(第1実施形態)
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る有機EL素子S1の概略断面構成を示す図である。透明なガラス等からなる基板10の上に、インジウム−錫の酸化物(以下、ITOという)等の透明導電膜からなる陽極20が形成されている。
陽極20の上には、結晶性を有する有機材料として銅フタロシアニン(以下、CuPcという)などのホール注入性材料からなる正孔注入層30が形成され、正孔注入層30の上には、3級アミン化合物など等のホール輸送性材料からなる正孔輸送層40が形成されている。
ここで、陽極20としてITO膜を用いた場合、そのITO膜の平均表面粗さRaが2nm以下であり、10点平均表面粗さRzが20nm以下であることが好ましい。これらの表面粗さRa、RzはJIS(日本工業規格)に定義されたものである。
陽極20の上に位置する結晶性の有機材料としての正孔注入層30を、結晶性が高く安定した膜に成膜するためには、陽極20の表面粗度が重要となる。当該ITO膜のRaを2nm以下、Rzを20nm以下とすることは、本発明者らの検討の結果によるものである。
そして、正孔輸送層40の上には、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料とをホスト材料とし、これにドーパントとして発光添加材料を混合してなる発光層50が形成されている。
この発光層50の上には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Alq3という)等の電子輸送性材料からなる電子輸送層60が形成されている。さらに、電子輸送層60の上には、LiF(フッ化リチウム)等からなる電子注入層70が形成され、その上には、Al等の金属等からなる陰極80が形成されている。
こうして、一対の電極20、80の間には、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60および電子注入層70が積層されて挟まれており、有機EL素子S1が形成されている。
この有機EL素子S1においては、陽極20と陰極80との間に電界を印加し、陽極20からホールが、一方、陰極80から電子がそれぞれ発光層50へ注入、輸送され、発光層50にて電子とホールとが再結合し、そのときのエネルギーによって発光層50が発光するものである。そして、その発光は例えば、基板10側から取り出され視認されるようになっている。
また、この有機EL素子S1は、基板10の上にスパッタ法や蒸着法等により各層20〜80を順次成膜することにより製造することができる。ここで、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60といった有機層は蒸着法により成膜される。
ここで、本実施形態の発光層50は、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなるが、ここに用いられるホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料は、100℃以上の耐熱性の確保を図る目的でガラス転移温度が100℃以上のものとしている。
また、輝度寿命の向上を図る目的で、発光層50におけるホール輸送性材料としての3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が複数存在するとともにこれら複数の酸化電位における第1酸化電位と第2酸化電位との電位差が0.22V以上の値を有するものとしている。なお、以下、この第1酸化電位と第2酸化電位との電位差を「酸化電位差」という。
このようなガラス転移温度および酸化電位差を有するホール輸送性材料としての3級アミン化合物は、分子内にトリフェニルアミンを4個有するものが採用される。
さらに、このようなガラス転移温度および酸化電位差を有する3級アミン化合物のうち、発光層50の成膜時の材料加熱によって熱的な分解を抑制するのに好ましい3級アミン化合物としては、分子内のトリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有さないものを採用する。
また、同じような3級アミン化合物としては、分子内のトリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有し、且つ分子量が1100未満であるものを採用する。
また、混合ホストを用いた発光層50の場合、単一ホストの発光層よりも輝度寿命は向上するものの、材料の組合せによっては発光効率が低くなる場合が生じるが、このような発光効率の低下を抑制するためには、3級アミン化合物としては、イオン化ポテンシャルが5.45eV以上のものであることが好ましい。
また、輝度寿命低下の抑制をより効果的に行うために、3級アミン化合物としては、サイクリックボルタンメトリー法により測定される酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状とが対称なものであることが好ましい。
さらに、本実施形態の発光層50では、輝度寿命の向上のために、電子輸送性材料は、ホール輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上のものであることが好ましい。
また、本実施形態においては、上記した発光層50におけるホール輸送性材料としての3級アミン化合物において、上記した酸化電位差の関係を満たさない場合であっても、次に述べるような独自の製法を採用することにより、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
そのような独自の製法とは、有機EL素子S1の製造方法のうち発光層50の製法に関わるものであり、まず、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物として、分子内にトリフェニルアミンを4個有するとともにガラス転移温度が100℃以上であるものを用いる。
また、電子輸送性材料として、ホール輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であって且つガラス転移温度が100℃以上であるものを用いる。
そして、発光層50を形成する際に、電子輸送性材料を薄膜とした場合において当該薄膜の蛍光スペクトルのピークがスペクトルの立ち上がりの値よりも20nm以上の位置にあるときに、当該立ち上がりの値から20nm未満の位置に当該薄膜の蛍光スペクトルのピークまたはショルダーが発現するように、電子輸送性材料の成膜条件を制御する。このような製法を採用すれば、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
具体的に、発光層50を形成する際に、電子輸送性材料の成膜条件を制御することは、電子輸送性材料の材料加熱温度を制御することにより行うことができる。
つまり、発光層50は、ホール輸送性材料、電子輸送性材料、発光添加材料の3元共蒸着で行われ、各材料にて材料加熱温度を設定して行うが、このとき電子輸送性材料の材料加熱温度を変化させる。
それによって、電子輸送性材料を薄膜とした場合において当該薄膜の蛍光スペクトルのピークがスペクトルの立ち上がりの値よりも20nm以上の位置にあるものであっても、当該材料加熱温度の変更によって当該立ち上がりの値から20nm未満の位置に当該薄膜の蛍光スペクトルのピークまたはショルダーが発現する。
また、この独自の製法において用いられる発光層50のホール輸送性材料である3級アミン化合物としては、下記構造式(1)で表されるものを採用することができる。
ここで、構造式(1)において、R1は下記構造式(2)で示される基である。
ここで、構造式(2)中、nは0を含む0以上の整数であり、L1は飽和鎖式炭化水素、飽和環状炭化水素、飽和多環状炭化水素、フルオレンのいずれかであり、L2およびL3は不飽和鎖式炭化水素もしくは不飽和環状炭化水素であり、
R2、R3、R4、R5はアルキル基もしくはアリール基もしくは水素である。
この構造式(1)に示される3級アミン化合物としては、具体的には、後述する化合物1、2(後述の図2参照)等が挙げられる。
さらに、この独自の製法においても、発光層50の3級アミン化合物としては、イオン化ポテンシャルが5.45eV以上のものを用いることが好ましい。また、同3級アミン化合物として、サイクリックボルタンメトリー法により測定される酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状とが対称なものを用いることが好ましい。
[検討例]
ここで、本実施形態における発光層50の構成等について、具体的な化合物を用いて検証した検討例を参照して、より詳細に述べる。なお、本実施形態は、これら検討例によって限定されるものではない。
[検討例に用いた発光層の構成材料]
図2〜図5に、検討例に用いた発光層50の構成材料としての化合物1〜10を挙げておく。ここで、化合物1、2、3(以上、図2参照)、化合物4、5、6(以上、図3参照)、および化合物7(図4参照)はホール輸送性材料であり、化合物8(図4参照)および化合物10(図5参照)は電子輸送性材料であり、化合物9(図5参照)は青色系の発色を行うスチリルアミン誘導体であり発光添加材料である。
このうち公知の化合物である化合物8、9、10以外の化合物1〜7について合成法を示しておく。
[化合物1](図2参照)
