JP4902269B2 - コークス製造用粘結材およびその製造法 - Google Patents
コークス製造用粘結材およびその製造法 Download PDFInfo
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Description
さらに、軟化点を上昇させて粘結材としての性能を向上させるために、石油ピッチを熱分解処理あるいは酸化処理して、石油ピッチ中の多環芳香族成分を縮重合させた改質物を粘結材とする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、上記の特許文献2に記載の方法では、石油ピッチから改質物を得る工程で、分解ガスや劣質な分解油が副生するためこれらの処理が必要となり、また、得られた改質物をそのままコークス製造用の粘結材原料に用いた場合には、硫黄濃度が高いため、粘結材としての使用量が制限されるなどの問題点があった。
すなわち、石油系重質油を原料とした場合、好適なコークス製造用粘結材を得られていないというのが現状であった。
請求項1に記載の発明は、石油系重質油を原料として得られるコークス製造用粘結材であって、石油系重質油から得られる石油ピッチを水素化改質処理し、得られた改質生成物から溶剤抽出または蒸留により軽質油を除去して得られた、(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とするコークス製造用粘結材である。
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量%
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量%
より具体的には、第二工程の水素化改質と、その前後の第一工程および第三工程での軽質分の除去を組み合わせることにより、改質反応中における分解ガスや劣質な分解油の発生を低減でき、また、石油ピッチ中に含まれる、アスファルテン等の側鎖パラフィンが分解し、コークス製造工程での側鎖パラフィンの分解を回避でき、コークス製造工程における分解ガスの発生を抑制できる。
また、多環芳香族成分が縮重合することで、改質物の軟化点が上昇し、粘結材の粘結性を向上させることができる。
さらに、石油系重質油からコークス製造用粘結材を製造する過程で体積は減少するが、石油ピッチ中に含まれる硫黄の一部が脱硫されるために、粘結材中への硫黄の濃縮による硫黄濃度の増大を低減でき、原料炭への該粘結材の混合量制限も緩和できる。
さらに、石油系重質油に含まれるバナジウムやニッケル等の金属成分は大半がコークス製造用粘結材にほぼ全量が移行するため、コークス製造用粘結材の製造過程で重金属を含む廃棄物を生成しない利点を有する。コークス製造用粘結材に含まれるバナジウム、ニッケルは、その後の製鐵工程で銑鉄に移行するため、資源として活用される。
本発明のコークス製造用粘結材は、石油系重質油から得られる石油ピッチを水素化改質処理し、得られた改質生成物から溶剤抽出または蒸留により軽質油を除去して得られ、(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とする。
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量%
Rmax/WL=Rmax/(WL/100)
ここで、
Rmax/WL : 最大重量減少速度(単位:質量%/分)
Rmax : ピーク位置における重量減少速度(単位:質量%/分)
WL : 500℃における重量減少(単位:質量%)
粘結性の高い粘結材は、コークス炉用原料炭が軟化溶融する温度範囲(約400℃〜500℃)における熱分解速度が大きい事が必要である。これは、粘結材の熱分解により生成した炭化水素系のガスが、溶融した石炭と相互作用を起し、溶融性をさらに改善するためである。さらに、この粘結材の熱分解により発生したガスは、軟化溶融した石炭中の気泡の成長及び合体を促進して、気孔サイズを適切な大きさまで大きくするとともに、気泡の形状を丸みのある形状とし、結果として生成するコークスの強度向上に寄与する。本発明のコークス製造用粘結材は、熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上であり、最大重量減少速度がこの範囲であることで、粘結性に優れた粘結材となる。
なお、最大重量減少速度が高い方が、粘結材として好ましい性状となるが、一般的には、40質量%/分が製造可能な上限である。
トルエン不溶解分は、コークス化過程で残渣となり、コークスに移行する成分を反映した値である。トルエン不溶解分の大きな粘結材は、コークスの気孔構造においてコークス壁の厚さを増大させる効果を持ち、製品コークス強度を増大させる効果を持つ。本発明のコークス製造用粘結材は、トルエン不溶解分の範囲が1〜70質量%であり、トルエン不溶解分がこの範囲であることで、高強度の粘結材となる。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図を示すものである。
