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JP4947948B2 - 細胞保存液 - Google Patents
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JP4947948B2 - 細胞保存液 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも糖類、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを含有し、カリウムイオンのモル濃度に対するナトリウムイオンのモル濃度の比が1以上であることを特徴とする細胞保存液、及びそれを用いた細胞保存方法に関する。
生細胞は、生理機能や生物学的活性を有しており、多方面で利用価値がある。しかしながら、温度の高い条件下に放置すると代謝や変性するため、細胞の生理機能や生物学的活性が低下若しくは消失してしまう。そこで、細胞を凍結して保存することが必要となる。細胞の凍結保存には従来から細胞膜透過型凍結保存剤としてDMSO(ジメチルスルフォキシド)、エチレングリコール、グリセロールなどが用いられ、細胞膜非透過型凍結保存剤としてはポリビニルピロリドン等が用いられてきた。また、精製アルブミンとDMSOとを含有する細胞保存液を用いれば、-80℃で、短期間であれば-4℃程度でも細胞を保存できることが開示されている(特許文献1)。
しかしながら、一般にこれらの凍結保存剤は高濃度にすると細胞に対して毒性を示すという問題がある。また凍結保存された細胞を培養などに用いる場合には、予め細胞から凍結保存剤を除去しておくことが必要となり、その作業は煩雑である。また、凍結保存は、例えば-80℃といった非常に低い温度条件で行われるが、これは専門の高価な冷凍装置を必要とするという問題を有する。また、凍結・融解という工程は、細胞に著しい損傷を与える可能性があるため、生存率を低下させてしまう。さらに、細胞種によっては、凍結保存できないものもある。
凍結保存用の、DMSO等の毒性を示す可能性のある物質を含まないような細胞・組織等の保存液として、多糖類のレバン又はレバンオリゴ糖を含有する保存液(特許文献2)、フラクオリゴ糖の一種である1-ケストースを有効成分として含有する保存液(特許文献3)等が開示されている。
一方、トレハロースとマトリクス蛋白質充填剤と単糖とを緩衝液に含有させた組成物(特許文献4)や、抗酸化作用をもつポリフェノールを含有させた保存液(特許文献5)、また、水に混和可能なアルコールにキレート剤等を加えた溶液などが開示されている(特許文献6)。
上述の溶液以外に、従来から用いられている細胞・組織保存液としては、ユーロ−コリンズ液(Euro-Collins液)(非特許文献1)、UW液(University of Wisconsin液)(非特許文献2)、ET-Kyoto液(特許文献7)及びユーロ−コリンズ液やUW液に有効成分として緑茶カテキンのエピガロカテキンガレードを添加した溶液(特許文献8)などが開示されている。
特開2002-233356号公報 特開平9-255501号公報 特開平5-38284号公報 特表2003-505024号公報 国際公開WO02/017952号公報 特開2002-168858号公報 特開平6-40801号公報 特開2003-267801号公報 Squifflet, J. P., et al., Transplant Proc., 13, 693, 1981 Wahlberg, J. A., et al., Transplantation, 43, pp. 5-8, 1987
本発明の目的は、製造コスト及び製造容易性に優れ、容易な細胞の冷蔵保存を可能にした細胞保存液を提供することである。好ましくは、保存液を除去するための洗浄を必要とせず、保存液が存在していても細胞の培養等を可能とする細胞保存液を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を進めた結果、少なくとも糖類、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを含有し、カリウムイオンのモル濃度に対するナトリウムイオンのモル濃度の比を1以上とすることにより、従来の細胞保存液、例えばユーロ−コリンズ液に比べて細胞保存性能が向上することを見出し、本発明の細胞保存液を完成した。
すなわち本発明は以下よりなる。
1.少なくとも糖類、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを含有し、カリウムイオンのモル濃度に対するナトリウムイオンのモル濃度の比が1以上であることを特徴とする細胞保存液。
2.カリウムイオンとナトリウムイオンのモル比が、1:1 〜 1:85である前項1に記載の細胞保存液。
3.糖類の含有量が、0.5 〜 150 mMである前項1又は2に記載の細胞保存液。
4.糖類が、グルコース、マルトース、マンニトール、スクロース及びトレハロースからなる群より選ばれるいずれか1種又は複数種である前項1〜3のいずれか1に記載の細胞保存液。
5.糖類が、グルコース及び/又はマルトースである前項1〜3のいずれか1に記載の細胞保存液。
6.さらに炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンを含有する前項1〜5のいずれか1に記載の細胞保存液。
