以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
また、以下の各実施の形態では電力用素子の例としてIGBTを取上げるが、本発明は、MOSFETやバイポーラトランスタなどの他の電力用素子にも適用可能である。
[実施の形態1]
実施の形態1では、IGBTが短絡故障したことを検出する故障検出装置1Aについて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の故障検出装置が適用されるモータ駆動装置10の構成を説明するための図である。
図1を参照して、モータ駆動装置10は、出力ノードU,V,Wから、三相交流電力をモータ18に供給する。モータ18は、三相交流モータであり、各相の巻線抵抗R1,R2,R3および巻線インダクタンスL1,L2,L3を用いて等価的に表わされる。
モータ駆動装置10は、直流電源V1と、直流電源V1に並列に接続された平滑化用のコンデンサC1と、インバータ回路11と、結線遮断器12,14,16とを含む。直流電源V1に代えて、交流電源および整流回路を用いることもできる。
インバータ回路11は、三相ブリッジ回路であり、各相ごとに高圧ノードPと低圧ノードN(接地GND)との間に直列接続された2個のNチャネルのIGBT(U相についてIGBTQ1,Q2、V相についてIGBTQ3,Q4、W相についてIGBTQ5,Q6)を含む。インバータ回路11は、IGBTQ1〜Q6のオン/オフを切換えることによって、直流電源V1の出力を交流電力に変換する。変換された交流電力は、各相の出力用のノードN1,N2,N3から出力される。直流から交流への変換方式には、たとえば、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)が用いられる。
インバータ回路11は、さらに、IGBTQ1〜Q6と並列に接続されたフライホイールダイオードD1〜D6と、IGBTQ1〜Q6のゲート・エミッタ間にゲート電圧を印加するためのゲート駆動回路GD1〜GD6とを含む。
フライホイールダイオードD1〜D6は、対応するIGBTQ1〜Q6がオフ状態のときに、モータ18で生じた誘導起電力を還流させるために設けられている。フライホイールダイオードD1〜D6のカソードは、IGBTQ1〜Q6の第1の主電極であるコレクタにそれぞれ接続され、フライホイールダイオードD1〜D6のアノードは、IGBTQ1〜Q6の第2の主電極であるエミッタにそれぞれ接続される。
ゲート駆動回路GD1〜GD6は、入力ノードS1〜S6に入力される制御信号に応じて、IGBTQ1〜Q6のゲート・エミッタ間にハイレベル/ローレベルのゲート電圧を出力する。制御信号は、図示を省略した制御用コンピュータ(図2の参照符号20)から供給される。
結線遮断器12,14,16は、後述する故障検出装置からの出力を受けて、IGBTQ1〜Q6の短絡故障時に、インバータ回路11からモータ18に供給される各相の電流を遮断する。
次に、図2〜図4を参照して、上述のインバータ回路11に用いられるIGBTQ1〜Q6の短絡故障を検出する故障検出装置について説明する。IGBTQ1〜Q6にそれぞれ対応して、同一構成の故障検出装置が設けられているので、以下では、IGBTQ1に設けられる故障検出装置1Aを代表として説明する。
図2は、図1のIGBTQ1に用いられる故障検出装置1Aの構成を示す回路図である。図2の回路図において、電位の基準となる共通電位VN1は、IGBTQ1のエミッタ(ノードN1)の電位である。
図2を参照して、故障検出装置1Aは、前述の制御用コンピュータ20と、ゲート駆動回路GD1に設けられる故障検出回路3とを含む。故障検出回路3は、高耐圧のダイオードD7と、抵抗素子R4,R5と、直流電源V2,V3と、オープンコレクタ出力のコンパレータCA1とを含む。なお、ゲート駆動回路GD1は、故障検出回路3の他に、ゲート制御用コンピュータ20からの制御信号を増幅してIGBTQ1のゲートに出力するドライブ回路UAを含む。ここで、図2に示すように、コンパレータCA1は電源電圧VCC1(たとえば、5ボルト)で動作し、ドライブ回路UAは電源電圧VCC2(たとえば、15ボルト)で動作する。
図2の故障検出回路3において、ダイオードD7のカソードは、IGBTQ1のコレクタに接続される。ダイオードD7のアノードは、抵抗素子R4の一端、およびコンパレータCA1の反転入力端子に接続される。
直流電源V2は、抵抗素子R4の他端とノードN1との間に接続される。また、直流電源V3は、コンパレータCA1の非反転入力端子とノードN1との間に接続される。直流電源V3は、ダイオードD7のアノードの電位と比較するための基準電位を与える。
ここで、直流電源V2の電圧は、インバータ回路11のノードP,N間に印加される数百ボルトの電圧より十分小さく、たとえば5ボルトに設定される。また、直流電源V3の電圧は、オン状態のIGBTQ1のコレクタ・エミッタ間電圧(以下、「オン電圧」とも称する。)とダイオードD7の順方向電圧との和より低く、かつ、ダイオードD7の順方向電圧より高い電圧に設定される。たとえば、IGBTQ1のオン電圧を0.6ボルト、ダイオードD7の順方向電圧を0.6ボルトとすると、直流電源V3の電圧は、0.6から1.2ボルトの間の値、たとえば0.8ボルトに設定される。なお、入力電圧が0ボルト付近であることを考慮して、コンパレータCA1に接続される負側の電源ノードVEEの電位は、基準となるノードN1の電位VN1よりも低電位に設定される。
コンパレータCA1の出力端子は、抵抗素子R5を介して電源ノードVCC1に接続される。コンパレータCA1の出力は、非反転入力端子の入力電圧が反転出力端子の入力電圧より大きいときにオープンとなる。このとき、コンパレータCA1の出力端子の電位は、抵抗素子R5を介してプルアップされたハイレベルの電位になる。
