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JP4947566B2 - 藻場造成方法 - Google Patents
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JP4947566B2 - 藻場造成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚介類の繁殖をもたらし、海中環境の改善に大きく寄与する海藻類を中心とした藻場(海中林ともいう。)の造成技術に係り、より詳しくは、永続性のある藻場を簡便な手段で高い成功率をもって形成することが可能な藻場造成技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、我国においては沿岸漁業の振興が重要な課題であり、魚介類、海藻類の増殖および養殖が図られている。しかるに、沿岸部では種々の原因によって藻場が消滅し、藻場を生活の場としている魚介類が激減する、いわゆる「磯焼け」と呼ばれる現象が各地に拡大し、その早急な対策が求められている。
【0003】
海藻類は、一般に比較的浅い海底の岩石表面に着生し、そこで繁殖する。ところが、磯焼け海域では遊走子の供給源となる母藻群が近くに存在せず、しかも着生床となる岩石表面が石灰藻で覆われている場合が多いこと等により、環境的に海藻がきわめて着生し難い状況になっている。また、砂泥質の海域では海藻の生育は元々困難である。したがって、このような磯焼け海域での藻場の再生や砂泥海域での藻場造りにおいては、外部からの海藻の導入を図ることが重要である。
【0004】
従来、藻場の造成方法としては、海藻の生育基盤として機能し得る種々の工夫を施したコンクリートブロックなどの構造体(本明細書において、「造成用構造物」という。)を設置し、その構造体表面に海藻が自然着生するのを待って造成する方法が一般的である。しかしながら、これら従来方法では、遊走子を介した自然着生に依存するため、特に重要な造成初期における海藻の着生状態が不確定な自然的要素によって大きく左右されるばかりか、藻場造成に時間がかかるといった造成効率や確実性の点において根本的な問題があり、それら造成用構造物が有効に活用されない事例が多かった。
【0005】
そこで、ワカメ養殖などで行われている種苗糸を利用し、予め海藻幼体を着生させた細い撚糸をコンクリートブロック等の造成用構造物に巻き付けて海中に沈設することにより、種苗糸から造成用構造物の表面に定着させ、そこで成熟した海藻から放出される遊走子を介して繁茂状態を実現しようとする試みがなされている。しかしながら、この従来方法は、造成用構造物に対する前記種苗糸の固定作業が難しいばかりでなく、その取付後の状態が不安定であり、しかも海中に設置済みの造成用構造物に対して適用することはほとんど不可能であった。また、取付後においても、造成用構造物に対する種苗糸の固定状態に少しでも問題があると、細い糸状で形状的に不安定な種苗糸は、その問題個所から固定状態の悪化が拡大し、簡単に脱落してしまうという欠点があった。特に、種苗糸自体の強度がほとんどないから、海藻種苗をごく小さな幼体の段階で取り扱わなければならないという制約がある。このため、造成用構造物表面への着生が確実ではなく、その後の生育が順調でないことも多いなど、造成の成功率が低いものであった。したがって、種苗糸をそのまま適用する上記方法には多くの問題があり、海藻種苗の移植手段としては実用化が進んでいないのが実情である。このような背景から、沿岸には海藻の生育基盤として活用されていない造成用構造物が多く存在しており、近年では成功率の高い藻場造成技術に対する要望が高まっている。
【0006】
そこで、本出願人は移植用海藻の取扱いと造成用構造物の形状を併せて検討した結果、合成樹脂等の適度な弾性素材からなるリング状の定着体に、海藻種苗を担持させた海藻種苗付きのリングを予め用意し、これを造成用柱状構造物の柱体部分に取り付けることにより、当該場所への移植用海藻の着生を確実なものとするとともに良好な生育環境を確保し、これら定着した海藻種苗を基点として藻場造成を行う技術を既に提案している(特開平10−136813号、特開2000−139267号参照)。この柱状構造物と海藻種苗付きリングの組合せによる藻場造成では、定着用のリングの採用により、造成用構造物に対する海藻種苗の取付作業が容易になり、しかもその後の取付状態も安定する利点がある。特に、それら移植用海藻が海中においてほぼ鉛直方向に配置される柱状部分に固定されることから、母藻となる海藻種苗の生育環境の面で従来方法よりも大幅に改善され、良好な成果が得られている。すなわち、造成用構造物の柱状部分に適宜数の海藻種苗担持具を取り付ける形で海中に移植用の海藻種苗を導入するこの方法では、造成時における海域単位面積当りの導入量を容易に増大することができ、しかも柱状部分に設置された海藻種苗に酸素や栄養分がよく行き渡り、また海藻の水深に対する生育条件も充足しやすく、食害や漂砂の影響を受け難いなど、藻場造成における中核構造物としてこれまでのものに比べて多くの利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように海藻の生育基盤となる造成用構造物の形状と移植用海藻種苗の固定手段などの構造体に関わる事項は、衰退した藻場の再生あるいは新たな場所での造成において、その成功率に大きな影響を与える重要な要素であるが、それとともに対象海域の海中環境の十分な把握も不可欠である。したがって、施工にあたっては、当該海域における物理的、化学的および生物的な環境要因に関する綿密な事前調査を各種の測定機器を用いて行うのが基本である。上記のデータ収集において、測定項目と測定個所は多いほど海中の環境特性を把握する上で有利であるが、それには高価な測定機器と高度な解析技術が必要であり、調査費用の増大に繋がるという大きな問題点があった。しかも、計画海域の適性判断は、上記のような環境因子に関する各種測定データに基づく予測であるから、対象とする海藻の生育を確認したことではない。したがって、実際に施工をした場合に予期せぬ要因により期待通りの成果が得られないことがあり、信頼性の点で必ずしも十分ではなかった。