7.炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンの含有量が、1 〜 75 mMである前項6に記載の細胞保存液。
8.さらに、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン、リン酸イオン、硫酸イオン及び乳酸イオンからなる群より選ばれるいずれか1種又は複数種のイオンを含む前項1〜7のいずれか1に記載の細胞保存液。
9.1,000 mLの水溶液中、以下の組成を含む前項8に記載の細胞保存液:
糖類 0.5 〜 150 mM
ナトリウムイオン 20 〜 260 mM
カリウムイオン 3 〜 125 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 1 〜 75 mM
カルシウムイオン 1 〜 4 mM
マグネシウムイオン 0 〜 1 mM
塩化物イオン 75 〜 245 mM
リン酸イオン 0.5 〜 65 mM
硫酸イオン 0 〜 1 mM
乳酸イオン 0 〜 20 mM
10.日本薬局方リンゲル液、日本薬局方炭酸水素ナトリウム注射液及び市販の脱水補給液からなりを、該日本薬局方リンゲル液、日本薬局方炭酸水素ナトリウム注射液及び市販の脱水補給液の体積比が、80:3:20〜50であることを特徴とする前項1〜9のいずれか1に記載の細胞保存液の調製方法。
11.市販の脱水補給液が、以下の1)又は2)の注射液より選択される前項10に記載の細胞保存液の調製方法:
1)1,000 mLの水溶液中に以下の成分を含有する注射液
塩化ナトリウム 1.92 g
塩化カリウム 1.00 g
乳酸ナトリウム 2.80 g
塩化マグネシウム 0.10 g
リン酸一ナトリウム 0.14 g
リン酸ニカリウム 1.00 g
ブドウ糖 23.5 g
2)以下の組成からなる注射液
塩化ナトリウム 0.270 w/v%
塩化カリウム 0.149 w/v%
乳酸ナトリウム 0.224 w/v%
リン酸ニ水素ナトリウム 0.031 w/v%
リン酸一水素ナトリウム 0.287 w/v%
ブドウ糖 3.2 w/v%
L-乳酸 8 mEq/L
12.前項1〜9のいずれか1に記載の細胞保存液を用いて細胞を冷蔵条件で保存することを特徴とする細胞保存方法。
13.細胞が、リンパ球である前項12に記載の細胞保存方法。
14.前項1〜9のいずれか1に記載の細胞保存液に細胞を懸濁し、該懸濁液を培地にそのまま播種して、該細胞を培養することを特徴とする細胞培養方法。
本発明の少なくとも糖類、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを含有し、カリウムイオンのモル濃度に対するナトリウムイオンのモル濃度の比が1以上である細胞保存液は、細胞の生存率の上昇、細胞の生理機能の維持をもたらし、細胞保存性能を高い状態で維持することができる。また、本発明の細胞保存液は、凍結保存のみならず冷蔵条件下での細胞保存も可能とする。さらに本発明の細胞保存液は、洗浄等の工程を経ずに、細胞を該保存液に懸濁したまま培地に播種して細胞を培養することを可能とする。
本発明の細胞保存液は、少なくとも糖類、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを含有し、カリウムイオンのモル濃度に対するナトリウムイオンのモル濃度の比が1以上であることを特徴とするものである。
ここで使用される糖類とは、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、リボース、マンノース、トレハロース、スクロース、マルトース、マンニトール等をはじめとした各種の単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコールを含む。これらの糖は1種又は複数種を組み合わせて用いてもよい。なかでもグルコース、マルトース、マンニトール、スクロース、トレハロースが経済性・扱い易さの点で好ましく、さらに好ましくはグルコース、マルトースである。これらの糖類は、市販のものを用いることができる。 細胞保存液における糖類の含有量は、0.5 〜 150 mM、好ましくは0.5 〜 100 mM、さらに好ましくは0.5 〜 50 mMである。糖類の含有量が150 mMを超えると、細胞の保存時に細胞が凝集し、塊を形成することがあり、該塊をほぐすのに煩雑な作業を要する。
ここで使用されるナトリウムイオン及びカリウムイオンは、有機酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩、塩化ナトリウム等の添加により含有させることができる。該含有するナトリウムイオンのモル濃度がカリウムイオンのモル濃度に比べて高いとは、細胞外液に近い組成であることをいう。カリウムイオンとナトリウムイオンのモル比としては、1:1 〜 1:85、好ましくは1:2 〜 1:60の範囲であり、より好適には1:5 〜 1:30の範囲である。ナトリウムイオン含有量は20 〜 260 mM、好ましくは50 〜 200 mM、さらに好ましくは100 〜 150 mMである。また、カリウムイオンとナトリウムイオンのモル比が上記条件に適合する範囲内であれば、カリウムイオンの含有量は特に限定されるものではなく、例えば、3 〜 125 mM、好ましくは3 〜 100 mM、さらに好ましくは3 〜 75 mMから選択することができる。
