次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第一実施例に係る油圧式無段変速装置および遊星歯車機構の全体的な構成を示した側面図、図2は第一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置の全体的な構成を示したスケルトン図(その1)、図3は同じくスケルトン図(その2)、図4は第一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置の入力側斜板角度と出力の関係を示した出力線図(その1)、図5は同じく出力線図(その2)、図6は本発明の第二実施例に係る油圧式無段変速装置および遊星歯車機構の全体的な構成を示した側面図、図7は第二実施例に係る油圧−機械式無段変速装置の全体的な構成を示したスケルトン図(その1)、図8は同じくスケルトン図(その2)である。
まず、本発明の第一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置100の全体構成について説明をする。尚、説明の便宜上、図1中に示す矢印Aの方向を前方とする。図1乃至図3に示す如く、本発明の一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置100は、油圧式無段変速装置1、遊星歯車機構3等により構成している。そして、入力軸2上の前方側に油圧式無段変速装置1を配設し、同じく入力軸2上の該油圧式無段変速装置1の後方に遊星歯車機構3を隣接して配設している。即ち、本第一実施例の油圧−機械式無段変速装置100は、油圧式無段変速装置1および遊星歯車機構3を、同一軸(即ち、入力軸2)上に配設する構成としている。
また、トランスミッション101・102は、前記油圧式無段変速装置1や副変速機構19等により構成している。そして、油圧式無段変速装置1の後段に備えられる副変速機構19には、複数のクラッチ機構36・37・38を備えており、該クラッチ機構36・37・38を選択的に切替えることにより、油圧式無段変速装置1から直接出力回転を伝達するか、または、油圧式無段変速装置1からの出力回転を遊星歯車機構3を介して伝達するかのいずれかを選択することができる構成としている。そして、トランスミッション101からの出力が、デフ機構34を介して最終的に駆動輪35に伝達されて、作業車両等を走行駆動する構成としている。
次に、本発明の第一実施例に係る、油圧式無段変速装置1の全体構成について説明をする。図1に示す如く、油圧式無段変速装置1は、可変容量型の油圧ポンプ17と固定容量型の油圧モータ18を備えており、油圧ポンプ17は入力側ハウジング4(入力ハウジング部4a、油圧サーボ機構4b)、斜板保持部材5、入力側斜板6、シリンダブロック7、入力側プランジャ8・8・・・、入力側タイミングスプール9・9・・・、入力側スプールカム13等によって構成され、また、油圧モータ18はシリンダブロック7、出力側プランジャ10・10・・・、出力側タイミングスプール11・11・・・、出力側スプールカム14、出力側斜板12等によって構成されている。
さらに詳述すると、シリンダブロック7は、入力軸2とスプライン嵌合により相対回転不能に固定されており、シリンダブロック7と入力軸2が一体的に回転する構成としている。また、シリンダブロック7には、入力軸2の軸線方向に往復動する前記入力側プランジャ8・8・・・および出力側プランジャ10・10・・・と、同じく軸線方向に往復動する前記入力側タイミングスプール9・9・・・および出力側タイミングスプール11・11・・・を収容している。
また、前記入力側プランジャ8・8・・・は、入力軸2の軸線に対する傾斜角を油圧サーボ機構4bにより変更可能な入力側斜板6と斜板面6aにおいて当接しており、また、前記出力側プランジャ10・10・・・は、前記軸線に対して所定の傾斜角を成す出力側斜板12と斜板面12aにおいて当接している。そして、入力側斜板6の軸線に対する傾斜角を変化させることにより、前記入力側プランジャ8・8・・・が往復動する振幅量が変化するため、往復動に伴って吸入および排出する作動油量が変化する。入力側プランジャ8・8・・・と出力側プランジャ10・10・・・はシリンダブロック7内の油路により連通しているため、作動油量の変化は出力側プランジャ10・10・・・へと伝達されて、その結果、出力側プランジャ10・10・・・が往復動する振幅量が変化する。これにより、出力側プランジャ10・10・・・が当接している出力側斜板12の回転数を可変とする構成としている。
