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JP4923591B2 - 表面処理物の製造方法 - Google Patents
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本発明は、被処理物に水溶性処理液を塗布し、被処理物と水溶性処理液成分との化学反応を利用して、被処理物表面に皮膜を生成させる表面処理物の製造方法において、所定の皮膜量を安定して得る技術に関するものである。
例えば、鉄鋼、半導体、ディスプレーなどの製品分野では厚さ数10〜数100nmの表層皮膜が製品特性の支配因子になっている場合がある。鉄鋼製品分野でこのような表層の極薄膜が関係する製品特性の一つにプレス成形性がある。自動車や家電製品に使用される鋼板には、近年、高耐食性の観点から亜鉛系のめっきが施される場合が多いが、亜鉛系めっき鋼板をプレス加工して難成形部品を製造する場合、加工の厳しい部位で鋼板のプレス割れが起こりやすいという問題がある。この亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性をプレス時に高粘度の潤滑油を使用することで改善する方法が知られているが、この方法では脱脂工程を強化しないと化成処理や塗装などの後工程でムラが発生するという問題がある。
このような後工程での懸念が少ない方法として、めっき層の表面にプレス成形時の摺動特性に優れる酸化物皮膜を形成させる方法が知られている。例えば、特許文献1〜3には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことにより、亜鉛酸化物を主体とする酸化膜を形成させて溶接性または加工性を向上させる技術が開示されている。特許文献4には、亜鉛系めっき鋼板の表面にリン酸ナトリウム5〜60g/Lを含みpH2〜6の水溶液にめっき鋼板を浸漬するか、電解処理を行うか、または、上記水溶液を塗布することにより、リン酸化物を主体とする酸化膜を形成して、プレス成形性及び化成処理性を向上させる技術が開示されている。特許文献5には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処理、または加熱処理により、Ni酸化物を生成させることにより、プレス成形性および化成処理性を向上させる技術が開示されている。
このような処理では、酸化物量が重要であり、めっき表面に所要の酸化物量を安定して生成させる必要がある。酸化物を生成させる手法として、鋼板と水溶性処理液成分との化学反応を利用して、鋼板表面に酸化物を生成させる処理がある。この処理においては、酸化物の生成量は、反応速度、反応時間によって決定される。
水溶性処理液の塗布方法として、処理液をロールコーターで一定量塗布したり、処理液を塗布後、ロールで絞ったり、ガスワイピングノズルから加圧気体を吹き付けてガスワイピングするなどによって、処理液を一定量にする塗布した後、鋼板と水溶性処理液との化学反応により、鋼板表面に酸化物を生成させる処理方式がある。この方式では、鋼板表面に酸化物を生成させた後、未反応の水溶性処理液を水洗除去して所要の酸化物を生成させる反応時間は、処理液が鋼板と接触している時間に支配される。反応速度は、処理液温度、処理液濃度等に支配される。通常のプロセスラインは、鋼板サイズに対応して鋼板走行速度が変わることが多く、これに起因して皮膜生成量が変動する。処理液温度、処理液濃度を調整することで皮膜生成量を制御することが可能であるが、これらの条件変更は応答性に劣るため、皮膜生成量の変動が大きくなるという問題がある。
鋼板上の皮膜厚をオンライン測定する方法は種々知られている。例えば、そのような方法の一つに蛍光X線分析法(以下XRF法と略記)がある。このXRF法はX線を皮膜が形成された鋼板に照射し、皮膜成分の元素から発生する蛍光X線強度を測定することで皮膜厚さを測定する方法である。この方法は、Zn、Ni、Crなどの重元素と呼ばれる原子番号の大きな元素には比較的簡単に適用できるが、軽元素と呼ばれる原子番号の小さな、特に水溶液の構成元素であるH、Oなどには、以下の理由で適用が困難である。