ゲート制御用コンピュータ20は、フォトカプラPCを介してコンパレータCA1の出力信号を受信する。フォトカプラPCは、故障検出回路3とゲート制御用コンピュータ20との間を電気的に絶縁するために設けられている。フォトカプラPCでは、入力信号がハイレベルのとき、フォトダイオードPDの発光を受光したフォトトランジスタPTが導通する。
ゲート制御用コンピュータ20は、IGBTQ1のゲートに与える制御信号、およびコンパレータCA1の出力に基づいて、結線遮断器12を遮断するための信号を出力する。ゲート制御用コンピュータ20と結線遮断器12とは、フォトカプラPCを介して接続される。
次に、故障検出装置1Aの動作について説明する。機能的に見ると、故障検出装置1Aのうち、コンパレータCA1、直流電源V3、抵抗素子R5、およびゲート制御用コンピュータ20が、IGBTQ1の故障を判定するための故障判定部2Aを構成する。故障判定部2Aは、ノードN1に対するダイオードD7のアノードの電位を監視する。そして、故障判定部2Aは、監視しているダイオードD7のアノード電位に基づいて、IGBTQ1の短絡故障を判定する。
故障判定部2Aの具体的な動作モードを、以下の(i)〜(iv)の4つの動作モードに分けて説明する。
(i)図2のノードP,N間に高電圧(たとえば、数百ボルト)が印加されている状態で、IGBTQ1が正常でオン状態にある場合。
この場合、ダイオードD7のアノードに接続されるコンパレータCA1の反転入力端子には、IGBTQ1のオン電圧とダイオードD7の順方向電圧との和(たとえば、1.2ボルト)が入力される。この結果、コンパレータCA1の反転入力端子の入力電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば0.8ボルト)よりも大きくなるので、コンパレータCA1の出力は、ローレベル(共通電位VN1)になる。すなわち、故障判定部2Aは、短絡故障が生じていないと判定している。
(ii)ノードP、N間に電圧が印加されている、いないにかかわらず、IGBTQ1またはフライホイールダイオードD1が短絡故障している場合。
この場合、IGBTQ1のコレクタの電位は、ほぼ0ボルトになるので、コンパレータCA1の反転入力端子には、ダイオードD7の順方向電圧(たとえば、0.6ボルト)が入力される。この結果、コンパレータCA1の反転入力端子の入力電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば0.8ボルト)よりも小さくなるので、コンパレータCA1の出力は、ハイレベル(抵抗素子R5を介してプルアップされた電位)になる。すなわち、故障判定部2Aは、短絡故障が生じている判定している。
(iii)ノードP、N間に高電圧(たとえば、数百ボルト)が印加されている状態で、IGBTQ1が正常でオフ状態で、フライホイールダイオードD1がオフ状態の場合。
この場合、高耐圧のダイオードD7によって、ノードP、N間の高電圧が阻止されるので、コンパレータCA1の反転入力端子には、直流電源V2の電圧(たとえば、5ボルト)が入力される。この結果、反転入力端子の入力電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば0.8ボルト)よりも大きくなるので、コンパレータCA1の出力は、ローレベル(共通電位VN1)になる。すなわち、故障判定部2Aは、短絡故障が生じていないと判定している。
(iv)ノードP、N間に高電圧(たとえば、数百ボルト)が印加されている状態で、IGBTQ1が正常でオフ状態で、フライホイールダイオードD1がオン状態の場合。
この場合、IGBTQ1のコレクタの電位は、フライホイールダイオードD1の順方向電圧の分だけ、共通電位VN1よりも負の電位になる。この結果、コンパレータCA1の反転入力端子の入力電圧は、ダイオードD7の順方向電圧からフライホイールダイオードD1の順方向電圧を減じた値(0ボルト未満)になる。したがって、反転入力端子の入力電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば、0.8ボルト)より小さくなるので、コンパレータCA1の出力は、ハイレベルになる。すなわち、故障検出回路3の検出結果だけでは、上記動作モード(ii)と同じく、短絡故障が生じていることになってしまう。
そこで、実施の形態1の故障検出装置1Aでは、上述の動作モード(iv)の場合に短絡故障と判定しないように、ゲート制御用コンピュータ20が、IGBTQ1に供給する制御信号の論理レベルを考慮して故障判定する。
図3は、図2のゲート制御用コンピュータ20における故障検出処理を示すフローチャートである。
図3を参照して、ステップS1で、コンピュータ20は、コンパレータCA1の出力がハイレベルになるまで、待ち状態にある。コンパレータCA1の出力がハイレベルになると(ステップS1でYES)、ステップS2に進む。
ステップS2で、コンピュータ20は、IGBTQ1のゲートに供給する制御信号がハイレベルか否かを判定する。上述の動作モード(iv)は、制御信号がローレベルであり、IGBTQ1がオフ状態のときに生じるものであるであるので、制御信号がローレベルの場合(ステップS2でNO)を除外する。
ステップS1およびS2が共にYESのとき、ステップS3に進む。ステップS3では、コンピュータ20は、IGBTQ1が短絡故障であると判定する。そして、コンピュータ20は、結線遮断器12を遮断する信号を出力して、故障検出処理が終了する。