この粘結材の製造方法は、原料である石油系重質油から、溶剤抽出処理により軽質油を分離して石油ピッチを得る第一工程1と、第一工程1で得た石油ピッチを、添加剤の共存下、水素化改質処理により改質反応を行い改質物を得る第二工程2と、第二工程2で得た改質物から、蒸留または溶剤抽出処理により軽質油と重質残渣とを分離して、粘結材である重質残渣を得る第三工程3とからなる。
第三工程3で得た粘結材を、コークス製造工程4で原料炭と混合して用いることにより、高強度のコークスを得ることができる。
溶剤抽出処理で軽質油を分離する際は、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる一種以上からなる抽出溶剤を使用することが好ましい。この溶剤はプロパンなどのブタンよりも分子量の小さい炭化水素やオクタンなどのヘプタンよりも分子量の大きい炭化水素、及び炭素が4から7のオレフィンや芳香族炭化水素を少量含んでいても溶剤としての性能には影響はなく、第一工程で使用する抽出溶剤として使用できる。
この抽出溶剤と石油系重質油の体積流量比(溶剤/石油系重質油)は2以上とすることが好ましい。この体積流量比が大きくなるほど、石油系重質油中のパラフィンをより多く軽質油とともに溶剤抽出できるが、過度に大きくすると、抽出溶剤の使用量が増えてプロセスのスケールが大きくなり、既存の設備で実施できなくなるばかりでなく、溶剤の加熱、冷却等各工程にかかる経費が増大する。したがって、この体積流量比はより好ましくは2〜10、特に好ましくは4〜6とする。
粘結材として十分な粘結性を持たせるためには、石油ピッチ中に含まれるパラフィンを少なくする方が良く、このような石油ピッチを得るためには、石油系重質油中のパラフィンを軽質油とともに多く溶剤抽出することが好ましい。しかし、過度にパラフィンを抽出すると、石油ピッチの軟化点が高くなり過ぎて、石油ピッチの流動性が低下して、抽出装置に負荷がかかり、工程安定性が低くなる。そこで、JIS K2207石油アスファルトに記載の環球法で測定した石油ピッチの軟化点が、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃となるよう、抽出条件を選定する。
本発明において水素化改質反応の条件は、石油ピッチが水素化改質される条件であれば特に制限はないが、炭化水素の炭素−炭素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合の切断を促進する水素化能を有する添加剤と水素の存在下に、温度380℃以上、圧力80kg/cm2以上、水素/石油ピッチの流量比1000Nm3/m3以上で行うことが好ましい。
なお、本発明の水素化改質処理においては、改質反応処理後に改質物から水素、硫化水素、メタン等の分解ガスが除去され、さらに、カットポイントを320〜370℃とした蒸留操作で改質生成物としての軽質油が除去されており、重質残渣を得る後段において、硫化水素等のガス成分は発生しない。
粘結材中にパラフィン側鎖を持つアスファルテンが多く残存していると、コークス製造時に側鎖パラフィンが分解されて多量のガスを発生する。したがって、水素化改質反応時に、あらかじめアスファルテンの側鎖パラフィンを切断しておく。
切断された側鎖パラフィンは軽質油の成分となり、第三工程で分離する。また、同時に副生するアスファルテンは、引き続き水素化改質反応時にその他の多環芳香族成分とともに縮重合し、その結果、第三工程で得られる粘結材は軟化点が上昇する。
また反応は、反応温度が高いほど進行しやすいが、過度に反応温度を高くすると、炭素分が反応装置およびこれに付属する配管の中で析出し、さらに析出した炭素分が添加剤表面に付着して、反応の進行が妨げられる。
また、炭素分の析出は、圧力および水素/石油ピッチの流量比が大きいほど抑制されるが、過度に大きくすると、原料の加熱、冷却、圧縮、移送など各工程にかかる経費が増大し、コストアップにつながる。
この本発明の粘結材は、従来の熱分解処理あるいは酸化処理により得られる改質物とは異なり、上記の性質を有するとともに硫黄濃度も低く抑えられている。
図2は、本発明の第二の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図を示すものである。本実施形態は、第一の実施形態に対して、第三工程3で得た重質残渣の一部を第一工程の原料である石油系重質油と混合する工程を追加したものであり、その他の工程条件はすべて、第一の実施形態と同じである。
これにより、設備負荷を大きくすることなく、軽質油の回収量を向上させ、工程経費を削減することができる。