(1)軽元素の蛍光X線発生効率は、重元素に比べると桁違いに小さいため、前述の処理液量測定には適用できない。
(2)軽元素の蛍光X線は大気による吸収が大きく、高真空中での測定が必須であり、製造ラインにこのような高真空を保つことは困難である。
鋼板上の皮膜を測定する方法としては、光干渉法を用いた技術、超音波を用いた技術も提案されている。しかし、光干渉法による技術は、下地表面が凹凸を有する場合、綺麗な干渉が得られないため、また超音波法による技術は、超音波探触子を試料に接触する必要があるため、これらの技術は、走行中の鋼板表面で被処理物と水溶性処理液成分との化学反応を利用して被処理物表面に皮膜を生成させる処理における処理液量測定には適用できない。
また、処理液が水溶液または水溶液に分散物が分散した溶液の場合、フィルター式赤外吸収方式によって水分量を測定する技術がある。この手法は、近赤外領域での特定波長の光が水に吸収されることを利用した分析方法である。つまり、赤外光を被測定物に照射し、該被測定物から反射した光を、水に吸収される波長の光を通過するフィルターと水に吸収されない波長の光を通過するフィルターを通して、測定することによって水による光の吸収量を計測し水分量を分析する手法である。この手法は、応答性に優れ、容易な装置構成で実現できることから、多くの製造プロセスで使用されている(例えば特許文献6〜10参照)。但し、これらの先行技術は、製造プロセスにおける水分そのものを測定するもの、または、特許文献10が対象とする電磁鋼板絶縁皮膜のように、塗料を加熱乾燥して水溶液等を除去することで処理液中の加熱残分からなる皮膜を形成するプロセスを対象とするもので、走行中の鋼板表面と水溶性処理液成分との化学反応を利用して鋼板表面に皮膜を生成させる処理プロセスを対象とするものではない。
特開昭53−60332号公報 特開平2−190483号公報 特開2004−3004号公報 特開平4−88196号公報 特開平3−191093号公報 特開平3−115838号公報 特開2004−20192号公報 特開2003−156437号公報 特開平4−48967号公報 特開平3−177578号公報
このように、前述の先行技術には、本願が目的とする水溶性処理液を塗布し、鋼板と水溶性処理液との化学反応により、鋼板表面に皮膜を生成させる処理を対象とし、この処理プロセスにおける皮膜生成量の変動を低減させる技術は存在しない。
また、製品特性を鋼板板幅方向で均一とするためには、皮膜生成量は鋼板幅方向の変動が少ないことが好ましい。前述の先行技術には、鋼板幅方向での皮膜を均一に生成させることを考慮した技術はない。
本発明の課題は、前述の問題点を考慮し、被処理物に水溶性処理液を塗布し、被処理物と水溶性処理液との化学反応により、被処理物表面に皮膜を生成させる際に、安定して所要の皮膜量を生成でき、また被処理物が帯状体である場合、その幅方向の皮膜生成量を均一にできる表面処理物の製造方法を提供することである。
被処理物に水溶性処理液を塗布し、被処理物と水溶性処理液との化学反応により被処理物表面に皮膜を生成させる処理では、処理液濃度、処理液温度、処理時間などを制御することで皮膜生成量が制御されている。本発明者らは、被処理物と水溶性処理液との化学反応により被処理物表面に皮膜を生成させる処理を行ったところ、鋼板上の処理液量と生成する皮膜量の間によい対応関係があることを見出した。本発明はこの知見に基くものである。
上記課題を解決する本発明の手段は次のとおりである。
第1発明は、被処理物に水溶性処理液を塗布し、被処理物と水溶性処理液との化学反応により被処理物表面に皮膜を生成させる表面処理物の製造方法において、被処理物に予め処理液の成分濃度が既知の処理液を塗布し、該処理物上の処理液中の水分量を計測し、水分量の計測値によって被処理物に塗布する処理液量を制御することを特徴とする表面処理物の製造方法である。
第2発明は、第1発明において、連続的に走行する被処理物に塗布した水溶性処理液の塗布量、被処理物の走行速度および被処理物表面に生成する皮膜量との関係を求めて、この関係及び被処理物上の処理液中の水分量の計測値に基いて被処理物に塗布する処理液量を制御することを特徴とする表面処理物の製造方法である。
第3発明は、第1または第2発明において、処理液の塗布を絞りロールで行い、処理液量の制御を絞りロールの押付圧制御によって行うことを特徴とする表面処理物の製造方法である。
