JP4923489B2 - 半導体レーザ装置 - Google Patents
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Description
この反射率制御膜として前端面には反射率が小さくなるように調整された誘電体膜が、また後端面には反射率が大きくなるように調整された誘電体膜がそれぞれ接合されている。この誘電体膜としては、酸化アルミニウム膜あるいは酸化アルミニウム膜を含む多層膜が用いられる。
酸化アルミニウムは半導体レーザの構成材料であるGaAsと線膨張係数がほぼ同じであるために、GaAsの表面に誘電体膜として密着させた場合に密着性がよく、また熱伝導率が高いなどの利点を有するので、GaAsで構成される共振器に密着する第1層の誘電体膜として使用される。
とくに光が出射される共振器の前端面に配設される反射率の小さな反射率制御膜として酸化アルミニウム単層膜が用いられる。この酸化アルミニウム単層膜は膜厚を所定の値に設定することにより所望の反射率が得られるとともに複数層を積層する多層膜構成に比較して製造工程が短くなるなどの利点を有する。
さらにこの上の第2層の誘電体膜は光学長がλ/4となる膜厚を有するシリコン膜が使用され、このシリコン膜の上に第3層誘電体膜、第4層誘電体膜として順次膜厚が光学長がλ/4となる膜厚を有する酸化アルミニウム膜、光学長がλ/4となる膜厚を有するシリコン膜が使用され、外部媒質例えば空気と接触する第5層誘電体膜として光学長がλ/4となる膜厚を有する酸化アルミニウム膜が形成される。
しかし酸化アルミニウム膜を高温・高湿度環境の下で放置した場合、酸化アルミニウム膜中に水分が浸入し、その結果反射率が成膜直後の値に比べて大きく変化する。同様に窒化アルミニウム膜においても水分が浸入しその結果反射率が成膜直後の値と比較すると大きく変化する。
このような高湿度の環境の下で半導体レーザを発振した場合、半導体レーザの前端面近傍で温度が上昇するに伴い酸化アルミニウム膜の反射率が変化し、これが半導体レーザの出力特性に悪影響を及ぼす。さらに酸化アルミニウム膜の反射率の変化や膜質の変化に伴って、半導体レーザの出射端面における瞬間光学損傷(Catastrophic Optical Damage : 以下、CODと略称する)劣化を発生させる場合がある。
COD劣化とは、レーザ光が半導体レーザの共振器端面に形成された膜に吸収されることで膜が発熱し、温度上昇する結果、膜の融解が起こり共振器端面の破壊に到ることである。
図1はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの断面図である。なお以下の図において図1と同じ符号は同一のものか相当のものを表す。
図1の半導体レーザ10の断面図は半導体レーザの導波路方向に並行する断面における断面図で、矢印は半導体レーザ10の出射光12である。
この半導体レーザ10は、一例としての発振波長が660nmの赤色半導体レーザである。
半導体レーザ10はn型のGaAs基板14とこのGaAs基板14の上に順次配設されたn型クラッド層16、活性層18、およびp型クラッド層20が配設され、n型クラッド層16、活性層18、およびp型クラッド層20によって共振器22が形成されている。またp型クラッド層20の表面上にはp電極32が、GaAs基板14の裏面上にはn電極34がそれぞれ配設されている。
主たるレーザ光を出射する側の共振器22の端面を含む劈開面をここでは半導体レーザ本体36の前端面24とし、半導体レーザ本体36を介して前端面24と対向する劈開面をここでは半導体レーザ本体36の後端面26とする。そして半導体レーザ本体36の前端面24の表面に密着して前部表面膜28が配設され、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して後部表面膜30が配設されている。
図2に示されるように、反射率が3%程度の低反射膜を得るために配設された前部表面膜28において、半導体レーザ本体36の前端面24に密着して形成された第1層膜は、反射率制御膜である第1の誘電体膜としての酸化アルミニウム膜38である。
酸化アルミニウム膜38は屈折率が1.65で、光学長がλ/4の膜厚を有し、その膜厚は100nmである。
この酸化アルミニウム膜38の上に密着して表面保護膜としての酸化シリコン(SiOx)膜40が配設されている。この酸化シリコン膜40は屈折率が1.45で膜厚は、例えばこの実施の形態の酸化シリコン膜40では、5nmである。
図3において、反射率が75%程度の高反射膜を得るために配設された後部表面膜30は、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して配設された反射率制御膜としての5層膜42とこの5層膜の上に密着して配設された表面保護膜としての酸化シリコン膜40とで構成されている。