【0008】
また、本出願人の上記提案技術に限らず、移植用海藻を用いるこれまでの藻場造成技術においては、施工時に導入する海藻種苗の採取地あるいはその生産場所と施工対象海域とは異なるのが通例である。したがって、海藻種苗に対する両者の生育環境は、その程度は別にして基本的には異なるものである。この生育環境の相違が、移植後の海藻種苗の定着率に影響を与えていることは否めない。
特に、成育途中の幼体種苗を適用する場合には、その影響が大きく現れる。そこで、外部から導入する海藻種苗を予め対象海域の海中環境に適応させる手段として、現地の養殖筏を利用して海中に吊り下げ、適宜の期間に渡り育成あるいは養生すること、また施工区域内やその近傍に養殖施設を設置して対応することが有効であると考えられる。しかしながら、海面に設けられた養殖筏での育成・養生作業は、気象上の影響が避けられないことから、荒天による海藻種苗の脱落や流失が生じやすく、しかも限られたスペースでそれを行うため海藻種苗同士が擦れ合って損傷しやすいなど、最適な状態に育成・養生された海藻種苗を必要なときに必要な量だけ用意できないという問題があり、それに加えて海藻種苗の管理の煩わしさもある。その他にも、海面利用の場合には船舶航行の問題があり、海中利用に比べて制限されることが多く、利用しにくいものである。このような状況から、十分な養生を行わずに施工することも多々あり、このことも藻場造成の成功率を低下させる要因の一つとなっていた。
【0009】
そこで本出願人は、藻場造成における計画海域の事前調査から造成用構造物の沈設等の施工に至る一連の作業について、鋭意検討を重ねた結果、本発明に想到したのである。すなわち本発明では、計画海域の適性を簡便かつ的確に判断するとともに、移植用の海藻種苗を簡便な手段で、適性と判断された計画海域(以下、単に「計画海域」と称することもある。)の海中環境に適合させ、これを母藻として活用することにより高い確率で造成用構造物等に海藻を繁茂させることができる藻場造成方法の提供を目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明による藻場造成方法は、浮体とアンカーとを接続する索条の長手方向に沿って所定の間隔で複数個所にほぼ同じ生育段階にある海藻種苗を取り付けてなる評価用海藻担持具を計画海域の海底に略鉛直状態で設置して、それら異なる水深に置かれた海藻種苗の生育状況の比較により藻場造成区域としての適性を確認した後、浮体とアンカーにより海中の所定位置に保持される索条に対して、前記評価用海藻担持具の観察結果に基づき種類を選定した複数の海藻種苗を取り付けてなる移植用海藻担持具を、適性が確認された前記計画海域あるいは前記計画海域に海中環境が類似する他の区域の海中において、それら海藻種苗の育成または養生を行うことによって該海藻種苗が前記計画海域の海中環境に適合できる状態とし、適宜の造成用構造物とともに適性が確認された前記計画海域に設置することにより、前記移植用海藻担持具に取り付けられた海藻種苗を母藻として周囲に海藻を繁茂させることを特徴としている。
【0011】
本発明で使用する評価用海藻担持具とは、計画海域の水深等に応じて選択した適宜長さの索条に、予め選択した種類のほぼ同じ生育段階にある海藻を、長手方向の全部もしくは一部に一定の間隔で複数個所に取り付け、端部にアンカーと浮体を接続したものである。かかる構成により、索条上の各海藻は、それぞれが置かれた水深の海中環境に即して生育することになるから、適宜の期間が経過すると、当初は同じ大きさであった海藻が同じ索条上にあっても置かれた水深により生育状態に差が生じ、藻体長の差や消失などの現象として、海中環境の違いが目視可能な形で現れる。したがって、評価用海藻担持具を随時引き上げたり、あるいは海中に潜るなどして索条上に置かれた海藻の個々の生育状況を適宜の期間にわたり観察し、それらの生育状況の変化を比較すれば、高価な測定機器を使用することなく対象海域の各水深における海中環境を的確に判断することができる。
【0012】
上記評価用海藻担持具において、索条上の各海藻間の間隔は、海藻の種類、試験開始時に使用する海藻の生育段階および試験期間等によっても異なるが、基本的には上方の海藻が下方の海藻に対して影を形成しない程度以上に予め開けておくことが望ましい。さらに、それぞれの海藻種の生育に適した水深範囲があることも考慮すると、一般的には1〜5m程度の間隔が好ましい。透明度の高い場所では、水深に対する光環境の変化が小さいので、海藻間の間隔を広げて評価用海藻担持具に取り付ける検体数を少なくすることが可能であり、藻場造成を計画している海域の状況に応じて適宜その間隔を選定すればよい。また、計画海域の面積やその地形等にもよるが、同じ海藻種を用いた評価用海藻担持具を計画海域の所々に設置し、複数個所での生育状況の変化を比較することが望ましく、この場合には適性判断の信頼性が一段と高まり、藻場造成の成功率の向上につながる。
【0013】
