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JP4902269B2 - コークス製造用粘結材およびその製造法 - Google Patents
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JP4902269B2 - コークス製造用粘結材およびその製造法 - Google Patents

コークス製造用粘結材およびその製造法 Download PDF

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Description

本発明は、石油系重質油を原料として得られるコークス製造用粘結材およびその製造法に関するものである。
原油から分離される軽質油は、硫黄濃度が小さくかつ低沸点成分からなり、使用に際して環境保護の観点から優位性があるため、その需要は大きい。一方、同時に副生する、重質成分が濃縮された石油系重質油は、高粘度のためハンドリングが難しく、高濃度の硫黄が含まれるため燃料として使用した場合には、燃焼ガス中の硫黄酸化物除去のための排煙脱硫処理が必要になると同時に、バナジウム等の金属成分による燃焼機器の高温腐食の問題が生じる。さらに、重金属を含む燃焼灰廃棄物の発生という環境問題も生じる。このため、石油系重質油の有効利用法が限られており、これまでに、例えば、製鉄用コークス製造時の原料あるいはコークスの強度を向上させる粘結材として利用する方法が提案されている。
上記の石油系重質油は、軟化点が低い軽質なパラフィンを多く含んでおり、そのままではコークス製造用原料あるいは粘結材として使用することはできない。そこで、この石油系重質油の性状を、これらの用途に適合するよう改質することが必要であるが、石油系重質油を直接改質処理するためには、含有するパラフィンの影響のために極めて過酷な反応条件が必要であり、またその結果得られる改質物は、粘結材として機能しない多量の不純物を含むため、コークス製造用原料あるいは粘結材としても不十分な性質のものとなる。
そこで、石油系重質油中のパラフィンの量を低減して得られる石油ピッチを粘結材とし、これを原料炭に混合してコークスを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。石油ピッチは、炭素数4〜7の炭化水素からなる抽出溶剤を用いて、石油系重質油からパラフィンを抽出処理して得られる。
さらに、軟化点を上昇させて粘結材としての性能を向上させるために、石油ピッチを熱分解処理あるいは酸化処理して、石油ピッチ中の多環芳香族成分を縮重合させた改質物を粘結材とする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭59−179586号公報 特開昭56−139589号公報
しかし、上記の特許文献1に記載の方法では、溶剤抽出処理によっても、石油系重質油からパラフィンを完全に除去することはできず、また、得られる石油ピッチに含まれるアスファルテンも、その側鎖にパラフィンを含んでいるため、そのままコークス製造用の粘結材原料に用いた場合には粘結性が小さく、低品質のコークスしか得られないという問題点があった。また、このようなアスファルテンは、コークス製造工程で側鎖パラフィンが分解されることにより、分解ガスを発生するという問題点があった。
さらに、上記の特許文献2に記載の方法では、石油ピッチから改質物を得る工程で、分解ガスや劣質な分解油が副生するためこれらの処理が必要となり、また、得られた改質物をそのままコークス製造用の粘結材原料に用いた場合には、硫黄濃度が高いため、粘結材としての使用量が制限されるなどの問題点があった。
すなわち、石油系重質油を原料とした場合、好適なコークス製造用粘結材を得られていないというのが現状であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、石油系重質油を原料として用いて、コークス製造工程における分解ガスの発生を抑制し、硫黄濃度が低く、高い粘結性を持つコークス製造用粘結材とその粘結材を得る製造法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、石油系重質油を原料として得られるコークス製造用粘結材であって、石油系重質油から得られる石油ピッチを水素化改質処理し、得られた改質生成物から溶剤抽出または蒸留により軽質油を除去して得られた、(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とするコークス製造用粘結材である。
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量%
請求項2に記載の発明は、石油系重質油を原料とするコークス製造用粘結材を製造する方法であって、石油系重質油から、溶剤抽出または蒸留処理により軽質油を分離して石油ピッチを得る第一工程と、第一工程で得た石油ピッチを水素化改質処理して改質物を得る第二工程と、第二工程で得た改質物を、溶剤抽出または蒸留処理により軽質油と重質残渣とに分離する第三工程とを有し、前記第三工程で得られた重質残渣が、(1)〜(4)の条件を満たす粘結材であることを特徴とするコークス製造用粘結材の製造法である。
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量%
請求項3に記載の発明は、上記第一工程において、石油系重質油に、第三工程で改質物から軽質油を分離して得た重質残渣の一部を混合することを特徴とする請求項2に記載のコークス製造用粘結材の製造法である。
請求項4に記載の発明は、上記第二工程において、石油ピッチに、第三工程で改質物から軽質油を分離して得た重質残渣の一部を混合することを特徴とする請求項2または3に記載のコークス製造用粘結材の製造法である。
請求項5に記載の発明は、上記第一工程および/または第三工程が、溶剤抽出処理により軽質油を分離する工程であり、その溶剤抽出処理が、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる一種以上からなる溶剤と石油系重質油の体積流量比を2以上として軽質油を溶剤抽出し軟化点が80℃以上の分離残渣を得る処理であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法である。