このように、第一実施例に示す油圧式無段変速装置1は、入力軸2に入力されるエンジン等の駆動源による一定の入力回転を、入力側斜板6の斜板面6aの軸線に対する角度を変更することにより、出力側斜板12の回転数を所望する回転数に調整しつつ回転出力を行うものである。
次に、出力側斜板12について説明をする。図1に示す如く、出力側斜板12は、出力側プランジャ10を往復動させる力(即ち、シリンダブロック7内に形成された油圧回路内の作動油の圧力)を出力軸等の回転駆動力に変換するものである。また、出力側斜板12は入力軸2(厳密には入力軸2に外嵌されたスペーサ40)が貫通する貫通孔が設けられた略円筒形状の部材であり、その前部には斜板面12aが形成されている。斜板面12aは平面であり、斜板面12aには出力側プランジャ10の突出端(当接盤10a)が当接する。斜板面12aは入力軸2の軸線に対して所定の傾斜角(斜板面12aと入力軸2の軸線とが成す角度)を成している。
出力側斜板12の後端には出力ケース16が固定され、出力側斜板12と出力ケース16が一体的に回転する構成としている。なお、出力側斜板12の貫通孔後端には出力側円錐コロ軸受41の外輪が嵌設され、出力側斜板12の貫通孔とスペーサ40との間には出力側針状コロ軸受42が介装されるので、出力側斜板12は入力軸2と相対回転可能である。また、出力ケース16は出力側斜板12と一体的に構成してもよい。尚、本実施例においては、出力側斜板12として固定斜板を用いているが、出力側斜板12として可動斜板を採用することも可能である。
次に、遊星歯車機構3について説明をする。図1または図2に示す如く、第一実施例に示す遊星歯車機構3は、第一プラネタリギア20、第一サンギア21、第二プラネタリギア22、第二サンギア23等により構成しており、前記出力側斜板12の後方(厳密には出力ケース16の後方)に隣接して配設している。また、本実施例に示す遊星歯車機構3は、前記出力ケース16が遊星歯車機構3のプラネタリキャリアを兼ねる構成としており、該出力ケース16の後端面に突設されたギア軸24上に第一プラネタリギア20および第二プラネタリギア22を回転自在に支持している。つまり、第一プラネタリギア20と第二プラネタリギア22を同一軸(即ち、ギア軸24)上に支持して一体的に構成している。また、出力側斜板12を構成する出力ケース16を、遊星歯車機構3を構成するプラネタリキャリアとして兼用し、遊星歯車機構3と出力側斜板12とを一体的な構成とすることにより、遊星歯車機構3を具備しない従来の油圧式無段変速装置1のケーシングを拡大することなく、従来と同じケーシングの中に遊星歯車機構3を内蔵することができるため、遊星歯車機構3を設けるために余計なスペースを確保する必要がなく、コンパクトな油圧−機械式無段変速装置100を構成することができる。
第一サンギア21は、前記入力軸2上に固設され、前記第一プラネタリギア20と噛合している。つまり、遊星歯車機構3には、第一サンギア21により入力軸2の回転が伝達される構成としている。また、第二サンギア23は第一サンギア21の後部に隣接して配置され、前記入力軸2上にベアリングを介して該入力軸2に対して相対回転自在に支持されており、前記第二プラネタリギア22と噛合している。このように、入力軸2をシリンダブロック7や出力側斜板12を貫通して後方に延設し、この延設部分に第一サンギア21を固設するとともに、第二サンギア23を回転自在に支持して、遊星歯車機構3の前後長が短くなるように構成している。
そして、入力軸2の出力回転が前記第一サンギア21から遊星歯車機構3(厳密には第一プラネタリギア20)に入力されて、かつ、出力側斜板12の出力回転がプラネタリキャリアたる出力ケース16から遊星歯車機構3に入力されて第一プラネタリギア20に伝達されて、これら2系統からの(即ち、第一サンギア21と第一プラネタリギア20との)入力回転が合成されて、第二プラネタリギア22を介して第二サンギア23に合成された出力回転が伝達される構成としている。