図3は、本発明の第三の実施形態に係る粘結材およびコークスの製造方法の工程図を示すものである。本実施形態は、第一の実施形態に対して、第三工程3で得た重質残渣の一部を第二工程の石油ピッチと混合する工程を追加したものであり、その他の工程条件はすべて、第一の実施形態と同じである。これにより、設備負荷を大きくすることなく、軽質油の回収量を向上させ、工程経費を削減することができる。
また、第一工程と第三工程の好ましい分離工程としては、第一工程の処理と第三工程の処理が異なる場合である。具体的には、第一工程が溶剤抽出であれば第三工程が蒸留であり、逆に第一工程が蒸留であれば第三工程が溶剤抽出である。さらに好ましくは、第二の実施形態においては、第一工程として溶剤抽出処理を行い第三工程として蒸留処理を行う場合であり、第三の実施形態においては、第一工程として蒸留処理を行い第三工程として抽出処理を行う場合である。
さらに、本発明の製造方法において用いられる石油系重質油としては、蒸留操作でのカットポイントを320〜370℃として得られる軽質油を含まない重質油留分であることが好ましい。
一方、本発明の製造方法において石油ピッチは、石油系重質油を第一工程において溶剤抽出または蒸留処理して得られたものを指すが、石油系重質油がオリノコオイルなどの超重質油の場合には、第一工程を省略してそのまま石油ピッチとして使用して、第二工程以降の処理を行うことにより、本発明のコークス製造用粘結材を得ることができる。
(例A−1〜A−3:常圧残油の溶剤抽出処理による第一工程の例)
(例A−1)
ブタンを抽出溶剤として用い、ブタンと常圧残油の流量比を6とし、抽出率を75%として常圧残油から軽質油を抽出し、石油ピッチ1を得た。得られた石油ピッチ1の性状を表1に示す。
なお抽出率は、溶剤の種類と抽出温度を適宜選定することで設定した。また、抽出率は、石油系重質油に対する軽質油の回収率と定義した。以下の例でも同様である。
(例A−2)
ペンタンを抽出溶剤として用い、ペンタンと常圧残油の流量比を6とし、抽出率を85%として常圧残油から軽質油を抽出し、石油ピッチ2を得た。得られた石油ピッチ2の性状を表1に示す。
(例A−3)
プロパンを抽出溶剤として用い、プロパンと常圧残油の流量比を10とし、抽出率を65%として常圧残油から軽質油を抽出し、石油ピッチ3を得た。得られた石油ピッチ3の性状を表1に示す。
一方、石油ピッチ3は、C/H原子比が石油ピッチ1および2よりも低く、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が石油ピッチ1および2よりも大きく、軟化点も80℃以下となっており、多環芳香族成分の濃度が低くなっていることを示している。
(例B−1)
カットポイントを549℃として減圧蒸留を行い、常圧残油から軽質油を分離し、石油ピッチ4を得た。得られた石油ピッチ4の性状を表2に示す。
(例B−2)
カットポイントを591℃として減圧蒸留を行い、常圧残油から軽質油を分離し、石油ピッチ5を得た。得られた石油ピッチ5の性状を表2に示す。
(例B−3)
カットポイントを485℃として減圧蒸留を行い、常圧残油から軽質油を分離し、石油ピッチ6を得た。得られた石油ピッチ6の性状を表2に示す。
一方、石油ピッチ6は、石油ピッチ4および5よりも多環芳香族成分の濃度が低くなっていることを示している。
(例C−1)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材1としての重質残渣を収率28%で得た。得られた粘結材1の性状を表3に示す。
(例C−2)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度425℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材2としての重質残渣を収率55%で得た。得られた粘結材2の性状を表3に示す。
(例C−3)
石油ピッチ3に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力100kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材3としての重質残渣を収率38%で得た。得られた粘結材3の性状を表3に示す。
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力70kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材4としての重質残渣を収率54%で得た。得られた粘結材4の性状を表4に示す。
(例C−5)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度370℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材5としての重質残渣を収率96%で得た。得られた粘結材5の性状を表4に示す。