請求項6に記載の発明は、上記第一工程および/または第三工程が、蒸留処理により軽質油を分離する工程であり、その蒸留処理が、カットポイントを500℃以上として軽質油を蒸留分離する処理であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法である。
請求項7に記載の発明は、上記第二工程の水素化改質処理を、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも一つを含む添加剤の共存下、温度380℃以上、圧力80kg/cm以上、水素/石油ピッチの流量比1000Nm/m以上で行うことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法である。
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載のコークス製造用粘結材を、コークス製造用原料炭に対して、0.5〜20質量%添加することを特徴とするコークスの製造法である。
請求項9に記載の発明は、請求項2〜7のいずれか一項に記載の製造法で得られたコークス製造用粘結材を、コークス製造用原料炭に対して、0.5〜20質量%添加することを特徴とするコークスの製造法である。
請求項1の発明によれば、石油系重質油を原料として用いて、コークス製造工程における分解ガスの発生を抑制し、硫黄濃度が低く、粘結性に優れたコークス製造用粘結材を得ることができる。
請求項2の発明によれば、上記粘結性に優れたコークス製造用粘結材の製造方法を提供することができる。
より具体的には、第二工程の水素化改質と、その前後の第一工程および第三工程での軽質分の除去を組み合わせることにより、改質反応中における分解ガスや劣質な分解油の発生を低減でき、また、石油ピッチ中に含まれる、アスファルテン等の側鎖パラフィンが分解し、コークス製造工程での側鎖パラフィンの分解を回避でき、コークス製造工程における分解ガスの発生を抑制できる。
また、多環芳香族成分が縮重合することで、改質物の軟化点が上昇し、粘結材の粘結性を向上させることができる。
さらに、石油系重質油からコークス製造用粘結材を製造する過程で体積は減少するが、石油ピッチ中に含まれる硫黄の一部が脱硫されるために、粘結材中への硫黄の濃縮による硫黄濃度の増大を低減でき、原料炭への該粘結材の混合量制限も緩和できる。
さらに、石油系重質油に含まれるバナジウムやニッケル等の金属成分は大半がコークス製造用粘結材にほぼ全量が移行するため、コークス製造用粘結材の製造過程で重金属を含む廃棄物を生成しない利点を有する。コークス製造用粘結材に含まれるバナジウム、ニッケルは、その後の製鐵工程で銑鉄に移行するため、資源として活用される。
請求項3および4の発明によれば、改質物から軽質油を分離して得た重質残渣の一部を、原料の石油系重質油または石油ピッチに混合して、上記第一工程〜第三工程を実施することで、軽質油の回収量を向上させ、工程経費を削減できる。
請求項5および6の発明によれば、軽質油とともに効率よくパラフィンを石油系重質油から抽出分離または蒸留分離でき、コークス製造用粘結材の粘結性をより向上させることができる。
請求項7の発明によれば、第二工程の水素化改質処理反応を円滑に行うことができ、コークス製造用粘結材の粘結性をより向上させることができる。
請求項8および9の発明によれば、コークスの製造において、上記で得られる粘結性の高い粘結材を原料炭に混合して使用することで、高強度で良質なコークスを得ることができ、また、粘結性の低い安価な原料炭も使用でき、コークス製造のコストを低減できる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のコークス製造用粘結材は、石油系重質油から得られる石油ピッチを水素化改質処理し、得られた改質生成物から溶剤抽出または蒸留により軽質油を除去して得られ、(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とする。
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量%
本発明において、C/H原子比とは、コークス製造用粘結材の芳香族性を示す指標であり、この値が高いほど芳香族環を多く含みパラフィン基が少ない事を示している。コークス製造用粘結材としては、低温で分解してガスを発生しやすいパラフィン基の含有量が少なく、多環芳香族化合物の含有量が多い方が好ましく、本発明のコークス製造用粘結材は、C/H原子比が1.0以上である。また、C/H原子比が高すぎる場合は、粘結材がコークスに近い性状となり、コークス製造用粘結材としての性能が低下することから、C/H原子比は2.0以下とすることが望ましい。
また、本発明において、熱重量分析における常温から500℃での重量減少とは、コークス製造用粘結材を原料炭と共にコークス炉に投入してコークスを製造した際の、コークス歩留まりを示す指標である。この重量減少は、熱重量分析において、窒素雰囲気中で試料を常温から800℃まで10℃/分で加熱して重量減少曲線を測定し、得られた重量減少曲線より500℃における重量減少WL(単位:質量%)を求めることで得られる。このようにして得られる重量減少曲線の一例を図4に示す。
重量減少が多い粘結材は、加熱による分解ガスの発生量が多いことを示しており、粘結材としては好ましくない。一方で、重量減少が小さい粘結材は、すでにコークス化が進んでいる事を示しており、粘結材としての性能に劣る。本発明のコークス製造用粘結材は、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%であり、重量減少がこの範囲であることで、好適なコークス製造用粘結材となる。
さらに、本発明において、熱重量分析における最大重量減少速度Rmax/WLとは、上記重量減少曲線を時間で一次微分して得られる重量減少速度曲線を基にして、下記式により求められる値である。なお、重量減少速度曲線の一例を、上記重量減少曲線とあわせて図4に示す。
Rmax/WL=Rmax/(WL/100)
ここで、
Rmax/WL : 最大重量減少速度(単位:質量%/分)