そして、第二サンギア23には連通部材25を介して出力ギア26を一体的に固設しており、遊星歯車機構3の合成出力回転を該出力ギア26から出力するように構成している。このような構成とすることにより、油圧−機械式無段変速装置100の出力伝達要素である出力側斜板12からの出力と、伝達効率の高い機械要素(ギア)の出力伝達要素である第一サンギア21からの出力が、第一プラネタリギア20で合成される。これにより、油圧−機械式無段変速装置100の出力伝達の割合(即ち、油圧分担比)を軽減し、最終出力伝達要素である出力ギア26から出力される出力回転の出力伝達効率を改善している。
即ち、遊星歯車機構3を、入力軸2上に固設される第一サンギア21と、該第一サンギア21と噛合する第一プラネタリギア20と、入力軸2上に回転自在に支持される第二サンギア23と、該第二サンギア23と噛合する第二プラネタリギア22と、プラネタリキャリアとして兼用される回転出力部たる出力側斜板12により構成し、出力側斜板12に、一体的に形成した第一プラネタリギア20および第二プラネタリギア22を回転自在に支持し、第一サンギア21からの入力と、出力側斜板12からの入力を、第一プラネタリギア20および第二プラネタリギア22において合成し、第二サンギア23から出力が成される構成としている。これにより、油圧式無段変速装置1の入力軸2と同一軸心上に遊星歯車機構3を配置することでき、これにより、油圧−機械式無段変速装置100をコンパクトに構成することができるのである。また、油圧−機械式無段変速装置100をトランスミッション101・102に採用することにより、油圧−機械式無段変速装置100よりも後段の出力伝達要素(例えば、副変速機構19等)の設計の自由度を向上させるとともに、トランスミッション101・102をコンパクトな構成とすることができるのである。
さらに、第一実施例に示す油圧−機械式無段変速装置100は、プラネタリキャリアとして兼用する前記出力ケース16に出力ギア39を固設している。これにより、出力側斜板12の回転出力を前記遊星歯車機構3を介さずに直接出力ギア39により伝達することもできる構成としている。
次に、第一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置100の出力伝達の流れについて説明をする。図2に示す如く、第一副変速ギア30は、前進側低速クラッチ36により係脱自在に副変速軸27上に支持されている。そして、前進側低速クラッチ36が「入」状態である場合には、出力ギア39と噛合する第一副変速ギア30から副変速軸27に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が前進方向に低速で駆動される。また、第二副変速ギア31は、後進側クラッチ37により係脱自在に副変速軸27上に支持されている。そして、後進側クラッチ37が「入」状態である場合には、まず出力ギア39から、該出力ギア39と噛合する第一逆転ギア33を介してカウンター軸29に回転出力が伝達され、カウンター軸29上に固設される第二逆転ギア32と噛合する第二副変速ギア31から副変速軸27に出力回転が伝達されて、前記駆動輪35が後進方向に駆動される。さらに、第三副変速ギア43は、前進側高速クラッチ38により係脱自在に副変速軸27上に支持されている。そして、前進側高速クラッチ38が「入」状態である場合には、出力ギア26と噛合する第三副変速ギア43から副変速軸27に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が前進方向に高速で駆動される。つまり、油圧式無段変速装置1の回転出力は、各クラッチ機構36・37・38を選択的に切替えることにより、遊星歯車機構3を介して副変速軸27に伝達することが可能であり、あるいは、遊星歯車機構3を介さずに副変速軸27に伝達することも可能な構成としている。そして、所望する速度域や進行方向に応じて各クラッチ機構36・37・38の切替を行うことにより、作業車両等を前後進自在に駆動する構成としている。
