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JP4903447B2 - 水生動物の飼育方法及び飼育キット - Google Patents
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Description

本発明は、水生動物の飼育方法及び飼育キットに関する。さらに詳述すると、本発明は、浮遊生物、遊泳生物の孵化直後から植物プランクトンを摂餌する期間の飼育における飼育方法及び飼育キットに関する。
水生動物の生態等の研究のために水生動物の大量飼育が一般的に行われている。例えばフジツボは、様々な海洋構築物や火力・原子力発電所の冷却水路系等に付着する代表的生物であり、冷却水路系にフジツボなどの生物が付着すると、冷却水の流動抵抗が増し流量の低下を引き起こして復水器の冷却効率が低下してしまう。したがって、各発電所では、付着したフジツボなどを機械的に除去したり、防汚塗料によりフジツボの付着を抑制する等の様々な防除対策を行っている。このようなフジツボの付着抑制のためフジツボの付着阻害物質の研究を行っている。このため、フジツボ類の幼生を大量に飼育する必要がある。
非特許文献1には、餌となる植物プランクトンとしてキートセラスカルシトランス(Chaetoceros calcitrans)を飼育海水に投入し、タテジマフジツボ(Balanus amphitrite)のノープリウス幼生の大量飼育を行う飼育方法およびキプリス幼生を用いた循環流水式の付着試験法が提案されている(非特許文献1)。
北村等:タテジマフジツボ幼生の飼育法およびキプリス幼生を用いた循環流水式の付着試験法,SESSILE ORGANISM 15(2)p15-21,1999
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、タテジマフジツボのノープリウス幼生の飼育において、毎日の換水と給餌を行う必要があった。換水は、幼生を走光性によりビーカーの特定の部分に集合させ、当該幼生をピペットで回収し、新たなビーカーに収容し濾過海水を加えることにより行われる。また、餌となるキートセラスカルシトランスを適宜与えることが必要であった。また、多くの場合、餌となる植物プランクトンも別途培養する必要があり飼育者の手間となっていた。水生動物の大量飼育は生態等の研究といった本来の目的のための手段である場合が多く、飼育においては飼育者のかける労力は少なければ少ないほどよい。したがって、このような作業を毎日実行するのは、飼育者の負担となっていた。このように非特許文献1に記載の技術では、タテジマフジツボのノープリウス幼生の飼育において種々の煩雑さが伴うという問題点があった。
また、場合によっては飼育水中にバクテリア等が増殖することにより水生動物が死滅するという問題点も生じていた。
そこで本発明は、植物プランクトンを餌とする水生動物の飼育において、水生動物と植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地を同一の飼育水中に投入することにより、無換水で、かつ給餌を必要としない水生動物の飼育方法に関するものである。
かかる課題を解決するため、本願発明者が種々検討を行ったところ、水生動物の孵化直後から植物プランクトンを摂餌する期間(以下、初期生活段階という)における飼育において、水生動物と植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地を同一の飼育水中に投入することにより、換水及び給餌を行うことなく当該水生動物の飼育が可能であることを知見した。
請求項1記載の水生動物の飼育方法は、かかる知見に基づくものであり、水生動物の初期生活段階である孵化直後から植物プランクトンを摂餌する期間における飼育において、水生動物と植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地を同一の飼育水中に投入し、飼育水の換水及び給餌を行うことなく飼育するようにしている。したがって、飼育対象となる初期生活段階の水生動物と当該水生動物の餌となる植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地を同一の飼育水中に投入することにより、初期生活段階にある水生動物が摂餌する植物プランクトンが植物プランクトン培養用培地により増殖し続けるため水生動物は継続的に植物プランクトンを摂餌することができることとしている。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水生動物の飼育方法において、飼育水中に抗生物質を加えることとしている。したがって、飼育水中に発生するバクテリア等の増殖を当該抗生物質により抑制している。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれかに記載の水生動物の飼育方法において、水生動物は、フジツボ類でり、フジツボ類がノープリウス幼生からキプリス幼生に変態するまで飼育するようにしている