なお、上記評価用海藻担持具における海藻は、各取付個所に一個体ではなく複数個体を取り付けてもよく、この場合にはその分だけ検体数が増加するので、適性判断の精度が高まる。また、索条を設置場所の水深に合わせた長さとして浮体が海面上に出るようにすれば、海藻の生育状況を調査する際の設置場所を示す目印として浮体を利用することもできるが、浮体はむしろ海中にあったほうが好ましい。すなわち本発明では、設置場所の各水深における海中環境について、それぞれの位置に置かれた海藻の生育状況の変化に基づき把握するものであるから、海中に留置される索条はできるだけ鉛直状態とし、そこに取り付けられている各海藻の深度ができるだけ変動しないように保持することが望ましい。このような理由から、浮体の位置については波浪の影響を受け難い海面下の適宜位置に止めるのが好適である。さらに、設置場所の水深に近い長さの索条を使用すれば、海面近くの浅い水深から海底に近い深い水深の範囲内で自由に設定することが可能である。そして、この評価用海藻担持具の観察結果に基づき、移植する海藻の種類とその生育段階、海藻の生育基盤となる造成用構造物の形状や寸法その他施工条件などを策定し、その造成計画に合わせて所要数の移植用海藻担持具を用意する。
【0014】
次に、移植用海藻担持具は、基本的には上記評価用海藻担持具と同様な構成であって、評価用海藻担持具による適性試験結果に基づき計画海域に適合する海藻種として選択された海藻種苗を索条上に適宜の間隔で取り付けたものである。これら移植用海藻担持具は、適性が確認された計画海域、あるいはその周辺区域などの海中環境が対象区域に近い他の海域の海中に設置した後、索条上にある海藻種苗の生育状態を確認しながら、適宜の期間に渡りその育成または養生を行うことにより、計画海域の海中環境に適合できる状態とする。そして、育成または養生が済んだ段階で、それら海藻種苗を生育基盤としての造成用構造物の適宜位置に取り付けた状態で計画海域に沈設すると、そこで着生した海藻種苗は成熟して遊走子を放出し、次第に造成用構造物表面や周囲に海藻を繁茂させる。また、計画海域において海藻種苗の育成・養生を行った場合には、それが済んだ後も移植用海藻担持具をそのままの状態に留め置き、適宜の造成用構造物を移植用海藻担持具の近傍に設置することも可能である。この場合においても、移植用海藻担持具上で成熟した海藻種苗から遊走子が放出され、前記と同様に造成用構造物等に海藻が繁茂することになる。すなわち、計画海域あるいは海中環境が類似するその周辺区域等の海中を利用して事前に移植用海藻のさらなる育成または養生を行うことにより、移植用の海藻種苗は施工場所である計画海域の海中環境に十分に適合するようになる。しかも、育成・養生の過程で生育状態の良好な藻体を選別することができる。そして、最適な生育状態の海藻種苗を適宜の造成用構造物と組み合わせるので、それら造成用構造物が生育基盤として確実に活用され、造成用構造物表面で海藻が順調に生育する。これが藻場における中核構造物となり、永続性のある藻場を高い成功率で造成することができる。さらに、移植用海藻種苗の育成または養生は、海面を使用せずに計画海域等の海面下で行うから、船舶航行の妨げや気象上の影響を受け難くいという利点があり、造成に必要な海藻種苗を最適な状態で簡便かつ確実に用意することができる。しかも、造成用構造物の沈設場所付近で育成・養生を行った場合には、育成または養生が済んだ後にはいつでも利用が可能であるので、造成用構造物の沈設時期等の施工条件を選択する際の自由度が高く、造成用構造物と組み合わせる際の海藻種苗のダメージも少ない。
【0015】
また、かかる構成の移植用海藻担持具は、海中の流れに対して索条が揺動可能であり、そこに取り付けられた移植用の海藻種苗が実質的に浮遊状態で保持され藻体全体が大きく揺動するから、育成中あるいは養生中にウニやサザエ等の匍匐性動物が海藻種苗上に這い上がりにくく、それら生物による食害を受け難い状況になっている。しかも、藻体全体が浮遊状態にあるので、対象となる計画海域が流れの速い場所であっても海藻種苗の破断流出につながる局部的な力が葉状部分に集中しにくい。このため、移植用海藻種苗として幼体段階のものを選択する場合には好都合である。
【0016】
なお、適性が確認された計画海域等の海中での育成・養生により、施工場所の海中環境に適合した移植用の海藻種苗を造成用構造物に取り付けて藻場造成を行う場合、その取付形態としては、例えばアンカーのみを分離して各海藻種苗が索条上に取り付けられた状態のものを、索条の端部において造成用構造物の一部に固定したり、あるいは各海藻種苗を索条から外して個別に造成用構造物の適宜場所に固定してもよい。また、海藻種苗の取付時期は、移植用海藻担持具を台船上に引き上げて各海藻種苗を分離し、それらを造成用構造物の適宜場所に固定した後に造成用構造物を沈設したり、あるいは造成用構造物を海底の所定位置に設置した後にダイバーが海中で取付作業を行ってもよく、それら海藻種苗の取付形態や取付時期は特に限定されない。さらに、移植用の海藻種苗としては、養殖によるものに限らず天然に採取したものでもよく、異なる生育段階の種苗を組み合わせて使用することも可能である。
【0017】
また、本発明では、移植用海藻担持具のアンカーを砂袋とし、それを造成用構造物の沈設予定位置に設置して移植用海藻の育成または養生を行い、当該造成用構造物の沈設前に索条等を分離して砂袋を残置してもよい。この場合、残置した砂袋を造成用構造物の沈設位置の目印として利用することができ、沈設作業を効率よく行うことができる。特に、対象となる計画海域が砂地のような場所では、造成用構造物を砂袋の上に設置してもそれが容易に埋没するので、設置の邪魔になることはない。
【0018】
さらに、本発明では、移植用海藻担持具の海藻種苗が定着体と一体の養殖種苗であって、当該定着体を介して索条ならびに前記造成用構造物に取り付けるようにしてもよく、この場合においても施工性の向上につながる。この定着体は、移植用海藻種苗を造成用構造物に取り付ける際に、これを介在させることにより、その作業を簡便にするとともに海藻種苗を良好な状態で確実に所定の位置に固定できるようにしたものである。