以上を総括すると、実施の形態1の故障判定部2Aは、IGBTQ1の故障を検出するために、次の故障判定条件が成立するか否かを判定する。このときの故障判定条件は、ダイオードD7のアノードおよびIGBTQ1のエミッタ間の監視電圧が電源電圧V3よりも低く、かつ、IGBTQ1をオン状態にする制御信号がIGBTQ1に与えられていることである。
次に、具体的な電圧・電流波形を参照して、故障検出装置1Aの動作を説明する。
図4は、図2の各部の電圧・電流波形の一例を模式的に示すタイミング図である。図4で縦軸は、上から順に、IGBTQ1のゲート電圧、IGBTQ1のコレクタ電圧、ダイオードD7のアノード電圧、コンパレータCA1の出力電圧、IGBTQ1のコレクタ電流(主電流)、フライホイールダイオードD1の電流を示す。横軸は経過時間である。
図4を参照して、時刻t0〜t1、t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7、t8〜t11の区間(以下、オフ区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は0ボルトであり、IGBTQ1はオフ状態である。図4の場合、フライホイールダイオードD1は常時オフ状態であるので、IGBTQ1が正常の場合、オフ区間のコレクタ電圧は、600ボルトの高電圧になっている。この高電圧はダイオードD7によって阻止されるので、ダイオードD7のアノード電圧は、直流電源V2の電圧である5ボルトに等しい。
一方、時刻t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8、t11〜t12の区間(以下、オン区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は15ボルトであり、IGBTQ1はオン状態である。図4のオン区間でIGBTQ1が正常の場合、コレクタ電圧はIGBTQ1のオン電圧に等しい。したがって、ダイオードD7のアノード電圧は、IGBTQ1のオン電圧とダイオードD7の順方向電圧の和である約1.2〜2ボルトになる。また、図4のオン区間では、PWM制御によってIGBTQ1のコレクタ電流が徐々に上昇している。コレクタ電流の大きさは約10〜300アンペアである。
オフ区間の時刻t8〜t11の途中の時刻t9で、IGBTQ1が短絡故障する。この結果、IGBTQ1のコレクタ電圧は0ボルトまで次第に低下し、ダイオードD7のアノード電圧は、順方向電圧(0.6ボルト)まで次第に低下する。同時に、コレクタ電流(短絡電流)が発生する。短絡電流は最大で数千アンペアに達する。
時刻t10で、ダイオードD7のアノード電圧が基準電圧である電源電圧V3(0.8ボルト)より低くなると、コンパレータCA1の出力電圧がローレベル(0ボルト)からハイレベル(5ボルト)に切換わる。
時刻t11で、ゲート制御用コンピュータ20がIGBTQ1をオフ状態からオン状態に切換える制御信号を出力する。この時点で、ゲート制御用コンピュータ20は、コンパレータCA1の出力電圧がハイレベルであることを検出して、結線遮断器12を遮断する信号を出力する。最終的に、IGBTQ1のコレクタ電流は遮断されて0アンペアになる。
上述のように、実施の形態1の故障検出装置1Aによれば、ダイオードD7を介して、IGBTQ1のコレクタ・エミッタ間の電圧をモニターする。このとき、IGBTQ1がオフ状態のときにコレクタ・エミッタ間に印加される高電圧は、高耐圧のダイオードD7によって阻止される。したがって、コンパレータCA1を用いた簡単な方法で、IGBTQ1のコレクタ・エミッタ間の電圧を監視することが可能になる。
また、故障検出装置1Aは、ダイオードD7のアノード電圧が基準電圧(V3)より低いという条件と、ゲートの制御信号の論理レベルがハイレベルであるという条件を組合わせて、IGBTQ1の故障を判定する。したがって、フライホイールダイオードD1がオン状態であるために、IGBTQ1のコレクタ・エミッタ間電圧が低電圧になっている正常な場合と区別して、IGBTQ1の短絡判定が可能である。
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2の故障検出装置1Bの構成を示す回路図である。図5の故障検出装置1Bは、実施の形態1の故障検出装置1Aを変形したものであり、IGBTQ1が短絡故障したことを検出する。図5の回路図において、電位の基準となる共通電位VN1は、IGBTQ1のエミッタ(ノードN1)の電位である。なお、IGBTQ1〜Q6にそれぞれ対応して、同一構成のゲート駆動回路および故障検出装置が設けられているので、以下では、IGBTQ1に設けられるゲート駆動回路GD1Bおよび故障検出装置1Bを代表として説明する。
図5を参照して、ゲート駆動回路GD1Bは、故障検出装置1Bとドライブ回路UAとを含む。ここで、故障検出装置1Bは、高耐圧のダイオードD7と、抵抗素子R4と、直流電源V2と、故障判定部2Bとを含む。そして、故障判定部2Bは、オープンコレクタ出力のコンパレータCA1,CA2と、直流電源V3,V4と、抵抗素子R5とを含む。また、ドライブ回路UAは、実施の形態1と同様のものであり、電源電圧VCC2(たとえば、15ボルト)で動作する。
図5の故障検出装置1Bにおいて、ダイオードD7のカソードは、IGBTQ1のコレクタに接続される。ダイオードD7のアノードは、抵抗素子R4の一端、コンパレータCA1の反転入力端子、コンパレータCA2の非反転入力端子に接続される。
直流電源V2は、抵抗素子R4の他端とノードN1との間に接続される。また、直流電源V3は、コンパレータCA1の非反転入力端子とノードN1との間に接続される。直流電源V4は、コンパレータCA2の反転入力端子とノードN1との間に接続される。直流電源V3,V4は、ダイオードD7のアノードの電位と比較するための基準電位である。