(例C−6)
石油ピッチ1に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度425℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比800Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材6としての重質残渣を収率57%で得た。得られた粘結材6の性状を表4に示す。
(例C−7)
石油ピッチ3に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度425℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材7としての重質残渣を収率73%で得た。得られた粘結材7の性状を表4に示す。
一方、水素化改質反応の条件のうち、反応圧力を低くした得た粘結材4、水素/石油ピッチ流量比を小さくして得た粘結材6は、いずれも生成する粘結材は良好な性状を示すが、水素化改質反応過程で多量のコークスを析出するため安定した運転が困難であり反応条件としては不適である。反応温度を低くして得た粘結材5は、C/H原子比、トルエン不溶解分の値が小さく、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が大きくなっており多環芳香族成分の濃度が低いことを示しており、粘結材に適さない性状である。
また、多環芳香族成分濃度の低い石油ピッチ3を原料に用いた粘結材7は、好適な改質反応条件を選択しても、C/H原子比、熱重量分析における最大重量減少速度の値がいずれも小さく、多環芳香族成分の濃度が低いことを示しており、粘結材に適さない性状である。
(例C−8)
石油ピッチ4に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材8としての重質残渣を収率15%で得た。得られた粘結材8の性状を表5に示す。
(例C−9)
石油ピッチ4に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度390℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材9としての重質残渣を収率93%で得た。得られた粘結材9の性状を表5に示す。
(例C−10)
石油ピッチ6に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材10としての重質残渣を収率57%で得た。得られた粘結材10の性状を表5に示す。
(例C−11)
石油ピッチ4に対して、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点360℃以下の軽質油を改質物から分離し、重質残渣をさらにn−ブタンを抽出溶剤に用いた溶剤抽出処理により軽質油を改質物から分離し、粘結材11としての重質残渣を収率9%で得た。得られた粘結材11の性状を表5に示す。
一方、水素化改質反応の条件のうち、反応温度を低くして得た粘結材9は、水素化改質反応の進行が不十分で、粘結材として適さない性状である。
また、カットポイントを低くして得た石油ピッチ6を原料に用いた粘結材10は、好適な水素化改質反応条件を選択しても、C/H原子比、トルエン不溶解分、熱重量分析における最大重量減少速度の値がいずれも小さく、熱重量分析における常温から500℃での重量減少が大きく、多環芳香族成分の濃度が低いことを示しており、粘結材に適さない性状である。
なお、上記粘結材8,9,10はいずれも、水素化熱分解改質反応時の脱硫の効果により、硫黄濃度の増大が低く抑えられている。
例C−1で得られた粘結材1を常圧残油に10質量%混合して、重質原料油を調製した。そして、ブタンを抽出溶剤として用い、ブタンと重質原料油の流量比を6とし、抽出率を73%として重質原料油から軽質油を抽出し、石油ピッチを得た。この石油ピッチを、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材12としての重質残渣を収率33%で得た。得られた粘結材12の性状を表6に示す。
(例C−13)
例C−8で得られた粘結材8を石油ピッチ4に7質量%混合して、石油ピッチ原料を調製した。この石油ピッチ原料を、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点524℃以下の軽質油を改質物から分離し、粘結材13としての重質残渣を収率13%で得た。得られた粘結材13の性状を表6に示す。
例C−11で得られた粘結材11を石油ピッチ4に5質量%混合して、石油ピッチ原料を調製した。この石油ピッチ原料を、鉄を含む添加剤を3質量%添加し、これら混合物を流通式オートクレーブ反応装置中で、反応温度455℃、反応時間3時間、反応圧力140kg/cm2、水素/石油ピッチ流量比1600Nm3/m3の反応条件で水素化改質反応を行った。