化合物1:9,9−ビス{4−[4’−(4−ジフェニルアミノフェニル)トリフェニルアミノ]}フルオレンの合成について。
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4’−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4’−ヨード−4−ビフェニル)アセトアニリド40.2g(収率64.8%)を得た。
続いて、N−(4’−ヨード−4−ビフェニル)アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N,N’−トリフェニルベンジジン10.5g(収率72.2%)を得た。
更に、N,N,N’−トリフェニルベンジジン8.66g(0.021モル)、9,9−ビス−(4−ヨードフェニル)フルオレン5.7g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、9,9−ビス{4−[4’−(4−ジフェニルアミノフェニル)トリフェニルアミノ]}フルオレン5.7g(収率;50.0%)を得た。
[化合物2](図2参照)
化合物2:N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビス(4−アミノフェニル)−メチレンの合成について。
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4’−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド40.2g(収率64.8%)を得た。
続いて、N−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N,N’−トリフェニルベンジジン10.5g(収率72.2%)を得た。
更に、N,N,N’−トリフェニルベンジジン8.66g(0.021モル)、(4,4’−ジヨード)メチレンビフェニル4.20g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビス(4−アミノフェニル)−メチレン4.95g(収率;50.0%)を得た。
[化合物3](図2参照)
化合物3:N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−(3,3’−ジメチル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン]の合成について。
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4’−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド40.2g(収率64.8%)を得た。
続いて、N−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N,N’−トリフェニルベンジジン10.5g(収率72.2%)を得た。
更に、N,N,N’−トリフェニルベンジジン8.66g(0.021モル)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヨードビフェニル4.34g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮した後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−(3,3’−ジメチル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン]4.31g(収率;43.0%)を得た。
[化合物4](図3参照)
化合物4:N,N’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル)}−N,N’−ジフェニルベンジジンの合成について。
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と1、4−ジヨードベンゼン59.4g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド30.3g(収率60%)を得た。
続いて、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド10.8g(0.032モル)、(1−ナフチル)フェニルアミン8.0g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。
水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.6g(収率70.0%)を得た。
さらに、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.11g(0.021モル)、4,4’−ジヨードビフェニル4.06g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル)}−N,N’−ジフェニルベンジジン4.2g(収率;45.0%)を得た。
[化合物5](図3参照)
化合物5:4,4’,4”−トリス[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミンの合成について。
200mlの反応容器に4,4’,4”−トリヨードトリフェニルアミン28.7g(0.046モル)とN−(1−ナフチル)−アニリン50.4g(0.23モル)と無水炭酸カリウム44.2g(0.32モル)、銅粉4.32g(0.068モル)とデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度220℃で24時間加熱した。
反応終了後、トルエンを200ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、この濾液より溶媒を留去し、残査を4回シリカゲルカラム精製(展開溶媒:n−ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、ヘキサン/トルエン混合溶媒、酢酸エチルより再結晶を繰り返し、真空乾燥した後、4,4’,4”−トリス[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン24.7g(収率60.0%)を得た。
昇華精製により、高純度な4,4’,4”−トリス[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミンを得た(昇華精製収率:70.0%)。
[化合物6](図3参照)
化合物6:N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジンの合成について。
(1−ナフチル)フェニルアミン4.6g(0.021モル)、4,4’−ジヨードビフェニル4.06g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン2.6g(収率;45.0%)を得た。
[化合物7](図4参照)
化合物7:N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニルベンジジンの合成について。
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4’−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド40.2g(収率64.8%)を得た。
続いてN−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N,N’−トリフェニルベンジジン10.5g(収率72.2%)を得た。
更に、N,N,N’−トリフェニルベンジジン8.66g(0.021モル)、4,4’−ジヨードビフェニル4.06g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニルベンジジン4.73g(収率;48.5%)を得た。
[検討例に用いた化合物の物性等]
以上のような化合物1〜10のうち発光添加材料である化合物9を除く、化合物1〜8、10の物性値について述べておく。
まず、ホール輸送性材料である化合物1〜7について述べる。ガラス転移温度(Tg)については、化合物1は162℃、化合物2は133℃、化合物3は139℃、化合物4は132℃、化合物5は112℃、化合物6は96℃、化合物7は144℃である。化合物6を除く化合物1〜5、7がガラス転移温度が100℃以上である。
化合物1〜7のイオン化ポテンシャル(Ip)については、化合物1は5.50eV、化合物2は5.50eV、化合物3は5.50eV、化合物4は5.30eV、化合物5は5.20eV、化合物6は5.47eV、化合物7は5.40eVである。化合物4、5、7を除く化合物1〜3、6がイオン化ポテンシャルが5.45eV以上である。なお、イオン化ポテンシャルの測定は、ここでは、理研計器製の光電子測定装置(AC−2)を用いた。
化合物1〜7の酸化電位については、一般に知られているサイクリックボルタンメトリー法、すなわち、発光層50のホール輸送性材料である3級アミン化合物を含む溶液に電位変化を与えるという方法により測定した。