第4発明は、第1〜第3発明において、被処理物が帯状体であり、該帯状体の幅方向の複数点の処理液の水分量を各々計測し、水分量の計測値によって帯状体幅方向の塗布液量を制御することを特徴とする表面処理物の製造方法である。
第5発明は、第1〜第4発明において、フィルター型赤外吸収方式の装置によって処理液の水分量を計測することを特徴とする表面処理物の製造方法である。
第6発明は、第1〜第5発明において、被処理物が金属帯であることを特徴とする表面処理物の製造方法である。
第7発明は、第6発明において、金属帯が亜鉛めっき鋼板であり、その表面に生成させる皮膜が亜鉛系酸化物であることを特徴とする表面処理物の製造方法である。
第8発明は、第6発明において、金属帯が冷延鋼板であり、その表面に生成させる皮膜が鉄系酸化物であることを特徴とする表面処理物の製造方法である。
本発明によれば、被処理物表面の処理液の水分量をオンライン分析し、その結果に基き、塗布する処理液量を制御することで、皮膜生成量の変動を低減し、所要皮膜量を有する表面処理鋼板を安定製造できる。
前記したとおり、被処理物に水溶性処理液を塗布し、被処理物と水溶性処理液成分との化学反応を利用して被処理物表面に皮膜を生成させる処理では、処理液濃度、処理液温度、処理時間などを制御することで皮膜生成量が制御されていた。そのため、制御の応答性に劣る問題があった。
本発明者らは、被処理物と水溶性処理液成分との化学反応を利用して被処理物表面に皮膜を生成させる処理を行ったところ、鋼板上の処理液の塗布量と生成する皮膜量の間によい対応関係があることを見出した。塗布した処理液を加熱乾燥させて皮膜を形成する、いわゆる塗布型皮膜形成処理においては、処理液の塗布量と生成する皮膜量の間によい対応関係(比例関係)があることは知られていたが、被処理物と水溶性処理液成分との化学反応を利用して被処理物表面に皮膜を生成させる処理において、前述のような関係のあることは本発明者らが初めて見出した事項である。本発明はこの知見に基くものである。
以下、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に、絞りロールでめっき皮膜と水溶性処理液との化学反応により、亜鉛系酸化物を生成させる表面改質用の水溶性処理液である酢酸ナトリウム20g/リットルを添加したpH:2.0、液温:50℃の硫酸酸性水溶液を塗布し、めっき表面にめっき皮膜と水溶性処理液との化学反応により亜鉛系酸化物からなる皮膜を形成する反応を生じている際中に、鋼板表面の処理液量を測定した実験結果を例に挙げて、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図1は、処理液量測定実験を説明する模式図である。図1(a)に示すように、処理液4が保持された処理液槽7に合金化溶融亜鉛めっき鋼板6を浸漬する。次いで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板6を取り出し、ただちに図1(b)に示すように、絞りロール5を通過させ、通板直後の合金化溶融亜鉛めっき鋼板6表面の処理液量を水分計1によって計測した。水分計は、フィルター型赤外吸収方式の水分計測装置を使用した(以下、この水分計測装置を、「赤外水分計」、または単に「水分計」と記載する。)。絞りロール5のロールギャップAを3段階(広、中、狭)に変化させることで塗布する処理液量を3水準(厚、中、薄)変化させた。
ここで、赤外水分計を用いて処理液の水分値を計測する際に、処理液量の変動以外に起因した水分計測値の変動(例えば、鋼板のバタツキに起因する強度変動など)の影響を抑制するため、例えば本実施の形態では、以下の方法を用いた。赤外水分計では、まず、反射強度の波長依存性を校正するため、基準板を用いて水の吸収波長(図9中のピーク1、ピーク2,ピーク3にて示された3つのピーク波長のいずれか)とバックグラウンド波長(図9中のBG1、BG2、BG3、BG4にて示される)での反射強度を事前に測定しておく。その上で、水の吸収波長における鋼板の基準板に対する反射強度の比(以下、反射強度比と呼ぶ)Sとバックグラウンド波長における反射強度比Rとを求め、それらの値より、次の(1)式により吸光度α、
