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JP4923902B2 - 血液浄化用中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents
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JP4923902B2 - 血液浄化用中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents

血液浄化用中空糸膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、血液透析膜、血液濾過膜または血液透析濾過膜等として好適に用いることのできる血液浄化用中空糸膜及びその製造方法に関するものである。
本発明は、糸すべり性が高い血液浄化用中空糸膜であり、該中空糸膜の紡糸やモジュール作製歩留まりの高い中空糸膜に関するものである。
中空糸膜モジュールは、単位モジュール体積あたりの膜面積が大きく、ファウリングが少ないこと、洗浄が容易なことから、工業用・産業用の排水処理、水精製や、医療分野に幅広く使用されている。
中空糸膜モジュールの一般的な作製方法は、紡糸された中空糸膜を、束状に捲取り、巻き取った中空糸膜束をモジュールケースに挿入し、ついで、ケースの端部をウレタンやエポキシなどの樹脂で、中空糸膜束とケースを液密に接着、その後、中空糸膜の内孔が開口するように接着部分を切断する。
このとき、中空糸膜のすべり性は、モジュール製作時の歩留まりに大きく影響を与える。つまり、中空糸膜を紡糸する際、膜のすべり性が不十分であると、糸走行時に接触するガイドやローラーとの摩擦に耐えられずに、糸切れを起こしてしまうことがある。また、巻き取った中空糸膜束をモジュールケースに挿入するときに、ケース内径と中空糸膜束径の差が小さいときに、ケース内面と中空糸膜あるいは中空糸膜同士がこすれて糸切れが発生することがある。
紡糸やモジュール作製の歩留まりを向上させるためには、膜形成時のポリマー濃度を高めたり、中空糸膜の膜厚を厚くして中空糸膜の強度を高める方法が一般的に取られる。しかし血液浄化に用いられる中空糸膜は、血液から有害物質を取り除く目的で使用されるため、物質透過性を高める必要があり、性能の低下を引き起こすために、必要以上に膜形成時のポリマー濃度を高めたり、膜厚を厚くすることができない。
もちろん、産業用に用いられる糸の製造においては、油剤を用いて、糸のすべり性を高めることが古くからおこなわれているが、中空糸膜、特に医療用として血液と直接接触する血液浄化用の中空糸膜の製造には、安全上の問題から油剤を使用することはできず、本発明者らが調べたところでは、血液浄化用中空糸膜の糸すべり性を高める方法についての公知技術は存在しない。
また、中空糸膜には、中空糸膜同士の密着を防ぐために、クリンプが付与されることがあるが、クリンプによる中空糸膜の蛇行も、中空糸膜同士がこすれるときに、摩擦抵抗の原因となり、中空糸膜に対してダメージを与えることがある。
従来、内面に平滑なスキン層を有し、外表面に微細な凹凸よりなる支持層を有する非対称性中空糸型分離膜が開示されている。(特許文献1参照)。該文献に開示されている技術は、分離膜の外表面に凹凸を有することにより、シール部材との相溶性がない場合でもシール部材が前記微細な凹凸に侵入することによるアンカー効果により物理的に十分な液密シールを可能とするものである。また、該文献には、具体的な凹凸の程度は一切開示されていないが、アンカー効果を得るための凹凸であることから非常に大きな凹凸を想定しているものと考えられる。
特開平9−290138号公報
また、特許文献2には、膜内部が実質的に均一構造の膜を一定範囲内の薄さの膜厚とし、且つ、膜表面の平滑性を向上させることによって、膜の目詰まり及び血液側境膜での分極蛋白層の生成を抑制し、その結果限外濾過速度及び分離性能を向上させた血液浄化膜が開示されている。該文献には、膜表面が平滑であることが記載されているが、ここでは中空糸膜内表面の平滑性を指しており、外表面の凹凸度に関しては記載も示唆もない。また、中空糸膜のすべり性を向上させて中空糸膜の生産性やモジュールの生産性を高めるという技術課題を示唆する記述もみられない。
特開平9−154936号公報
さらに、特許文献3にも同様に中空糸膜表面の平滑性を向上させ、血液処理時の中空糸膜表面へのタンパク付着量を抑制し残血を減少する技術が開示されている。該文献に記載の技術も血液中のタンパクの膜表面への付着抑制に関するものであって、中空糸膜の生産性やモジュール組立性を向上するという技術課題を示唆する記述はみられないし、そのために外表面の凹凸度を制御するという技術思想についても記載も示唆もされていない。
特開2000−126286号公報
本発明は上記の課題を解決しようとするものであり、その目的は、紡糸段階での糸切れ起因によるローラーでの巻きつきを防ぎ、束状に捲取られた中空糸膜束をモジュールケースに挿入する際の中空糸膜とモジュールケース内面とのこすれによる糸切れを防ぐために、中空糸膜の糸すべり性を高い状態で確保できる血液浄化用中空糸膜およびその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)内径が100〜300μm、膜厚が10〜100μmである中空糸膜であって、チューブインオリフィスノズルの外側環状部より吐出された製膜溶液を凝固浴に浸漬して凝固させ、引き続き水洗工程、孔径保持剤を含浸させる工程、乾燥工程を経てボビンに巻き取る中空糸膜の製造において、乾燥工程後に中空糸膜を温度が20℃〜30℃、湿度が45〜75%RHである急冷工程を通過させることによって、「JIS L1015化学繊維ステープル試験方法」に準拠したレーダー式摩擦係数試験機における中空糸膜対中空糸膜の摩擦係数を測定した際、静止摩擦係数が0.05以上1.70以下、動摩擦係数が0.02以上0.40以下としたことを特徴とする血液浄化用中空糸膜。
(2)該中空糸膜が細孔内に主としてグリセリンが充填されていることを特徴とする(1)に記載の血液浄化用中空糸膜。