その結果、酸化電位差(第1酸化電位と第2酸化電位との電位差)については、化合物1は0.18V、化合物2は0.2V、化合物3は0.23V、化合物4は0.51V、化合物5は0.23V、化合物6は0.25V、化合物7は0.19Vである。化合物1、2、7を除く化合物3〜6が酸化電位差が0.22V以上である。
また、3級アミン化合物である化合物1〜7のうち、サイクリックボルタンメトリー法により測定される酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状とが対称なものは、化合物4、5を除く化合物1〜3、6、7であった。
サイクリックボルタンメトリー法による酸化電位の測定の一例として、化合物3の測定結果を図6に示し、化合物4の測定結果を図7に示す。ここで、サイクリックボルタンメトリー法の測定条件は次に示すとおりである。
参照電極:飽和カロメル電極、作用電極:白金電極、対電極:白金電極、支持電解質:塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、測定試料:測定試料が1mmol/lで支持電解質が0.1mmol/lの塩化メチレン溶液、測定条件:室温でスイープ速度100mV/sec(三角波)。
図6、図7において、最も小さい第1酸化電位E1と2番目に小さい第2酸化電位E2との差が酸化電位差となる。また、図6に示す化合物3では、測定された酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状とが対称であるのに対し、図7に示す化合物4では、測定された酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状とが非対称である。
以上の3級アミン化合物である化合物1〜7のうち、ガラス転移温度が100℃以上であり且つサイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位差が0.22V以上の値を有するものは、化合物3、4、5である。そして、これら化合物3、4、5は、いずれも分子内にトリフェニルアミンを4個有するものである。
そして、これら化合物3、4、5のうち、分子内のトリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有さないものは化合物4、5であり、分子内のトリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有し且つ分子量が1100未満であるものは化合物3である。
次に、電子輸送性材料である化合物8、10について述べる。ガラス転移温度(Tg)については、化合物8は175℃、化合物10は164℃であり、両者ともガラス転移温度が100℃以上である。
化合物8、10のイオン化ポテンシャル(Ip)については、化合物8は5.85eV、化合物10は5.75eVである。イオン化ポテンシャルの測定は、ここでは、上記同様、理研計器製の光電子測定装置(AC−2)を用いた。
[輝度寿命および耐熱性等の検討結果]
次に、これら図2〜図5に示す化合物1〜10を用いて、有機EL素子S1を作製し、輝度寿命や高温保存性(耐熱性)、発光効率等について検証した。その結果は図8、図9の表に示してある。
具体的に、図8、図9では各例について、次のような項目を示してある。各例における発光層50を構成するホール輸送性材料、電子輸送性材料、発光添加材料、発光層50を蒸着成膜する際における電子輸送性材料の材料加熱温度、輝度寿命、高温保存、発光効率、酸化電位差(単位:V)、酸化還元曲線対称性、Tg(単位:℃)、Ip(単位:eV)。
ここで、輝度寿命は、各例にて作製された素子を85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行い、駆動時間が400時間後のときの輝度を初期輝度を1と規格化した規格化輝度で示している。
高温保存は、100℃以上の耐熱性を調べたもので、100℃での保存試験によりダークスポットが発生したものについては「×」、発生しなかったものについては「○」としている。発光効率は、初期の発光効率、すなわち上記初期輝度400cd/m2のときの値(単位:cd/A)である。
また、酸化電位差、酸化還元曲線対称性、Tg、Ipは、それぞれ各例のホール輸送性材料の酸化電位差、サイクリックボルタンメトリー法により測定される酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状との対称性、ガラス転移温度、イオン化ポテンシャルである。ここで、酸化還元曲線対称性について対称なものは「○」、非対称なものは「×」としている。
次に、図8、図9に示される個々の検討例について、具体的な実施態様を示しおく。
(検討例1−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物1(図2参照)を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物1と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物9(図5参照)とを、それぞれ60:20:3の重量比により20nm形成した。ここでは、電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度は260℃に設定した。
電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例1−2)
上記検討例1−1と同様の素子構造において、発光層50を成膜する際に電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度を280℃と高く設定し、素子を形成した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例2−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物2(図2参照)に替えたこと以外は上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例2−2)
上記検討例1−2の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物2(図2参照)に替えたこと以外は上記検討例1−2と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例3−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物3(図2参照)に替えたこと以外は上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例3−2)
上記検討例1−2の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物3(図2参照)に替えたこと以外は上記検討例1−2と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例4−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物4(図3参照)に替えたこと以外は上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例4−2)
上記検討例1−2の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を化合物4(図3参照)に替えたこと以外は上記検討例1−2と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例5−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を、スターバスト系トリフェニルアミン誘導体である化合物5(図3参照)に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして、素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例5−2)
上記検討例1−2の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を、スターバスト系トリフェニルアミン誘導体である化合物5(図3参照)に替えたこと以外は、上記検討例1−2と同様にして、素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例6−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を、トリフェニルアミン誘導体である化合物6(図3参照)に替えたこと以外は、上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、ダークスポットが発生した。
(検討例6−2)
上記検討例1−2の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を、トリフェニルアミン誘導体である化合物6(図3参照)に替えたこと以外は、上記検討例1−2と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、ダークスポットが発生した。