ここで、直流電源V2の電圧は、インバータ回路11のノードP,N間に印加される数百ボルトの電圧より十分小さく、たとえば5ボルトに設定される。また、直流電源V3の電圧は、IGBTQ1のオン電圧とダイオードD7の順方向電圧との和より低く、かつ、ダイオードD7の順方向電圧より高い電圧に設定される。たとえば、IGBTQ1のオン電圧を0.6ボルト、ダイオードD7の順方向電圧を0.6ボルトとすると、直流電源V3の電圧は、0.6から1.2ボルトの間の値、たとえば0.8ボルトに設定される。また、直流電源V4の電圧は、ダイオードD7の順方向電圧からフライホイールダイオードD1の順方向電圧を減じた値より高く、かつ、ダイオードD7の順方向電圧よりも低い値に設定される。たとえば、直流電源V4の代わりに、コンパレータCA2の反転入力端子をノードN1に接続して、反転入力端子の電圧を0ボルトに設定する。なお、入力電圧が0ボルト付近であることを考慮して、コンパレータCA1,CA2に接続される負側の電源ノードVEEの電位は、基準となるノードN1の電位VN1よりも低電位に設定される。また、コンパレータCA1,CA2に供給される正側の電源電圧VCC1は、たとえば、5ボルトである。
コンパレータCA1およびCA2の出力端子は、抵抗素子R5を介して電源ノードVCC1に接続される。コンパレータCA1およびCA2は、ウィンドウコンパレータを構成する。したがって、ダイオードD7のアノードの電圧が、直流電源V4の電圧より大きく、かつ、直流電源V3の電圧より小さいときに、コンパレータCA1およびCA2の出力端子の電圧は、抵抗素子R5を介してプルアップされたハイレベルの電圧になる。
コンパレータCA1およびCA2の出力端子は、さらに、フォトカプラPCを介して結線遮断器12に接続される。コンパレータCA1およびCA2の出力端子の電位がハイレベルになるとき、結線遮断器12が遮断される。
次に、故障検出装置1Bの動作について説明する。故障検出装置1Bは、コンパレータCA2および直流電源V4をさらに含む点で、図2の故障検出装置1Aと異なる。これによって、ゲート制御用コンピュータ20を用いなくても、フライホイールダイオードD1がオン状態の場合にIGBTQ1の故障判定ができるようにしたものである。
故障判定部2Bの具体的な動作モードを、以下の(i)〜(iv)の4つの動作モードに分けて説明する。
(i)図5のノードP,N間に高電圧(たとえば、数百ボルト)が印加されている状態で、IGBTQ1が正常でオン状態にある場合。
この場合、ダイオードD7のアノードの電圧は、IGBTQ1のオン電圧とダイオードD7の順方向電圧の和(たとえば、1.2ボルト)になる。コンパレータCA1の反転入力端子の電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば0.8ボルト)よりも大きくなるので、コンパレータCA1の出力は、ローレベル(共通電位VN1)になる。一方、コンパレータCA2の非反転入力端子の電圧は、電源電圧V4の電圧(たとえば、0ボルト)よりも大きくなるので、コンパレータCA2の出力はオープンになる。したがって、ワイアードANDによるコンパレータCA1およびCA2の出力電圧はローレベルになる。すなわち、故障判定部2Aは、短絡故障が生じていないと判定している。
(ii)ノードP、N間に電圧が印加されている、いないにかかわらず、IGBTQ1またはフライホイールダイオードD1が短絡故障している場合。
この場合、IGBTQ1のコレクタの電位はほぼ0ボルトになるので、ダイオードD7のアノードの電圧は、ダイオードD7の順方向電圧(たとえば、0.6ボルト)に等しい。コンパレータCA1の反転入力端子の電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば0.8ボルト)よりも小さくなるので、コンパレータCA1の出力はオープンになる。また、コンパレータCA2の非反転入力端子の電圧は、電源電圧V4の電圧(たとえば、0ボルト)よりも大きくなるので、コンパレータCA2の出力もオープンになる。この結果、ワイアードANDによるコンパレータCA1およびCA2の出力端子の電圧は、ハイレベル(抵抗素子R5を介してプルアップされた電圧)になる。すなわち、故障判定部2Aは、短絡故障が生じている判定している。
(iii)ノードP、N間に高電圧(たとえば、数百ボルト)が印加されている状態で、IGBTQ1が正常かつオフ状態で、フライホイールダイオードD1がオフ状態の場合。
この場合、高耐圧のダイオードD7によって、ノードP、N間の高電圧が阻止されるので、ダイオードD7のアノードの電圧は、直流電源V2の電圧(たとえば5ボルト)に等しい。コンパレータCA1の反転入力端子の電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば0.8ボルト)よりも大きくなるので、コンパレータCA1の出力はローレベル(共通電位VN1)になる。一方、コンパレータCA2の非反転入力端子の電圧は、電源電圧V4の電圧(たとえば0ボルト)よりも大きくなるので、コンパレータCA2の出力はオープンになる。この結果、ワイアードANDによるコンパレータCA1およびCA2の出力電圧はローレベルになる。すなわち、故障判定部2Aは、短絡故障が生じていないと判定している。
(iv)ノードP、N間に高電圧(たとえば、数百ボルト)が印加されている状態で、IGBTQ1が正常でオフ状態で、フライホイールダイオードD1がオン状態の場合。