5層膜42は、半導体レーザ本体36に密着する第1層の誘電体膜として、GaAsとの密着性の良い酸化アルミニウム膜38が配設される。酸化アルミニウム膜38は屈折率が1.65で、光学長がλ/4の膜厚を有し、その膜厚は100nmである。
5層膜42の第2層の誘電体膜としてシリコン膜44が配設され、このシリコン膜44は屈折率が3.0で、光学長がλ/4の膜厚を有し、その膜厚は55nmである。
5層膜42の第3層の誘電体膜は第1層の酸化アルミニウム膜38と、5層膜42の第4層の誘電体膜は第2層のシリコン膜44と、5層膜42の第5層の誘電体膜は第1層の酸化アルミニウム膜38と、それぞれ同じ構成である。
単層の酸化アルミニウム膜はその膜厚を制御することにより比較的自由にその反射率を変化せることができるので、反射制御膜として優れた特性を有しているが、高温・高湿環境下での耐湿性という点では必ずしも満足のいく材料ではない。このためにより耐湿性の優れた材料として酸化シリコン膜を表面保護膜として酸化アルミニウム膜の上に形成する。
因みに半導体レーザの前端面に酸化アルミニウム膜のみを形成した場合の反射率の波長依存性を示す曲線は図4の曲線と概ね重なり、発振波長が660nmの光に対して2.8%の反射率を有している。
従って5nm程度の酸化シリコン膜40を反射率制御膜、ここでは酸化アルミニウム膜38の上に付加したとしても反射率が0.1%しか変化していない。
この5層膜の第5層は酸化アルミニウム膜38となっているので、高温・高湿環境下での耐湿性という点では必ずしも満足のいく材料ではない。このためにより耐湿性の優れた材料として酸化シリコン膜40を表面保護膜として酸化アルミニウム膜38の上に形成する。図5に示されるように、5層膜42と酸化シリコン膜40とを形成した場合には、発振波長が660nmの光に対して77.0%の反射率を有する。
因みに半導体レーザの後端面に5層膜のみが配設された場合の反射率の波長依存性を示す曲線は図5の曲線と概ね重なり、発振波長が660nmの光に対して77.1%の反射率を有する。
従って5nm程度の酸化シリコン膜40を反射率制御膜、ここでは5層膜42の上に付加したとしても反射率が0.1%しか変化していない。
つぎに、酸化シリコン膜40の耐湿性能について説明する。
図6、図7、図8、及び図9に示された酸化シリコン膜の耐湿性能は、膜厚が100nmの酸化アルミニウム膜を成膜した後に所定の膜厚を有する酸化シリコン膜を成膜し、この酸化シリコン膜の成膜直後の反射率スペクトル(図において破線aで示す)を計測し、次いで温度120℃、湿度100%の環境下で100時間放置する耐湿性試験を行い、この耐湿性試験後の反射率スペクトル(図において実線bで示す)を測定し、その変化の程度を比較したものである。
この傾向は図7、図8、及び図9に示された、酸化シリコン膜の膜厚が10nm、20nm、及び50nmの場合のグラフにおいても同様である。
ただ、酸化シリコン膜の膜厚によって反射率スペクトルそのものが若干変化し、膜厚が20nm程度まではそれほど反射率スペクトルそのものの差異はないが、膜厚が50nm程度になると膜厚が20nm程度の酸化シリコン膜の場合に比べて反射率スペクトルそのものの相違が大きくなる。
しかしながら酸化シリコン膜を形成する際における膜形成の制御性の良さを考慮すると、膜厚が10nm近傍の酸化シリコン膜が望ましいと考えられる。
さらに、酸化シリコン膜40の熱伝導率はその下層に配設された酸化アルミニウム膜38の熱伝導率に比べて小さい。従って熱放散という視点で考えると酸化シリコン膜40は薄いほど望ましいと考えられるが、上に述べたように、膜形成の制御性の良さを考慮すると、膜厚が10nm近傍の酸化シリコン膜が望ましいと考えられる。
このように酸化アルミニウム膜38の上に密着して表面保護膜としての酸化シリコン(SiOx)膜40を形成することにより、半導体レーザ10を不活性気体や乾燥空気で密閉していない環境でレーザ発振を行ってレーザ光の出射端面近傍の温度が上昇しても反射率が変化しないため、半導体レーザの出力特性への悪影響が回避されるとともに反射率の変化や膜質の変化が起こらないためにCOD劣化を抑制することができる。
さらに公知文献に見られるように、反射率制御膜の最表層膜として酸化シリコン膜を使用した場合、所定の反射率を得るための必要な光学長を有する膜厚にせざるを得ないので、膜厚を適宜に薄くすることはできず、場合によっては表面膜総体として良好な熱放散特性が得られない場合が生じることもあった。しかしこの実施の形態におけるような前部表面膜28や後部表面膜30においては、反射率制御膜としての酸化アルミニウム膜38や5層膜42とは別に表面保護膜である膜厚の薄い酸化シリコン膜40を設けている。
すなわちこれは反射率制御膜の反射率に影響を与えないような表面保護膜を反射率制御膜の上に配設することである。よって表面保護膜が熱伝導率の小さな材質であったとしても、表面保護膜の膜厚を薄くすることにより反射率制御膜を含む表面膜総体として良好な熱放散特性が得られるという利点を備えている。
図10、図11、図12、及び図13に示された耐湿性能は酸化シリコン膜に替えて酸化タンタルを用いた場合の耐湿性能である。