Rmax : ピーク位置における重量減少速度(単位:質量%/分)
WL : 500℃における重量減少(単位:質量%)
貴傅名らの研究によると、石炭のコークス化において最大重量減少速度とコークス化過程での流動性指標であるギーセラー流動性に相関があることが報告されており(K.Kidena,S.Murata,and M.Nomura,Energy & Fuels,12,782−787(1998)参照)、熱重量分析から得られる最大重量減少速度は、粘結性の指標として用いることが出来る。
粘結性の高い粘結材は、コークス炉用原料炭が軟化溶融する温度範囲(約400℃〜500℃)における熱分解速度が大きい事が必要である。これは、粘結材の熱分解により生成した炭化水素系のガスが、溶融した石炭と相互作用を起し、溶融性をさらに改善するためである。さらに、この粘結材の熱分解により発生したガスは、軟化溶融した石炭中の気泡の成長及び合体を促進して、気孔サイズを適切な大きさまで大きくするとともに、気泡の形状を丸みのある形状とし、結果として生成するコークスの強度向上に寄与する。本発明のコークス製造用粘結材は、熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上であり、最大重量減少速度がこの範囲であることで、粘結性に優れた粘結材となる。
なお、最大重量減少速度が高い方が、粘結材として好ましい性状となるが、一般的には、40質量%/分が製造可能な上限である。
本発明において、トルエン不溶解分とは、粘結材に含まれる有機物のトルエン不溶解物量のことである。この値は、粘結材をトルエン抽出して得られた抽出残渣の量から、抽出残渣を空気中で強熱後に残留する無機物の量を差し引くことで得られる。
トルエン不溶解分は、コークス化過程で残渣となり、コークスに移行する成分を反映した値である。トルエン不溶解分の大きな粘結材は、コークスの気孔構造においてコークス壁の厚さを増大させる効果を持ち、製品コークス強度を増大させる効果を持つ。本発明のコークス製造用粘結材は、トルエン不溶解分の範囲が1〜70質量%であり、トルエン不溶解分がこの範囲であることで、高強度の粘結材となる。
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図を示すものである。
この粘結材の製造方法は、原料である石油系重質油から、溶剤抽出処理により軽質油を分離して石油ピッチを得る第一工程1と、第一工程1で得た石油ピッチを、添加剤の共存下、水素化改質処理により改質反応を行い改質物を得る第二工程2と、第二工程2で得た改質物から、蒸留または溶剤抽出処理により軽質油と重質残渣とを分離して、粘結材である重質残渣を得る第三工程3とからなる。
第三工程3で得た粘結材を、コークス製造工程4で原料炭と混合して用いることにより、高強度のコークスを得ることができる。
本発明の第一工程では、石油系重質油から軽質油を分離するために、溶剤抽出処理または蒸留処理を行う。
溶剤抽出処理で軽質油を分離する際は、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる一種以上からなる抽出溶剤を使用することが好ましい。この溶剤はプロパンなどのブタンよりも分子量の小さい炭化水素やオクタンなどのヘプタンよりも分子量の大きい炭化水素、及び炭素が4から7のオレフィンや芳香族炭化水素を少量含んでいても溶剤としての性能には影響はなく、第一工程で使用する抽出溶剤として使用できる。
この抽出溶剤と石油系重質油の体積流量比(溶剤/石油系重質油)は2以上とすることが好ましい。この体積流量比が大きくなるほど、石油系重質油中のパラフィンをより多く軽質油とともに溶剤抽出できるが、過度に大きくすると、抽出溶剤の使用量が増えてプロセスのスケールが大きくなり、既存の設備で実施できなくなるばかりでなく、溶剤の加熱、冷却等各工程にかかる経費が増大する。したがって、この体積流量比はより好ましくは2〜10、特に好ましくは4〜6とする。
溶剤抽出処理の温度は、好ましくは溶剤の臨界温度付近、さらに好ましくは臨界温度以下(亜臨界)とし、また、抽出処理時の圧力は、溶剤の臨界圧力以上として、得られる石油ピッチの軟化点が80℃以上となるように、上記範囲内で好適な条件を選定することが好ましい。
粘結材として十分な粘結性を持たせるためには、石油ピッチ中に含まれるパラフィンを少なくする方が良く、このような石油ピッチを得るためには、石油系重質油中のパラフィンを軽質油とともに多く溶剤抽出することが好ましい。しかし、過度にパラフィンを抽出すると、石油ピッチの軟化点が高くなり過ぎて、石油ピッチの流動性が低下して、抽出装置に負荷がかかり、工程安定性が低くなる。そこで、JIS K2207石油アスファルトに記載の環球法で測定した石油ピッチの軟化点が、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃となるよう、抽出条件を選定する。
蒸留処理で軽質油を分離する際は、カットポイントを500℃以上に設定することが好ましい。石油ピッチ中のパラフィンを少なくするためには、蒸留時の温度をより高くかつ圧力をより低くして、石油系重質油中のパラフィンを軽質油とともにより多く蒸留分離することが望ましい。しかし、過度に蒸留時の温度を高く、または圧力を低くすると、石油系重質油の一部が熱分解して、ガスの発生あるいは炭素分の析出が起こり、蒸留装置に負荷がかかり、工程安定性が低くなる。そこで、カットポイントはより好ましくは500〜600℃、特に好ましくは540〜580℃となるよう、蒸留条件を選定する。
本発明の第二工程では、水素化改質反応により、石油ピッチの改質を行う。
本発明において水素化改質反応の条件は、石油ピッチが水素化改質される条件であれば特に制限はないが、炭化水素の炭素−炭素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合の切断を促進する水素化能を有する添加剤と水素の存在下に、温度380℃以上、圧力80kg/cm以上、水素/石油ピッチの流量比1000Nm/m以上で行うことが好ましい。
なお、本発明の水素化改質処理においては、改質反応処理後に改質物から水素、硫化水素、メタン等の分解ガスが除去され、さらに、カットポイントを320〜370℃とした蒸留操作で改質生成物としての軽質油が除去されており、重質残渣を得る後段において、硫化水素等のガス成分は発生しない。