この場合、IGBTQ1のコレクタの電位は、フライホイールダイオードD1の順方向電圧の分だけ、共通電位VN1よりも負の電位になる。この結果、ダイオードD7のアノードの電圧は、ダイオードD7の順方向電圧からフライホイールダイオードD1の順方向電圧を減じた値(0ボルト未満)になる。したがって、コンパレータCA1の反転入力端子の入力電圧は、直流電源V3の電圧(たとえば、0.8ボルト)より小さくなるので、コンパレータCA1の出力はオープンになる。一方、コンパレータCA2の非反転入力端子の電圧は、電源電圧V4の電圧(たとえば、0ボルト)よりも小さくなるのでローレベル(共通電位VN1)になる。この結果、ワイアードANDによるコンパレータCA1およびCA2の出力電圧はローレベルになる。すなわち、故障判定部2Aは、短絡故障が生じていないと判定している。
以上を総括すると、実施の形態2の故障判定部2Bは、ダイオードD7のアノードおよびIGBTQ1のエミッタ間の監視電圧が、電源電圧V3よりも低く、電源電圧V4よりも高いことを判定する。この結果、IGBTQ1およびフライホイールダイオードD1の少なくとも一方に短絡故障が生じたことが検出される。
図6は、図5の各部の電圧・電流波形の一例を模式的に示すタイミング図である。図6で縦軸は、上から順に、IGBTQ1のゲート電圧、IGBTQ1のコレクタ電圧、ダイオードD7のアノード電圧、コンパレータCA1の出力電圧、コンパレータCA2の出力電圧、IGBTQ1のコレクタ電流、フライホイールダイオードD1の電流を示す。ただし、コンパレータCA1,CA2の出力は、実際にはワイアードANDによる論理積が出力されるけれども、図6では説明の便宜のため分けて示している。横軸は経過時間である。
図6を参照して、時刻t0〜t1、t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7、t8〜t11の区間(以下、オフ区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は0ボルトであり、IGBTQ1はオフ状態である。一方、時刻t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8、t11〜t12の区間(以下、オン区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は15ボルトであり、IGBTQ1はオン状態である。
図6の場合、オン区間の時刻t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8では、PWM制御によってIGBTQ1のコレクタ電流が徐々に上昇している。IGBTQ1のコレクタ電流は約10〜300アンペアである。このとき、IGBTQ1のコレクタ電圧はオン電圧に等しいので、ダイオードD7のアノード電圧は約1.2〜2ボルトの値になる。
図6のオフ区間の時刻t0〜t1では、フライホイールダイオードD1がオフ状態である。このとき、IGBTQ1のコレクタ・エミッタ間に印加される600ボルトの高電圧はダイオードD7によって阻止されるので、ダイオードD7のアノード電圧は、直流電源V2の電圧値である5ボルトに等しい。
一方、オフ区間の時刻t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7、t8〜t11では、負荷に生じた誘導起電力によって、フライホイールダイオードD1に電流が流れている。このとき、IGBTQ1のコレクタの電位は、エミッタの電位よりもフライホイールダイオードD1の順方向電圧だけ低い電位になる。この結果、ダイオードD7のアノード電圧は、およぼ−2〜0ボルトの値になる。
以上により、時刻t0〜t8の区間では、ダイオードD7のアノード電圧は、基準電圧V4(0ボルト)と基準電圧V3(0.6ボルト)との間の値にはならない。
オフ区間の時刻t8〜t11の途中の時刻t9で、フライホイールダイオードD1が短絡故障する。この結果、フライホイールダイオードD1に短絡電流が流れる。IGBTQ1のコレクタ電圧は、時刻t8〜t9では負電圧であったけれども、フライホイールダイオードD1の短絡故障によって0ボルトに変化する。この結果、ダイオードD7のアノード電圧は、−2〜0ボルトから、最終的にダイオードD7の順方向電圧である0.6ボルトに変化する。
時刻t10で、ダイオードD7のアノード電圧が基準電圧V4(0ボルト)より大きくなり、コンパレータCA2の出力がローレベル(0ボルト)からハイレベル(5ボルト)に切換わる。この結果、コンパレータCA1,CA2の出力が両方ともハイレベルになって、短絡故障が検出される。
上述のように、実施の形態2の故障検出装置1Bによれば、実施の形態1と同様に、ダイオードD7を介してIGBTQ1のコレクタ・エミッタ間の電圧をモニターする。この結果、コンパレータCA1,CA2を用いた簡単な構成で、IGBTQ1の短絡故障を判定することができる。
また、故障検出装置1Bは、ダイオードD7のアノード電圧が基準電圧(V4)より大きく、基準電圧(V3)より小さいという判定条件で、IGBTQ1の故障を判定する。したがって、フライホイールダイオードD1がオン状態である正常な場合と区別して、IGBTQ1の故障判定を行なうことができる。また、コンパレータCA1,CA2を用いた故障判定であるので、制御用コンピュータ20を用いた実施の形態1の場合より、素早く故障判定を行なうことができる。
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の形態3の故障検出装置1Cの構成を示す回路図である。図7の故障検出装置1Cは、実施の形態2の故障検出装置1Bを変形したものであり、IGBTQ1が短絡故障したことを検出するものである。なお、IGBTQ1〜Q6にそれぞれ対応して、同一構成のゲート駆動回路および故障検出装置が設けられているので、以下では、IGBTQ1に設けられるゲート駆動回路GD1Cおよび故障検出装置1Cを代表として説明する。