(3)該中空糸膜の表面に実質的にグリセリンの滲み出しがみられないことを特徴とする(1)または(2)に記載の血液浄化用中空糸膜。
(4)該中空糸膜の外表面の凹凸度(PV値)が2.5μm以下であることを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載の血液浄化用中空糸膜。
(5)該中空糸膜は実質的に乾燥状態であることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の血液浄化用中空糸膜。
(6)該中空糸膜は主としてセルロース系ポリマーからなることを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載の血液浄化用中空糸膜。
)該セルロース系ポリマーはセルローストリアセテートおよび/またはセルロースジアセテートであることを特徴とする(6)に記載の血液浄化用中空糸膜。
本発明の中空糸膜は、糸すべり性が高く、束状に捲取られた中空糸膜束をモジュールケースに挿入する際に中空糸膜同士のこすれによる糸切れが低減できる。また中空糸膜紡糸の際に、走行ローラーやガイドとのこすれによる糸切れを低減させることができる。さらに中空糸膜の糸すべり性を高い状態で確保できる製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
中空糸膜はモジュールに組み立てられる際に、中空糸膜束をケースに挿入する工程が取られる。このとき、中空糸膜同士が擦れあうことにより、中空糸膜が折れ、中空糸膜にダメージを与えており、中空糸膜対中空糸膜の摩擦係数がモジュール歩留まりに大きな影響を与えていることを見出し本発明に到達した。本発明の中空糸膜は「JIS L1015化学繊維ステープル試験方法」に準拠したレーダー式摩擦係数試験機における、中空糸膜対中空糸膜の摩擦係数が、静止摩擦係数0.05以上、1.70以下、動摩擦係数0.02以上0.40以下であることを特徴とする。
静止摩擦係数が1.70以下であれば、中空糸膜対中空糸膜が摩擦抵抗を受け、どちらかが動き出すときの摩擦力が小さく、中空糸膜に対してダメージを与えることが少なく好ましい。静止摩擦係数は、静止状態から動き出すときの摩擦力を現すので、この値が小さいほど、こすれあったときに滑り始めるときの力が小さく、中空糸膜に対するダメージは小さくなる。このため、静止摩擦係数は1.50以下がより好ましく、1.20以下がさらに好ましい。一方、静止摩擦係数の下限については特に存在せず、ゼロに近いことが好ましいことは容易に理解されうるものであるが、現実的には、膜表面の平滑性をどのように高めてもゼロにすることは困難であり、あえて範囲を記載するとすれば、0.05以上が理想状態であり、0.10以上が現在の技術では好ましい範囲となる。
本発明において動摩擦係数が0.40以下であれば、中空糸膜同士が擦れ合って、すべるときの摩擦力が小さく、中空糸膜に対してダメージを与えることが少なく好ましい。動摩擦係数は、動いている状態の摩擦力を表すので、この値が小さいほど、擦れ合ってすべるときに中空糸膜にかかる力が小さくなるので、0.35以下がより好ましく、0.30以下がさらに好ましい。静止摩擦係数と同様に、動摩擦係数の下限については特に存在せず、ゼロに近いことが好ましいことは容易に理解されうるものであるが、現実的には、膜表面の平滑性をどのように高めてもゼロにすることは困難であり、あえて範囲を記載するとすれば、0.02以上が理想状態であり、0.03以上が現在の技術では好ましい範囲となる。
本発明者らは、前記摩擦係数を適正化するための方策について鋭意検討した結果、製膜原液をノズルから吐出する際の吐出斑あるいは凝固工程における凝固斑に起因する外表面の凹凸、製膜工程での各部材と中空糸膜との接触により中空糸膜外表面に生ずる傷、乾燥時の収縮による皺の発生、粘性の高い孔径保持材の膜表面への滲み出しなどが摩擦係数を増大する原因であることを突き止めた。これらの中でも、特に中空糸膜外表面凹凸を適正化すること、粘性の高い孔径保持材の中空糸膜細孔からの滲み出しを抑制することが摩擦係数適正化に効果が大きいことから、さらに外表面凹凸の制御および孔径保持材の滲み出し抑制について検討を進め、ついに本願発明に到達した。以下さらに詳細に本願発明を説明する。
本発明における血液浄化用中空糸膜(以下、単に中空糸膜と称することがある。)の材質としては、再生セルロース、改質セルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ビニルアルコール−エチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマーなどが挙げられるが、タンパク吸着量が少なく、透水性、溶質透過性が優れる点でセルロース系の材質が好ましい。高い透水性を得ることができ、溶質分離特性に優れ、生体適合性にも優れることから、セルロースジアセテートやセルローストリアセテートがより好ましい。
本発明の血液浄化用中空糸膜の内径は100〜300μmであることが好ましい。内径が100μm未満の場合には中空糸膜の圧力損失が大きくなる為、血液を流した際に溶血することがある。したがって、中空糸膜の内径は130μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましい。逆に、中空糸膜の内径が300μmより大きい場合には中空糸膜内を流れる血液の剪断速度が小さく、濾過に伴いタンパク質などが膜の内面に堆積しやすくなる傾向がある。したがって、中空糸膜の内径は280μm以下がより好ましく、260μm以下がさらに好ましい。
本発明の血液浄化用中空糸膜の膜厚は10〜100μmであることが好ましい。膜厚が10μm未満の場合には中空糸膜の可紡性や血液浄化器の組み立て性が非常に悪くなる。したがって、中空糸膜の内径は11μm以上がより好ましく、12μm以上がさらに好ましい。逆に、中空糸膜の膜厚が100μmより大きい場合には透過性能が悪くなる傾向にあり、タンパク質などが膜に吸着しやすくなる傾向がある。したがって、中空糸膜の膜厚は50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