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3までのいずれか1つに記載の水生動物の飼育方法において、植物プランクトンは、珪藻であり、飼育水に珪素化合物を添加する
こととしている。したがって、珪藻を摂餌する植物プランクトンの飼育を行うことができる。
更に、請求項5に記載の植物プランクトンを餌とする水生動物の飼育キットは、少なくとも孵化直後から成体とほぼ同等の形態に成長するまでの期間に渡り植物プランクトンを餌とする水生動物と植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地とを備え、水生動物と植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地を同一の飼育水中に投入し、飼育水の換水及び給餌を行うことなく、水生動物を孵化直後から成体と同等の形態に成長するまで飼育するためのものである。
本発明の水生動物の飼育方法によれば、水生動物の初期生活段階の飼育において、飼育水の換水及び給餌を行うことなく飼育を行うことができる。また、餌となる植物プランクトンの培養の手間を省くことができる。このため、飼育者の労力を大幅に減らすことが可能となる。
更に、請求項2に記載の水生動物の飼育方法によれば、飼育の阻害要因となりうる微生物等の増殖を抑制することで、換水を行うことなく水生動物の初期生活段階の飼育を成功する確率を向上することができる。
更に、請求項3に記載の水生動物の飼育方法によれば、植物プランクトンを摂餌するフジツボ類のノープリウス幼生がキプリス幼生に変態するまで、一切の換水及び給餌を行うことなく飼育することができる。
更に、請求項4に記載の水生動物の飼育方法によれば、珪藻を摂餌する植物プランクトンの飼育において、一切の換水及び給餌を行うことなく飼育することができる。
更に、請求項5に記載の水生動物の飼育キットによれば、少なくとも孵化直後から成体とほぼ同等の形態に成長するまでの期間に渡り植物プランクトンを餌とする水生動物の飼育において、飼育水の換水及び給餌を行うことなく水生動物の孵化直後から成体までの飼育を行うことができる。また、飼育程を観察することができる。
以下、本発明の水生動物の飼育方法および飼育キットの実施の一形態を詳細に説明する。
本実施形態では、飼育開始時に飼育を行う初期生活段階にある水生動物と、当該水生動物の餌となる植物プランクトンと、当該植物プランクトンを培養する植物プランクトン培養用培地を飼育開始時に飼育水中に投入することとしている。しかしながら、必ずしもこれらを同時に投入する必要はない。例えば、植物プランクトンははじめに十分な量を加えた場合、飼育開始時に必ずしも植物プランクトン培養用培地を投入する必要はない。この場合、植物プランクトン培養用培地を投入するのは、飼育開始から数時間後、翌日等であっても良い。
植物プランクトンとは、珪藻類、藍藻類、緑藻類等をいう。また、植物プランクトンを餌とする水生動物とは、主には動物プランクトンであり、フジツボ類、エビ、カニなどの甲殻類の幼生、ムラサキイガイ等の軟体動物の幼生、アカウニ等の棘皮動物の幼生、ゴカイなどの多毛類の幼生等をいい、特に限られるものではない。また、生息する場所も海洋、河川、湖沼等、特に限られるものではない。本実施形態では、フジツボ類の幼生について詳細に説明する。
本実施形態においてフジツボ類とは、タテジマフジツボ、アカフジツボ(Megabalanus rosa)、ケハダカイメンフジツボ(Acasta dofleini)、シロスフジツボ(Balanus albicostatus)、サラサフジツボ(Balanus reticulates)、オニフジツボ(Coronula diadema)等をいうものとする。また、フジツボ類のライフサイクルは、固着生活を送っている成体が受精し、受精卵は親の外套腔内でノープリウス幼生まで成長した後に孵化する。孵化したノープリウス幼生は5回の脱皮を繰り返し、6回目の脱皮の際に変態してキプリス幼生となる。キプリス幼生は摂餌を行わず、約2週間以内に好適な基盤を見つけると、第一触角からセメント物質を分泌して付着する。その後再び脱皮、変態して固着生活に入るものである。
以下、フジツボ類のノープリウス幼生がキプリス幼生に変態するまでの飼育方法について説明する。
本実施形態では、フジツボ類のノープリウス幼生の餌となる植物プランクトンとして、例えばキートセラスグラシリス(Chaetoceros gracilis)やキートセラスカルシトランス等の珪藻を用いるものとしているが、これに限られるものではなく飼育する水生動物の口よりも小さく当該水生動物が摂餌可能な植物プランクトンであればよい。尚、キートセラスは長方形の珪藻であり、4つの角に長い棘を持つ植物プランクトンである。大きさはキートセラスグラシリスで8μm、キートセラスカルシトランスで6μm程度である。
