また、正側ピークP1a,P1b、負側ピークP2a,P2bについても同様にして、正側又は負側のピーク同士の間隔T31,T32を求める。ここで、これら間隔T31,T32,T33は、測定波形の周期に相当する。そのため、それら間隔T31,T32,T33(又はこれら間隔の平均値)と、上記基準波形の対応する各周期(又は対応する平均値)とをそれぞれ比較する(例えば差分をとる)ことにより、両者の周期ずれ、すなわち測定波形の周期ずれ(基準波形からのずれ)を求めることができる。なお、両者に波形間周期ずれが生じている場合は、測定波形と基準波形(一点鎖線L30)とが、例えば図12(c)に示されるような関係になる。
この補正例(補正2)では、例えば上記の態様で、測定波形と基準波形との間の位相ずれ及び周期ずれをそれぞれ算出、取得する。そして、図11に示すように、上記ステップS55に続くステップS56で、それら位相ずれ及び周期ずれに基づいて、上記図2のステップS14にて用いられる補正係数を更新する。
例えば上記位相ずれ又は周期ずれを補償すべく、上記データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…に係る噴射パターン(2段の多段噴射、図6参照)について、噴射開始タイミングt14、噴射終了タイミングt15、噴射インターバルIBL、の少なくとも1つに係る補正係数を更新する。これにより、多段噴射を通じて狙いどおりのエンジン運転状態をより高い精度で得ることができるようになる。
もっとも、この補正例はあくまで一例であり、ここで補償するものや補正するものは、上記パラメータには限定されない。例えば、上記ステップS55にて検出した測定波形の正側又は負側のピーク位置の少なくとも一方に基づいて、測定波形の振幅ずれ(基準波形とのずれ)を補償すべく、上記噴射パラメータや、噴射時間等の他のパラメータに係る補正係数を更新(補正)するようにしてもよい。こうすることによっても、目標のエンジン運転状態に近づける(制御の精度を高める)ことは可能である。
このように、本実施形態では、上記図3及び図4に示した学習処理により、経時的な特性変化も含めた時々の噴射特性(変動パラメータΔE)を逐次学習することとした。そして、上記図10及び図11に示した2種類の補正処理(補正1及び補正2)の少なくとも一方を実施することにより、その学習値(噴射特性)に基づいて所定の補正係数の更新を行いつつ、上記図2のステップS13,S14にて、その補正係数を用いて燃料噴射に係る補正を行うようにした。すなわち本実施形態では、こうした燃料噴射制御装置及び燃料供給系の診断方法により、上記燃料供給系に係る時々の噴射特性としてその時々の補正係数を取得することが可能になる。そして、その補正係数により、前述した個体差や経年変化等による制御誤差を、より的確に補正することが可能になる。
以上説明したように、この実施形態に係る燃料噴射制御装置及び燃料供給系の診断方法によれば、以下のような多くの優れた効果が得られるようになる。
(1)燃料噴射弁(インジェクタ19)の噴射動作を制御する燃料噴射制御装置(エンジン制御用ECU50に内蔵)として、無噴射運転中に所定シリンダに対して、多段噴射の噴射パターンを含む複数種パターンの噴射を、所定の順序で実行するプログラム(噴射実行手段、図4のステップS32,S33)と、このプログラムにより実行された上記複数種パターンの1つ(例えば図5に示す単段噴射)からなる第1の噴射単位と、別の1つ(例えば図6に示す多段噴射)からなる第2の噴射単位とについて、それぞれ全ての噴射(第1の噴射単位では1段の噴射パターンによる1回の噴射、第2の噴射単位では2段の噴射パターンによる2回の噴射)によるエンジン運転状態の変動度合の総和(変動パラメータΔE)を、その噴射条件(シリンダ番号及びデータ番号N)と共に取得するプログラム(変動度合取得手段、図4のステップS34、図10のステップS42、図11のステップS52)と、を備える構成とした。これにより、上記噴射条件(第1の噴射単位と第2の噴射単位とは噴射パターン以外は同一条件)と共に、上記変動パラメータΔEが取得されるようになり、ひいては時々の噴射特性を把握することなどが可能になる。そして、その時々の噴射特性により、データ蓄積によるデータ解析のほか、上記噴射特性の補正や上記インジェクタ19を含めた燃料供給系の故障診断等についてもこれを、より容易且つ的確に行うことができるようになる。
(2)上記変動パラメータΔEの取得に際し、噴射実行条件(図3のステップS21参照)及び噴射パターン(第1及び第2の噴射単位)がそれぞれ同一である状態で複数個(図4中の閾値SH)の変動パラメータΔEを得て、その平均値として、最終的な変動パラメータΔEを取得するプログラム(図4のステップS35,S36、図10のステップS42、図11のステップS52)を備える構成とした。これにより、都度の噴射条件等のばらつきによる誤差が低減され、より正確な変動パラメータΔEを取得することができるようになる。
(3)図4のステップS34の処理により取得された各噴射単位についての変動パラメータΔEを、所定の比較条件に合うように換算するプログラムを備える構成、詳しくは同ステップS34により取得された変動パラメータΔEを、それぞれ所定の単位噴射回数(例えば1回)あたりに換算するプログラム(換算手段、図10のステップS43や図11のステップS52)を備える構成とした。これにより、上記各噴射単位について所定の比較条件に合った換算値(変動パラメータΔEの換算値)を自動的に得ることができるようになり、ひいては上述の変動パラメータΔEの比較が容易となる。