本発明の血液浄化用中空糸膜の膜構造は、均質構造であることが好ましい。本発明において、膜構造が均質であるとは、SEMで膜断面を1000倍程度で観察しても支持層、スキン層など断面構造に不均一性が観察されず、また、ボイドやピンホール等も観察されないことを言う。
さらに、可視光領域の乱反射を起こす構造を持たないため、中空糸膜は透明である。また、疎水性が比較的強いセルロースアセテートを素材としているため、中空糸膜を濡らした場合にも、膜厚や中空糸膜内径、中空糸膜外径は変化しない。
血液浄化器は、その使用に際し、生理食塩水を中空糸膜内外に流して洗浄および気泡の追い出し等を行う、いわゆるプライミング処理が実施される。一般的に、血液浄化用に使用される中空糸膜の構成材料は疎水性高分子であるため、水や血液と接触させても馴染まない(濡れない)という課題を有する。そのために、予め水に浸漬された状態で出荷されるウエットタイプ血液浄化器あるいは、乾燥中空糸膜にグリセリン、ポリビニルピロリドン等の親水化成分を含浸、付着、コート等されたドライタイプ血液浄化器の形態での展開がなされており、血液浄化使用前のプライミング処理が簡便に行なえるように工夫されている。これらの中で、ウエットタイプ血液浄化器は血液浄化器内に水が充填された状態で出荷されるためプライミング処理が行ないやすいが、雑菌が繁殖しやすいとか、重量増による輸送コストの高騰、寒冷地や空輸時に充填液の凍結により膜素材がダメージを受けるという問題がある。一方、ドライタイプ血液浄化器は、水との馴染み性が必ずしも充分でなく、該プライミング処理に時間を要したり、プライミング処理後十分に水となじんで性能が発現する迄に時間がかかるという課題を有する。そのために、短時間のプライミング処理で所定レベルの膜性能が発現するドライタイプ血液浄化器用に適した中空糸膜の開発が嘱望されている。
本発明の中空糸膜は、該中空糸膜を用いて作製した血液浄化器のプライミング処理後1時間時点の純水の限外ろ過係数(UFR(1hr))とプライミング処理後24時間経過時の純水の限外ろ過係数 (UFR(24hr))が、2%≦UFR(24hr)/UFR(1hr)×100−100≦20%の関係を示すことが好ましい。この関係を有する中空糸膜は、水や血液と膜素材との親和性がよく、高い生体適合性を示すとともに、治療中およびプライミング後の放置時間による性能変動が少ないといった利点を持つ。この関係が20%を超える場合には、臨床使用中あるいはプライミング後の放置時間によって、膜緩みが発生してUFRが大幅に増大し性能が安定しないほか、膜緩みによってタンパク質の漏出量が増加することがある。したがって、上記関係は15%以下がより好ましく、9%以下がさらに好ましい。また、この関係が2%未満の場合には、水および血液と膜素材との親和性が低すぎることを示し、臨床使用中に血液中のタンパク質や血球成分が膜に付着しやすくなり、経時的な性能の低下や凝血や残血が発生することがある。したがって、該関係は3%以上がより好ましく、4%以上がさらに好ましい。
本発明の中空糸膜は、上記血液浄化用中空糸膜を用いて作製した膜面積1.5m2(中空糸膜内径基準)の血液浄化器の血液接触側にヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dl の新鮮牛血(ヘパリン処理血)を200ml/minの流量で灌流した際、30分後の血小板保持率が70〜98%であることが好ましい。血小板保持率がこの範囲よりも小さいと血小板の粘着量が多くなり、血栓ができやすくなったり、血液浄化機能が低下したりすることがある。また、この範囲よりも大きいと活性化された血小板までも血液中に放出されるため、生体内を循環する血球や血漿などの血液成分が刺激され、生体内の血液全体が活性化された状態となり、凝血傾向や、場合によっては塞栓を生じる危険性も否定できない。したがって、該30分後の血小板保持率は75〜98%であることがより好ましく、80〜98%であることがさらに好ましい。
また、本発明の中空糸膜は、上記血液浄化器をプライミング処理し、室温で1時間および24時間静置した血液浄化器のそれぞれに、ヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dl の新鮮牛血(ヘパリン処理血)を用いて、血液浄化器の中空糸膜内側に流量200ml/min 、濾過量が15ml/minで環流し、環流開始後1時間後の濾液中のタンパク質漏出量をそれぞれ(TPL(1hr))および(TPL(24hr))とした時に、下記式を満たすことが好ましい。
TPL(24hr)/TPL(1hr)=0.8〜1.4
TPL(24hr)/TPL(1hr)が小さすぎると、臨床使用中に血液中のタンパク質や血球成分が膜に付着しやすくなり、経時的な性能の低下や凝血や残血が発生することがある。したがって、TPL(24hr)/TPL(1hr)は0.85以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましい。また、TPL(24hr)/TPL(1hr)が大きすぎると、臨床使用中にたんぱく質の漏出量が増大し、生体内の血中タンパク質濃度が低くなり、低タンパク血症を引き起こす恐れがある。したがってTPL(24hr)/TPL(1hr)は1.35以下がより好ましく、1.30以下がさらに好ましい。
本発明の中空糸膜のUFRは3 ml/(m2・hr・mmHg)以上270 ml/(m2・hr・mmHg)以下が好ましい。UFRが3 ml/(m2・hr・mmHg)未満の場合は透析膜として必要な除水量を得られないことがある。したがって、UFRは4ml/(m2・hr・mmHg)以上がより好ましく、5ml/(m2・hr・mmHg)以上がさらに好ましい。また、UFRが260 ml/(m2・hr・mmHg)より大きい場合は、タンパク質の漏出を抑えきれないことがある。したがって、UFRは250ml/(m2・hr・mmHg)以下がより好ましく、200ml/(m2・hr・mmHg)以下がさらに好ましい。