また、第一工程で軽質油を分離した石油ピッチ中には、パラフィン側鎖を持つアスファルテン、多環芳香族成分、硫黄等が含まれる。
粘結材中にパラフィン側鎖を持つアスファルテンが多く残存していると、コークス製造時に側鎖パラフィンが分解されて多量のガスを発生する。したがって、水素化改質反応時に、あらかじめアスファルテンの側鎖パラフィンを切断しておく。
切断された側鎖パラフィンは軽質油の成分となり、第三工程で分離する。また、同時に副生するアスファルテンは、引き続き水素化改質反応時にその他の多環芳香族成分とともに縮重合し、その結果、第三工程で得られる粘結材は軟化点が上昇する。
さらに、第二工程では、上記側鎖パラフィンの切断および多環芳香族成分の縮重合に加え、脱硫および脱窒素が同時に進行する。また、この改質反応では、従来の熱分解反応あるいは酸化反応よりも、分解ガスや劣質な分解油の副生を抑制できる。
上記の水素化改質反応において、好ましい水素化能を有する添加剤として、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも一つを含む添加剤を共存させることで、反応が円滑に進行する。このニッケル、コバルト、モリブデンおよびタングステンの金属は、金属単体、有機化合物および無機化合物のいずれの形態で用いてもよい。さらにこの金属単体、有機化合物および無機化合物は、アルミナ、シリカ、チタニアなどの担体に担持して使用してもよく、溶液に分散させた状態で使用してもよい。
また反応は、反応温度が高いほど進行しやすいが、過度に反応温度を高くすると、炭素分が反応装置およびこれに付属する配管の中で析出し、さらに析出した炭素分が添加剤表面に付着して、反応の進行が妨げられる。
また、炭素分の析出は、圧力および水素/石油ピッチの流量比が大きいほど抑制されるが、過度に大きくすると、原料の加熱、冷却、圧縮、移送など各工程にかかる経費が増大し、コストアップにつながる。
したがって、本発明において水素化改質反応は、好ましくは反応温度380〜500℃、圧力80〜250kg/cm、水素/石油ピッチの流量比1000〜3000Nm/m、さらに好ましくは、反応温度400〜480℃、圧力120〜210kg/cm、水素/石油ピッチの流量比1500〜2500Nm/mの条件下で実施する。
上記第二工程で処理されて得られた改質物中には、切断された側鎖パラフィンなどの軽質油が含まれており、改質物のC/H原子比を低下させ、熱重量分析における常温から500℃での重量減少を増大させる要因となる。このため、改質物からコークス製造用粘結材として優れた性能を有する粘結材を得るためには、軽質油を分離する必要がある。第三工程では、これら軽質油を溶剤抽出処理または蒸留処理により分離して、コークス製造用粘結材としての重質残渣を得る。軽質油を分離するための溶剤抽出処理および蒸留処理の条件は、粘結材の収率、性状および経済性の観点から、第一工程と同じ条件で実施できる。
また、第一工程および第三工程で分離した軽質油からは、接触分解、水素化分解等の処理により、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油等、付加価値の高い石油精製品を得ることができる。
上記で説明したように、石油系重質油を原料として、第一工程、第二工程および第三工程のすべての工程を経て得られた粘結材は、C/H原子比1.0以上、トルエン不溶解分1〜70%、軟化点110〜250℃、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%、熱重量分析における最大重量減少速度Rmax/WLが15質量%/分以上と、コークス製造用粘結材として優れた性状を示す。
この本発明の粘結材は、従来の熱分解処理あるいは酸化処理により得られる改質物とは異なり、上記の性質を有するとともに硫黄濃度も低く抑えられている。
上記のようにして得られる本発明の粘結材を、コークス製造用原料炭に対して、0.5〜20質量%添加することにより、高強度で良質なコークスを製造できる。この時のコークスの製造法としては、粘結材を添加すること以外は、従来公知の方法を適用すれば良い。
(第二の実施形態)
図2は、本発明の第二の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図を示すものである。本実施形態は、第一の実施形態に対して、第三工程3で得た重質残渣の一部を第一工程の原料である石油系重質油と混合する工程を追加したものであり、その他の工程条件はすべて、第一の実施形態と同じである。
これにより、設備負荷を大きくすることなく、軽質油の回収量を向上させ、工程経費を削減することができる。
(第三の実施形態)
図3は、本発明の第三の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図を示すものである。本実施形態は、第一の実施形態に対して、第三工程3で得た重質残渣の一部を第二工程の石油ピッチと混合する工程を追加したものであり、その他の工程条件はすべて、第一の実施形態と同じである。これにより、設備負荷を大きくすることなく、軽質油の回収量を向上させ、工程経費を削減することができる。
なお、第一〜第三の実施形態で示した例では、第一工程として溶剤抽出処理を示しているが、代わりに蒸留処理を行っても石油ピッチが得られる。
また、第一工程と第三工程の好ましい分離工程としては、第一工程の処理と第三工程の処理が異なる場合である。具体的には、第一工程が溶剤抽出であれば第三工程が蒸留であり、逆に第一工程が蒸留であれば第三工程が溶剤抽出である。さらに好ましくは、第二の実施形態においては、第一工程として溶剤抽出処理を行い第三工程として蒸留処理を行う場合であり、第三の実施形態においては、第一工程として蒸留処理を行い第三工程として抽出処理を行う場合である。
さらに、本発明の製造方法において用いられる石油系重質油としては、蒸留操作でのカットポイントを320〜370℃として得られる軽質油を含まない重質油留分であることが好ましい。
一方、本発明の製造方法において石油ピッチは、石油系重質油を第一工程において溶剤抽出または蒸留処理して得られたものを指すが、石油系重質油がオリノコオイルなどの超重質油の場合には、第一工程を省略してそのまま石油ピッチとして使用して、第二工程以降の処理を行うことにより、本発明のコークス製造用粘結材を得ることができる。