本発明の細胞保存液は、さらに炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンを含ませることが好ましい。ここで炭酸水素イオンとはHCO3 -を示し、炭酸イオンとはCO3 2-を示す。これらのイオンは、溶液中では平衡状態にあり、pH等の条件により変化しうる。炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンは、種々の炭酸塩、炭酸水素塩を細胞保存液に添加することによって、当該保存液に含ませることができる。このような化合物の例としては、炭酸水素ナトリウム(「重曹」ともいう。)、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。特に炭酸水素ナトリウム(重曹)が経済性・扱い易さの点で好適であるが、本発明はこれに限定されるものではない。炭酸水素ナトリウムは市販のものを用いることができる(下記の実施例では和光純薬工業株式会社製を使用)。細胞保存液における炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンの含有量は、1〜75 mM、好ましくは10〜50 mM、さらに好ましくは20〜30 mMから選択することができるが、特に限定されるものではない。
本発明の細胞保存液では、細胞及び組織が保存中に膨張又は収縮するのを防ぐこと等によって、細胞の生存率を向上させることが好ましい。このため該細胞保存液の浸透圧は、200〜500 mOsm/kgに調整され、好ましくは200〜400 mOsm/kg、より好ましくは250〜350 mOsm/kgに調整される。保存液の浸透圧は、該保存液に含有されるイオンを含む全物質の濃度により定まる。保存液の浸透圧は、糖類、炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン、その他の保存液に含まれるイオンの含有量を変化させることにより、適宜調整することができ、あるいはヒドロキシエチル澱粉等の無害な浸透圧調整剤を添加してもよい。
また本発明の細胞保存液は、pHが5.0〜8.5、好ましくは6.0〜8.5、より好ましくは7.0〜8.0に調整される。pHは、上述した有機酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩等の電解質を添加することにより調整することができるが、これに限定されるものではない。
本発明の細胞保存液は、さらにカルシウムイオン、マグネシウムイオン等の金属イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、及び乳酸イオン等を含んでいてもよい。これらのイオンは1種又は複数種を組み合わせて用いてもよく、特に限定されるものではない。これらのイオンの濃度は、保存液の浸透圧、pH、及び保存液における他の物質の含有量等に依存するため、当業者が適宜設定できるものであり、特に限定されるものではないが、例えばマグネシウムイオンが0.0 〜 1 mM、好ましくは0.2 〜 0.8 mM、カルシウムイオンが1 〜 4 mM、好ましくは1.5 〜 3.5、塩化物イオンが75 〜 245 mM、好ましくは100 〜 150 mM、リン酸イオンが0.5 〜 65 mM、好ましくは0.5 〜 2 mM、硫酸イオンが0 〜 1 mM、好ましくは0.5 〜 1 mM、乳酸イオンが0 〜 20 mM、好ましくは0 〜 15 mMから選択することができる。
本発明の細胞保存液には、従来の保存液における他の成分、例えば抗生物質、抗菌剤、抗酸化剤、血清、ビタミン、タンパク質、アミノ酸、pH指示薬、キレート剤等を適宜含有させることもできる。
また、本発明の細胞保存液は、日本薬局方リンゲル液及び日本薬局方炭酸水素ナトリウム溶液に、市販の輸液製剤である脱水補給液を必要な成分が必要濃度含まれるように無菌条件下で混合する方法により調製することができる。その他の方法として、例えば必要な成分を各々必要量秤量し、純水に混合し、混合した溶液を除菌ろ過することにより調製してもよい。
市販の輸液製剤である脱水補給液として、例えば総合電解質輸液、輸液用電解質液として販売されている薬剤を使用することができる。より具体的には、以下の1)又は2)の組成を有する注射液が挙げられる。
1)1,000 mLの水溶液中に以下の成分を含有する注射液
塩化ナトリウム 1.92 g
塩化カリウム 1.00 g
乳酸ナトリウム 2.80 g
塩化マグネシウム 0.10 g
リン酸一ナトリウム 0.14 g
リン酸ニカリウム 1.00 g
ブドウ糖 23.5 g
2)以下の組成からなる注射液
塩化ナトリウム 0.270 w/v%
塩化カリウム 0.149 w/v%
乳酸ナトリウム 0.224 w/v%
リン酸ニ水素ナトリウム 0.031 w/v%
リン酸一水素ナトリウム 0.287 w/v%
ブドウ糖 3.2 w/v%
L-乳酸 8 mEq/L
上記日本薬局方リンゲル液、日本薬局方炭酸水素ナトリウム溶液及び市販の輸液製剤は、体積比80:3:20〜50の割合で混合することにより、本発明の細胞保存液を調製することができる。具体的には、例えば日本薬局方リンゲル液800 mL、日本薬局方炭酸水素ナトリウム溶液30 mLに上記1)の注射液を250 〜 300 mL混合して調製することができる。さらに別の方法として例えば日本薬局方リンゲル液800 mL、日本薬局方炭酸水素30 mLに上記2)の注射液を400 〜 450 mL混合して調製することができる。