また、本発明の中空糸膜は、尿素クリアランスがモジュール1.5m2(中空糸膜内径基準)あたり158〜200mL/minの範囲であることが好ましい。本発明において、尿素クリアランスの測定はダイアライザー性能評価基準(昭和57年、日本人工臓器学会)に準じ、シングルパス方式を採用し、血液側は尿素100mg/dLを含有する生理食塩水溶液、透析液側は生理食塩水を用い、温度37±1℃でろ過を生じない条件で行った。なお、血液側流量は200mL/min、透析液側流量は500mL/minとする。尿素クリアランスが低過ぎると、臨床使用時、1回の透析治療にかかる時間が長くなり、患者への負担が大きくなる可能性がある。したがって、尿素クリアランスは1.5m2(中空糸膜内径基準)あたり163mL/min以上がより好ましく、168mL/min以上がさらに好ましい。血液側流量200mL/minの時のクリアランスの最大値は200mL/minである。
本発明においては、中空糸膜は実質的に乾燥状態にあることが好ましい。実質的に乾燥状態にあるとは、中空糸膜乾燥重量に対する水の重量(含水率)が10重量%以下の場合をさす。含水率は小さい方が重量を軽くできるとか、雑菌の繁殖がないとか、輸送中の温度変化による結露を生じないなどの点で好ましい。特に、グリセリン等の水溶性の成分を含有する中空糸膜の場合、含水率が高すぎると、輸送中の温度変化等により中空糸膜からグリセリンが脱落しやすくなり、プライミング処理時中空糸膜全体が均一に濡れないとか、均一化に長時間を要するなどの問題が発生することがある。したがって、中空糸膜の含水率は9重量%以下がより好ましく、8重量%以下がさらに好ましい。しかし、含水率を小さくするために、中空糸膜の乾燥時間を長くしたり、乾燥温度を上げることは中空糸膜素材の劣化に繋がることがある。したがって、中空糸膜の含水率は1重量%以上がより好ましく、2重量%以上がさらに好ましい。
本発明において、中空糸膜外表面の凹凸度(PV値)が2.5μm以下であることが好ましい。PV値とは、膜表面の凹凸を測定した際の、基準点に対する全測定点の凹凸の最大値と最小値の差を表わす。また、これら膜表面の平滑性は、走査型白色干渉法を用いた3次元表面構造解析顕微鏡のような解析装置により得られ、測定値から算出することができるもので、測定装置は公知の装置が利用でき、例えば、試験片に対し、走査型白色干渉顕微鏡によって干渉対物レンズを光軸方向に走査しながら干渉像を収集し、デジタル化された干渉強度の情報をワークステーションで処理し、目的のPV値を得ることができる。PV値が大きすぎても小さすぎても、中空糸膜製造時の中空糸膜とガイドとの摩擦やモジュール組立時の中空糸膜同士の接触により、中空糸膜表面に傷がつきやすくなり、ひいてはすべり性の低下につながる。したがって、中空糸膜外表面のPV値は、0.01μm以上2.0μm以下がより好ましく、0.1μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましく、0.3μm以上1.0μm以下であることがよりさらに好ましい。
中空糸膜の表面の凹凸度を小さくするためには、中空糸膜製造におけるガイドとの摩擦抵抗を低減することや乾燥時のミクロな皺(凹凸)の発生を抑制することが重要である。用いるガイドの素材としては、テフロン(登録商標)、ベークライト、ステンレス、プラスチックなどがあるが、表面を梨地加工したものが中空糸膜との摩擦を効果的に低減できるため好ましい。乾燥時の皺の発生を抑制するためには、例えばグリセリンなどを細孔に充填した後に乾燥することにより、中空糸膜の収縮を効果的に抑制することができる。また、中空糸膜製造工程において、紡糸原液をノズルから吐出させるときの吐出斑をできるだけ抑制することも重要である。紡糸原液の吐出斑を抑制するための具体的な方法としては、紡糸原液タンクから紡糸口金まで送液する経路の途中に設けた送液用ギアポンプの脈動を出来るだけ抑えることが好ましい実施態様である。該脈動を抑える手段としては、例えば、ギアポンプのギア数を多くするとか、ギア1回転あたりの吐出量を適性化することで達成できる。このとき、1回転あたりの吐出量がギア数変更前と変わらないように調製することが必要である。例えば、変更前ギア数が20で、1回転あたりの吐出量が0.1ml/revであった場合には、ギア数を倍の40に変更しても変更後の吐出量が0.1±0.01ml/revの範囲になるよう調整する。
含水率が10重量%以下であれば、孔径保持剤や凍結防止剤、親水化剤等の他の液体、固体成分を含むことは本発明より排除されない。たとえば、このような液体、固体成分としてはグリセリン、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。本発明においては、プライミング処理によって速やかに洗浄除去が可能であり、人体にとって有害性の程度が低いグリセリンを用いるのが好ましい。
本発明の中空糸膜は、例えば、以下のように製造することができる。
セルロース系ポリマーおよびセルロース系ポリマーに対する溶媒、非溶媒を溶解して製膜溶液を調製し、得られた製膜溶液をチューブインオリフィスノズルの外側スリットから吐出すると同時に中心孔より中空形成材を吐出する。ノズルから吐出された製膜溶液は、空中走行部(エアギャップ)を通過させた後、凝固液に浸漬させ製膜溶液の凝固、相分離を行なわせる、いわゆる乾湿式紡糸法で製造するのが好ましい。得られた中空糸膜は、過剰の溶媒、非溶媒等を除去するために洗浄工程を経た後、中空糸膜に親水化剤や孔径保持剤を含浸させるための液体槽に浸漬させる。このようにして得られた湿潤中空糸膜を乾燥工程、冷却工程に通し、ボビン形状に巻き取る(ボビンの捲き厚は5〜30cm)。このボビンに加熱処理を実施し、血液浄化用中空糸膜が製造される。
セルロース系ポリマーに対する溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、セルロース系ポリマーの凝固および相分離のコントロールのしやすさ、作業安全性、廃棄処理の観点からN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミドを用いるのが好ましい。