α=-log(S/R) …(1)
を算出し、これを水分量の計測値とした。赤外吸収の理論から、吸光度αは処理液の厚さに比例することがわかっている。尚、ピーク波長の両側にバックグラウンド波長を2箇所設定した場合(例えば、ピーク2を測定する場合のバックグラウンドにはBG2とBG3を選ぶ)には、両バックグラウンド波長での反射強度比から補間によってピーク波長位置の反射強度比を求めて、これをRとした。
ロールギャップと赤外水分計による計測値の関係を図2に示す。図2より明らかなように、赤外水分計の計測値は、ロールギャップ設定値の3段階に対応して変化していることがわかる。ロールギャップを狭くすれば、鋼板上に存在する処理液は絞りロールによってより絞られるために、鋼板表面の処理液量が減少し、逆にロールギャップを広くすると処理液量は増加する。従って、赤外水分計の計測値は、絞りロール通過後に鋼板の表面に存在する処理液量に応じて変化していることがわかる。
さらに、赤外水分計による測定結果と、実水分量の関係を調べた。具体的には、精密電子天秤に板厚0.8mm×40mmφの合金化溶融亜鉛めっき鋼板試料を設置し、該鋼板上の全面に所定量の処理溶液をピペットで塗布し、該試料全面の水分量を赤外水分計で測定した。塗布した処理溶液の膜厚(即ち、塗布量)は、電子天秤で得られた重量から換算した。処理溶液の膜厚と水分計の計測値(即ち、水分量)の関係を図3に示す。処理液の膜厚が0〜40μmの間で両者に良い対応関係があり、処理溶液の膜厚を赤外水分計で精度良く測定できることがわかる。
そこで、図1の実験装置を用いて、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に同一通板速度でロールギャップを変えて前述の表面改質用処理液を塗布し、めっき表面にめっき皮膜と水溶性処理液との化学反応により、亜鉛系酸化物を生成させた後、水洗乾燥を行う実験を行い、絞りロール直後の鋼板表面の処理液の水分量と水洗乾燥後の酸化物の膜厚を調査した。水分量は赤外水分計で測定し、酸化膜厚はXRF法で測定した。調査結果を図4に示す。図4より処理液の水分量と酸化膜厚の間によい対応関係があることがわかる。
酸化物生成量は、反応時間によっても変わる。そこで、図1の実験装置で、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に、通板速度及びロールギャップを変えて前述の表面改質用処理液を塗布した後水洗乾燥を行う実験を行い、絞りロール直後の鋼板表面の処理液の水分量、反応時間、及び水洗乾燥後における酸化物膜厚を調査した。反応時間は、絞りロール通過後水洗までの時間である。図5は、この調査で得られた絞りロール出側における処理液の水分量、反応時間及び生成した酸化膜厚の関係を示す。
以上の結果から、めっき表面に生成する酸化膜厚は、塗布された処理液の水分量(水分計による水分計測値)及び反応時間との間によい対応関係があること、また塗布された処理液の水分量は絞りロールのロールギャップとよい対応関係があることがわかる。この関係を用いて、ロールギャップを設定し、また塗布された処理液の水分量を計測し、計測結果に基いてロールギャップを調整することで、鋼板表面に所要の膜厚の酸化物を安定生成させることができる。
反応時間は、鋼板通板速度に対応して決まる。図5から、生成させる酸化膜厚の基準値(Ms)、及び鋼板通板速度Lsに対応する反応時間tsに基いて、塗布する処理液の水分量の設定値Wsを決定し、また、図2から前記水分量の設定値Wsに対応する絞りロールのロールギャップGsを決定する。ロールギャップの調整は絞りロールの圧下力を調整して行う。また、図2から、ロールギャップを変えたときのロールギャップの変化量ΔGに対する塗布される処理液の水分量変化(水分計での水分計測値の変化量)ΔWの関係を求めておく。ΔWは図2の特性曲線の勾配から求められる。