即ち、トランスミッション101は、入力軸2上に可変容量型の油圧ポンプ17と固定容量型の油圧モータ18を備え、油圧モータ18の固定斜板(即ち、出力側斜板12)を回転出力部とした油圧式無段変速装置1と、入力軸2と同心上に配置した遊星歯車機構3により構成する油圧−機械式無段変速装置100を備え、出力側斜板12と、遊星歯車機構3を、一体的に連結し、出力側斜板12による前進側の回転出力を係脱自在に伝達する第一クラッチたる前進側低速クラッチ36と、遊星歯車機構3による前進側の回転出力を係脱自在に伝達する第二クラッチたる前進側高速クラッチ38と、遊星歯車機構3による後進側の回転出力を係脱自在に伝達する第三クラッチたる後進側クラッチ37を備える構成としている。このような構成とすることにより、トランスミッション101の速度範囲を、コンパクトな構成で容易に拡大することができるのである。また、後進方向の最高速度での走行状態から前進方向の最高速度での走行状態に至るまで、連続的に無段変速を行うことができるのである。
また、第一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置100を用いて、図3に示すトランスミッション102のように構成することも可能である。図3に示す如く、副変速第一ギア44は、低速クラッチ46により係脱自在に副変速軸27上に支持されている。そして、低速クラッチ46が「入」状態である場合には、出力ギア26と噛合する副変速第一ギア44から副変速軸27に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が低速域において前進方向または後進方向に駆動される。
また、副変速第二ギア45は、高速クラッチ47により係脱自在に副変速軸27上に支持されている。そして、高速クラッチ47が「入」状態である場合には、出力ギア39と噛合する副変速第二ギア45から副変速軸27に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が高速域において前進方向に駆動される。このように、カウンター軸を備えず、また、2系統のクラッチ機構46・47でトランスミッション102を構成すれば、図2に示すトランスミッション101と同様に容易に前後進の切替を可能としながら、トランスミッション101に比してよりコンパクトなトランスミッションの構成とすることができる。つまり、トランスミッション101の構成とする場合と同様に、図3に示すトランスミッション102の構成とする場合も、所望する速度域や進行方向に応じて各クラッチ機構46・47の切替を行う構成としている。そして、副変速機構19からデフ機構34を介して駆動輪35に回転出力が伝達されて、作業車両等を前後進自在に駆動する構成としている。
即ち、トランスミッション102は、入力軸2上に可変容量型の油圧ポンプ17と固定容量型の油圧モータ18を備え、油圧モータ18の固定斜板(即ち、出力側斜板12)を回転出力部とした油圧式無段変速装置1と、入力軸2と同心上に配置した遊星歯車機構3により構成する油圧−機械式無段変速装置100を備えるトランスミッション102であって、出力側斜板12と、遊星歯車機構3を、一体的に連結し、出力側斜板12による前進側の回転出力を係脱自在に伝達する第一クラッチたる高速クラッチ47と、遊星歯車機構3による前進側または後進側の回転出力を係脱自在に伝達する第二クラッチたる低速クラッチ46を備える構成としている。このような構成とすることにより、トランスミッション102の速度範囲を、コンパクトな構成で容易に拡大することができるのである。また、後進方向の最高速度での走行状態から前進方向の最高速度での走行状態に至るまで、連続的に無段変速を行うことができるのである。
次に、本発明の第一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置100の出力状況について説明をする。まず、図2に示すトランスミッション101の構成とした場合の出力状況を説明する。図4に示す如く、油圧式無段変速装置1は、エンジン15の出力回転をa(図3中の線図α)とした場合に、入力側斜板6の傾斜角に対応して、出力回転が0〜2a(図3中の線図X)の範囲で可変となる構成としている。そして、前進側低速クラッチ36が「入」状態である場合には、油圧式無段変速装置1の出力を直接取り出す構成となるため、係る場合には、トランスミッション101からの出力状況は、図4中に示す線図Xの範囲となる。