また、セルロース系ポリマーに対する非溶媒としては、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が好ましく用いられるが、溶媒との相溶性や洗浄除去性、安全性の観点からトリエチレングリコール、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリエチレングリコールとしては分子量200、400のものを用いるのが、室温で液体であり取り扱い性に優れる点より好ましい。
さらに、製膜溶液には、酸化防止剤や微孔形成剤などの添加剤を必要に応じて加えることができる。
本発明において用いる中空形成材としては、セルロース系ポリマーに対して活性のある液体、不活性な液体および気体を用いることができる。活性のある液体としては、セルロース系ポリマーの溶媒および非溶媒と水との混合液、不活性な液体としては流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルなど、不活性な気体としては窒素、アルゴンなどを用いることが可能である。中空形成材として活性のある液体を用いると、得られる中空糸膜は不均一構造となりやすく、また不活性な液体および気体を用いると得られる中空糸膜は均一構造となりやすい。グリセリン等の孔径保持剤を含有する中空糸膜の場合、細孔からの孔径保持剤の脱落防止の観点から均一構造の中空糸膜とするのが好ましく、本発明においては中空形成材として流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルを用いるのが好ましい。
エアギャップを通過した製膜溶液は、凝固液槽に浸漬し、凝固および相分離を進行させる。ここで凝固液としては、製膜溶液の調製に用いた溶媒および非溶媒と水との混合液を用いるのが好ましい。凝固液組成により得られる中空糸膜の構造、特性が変化するため、溶媒、非溶媒、水の混合比率は目的とする膜構造、膜特性にあわせて試行錯誤により決定する必要がある。本発明において凝固液の調製に用いる溶媒、非溶媒は、製膜溶液の調製に用いたものと同じものを使用することが好ましく、さらに製膜時の経時的な組成変化を抑制するため製膜溶液中の溶媒、非溶媒比と同じにするのが好ましい。
洗浄工程は、中空糸膜製膜に用いた溶媒、非溶媒等を除去するためのものであり、洗浄装置の構成や用いる洗浄液については特に限定されるものではない。洗浄液については、溶媒、非溶媒と相溶性のあるものであればよく、水、アルコールなどを用いる事が可能であり、本発明においては洗浄液として、水を用いるのが好ましい。
洗浄終了後の中空糸膜は、引き続き中空糸膜細孔に孔径保持剤等を含浸させるための工程に導かれる。本発明においては、孔径保持剤としてグリセリンを用いるのが好ましい。グリセリンは医薬品や化粧料の用途として用いられる安全性の高い物質であるが、室温における粘度が高いため、原液のままでは孔径保持剤として使用するのは困難である。したがって、本発明においてはグリセリンを水に溶解したものを100℃以下に加熱した後、中空糸膜と接触させることにより細孔内に含浸するようにしている。溶液中のグリセリン濃度や温度は、中空糸膜の細孔の大きさや数、分布状態によって適宜設定する必要があるが、本発明の中空糸膜のUFR範囲のものであれば、15〜90重量%のグリセリン水溶液を30〜80℃に加熱した後、中空糸膜と接触させる(中空糸膜細孔内に含浸させる)のが好ましい。グリセリン濃度が低過ぎると、中空糸膜細孔内への含浸性は高まるが乾燥によって細孔が収縮するため、所期の膜特性を得られない可能性がある。また、細孔の収縮による中空糸膜表面の皺の発生につながることもある。したがって、グリセリン濃度は18重量%以上がより好ましく、21重量%以上がさらに好ましい。また、グリセリン濃度が高過ぎると、細孔径の保持効果は高まるが、粘度が高まるため細孔内への含浸性が低下することがある。また、グリセリン水溶液の粘度を低下させるためには温度を上げれば良いが、そうするとグリセリン自体が熱酸化されたり、中空糸膜にダメージを与える可能性がある。したがって、グリセリン濃度は87重量%以下がより好ましく、84重量%以下がさらに好ましい。
このようにして得られた中空糸膜は、次に乾燥工程にて乾燥される。乾燥温度は40〜120℃が好ましい。ここで、中空糸膜を乾燥させる目的としては、中空糸膜に含まれる水を蒸発させて中空糸膜の軽量化を行うだけでなく、血液浄化器の組立て性の確保(ポッティング剤が水と反応し接着不良を起こすことを防ぐ)、グリセリンの脱落防止(余剰の水を蒸発させることによりグリセリンの流動性を低下させる)、膜構造の固定化(その後の温度変化による細孔の拡大縮小を防ぐ)などが挙げられる。乾燥温度が低過ぎると瞬時に水を蒸発させることができず、グリセリンの脱落を招くことがある。したがって、乾燥温度は45℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。また、乾燥温度が高過ぎると、グリセリンが熱酸化を起こすことがある。したがって、乾燥温度は115℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましい。
続いて一旦乾燥された中空糸膜は冷却工程で冷却される。冷却条件の温度は15〜35℃、湿度は45〜75%が好ましい。ここで、中空糸膜を冷却させる目的としては、乾燥後の中空糸膜はボビンにチーズ状に巻き取られるが、中空糸膜の表面温度が高温状態で巻き取られると、経時的に温度が下がるにつれて中空糸膜が縮みボビンの捲き絞まりが起こる。捲き絞まりが起こると細孔に充填されたグリセリンが滲み出し、中空糸膜表面に滲み出したグリセリンの粘性が高いため中空糸膜の糸すべり性が低下し、血液浄化用中空糸膜モジュールの作製歩留まりが低下してしまう。また、冷却温度が低すぎても糸表面に結露が発生し細孔のグリセリンが滲み出すことで糸すべり性が低下する。したがって、冷却条件は温度17℃〜33℃、湿度47%〜72%がより好ましく、温度20℃〜30℃、湿度50%〜70%がさらに好ましい。
冷却工程は、調温調湿された気体を送風した冷却ゾーンに糸を走行させることや、調温調湿された雰囲気内を、一定時間走行させることなどが、実際例として挙げられる。気体を送風した冷却ゾーンを走行させる場合には、短時間で効率的に実施でき、紡糸速度によって冷却ゾーンの長さは異なるが、通過時間は1秒〜5秒の範囲で十分である。一方、調温調湿された雰囲気内を走行させる場合の通過時間は、10秒〜60秒の範囲が好ましい。