(検討例7−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を、トリフェニルアミン誘導体である化合物7(図4参照)に替えたこと以外は上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例7−2)
上記検討例1−2の素子構造および素子形成条件において、正孔輸送層40および発光層50に用いる3級アミン化合物を、トリフェニルアミン誘導体である化合物7(図4参照)に替えたこと以外は上記検討例1−2と同様にして素子を作製した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図8に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−1)
上記検討例1−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50に用いる電子輸送性材料を化合物10(図5参照)に替えたこと以外は上記検討例1−1と同様にして素子を作製した。ここでは、電子輸送性材料の材料加熱温度は350℃に設定した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図9に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−2)
上記検討例2−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50に用いる電子輸送性材料を化合物10(図5参照)に替えたこと以外は上記検討例2−1と同様にして素子を作製した。ここでは、電子輸送性材料の材料加熱温度は350℃に設定した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図9に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−3)
上記検討例3−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50に用いる電子輸送性材料を化合物10(図5参照)に替えたこと以外は上記検討例3−1と同様にして素子を作製した。ここでは、電子輸送性材料の材料加熱温度は350℃に設定した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図9に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−4)
上記検討例4−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50に用いる電子輸送性材料を化合物10(図5参照)に替えたこと以外は上記検討例4−1と同様にして素子を作製した。ここでは、電子輸送性材料の材料加熱温度は350℃に設定した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図9に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−5)
上記検討例5−1の素子構造および素子形成条件において、発光層50に用いる電子輸送性材料を化合物10(図5参照)に替えたこと以外は上記検討例5−1と同様にして素子を作製した。ここでは、電子輸送性材料の材料加熱温度は350℃に設定した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図9に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例8−6)
上記検討例8−3と同様の素子構造において、発光層50を成膜する際に電子輸送性材料である化合物10の材料加熱温度を380℃と高く設定し、素子を形成した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図9に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
次に、図8、図9に示される結果に基づいて、各検討例における特徴点等について述べる。
図8に示されるように、検討例3−1、4−1、5−1、8−4、8−5では、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料が、ガラス転移温度が100℃以上のものであり、且つホール輸送性材料としての3級アミン化合物の酸化電位差が0.22V以上の値である。それにより、これらの例では、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができている。
これは、発光層50中のホール輸送性材料および電子輸送性材料のガラス転移温度が100℃以上であること、および、このような0.22V以上の酸化電位差の関係とすることにより、ホール輸送性材料内にて第1酸化電位から第2酸化電位へのホールの移動を抑制し、ホールの電子輸送性材料への移動を抑制し、電子輸送性材料の劣化を抑制できることによると考えられる。
ちなみに、酸化電位差が0.22V未満であるホール輸送性材料を用いた検討例1−1、8−1等では、混合ホストとした発光層50としても、輝度寿命が低いものとなっている。
通常、混合ホストを用いた発光層によって、輝度寿命が向上するのは、発光層内でホール輸送と電子輸送の各輸送機能が分担できるためと考えられる。混合ホストを用いた発光層による輝度寿命向上の効果を調べてみた。
図8に示す検討例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1、7−1において、混合ホストとしないものを作製し、比較した。その結果を図10に示す。
図10では、検討例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1、7−1における輝度寿命と発光効率を「混合層有」の欄に示してある。また、これら各検討例について、「混合層なし」のものすなわち混合ホストとしない単一ホストの発光層とした素子も作製し、その輝度寿命と発光効率を調べた。
この「混合層なし」のものは、各検討例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1、7−1において、発光層を、電子輸送性材料である化合物8と発光添加材料である化合物9とを100:5の重量比により200nm形成した以外はすべて同じとしたものである。
図10からわかるように、いずれの場合も、発光層を混合ホストとすることにより輝度寿命が向上している。ここで、発光層を混合ホスト層すなわち3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる層とした有機EL素子において、輝度低下が抑制されるメカニズムは、次のように推定される。
発光層が単一ホスト材料の場合には下記式によって発光すると考えられる。
(化12)
H++H-+D →(H*+D)→ H+D* → H+D
ここで、Hはホスト材料分子である電荷(ホールまたは電子)輸送材料分子、Dはゲスト材料分子である発光添加材料分子、*は一重項励起状態を示す。
ホスト材料が単一のため、ホスト材料分子の各極性イオンH+、H-からゲスト材料分子Dに電荷移動し発光するか、もしくはホスト材料分子の励起状態H*からゲスト材料分子Dに電荷移動する結果、ゲスト分子が励起状態D*になり発光する。
一方、発光層が混合ホスト層の場合には下記式によって発光すると考えられる。
(化13)
Ha++Hb-+D → Ha+Hb+D* → Ha+Hb+D
ここで、Ha、Hbはホスト材料分子であって、Haはホール輸送性材料分子、Hbは電子輸送性材料分子である。また、Dはゲスト材料分子である発光添加材料分子、*は一重項励起状態を示す。
ホスト材料であるHaとHbはエネルギーバンドのずれが非常に大きいため、相互の電荷移動は発生しない。このためホスト材料は励起状態になることなく、ゲスト材料分子Dに電荷移動する結果、ゲスト分子が励起状態D*になり発光する。
このように、混合ホスト層では、ホスト分子Ha、Hbは励起状態にならないので、ホスト材料の劣化が起こりにくい。このことが、混合ホスト層としたことによる輝度寿命向上の一つの原因と推定される。
しかしながら、発光層を混合ホスト層とした場合でも、ホストにおいてホール輸送性材料と電子輸送性材料の組合せによっては、電子輸送性材料が励起されやすくなる場合がある。本実施形態では、このような組合せを極力排除し、電子輸送性材料の励起を抑え、輝度寿命の向上を図ることができる。
つまり、上述した例3−1、4−1、5−1、8−4、8−5のように、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物の酸化電位差が0.22V以上の値であれば、電子輸送性材料の劣化を抑制し、輝度寿命が向上できるのである。
また、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料が、ガラス転移温度が100℃以上であれば、高温保存が良好であり、100℃以上にさらされてもダークスポットが発生しない。実際に、ガラス転移温度が100℃未満である化合物6(図3参照)では、高温保存にてダークスポットが発生している。
このダークスポットの原因を調べた結果を図11に示しておく。図11は、上記化合物6を使用した検討例6−1の素子について、120℃で500時間保存した後の断面形状を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真に基づいて模式的に表した図である。