一方、後進側クラッチ37が「入」状態である場合には、図4中の線図Yに示す如く、出力側斜板12の角度に応じて、出力が−2a〜0の範囲で可変となる構成としている。さらに、前進側高速クラッチ38が「入」状態である場合には、図4中の線図Zに示す如く、出力側斜板12の角度に応じて、出力が2a〜4aの範囲で可変となる構成としている。そして、各線図(線図X乃至線図Z)の端点を、図4に示す如く点Aおよび点Bで一致させる構成とすることにより、各クラッチ機構36・37・38を適宜切替えて、後進方向への最高速度での走行状態から前進方向への最高速度での走行状態に至るまで連続的に無段変速を行うことができる構成としている。このように、油圧式無段変速装置1の出力側斜板12と遊星歯車機構3を一体的に構成することにより、油圧−機械式無段変速装置100の構成をコンパクトに維持しながら、その出力範囲を容易に拡大することが可能となる。
次に、図3に示すトランスミッション102の構成とした場合の出力状況を説明する。図5に示す如く、油圧式無段変速装置1は、エンジン15の出力回転をa(図3中の線図α)とした場合に、入力側斜板6の傾斜角に対応して、出力回転がa〜3a(図3中の線図X)の範囲で可変となる構成としている。そして、高速クラッチ47が「入」状態である場合には、油圧式無段変速装置1の出力を直接伝達する構成となるため、係る場合には、トランスミッション102からの出力状況は、図5中に示す線図Xの範囲となる。
また、低速クラッチ46が「入」状態である場合には、図5中の線図Yに示す如く、出力側斜板12の角度に応じて、出力が−a〜aの範囲で可変となる構成としている。このモードでは、後進方向への走行と前進方向への低速走行をカバーすることができ、出力回転が伝達された状態で速度を0とする(所謂、ギアードニュートラルの状態とする)ことができるため、速度0付近において良好な操作性が得られる構成としている。そして、各線図(線図Xおよび線図Y)の端点を、図5に示す如く点Cで一致させる構成とすることにより、各クラッチ機構46・47を適宜切替えて、後進方向への最高速度での走行状態から前進方向への最高速度での走行状態に至るまで連続的に無段変速を行うことができる構成としている。このように、油圧式無段変速装置1の出力側斜板12と遊星歯車機構3を一体的に構成することにより、油圧−機械式無段変速装置100の構成をコンパクトに維持しながら、その出力範囲を容易に拡大することが可能となる。
即ち、入力軸2上に可変容量型の油圧ポンプ17と固定容量型の油圧モータ18を備え、油圧モータ18の固定斜板たる出力側斜板12を回転出力部とした油圧式無段変速装置1と、入力軸2と同心上に配置した遊星歯車機構3と、により構成した油圧−機械式無段変速装置100であって、出力側斜板12と、遊星歯車機構3を、一体的に連結した構成としている。これにより、油圧式無段変速装置1と遊星歯車機構3の間に伝達軸を別途設ける必要がないため、油圧−機械式無段変速装置100をコンパクトに構成することができるのである。また、油圧−機械式無段変速装置100よりも後段に配置する伝達要素(例えば、副変速機構19等)の設計自由度を向上させることができるのである。そして、トランスミッション101・102をコンパクトに構成することができるのである。
次に、本発明の第二実施例に係る、油圧−機械式無段変速装置200の全体構成について説明をする。尚、説明の便宜上、図6中に示す矢印Bの方向を前方とする。図6乃至図8に示す如く、本発明の第二実施例に係る油圧−機械式無段変速装置200は、第一実施例と同様の油圧式無段変速装置1と、遊星歯車機構53等により構成している。そして、入力軸2上の前方側に油圧式無段変速装置1を配設し、同じく入力軸2上の該油圧式無段変速装置1の後方に遊星歯車機構53を隣接して配設している。即ち、本第二実施例の油圧−機械式無段変速装置200も第一実施例に係る油圧−機械式無段変速装置100と同様に、油圧式無段変速装置1および遊星歯車機構53を、同一軸(即ち、入力軸2)上に配設する構成としている。