鋼板通板速度をLs、ロールギャップをGsに設定して処理液を塗布し、塗布した処理液の水分量Wmを水分計で計測する。計測水分量Wmと設定水分量Wsに差がある場合、その差を解消するようにロールギャップを調整する。例えば、計測水分量Wmと設定水分量Wsの差がΔWmである場合、ロールギャップ調整量ΔGmを、ΔGm=(Wm−Ws)×ΔG/ΔWに基き演算して求め、前記で求めたΔGに基き、ロールギャップをGsからGs+ΔGmへ調整する。ロールギャップの調整は応答性に優れるので、処理液の塗布量を所要の塗布量に迅速に調整でき、それによって、所要膜厚の酸化物を安定製造できる。
ここで、水分計の設定値Wsは、酸化膜厚の目標値Moに対応する水分計の指示値Woを採用することで生成する酸化膜厚の変動を小さくすることができる。
また、酸化膜厚に目標範囲Mmin〜Mmaxを設け、水分計の設定値Wsとして下限値Mmin、上限値Mmaxの各々に対応する水分計の指示値Wmin、Wmaxを採用し、水分計の計測値がWminを下回った場合、水分計の計測値がWmin以上になるようにロールギャップを調整し、水分計の計測値がWmaxを上回った場合、水分計の計測値がWmax以下になるようにロールギャップを調整することもできる。
特許文献10は、いわゆる塗布型皮膜形成処理を対象とするもので、形成される皮膜厚は塗布される塗料中の水分量に比例する。塗布された塗料の水分量をx、形成される皮膜厚をyとすると、両者は概ね、y=axで関係づけられる。塗料は原板の電磁鋼帯と反応することがなく、また通板速度が変化しても形成される皮膜厚は同じである。これに対して、本発明は、図4に示されるように、処理液の水分量と生成する皮膜量は比例関係がなく、また皮膜生成量は、反応時間、すなわち通板速度の影響を受ける。したがって、本願発明における製膜メカニズムと特許文献10の製膜メカニズムは本質的に異なる。したがって、特許文献10等に、塗料中の水分量を計測し、その結果に基づいて、塗料の塗布量を制御することが記載されていたとしても、処理液の塗布量、反応時間(通板速度)によって皮膜生成量が異なる本発明の表面処理鋼板の製造方法において、安定して所要の皮膜量を生成させる観点から、塗布された処理液中の水分量を計測し、水分量の計測値によって鋼板に塗布する処理液量を制御することは想到されない。
皮膜生成量は鋼板幅方向で均一であることが好ましい。鋼板幅方向の処理液の水分量分布を均一にすることで、鋼板幅方向の皮膜生成量の分布を均一にできる。赤外水分計を鋼板幅方向に走査させて鋼板幅方向の複数位置の処理液水分量を計測することで、鋼板幅方向の水分の分布状況を知ることができる。例えば、幅方向両端部近傍部分及び幅方向中央の3点の処理液水分量を計測することで、鋼板幅方向の水分の分布状況を知ることができる。赤外水分計を鋼板幅方向に走査させるには、例えば、トラバースユニット(板幅方向走査ユニットの俗称)を用いることができる。処理液を塗布した直後もしくは後工程の内、処理液が水分を有している何れか適当な箇所に、このトラバースユニットを設け、さらにその上に当該赤外水分計を設置する。そして、トラバースユニットにより赤外水分計を板幅方向に走査させて、板幅方向の上記複数箇所で処理液水分量を計測すればよい。
また、絞りロールの圧下力を幅方向両側で独立に調整可能とし、絞りロール両側の圧下力の差と、それに対応する幅方向両端部近傍部分の水分量の差との関係を求めておくことにより、測定した幅方向両端部近傍部分の水分量の差に基いて、その差を解消するように絞りロールの圧下力を調整することで、鋼板幅方向の皮膜生成量の分布を均一にできる。
本発明が対象とする処理液は前述の処理液に限定されない。成分組成が既知である処理液について、塗布された処理液の水分量(すなわち水分計による計測値)、反応時間及び酸化物生成量の関係を調査して求め、この関係を用いることで、前記と同様にして処理液を塗布することで、鋼板表面に所要の膜厚の皮膜を安定生成させることができる。
本発明は、例えば、化成処理(具体的には、リン酸処理、クロメート処理もしくはクロメートフリー処理を示す)による生成皮膜を処理物とする製造方法としても用いることができる。