図7を参照して、ゲート駆動回路GD1Cは、故障検出装置1Cおよびドライブ回路UAを含む。ここで、図7の故障検出装置1Cは、論理回路LA1をさらに含む点で、図5の故障検出装置1Bと異なる。その他の点については、図7の故障検出装置1Cは、図5の故障検出装置1Bと共通するので、共通する点について説明を繰り返さない。また、ドライブ回路UAは、実施の形態1,2と同様のものであり、電源電圧VCC2(たとえば、15ボルト)で動作する。
図7を参照して、論理回路LA1は、2つの入力信号の論理積を出力するAND回路である。論理回路LA1の一方の入力端子は、コンパレータCA1,CA2の出力端子と接続される。また、論理回路LA1の他方の入力端子は、IGBTQ1の制御信号の入力ノードS1と接続される。論理回路LA1の出力端子はフォトカプラPCに接続される。したがって、論理回路LA1は、コンパレータCA1,CA2の出力信号がハイレベルであり、かつ、IGBTQ1の制御信号がハイレベルのときに、ハイレベルの出力信号を出力する。このとき、故障判定部2Cは、IGBTQ1が短絡故障したと判定することになる。そして、故障判定部2Cは、フォトカプラPCを介して接続された結線遮断器12を遮断する。なお、論理回路LA1は、電源電圧VCC1(たとえば、5ボルト)で動作する。
IGBTQ1のオン電圧は、コレクタ電流によって変動し、また、温度によっても変動する。したがって、短絡故障を判定するための閾値である電源電圧V3の電圧値の設定が難しい。そこで、図7の故障検出装置1Cでは、コンパレータCA1,CA2の出力と、IGBTQ1の制御信号との論理積をとることにより、より高い精度でIGBTQ1の短絡故障を検出することを可能にする。
図8は、図7の各部の電圧・電流波形の一例を模式的に示すタイミング図である。図8で縦軸は、上から順に、IGBTQ1のゲート電圧、IGBTQ1のコレクタ電圧、ダイオードD7のアノード電圧、コンパレータCA1の出力電圧、コンパレータCA2の出力電圧、論理回路LA1の出力電圧、IGBTQ1のコレクタ電流、フライホイールダイオードD1の電流を示す。ただし、コンパレータCA1,CA2の出力は、実際にはワイアードANDによる論理積が出力されるけれども、図8では説明の便宜のため分けて示している。横軸は経過時間である。
図8を参照して、時刻t0〜t1、t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7、t8〜t11の区間(以下、オフ区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は0ボルトであり、IGBTQ1はオフ状態である。図8の場合、フライホイールダイオードD1は常時オフ状態であるので、IGBTQ1が正常の場合、オフ区間のコレクタ電圧は、600ボルトの高電圧になっている。この高電圧はダイオードD7によって阻止されるので、ダイオードD7のアノード電圧は、直流電源V2の電圧である5ボルトに等しい。
一方、時刻t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8、t11〜t12の区間(以下、オン区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は15ボルトであり、IGBTQ1はオン状態である。図8のオン区間でIGBTQ1が正常の場合、コレクタ電圧はIGBTQ1のオン電圧に等しい。したがって、ダイオードD7のアノード電圧は、IGBTQ1のオン電圧とダイオードD7の順方向電圧の和である約1.2〜2ボルトになる。また、図8のオン区間では、PWM制御によってIGBTQ1のコレクタ電流が徐々に上昇している。コレクタ電流の大きさは約10〜300アンペアである。
以上によって、時刻t0〜t8では、ダイオードD7のアノード電圧は、基準電圧V4(0ボルト)と基準電圧V3(0.6ボルト)の間の値にはならないことがわかる。したがって、時刻t0〜t8では、コンパレータCA1の出力は、ローレベル(0ボルト)になり、コンパレータCA2の出力は、ハイレベル(5ボルト)になる。
オフ区間の時刻t8〜t11の途中の時刻t9で、IGBTQ1が短絡故障する。この結果、IGBTQ1のコレクタ電圧は0ボルトまで次第に低下し、ダイオードD7のアノード電圧は、順方向電圧(0.6ボルト)まで次第に低下する。同時に、コレクタ電流(短絡電流)が発生する。短絡電流は最大で数千アンペアに達する。
時刻t10で、ダイオードD7のアノード電圧が基準電圧である電源電圧V3(0.8ボルト)より小さくなると、コンパレータCA1の出力電圧がローレベル(0ボルト)からハイレベル(5ボルト)に切換わる。この結果、コンパレータCA1の出力とコンパレータCA2の出力の論理積はハイレベルになる。
時刻t11で、ゲート制御用コンピュータ20がIGBTQ1をオフ状態からオン状態に切換えるハイレベルの制御信号を出力して、IGBTQ1のゲート電圧が15ボルトになる。この結果、論理回路LA1は、時刻t11にハイレベルに切換わる。論理回路LA1のハイレベルの出力を受けた結線遮断器12は、負荷への電流を遮断するので、最終的に、IGBTQ1のコレクタ電流は0アンペアになる。
上述のように、実施の形態3の故障検出装置1Cによれば、論理回路LA1を用いてコンパレータCA1,CA2の出力と、IGBTQ1の制御信号との論理積をとるので、実施の形態2の効果に加えて、より精度の高いIGBTQ1の短絡故障の検出が可能になる。また、実施の形態1と異なり、ゲート制御用コンピュータ20を用いずに論理回路LA1によって論理演算を行なっているので、実施の形態1に比べてより高速な故障検出が可能になる。