【0019】
なお、評価用海藻担持具においてもこの定着体と一体になった海藻種苗を使用することは可能である。このように、海藻種苗を定着体と一体の状態で適用する場合には、海藻担持具の組立て作業において、海藻種苗の取扱いが容易になり、試験開始前の藻体に対するダメージが少なく、同じ状態にある海藻種苗を用いて試験が始められるという利点がある。この定着体を介しての索条に対する取付けは、特に幼体のような抵抗力の低い生育段階の海藻種苗を使用する場合に有効である。なお、本発明で使用する評価用の海藻種苗は、天然に採取したものまたは養殖種苗のいずれのものでもよく、試験開始時におけるその生育段階についても格別の限定はないが、同じ生育段階にある海藻を調達しやすいという点では養殖種苗が望ましい。また、索条への海藻の取付けは、沈設直前に海上で行うか、あるいは海藻担持具本体を設置後に海中に潜って行ってもよく、育成試験を開始する直前の段階で海藻がダメージをできるだけ受けない条件で行うことが望ましい。
【0020】
上記定着体としては、例えば本出願人が既に提案している柱状構造の造成用構造物を対象とする場合には、合成樹脂等の可撓性材料を用いて一個所が開放している略環状に形成し、その開放端部間を広げることにより当該柱状部に対して横方向からの取付が可能であるもの、同様な素材を略帯状に形成し、柱状部への取付時にその周面に沿わせて環状に湾曲して取り付けるもの、あるいは無端状の環として形成され、柱状部に対してはその上端部から挿入するものなどが好適である。そして、これらの定着体に移植用海藻種苗を一体化するには、次のような方法がある。
【0021】
例えば、一般にワカメ養殖などにおいて行われている方法を応用し、海藻遊走子が浮遊する水槽内にクレモナ(商品名)等の海藻遊走子の付着に適した種苗糸を浸漬してこれに海藻遊走子を付着させて発芽させた後、その種苗糸をそのままロープやホースなどの適度な太さを有する紐状体に螺旋巻きするなどして添着し、これを海中に水平に設置したり吊り下げるなどして、その紐状体に海藻幼体の仮根が付着して移植に耐えうる程度の適宜大きさになるまで育成する。そして長尺の紐状体を定着体の大きさや形状などに応じて適宜の長さに切断し、定着体に添着すればよい。ここで、前記柱状構造の造成用構造物を対象とする場合、定着体に対する紐状体の固定は、例えば柱状部に取り付たときに外側となる定着体の面に複数の鉤状部を所定間隔で形成してその内部に嵌入したり、あるいは別途ファスナーを使用して定着体と紐状体とを結束するなどして両者を一体化することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明では、評価用海藻担持具を用いて計画域の適性評価を行い、その結果に基づいて適宜の移植用海藻担持具を適性が確認された計画海域あるいはその周辺区域等の海中環境の類似する場所に設置して移植用海藻を海中環境に馴らすとともに、その生育基盤となる造成用構造物を設置することにより、経済的にかつ高い成功率で藻場造成を実現できる。ここでは、評価用海藻担持具および移植用海藻担持具の索条に取り付けられた海藻種苗は、海中において揺動可能な状態で保持されるから、適性試験あるいは育成・養生を行っている間に藻体の葉状部分が食害や破断によって消失することが少なく有効に活用される。なお、索条としてはロープ等の紐状体が好適であるが、ホースのような中空体でもよく、その素材や形状に格別の限定はない。
【0023】
また、上記両海藻担持具において、索条に取り付ける海藻種苗は、発芽直後の幼体から成体となるまでのいずれの生育段階にある藻体でも適用することが可能であり、場合によっては藻体の前段階である胞子体等の海藻の前駆体であってもよい。この前駆体を使用する場合には、例えば陸上の水槽内で採苗糸に前駆体を付着させて種苗糸とし、この種苗糸を適宜長さに切断したものを、結束バンド等の適宜の固定手段を介して索条の所々に取り付けることができる。さらに、評価用あるいは移植用の海藻種苗として、前記種苗糸の状態で育成可能な大きさ以上のものを適用する場合には、前記種苗糸を太径のロープ等に添わせた状態でさらに生育し、この太径のロープ等に海藻が着生した状態のものを前記種苗糸と同様に所要の長さに切断し、当該ロープ等を介して索条に取り付けたり、あるいは前記のようなリング状等の定着体に添設し、この一体化した状態で当該定着体を介して索条に取り付けてもよい。
【0024】
本発明で用いる海藻の種類としては、適性評価用と移植用のものが同一あるいは異種のいずれでもよく、具体的には褐藻類、紅藻類、緑藻類などが挙げられる。基本的には、計画している藻場の中核となる海藻種が望ましいが、必ずしもこれに限定されない。その中でアラメ、カジメ、クロメ等のコンブ科海藻は、餌料的価値が高いことから、藻場造成用の海藻種として利用される機会が多く、本発明における移植用の海藻種として好適であり、また評価用にも使用することができる。それらコンブ科海藻の中でもツルアラメが特に好適である。すなわち、ツルアラメは他のコンブ科海藻に比べて水深に対する適応力が大きいことから、評価用の海藻種とした場合に一種の海藻で広い水深範囲の調査が可能であり、しかも試験開始時における藻体の取扱いが容易で、高水温に対する適応性にも優れ、他の海藻種よりも丈夫である。したがって、ツルアラメで試験を行い、その生育状態が芳しくない場合には、他のコンブ科海藻による藻場造成は難しいとの判断ができる。さらに、その成長が速く生育状況の確認がしやすいという利点がある。また、ツルアラメは葉状部を除去した匍匐根の状態での適用が可能であり、この場合に生育環境が適切であるなら、設置後に新たな芽が出現することから、藻体の葉状部について大きさの経時変化を見るよりは、観察がはるかに容易である。このような特性を有するツルアラメは、評価用に限らず移植用の海藻種としても優れている。なお、移植用の海藻種苗として海藻担持具に取り付ける際の大きさは、海藻の種類、施工時期、造成区域の環境等により異なるが、例えばコンブ科海藻の場合では、一般的に葉状部の長さとして10cm程度以上が望ましい。ここで用いる移植用海藻種苗は、もちろんコンブ科海藻に限定されるものではなく、魚介類の産卵場所としての役割に主眼を置く場合など、藻場造成の目的によってはホンダワラ等の他の海藻種でも広く適用が可能である。