本発明は、あるいは他の例として、冷延鋼板の表面に成分組成が既知の水溶性処理液を塗布した後、酸化雰囲気中で加熱処理することによって当該鋼板表面に鉄系酸化皮膜を形成させる場合にも用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。図8は本実施例に使用した処理ラインの要部を示す概略図である。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板6は、酢酸ナトリウム20g/リットルを添加したpH:2.0、液温:50℃の硫酸酸性水溶液(以下、処理溶液と記す)4が保持された処理溶液槽7に保持された処理溶液4内に侵入し、出口に配置された絞りロール5を通過させることで、亜鉛めっき鋼板6表面に所定量の処理溶液が塗布される。さらに、鋼板6は、所定距離走行後、洗浄溶液8が保たれた洗浄槽9、乾燥装置10に順次通板される。絞りロール5から洗浄槽9の間で、亜鉛めっき鋼板6表面は、付着している処理溶液4との化学反応によって酸化物層が生成されて表面改質される。洗浄槽9で洗浄されることで、処理液との反応は終了し、乾燥装置10で乾燥して所要の表面改質皮膜が形成される。ロールギャップ制御装置3によって、絞りロール5は、操作側、駆動側のロールギャップを独立に制御することが可能である。
演算装置2には、赤外水分計1で計測する水分量の計測値、鋼板走行速度と水洗槽9、乾燥装置10で水洗乾燥後の皮膜生成量の関係、絞りロール5の圧下力と処理液の水分量の関係、及び絞りロール5の両側の圧下力差に対応する幅方向処理液量分布の不均一の程度(幅方向両端部近傍部分の水分量の差)の関係が、各々入力されている。
赤外水分計1は板幅方向トラバース装置(図示せず)によって板幅方向に走査させながら合金化溶融亜鉛めっき鋼板6上の水分量を計測できるようにした。演算装置2は、鋼板6の長手方向とともに板幅方向での水分量の計測結果とその平均値と、予め設定している水分量との較差からロールギャップの設定値を演算できるようにした。
本発明法では、前記処理において、赤外水分計1によって反応中の処理液の水分量を計測する。計測された処理液の水分量が予め設定された設定値と異なる場合、演算装置2は、絞りロールで塗布する処理液の水分量を設定値に近づけるように、ロールギャップ制御装置3に指令を出す。ロールギャップ制御装置3は、該指令によって絞りロール5のロールギャップを制御する。
本発明法で製造したコイルから鋼板の長手方向および板幅方向で試料を採取し、酸化膜厚を評価した。全5コイルの長手方向3点、板幅方向3点の計45点の試料を採取し、その表裏面について調査した。従来法では、絞りロールのロールギャップは、予め押し付け圧を変化させて製造した製品の酸化膜厚を求めておき、所定の酸化膜厚が得られた押し付け圧となるように調整し、製造したコイルについて本発明法と同様の調査を行った。その結果、従来法では、目標範囲を外れるものが13.3%発生したが、本発明法では目標範囲を外れるものは発生しなかった。
組成が、C:0.15mass%、Si:1.5mass%、Mn:2.5mass%、P:0.01mass%、S:0.003mass%、Al:0.03mass%、ならびに残部がFeおよび不可避的不純物である鋼を冷延鋼板に仕上げ、これを酸化物を生成させる下地金属帯とした。この冷延鋼板を80℃の5mass%NaOH溶液中で電流密度5A/dmで5秒間電解脱脂した後、硫酸(50g/リットル)を含有する水溶液、もしくは硫酸アンモニウム(30g/リットル)を含有する水溶液を、バーコーターを用いてそれぞれの水溶液毎に別の鋼板に塗布した。塗布した直後、先の実施の形態と同じ赤外水分計で、それぞれの冷延鋼板に塗布された処理液の水分値を計測し、その後、120℃で20秒かけて乾燥機で乾燥させた。さらに、乾燥させた冷延鋼板を加熱炉で加熱処理し、冷延鋼板表面に鉄系酸化膜を形成させた。この加熱処理における条件は、0.1vol%の酸素(残り窒素)雰囲気にて毎秒10℃の速度で加熱し、処理液毎に定めた最高到達温度で1秒間保持し、その後、窒素ガスにて急冷、とした。処理液が硫酸の場合、冷延鋼板の最高到達温度は550℃、硫酸アンモニウムの場合、最高到達温度は600℃とした。加熱処理後の冷延鋼板表面の酸化物量は、グロー放電発光分析法(以降GDSと略す)の酸素プロファイルの積分強度から、燃焼分析で含有酸素量を測定済の検量線用標準試料をリファレンスとして酸素付着量(単位面積当たりの酸素含有量)の形で求めた。
図6に、赤外水分計の水分値計測値と重量測定で求めた処理液の塗布量の関係を示す。先の実施の形態の図3のように、赤外水分計による水分値と処理液の塗布量との間に、良い比例関係があることが明らかになった。よって、酸性処理液の塗布量を赤外水分計で精度良く測定できることがわかる。