本発明の細胞保存液を用いて保存することのできる細胞としては、例えば、ヒトを含む哺乳動物から単離した種々の細胞、例えばリンパ球、幹細胞、皮膚細胞、粘膜細胞、肝細胞、膵島細胞、神経細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、骨細胞、筋細胞等、骨髄細胞、造血幹細胞あるいは、哺乳動物以外では魚類の精子・卵子・受精卵、昆虫細胞等を挙げることができる。本発明の細胞保存液は、特にヒトの活性化リンパ球を保存するのに適しているが、これに限定されるものではない。
本発明は、上記細胞保存液を用いた細胞保存方法にも及ぶ。保存の方法としては、細胞保存液に細胞を懸濁した後、従来通り凍結させて保存することもできるが、凍結させず冷蔵条件で保存することもできる。冷蔵条件とは、溶液が凍結しない条件であって、低温であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、0〜25℃、より好ましくは0〜10℃、特に好ましくは4〜6℃の範囲である。
また、本発明の細胞保存液による細胞の保存期間は、細胞種、保存温度等の条件に依存するため一律には規定しがたいが、目安としては8〜12日程度まで、好ましくは4〜6日程度まで可能である。具体的な使用態様としては、例えば、活性リンパ球を受託培養施設から患者の元に輸送する際の保存に用いることができる。このような短期間の保存の場合、冷蔵条件下で保存できるという点で、本発明の保存液及び保存方法には利点がある。
保存の際に、細胞保存液に懸濁させる細胞の濃度は、細胞種、細胞の大きさ、保存期間等の条件に依存するため、当業者により適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、1.0×104〜1.0×108 cells/mL程度、好ましくは1.0×105〜1.0×108 cells/mL程度である。また保存容器は、細胞種、保存温度、保存期間、保存後の細胞の用途等を考慮して、公知の容器から適宜選択して用いることができる。
さらに本発明は、上記のように保存した細胞を用いた細胞培養方法にも及ぶ。保存後の細胞は、遠心分離などによって細胞保存液と分離した後、通常の培地に播種して培養してもよいが、細胞保存液で保存した、細胞懸濁液を通常の培地にそのまま播種して培養することができる。
(実施例1)グルコース及び重曹を含有した細胞保存液
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。浸透圧は約283.5 mOsm/kgであった。浸透圧はOSMOMETER OM 802-D (VOGEL社製)を用いて測定した。
グルコース(和光純薬工業株式会社製)1,000 mg
塩化ナトリウム 6,976.8 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N塩酸 2.8 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 143.8 mM
カリウムイオン 5.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.7 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 130.8 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例2)マルトース及び重曹を含有した細胞保存液
実施例1におけるグルコースを、マルトース(和光純薬工業株式会社製)に置き換えた以外は実施例1と同様の細胞保存液を調製した。ちなみに、マルトースの含量は、実施例1のグルコースの含量と同じである。
(実施例3)マンニトール及び重曹を含有した細胞保存液
実施例1におけるグルコースを、マンニトール(和光純薬工業株式会社製)に置き換えた以外は実施例1と同様の細胞保存液を調製した。ちなみに、マンニトールの含量は、実施例1のグルコースの含量と同じである。
(実施例4)スクロース及び重曹を含有した細胞保存液
実施例1におけるグルコースを、スクロース(シグマ社製)に置き換えた以外は実施例1と同様の細胞保存液を調製した。ちなみに、スクロースの含量は、実施例1のグルコースの含量と同じである。
(実施例5)トレハロース及び重曹を含有した細胞保存液
実施例1におけるグルコースを、トレハロース(和光純薬工業株式会社製)に置き換えた以外は実施例1と同様の細胞保存液を調製した。ちなみに、トレハロースの含量は、実施例1のグルコースの含量と同じである。
(実施例6)炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンを含有しない細胞保存液
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン(重曹)を含まないこと以外は実施例1と同様の細胞保存液を調製した。つまり、実施例1の組成から、炭酸水素ナトリウムを除いた以下の組成である。この時の浸透圧は、約283.5 mOsm/kgであった
グルコース 1,000 mg
塩化ナトリウム 8,228 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 0 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N水酸化ナトリウム水溶液 0.72 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 142.4 mM