(4)図10のステップS43や図11のステップS52において換算された換算値を比較することにより、これら両値のずれ度合ΔKを取得するプログラム(噴射ずれ取得手段、図10のステップS44や図11のステップS52)を備える構成とした。こうすることで、比較する一方の噴射単位について、他方を基準にした上記変動パラメータΔEのずれ度合ΔKを求めることが可能になる。そして、それら両値のずれ度合ΔKに基づいて、都度の噴射特性(特に多段噴射に係る噴射特性)を検出することなどが可能になる。しかも、上記構成では、上記比較に係るプログラムを通じて、その比較を自動的に行うことが可能になる。
(5)図10のステップS44や図11のステップS52において取得されたずれ度合ΔKに基づいて、上記インジェクタ19による噴射特性を検出するプログラム、詳しくは該噴射特性を示す上記ずれ度合ΔKや補正係数を取得するプログラム(噴射特性検出手段、図10のステップS44,S45や図11のステップS52,S56)を備える構成とした。これにより、時々の噴射特性の取得が自動的に行われるようになり、ひいてはその時々の噴射特性の把握が容易となる。
(6)図10のステップS44や図11のステップS52において取得されたずれ度合ΔKに基づいて、上記インジェクタ19の噴射に係る補正を行うプログラム(噴射特性補正手段、図10のステップS45や図11のステップS56、さらには図2のステップS13,S14等)を備える構成とした。これにより、時々の噴射特性に基づく燃料噴射に係る補正が自動的に行われるようになり、ひいては多段噴射を通じて狙いどおりのエンジン運転状態をより高い精度で得ることができるようになる。
(7)図10のステップS45や図11のステップS56での補正(厳密にいえば補正係数の更新)に際し、上記インジェクタ19による噴射の噴射量に係るパラメータ(例えば噴射開始タイミング、噴射終了タイミング、噴射時間)の補正を行う構成(プログラム)を一例として示した。上記変動パラメータΔEは、基本的には、全ての噴射による総噴射量に相関するものとなるため、こうした構成にすることで、目標のエンジン運転状態に対する制御誤差を的確に補償する(実際のエンジン運転状態を目標値に近づける)ことが可能になる。
(8)特に、上記噴射量に係るパラメータとして噴射時間を用いた場合には、上記インジェクタ19の通電時間の変更によって容易に、その噴射時間を補正(変更)することができるようになる。
(9)図10のステップS45や図11のステップS56での補正(厳密には補正係数の更新)に際し、多段噴射の噴射パターンについての噴射インターバルの補正を行う構成(プログラム)を一例として示した。このような構成によれば、先の図6(a−3)に示した前段噴射による影響(うねり特性)を補償することが可能になり、ひいては目標のエンジン運転状態に対する制御誤差を的確に補償する(実際のエンジン運転状態を目標値に近づける)ことが可能になる。
(10)上記補正に係る補正係数を保存しておくために、同補正係数を不揮発に保持可能とするEEPROM66(補正係数保持手段)を備える構成とした。こうした構成であれば、例えばエンジン10が停止され(例えばイグニッションスイッチがオフされ)、当該装置(ECU50)に対する給電が遮断された後も、データ(補正係数の学習値)が不揮発に保持されるようになり、次回エンジン始動時も、前回エンジン始動時のデータに基づいて上記補正を行うことができるようになる。
(11)図4のステップS32,S33における噴射の実行条件(図3のステップS21にて判定)として、噴射圧力が所定の範囲内にあること、エンジン10の回転速度が所定の範囲内にあること、エンジン10が減速中であること、の全てをその成立要件とするものを採用した(図3のステップS21)。これにより、それら各条件について都度の噴射条件を統一することが可能になる。
(12)特にエンジン10が減速中であることを上記噴射の実行条件とした場合には、エンジン運転状態が安定している状態で上記噴射を行うことが可能になり、ひいては上記変動パラメータΔE等を高い感度で検出することが可能になる。
(13)図4のステップS34において、所定の噴射パターン(例えば図5に示す単段噴射)からなる第1の噴射単位と、該第1の噴射単位の噴射パターンに1つの噴射を加えた噴射パターン(例えば図6に示す多段噴射)からなる第2の噴射単位とについて、それぞれ上記変動パラメータΔEを取得するようにした。そして、図10のステップS44や図11のステップS52において、これら第1及び第2の噴射単位についての変動パラメータΔEを比較することにより、これら両値のずれ度合ΔKを取得するようにした。こうすることで、上記第1及び第2の噴射単位の噴射パターンの相違する部分が明確になり、両者の比較が容易となる。そして、その比較により、相違部分である上記噴射(例えば図6に示す多段噴射の後段噴射)に関する噴射特性をより高い精度で取得することが可能になる。
(14)図4のステップS34において、所定の噴射パターン(例えば図5に示す単段噴射)からなる第1の噴射単位と、その第1の噴射単位の噴射パターンに比して特定パラメータ(噴射段数)のみが異なる噴射パターン(例えば図6に示す多段噴射)からなる複数の第2の噴射単位との組み合わせについて、上記変動パラメータΔEを取得するようにした。こうした構成にすることで、特定パラメータ(噴射段数)の相違に応じた噴射特性を高い精度で取得することが可能になる。