【0025】
さらに、海藻の生育基盤となる造成用構造物に対して、海藻種苗担持具から供給される遊走子の付着を高め、その後の生育をより確かなものにするため、構造物表面に養藻塗料を塗布するのが望ましい。この場合の養藻塗料としては、一般の化成肥料を含む塗料でもよいが、その中でも本出願人の提案になる光合成細菌、多孔質粒子および当該光合成細菌の栄養成分からなる水域環境改善用塗料(特許第3175964号公報参照)が特に好適である。この塗料を塗布した場合には、海藻類の高い着生率を維持し、かつ海藻の生育に必要な栄養分を長期間にわたり安定的に供給することができる。
【0026】
【実施例】
以下、図面に基づき本発明の実施例について説明する。図1は、計画海域において、評価用海藻担持具による海藻種苗の育成試験中の状態を示す説明図である。図示の評価用海藻担持具1は、アンカー2、索条3、浮体4および海藻種苗5から構成されている。アンカー2は、コンクリートブロック等の適宜重量を有する構造物からなり、その上面に植設されたフック2aに索条としてのロープ3の一端側が接続されている。一方、ロープ3の他端側には適宜の浮力を有する浮体4が接続され、流れに対してロープ3が常に略鉛直状態に保持されるように設定されている。なお、この実施例では設置場所の水深よりも短い長さのロープ3が使用され、評価用海藻担持具1を設置したときに浮体4が海面下の所定位置に止まるようになっている。さらに、ロープ3には、その長手方向に沿って複数の海藻種苗5が一定の間隔で取り付けられている。これらの海藻種苗5は、育成試験の開始に際してほぼ同じ生育段階にあるものが使用されるが、それぞれが異なる水深に置かれ互いに生育環境が異なることから、育成試験の進行に伴い、藻体長の差や消失などの目視できる形で海中環境の違いを反映することになる。したがって、海藻担持具1に取り付けた各海藻種苗5の個々の生育状態を随時観察して比較することにより、当該場所における移植用海藻の適応性や最適水深範囲などの適性評価に必要なデータを得ることができる。そして、その検討結果に基づき生育基盤となる造成用構造物を設計し、移植用海藻の種類や設置位置などを決定する。なお、図1の例では、ロープ3の下部に取り付けられた海藻種苗の生育が悪く、ロープ3の上部が良好な生育状態を示している。したがって、この場合には良好な生育状態を示している水深が生育場所となるような寸法の造成用構造物を用いて藻場造成を行うようにすればよい。
【0027】
図2は、図1の評価用海藻担持具1において、海藻種苗5のロープ3に対する取付状態を示す拡大図である。ここで使用する海藻種苗5は、ワカメ養殖などにおいて広く行われている方法を応用した養殖種苗である。すなわち、海藻の生殖細胞(遊走子など)が浮遊する水槽内にクレモナ(商品名)等の海藻生殖細胞の付着に適した採苗糸を浸漬してこれに海藻生殖細胞を付着させて発芽させた後、藻体長が数cm程度の大きさになるまで育成した種苗糸5aを10〜20cm程度の長さに切断し、これをロープ3に添わせた状態で、その両端部分を電線等の結束に使用する結束バンド6により緊締している。
【0028】
表1は、海藻種としてコンブ目コンブ科のツルアラメを用いて適性調査を行う場合において、適用する海藻の試験開始時における生育段階と、各作業の最適実施時期および実施期間との関係を示した工程表である。この表に示すように、ツルアラメの場合には、採苗糸に付着した数mm程度の幼体から1年齢以上の成熟可能な藻体まで、各生長段階の藻体が適用可能であることに加え、葉状部を除いた匍匐根のみの状態でも育成試験に使用できる点に大きな特長がある。すなわち、葉状部が既に形成されている藻体では、その生長の度合いを観るには大きさの変化を測定し、匍匐根のみの状態で使用した場合には、新芽の出現の確認や藻体葉状部の生長状態を観ることによって簡単に判定することができる。しかも、傷みやすい葉状部が存在しないため、試験開始前の取扱いが容易であるという利点がある。
【0029】
【表1】
Figure 0004947566
【0030】
ところで、藻場造成において最も重要なことはその永続性であり、移植した海藻が長期に渡り繁茂状態を維持できるように計画する必要がある。このため、計画海域の適性調査では、特に消失しやすい夏季の高水温期(8〜9月)における適応性には十分に留意する必要がある。したがって、本発明における適性判断の基本的な考え方は、育成試験の基本条件として夏季の高水温期を経験させるとともに、越夏後の生長旺盛期(10〜翌3月)における生育状態を確認することが望ましい。表1は、このような観点から各生長段階のツルアラメについて、育成試験の最適開始時期、育成期間および評価期間を示している。因みに、ツルアラメの場合には、検体4あるいは検体5の状態にある藻体を対象とし、夏季高水温期(8〜9月)中から試験を始めて翌年の3月まで観察するのが短期間(約8か月間)で評価することができる方法である。しかも、生長段階がそれよりも前の検体1〜検体3を用いる場合に比べて藻体が傷みにくいので、海上での組立作業における取扱いの面でも有利であり、また1年を通して試験を開始できる利点もある。上記観察期間は、この試験方法における基本条件ではあるが、適性調査の期間を十分に確保できない場合には、夏季の高水温期の少し前から越夏後までの経過でも判断できないことはない。なお、ツルアラメ以外の多年生海藻類についても基本的な考え方はこれと同様である。また、季節に関係なく1年生海藻類については、検体1あるいは検体2に相当する生長状態のものを試験開始時に使用すればよい。