以下、具体的な例により、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す例に何ら限定されるものではない。なお以下の例では、いずれも原料である石油系重質油として、中東系常圧残油を使用した。
(例A−1〜A−3:常圧残油の溶剤抽出処理による第一工程の例)
(例A−1)
ブタンを抽出溶剤として用い、ブタンと常圧残油の流量比を6とし、抽出率を75%として常圧残油から軽質油を抽出し、石油ピッチ1を得た。得られた石油ピッチ1の性状を表1に示す。
なお抽出率は、溶剤の種類と抽出温度を適宜選定することで設定した。また、抽出率は、石油系重質油に対する軽質油の回収率と定義した。以下の例でも同様である。
(例A−2)
ペンタンを抽出溶剤として用い、ペンタンと常圧残油の流量比を6とし、抽出率を85%として常圧残油から軽質油を抽出し、石油ピッチ2を得た。得られた石油ピッチ2の性状を表1に示す。
(例A−3)
プロパンを抽出溶剤として用い、プロパンと常圧残油の流量比を10とし、抽出率を65%として常圧残油から軽質油を抽出し、石油ピッチ3を得た。得られた石油ピッチ3の性状を表1に示す。
Figure 0004902269
常圧残油から、水素原子を多く含む軽質油が抽出されると、炭素原子を多く含む多環芳香族成分の石油ピッチ中の濃度が高まり、石油ピッチのC/H原子比および軟化点の値が大きくなり、さらに熱重量分析における常温から500℃での重量減少が小さくなる。石油ピッチ1および2はいずれも、このような値を示し、特にJIS K2207の環球法で測定した軟化点は80℃以上となっており、粘結材を得るにあたり好ましい性状である。
一方、石油ピッチ3は、C/H原子比が石油ピッチ1および2よりも低く、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が石油ピッチ1および2よりも大きく、軟化点も80℃以下となっており、多環芳香族成分の濃度が低くなっていることを示している。
(例B−1〜B−3:常圧残油の蒸留処理による第一工程の例)
(例B−1)
カットポイントを549℃として減圧蒸留を行い、常圧残油から軽質油を分離し、石油ピッチ4を得た。得られた石油ピッチ4の性状を表2に示す。
(例B−2)
カットポイントを591℃として減圧蒸留を行い、常圧残油から軽質油を分離し、石油ピッチ5を得た。得られた石油ピッチ5の性状を表2に示す。
(例B−3)
カットポイントを485℃として減圧蒸留を行い、常圧残油から軽質油を分離し、石油ピッチ6を得た。得られた石油ピッチ6の性状を表2に示す。
Figure 0004902269
石油ピッチ4および5は、いずれもC/H原子比の値が大きく熱重量分析における常温から500℃での重量減少の値が小さくなっており、多環芳香族成分の濃度が高くなっていることを示しており、粘結材を得るにあたり好ましい性状である。
一方、石油ピッチ6は、石油ピッチ4および5よりも多環芳香族成分の濃度が低くなっていることを示している。
(例C−1〜C−7:溶剤抽出処理で得た石油ピッチを用いた場合の、第二工程および第三工程の例)
(例C−1)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材1としての重質残渣を収率28%で得た。得られた粘結材1の性状を表3に示す。
(例C−2)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度425℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材2としての重質残渣を収率55%で得た。得られた粘結材2の性状を表3に示す。
(例C−3)
石油ピッチ3に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力100kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材3としての重質残渣を収率38%で得た。得られた粘結材3の性状を表3に示す。
(例C−4)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力70kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材4としての重質残渣を収率54%で得た。得られた粘結材4の性状を表4に示す。
(例C−5)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度370℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材5としての重質残渣を収率96%で得た。得られた粘結材5の性状を表4に示す。
(例C−6)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度425℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比800Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材6としての重質残渣を収率57%で得た。得られた粘結材6の性状を表4に示す。
(例C−7)
石油ピッチ3に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度425℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材7としての重質残渣を収率73%で得た。得られた粘結材7の性状を表4に示す。
Figure 0004902269
Figure 0004902269
好適な条件で水素化改質反応を行った粘結材1,2および3は、C/H原子比、トルエン不溶解分、熱重量分析における最大重量減少速度の値がいずれも大きく、同時に熱重量分析における常温から500℃での重量減少が小さくなっており、多環芳香族成分の濃度が高いことを示しており、粘結材として好ましい性状である。