図7には、塗布直後の赤外水分計の計測値と酸化処理後の酸化物量の関係を示す。硫酸水溶液と硫酸アンモニウム水溶液の双方とも、処理液の水分値と酸化物量との間に良い対応関係があることがわかる。
このように、処理液が成分組成が既知の水溶液で、被処理物の金属帯が冷延鋼板の場合でも、本発明を用いることが可能であり、冷延鋼板表面に所要の量の鉄系酸化皮膜を安定生成させることができる。
本発明は、連続走行する被処理物に水溶性処理液を塗布し、被処理物と水溶性処理液との化学反応により、被処理物表面に皮膜を生成させる表面処理物の製造方法として利用することができる。
処理液量測定実験を説明する模式図である。 ロールギャップと赤外水分計の水分計測値の関係を示す図である。 処理溶液の膜厚と水分計の水分計測値の関係を示す図である。 水分計で計測された水分量と酸化膜厚の関係を示す図である。 絞りロール出側の処理液の水分量、反応時間及び生成した酸化膜厚の関係を示す図である。 本発明に係る他の実施の形態における、水分計の水分計測値と重量測定で求めた処理液の塗布量の関係を示す図である。 本発明に係る他の実施の形態における、水分計の水分計測値と酸化処理後の酸化物量の関係を示す図である。 本実施例に使用した処理ラインの要部を示す概略図である。 水の吸収スペクトルならびにピーク波長とバックグラウンド波長を示す図である。
符号の説明
1 赤外水分計
2 演算装置
3 ロールギャップ制御装置
4 処理液
5 絞りロール
6 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
7 処理液槽
8 洗浄溶液(洗浄水)
9 洗浄槽
10 乾燥装置

Claims (8)

  1. 被処理物に水溶性処理液を塗布し、被処理物と水溶性処理液との化学反応により被処理物表面に皮膜を生成させる表面処理物の製造方法において、被処理物に塗布した処理液の塗布量と被処理物表面に生成する皮膜量の間に比例関係が無い場合に、被処理物に予め処理液の成分濃度が既知の処理液を塗布し、該被処理物上の処理液中の水分量を計測し、該水分量の計測値と被処理物表面に生成する皮膜量の関係を求めておき、この関係及び被処理物に塗布された処理液の水分量の測定値によって被処理物に塗布する処理液量を制御することを特徴とする表面処理物の製造方法。
  2. 連続的に走行する被処理物に塗布した水溶性処理液の塗布量、被処理物の走行速度および被処理物表面に生成する皮膜量との関係を求めて、この関係及び被処理物上の処理液中の水分量の計測値に基いて被処理物に塗布する処理液量を制御することを特徴とする請求項1に記載の表面処理物の製造方法。
  3. 処理液の塗布を絞りロールで行い、処理液量の制御を絞りロールの押付圧制御によって行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理物の製造方法。
  4. 被処理物が帯状体であり、該帯状体の幅方向の複数点の処理液の水分量を各々計測し、水分量の計測値によって帯状体幅方向の塗布液量を制御することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかの項に記載の表面処理物の製造方法。
  5. フィルター型赤外吸収方式の装置によって処理液の水分量を計測することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかの項に記載の表面処理物の製造方法。
  6. 被処理物が金属帯であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかの項に記載の表面処理物の製造方法。
  7. 金属帯が亜鉛めっき鋼板であり、その表面に生成させる皮膜が亜鉛系酸化物であることを特徴とする請求項6に記載の表面処理物の製造方法。
  8. 金属帯が冷延鋼板であり、その表面に生成させる皮膜が鉄系酸化物であることを特徴とする請求項6に記載の表面処理物の製造方法。
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