【0031】
図3は、評価用海藻担持具の異なる実施例の要部を示す部分断面図であって、図示の評価用海藻担持具10Aは、後述する移植用海藻担持具10とその基本構成が共通するものである。図4は、その主要構成部材の一つである定着体20の平面図である。この定着体20は、適度な弾性を有する合成樹脂により一部が開放した帯状リング21の外周面部分に、海藻種苗11が着生している短尺の親縄12を装着した構成になっている。そして、これら複数の定着体20は、後述する帯状リング21の連結手段として設けられた貫通孔に索条14を通して連結するとともに、各定着体20間には所定長さのパイプ等の筒体15を介在させることにより、各定着体20が一定の間隔で保持されるようになっている。なお、図示はしないが、索条14の両端にアンカーと浮体が接続されることは前記実施例における評価用海藻担持具1と同様である。
【0032】
上記の評価用海藻担持具10Aにおいて、定着体20に装着された親縄12は、ワカメ養殖などで広く行われている養殖法を利用して得られるもので、その表面には複数の海藻種苗11が着生している。この親縄12の製造方法は、まず海藻の生殖細胞(遊走子など)が浮遊している陸上の水槽内において、繊維質で海藻の生殖細胞の付着に適した適宜な採苗糸13を浸漬してこれに海藻の生殖細胞を付着させて発芽させた後、その発芽した状態の種苗糸13をそのまま親縄12に螺旋状に巻き付けるか、あるいは所々への差し込みや結束などして海中に設置し、海藻幼体が適宜大きさになるまで育成したものである。この親縄12の前記帯状リング21への付設は、帯状リング21の外側面に沿うようにして5個所の略L字状の受部22に上方から嵌入すると、受部22の先端内側に形成された突起23により抜け止めがなされ、それと同時に受部22に対向して設けられた突起24により径方向の移動が阻止されるようになっている。さらに、帯状リング21には、その一端側に鉤状突起25が、また他端部26には前記鉤状突起25を受け入れて環状に連結保持するための掛止孔(図示せず)がそれぞれ設けられ、また円周上の3個所に連結手段としての貫通孔27が設けられている。この場合、帯状リング21の素材としてポリプロピレン等の水よりも比重の小さいプラスチックを使用すれば、その浮力と海藻種苗11および親縄12の比重とが釣り合い、リングの中心から離れた円周上の一個所すなわち重心から外れた位置で連結されていても水平状態が保持される。なお、円周上の複数個所で連結することはもちろん可能である。
【0033】
また、図5は、本発明の藻場造成方法における評価用海藻担持具による育成試験の他の実施例である。ここでは、複数の評価用海藻担持具30a、30b、30cが藻場造成を計画している対象海域の互いに近い場所に設置されている。この場合、各評価用海藻担持具30a、30b、30cの基本構成は図3および図4に示すものと同様なものが使用され、海藻種苗は帯状リング31上に保持されるが、各帯状リング単位で海藻種が異なっている。因みに図の例では、評価用海藻担持具30cにおける海藻種苗32cは、当該場所では比較的浅い水深に置かれたときによく生育することがわかり、評価用海藻担持具30aにおける海藻種苗32aは、むしろ深い水深のほうが適していることが推測できる。また、評価用海藻担持具30bで用いた海藻種苗32bは、いずれの水深においてもあまり成長が見られないことから、この場所には適さないと判断することができる。このような結果に基づき、海藻種の選択と造成用構造物を設計すればよい。例えば、コンブ科海藻による藻場造成を計画している場合には、アラメ、カジメ、クロメ、ツルアラメなどを適宜組み合わせて試験を行えばよい。また、特定の海藻にこだわることなく当該場所に適した海藻種を選定する場合には、前記コンブ科海藻に加え、ホンダワラ、アカモクおよびオオバモクなどのホンダワラ科に属する褐藻類、マクサやオバクサなどのテングサ科に属する紅藻類、ヒトエグサ、アオサなどのアオサ科に属する緑藻類を適宜組合せればよい。このように試験用の海藻種をそれぞれ異ならせた複数の評価用海藻担持具を互いに近い場所に設置した場合には、各評価用海藻担持具における個々の海藻の水深に対する生育状態の比較に基づく知見に加え、環境適応性に差がある異なる海藻種同志の比較も可能であることから、対象海域における海中環境のより詳細な情報が得られ、藻場造成計画の実現に大きく寄与する。この場合には、試験用の海藻を試験開始前に良好な状態に保持することができ、実質的に同じ保管状態の海藻を用いて試験を始めることが可能になる。さらに、個々の帯状リング31では、複数の同じ生長段階にある海藻種苗が水深に対して水平方向に広がった状態で設置されることから、各水深ごとの検体数が多くなり、それぞれの水深における海中環境を面として把握することができ、藻場造成の適性判断を行う上で好都合である。
【0034】