カリウムイオン 5.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 0 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 132.4 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例7)浸透圧200 mOsm/kgの細胞保存液
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。細胞保存液の浸透圧は約200 mOsm/kgであった。
グルコース 1,000 mg
塩化ナトリウム 4,000 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N塩酸 2.4 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 93.0 mM
カリウムイオン 5.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.8 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 79.6 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例8)浸透圧240 mOsm/kgの細胞保存液
浸透圧約240 mOsm/kgの細胞保存液を調製した。浸透圧は実施例7の組成に、さらに塩化ナトリウムを1240mg添加することで調整した。
(実施例9)浸透圧300 mOsm/kgの細胞保存液
浸透圧約300 mOsm/kgの細胞保存液を調製した。浸透圧は実施例7の組成に、さらに塩化ナトリウムを3100mgを添加することで調整した。
(実施例10)浸透圧400 mOsm/kgの細胞保存液
浸透圧約400 mOsm/kgの細胞保存液を調製した。浸透圧は実施例7の組成に、さらに塩化ナトリウムを6200mgを添加することで調整した。
(実施例11)浸透圧500 mOsm/kgの細胞保存液
浸透圧約500 mOsm/kgの細胞保存液を調製した。浸透圧は実施例7の組成に、さらに塩化ナトリウムを96100mgを添加することで調整した。
(実施例12)pH 5.0の細胞保存液
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。細胞保存液の浸透圧は約299 mOsm/kg、pHは約5.0であった。
グルコース 1,000 mg
塩化ナトリウム 4,000 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N水酸化ナトリウム水溶液 1.08 mL
1N塩酸 23.2 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.4 mM
ナトリウムイオン 138.8 mM
カリウムイオン 5.2 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.2 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 145.0 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例13)pH 6.0の細胞保存液
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。細胞保存液の浸透圧は約293 mOsm/kg、pHは約6.0であった。
グルコース 1,000 mg
塩化ナトリウム 4,000 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N塩酸 1.4 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 139.2 mM
カリウムイオン 5.3 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.5 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 137.4 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例14)pH 7.0の細胞保存液
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。細胞保存液の浸透圧は約283 mOsm/kg、pHは約7.0であった。
グルコース 1,000 mg
塩化ナトリウム 4,000 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N塩酸 2.8 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 140.8 mM
カリウムイオン 5.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.7 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 127.8 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例15)pH 8.0の細胞保存液
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。細胞保存液の浸透圧は約281 mOsm/kg、pHは約8.0であった。