このようにして得られた中空糸膜は、ボビンにチーズ状に巻取る。ボビンに捲き取る際、中空糸膜は綾角2〜6°で捲き取るのが好ましい。また、チーズの幅は20〜60cmが好ましい。さらにチーズの厚みは5〜30cmが好ましい。このような厚みおよび幅、綾角で捲き取ることにより、中空糸膜同士の間隙が適度になり、後述する熱処理がチーズ状に巻き取られた中空糸膜全体に均一に作用するため好ましい。また、このような条件で巻き取られたチーズを熱処理することにより中空糸膜にクリンプが付与され、血液浄化に使用した際に、透析液の偏流を抑制できるという副次効果も得られる。本発明においてボビンに巻き取られた中空糸膜をチーズ厚み方向にほぼ3等分し、表層、中層、内層と称する。
上記方法で巻き取られたボビンは、透湿量が0.1〜1.0mg/(cm2・hr)の袋で包装して熱処理を行なうのが好ましい。袋の透湿量は0.2〜0.9mg/(cm2・hr)がより好ましく、0.3〜0.8mg/(cm2・hr)がさらに好ましい。透湿量がこの範囲にある包装袋を用いることにより、中空糸膜より蒸発した水蒸気の蒸散がある程度抑制され、かつ該水蒸気の一部が袋を透過して系外に排出されることにより中空糸膜の含水率が最適化され(中空糸膜中の含水率1〜10重量%)、さらに中空糸膜の含水率をボビン全体で均一にすることができる。
一方、中空糸膜の熱処理時に、中空糸膜中の水分の蒸発が少なすぎると、膜中のポリマーは、水分を含んだ状態で固定される。このような場合、プライミング処理後にポリマーが水を吸収せずにポリマーと血液が直接接触することになるため、血液中のタンパク質や血球成分が膜に付着しやすくなり、凝血や残血が発生する原因になると考えられる。また、中空糸膜の熱処理時、中空糸膜中の水分が蒸発しすぎると、透水性の変化や生体適合性に悪影響を与えるだけでなく、中空糸膜の表面が荒れるなど表面状態が悪化(すべり性が低下)することがあり、生産効率にも悪影響を与えるという弊害が発生する可能性がある。そのため、このような透湿量の範囲の袋に包装して中空糸膜を熱処理する事により、膜中のポリマーから適度に水分を除いた状態で膜構造が固定でき、プライミング処理後の透水性の変化を一定範囲内に保つ事ができると考えられる。
ボビン状態で熱処理を行う事から、ボビンの表層から内層までほぼ均等に熱が伝わる条件で範囲を設定する必要がある。好ましい熱処理温度は60〜90℃である。熱処理温度が高すぎると、ボビンの表層部位の温度が上がりすぎ、その結果中空糸膜中の含水率が低下し、ボビンの表層部分と内層部分の中空糸膜に含水率の差が生じることになる。そうすると、表層部分の中空糸膜を用いて作製した血液浄化器と内層部分の中空糸膜を用いて作製した血液浄化器との間で性能差や品質の違いが生じることになり工業的には好ましくない。また、熱処理温度が低すぎると、内層部に十分熱が伝わらず、前記熱処理温度が高すぎる場合と同様の性能や品質に関わる問題が生じるだけでなく、プライミング処理後の放置時間による膜の膨潤起因で中空糸膜の形状が変化し血液浄化器の透析液側流路の不均一化による偏流が発生し、小分子物質の透過性能が低下してしまうという問題が生じる可能性がある。したがって、より好ましい熱処理温度は60〜85℃、さらに好ましい熱処理温度は65〜85℃である。
上記熱処理の処理時間は、15〜25時間が好ましい。15〜24時間がより好ましく、15〜23時間がさらに好ましい。15時間未満では熱処理効果が不十分となることがある。逆に、25時間を越えた場合は、熱処理中に蓄積した熱エネルギーにより膜素材や含浸させたグリセリン等が劣化し、品質の低下を招くことがある。
上述したような製造方法の特徴を有することにより中空糸膜内表面の平滑性が達成され、前述のTPL(24hr)/TPL(1hr)や血小板保持率を好ましい範囲に維持することが可能となっているものと推測する。
以下、実施例により本発明の効果ならびに詳細な説明を加えるが、本発明は実施例によりなんら限定されるものではない。
(純水の限外濾過係数(UFR)の測定方法)
血液浄化器を使用し、膜の内外両面に純水を満たし、37℃に恒温した。膜の内側に通じる血液浄化器入口から圧力をかけて37度の純水を流し、膜の内側と外側の圧力差、すなわち膜間圧力差を生じせしめ、1分間に膜を通じて膜外側に出てくる純水の量を測定した。膜間圧力差(TMP)はTMP=(Pi+Po)/2とする。(Piは血液浄化器入口圧力、Poは血液浄化器出口圧力。)4点の異なった膜間圧力差において、1分間の透水量を測定し、膜間圧力差と透水量の2次元座標にプロットして、それらの近似直線の傾きを求めた。この数値に60をかけ、中空糸膜の内径基準膜面積で割って中空糸膜の純水の限外濾過係数(以下UFR)をもとめた。単位はml/(m2・hr・mmHg)である。
(中空糸膜内径の測定方法)
中空糸膜断面のサンプルは以下のようにして得る事ができる。測定には中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた状態で観察する事が好ましい。乾燥方法は特に問わないが乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去した後、純水で完全に置換し、湿潤状態で形態を観察することが好ましい。乾燥後の中空糸膜を厚さ2mmのスライドガラスの中央に開けられたφ1mmの孔に適当数通し、スライドガラス上下面で剃刀によりカットし、中空部を露出させた断面サンプルを得る。得られたサンプルは投影機(Nikon-12A)を用いて、視野内の任意の5サンプルを無作為に抽出し、各中空糸膜断面内側の短径と長径をそれぞれ測定し、その算術平均値を中空糸膜1個の内径とした。さらに5サンプルの平均値をもって中空糸膜内径とした。
(尿素クリアランス(CLun)の測定)
膜面積1.5m2(中空糸膜内径基準)の血液浄化器を使用し、ダイアライザー性能評価基準(昭和57年、日本人工臓器学会)に準じ、シングルパス方式を採用し、血液側は尿素100mg/dL生理食塩水溶液、透析液は生理食塩水を用い、温度37±1℃でろ過を生じない条件で測定した。血液側流量200mL/minで透析液側流量500mL/min時の尿素クリアランス(CLun)を求める。