(15)図4のステップS32で用いられるテーブルに設定された複数種の噴射パターン(第1及び第2の噴射単位のいずれか一方に相当)の中に、2段目以降の噴射(例えば図6に示す多段噴射の後段噴射)として噴射タイミングをTDC(上死点)付近とする噴射を含んだ多段噴射パターン(例えば図6に示す多段噴射)が含まれる構成とした。こうした多段噴射パターンによれば、多段噴射に係る噴射特性を検出する上で重要となる2段目以降の噴射についての上記変動パラメータΔEを、高い感度で得ることが可能になる。しかも、その2段目以降の噴射を最終段の噴射としたことで、上記多段噴射に係る噴射特性をより的確に得ることができるようになる。
(16)図4のステップS32で用いられるテーブルに設定された複数種の噴射パターン(第1及び第2の噴射単位のいずれか一方に相当)の中に、パターン中の全ての噴射の噴射時間を微小とする噴射パターン(例えば図5及び図6に示す噴射パターン)を、上記第1及び第2の噴射単位として少なくとも1つずつ含ませるようにした。このように、全ての噴射の噴射時間(噴射量)を微小とすることで、運転性(ドライバビリティ)の悪化を抑制しつつ、上記変動パラメータ(前記変動度合の総和)を取得することが可能になる。
(17)図4のステップS32で用いられるテーブルに、エンジン10の通常運転時の制御において用いられる噴射パターン(制御マップ)に対応した(同一又はそれに準ずる)噴射パターン(例えば2段以上のサブ噴射を含む噴射パターン)を含ませるようにした。こうすることで、上記噴射特性の補正等を通じて、通常運転時の噴射制御についてその制御性を高めることが可能になる。
(18)図4のステップS32で用いられるテーブルに設定された複数種の噴射パターン(第1及び第2の噴射単位のいずれか一方に相当)の中に、パターン中の全ての噴射を1燃焼サイクル(例えば「720°CA」の期間)中に行う噴射パターン(例えば図5及び図6に示す噴射パターン)を、上記第1及び第2の噴射単位として少なくとも1つずつ含ませるようにした。特に本実施形態では、上記テーブル中の全てのパターンが、それぞれ1燃焼サイクル中に全ての噴射を行うものである構成を想定した。こうした噴射パターンについて上記補正を行うことで、エンジン制御を高い精度で行うことができるようになる。
(19)図4のステップS32,S33において、少なくとも、単段噴射(例えば図5参照)からなる第1の噴射パターンに係る噴射を行うとともに、その後、該第1の噴射パターンとは異なる段数(例えば2段)の多段噴射(例えば図6参照)からなる第2の噴射パターンに係る噴射を行い、図4のステップS34において、それら第1及び第2の噴射単位について、それぞれ上記変動パラメータΔEを取得するようにした。こうした構成であれば、上記第1及び第2の噴射単位がそれぞれ1つの噴射パターンからなるものに限定されるため、それら各噴射単位についての単位噴射回数あたりの変動パラメータΔEの換算値を、簡易な制御で得ることが可能になる。
(20)特に、上記第1の噴射パターン及び前記第2の噴射パターンを、1段の単段噴射パターンと2段の多段噴射パターンの組み合わせにしたことで、より簡易且つ的確に、前述の多段噴射に係る噴射特性を求めることができるようになる。
(21)上記変動パラメータΔEの取得(図10のステップS42、図11のステップS52)に先立ち、上記第1及び第2の噴射単位の一方(例えば図5に示す単段噴射)について噴射補正を行っておくプログラム(取得前補正手段)を備える構成を一例として示した。こうした構成であれば、補正しない他方について、上記補正した一方からの相対的なずれ度合を求めることで、絶対的なずれ度合も間接的に求めることができるようになる。
(22)また上記例では、上記変動パラメータΔEの取得前に補正を行うプログラムを、所定の基準値(例えば適合値)に対しての噴射補正を行っておくプログラム(基準補正手段)とした。こうすることで、絶対的なずれ度合を簡易に補正することが可能になる。
(23)上記基準値に対して補正される噴射単位の一方を、単段噴射の噴射パターンからなるものとした。これにより、補正済みの単段噴射に係る噴射特性を基準にして、多段噴射に係る噴射特性の補正等が可能になる。
(24)図10のステップS44において取得されたずれ度合ΔKに基づき、上記基準値に対して補正された噴射単位の一方(例えば図5に示す単段噴射)を基準にして補正されない他方(例えば図6に示す多段噴射)について噴射補正を行うプログラム(相対補正手段)を備える構成を一例として示した。こうした構成であれば、補正済みの上記噴射単位の一方を基準とする補正が、未補正の他方に対して自動的に行われるようになり、その未補正の他方についての絶対的なずれ度合を間接的に補正することが可能になる。
(25)さらに、このプログラム(相対補正手段)により補正された噴射パターン(噴射単位)を基準にして、さらに別の噴射パターン(噴射単位)について噴射補正を行うプログラム(連続補正手段)を備える構成を一例として示した。こうすることで、補正された噴射パターンを次々と基準に用いて、的確な補正が連鎖的に行われるようになる。