[実施の形態4]
実施の形態4では、電力用素子が寿命劣化したことを検出する故障検出装置について説明する。
一般に、パワーモジュールに用いられる電力用素子は、ハンダ接合される場合が多い。ハンダ接合部はパワーモジュールの経年使用によって劣化するので、同一の通電電流に対して電力用素子のオン電圧が増加する。さらに、電力用素子を電気的に接続している金属線も経年使用によって劣化するので、同様に、同一の通電電流に対するオン電圧が増加する原因となる。実施の形態4の故障検出装置1Dは、同一の通電電流に対するオン電圧の増加を検出することによって、電力用素子の寿命劣化を判定するものである。故障検出装置1Dは、単独で使用することもできるし、実施の形態1〜3の故障検出装置1A,1B,1Cと併用することもできる。
図9は、本発明の実施の形態4の故障検出装置1Dの構成を示すブロック図である。図9のブロック図において、電位の基準となる共通電位VN1は、IGBTQ1のエミッタ(ノードN1)の電位である。なお、IGBTQ1〜Q6にそれぞれ対応して、同一構成のゲート駆動回路および故障検出装置が設けられているので、以下では、IGBTQ1に設けられるゲート駆動回路GD1Dおよび故障検出装置1Dを代表として説明する。
図9を参照して、ゲート駆動回路GD1Dは、ドライブ回路UAと、抵抗素子R7を除く故障検出装置1Dの各構成要素を含む。ここで、ドライブ回路UAは、実施の形態1〜3と同様のものであり、電源電圧VCC2(たとえば、15ボルト)で動作する。
故障検出装置1Dは、高耐圧のダイオードD7と、抵抗素子R4と、直流電源V2と、劣化判定部2Dとを含む。さらに、劣化判定部2Dは、オープンコレクタ出力のコンパレータCA3,CA4と、論理回路LA2と、直流電源V5,V6と、1ショットパルス発生回路24と、サンプル・ホールド回路26と、素子寿命アラーム28と、抵抗素子R6,R7,R9とを含む。抵抗素子R6,R9は、それぞれ、コンパレータCA3,CA4の出力端子に接続されるプルアップ抵抗として用いられる。抵抗素子R6,R9の一端は電源ノードVCC1(たとえば、5ボルト)に接続される。なお、コンパレータCA3,CA4および論理回路LA2は電源電圧VCC1で動作する。
図9において、ダイオードD7、抵抗素子R4、および直流電源V2の接続は、実施の形態1〜3と同様である。すなわち、ダイオードD7のカソードはIGBTQ1のコレクタに接続され、ダイオードD7のアノードには抵抗素子R4の一端が接続される。抵抗素子の他端には、直流電源V2によって、ノードN1に対して正の電圧が印加される。
コレクタ電流を計測するために、実施の形態4で用いられるIGBTQ1〜Q6には、電流検出電極付きIGBT(以下、センスIGBTと称する)が用いられる。センスIGBTは、コレクタ電流(主電流)に応じて検出電流が流れる電流検出電極(センス電極)を有する。センス電極とエミッタ電極との間には検出抵抗が設けられ、検出抵抗の両端に生じる電圧が検出される。図9では、IGBTQ1のセンス電極とノードN1との間に抵抗素子R7が設けられ、IGBTQ2のセンス電極と低圧ノードNとの間に抵抗素子R8が設けられる。
前述のように、実施の形態4の故障検出装置1Dは、同一の通電電流の下で電力用素子のオン電圧の増加を検出する。電力用素子のオン電圧は温度に依存するので、正確な劣化判定のためにはオン電圧の温度依存性を考慮する必要がある。
図10は、IGBTの電流電圧特性の温度依存性を示すグラフである。図10で横軸はコレクタ・エミッタ間電圧を示し、縦軸はコレクタ電流を示す。
図10を参照して、異なる温度に対するIGBTの電流・電圧特性曲線には、クロスポイントCPが存在する。このとき、クロスポイントCPにおける電流値IXより電流が小さい領域では、温度が増加するにつれてオン電圧が減少する。すなわち、オン電圧は負の温度依存性を有する。一方、電流値IXより電流が大きい領域では、温度が増加するにつれてオン電圧が増加する。すなわち、オン電圧は正の温度依存性を有する。両領域の境界の電流値IXでは、オン電圧の温度依存性はほとんどない。そこで、オン電圧の温度依存性が負の領域と正の領域との境界の電流値IXを基準電流とし、基準電流IXでのオン電圧VXの経年変化を測定する。これによって、電力用素子の劣化判定における温度の影響を最小化することができる。
クロスポイントCPにおける電流値IXは、個々のIGBT素子によって異なるけれども、一般にはコレクタ電流の定格の0.8〜1.2倍になる。一方、IGBTは、コレクタ電流が最大で定格の1.5倍になるような条件で使用される。したがって、IGBTに最大値に近い電流が流れるときには、コレクタ電流が基準電流IXに到達するので、故障検出装置1Dによって寿命判定が行なわれることになる。一方、コレクタ電流が基準電流IXに到達しない場合には、故障検出装置1Dによって寿命判定が行なえないことになる。しかし、この場合には、IGBTの発熱も小さいので、IGBTが短絡故障に陥る可能性も小さいと考えられる。
再び図9を参照して、コンパレータCA4は、コレクタ電流と前述の基準電流IXとの一致を検出するために設けられる。コンパレータCA4の非反転入力端子には、センスIGBTQ1のセンス電極が接続され、抵抗素子R7の両端に生じる電圧が入力される。コンパレータCA4の反転入力端子には直流電源V6が接続される。センスIGBTQ1のコレクタ電流が基準電流IXを超えるときに、コンパレータCA4がハイレベルの信号を出力するように、直流電源V6の電圧値は、基準電流IXの大きさに基づいて設定される。
論理回路LA2は、IGBTQ1の制御信号とコンパレータCA4の出力信号の論理積を出力する。1ショットパルス発生回路24は、論理回路LA2の出力の立上がりエッジをトリガとして、1ショットパルスをサンプル・ホールド回路26に出力する。