続いて、蒸留処理により沸点360℃以下の軽質油を改質物から分離し、重質残渣をさらにn−ブタンを抽出溶剤に用いた溶剤抽出処理により軽質油を改質物から分離し、粘結材14としての重質残渣を収率7%で得た。得られた粘結材14の性状を表6に示す。
また、粘結材の一部を混合しないで同様の処理で得られる粘結材1,8,11と粘結材12,13,14の性状を比較すると、500℃での重量減少は減少し、最大重量減少速度、C/H原子比、トルエン不溶解分および軟化点はいずれも増大しており、粘結材がより重質化しており、より高品質の粘結材であると考えられる。
また、両者の粘結材収率を比較すると、後者の収率が若干低下しており軽質油がより多く得られていることがわかる。粘結材と軽質油を同時に生産する場合には、粘結材および軽質油の価格と収率が経済性に大きく影響する。軽質油が高価である場合には、粘結材の一部を第一工程あるいは第二工程の原料と混合して処理することで、軽質油の収率を高めて経済性を向上させると共に、より高品質の粘結材を製造することができる。
(例D−1)
コークス用原料炭90kgに対して粘結材1を1質量%添加し、実機コークス炉をシミュレートすることができる試験用コークス炉を用いて、炉温1250℃、乾留時間18.5時間の条件でコークス化した。装入密度は0.83dry,t/m3とした。ここで試験に用いたコークス用原料炭のVM(揮発分)は26.5%、MF(JIS M8801に準じた流動性試験方法により測定される最高流動度の常用対数値)は2.0であった。焼成後のコークスについては、窒素で冷却した後、JIS K2151に準じたコークスのドラム強度指数(150回転後+15mm指数)を測定した。得られたコークス1の強度(以下、DI150 15と略記)および粘結材1のコークス歩留まりの値を表7に示す。なお、コークス強度はドラム法で、コークス歩留まりは熱分析法で算出しており、以下の例でも同様である。また、以下のいずれの例においても、同じ品質水準のコークス原料炭および同じコークス製造条件を採用している。
(例D−2)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材1を10質量%添加して、コークス2を製造した。得られたコークス2のDI150 15、および粘結材1のコークス歩留まりの値を表7に示す。
(例D−3)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材1を20質量%添加して、コークス3を製造した。得られたコークス3のDI150 15、および粘結材1のコークス歩留まりの値を表7に示す。
コークス原料炭90kgに対して、粘結材5を1質量%添加して、コークス4を製造した。得られたコークス4のDI150 15、および粘結材5のコークス歩留まりの値を表8に示す。
(例D−5)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材5を10質量%添加して、コークス5を製造した。得られたコークス5のDI150 15、および粘結材5のコークス歩留まりの値を表8に示す。
(例D−6)
コークス原料炭90kgに対して、粘結材を添加することなく、コークス6を製造した。得られたコークス6のDI150 15の値を表8に示す。
一方、粘結材5を添加して製造したコークス4および5は、いずれもコークス強度の向上が見られず、コークス歩留まりも小さく、粘結材5の添加効果は見られない。
(例D−7)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材8を1質量%添加して、コークス7を製造した。得られたコークス7のDI150 15、および粘結材8のコークス歩留まりの値を表9に示す。
(例D−8)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材8を10質量%添加して、コークス8を製造した。得られたコークス8のDI150 15、および粘結材8のコークス歩留まりの値を表9に示す。
(例D−9)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材10を1質量%添加して、コークス9を製造した。得られたコークス9のDI150 15、および粘結材10のコークス歩留まりの値を表9に示す。
(例D−10)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材11を1質量%添加して、コークス10を製造した。得られたコークス10のDI150 15、および粘結材11のコークス歩留まりの値を表9に示す。
一方、粘結材10を用いて製造したコークス9は、コークス強度の向上が見られず、コークス歩留まりも小さく、粘結材10の添加効果が見られない。