この観察結果から、ホール輸送性材料が存在する層(正孔輸送層40、発光層50)が部分的に空洞化していることが判明した。空洞化部分K1では、電流が流れないため非発光領域となり、ダークスポットとして認識されると考えられる。これは、環境温度が材料のガラス転移温度よりも高いため、体積変化を伴う結晶化が進行したためであると推定される。
また、上記図8、図9に示される検討例3−1、4−1、5−1、8−4、8−5にてホール輸送性材料として用いられている化合物3〜5は、いずれも分子内にトリフェニルアミンを4個有するものとされており、ガラス転移温度が100℃以上であること、および、上記酸化電位差の関係を有することを適切に実現できている。
このように分子内にトリフェニルアミンを4個有する3級アミン化合物は、ガラス転移温度が100℃以上であること、および、上記酸化電位差の関係を実現しやすいものであるとともに、材料の分子設計の幅が広く、多様な化合物を実現可能である。
また、ガラス転移温度が100℃以上である3級アミン化合物としては、化合物7(図4参照)のようにトリフェニルアミンを単純に多量体化したものが考えられる。化合物7は、ガラス転移温度は100℃以上であるものの、酸化電位差が0.19Vと小さい。そのため、検討例7−1に示すように輝度寿命が低い。
これは、トリフェニルアミンを単純に多量体化すると、共役(共鳴)が伸びる結果、第1酸化電位と第2酸化電位とが近接すると考えられるためである。それに比べて、化合物1〜5のように、立体障害を大きくしたり、共役を切断したりできるような構造を有する材料であれば、より高い酸化電位差が得られている。
ここで、共役を切断する手法の一つとして、化合物3(図2参照)のように、トリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を導入し、立体障害を設けることが挙げられる。しかしながら、この部分は熱的に弱く、特に分子量が大きい場合には、蒸着時の加熱により材料が熱分解してしまう。
したがって、例えば、化合物4、5(図3参照)のように、発光層50の3級アミン化合物としては、トリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有さないものが好ましい。当該オルト位に置換基を有さない3級アミン化合物であれば、一般に熱分解しにくく成膜時の温度管理が容易であるため、安定した成膜を実現しやすい。
しかし、本発明者らの検討によれば、トリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有する3級アミン化合物であっても、分子量が1100未満ならば、熱分解の影響を受けずに安定した成膜が可能であることを実験的に見出した。例えば、化合物3(図2参照)がそうである。
ちなみに、本発明者らは、トリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有する3級アミン化合物として、図12に示すような化合物11について調べた。この化合物11は分子量が1102である。
この化合物11の場合には、蒸着中に真空度が大きくふらつき、材料加熱温度もふらついた。これは、化合物11の材料分解に伴うガスの発生と材料の発熱によるものと推定される。このときの蒸着速度は0.1nm/secであり、通常の製造時の蒸着速度と比較しても低い数値である。
そのため、トリフェニルアミンのフェニル基におけるオルト位に置換基を有する3級アミン化合物の場合、少なくとも分子量が1100未満でなければ、成膜することはできないと考えられる。
また、検討例1−1、2−1、3−1等のように、発光層50の3級アミン化合物のイオン化ポテンシャルが5.45eV以上のものでは、発光効率が高く、検討例4−1や5−1等のように、発光層50の3級アミン化合物のイオン化ポテンシャルが5.45eV未満のものでは、発光効率が低い。
このように、混合ホストとした発光層50において3級アミン化合物のイオン化ポテンシャルと発光効率との間に相関があることがわかった。このことは、上記図10の表においても確認することができるとともに、混合ホスト特有の現象であることもわかる。
つまり、発光層50を混合ホストとすれば輝度寿命は向上するものの、3級アミン化合物のイオン化ポテンシャルが小さいと発光効率が低下してしまう。
これは、ホール輸送性材料である3級アミン化合物のイオン化ポテンシャルが小さいと、ホール輸送性材料からドーパント(ゲスト分子)である発光添加材料へのホールの移動がスムーズでなくなるためと考えられる。
したがって、混合ホストとした発光層50においては、3級アミン化合物としてイオン化ポテンシャルが5.45eV以上のものを用いることにより、従来よりも発光効率を確実に確保することができ、好ましい。
また、検討例3−1と検討例4−1、5−1とを比べると、前者の方が後者よりも輝度寿命が若干長い。この原因の一つとしては、前者の3級アミン化合物が酸化還元曲線対称性が良いのに対し、後者の3級アミン化合物は非対称であることが挙げられる。
上述したように、ホール輸送性材料は中性状態からホールを受け取ると酸化され、相手へホールを渡すと自身は還元されて中性状態に戻る。このようなホール輸送性材料において、酸化還元曲線対称性が良好なものであれば、ホール輸送性材料がホールを渡した後、ホール輸送性材料が元のホール輸送機能を復元しやすくなる。
ちなみに、酸化還元曲線対称性が非対称な場合には、ホール輸送性材料がホールを渡した後、ホール輸送機能が復元しにくいのでホール輸送能力が低下してしまう。すると、発光層50内のホール輸送性材料の抵抗が大きくなり発光分布がずれる。その結果、発光効率が低下し、輝度寿命が低下する。
このように、輝度寿命低下の抑制をより効果的に行うためには、発光層50の3級アミン化合物の酸化還元曲線の対称性が良好であることも、必要なこととなってくる。
また、電子輸送性材料のイオン化ポテンシャルについては、上述したように化合物8(図4参照)が5.85eV、化合物10(図5参照)が5.75eVである。
ここで、検討例3−1、4−1、8−4等では、電子輸送性材料とホール輸送性材料との間でイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上となっており、当該イオン化ポテンシャルの差が0.35eV未満のである検討例8−3に比べて輝度寿命が向上している。
本検討例について、ここまでホール輸送性材料の酸化電位差が0.22V以上の場合の効果について、主として述べてきたが、検討例1−2、2−2、7−2に示すように、当該酸化電位差が0.22V未満の場合でも、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保が両立されている。
これは、上記した本実施形態の独自の製法を採用したことによるものである。つまり、これら検討例1−2、2−2、7−2では、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物として、分子内にトリフェニルアミンを4個有するとともにガラス転移温度が100℃以上である化合物1、2、7を用いている。
また、組み合わされる電子輸送性材料として、ホール輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であって且つガラス転移温度が100℃以上である化合物8、10を用いている。
そして、これら検討例1−2、2−2、7−2では、同じ材料構成とした検討例1−1、2−1、7−1に比べて、電子輸送性材料の材料加熱温度を260℃から280℃へと高くしている。
このように電子輸送性材料の材料加熱温度を高くすることにより、次の図13に示すような現象が生じる。図13は、電子輸送性材料である化合物8(図4参照)をガラス基板上に薄膜(厚さ100nm程度)として形成したときの、材料加熱温度毎の蛍光スペクトルを示す図である。
材料加熱温度は260℃の場合と280℃の場合とを示している。図13に示すように、材料加熱温度が260℃の場合には、化合物8からなる薄膜の蛍光スペクトルのピークがスペクトルの立ち上がりの値よりも20nm以上の位置に発現している。
一方、材料加熱温度が280℃と高くした場合には、化合物8からなる薄膜の蛍光スペクトルのショルダーSHがスペクトルの立ち上がりの値から20nm未満の位置に発現している。
なお、この図13に示す傾向は、電子輸送性材料を発光層50の形態すなわち素子の形態とした場合にも、同様に見られることを確認している。また、図13のようにショルダーではなくピークが立ち上がりの値から20nm未満の位置に発現しても良い。
このように発光層50を形成する際に、材料加熱温度などの電子輸送性材料の成膜条件を制御し、電子輸送性材料を薄膜とした場合の蛍光スペクトルにおいて、蛍光スペクトルのピークまたはショルダーがスペクトルの立ち上がりの値から20nm未満の位置に発現するようにすれば良い。
それにより、本実施形態の独自の製法が実現され、検討例1−2、2−2、7−2に示されるように、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
このように、電子輸送性材料における蛍光スペクトルを変化させることは、次のような効果をもたらすと考えられる。