CLun(ml/min)=(血液側入口濃度×血液側入口流量−血液側出口濃度×血液側出口流量)/血液側入口濃度×100
(摩擦係数の測定)
JIS L1015 8.13に記載されているレーダー式摩擦係数試験機を用いて実施した。中空糸膜をハンドカードでよく解繊して均等なスライバとし、レーダー式摩擦係数試験機の外径8mmの円筒に、中空糸膜が円筒の軸と平行になるように巻きつける。次に、同一の中空糸膜から任意に1本の中空糸膜を採取し、その両端に初荷重(W:9.8×10-3 N)を取り付けたものを円筒スライバの中央にかけ。その一端をトーションバランスのフックに接続する。静摩擦係数(μs)の測定には、円筒スライバを停止させ、トーションバランスによって中空糸膜の両端のバランスが失われるときの荷重(m)を求める。動摩擦係数(μd)の測定には、円筒スライバを周速度180cm/minで回転させ、トーションバランスによって中空糸膜の両端がバランスする荷重を求める。n=20で測定し、次の式によって摩擦係数を算出し、平均を求める。
μsまたはμd=0.733log(W/(W−m))
(表面凹凸度の測定)
複数本の中空糸膜からなる束から、任意の中空糸膜を10本選び、それぞれの中空糸膜について、中空糸膜外表面の任意の1箇所について0.1mmずつ測定し、その平均の凹凸度を求めた。測定はZYGO社製走査型白色干渉顕微鏡(NewView100)を用い、20倍の対物レンズを用いてシステム倍率2倍の条件で測定しその平均値で表示した。測定はフイルターを用いずに行った。
(袋の透湿量の測定方法)
一辺30cm四方の線を袋に書き、線の外側に沿ってヒートシーラーで3方をシールし、30cm四方の袋を作る。作製した袋に25℃の純水250mlを入れ、他3方と同様にシールする。このとき、袋と水の合計重量を測定する。
袋の一辺を一塊にまとめ、線の外側部分をたこ糸でしばり、60℃の定温乾燥器内で2hr吊り下げた状態で静置する。2hr後乾燥器から袋を取り出し袋と残った水の合計重量を測定し、透湿量は蒸発した水の重量を袋の表面積と時間の積で割る。
透湿量(mg/(cm2・hr))=(投入前重量−投入後重量)/(1800cm2×2hr)
(血液中血小板数(PLT)変化率)
ヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dl の新鮮牛血(ヘパリン処理血)を400ml準備し、膜面積1.5m2の血液浄化器を作製し、室温の生理用食塩水を使用してプライミング処理を行う。血液浄化器の中空糸膜内側に流量200ml/minで、牛血を30分環流する。測定は環流前の牛血中PLTと、環流後の牛血中PLTを測定し、測定方法は自動血球計算器法を用いる。
PLT変化率(%)=環流後のPLT/環流前のPLT×100
(タンパク質漏出量(TPL)の測定)
ヘマトクリット30%、総蛋白量6.5g/dl の新鮮牛血(ヘパリン処理血)を用いて、血液浄化器の中空糸膜内側に200ml/min で送る。その際、出口側の圧力を調整して、濾過量が15ml/minかかるようにし、濾液は血液槽に戻す。プライミング後室温静置1時間と24時間の血液浄化器を使用して、環流開始後1時間後に濾液をサンプリングする。得られたサンプルをピロガロールレッド法によって分析し、各サンプル採取時間でのTPL濃度を求める。
(中空糸膜中の含水率の測定)
中空糸膜を5〜10g採取し、採取時の重量を記録しておく。記録後、サンプルを105℃の定温乾燥機内に2hr静置する。サンプルを乾燥機から取り出したら、すばやくデシケータ内に移動し40〜60min放冷する(デシケータ内は乾燥雰囲気下状態である事が必要)。放冷後すばやくサンプルの重量を測り、含水率を求める。
中空糸膜中の含水率(重量%)=(乾燥前重量−乾燥後重量)/乾燥前重量×100
(グリセリン付着率の測定)
中空糸膜に対する細孔保持剤の付着率は、以下のようにして測定した。
得られた中空糸膜を約10000本の束とし、長さ20cm程度に切り揃え、遠心脱液により中空糸膜内部の芯液を除去した後、完全に乾燥させ、重量Wを測定する。その後、中空糸膜束を40℃に加温した相当量の水に浸漬させ、十分に洗浄した後、120℃の乾熱オーブンで2時間乾燥させ、重量Pを測定する。次に下記式により中空糸膜に対する細孔保持剤の付着率G(重量%)を計算した。
G(重量%)=(W−P)÷W×100
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0重量%、N-メチルピロリドン(三菱化学社製)56.7重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.3重量%を145℃で溶解し製膜溶液を得た。120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンを用いて、製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、65重量%のグリセリン水溶液中を通過させ90℃の送風で乾燥し、30℃、62%RHの送風条件で冷却し、綾角4°、捲き厚12cmでボビンに巻き上げた。その後ボビンを70℃で20時間熱処理を行った。得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。このようにして得られた中空糸膜を用い、膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して評価を行った。結果を表1に示す。
結果、尿素クリアランスは良好で透析液の偏流は確認されず、摩擦係数も良好であった。
(実施例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)23.0重量%、N-メチルピロリドン(三菱化学社製)53.9重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)23.1重量%を170℃で溶解して製膜溶液を得た。140℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として、流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、60重量%のグリセリン水溶液中を通過させ70℃の送風で乾燥し、27℃、55%RHの送風条件で冷却し、綾角4°、捲き厚12cmでボビンに巻き上げた。その後は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。
このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して性能を評価したところ、良好な特性および性能を有する事が確認できた。結果を表1に示す。
結果、実施例1と同じく尿素クリアランスは良好で透析液の偏流は確認されず、摩擦係数も良好であった。
(実施例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)24.5重量%、N-メチルピロリドン(三菱化学社製)52.9重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)22.6重量%を140℃で溶解した製膜溶液を用い、凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、65重量%のグリセリン水溶液中を通過させ50℃の送風で乾燥し、20℃、50%RHの送風条件で冷却し、その後は実施例1と同様に中空糸膜を作製した。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して性能を評価したところ、良好な特性および性能を有する事が確認できた。結果を表1に示す。
結果、実施例1と同じく尿素クリアランスは良好で透析液の偏流は確認されず、摩擦係数も良好であった。
(比較例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0重量%、N-メチルピロリドン(三菱化学社製)56.7重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.3重量%を145℃で溶解し製膜溶液を得た。120℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として、流動パラフィンを用いて製膜溶液を吐出、エアギャップを通過後、30℃の水中で凝固させた。その後、水洗し膜構造を安定化させた後、60℃、65重量%のグリセリン水溶液中を通過させ70℃の送風で乾燥し、冷却工程無しの条件で、綾角4°、捲き厚12cmでボビンに巻き上げた。その後は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して性能の評価を行った。結果を表1に示す。
結果、ボビンの捲き絞まりの影響から、糸すべり性が低下し、摩擦係数が高くなり、モジュール作製歩留まりが低下した。
(比較例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0重量%、N-メチルピロリドン(三菱化学社製)56.7重量%、トリエチレングリコール(三井化学社製)24.3重量%を145℃で溶解し製膜溶液を得た。その後は乾燥工程まで比較例1と同様にして、10℃、90%RHの送風条件で冷却し、綾角4°、捲き厚12cmでボビンに巻き上げた。その後は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。このようにして得られた中空糸膜から膜面積1.5m2の血液浄化器を作製して性能の評価を行った。結果を表1に示す。
結果、冷却温度が低すぎたことにより、中空糸膜表面に結露が発生し、この影響で中空糸膜中のグリセリンが膜表面に染み出し、その影響で摩擦係数が高くなり、モジュールの作製歩留まりが低下した。
Figure 0004923902
本発明の血液浄化用中空糸膜は、摩擦係数を一定の範囲内で管理することでモジュール作製時の歩留まりを高い水準で維持することが出来る。このことから、本発明の血液浄化用中空糸膜の製造方法は、上記特性を有した血液浄化用中空糸膜を経済的に、かつ安定して製造することができるという利点を有する。従って、産業界に寄与することが大である。

Claims (7)

  1. 内径が100〜300μm、膜厚が10〜100μmである中空糸膜であって、チューブインオリフィスノズルの外側環状部より吐出された製膜溶液を凝固浴に浸漬して凝固させ、引き続き水洗工程、孔径保持剤を含浸させる工程、乾燥工程を経てボビンに巻き取る中空糸膜の製造において、乾燥工程後に中空糸膜を温度が20℃〜30℃、湿度が45〜75%RHである急冷工程を通過させることによって、「JIS L1015化学繊維ステープル試験方法」に準拠したレーダー式摩擦係数試験機における中空糸膜対中空糸膜の摩擦係数を測定した際、静止摩擦係数が0.05以上1.70以下、動摩擦係数が0.02以上0.40以下としたことを特徴とする血液浄化用中空糸膜。
  2. 該中空糸膜が細孔内に主としてグリセリンが充填されていることを特徴とする請求項1に記載の血液浄化用中空糸膜。
  3. 該中空糸膜の表面に実質的にグリセリンの滲み出しがみられないことを特徴とする請求項1または2に記載の血液浄化用中空糸膜。
  4. 該中空糸膜の外表面の凹凸度(PV値)が2.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の血液浄化用中空糸膜。
  5. 該中空糸膜は実質的に乾燥状態であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の血液浄化用中空糸膜。
  6. 該中空糸膜は主としてセルロース系ポリマーからなることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の血液浄化用中空糸膜。
  7. 該セルロース系ポリマーはセルローストリアセテートおよび/またはセルロースジアセテートであることを特徴とする請求項6に記載の血液浄化用中空糸膜。
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