そして、上記のような手段で計画海域の適性評価を行い施工条件等を設定した後、図6に示すように、藻場造成に必要な数の移植用海藻担持具10を適性と判断された計画海域Sの海底に設置する。この場合、移植用海藻担持具10は、図3,4に示す評価用海藻担持具と同じ構成のものが使用されているが、その目的からすれば、評価用海藻担持具のように海藻種苗11が必ずしもすべて同じ生育段階である必要はなく、その生育段階も成体に近いもののほうが好ましい。そして、定着体20上の海藻種苗11が移植に適した状態になるまで適宜の期間にわたり育成あるいは養生作業を行う。なお、この実施例ではアンカー28に砂袋が使用され、それらが造成計画により設定した造成用構造物の沈設予定位置に配置されている。この移植用海藻担持具10は索条14の下端側のみが固定され、その下端を支点として索条14全体が自在に揺動する構造になっているため、ウニ等の食植性動物がこれに付着しにくく、育成・養生を行っている間に海藻種苗11が食害を受け難いものになっている。さらに、流れの抵抗となる海藻種苗11の葉状部分に力が集中しにくく、設置場所の流れが速い場合であっても、移植用海藻担持具10に保持されている海藻種苗11が破断して流出することは少ない。したがって、育成・養生期間中での海藻種苗11の損失が僅かであると同時に、海上の養殖施設を利用することなく海藻種苗11を計画海域Sの海中環境に確実に適合させることができる。なお、これら移植用海藻担持具10の設置場所は、必ずしも計画された施工対象区域に限定されることはなく、海中環境が近いその周辺区域あるいはその他の場所であってもよい。
【0035】
上記の育成・養生作業が終了すると、図7に示すように、ダイバーAが移植用海藻担持具10の索条14を下端側において砂袋28から分離し、索条14の上端側に浮体29を付けたまま海藻種苗11付きの定着体20を海上に待機している台船(図示せず)に運ぶ。したがって、海底には砂袋28が残置されることになる。
【0036】
一方、計画海域Sの海面上には、図8に示すように複数の造成用構造物50を搭載した台船40が待機している。この造成用構造物50は、平面視矩形状のコンクリート基盤51の各隅部近くに円形の柱体52が立設された柱状構造になっている。そして台船40上では、海中からダイバーAが回収した連結状態にある海藻種苗11付きの定着体20を作業員Bが索条14から取り外し、それぞれを造成用構造物50の柱体52に所定の間隔で嵌着する。次いで、コンクリート基盤51の上面に予め植設した吊下げ用フック(図示せず)にワイヤー43を掛けてクレーン41により海底に下ろす。海底で待機していたダイバーAは、台船40上の作業員と協働し、海底に残置されている砂袋28を目印として下りてきた造成用構造物50の設置位置を調整する。それが完了すると、ワイヤー43を造成用構造物50から外す。台船40の上では、ワイヤー43が外されたことを確認すると、クレーン41のフック42を巻き上げ、次の沈設作業に備える。これら海中からの海藻種苗11の回収、台船40上での造成用構造物50に対する取付および沈設作業を、海中と台船40の上で繰り返すことにより、効率的に海藻種苗11の装着作業と造成用構造物50の沈設作業を行うことができる。なお、本発明においては、多数の評価用海藻担持具を計画区域に設置し、それらが良好な生育状態を示した場合には、それらをそのまま残置して移植用海藻担持具として利用することも可能である。したがって、状況によっては別途移植用海藻担持具の投入を省略することもできる。
【0037】
このように、本発明で用いる移植用海藻担持具10は、海藻種苗11が一体になっている定着体20の帯状リング21を主体として取り扱うため、その組立てからその後の育成・養生作業における取扱いが容易である。特に、柱状構造の造成用構造物50を対象とする場合には、柱体52に対して海藻種苗11を簡単かつ確実に固定することができる。このため、定着体20と一体になった海藻種苗11は、良好な状態で造成用構造物50に取り付けることができるから、その後の成長が確かなものとなり、藻場造成の成功率向上に大きく寄与する。上記実施例において、柱状部52の長さは4m前後が好適であるが、設置場所の水深、使用する海藻種苗の種類等によっては適宜変更するものである。なお、図示はしないが、造成用構造物50の周囲が砂地のままであるよりは、捨て石等の海藻の着生床となり得るものを設置がするほうが、海藻の生育密度を高める上で好都合である。そして、上記構成の造成用構造物50に定着体20を介して取り付けられた海藻種苗11が成熟すると、周囲に無数の遊走子を放出し、それらが近くにある造成用構造物50や捨て石などの表面に付着する。ここに着生して成育した海藻は、同様に遊走子を放出する。これが繰り返されることにより、次第に海藻の生育範囲が拡大し、藻場が形成される。実施例では、造成用構造物50の柱体52が鉛直方向に立設されていることから、造成用構造物50の周囲が砂地の場合、柱体52に着生した海藻種苗11は、巻き上げられた砂による影響を受けにくく、造成用構造物50の多少の埋没に対してもそれら海藻が残存する確率が高いことから、これら構造物を中心とする藻場の永続性は高い。なお、実施例では、すべての柱体52に複数個の定着体20を取り付けた事例について説明したが、一部の柱体52のみに取り付けることは何ら支障はなく、その数の増減や取付位置の変更はもちろん可能である。
【0038】
因みにツルアラメによる藻場造成の場合、計画域の適性判断から施工までを最短期間で行うには、次のような手順が想定される。すなわち、評価用海藻担持具を用いた育成試験は、6月頃から9月頃までの4ヶ月間を対象として実施し、移植用海藻担持具による海藻種苗の育成・養生は、開始時における海藻種苗の生育段階にもよるが、9月から12月頃までが対象期間となる。したがって、この場合には最短で1年以内に計画域の適性判断から、その結果に基づく施工を完了させることも可能である。
【0039】