本検討例に用いた発光層50の電子輸送性材料は、化合物8、10(図4、図5参照)であるが、これらの電子輸送性材料は、多環芳香族基を含む構造を有する。多環芳香族基は平面的であり、固体状態ではこの平面部が分子間で相互作用を及ぼす結果、蛍光スペクトルが長波長側にシフトしやすい。
これは、電子輸送性材料分子内に電子が存在する状態において、高位の振動準位が寄与していることを示す。この振動準位の寄与によって、ホール輸送性材料との間の実効的なエネルギーギャップが小さくなり、発光層内にてホール輸送性材料から電子輸送性材料へホールが授受されやすくなる。
その結果、電子輸送性材料が励起状態となり輝度低下にいたると考えられる。そこで、電子輸送性材料における蛍光スペクトルを上記のように短波長側にシフトさせることにより、上記の高位の振動準位の寄与が抑制され、その結果、発光層内におけるホール輸送性材料から電子輸送性材料へのホールの授受が抑制されると考えられる。そして、輝度寿命の向上が図れると考えられる。
ちなみに、検討例8−6では、電子輸送性材料である化合物10(図5参照)を用いて、材料加熱温度を350℃から380℃へと高くし、当該化合物10からなる薄膜の蛍光スペクトルにおいて、蛍光スペクトルのピークまたはショルダーがスペクトルの立ち上がりの値から20nm未満の位置に発現するようにしている。
しかし、この検討例8−6では、ホール輸送性材料である化合物3と電子輸送性材料である化合物10とのイオン化ポテンシャルの差が0.25eVと小さい。つまり、上記独自の製法において電子輸送性材料の要件を満足していない。そのため、同じ材料の組合せである検討例8−3と比べて材料加熱温度を高くしても、輝度寿命はほとんど向上していない。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、主として上記第1実施形態と相違する点について述べる。
本実施形態の有機EL素子も上記図1に示される有機EL素子と同様の構成、すなわち、図1に示すように、一対の電極20、80の間に、正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60および電子注入層70が積層されて挟まれてなる有機EL素子とすることができる。
ここで、本実施形態では、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層50における3級アミン化合物として、本実施形態独自の分子構造を有するものを採用している。
すなわち、本実施形態の発光層50においては、電子輸送性材料は、ガラス転移温度が100℃以上のものであり、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、下記構造式(3)で表される化合物である。
ここで、構造式(3)において、R1は下記構造式(4)もしくは下記構造式(5)で示される基である。
これら構造式(4)、(5)中、l、m
1、m
2、n
1およびn
2は1以上の整数であり、xは1以上の整数であり、yは0または1以上の整数であり、L1およびL2はアセン化合物であり、R2、R3、R4、R5はアルキル基もしくはアリール基もしくは水素である。
なお、アセン化合物とは、例えば下記化学式17に示されるような分子骨格を有するものであり、ベンゼン環が直線状に結合しているものである。
この構造式(3)に示される3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により求められる酸化電位が複数存在するとともにこれら複数の酸化電位における第1酸化電位と第2酸化電位との電位差が0.22V以上の値を有し、且つガラス転移温度が100℃以上のものである。
この構造式(3)で示される3級アミン化合物は、本発明者らの実験検討の結果、見出されたものである。その検討結果の経緯は次の通りである。
上記第1実施形態では、具体的な3級アミン化合物として、構造式(1)で示される化合物(上記化学式10参照)を用いていた。この構造式(1)で示される3級アミン化合物は、両側にベンゼン環が結合されているR1は、飽和炭化水素である。
それに対して、本実施形態に用いられる構造式(3)で示される3級アミン化合物では、両側にベンゼン環が結合されているR1は、飽和炭化水素を含まないものである。
上述したが、上記化合物7(図4参照)のように、トリフェニルアミンを単純に多量体化すると、共役が伸びる結果、第1酸化電位と第2酸化電位とが近接すると考えられる。具体的に、化合物7では、構造式(1)や構造式(3)におけるR1が無い構造となっている。
このとき、化合物7における中央のベンゼン環2つの間で共鳴が起こりやすくなり、その結果、酸化電位差が小さくなると考えられている。
ここで、上記第1実施形態における構造式(1)の3級アミン化合物のように、中央のベンゼン環の間に飽和炭化水素を導入することにより、これら中央の2つのベンゼン環の間の共鳴が切断できる。その結果、飽和炭化水素が無い場合に比べて比較的高い酸化電位差が得られると考えられる。
そこで、本発明者らは、上記共鳴を切断するために中央のベンゼン環の間に導入する基として、飽和炭化水素の代わりに、ベンゼン環からなる化合物を導入しても同様の結果が得られると考えた。
そして、中央のベンゼン環の間にベンゼン環からなる化合物を導入した3級アミン化合物、すなわち構造式(3)に示される3級アミン化合物を合成し、実験検討した結果、上記構造式(1)に示されるものと同等かむしろ大きな酸化電位差が実現できることがわかった。これが、本実施形態において、構造式(3)で示される3級アミン化合物を採用するに至った経緯である。
ここで、構造式(3)に示される3級アミン化合物としては、より具体的には、次の構造式(6)で表される化合物を採用することができる。
この構造式(6)で示される化合物は、N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノビフェニル−4’−イル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−p−ターフェニルであり、以下、上記化合物1〜11からの連番として、化合物12ということとする。
この化合物12では、上記構造式(3)中のR1が1個のベンゼン環であり、分子中央部において3個のベンゼン環が直列に結合した形となっている。この化合物12の場合も含めて、構造式(3)では分子の中央部において3個以上のベンゼン環が直列に結合した形となる。
このように3個以上のベンゼン環が直列に結合した構造では、互いのベンゼン環の間のねじれが、2個の場合に比べてより大きくなり、その結果、上記した共鳴が起こりにくくなるとも考えられる。
このように、本実施形態では、上記構造式(3)で示される3級アミン化合物と、上記第1実施形態にて用いたようなガラス転移温度が100℃以上である電子輸送性材料(図4に示す化合物8、図5に示す化合物10等)を、発光層50の混合ホストとして用いている。
それによれば、発光層50中のホール輸送性材料および電子輸送性材料のガラス転移温度が100℃以上であるため、100℃以上の耐熱性を確保することができる。
また、本実施形態においても、3級アミン化合物における酸化電位差が0.22V以上の値を有するものにできるため、ホール輸送性材料内にて第1酸化電位から第2酸化電位へのホールの移動を抑制することができ、ホールの電子輸送性材料への移動を抑制することができ、電子輸送性材料の劣化を抑制できると考えられ、実際に、輝度寿命の向上が図れる。
このように、本実施形態によれば、一対の電極20、80間に、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層50を挟んでなる有機EL素子において、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
また、本実施形態における構造式(3)で示される3級アミン化合物は、酸化電位差が0.22V以上の値を有するため、上記第1実施形態において当該酸化電位差が0.22V未満である上記検討例1−2、2−2、7−2(上記図8参照)の場合のように、有機EL素子の製造において独自の製法を採用しなくてもよい。
つまり、本実施形態では、通常の有機EL素子における製法を採用することによって、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
つまり、「ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物として、分子内にトリフェニルアミンを4個有するとともにガラス転移温度が100℃以上であるものを用い、電子輸送性材料として、ホール輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上であって且つガラス転移温度が100℃以上であるものを用い、電子輸送性材料を薄膜とした場合において当該薄膜の蛍光スペクトルのピークがスペクトルの立ち上がりの値よりも20nm以上の位置にあるときに、当該立ち上がりの値から20nm未満の位置に薄膜の蛍光スペクトルのピークまたはショルダーが発現するように、発光層を形成する際に電子輸送性材料の成膜条件を制御する」という製法を採用しなくても、本発明の目的を達成できる。
また、本実施形態の発光層50において、上記構造式(3)に示される3級アミン化合物をホール輸送性材料とした混合ホストを用いた場合、単一ホストの発光層よりも輝度寿命が向上するとともに、発光効率が低くなることはない。これは、構造式(3)に示される3級アミン化合物のイオン化ポテンシャルが5.45eV以上であるためである。