一方、水素化改質反応の条件のうち、反応圧力を低くした得た粘結材4、水素/石油ピッチ流量比を小さくして得た粘結材6は、いずれも生成する粘結材は良好な性状を示すが、水素化改質反応過程で多量のコークスを析出するため安定した運転が困難であり反応条件としては不適である。反応温度を低くして得た粘結材5は、C/H原子比、トルエン不溶解分の値が小さく、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が大きくなっており多環芳香族成分の濃度が低いことを示しており、粘結材に適さない性状である。
また、多環芳香族成分濃度の低い石油ピッチ3を原料に用いた粘結材7は、好適な改質反応条件を選択しても、C/H原子比、熱重量分析における最大重量減少速度の値がいずれも小さく、多環芳香族成分の濃度が低いことを示しており、粘結材に適さない性状である。
(例C−8〜C−11:蒸留処理で得た石油ピッチを用いた場合の、第二工程および第三工程の例)
(例C−8)
石油ピッチ4に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材8としての重質残渣を収率15%で得た。得られた粘結材8の性状を表5に示す。
(例C−9)
石油ピッチ4に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度390℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材9としての重質残渣を収率93%で得た。得られた粘結材9の性状を表5に示す。
(例C−10)
石油ピッチ6に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材10としての重質残渣を収率57%で得た。得られた粘結材10の性状を表5に示す。
(例C−11)
石油ピッチ4に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点360℃以下の軽質油を改質物から分離し、重質残渣をさらにn−ブタンを抽出溶剤に用いた溶剤抽出処理により軽質油を改質物から分離し、粘結材11としての重質残渣を収率9%で得た。得られた粘結材11の性状を表5に示す。
Figure 0004902269
好適な条件で水素化改質反応を行い蒸留処理により得られた粘結材8、蒸留処理と溶剤抽出処理により得られた粘結材11は、いずれもC/H原子比、トルエン不溶解分、熱重量分析における最大重量減少速度の値がいずれも大きく、同時に熱重量分析における常温から500℃での重量減少が小さく、多環芳香族成分の濃度が高いことを示しており、粘結材として好ましい性状である。
一方、水素化改質反応の条件のうち、反応温度を低くして得た粘結材9は、水素化改質反応の進行が不十分で、粘結材として適さない性状である。
また、カットポイントを低くして得た石油ピッチ6を原料に用いた粘結材10は、好適な水素化改質反応条件を選択しても、C/H原子比、トルエン不溶解分、熱重量分析における最大重量減少速度の値がいずれも小さく、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が大きく、多環芳香族成分の濃度が低いことを示しており、粘結材に適さない性状である。
なお、上記粘結材8,9,10はいずれも、水素化熱分解改質反応時の脱硫の効果により、硫黄濃度の増大が低く抑えられている。
(例C−12:第三工程で得た重質残渣の一部を石油系重質油に混合した場合の第一工程〜第三工程の例)
例C−1で得られた粘結材1を常圧残油に10質量%混合して、重質原料油を調製した。そして、ブタンを抽出溶剤として用い、ブタンと重質原料油の流量比を6とし、抽出率を73%として重質原料油から軽質油を抽出し、石油ピッチを得た。この石油ピッチを、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材12としての重質残渣を収率33%で得た。得られた粘結材12の性状を表6に示す。
(例C−13およびC−14:第三工程で得た重質残渣の一部を石油ピッチに混合した場合の第二工程および第三工程の例)
(例C−13)
例C−8で得られた粘結材8を石油ピッチ4に7質量%混合して、石油ピッチ原料を調製した。この石油ピッチ原料を、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材13としての重質残渣を収率13%で得た。得られた粘結材13の性状を表6に示す。
(例C−14)
例C−11で得られた粘結材11を石油ピッチ4に5質量%混合して、石油ピッチ原料を調製した。この石油ピッチ原料を、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm、水素/石油ピッチ流量比1600Nm/mの反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点360℃以下の軽質油を改質物から分離し、重質残渣をさらにn−ブタンを抽出溶剤に用いた溶剤抽出処理により軽質油を改質物から分離し、粘結材14としての重質残渣を収率7%で得た。得られた粘結材14の性状を表6に示す。
Figure 0004902269
粘結材の一部を第一工程の原料と混合して処理することにより得られた粘結材12、 粘結材の一部を第二工程の原料と混合して処理することにより得られた粘結材13,14の性状は、いずれもC/H原子比、トルエン不溶解分、熱重量分析における最大重量減少速度の値がいずれも大きく、同時に熱重量分析における常温から500℃での重量減少が小さく、多環芳香族成分の濃度が高いことを示しており、粘結材として好ましい性状である。
また、粘結材の一部を混合しないで同様の処理で得られる粘結材1,8,11と粘結材12,13,14の性状を比較すると、500℃での重量減少は減少し、最大重量減少速度、C/H原子比、トルエン不溶解分および軟化点はいずれも増大しており、粘結材がより重質化しており、より高品質の粘結材であると考えられる。
また、両者の粘結材収率を比較すると、後者の収率が若干低下しており軽質油がより多く得られていることがわかる。粘結材と軽質油を同時に生産する場合には、粘結材および軽質油の価格と収率が経済性に大きく影響する。軽質油が高価である場合には、粘結材の一部を第一工程あるいは第二工程の原料と混合して処理することで、軽質油の収率を高めて経済性を向上させると共に、より高品質の粘結材を製造することができる。