この場合も、酸化タンタルの耐湿性能は、膜厚が100nmの酸化アルミニウム膜を成膜した後に所定の膜厚を有する酸化タンタル膜を成膜し、この酸化タンタル膜の成膜直後の反射率スペクトル(図において破線aで示す)を計測し、次いで温度120℃、湿度100%の環境下で100時間放置する耐湿性試験を行い、この耐湿性試験後の反射率スペクトル(図において実線bで示す)を測定し、その変化の程度を比較したものである。
従って、この実施の形態における前部表面膜28や後部表面膜30の酸化シリコン膜40を酸化タンタル膜に置き換えても酸化シリコン膜を有する場合と同様の効果を奏する。
図14に示されたグラフは、例えば660nmの半導体レーザ10の前部表面膜28と同様に反射率制御膜として第1層に酸化アルミニウム膜を用い、この酸化アルミニウム膜の屈折率を1.645とし膜厚を83nmとすることにより反射率は6%になる。この酸化アルミニウム膜の上に屈折率2.0の酸化タンタル膜を形成した場合の膜厚の変化に対する反射率の変化を示している。
図14から分かるように、膜厚が20nm以下では反射率が3〜6%とあまり変化しないのに対し、膜厚が20nmを越えると膜厚に対する反射率の変化率が大きくなっている。
この点についても酸化シリコン膜を表面保護膜とした場合と同様の傾向が認められ、酸化タンタル膜を表面保護膜と使用する場合は層厚が20nm以下である方が望ましい。
また、表面保護膜を構成する材料として、酸化シリコン(SiOx)と酸化タンタルについて説明したが、酸化シリコン(SiOx)と酸化タンタルに加えて、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化ハフニウムから選択された材料を用いて表面保護膜を構成しても同様の効果を奏する。
また上記説明において、反射率制御膜とこの上に配設された表面保護膜とを、半導体レーザ本体の前端面と後端面の両方に設けた例を説明したが、どちらか一方にのみ設けてもかまわない。
Claims (5)
- 主たる光の出射端面である前端面とこの前端面に対向する後端面とを有しこれら両端面の間が共振器とされた半導体レーザ本体と、
この半導体レーザ本体の前端面上に配設されるとともに、第1の熱伝導率を有する単層膜の第1の誘電体膜により構成された反射率制御膜と、
この反射率制御膜の上記第1の誘電体膜の上に配設されるとともに膜厚が20nm以下であって上記第1の熱伝導率と異なる第2の熱伝導率を有する表面保護膜と、を備えるとともに、表面保護膜が酸化タンタル、酸化ニオブから選択される材料により形成されたことを特徴とする半導体レーザ装置。 - 主たる光の出射端面である前端面とこの前端面に対向する後端面とを有しこれら両端面の間が共振器とされた半導体レーザ本体と、
この半導体レーザ本体の後端面上に配設されるとともに、第1の熱伝導率を有する第1の誘電体膜が上記後端面から最も遠い層に配設された多層膜により構成された反射率制御膜と、
この反射率制御膜の上記第1の誘電体膜の上に配設されるとともに膜厚が20nm以下であって上記第1の熱伝導率と異なる第2の熱伝導率を有する表面保護膜と、を備えるとともに、表面保護膜が酸化タンタル、酸化ニオブから選択される材料により形成されたことを特徴とする半導体レーザ装置。 - 主たる光の出射端面である前端面とこの前端面に対向する後端面とを有しこれら両端面の間が共振器とされた半導体レーザ本体と、
この半導体レーザ本体の前端面上に配設されるとともに、第1の熱伝導率を有する単層膜の第1の誘電体膜により構成された第1の反射率制御膜と、
この第1の反射率制御膜の上記第1の誘電体膜の上に配設されるとともに膜厚が20nm以下であって上記第1の熱伝導率と異なる第2の熱伝導率を有する第1の表面保護膜と、
上記半導体レーザ本体の後端面上に配設されるとともに、第3の熱伝導率を有する第3の誘電体膜が上記後端面から最も遠い層に配設された多層膜により構成された第2の反射率制御膜と、
この第2の反射率制御膜の上記第3の誘電体膜の上に配設されるとともに膜厚が20nm以下であって上記第3の熱伝導率と異なる第4の熱伝導率を有する第2の表面保護膜と、を備えるとともに、第1及び第2の表面保護膜が酸化タンタル、酸化ニオブから選択される材料により形成されたことを特徴とする半導体レーザ装置。 - 第1の誘電体膜または第1および第3の誘電体膜が、Alを含む誘電体もしくはシリコンの窒化物により形成されていることを特徴とした請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
- 第1の誘電体膜または第1および第3の誘電体膜が酸化アルミニウム膜であって、表面保護膜または第1および第2の表面保護膜の膜厚が10nm近傍であることを特徴とした請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
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