また、本実施形態の構造式(3)に示される3級アミン化合物は、サイクリックボルタンメトリー法により測定される酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状とが対称なものである。
さらに、本実施形態の発光層50においても、上記第1実施形態と同様に、輝度寿命の向上のために、電子輸送性材料は、ホール輸送性材料とのイオン化ポテンシャルの差が0.35eV以上のものであることが好ましい。
[検討例]
ここで、本実施形態における発光層50の構成等について、具体的な化合物を用いて検証した検討例を参照して、より詳細に述べる。なお、本実施形態は、これら検討例によって限定されるものではない。
[検討例に用いた発光層の構成材料]
この検討例に用いた発光層50におけるホール輸送性材料は、上記構造式(3)に示されるもの、すなわち化合物12の3級アミン化合物である。また、発光層50における電子輸送性材料は、化合物8(図4参照)であり、発光添加材料は、青色系の発色を行うスチリルアミン誘導体である化合物9(図5参照)である。
ここで、化合物12の3級アミン化合物について合成法を示しておく。
[化合物12]
化合物12:N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノビフェニル−4’−イル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−p−ターフェニルの合成について。
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4’−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4’−ヨードジフェニル−4−イル)アセトアニリド37.2g(収率60%)を得た。
続いて、N−(4’−ヨードジフェニル−4−イル)アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去した後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、4−ジフェニルアミノ−4’−フェニルアミノビフェニル9.2g(収率70.0%)を得た。
更に、4−ジフェニルアミノ−4’−フェニルアミノビフェニル8.7g(0.021モル)、4,4’−ジヨード−p−ターフェニル4.8g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス(4−ジフェニルアミノビフェニル−4’−イル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−p−ターフェニル4.7g(収率;45.0%)を得た。
[検討例に用いた化合物の物性等]
以上のような化合物8、9、12のうち発光添加材料である化合物9を除く、化合物8、12の物性値について述べておく。
まず、ガラス転移温度(Tg)については、化合物12は151℃、化合物8は上記同様、175℃であり、発光層50のホストとなるこれら化合物8、12のガラス転移温度は100℃以上を満足している。
イオン化ポテンシャル(Ip)については、化合物12は5.46eVと5.45eV以上を満足しており、化合物8は上記同様、5.85eVである。イオン化ポテンシャルの測定は、上記同様、理研計器製の光電子測定装置(AC−2)を用いた。
化合物12の酸化電位については、上記同様、一般に知られているサイクリックボルタンメトリー法、すなわち、発光層50のホール輸送性材料である3級アミン化合物を含む溶液に電位変化を与えるという方法により測定した。その結果、化合物12の酸化電位差(第1酸化電位と第2酸化電位との電位差)は、0.22であり、酸化電位差0.22V以上を満足している。
また、3級アミン化合物である化合物12について、上記同様に、サイクリックボルタンメトリー法により酸化還元曲線を測定したところ、当該酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状とが対称であった。
[輝度寿命および耐熱性等の検討結果]
次に、これら化合物8、9、12を用いて、有機EL素子S1を作製し、輝度寿命や高温保存性(耐熱性)、発光効率等について検証した。その結果は、図14の表に示してある。
上記第1実施形態と同様に、具体的に、図14では各例について次のような項目を示してある。各例における発光層50を構成するホール輸送性材料、電子輸送性材料、発光添加材料、発光層50を蒸着成膜する際における電子輸送性材料の材料加熱温度、輝度寿命、高温保存、発光効率、酸化電位差(単位:V)、酸化還元曲線対称性、Tg(単位:℃)、Ip(単位:eV)。
ここで、上記第1実施形態と同様に、輝度寿命は、各例にて作製された素子を85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行い、駆動時間が400時間後のときの輝度を、初期輝度を1と規格化した規格化輝度で示している。
高温保存は、上記第1実施形態と同様、100℃以上の耐熱性を調べたもので、100℃での保存試験によりダークスポットが発生したものについては「×」、発生しなかったものについては「○」としている。発光効率は、初期の発光効率、すなわち上記初期輝度400cd/m2のときの値(単位:cd/A)である。
また、酸化電位差、酸化還元曲線対称性、Tg、Ipも、上記第1実施形態と同様、それぞれ各例のホール輸送性材料の酸化電位差、サイクリックボルタンメトリー法により測定される酸化還元曲線の酸化側の曲線の形状と還元側の曲線の形状との対称性、ガラス転移温度、イオン化ポテンシャルである。ここで、酸化還元曲線対称性について対称なものは「○」、非対称なものは「×」としている。
次に、図14に示される本実施形態の個々の検討例について、具体的な実施態様を示しおく。
(検討例9−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物12を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物12と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物9(図5参照)とを、それぞれ60:20:3の重量比により20nm形成した。ここでは、電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度は260℃に設定した。
電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図14に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例9−2)
上記検討例9−1と同様の素子構造において、発光層50を成膜する際に電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度を280℃と高く設定し、素子を形成した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図14に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
次に、図14に示される結果に基づいて、本実施形態の各検討例における特徴点等についてまとめておく。
図14に示されるように、検討例9−1、9−2では、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料が、ガラス転移温度がそれぞれ151℃、175℃であり、且つホール輸送性材料としての3級アミン化合物の酸化電位差が0.22Vとなっている。
つまり、これら検討例9−1、9−2では、ホール輸送性材料としての3級アミン化合物および電子輸送性材料のガラス転移温度が100℃以上であり、且つホール輸送性材料としての3級アミン化合物の酸化電位差が0.22V以上の値であることが満足されている。それにより、これらの例では、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができている。
本実施形態の検討例9−1、9−2における輝度寿命の向上については、上記第1実施形態において、酸化電位差が0.22V未満であるホール輸送性材料を用いた検討例1−1、8−1等との比較から明らかである。
これは、発光層50中のホール輸送性材料および電子輸送性材料のガラス転移温度が100℃以上であること、および、このような0.22V以上の酸化電位差の関係とすることにより、ホール輸送性材料内にて第1酸化電位から第2酸化電位へのホールの移動を抑制し、ホールの電子輸送性材料への移動を抑制し、電子輸送性材料の劣化を抑制できることによると考えられる。
また、検討例9−1、9−2では、混合ホストとした発光層50において、3級アミン化合物としてイオン化ポテンシャルが5.46eVであり、イオン化ポテンシャルが5.45eV以上のものが用いられている。それにより、従来よりも発光効率を確実に確保することができている。
このことについては、上記第1実施形態において発光層50の3級アミン化合物のイオン化ポテンシャルが5.45eV未満である検討例4−1や5−1等との比較から明らかである。
また、検討例9−1、9−2では、3級アミン化合物の酸化還元曲線対称性が良いため、長い輝度寿命を確保できている。このことについては、上記第1実施形態において3級アミン化合物の酸化還元曲線対称性が非対称である検討例4−1、5−1との比較から明らかである。