(26)特に、1段の噴射から、2段、3段、…と順に補正を行うようにすることで、噴射段数の大きな多段噴射の補正についてもこれを、より的確且つ効率的に行うことができるようになる。
(27)図4のステップS32,S33において、少なくとも互いに噴射インターバルの異なる2種類の多段噴射パターンの噴射を、所定の順序で実行し、図4のステップS34において、前記噴射インターバルの異なる2種類のパターンの一方及び他方からなる第1及び第2の噴射単位について、それぞれ上記変動パラメータΔEを取得するようにした。これにより、上記噴射インターバルについて、多段噴射に係る噴射特性を、比較的容易に、且つ的確に取得することが可能になる。
(28)図11のステップS52において、所定の噴射パターンからなる1つ(例えば図5に示す単段噴射)の噴射単位(第1の噴射単位)に対して、噴射インターバルの大小のみで互いに相違する複数種の多段噴射パターン(データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…の噴射パターン)にてそれぞれ構成される複数の噴射単位(第2の噴射単位)をそれぞれ組み合わせて、それら各組み合わせについて組み合わせごとに上記変動パラメータΔEを取得するようにした。こうすることで、1つの噴射単位(第1の噴射単位)を基準にして、噴射インターバルの各値について噴射特性を高い精度で取得することが可能になる。
(29)さらに、噴射インターバルに応じたエンジン運転状態の変動度合の総和の変化態様について所定の波形(図12中に一点鎖線L30にて示す基準波形)が記憶された記憶装置(記憶手段)を備え、上記第2の噴射単位の複数種の噴射インターバルには、少なくとも上記基準波形(図12中の一点鎖線L30)の規則性を示す部分に相当する一乃至複数の噴射インターバルが含まれている構成とした。これにより、上記波形の周期及び位相の検出、ひいては燃料噴射に係る補正を的確に行うことができるようになる。
(30)また、上記波形を検出する際に、基準となる第1の噴射単位(データ番号「1」の噴射パターン)に対して第2の噴射単位の噴射インターバルのみを順次変更し、上記第2の噴射単位の変動パラメータΔEを順次取得していく構成とした。こうすることで、上記波形を的確に検出することが可能になる。
(31)またこの際、第2の噴射単位の噴射インターバルを、上記規則性を示す部分の近傍(図12中の正側ピーク部分P1、負側ピーク部分P2、節部分P3)に集中的に設定するようにした。これにより、上記規則性を示す部分をより的確に検出することが可能になる。
(32)上記規則性を示す部分として、基準波形(図12中の一点鎖線L30)のピーク部分(正側ピーク部分P1、負側ピーク部分P2)及び節部分(節部分P3)を用いるようにした。これにより、上記波形の規則性を示す部分の検出が容易となる。
(33)図11のステップS52において取得された上記各噴射単位についての変動パラメータΔEに基づき、それら両値のずれ度合が「0」になる点として、第2の噴射単位(データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…の噴射パターン)の噴射インターバルと同第2の噴射単位の噴射パターンによる変動パラメータΔEとの関係を示す波形の節P3a,P3b(図12)の位置を検出するプログラム(節検出手段、図11のステップS55)を備える構成とした。これにより、上記波形の規則性を示す部分(節部分P3)を的確に検出することができるようになる。
(34)図11のステップS52において取得された上記各噴射単位についての変動パラメータΔEに基づき、それら両値のずれ度合が極大又は極小(負側の極大値)になる点として、第2の噴射単位(データ番号「2」,「3」,「4」,「5」,…の噴射パターン)の噴射インターバルと同第2の噴射単位の噴射パターンによる変動パラメータΔEとの関係を示す波形のピーク(正側ピークP1a,P1b、負側ピークP2a,P2b)の位置を検出するプログラム(ピーク検出手段、図11のステップS55)を備える構成とした。これにより、上記波形の規則性を示す部分(正側ピーク部分P1、負側ピーク部分P2)を的確に検出することができるようになる。
(35)上記プログラム(節検出手段)により検出された節の位置に基づいて節同士の間隔T33を求めるプログラム(節間隔取得手段、図11のステップS55)と、その節間隔T33に基づいて、基準波形(図12中の一点鎖線L30)と、図12中の各部分P1,P2,P3のデータで表される測定波形(上記第2の噴射単位の噴射インターバルと同第2の噴射単位の噴射パターンによる変動パラメータΔEとの関係を示す波形)との波形間周期ずれを求めるプログラム(周期ずれ取得手段、図11のステップS55)を備える構成とした。これにより、上記測定波形について、その基準波形からの周期ずれを求めることができるようになる。
(36)上記プログラム(節検出手段)により検出されたピークの位置に基づいてピーク同士の間隔T31,T32を求めるプログラム(ピーク間隔取得手段、図11のステップS55)と、そのピーク間隔T31,T32に基づいて、上記基準波形と上記測定波形との波形間周期ずれを求めるプログラム(周期ずれ取得手段、図11のステップS55)を備える構成とした。これにより、上記測定波形について、その基準波形からの周期ずれを求めることができるようになる。