図11は、図9のサンプル・ホールド回路26の構成の一例を示すブロック図である。
図11を参照して、サンプル・ホールド回路26は、オペアンプ34,36と、スイッチSW1,SW2と、電圧保持用のコンデンサC2を含む。オペアンプ34,36は、出力端子と反転入力端子が直結されることによって、電圧フォロアとして用いられる。サンプル・ホールド回路26の入力端子30と出力端子32との間には、オペアンプ34、スイッチSW1、およびオペアンプ36がこの順で直列に接続される。オペアンプ36の非反転入力端子とノードN1との間にコンデンサC2およびスイッチSW2が互いに並列に接続される。
1ショットパルス発生回路24がハイレベルの信号を出力している間、スイッチSW1が閉じて、コンデンサC2に入力端子30の電圧が充電される。コンデンサC2に充電された電圧は、出力端子32から出力される。1ショットパルス発生回路24がハイレベルの信号を出力してから一定時間経過後、遅延回路38を介して1ショットパルス発生回路24に接続されたスイッチSW2が閉じる。この結果、コンデンサC2に充電された電圧は、スイッチSW2を介して放電される。
再び図9を参照して、故障検出装置1Dにおけるサンプル・ホールド回路26は、1ショットパルス発生回路24の出力がハイレベルのときに、ダイオードD7のアノード電圧を保持する。保持されたアノード電圧は、コンパレータCA3の非反転入力端子に出力される。
コンパレータCA3の反転入力端子には直流電源V5が接続される。コンパレータCA3は、ダイオードD7のアノード電圧が直流電源V5の電圧値を超えたとき、ハイレベルの信号を出力する。この結果、素子寿命アラーム28は、IGBTQ1が寿命劣化したことを報知する。
ここで、直流電源V5の電圧値は、たとえば、IGBTQ1が新品のときの基準電流IXに対応するオン電圧の1.2倍程度に設定される。寿命末期の電力用素子はオン電圧が新品のときより増加するので、基準電流IXに対するオン電圧が予め定める基準電圧V5を超えた時点で、電力用素子は寿命と判定される。
図12は、図9の各部の電圧・電流波形の一例を模式的に示すタイミング図である。図12で縦軸は、上から順に、IGBTQ1のゲート電圧、IGBTQ1のコレクタ電圧、ダイオードD7のアノード電圧、サンプル・ホールド回路26の出力電圧、コンパレータCA4の出力電圧、論理回路LA2の出力電圧、IGBTQ1のコレクタ電流、フライホイールダイオードD1の電流を示す。横軸は経過時間である。
図12を参照して、時刻t0〜t1、t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7、t8〜t9の区間(以下、オフ区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は0ボルトであり、IGBTQ1はオフ状態である。図12の場合、フライホイールダイオードD1は常時オフ状態であるので、IGBTQ1が正常の場合、オフ区間のコレクタ電圧は、600ボルトの高電圧になっている。この高電圧はダイオードD7によって阻止されるので、ダイオードD7のアノード電圧は、直流電源V2の電圧である5ボルトに等しい。
一方、時刻t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8、t9〜t11の区間(以下、オン区間と称する。)では、IGBTQ1のゲート電圧は15ボルトであり、IGBTQ1はオン状態である。オン区間では、ダイオードD7のアノード電圧は、IGBTQ1のオン電圧とダイオードD7の順方向電圧との和になる。
また、オン区間では、PWM制御によってIGBTQ1のコレクタ電流が徐々に上昇している。そして、時刻t9〜t11の区間の途中の時刻t10で、コレクタ電流の大きさは基準電流IXに到達する。このとき、コンパレータCA4の出力および論理回路LA2の出力がハイレベル(たとえば、5ボルト)になる。この結果、サンプル・ホールド回路26は、時刻t10におけるダイオードD7のアノード電圧を保持する。
ここで、IGBTQ1が新品の場合、基準電流IXに対応するダイオードD7のアノード電圧はVD1(たとえば1.2〜2ボルト)であり、IGBTQ1が寿命末期の場合、ダイオードD7のアノード電圧は、VD1より大きいVD2(たとえば2.8ボルト)であるとする。このとき、直流電源V5がVD1とVD2の間の値(たとえば、2.5ボルト)に設定されていると、時刻t10でコンパレータCA3の出力がハイレベルになって、IGBTQ1の寿命劣化が判定される。
上述のように、実施の形態4の故障検出装置1Dによれば、クロスポイントCPにおける電流値を基準にしてオン電圧の経年変化を検出するので、温度の影響を最小化した条件で電力用素子の寿命劣化の判定ができる。パワーモジュールに用いられる電力用素子の寿命が判明すると、パワーモジュールが寿命限界で破壊する以前に交換シグナルを出すことができ、パワーモジュールの破壊を未然に防ぐことができる。
上述の実施の形態1〜4では、インバータ回路11のIGBTQ1の故障検出装置1Aについて説明したが、IGBTQ2〜Q6の故障判定装置についても、共通電位の設定方法を除いて、同様の構成を用いることによって、同様の作用効果が得られる。ここで、IGBTQ3、IGBTQ5用の故障検出装置では、図2の共通電位VN1の代わりに、それぞれノードN2、N3の電位が共通電位として用いられる。また、IGBTQ2、IGBTQ4、およびIGBTQ6の故障検出装置については、図2の共通電位VN1の代わりに、接地ノードGNDの電位が共通電位として用いられる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。