また、本実施形態では、植物プランクトン培養用培地として、本実施形態では市販の藻類培養液(例えば、第一製鋼株式会社製KW21)を用いることとしているがこれに限られるものではなく、植物プランクトンの培養が可能な培地であれば良い。尚、上記KW21の成分は、窒素(Nとして36g/L)、リン酸(Pとして4g/L)、ホウ素、マンガン、鉄、亜鉛、コバルト、EDTA、複合アミノ酸、複合ビタミン(B1、B12、ビオチン他)である。また、例えばF/2培地を用いることとしても良い。尚、F/2培地の組成は、NaNO3 7.5mg ,NaH2PO4・2H2O 0.6mg ,ビタミンB12 0.05μg ,ビオチン 0.05μg ,チアミン塩酸塩 10μg ,Na2SiO3・9H2O 1mg ,f/2metals 0.1ml ,海水99.9mlであり、f/2metalsの組成は、Na2EDTA・2H2O 440mg ,FeCl3・6H2O 316mg ,CoSO4・7H2O 1.2mg ,ZnSO4・7H2O 2.1mg ,MnCl2・4H2O 18mg ,CuSO4・5H2O 0.7mg ,Na2MoO4・2H2O 0.7mg ,蒸留水100mlである。
尚、本実施形態においては、餌となる植物プランクトンとして珪藻を用いているので、上記植物プランクトン培養用培地に加えてメタ珪酸ナトリウム等の珪素化合物も併せて投入することが必要となる。尚、餌として例えば鞭毛藻やハプト藻等の他の植物プランクトンを用いる場合には、珪素化合物は不要である。
また、本実施形態では、抗生物質を飼育水中に投入することにより、微生物等の増殖を抑制することとしている。
飼育方法において飼育者の手間となっていた換水をする目的は、排泄物や死骸による微生物等の増殖を抑制し、飼育しているフジツボ類が死滅するのを防ぐことにある。したがって、本実施形態では、飼育水中に抗生物質を投入し、飼育の阻害要因となる微生物等の増殖を抑制することで、フジツボ類のノープリウス幼生からキプリス幼生までの飼育において、一切の換水を行うことなく飼育を成功する確率を向上することとしている(80%程度)。尚、本発明の水生動物の飼育方法によれば抗生物質を必ずしも投入する必要はなく、抗生物質をまったく投入しないでフジツボ類の幼生の飼育を行った場合であっても、一定の確率(70%程度)でフジツボ類の幼生の飼育に成功している。
本実施形態では、抗生物質として、例えばストレプトマイシン、ペニシリンGを用いることとしているがこれに限られるものではない。例えば、テトラサイクリン等を用いても良い。また投入する抗生物質は一種類に限られるものではなく、数種類の抗生物質を飼育用容器に投入してもよい。また投入のタイミングも特に限られるものではなく、フジツボ類の幼生の飼育開始前に投入しても、飼育開始数時間後、翌日等に投入しても良い。
尚、エアレーションは、水中に酸素を供給する上で行った方が好ましい。本実施形態では、例えばチューブの途中に滅菌フィルターを装着し、先端にガラス管を装着したものを用いて連続でエアレーションを行っているが特に限られるものではなく、例えば、飼育容器をターンテーブルやバイオシェーカーにのせて回転させる等の撹拌により酸素供給を行うこととしても良い。
尚、照明については連続照明とし、2000〜4000lux程度が好ましい。これ以下の照度では、植物プランクトンの増殖が十分になされず、フジツボ類の幼生が死滅するおそれがある。また、例えば10000lux以上といった高い照度の場合でも、植物プランクトンの増殖が早すぎる、または高強度の光による生長阻害によりフジツボ類の幼生は死滅するおそれがあるものである。また、飼育水温は通常のフジツボ類は18℃〜28℃が好ましく、さらに好ましくは25℃程度であるが、これに限られるものではなく、例えば寒流系のフジツボ類を10℃〜15℃程度で飼育することも可能である。尚、本実施形態においては、飼育水は、紫外線や滅菌フィルターにより濾過した滅菌海水が好ましいが、これに限られるものではなく濾過海水または人工海水等で良い。また塩濃度は、27〜35%程度が好ましいがこれに限られるものではない。また飼育容器も、飼育水槽、ビーカー等、特に限られるものではない。