また、図9は他の施工例であって、海藻種苗11が一体になっている定着体20の異なる取付方法を示すものである。図8の実施例では、台船40上において各定着体20を造成用構造物50の柱体52の所定位置に予め固定しているが、この場合には台船40上で各柱体52の下端部分(基部)にそれぞれ複数個ずつ積み重ねるようにして嵌挿(仮止め)した状態で沈設した後、海中で所定位置に固定するものである。すなわち、海中のダイバーAは、各柱体52の下端部分にある海藻種苗11付きの定着体20を、そのまま纏めて上方に移動しながら柱体52の下部から上部に向けて順次所定位置に固定する。この方法では、前記に比べて台船40上での作業時間が短く、海藻種苗11に対するダメージがより少なくなる。さらに、図示はしないが、アンカー28から分離した索条14と海藻種苗11付きの定着体20を台船上に上げることなく沈設場所の近くの海底に設けた貯留用アンカーに一時的に係止しておき、随時そこから造成用構造物50に移すようにしてもよい。
【0040】
次に、図10は評価用海藻担持具1と同様な手段で索条61に海藻種苗62が適宜の間隔で取り付けられた移植用海藻担持具60を、そのままの状態で利用する実施例である。この場合、評価用海藻担持具1により計画海域の適性を確認するまでは前記と同様である。この移植用海藻担持具60は、造成用構造物50の沈設予定位置を考慮した適宜の場所にアンカー63が位置するようにを設置し、海藻種苗62の育成または養生を行う。そして、それが済んだ段階で造成用構造物50を所定の位置に沈設するものである。ここでは、移植用海藻担持具60上で成熟した海藻種苗62から放出される遊走子は、基盤51に立設された柱体52に捕捉されやすく、次第に造成用構造物50の全体に広がっていく。かかる実施例において、遊走子の付着とその後の生育を助ける上で前記のような養藻塗料を構造物表面に塗布すると好適である。
【0041】
なお、移植用海藻担持具と組み合わせて使用する造成用構造物は、上記各実施例では矩形状基盤に円柱を立設した構造物を例に説明したが、もちろんこれに限定されるものではない。柱状構造物における基盤形状としては、十字形、三つ又状、六角形など適宜形状のものが選択可能であり、柱体の形状についても円柱の他に多角柱でもよく、その場合には当該柱体に固定される定着体の形状もそれに応じて多角形に形成されることは言うまでもない。さらに、柱状構造以外で例えば格子枠状に形成されたいわゆる並型漁礁その他各種形状・素材の構造物が適用可能である。また、移植用海藻担持具として、一般の海藻養殖で行われているはえ縄式のものを採用するなど、その形状や設置場所等も含め、本発明の技術思想内での種々の変更実施はもちろん可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による藻場造成では、評価用海藻担持具を用いて計画域の適性評価を行い、その結果に基づいて適宜の移植用海藻担持具を対象区域(計画海域)またはそれに海中環境が近い周辺の区域に設置して移植用海藻を海中環境に馴らし、それらを生育基盤となる造成用構造物と組み合わせて対象区域に設置するものであるから、経済的にかつ高い成功率で藻場造成を実現でき、しかも施工が容易であるなど、その実用上の効果はきわめて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明において使用する評価用海藻担持具による育成試験中の状態を示す説明図である。
【図2】 図1の評価用海藻担持具における海藻の取付状態を示す拡大図である。
【図3】 評価用海藻担持具の異なる例の要部を示す部分断面図である。
【図4】 評価用海藻担持具あるいは移植用海藻担持具で使用する定着体の平面図である。
【図5】 本発明における評価用海藻担持具を用いた育成試験の他の実施例を示す説明図である。
【図6】 本発明における移植用海藻種苗の育成または養生中の状態を示す説明図である。
【図7】 育成または養生が済んだ移植用海藻種苗の回収状態を示す説明図である。
【図8】 造成用構造物の沈設状態を示す説明図である。
【図9】 本発明による藻場造成方法の他の実施例を示す説明図である。
【図10】 本発明による藻場造成方法の他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
1,10A,30a,30b,30c…評価用海藻担持具、2,28,63アンカー、3,14,61…索条、4,29…浮体、5,11,32a,32b,32c,62…海藻種苗、10,60…移植用海藻担持具、20…定着体、40…台船、50…造成用構造物、51…基盤、52…柱体

Claims (3)

  1. 浮体とアンカーとを接続する索条の長手方向に沿って所定の間隔で複数個所にほぼ同じ生育段階にある海藻種苗を取り付けてなる評価用海藻担持具を計画海域の海底に略鉛直状態で設置して、それら異なる水深に置かれた海藻種苗の生育状況の比較により藻場造成区域としての適性を確認した後、浮体とアンカーにより海中の所定位置に保持される索条に対して、前記評価用海藻担持具の観察結果に基づき種類を選定した複数の海藻種苗を取り付けてなる移植用海藻担持具を、適性が確認された前記計画海域あるいは前記計画海域に海中環境が類似する他の区域の海中において、それら海藻種苗の育成または養生を行うことによって該海藻種苗が前記計画海域の海中環境に適合できる状態とし、適宜の造成用構造物とともに適性が確認された前記計画海域に設置することにより、前記移植用海藻担持具に取り付けられた海藻種苗を母藻として周囲に海藻を繁茂させることを特徴とする藻場造成方法。
  2. 前記移植用海藻担持具のアンカーが砂袋であって、前記造成用構造物の沈設予定位置に配置した後、当該造成用構造物の沈設前に索条等を分離して海底に残置することを特徴とする請求項1に記載の藻場造成方法。
  3. 前記移植用海藻担持具の海藻種苗が定着体と一体の養殖種苗であって、当該定着体を介して索条ならびに前記造成用構造物に取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の藻場造成方法。
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