(例D−1〜D−6:溶剤抽出処理で得た石油ピッチから粘結材を得、該粘結材の使用量を変化させて用いた場合のコークス製造の例)
(例D−1)
コークス用原料炭90kgに対して粘結材1を1質量%添加し、実機コークス炉をシミュレートすることができる試験用コークス炉を用いて、炉温1250℃、乾留時間18.5時間の条件でコークス化した。装入密度は0.83dry,t/m3とした。ここで試験に用いたコークス用原料炭のVM(揮発分)は26.5%、MF(JIS M8801に準じた流動性試験方法により測定される最高流動度の常用対数値)は2.0であった。焼成後のコークスについては、窒素で冷却した後、JIS K2151に準じたコークスのドラム強度指数(150回転後+15mm指数)を測定した。得られたコークス1の強度(以下、DI150 15と略記)および粘結材1のコークス歩留まりの値を表7に示す。なお、コークス強度はドラム法で、コークス歩留まりは熱分析法で算出しており、以下の例でも同様である。また、以下のいずれの例においても、同じ品質水準のコークス原料炭および同じコークス製造条件を採用している。
(例D−2)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材1を10質量%添加して、コークス2を製造した。得られたコークス2のDI150 15、および粘結材1のコークス歩留まりの値を表7に示す。
(例D−3)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材1を20質量%添加して、コークス3を製造した。得られたコークス3のDI150 15、および粘結材1のコークス歩留まりの値を表7に示す。
(例D−4)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材5を1質量%添加して、コークス4を製造した。得られたコークス4のDI150 15、および粘結材5のコークス歩留まりの値を表8に示す。
(例D−5)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材5を10質量%添加して、コークス5を製造した。得られたコークス5のDI150 15、および粘結材5のコークス歩留まりの値を表8に示す。
(例D−6)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材を添加することなく、コークス6を製造した。得られたコークス6のDI150 15の値を表8に示す。
Figure 0004902269
Figure 0004902269
粘結材を添加せずに製造したコークス6に対して、粘結材として好ましい性状を持つ粘結材1を添加して製造したコークス1,2および3は、いずれもコークス強度の向上が見られ、また、コークス歩留まりも大きく、添加量1%、10%および20%のいずれでも粘結材1の添加効果が見られる。
一方、粘結材5を添加して製造したコークス4および5は、いずれもコークス強度の向上が見られず、コークス歩留まりも小さく、粘結材5の添加効果は見られない。
(例D−7〜D−10:蒸留処理で得た石油ピッチから粘結材を得、該粘結材を用いた場合のコークス製造の例)
(例D−7)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材8を1質量%添加して、コークス7を製造した。得られたコークス7のDI150 15、および粘結材8のコークス歩留まりの値を表9に示す。
(例D−8)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材8を10質量%添加して、コークス8を製造した。得られたコークス8のDI150 15、および粘結材8のコークス歩留まりの値を表9に示す。
(例D−9)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材10を1質量%添加して、コークス9を製造した。得られたコークス9のDI150 15、および粘結材10のコークス歩留まりの値を表9に示す。
(例D−10)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材11を1質量%添加して、コークス10を製造した。得られたコークス10のDI150 15、および粘結材11のコークス歩留まりの値を表9に示す。
Figure 0004902269
粘結材として好ましい性状を持つ粘結材8を添加して製造したコークス7、8、および粘結材として好ましい性状を持つ粘結材11を添加して製造したコークス10は、粘結材を添加せずに製造したコークス6と比較して、コークス強度の向上が見られ、コークス歩留まりも大きく、粘結材8の添加効果は、添加量1%および10%のいずれでも見られる。
一方、粘結材10を用いて製造したコークス9は、コークス強度の向上が見られず、コークス歩留まりも小さく、粘結材10の添加効果が見られない。
(例D−11〜D−13:第三工程で得た重質残渣の一部を石油系重質油または石油ピッチに混合して処理することにより粘結材を得、該粘結材を用いた場合のコークス製造の例)
(例D−11)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材12を1質量%添加して、コークス11を製造した。得られたコークス11のDI150 15、および粘結材12のコークス歩留まりの値を表10に示す。
(例D−12)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材13を1質量%添加して、コークス12を製造した。得られたコークス12のDI150 15、および粘結材13のコークス歩留まりの値を表10に示す。
(例D−13)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材14を1質量%添加して、コークス13を製造した。得られたコークス13のDI150 15、および粘結材14のコークス歩留まりの値を表10に示す。
Figure 0004902269
粘結材の一部を第一工程あるいは第二工程の原料に混合して処理する方法で得られた粘結材12、13および14を用いて製造したコークスは、粘結材を添加せずに製造したコークス6と比較して、コークス強度の向上が見られ、コークス歩留まりも大きくなっており、粘結材としての性能に優れていることが判る。