(37)図11のステップS52において取得された上記各噴射単位についての変動パラメータΔEに基づき、詳しくはこの変動パラメータΔEに基づいて検出した節又ピークの位置に基づき、上記基準波形と上記測定波形との波形間位相ずれを求めるプログラム(位相ずれ取得手段、図11のステップS55)を備える構成とした。これにより、上記測定波形について、その基準波形からの位相ずれを求めることができるようになる。
(38)図11のステップS55において取得された測定波形の位相ずれ(第2の噴射単位の噴射パターンについての位相ずれ)に基づいて噴射インターバルを補正するプログラム(噴射インターバル補正手段)を備える構成を一例として示した。これにより、容易に、しかも自動的に、上記位相ずれを補正することができるようになる。
(39)図11のステップS55において取得された測定波形の位相ずれに基づいて噴射開始タイミングを補正するプログラム(噴射開始タイミング補正手段)を備える構成を一例として示した。これにより、燃料噴射弁(インジェクタ19)の動作遅れ、ひいてはこれに起因した位相ずれを補正することができるようになる。
(40)図11のステップS55において取得された測定波形の位相ずれに基づいて噴射終了タイミングを補正するプログラム(噴射終了タイミング補正手段)を備える構成を一例として示した。これにより、燃料噴射弁(インジェクタ19)の動作遅れ、ひいてはこれに起因した位相ずれを補正することができるようになる。
(41)エンジン10の回転速度を検出するプログラム(回転速度検出手段、図4のステップS34)を備える構成とし、上記図4のステップS34では、その検出されたエンジン回転速度に基づいて、上記変動パラメータΔEを取得するようにした。これにより、上記変動パラメータΔEを容易且つ的確に求めることができるようになる。
(42)図4のステップS34において、上記検出したエンジン回転速度をエネルギー相当量に換算することにより、エネルギー値として、上記変動パラメータΔEを取得するようにした。こうすることで、上記エンジン回転速度の相違に起因した検出ばらつきを抑制することが可能になる。
(43)図4のステップS34では、エンジン10の出力軸としてのクランク軸15の回転速度、及び、エンジン10の吸気弁161(排気弁でも可)を駆動するための動弁カム軸16の回転速度の少なくとも一方に基づいて、上記エンジン回転速度NEを逐次(「720°CA」周期で)検出するようにした。こうした構成によれば、一般制御に用いられる設備だけで、より容易に上記エンジン回転速度を検出することが可能になる。
(44)エンジン回転速度の検出タイミング(エンジンの吸気弁161(排気弁でも可)の動作周期の所定整数倍に相当)になったか否かを、エンジン10の吸気弁161(排気弁でも可)の動作と同期して回転する動弁カム軸16又は該動弁カム軸16と連動するクランク軸15の回転角度に基づいて判断するプログラム(回転速度検出タイミング判断手段、図4のステップS34)を備え、このプログラムによりエンジン回転速度の検出タイミングになった旨判断された時のエンジン回転速度を検出する構成を一例として示した。こうした構成であれば、上記エンジン10の回転速度を的確に検出することが可能になる。
(45)図4のステップS34において、エンジン10の全気筒で燃焼が行われる燃焼サイクル周期に対応した周期(「720°CA」周期)での、エンジン10の回転速度を逐次検出するようにした。これにより、気筒間でのフリクションの相違(ばらつき)による検出誤差を抑制することが可能になる。
(46)しかも、この周期「720°CA」は、上記クランク軸15及びカム軸16の回転周期の整数倍周期(エンジン10の吸気弁又は排気弁の動作周期の整数倍周期)に相当する周期であるため、これら各軸のロータ15a,16aのパルサ(歯部15bや歯部16b等)間隔の相違(ばらつき)に起因した検出誤差についてもこれが低減されるようになる。
(47)上記変動パラメータΔEをエンジン回転速度に基づいて取得する構成としたことで、適合マップ等に頼らずに直接的にセンシング可能となり、経時的な特性変化の反映された時々の変動パラメータΔEを高精度に得ることができる。
(48)各シリンダにそれぞれ燃料噴射弁(インジェクタ19)が設けられた多気筒エンジンを制御対象として、図4のステップS32〜S34において、各シリンダについてそれぞれ上記噴射の実行及び上記変動パラメータΔEの取得を行うようにした。こうすることで、シリンダごと(燃料噴射弁ごと)に噴射特性を求めてその噴射特性に基づいて前述の個体差に起因した燃料供給に係る誤差を補償することが可能になり、ひいては狙いどおりのエンジン運転状態をより高い精度で得ることのできる多気筒エンジンを実現することが可能になる。
(49)上記のような方法で得たずれ度合ΔKやこのずれ度合ΔKの反映される補正係数(いずれもエンジン10の燃料供給系の性能劣化度合を示す劣化パラメータに相当)により、上記エンジン10の燃料供給系が正常に動作しているか否かが診断可能となる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記のような方法で得たずれ度合ΔKや補正係数により、上記エンジン10の燃料供給系が正常に動作しているか否かをより積極的に診断可能とする構成、又は実際に診断を行う(自動的に行う)構成としてもよい。例えば上記ずれ度合ΔKや補正係数の大小に基づいて、フェイルセーフ処理等を実行するような構成としてもよい。例えば補正係数が所定値未満の場合には、上述と同様、その補正係数に基づいて補正を行う一方、上記補正係数が所定値以上になった場合には、警告灯を点灯させるなどの適宜の報知処理を行って、ユーザにインジェクタ19の交換等を促す構成などが有効である。また、例えば運転者(ユーザ)が時々の燃料供給系の性能劣化度合を確認することができるように、車内の視認可能な場所に常時(又は任意の期間)このずれ度合ΔKや補正係数を表示させておくような構成としてもよい。こうすることで、都度の噴射特性(特に多段噴射に係る噴射特性)を検出することや、噴射特性の補正、あるいはインジェクタ19の交換等を早期且つ適切に行うことが可能になる。