グルコース 1,000 mg
塩化ナトリウム 4,000 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N水酸化ナトリウム水溶液 0.6 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 141.7 mM
カリウムイオン 5.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.8 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 125.2 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例16)
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。この時の浸透圧は約288 mOsm/kgであった。
グルコース 10,000 mg
塩化ナトリウム 6,960 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N塩酸 2.6 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 47.8 mM
ナトリウムイオン 121.4 mM
カリウムイオン 4.6 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 20.5 mM
カルシウムイオン 1.6 mM
マグネシウムイオン 0.7 mM
塩化物イオン 110.0 mM
リン酸イオン 0.9 mM
硫酸イオン 0.7 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例17)
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。この時の浸透圧は約283 mOsm/kgであった。
グルコース 1,000 mg
塩化ナトリウム 4,000 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2,000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N塩酸 2.8 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 140.8 mM
カリウムイオン 5.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.7 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 127.8 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実施例18)
日本薬局方リンゲル液800 mLに、以下の1)の組成からなる注射液(市販の脱水補給液)250 mL及び日本薬局方炭酸水素ナトリウム注射液30 mLを混合し、細胞保存液を調製した。
1)1,000 mLの水溶液中に以下の成分を含有する注射液
塩化ナトリウム 1.92g
塩化カリウム 1.00g
乳酸ナトリウム 2.80g
塩化マグネシウム 0.10g
リン酸一ナトリウム 0.14g
リン酸ニカリウム 1.00g
ブドウ糖 23.5 g
この時の、最終組成は以下の2)のとおりであり、浸透圧約317.7 mOsm/kg、pH 7.749(24.4℃)であった。
2)最終組成
グルコース 30.2 mM
ナトリウムイオン 145.7 mM
カリウムイオン 8.7 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.1 mM
カルシウムイオン 3.3 mM
マグネシウムイオン 0.2 mM
塩化物イオン 126.4 mM
リン酸イオン 1.6 mM
乳酸イオン 5.8 mM
合計液量 1,080 mL
(実施例19)
日本薬局方リンゲル液800 mLに、実施例18の1)の組成からなる注射液(市販の脱水補給液)300 mL及び日本薬局方炭酸水素ナトリウム注射液30 mLを混合し、細胞保存液を調製した。
この時の、最終組成は以下のとおりであり、浸透圧約316.7 mOsm/kg、pH 7.351(25.2℃)であった。
最終組成
グルコース 34.6 mM
ナトリウムイオン 141.9 mM
カリウムイオン 9.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 22.1 mM
カルシウムイオン 3.2 mM
マグネシウムイオン 0.3 mM
塩化物イオン 122.9 mM
リン酸イオン 1.8 mM
乳酸イオン 6.6 mM
合計液量 1,130 mL
(実施例20)
日本薬局方リンゲル液800 mLに、以下の1)の組成からなる注射液(市販の脱水補給液)400 mL及び日本薬局方炭酸水素ナトリウム注射液30 mLを混合し、細胞保存液を調製した。
1)1,000 mLの水溶液中に以下の成分を含有する注射液
塩化ナトリウム 0.270 w/v%
塩化カリウム 0.149 w/v%
乳酸ナトリウム 0.224 w/v%
リン酸ニ水素ナトリウム 0.031 w/v%
リン酸一水素ナトリウム 0.287 w/v%
ブドウ糖 3.2 w/v%
添加物としてのL-乳酸 8 mEq/L