また、本発明の飼育方法を利用し、少なくとも孵化直後から成体とほぼ同等の形態に成長するまでの期間に渡り植物プランクトンを餌とする水生動物と植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地を一つの飼育キットとしてもよい。この場合、水生動物として、例えば甲殻類アルテミア・ナイオスやアルテミア・サリーナ(シーモンキー)等を用いることが可能であるが、これに限られるものではない。例えば当該飼育キットの購入者は、換水、給餌といった一切の飼育の手間を行うことなく、当該水生動物が孵化してから成体となるまでの成長程を観察することが可能である。更に、飼育キットに抗生物質及び小型の水槽を付属させるようにしても良い。また植物プランクトン培養用培地と抗生物質を適宜追加することにより、換水を行うことなく複数世代に渡って飼育することが可能であり、飼育者は複数世代に渡る成長過程を観察することが可能となる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。上述の実施形態においては、フジツボ類の幼生の飼育方法について説明したが、これに限られるものではなく、植物プランクトンを餌とする動物プランクトン、具体的にはフジツボ類、エビ、カニなどの甲殻類の幼生、ムラサキイガイ等の軟体動物の幼生、アカウニ等の棘皮動物の幼生等に適用しても同様に飼育が可能である。
(実施例1)
本発明の水生動物の飼育方法を用いて、タテジマフジツボの幼生の飼育を行った。まず、2L容ビーカーに洗浄したノープリウス幼生を3個体/ミリリットルの密度となるように投入し、抗生物質としてストレプトマイシンとペニシリンGをそれぞれ30マイクログラム/ミリリットル、20マイクログラム/ミリリットルとなるように海水に加えた。
さらに餌となる珪藻として40万cells/ミリリットルとなるように調整したキートセラスグラシリスと1.0ミリリットルの植物プランクトン培養用培地(第一製鋼株式会社製KW21)と珪素化合物としてメタケイ酸ナトリウム90ミリグラムを加えた。
照明は連続照明(2000〜4000lux)で、飼育水温は25℃とした。またエアレーションはチューブの途中に滅菌フィルターを装着し、先端にガラス管を装着したものを用いて連続で行った。
図1に抗生物質を用いず換水を毎日行って飼育を行った場合(図1中の毎日換水)と、抗生物質を加えずに無換水で飼育を行った場合(図1中の培地のみ)と抗生物質を加えて無換水で飼育を行った場合(図1中の抗生物質)の比較結果の一例を示す。本発明の水生動物の飼育方法によれば、抗生物質の使用の有無に関わらず、飼育5日目には半数以上がキプリス幼生へと変態することが確認できた。本実験により、一切の換水、給餌を行うことなく飼育を行った場合であっても、換水を毎日行った場合と同様に高い生存率、変態率による飼育が可能であることが確認できた。また同条件下において、アカフジツボ、ケハダカイメンフジツボ、シロスフジツボ、サラサフジツボ、オニフジツボのキプリス幼生が得られることが実験によりわかった。
以上の結果から、本発明の水生動物の飼育方法によれば、フジツボ類のノープリウス幼生からキプリス幼生に変態するまでの飼育において一切の換水、給餌を行うことなく飼育可能であることが確認できた。これにより、飼育者の手間をかけることなくフジツボ類の幼生の大量飼育が可能であることが確認できた。これは、植物プランクトンを餌とする他の水生動物においても同様である。本発明の飼育方法は植物プランクトンを餌とする動物プランクトン、例えばアルテミア、エビ、カニなどの甲殻類の幼生、ムラサキイガイ等の軟体動物の幼生、アカウニ等の棘皮動物の幼生等に適用することが可能である。
換水を毎日行って飼育を行った場合、抗生物質を加えずに無換水で飼育を行った場合及び抗生物質を加えて無換水で飼育を行った場合における、それぞれの飼育開始5日後におけるタテジマフジツボのノープリウス幼生の生存率とキプリス幼生への変態率の実験結果を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 水生動物の初期生活段階である孵化直後から植物プランクトンを摂餌する期間における飼育において、前記水生動物と前記植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地を同一の飼育水中に投入し、前記飼育水の換水及び給餌を行うことなく飼育することを特徴とする水生動物の飼育方法。
  2. 前記飼育水中に抗生物質を加えたことを特徴とする請求項1に記載の水生動物の飼育方法
  3. 前記水生動物は、フジツボ類でり、前記フジツボ類がノープリウス幼生からキプリス幼生に変態するまで飼育することを特徴とする請求項1または2に記載の水生動物の飼育方法。
  4. 前記植物プランクトンは、珪藻であり、前記飼育水に珪素化合物を添加することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1つに記載の水生動物の飼育方法。
  5. 少なくとも孵化直後から成体とほぼ同等の形態に成長するまでの期間に渡り植物プランクトンを餌とする水生動物と前記植物プランクトンと植物プランクトン培養用培地とを備え、前記水生動物と前記植物プランクトンと前記植物プランクトン培養用培地を同一の飼育水中に投入し、前記飼育水の換水及び給餌を行うことなく、前記水生動物を孵化直後から成体と同等の形態に成長するまで飼育するための水生動物の飼育キット。
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