・上記実施形態では、比較前の段階で複数個の変動パラメータΔEを得て、その平均値として、最終的な変動パラメータΔEを取得するようにした。しかしこれに限られず、例えば複数回の比較により複数個のずれ度合ΔKを得て、その平均値として、最終的なずれ度合ΔKを取得するようにしてもよい。この場合も、前記(2)の効果と同様の効果又は準ずる効果を得ることができる。
・また、これら平均値を算出する構成においては、平均値の算出後、平均値のみを残して平均値の算出に用いた他のデータを消去するようにしてもよい。使用する記憶装置のメモリ容量に限りがある場合には、こうした構成も有益である。
・図10のステップS45や図11のステップS56での補正(厳密にいえば補正係数の更新)に際し、噴射量に係るパラメータとして、噴射率(単位時間あたりに噴射される燃料量)を補正するようにしてもよい。この噴射率は、例えば上記電磁駆動式のインジェクタ19に代えて、駆動動力の伝達に油圧室を介さない直動式のインジェクタ(例えば近年開発されつつある直動式ピエゾインジェクタ)等を用いることで可変とすることができる。そしてこの場合も、前記(7)の効果と同様の効果又は準ずる効果を得ることはできる。
・上記実施形態では、予め実験等により適合値を定めた適合マップ(図2のステップS11)を採用することを想定して、その適合マップによる噴射特性を補正するための補正係数を保存しておくために、同補正係数を不揮発に保持可能とするEEPROM66を備える構成とした。しかしこれに限られず、例えばその補正係数に代えて補正後の値(補正係数を反映させた値)を、上記EEPROM66に格納する構成としてもよい。そしてこうした構成として、その補正後の値に十分な信頼性が得られれば、上記適合マップを必要としない構成、いわゆる適合レスの構成を採用することも可能になる。また、これら補正係数又はその補正後の値を不揮発に保持可能とするものであれば、上記EEPROM以外の記憶装置も適宜採用可能であり、例えば他の不揮発性メモリやバックアップRAM等も採用することができる。こうした場合も、前記(10)の効果と同様の効果又は準ずる効果を得ることはできる。
・図4のステップS32,S33における噴射の実行条件(図3のステップS21にて判定)に、トランスミッションに関する条件を含ませるように構成してもよい。こうした構成によっても、前記(11)の効果と同様の効果又は準ずる効果を得ることはできる。またこの場合、例えばMT21(手動操作方式の変速機)においてクラッチが切断状態にあることを条件にして、上記噴射を実行するようにすれば、当該装置の搭載された車両の運転中(特に走行中)に上記噴射を行う場合であれ、駆動輪を介した路面からの外乱を抑制することが可能になる。そして、その噴射によって得た上記変動パラメータに基づいて上記燃料噴射弁の噴射特性を検出する場合には、路面からの外乱に起因した誤差が低減されることで、より精度の高い検出を行うことができるようになる。また、例えばAT(自動変速機)車に本発明に係る装置を適用する場合には、ATにおいてトルクコンバータ(T/C)のロックアップが解除状態にあることを条件にして上記噴射を実行する構成が有効である。この場合も、MTの場合と同様の効果が得られる。なお、こうしたトランスミッションに関する条件は、前述した条件に追加するようにしても、また「エンジン10が減速中であること」等の条件に代えて設けるようにしてもよい。ただし、同トランスミッションに関する条件を必須の条件として上記噴射を行うようにすると、上述の高い検出精度が得られる反面、十分な噴射実行の頻度を確保することが困難となる。このため、用途によっては、このトランスミッションに関する条件と上記他の条件とを並列的に(OR条件として)組み合わせて、例えば「エンジン10が減速中である」又は「MTにおいてクラッチが切断状態にある」ことを上記噴射実行条件の成立要件の1つとする構成なども有益である。
・また他の条件についても、適宜、上記噴射の実行条件に含ませることができる。例えばフリクション等による影響を抑制するためには、エンジン10の温度(機関温度)等も条件に含ませることが有効である。また逆に、用途等に応じて上記噴射の実行条件から必要のない条件を適宜排除するようにしてもよい。この条件については、少なくとも無噴射運転中であることを成立要件の1つとするものであれば、任意のものを採用することができる。