この時の、最終組成は以下の2)のとおりであり、浸透圧約339.7 mOsm/kg、pH 7.442(24.2℃)であった。
2)最終組成
グルコース 57.8 mM
ナトリウムイオン 143.3 mM
カリウムイオン 9.1 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 20.3 mM
カルシウムイオン 2.9 mM
マグネシウムイオン 0.0 mM
塩化物イオン 122.7 mM
リン酸イオン 3.3 mM
乳酸イオン 9.1 mM
純水
合計 1,230 mL
(実施例21)
日本薬局方リンゲル液800 mLに、実施例20の1)の組成からなる注射液(市販の脱水補給液)450 mL及び日本薬局方炭酸水素ナトリウム注射液30 mLを混合し、細胞保存液を調製した。
この時の、最終組成は以下のとおりであり、浸透圧約316.7 mOsm/kg、pH 7.351(25.2℃)であった。
最終組成
グルコース 62.4 mM
ナトリウムイオン 141.0 mM
カリウムイオン 9.5 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 19.5 mM
カルシウムイオン 2.8 mM
マグネシウムイオン 0.0 mM
塩化物イオン 120.5 mM
リン酸イオン 3.5 mM
乳酸イオン 9.8 mM
純水
合計 1,1280 mL
(比較例1)糖類を含有しない細胞保存液
グルコースを含まないこと以外は実施例1と同様の細胞保存液を調製した。したがって、以下の組成からなる。
グルコース 0 mM
ナトリウムイオン 145.3 mM
カリウムイオン 5.4 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.7 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 132.4 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(比較例2)リン酸緩衝液
一般に細胞保存液として使用されるリン酸緩衝液を細胞保存液とした。
(比較例3)生理食塩水
一般に細胞保存液として使用される生理食塩水(2.5v/v%のヒトアルブミン含有)を細胞保存液とした。
(比較例4)ユーロ−コリンズ液
一般に臓器保存液として市販されているユーロ−コリンズ液を細胞保存液とした。本比較例におけるユーロコリンズの組成中、糖含有量としてグルコース194.3mMであり、ナトリウムイオン濃度10.0mM、カリウムイオン濃度115.0mMであった。
(比較例5)pH 9.0の細胞保存液
以下の成分を純水に溶解することにより細胞保存液を調製した。細胞保存液の浸透圧は約285 mOsm/kg、pHは約9.0であった。
グルコース 1000 mg
塩化ナトリウム 4188 mg
塩化カリウム 400 mg
塩化カルシウム 200 mg
炭酸水素ナトリウム 2000 mg
リン酸水素ナトリウム・水和物 140 mg
硫酸マグネシウム 98 mg
1N水酸化ナトリウム水溶液 3.2 mL
純水
合計 1,000 mL
したがって、イオン組成は以下のとおりである。
グルコース 5.5 mM
ナトリウムイオン 147.1 mM
カリウムイオン 5.3 mM
炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 23.7 mM
カルシウムイオン 1.8 mM
マグネシウムイオン 0.8 mM
塩化物イオン 128.1 mM
リン酸イオン 1.0 mM
硫酸イオン 0.8 mM
純水
合計 1,000 mL
(実験例1)本発明の細胞保存液における細胞の生存率
保存液の浸透圧を一定にした場合における、各種糖類含有の細胞保存性能の比較及び従来の細胞保存液との比較を行った。具体的には、実施例1〜6、比較例1〜4の細胞保存液を用いてリンパ球(Tリンパ球)を細胞懸濁液の濃度を約2.0×106 cells/mLとし、各保存液中で冷蔵条件(4℃)で保存した。保存後4日目のリンパ球の生存率を、トリパンブルー染色による生死判定で算出した。その結果を表1に示す。
Figure 0004947948
表1の結果から明らかなように糖類及び炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンを有効成分とする細胞保存液(実施例1〜6)は比較例に比べて高い生存率を示し、実施例1、2は特に高い生存率を示した。
(実験例2)細胞保存液の浸透圧の影響
保存液の浸透圧依存性を検討した。具体的には、実施例7〜11の細胞保存液を用いてリンパ球(Tリンパ球)を細胞懸濁液の濃度を約1.5×106 cells/mLとし、各保存液中で冷蔵条件(4℃)で保存した。保存後4日目のリンパ球の生存率を、トリパンブルー染色による生死判定で算出した。その結果を表2に示す。比較は市販の細胞保存液(比較例2、3)で行った。
Figure 0004947948
表2の結果から糖類、カルシウムイオン及びナトリウムイオンを有効成分とし、浸透圧が200〜500 mOsm/kgの範囲のいずれ(実施例7〜11)においても市販の細胞保存液(比較例2、3)よりも細胞生存率が高く、本発明の有効性を示した。特に200〜300 mOsm/kgの範囲(実施例7〜9)でより高い生存率を示した。
(実験例3)細胞保存液のpHの影響