また、本実施形態の両検討例9−1、9−2を比べて、物性や特性は同等であり、これらの例では、化合物12を用いることにより、製造方法に関係なく、上記した効果が実現されている。
以上述べてきたように、本実施形態によれば、混合ホストからなる発光層50において、電子輸送性材料を、ガラス転移温度が100℃以上のものとし、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物を、構造式(3)で表される化合物とすることにより、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
(第3実施形態)
また、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層50について、陰極80側よりも陽極20側においてホール輸送性材料の混合比率が大きくなるように、混合比率が異なる複数の層が積層された構造としたところ、輝度寿命の向上が図れることが確認できた。
この場合に、複数の層に添加される発光添加材料(発光添加色素)を、当該複数の層毎に異なるものを選択することによって、白色のような混色発光も可能である。
さらに、このように発光層50において、添加される発光添加色素が異なるものからなるような複数の発光層が積層された構造である場合において、発光添加色素が青色発光であるような青色発光層が含まれる場合には、青色発光層を陰極側に配置し、青色発光よりも長波長発光を有する発光層を陽極側に配置することにより輝度寿命の向上が図れることも確認できた。
[検討例]
以下に、本実施形態における発光層50の構成等について、具体的な化合物を用いて検証した検討例を参照して、より詳細に述べる。なお、本実施形態は、これら検討例によって限定されるものではない。
この検討例に用いた発光層50におけるホール輸送性材料は、上記構造式(3)に示されるもの、すなわち化合物12の3級アミン化合物である。また、発光層50における電子輸送性材料は、化合物8(図4参照)であり、発光添加材料は、青色系の発色を行うスチリルアミン誘導体である化合物9(図5参照)および次の化学構造式22で表される化合物13すなわちルブレンである。
次に、これら化合物8、9、12、13を用いて、有機EL素子S1を作製し、輝度寿命や高温保存性(耐熱性)、発光効率等について検証した。その結果は、図15、図16の表に示してある。
具体的に、図15、図16では各例について次のような項目を示してある。各例における発光層50を構成するホール輸送性材料、電子輸送性材料、発光添加材料、発光層50を蒸着成膜する際における電子輸送性材料の材料加熱温度、輝度寿命、高温保存、発光効率。
さらに、図15、図16では、各例について、発光層50における陽極20側の部位の電子輸送性材料とホール輸送性材料との混合比率、陰極80側の部位の電子輸送性材料とホール輸送性材料との混合比率を示してある。
ここで、上記第1実施形態と同様に、輝度寿命は、各例にて作製された素子を85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行い、駆動時間が400時間後のときの輝度を、初期輝度を1と規格化した規格化輝度で示している。
高温保存は、上記第1実施形態と同様、100℃以上の耐熱性を調べたもので、100℃での保存試験によりダークスポットが発生したものについては「×」、発生しなかったものについては「○」としている。発光効率は、初期の発光効率、すなわち上記初期輝度400cd/m2のときの値(単位:cd/A)である。
次に、図15、図16に示される本実施形態の個々の検討例について、具体的な実施態様を示しおく。
(検討例10−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物12を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物12と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物9(図5参照)とを、それぞれ60:20:3の重量比により20nm形成した。ここでは、電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度は260℃に設定した。
電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図15に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例10−2)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物12を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物12と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物9(図5参照)とを、それぞれ60:30:3の重量比により10nm形成した後、60:15:3の重量比によりさらに10nm形成した。ここでは、電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度は260℃に設定した。
電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図15に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
さらに、この検討例10−2では、上記検討例10−1に比べて、発光層において、陰極80側よりも陽極20側においてホール輸送性材料の混合比率が大きくなるように、混合比率が異なる複数の層が積層された構造としており、それによって、輝度寿命の向上が図れている。
ちなみに、本願に述べられているような分子内にトリフェニルアミンを4個有するホール輸送性材料は、一般的にはキャリアー密度が高く、移動度も比較的早い。このため、正孔輸送層40から発光層50においてのホール移動度の変化は極めて大きく、この部分でホールは急減速される。その際、発光層内の電子輸送性材料にもホールが移動してしまうと考えられる。
このため、ホール輸送性材料の混合比率を段階的にし、急激なホール移動度の変化を抑制することによって、発光層内の電子輸送性材料にホールが移動する確率が低減し、輝度寿命が向上したと考えられる。
(検討例11−1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物12を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物12と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物13(上記化学式22参照)とを、それぞれ60:20:3の重量比により10nm形成した後、3級アミン化合物である化合物12と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物9(図5参照)とを、60:20:3の重量比によりさらに10nm形成した。ここでは、電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度は260℃に設定した。
電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。この有機EL素子は、青色発光と黄色発光の混色による白色発光を示した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図16に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
(検討例11−2)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。
陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物12を20nmを形成した。
その上に、発光層50として、3級アミン化合物である化合物12と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物13(上記化学式22参照)とを、それぞれ60:30:3の重量比により10nm形成した後、3級アミン化合物である化合物12と電子輸送性材料である化合物8(図4参照)と発光添加材料である化合物9(図5参照)とを、60:15:3の重量比によりさらに10nm形成した。ここでは、電子輸送性材料である化合物8の材料加熱温度は260℃に設定した。
電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。この有機EL素子は、青色発光と黄色発光の混色による白色発光を示した。
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m2、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図16に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
これら検討例11−1、11−2より、異なる発光色を有する発光層が積層された構造においても、同様に、本実施形態の効果が発現することを確認できた。