・上記実施形態では、図4のステップS32,S33における噴射の実行条件(図3のステップS21にて判定)を固定にした構成を想定した。しかしこれに限られず、同噴射の実行条件を可変設定するプログラム(噴射実行条件可変手段)を備える構成とすることもできる。しかもこの場合には、上記実行条件が可変となるため、実行条件を変更してより柔軟に様々な用途に対応することが可能になる。また、こうした実行条件の変更と噴射特性の検出とを交互に行うことで、上記実行条件(噴射圧力やエンジン回転速度等)の相違に応じた各噴射特性を検出することなども容易となる。そしてこの場合には、上記変動パラメータΔEを、前述したシリンダ番号や噴射パターン(データ番号N)と共に、その実行条件にも関連付けて適宜の記憶装置に保存する構成、すなわち将来その保存場所(記憶装置)からデータを読み出す際に識別可能な状態で各データを管理する構成が有効となる。
・上記実施形態では、第1の噴射単位として図5に示す単段噴射、第2の噴射単位として図6に示す2段の多段噴射をそれぞれ採用し、これらの各全ての噴射による上記変動パラメータΔEを比較するようにした。しかし、これら第1及び第2の噴射単位は、この噴射パターンに限定されるものではなく、これら第1及び第2の噴射単位の少なくとも一方に多段噴射の噴射パターンが含まれていれば足りる。すなわち、上記第1及び第2の噴射単位の一方又は両方を、所定の噴射パターンの組み合わせとする構成であってもよい。
例えば図4のステップS32,S33において、少なくとも、単段噴射又は多段噴射からなる所定段数n段の第1の噴射パターンと、単段噴射又は多段噴射からなる所定段数m段の第2の噴射パターンと、前記n段と前記m段との和である「n+m」段の多段噴射からなる第3の噴射パターンとを、所定の順序で実行し、続くステップS34において、第1及び第2の噴射パターンの組み合わせからなる第1の噴射単位と、第3の噴射パターンからなる第2の噴射単位とについて、それぞれ上記変動パラメータΔEを取得する構成としてもよい。具体的には、例えば1回噴射パターン(単段噴射)と3回噴射パターン(3段の多段噴射)と4回噴射パターン(4段の多段噴射)とについて、1回噴射パターンと3回噴射パターンとの組み合わせを第1の噴射単位に、また4回噴射パターンを第2の噴射単位に設定する。そうして、各噴射パターンについて、それぞれエンジン運転状態の変動度合(エネルギー換算値)ΔE11(1回噴射パターン),ΔE13(3回噴射パターン),ΔE24(4回噴射パターン)を求め、第1の噴射単位についての変動パラメータΔE1を「ΔE11+ΔE13」として、第2の噴射単位についての変動パラメータΔE2を「ΔE24」として取得する。このように、上記第1及び第2の噴射単位の一方として所定の噴射パターンの組み合わせを用いることで、上記第1の噴射単位と第2の噴射単位とを全噴射パターンの段数の総数(噴射回数の総数)の等しいペアにすることが可能になる。そして、上記構成であれば、比較前に上記変動パラメータΔE(上記例ではΔE1,ΔE2)の換算(噴射回数についての換算)を行わずとも上記比較を的確に行うことが可能になる。
・また、噴射回数以外のパラメータ(例えば図6に示す噴射インターバルIBL、噴射開始タイミングt14、噴射終了タイミングt15、噴射時間T12、又は噴射率(実線L12)等)で互いに相違する2種類の噴射パターンを、それぞれ上記第1及び第2の噴射単位として、これらのパラメータについて、上記変動パラメータΔEやずれ度合ΔKの取得、さらには上記噴射特性の検出や補正等を行う構成とすることも可能である。こうした構成によっても、多段噴射に係る噴射特性を、比較的容易に、且つ的確に取得することが可能になる。
・図4のステップS32で用いられるテーブルに設定された複数種の噴射パターン(第1及び第2の噴射単位のいずれか一方に相当)の中に、2段目以降の噴射(例えば図6に示す多段噴射の後段噴射)としてその噴射時間を無効噴射時間(正常時に無噴射と噴射開始との境目となる時間)相当とする噴射を含んだ多段噴射パターンが含まれる構成とすることも有効である。例えば、実際の無効噴射時間が正常時よりも短くて本来「0」であるべき噴射量が正側にずれた場合、すなわち本来噴射されるべきでない噴射時間で噴射が行われた場合に、上記変動パラメータΔEやずれ度合ΔKに基づいて、噴射時間又は噴射量のずれ度合を求めるような構成とする。こうした構成であれば、燃料量を低く抑えて運転性(ドライバビリティ)の悪化を抑制しながら、少なくとも噴射時間(ひいては噴射量)に係る噴射特性の一方向(噴射量でみて正側)のずれ度合については、これを的確に検出することができるようになる。ただし、噴射量が負側にずれている場合にはエンジン運転状態の変動が生じないため、そのずれの検出を行うことは困難である。したがって、この構成は、噴射時間(ひいては噴射量)に係る噴射特性の両方向の各ずれ度合を検出する用途には不向きである。
・上記実施形態では、基準波形(図12中の一点鎖線L30)の規則性を示す部分として、正側ピーク部分P1、負側ピーク部分P2、節部分P3の全てを採用するようにしたが、少なくともこれらのうちの1つを採用することで足りる。例えば節部分のみ、あるいは正側又は負側のピーク部分のみを採用して、少ない検出回数で効率的に上記目的とする波形情報を得るようにしてもよい。また、規則性を示す部分はこれらに限定されることなく、例えば正側ピーク部分P1と節部分P3との間の点(例えば中点)などを採用するようにしてもよい。また、さらに検出精度を上げる等の目的で、先の図12に例示した噴射特性の波形(波形情報)を取得する際、図11のステップS52で読み出される第2の噴射単位の噴射インターバルに、規則性を示す部分以外の噴射インターバルを含ませるようにしてもよい。