細胞保存液中にグルコース、カルシウムイオン及びナトリウムイオンが存在し、かつ浸透圧を略一定にした場合におけるpH依存性を検討した。具体的には、実施例12〜15、比較例5の細胞保存液を用いてリンパ球(Tリンパ球)を細胞懸濁液の濃度を約1.0×106 cells/mLとし、各保存液中で冷蔵条件(4℃)で保存した。保存後4日目のリンパ球の生存率を、トリパンブルー染色による生死判定で算出した。その結果を表3に示す。
Figure 0004947948
表3の結果から明らかなようにpH 5.0〜8.0の範囲(実施例12〜15)で比較的高い生存率を示し、pH 6.0〜8.0(実施例13〜15)で特に高い生存率を示した。
(実験例4)細胞生存率の経時変化
図1は、実施例1、16の細胞保存液と従来の細胞保存液(比較例2、3)の細胞生存率の経時変化を測定した結果である。本発明の細胞保存液は保存開始から6日経過しても比較的高い生存率を示した。
(実験例5)保存後の細胞培養
活性化培養開始後5日目の対数増殖期にあるリンパ球を、実施例17の細胞保存液を用いて、20×106 cells/mLの濃度で4日間冷蔵保存した。保存後の細胞を回収し洗浄操作を行わず、その一部をFBSを10%含有したリンパ球用培地(ALyS505N培地、細胞科学研究所社製)にそのまま添加し、播種時濃度2.7×105 cells/mLで37℃、5% CO2雰囲気下で、4日間培養した。その結果、4日後にはリンパ球濃度が1.7×106 cells/mLとなった。よって実施例17の細胞保存液は、細胞の培養を阻害するものではないことが確認された。
(実験例6)細胞生存率の経時変化
図2は、実施例18〜21の各細胞保存液と従来の細胞保存液(比較例2、3)の細胞生存率の経時変化を測定した結果である。本発明の細胞保存液は保存開始から4日経過しても比較的高い生存率を示した。
以上説明した通り、本発明の細胞保存液を使用することにより、冷蔵条件下でも細胞保存性能を向上させて、細胞生存率の増加が可能になる。また、本発明によれば冷蔵条件での細胞保存方法を提供するため、これまで保存が困難であった細胞種を保存することも可能となる。また、凍結保存に必要であったプログラミングフリーザー等の高価な装置・設備が準備できないような場合でも、細胞を保存することが可能となる。さらに本発明の細胞保存液を用いれば、洗浄等の工程を経ずに、細胞を該保存液に懸濁したまま培地に播種して細胞を培養することが可能となるため、簡便に細胞培養を行うことできる。例えば、本発明の細胞保存液は、近年広まりつつある免疫細胞療法の分野において、活性化培養したリンパ球を受託培養施設から患者の元へ輸送する際に使用することができる。これにより、細胞生存率の低下を抑制して細胞の品質を保持し、最終的には治療への活用にも役立つものと考えられる。
実施例1、16、比較例2、3の細胞保存液におけるリンパ球保存による生存率の経時変化のグラフである(実験例4)。 実施例18〜21、比較例2、3の細胞保存液におけるリンパ球保存による生存率の経時変化のグラフである(実験例4)。

Claims (8)

  1. 少なくとも糖類、ナトリウムイオンと、カリウムイオンと、炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンと、リン酸イオンを含有し、グリセロールを含有せず、カリウムイオンのモル濃度に対するナトリウムイオンのモル濃度の比が1以上であり、炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオンの含有量が20〜75mMであり、糖類がグルコース及び/又はマルトースであり、浸透圧が200〜350mOsm/kgであり、pHが6.0〜8.0であることを特徴とする、冷蔵保存用細胞保存液。
  2. カリウムイオンとナトリウムイオンのモル比が、1 : 1 〜 1 : 85 である請求項1に記載の冷蔵保存用細胞保存液。
  3. 糖類の含有量が、0.5 〜 150 mMである請求項1又は2に記載の冷蔵保存用細胞保存液。
  4. さらに、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩化物イオン硫酸イオン及び乳酸イオンからなる群より選ばれるいずれか1種又は複数種のイオンを含む請求項1〜のいずれか1に記載の冷蔵保存用細胞保存液。
  5. 1,000 mLの水溶液中、以下の組成を含む請求項に記載の冷蔵保存用細胞保存液:
    糖類 0.5 〜 150 mM
    ナトリウムイオン 20 〜 260 mM
    カリウムイオン 3 〜 125 mM
    炭酸水素イオン及び/又は炭酸イオン 20 〜 75 mM
    カルシウムイオン 1 〜 4 mM
    マグネシウムイオン 0 〜 1 mM
    塩化物イオン 75 〜 245 mM
    リン酸イオン 0.5 〜 65 mM
    硫酸イオン 0 〜 1 mM
    乳酸イオン 0 〜 20 mM
  6. 請求項1〜のいずれか1に記載の冷蔵保存用細胞保存液を用いて、リンパ球を冷蔵条件で保存することを特徴とするリンパ球保存方法。
  7. リンパ球の保存期間が、4〜6日までである、請求項6に記載のリンパ球保存方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1に記載の冷蔵保存用細胞保存液にリンパ球を懸濁し、該懸濁液を培地にそのまま播種して、該リンパ球を培養することを特徴とするリンパ球培養方法。
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