(例D−11)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材12を1質量%添加して、コークス11を製造した。得られたコークス11のDI150 15、および粘結材12のコークス歩留まりの値を表10に示す。
(例D−12)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材13を1質量%添加して、コークス12を製造した。得られたコークス12のDI150 15、および粘結材13のコークス歩留まりの値を表10に示す。
(例D−13)
コークス原料炭15kgに対して、粘結材14を1質量%添加して、コークス13を製造した。得られたコークス13のDI150 15、および粘結材14のコークス歩留まりの値を表10に示す。
さらに、粘結材を得る過程で副生する軽質油は、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油など付加価値の高い石油精製品の原料として使用することができる。また、コークス製造用粘結材の製造工程において、石油系重質油に含まれる硫黄を低減できるとともに、バナジウムやニッケル等の金属成分は、コークスを高炉で使用する際に、その大部分が高炉で生成したスラグ中に移行し、溶銑から除去、分離される。よって、石油精製産業あるいはコークスの主要な供給先である製鉄産業など、幅広い産業分野において、有用な発明である。
Claims (9)
- 石油系重質油を原料として得られるコークス製造用粘結材であって、
石油系重質油から得られる石油ピッチを水素化改質処理し、得られた改質生成物から溶剤抽出または蒸留により軽質油を除去して得られた、(1)〜(4)の条件を満たすことを特徴とするコークス製造用粘結材。
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量% - 石油系重質油を原料とするコークス製造用粘結材を製造する方法であって、
石油系重質油から、溶剤抽出または蒸留処理により軽質油を分離して石油ピッチを得る第一工程と、第一工程で得た石油ピッチを水素化改質処理して改質物を得る第二工程と、第二工程で得た改質物を、溶剤抽出または蒸留処理により軽質油と重質残渣とに分離する第三工程とを有し、
前記第三工程で得られた重質残渣が、(1)〜(4)の条件を満たす粘結材であることを特徴とするコークス製造用粘結材の製造法。
(1)C/H原子比1.0以上
(2)熱重量分析における常温から500℃での重量減少が20〜60質量%
(3)熱重量分析における最大重量減少速度が15質量%/分以上
(4)トルエン不溶分1〜70質量% - 上記第一工程において、石油系重質油に、第三工程で改質物から軽質油を分離して得た重質残渣の一部を混合することを特徴とする請求項2に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
- 上記第二工程において、石油ピッチに、第三工程で改質物から軽質油を分離して得た重質残渣の一部を混合することを特徴とする請求項2または3に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
- 上記第一工程および/または第三工程が、溶剤抽出処理により軽質油を分離する工程であり、その溶剤抽出処理が、ブタン、ペンタン、ヘキサンおよびヘプタンから選ばれる一種以上からなる溶剤と石油系重質油の体積流量比を2以上として軽質油を溶剤抽出し軟化点が80℃以上の分離残渣を得る処理であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
- 上記第一工程および/または第三工程が、蒸留処理により軽質油を分離する工程であり、その蒸留処理が、カットポイントを500℃以上として軽質油を蒸留分離する処理であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
- 上記第二工程の水素化改質処理を、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも一つを含む添加剤の共存下、温度380℃以上、圧力80kg/cm2以上、水素/石油ピッチの流量比1000Nm/m3以上で行うことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のコークス製造用粘結材の製造法。
- 請求項1に記載のコークス製造用粘結材を、コークス製造用原料炭に対して、0.5〜20質量%添加することを特徴とするコークスの製造法。
- 請求項2〜7のいずれか一項に記載の製造法で得られたコークス製造用粘結材を、コークス製造用原料炭に対して、0.5〜20質量%添加することを特徴とするコークスの製造法。
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