・上記エンジン回転速度の検出(図4のステップS34)については、その検出タイミングに対応した通過帯域を有するバンドパスフィルタ(例えば周知の伝達関数等からなる帯域フィルタ)を、例えば上記回転速度センサ(クランク角センサ41やカム角センサ42)のセンサ出力に対して設けることにより、そのバンドパスフィルタを通じて、所定のタイミングでの前記エンジンの回転速度を検出するような構成とすることもできる。しかもこうした構成であれば、不要なノイズが除去されるため、検出精度を高めることが可能になる。
・上記実施形態では、電磁ピックアップ式の回転速度センサを用いて所定の回転角度周期でエンジンの回転速度を検出する構成としたが、これに限られず、例えばクランク軸の回転位置をリニアに(すなわち連続的に)検出可能とするリニア検出式の回転速度センサを用いることも可能である。このリニア検出式の回転速度センサとしては、例えばレゾルバ等が知られている。
・上記実施形態では、上記変動パラメータΔEの取得に際し、上記第1及び第2の噴射単位の各噴射単位について、それぞれ全ての噴射によるエンジン運転状態の変動度合の総和を一括で検出するようにした。しかしこれに限られず、噴射1つ1つについて個別に(例えば図6に示した多段噴射における前段噴射と後段噴射とについて別々に)その噴射によるエンジン運転状態の変動度合を求め、それら変動度合を上記噴射単位ごとにそれぞれ和算して全ての噴射の総和を求めるようにしてもよい。この場合にも、それら各噴射単位についての変動パラメータを取得することができる。要は、上記変動パラメータとして、全ての噴射によるエンジン運転状態の変動度合の総和を求めることさえできれば、用途等に応じて上記方法(構成)を適宜に変更した手法(構成)も採用することができる。
・噴射回数以外を比較条件として、図4のステップS34の処理により取得された各噴射単位についての変動パラメータΔE(比較データ)をその比較条件に合うように換算するプログラム(換算手段)を備える構成としてもよい。例えば比較する前に一方の値に所定の倍率を掛けるなどして、比較対象とするパラメータ以外の影響を排除することで、上記比較をより的確に行うことが可能になる。具体的には、例えば噴射時間についての比較を行う場合には、他の、例えば噴射インターバルによる影響(変動パラメータΔEに対する増減分)を排除する構成などが有効である。
・ただし、比較前に変動パラメータΔEの換算を行うことは、必須の構成ではない。これを必要としない用途(例えば換算処理や比較処理を自動化せずに比較前の変動パラメータΔEを取得してユーザ自身が換算を行う場合や、上記第1及び第2の噴射単位の組み合わせにより取得時に変動パラメータΔEの比較条件が合っている場合等)においては、適宜この構成を割愛することができる。
・上記比較、ずれ度合ΔKの取得に係る処理(図10のステップS44や図11のステップS52の処理)を自動化(例えばプログラム化)せずに比較前の変動パラメータΔEを上記図4のステップS34で取得してユーザ自身がその比較を行うように構成してもよい。すなわちこの場合、図10や図11に示した補正に係る処理を全て割愛することができる。こうした構成でも、前記(1)の効果に準ずる効果を得ることはできる。
・エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度)の変動度合をエネルギー相当量(変動パラメータΔE)に換算することは、必須の条件ではない。用途等に応じて十分な検出精度が得られる場合などには、この換算処理(上記(式2)による換算処理)を適宜割愛するようにしてもよい。
・上記変動パラメータΔEに係るエンジン運転状態としては、上述のエンジン回転速度の他、例えば筒内圧センサやノックセンサ等により検出される燃焼状態(エンジントルクと相関)などを用いることができる。また、直接的なエンジン運転状態に代えて、例えば適宜のセンサ(例えばNOxセンサ)等により検出される特定排気成分(例えばNOx)の量や、当該エンジンの搭載された車両の挙動(例えば車両速度)等といったエンジン運転状態を間接的に示すエンジン運転状態の相当値を用いることもできる。ただし、現状の自動車制御システムへの適用を考えた場合には、例えば筒内圧センサを通じてシリンダ内の圧力を検出するプログラム(筒内圧力検出手段)を備えることにより、図4のステップS34において、そのシリンダ内の圧力に基づいて上記変動パラメータΔEを取得する構成が、トルク検出の精度が高く特に有効である。なお、エンジン運転状態を精度よく取得するため、上記パラメータの複数を組み合わせて用いるようにしてもよい。
・上記実施形態では、一例としてディーゼルエンジンのコモンレールシステムに本発明を適用した場合について言及したが、火花点火式のガソリンエンジン(特に直噴エンジン)についても、基本的には同様に本発明を適用することができる。
・上記実施形態及び変形例では、各種のソフトウェア(プログラム)を用いることを想定したが、専用回路等のハードウェアで同様の機能を実現するようにしてもよい。
10…エンジン、11…シリンダ(気筒)、15…クランク軸、16、18…カム軸、19…インジェクタ、21…マニュアルトランスミッション(MT)、23…シフト操作部、41…クランク角センサ、42…カム角センサ(Gセンサ)、50…ECU(電子制御ユニット)、60…マイクロコンピュータ、62…CPU(基本処理装置)、64…ROM(読み出し専用記憶装置)、66…EEPROM(電気的に書換可能な不揮発性メモリ)。