以上、述べてきたように、石油系重質油から溶剤抽出処理で得られる軟化点80℃以上の石油ピッチ、あるいは、カットポイントを500℃以上とした蒸留処理で得られる石油ピッチのいずれかを水素化改質反応で改質することにより、石油系重質油から得られる従来の粘結材よりも、粘結性が高くかつ硫黄濃度の低い、優れた性状の粘結材を得ることができる。この粘結材を原料炭に対して3〜20質量%添加することで、強度の向上したコークスが得られる。
本発明の製造法で得られた粘結材を使用することで、高強度で良質なコークスを製造できるだけでなく、粘結性の低い原料炭をコークス製造に使用できるため、このような原料炭の需要を喚起でき、同時にこのような安価な原料炭とともに使用することで、コークスの製造コストを低減できる。また、従来限られた用途にしか用いることができなかった石油系重質油に、新たな用途を開拓できる。
さらに、粘結材を得る過程で副生する軽質油は、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油など付加価値の高い石油精製品の原料として使用することができる。また、コークス製造用粘結材の製造工程において、石油系重質油に含まれる硫黄を低減できるとともに、バナジウムやニッケル等の金属成分は、コークスを高炉で使用する際に、その大部分が高炉で生成したスラグ中に移行し、溶銑から除去、分離される。よって、石油精製産業あるいはコークスの主要な供給先である製鉄産業など、幅広い産業分野において、有用な発明である。
本発明の第一の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図である。 本発明の第二の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図である。 本発明の第三の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図である。 熱重量分析における重量減少曲線の一例を示すグラフである。
符号の説明
1・・・第一工程、 2・・・第二工程、 3・・・第三工程、 4・・・コークス製造工程

Claims (9)

  1. 石油系重質油を原料として得られるコークス製造用粘結材であって、
    石油系重質油から得られる石油ピッチを水素化改質処理し、得られた改質生成物から溶剤抽出または蒸留により軽質油を除去して得られた、(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とするコークス製造用粘結材。
    (1)C/H原子比1.0以上
    (2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
    (3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
    (4)トルエン不溶分1〜70質量%
  2. 石油系重質油を原料とするコークス製造用粘結材を製造する方法であって、
    石油系重質油から、溶剤抽出または蒸留処理により軽質油を分離して石油ピッチを得る第一工程と、第一工程で得た石油ピッチを水素化改質処理して改質物を得る第二工程と、第二工程で得た改質物を、溶剤抽出または蒸留処理により軽質油と重質残渣とに分離する第三工程とを有し、
    前記第三工程で得られた重質残渣が、(1)〜(4)の条件を満たす粘結材であることを特徴とするコークス製造用粘結材の製造法。
    (1)C/H原子比1.0以上
    (2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
    (3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
    (4)トルエン不溶分1〜70質量%
  3. 上記第一工程において、石油系重質油に、第三工程で改質物から軽質油を分離して得た重質残渣の一部を混合することを特徴とする請求項2に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
  4. 上記第二工程において、石油ピッチに、第三工程で改質物から軽質油を分離して得た重質残渣の一部を混合することを特徴とする請求項2または3に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
  5. 上記第一工程および/または第三工程が、溶剤抽出処理により軽質油を分離する工程であり、その溶剤抽出処理が、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる一種以上からなる溶剤と石油系重質油の体積流量比を2以上として軽質油を溶剤抽出し軟化点が80℃以上の分離残渣を得る処理であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
  6. 上記第一工程および/または第三工程が、蒸留処理により軽質油を分離する工程であり、その蒸留処理が、カットポイントを500℃以上として軽質油を蒸留分離する処理であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
  7. 上記第二工程の水素化改質処理を、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも一つを含む添加剤の共存下、温度380℃以上、圧力80kg/cm以上、水素/石油ピッチの流量比1000Nm/m以上で行うことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
  8. 請求項1に記載のコークス製造用粘結材を、コークス製造用原料炭に対して、0.5〜20質量%添加することを特徴とするコークスの製造法。
  9. 請求項2〜7のいずれか一項に記載の製造法で得られたコークス製造用粘結材を、コークス製造用原料炭に対して、0.5〜20質量%添加することを特徴とするコークスの製造法。

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