また、トランスミッション201・202は、前記油圧式無段変速装置1や副変速機構69等により構成している。そして、油圧式無段変速装置1の後段に備えられる副変速機構69には、複数のクラッチ機構86・87・88を備えており、該クラッチ機構86・87・88を選択的に切替えることにより、油圧式無段変速装置1から直接出力回転を伝達するか、または、油圧式無段変速装置1からの出力回転を遊星歯車機構53を介して伝達するかのいずれかを選択することができる構成としている。そして、トランスミッション201からの出力が、デフ機構34を介して最終的に駆動輪35に伝達されて、作業車両等を走行駆動する構成としている。
次に、遊星歯車機構53について説明をする。図6および図7に示す如く、第二実施例に示す遊星歯車機構53は、第一プラネタリギア70、第一サンギア71、第二プラネタリギア72、第二サンギア73、プラネタリキャリア74等により構成されており、前記出力側斜板12の後方(厳密には出力ケース16の後方)に隣接して配設されている。また、第二実施例に示す遊星歯車機構53は、前記出力ケース16に遊星歯車機構53の前記第一サンギア71が一体的に形成される構成としており、該出力ケース16の後方に配置された前記プラネタリキャリア74に突設されたギア軸74a上に第一プラネタリギア70および第二プラネタリギア72を回動自在に支持している。またさらに、本実施例では、第一プラネタリギア70と第二プラネタリギア72を同一軸(即ち、ギア軸74a)上に固設して一体的に構成している。
また、出力側斜板12を構成する出力ケース16に、遊星歯車機構53を構成する第一サンギア71を一体的に形成し、遊星歯車機構53と出力側斜板12とを一体的な構成とすることにより、遊星歯車機構53を具備しない従来の油圧式無段変速装置1のケーシングを拡大することなく、従来と同じケーシングの中に遊星歯車機構53を内蔵することができるため、遊星歯車機構53を設けるために余計なスペースを確保する必要がなく、コンパクトな油圧−機械式無段変速装置200を構成することができる。
第一サンギア71は、前述した通り、出力側斜板12に一体的に形成されるとともに、前記入力軸2上にベアリングを介して該入力軸2に対して相対回転自在に支持されており、前記第一プラネタリギア70と噛合している。即ち、遊星歯車機構53には、第一サンギア71により出力側斜板12の回転が伝達されている。また、第二サンギア73は前記入力軸2上に相対不能に固設されており、前記第二プラネタリギア72と噛合している。即ち、遊星歯車機構53には、第二サンギア73により入力軸2の回転が伝達されている。
このように、入力軸2の出力回転が前記第二サンギア73から遊星歯車機構53に入力されて(厳密には第二サンギア73から第二プラネタリギア72に伝達されて)、かつ、出力側斜板12の出力回転が出力ケース16に一体的に形成された第一サンギア71から遊星歯車機構53に入力されて、第一プラネタリギア70に伝達されて(厳密には第一サンギア71から第一プラネタリギア70に伝達されて)、これら2系統からの(即ち、第一サンギア71と第二サンギア73との)入力回転が合成されて、第一プラネタリギア70および第二プラネタリギア72により、ギア軸74aを介してプラネタリキャリア74に合成された回転出力が伝達される構成としている。
プラネタリキャリア74は、入力軸2上に相対回転可能に支持されている連通部材75と一体的な構成としており、また、該連通部材75を介して出力ギア76が一体的に形成されている。そして、遊星歯車機構53により合成された回転出力を該出力ギア76から出力するように構成している。このような構成とすることにより、油圧−機械式無段変速装置200の出力伝達要素である出力側斜板12からの出力と、伝達効率の高い機械要素(ギア)の出力伝達要素である第二サンギア73からの出力が、第一プラネタリギア70で合成される。これにより、油圧−機械式無段変速装置200の出力伝達の割合(即ち、油圧分担比)を軽減し、最終出力伝達要素である出力ギア76から出力される出力回転の出力伝達効率を改善している。
即ち、遊星歯車機構53を、回転出力部たる出力側斜板12と一体的に形成する第一サンギア71と、該第一サンギア71と噛合する第一プラネタリギア70と、入力軸2上に固設される第二サンギア73と、該第二サンギア73と噛合する第二プラネタリギア72と、入力軸2上に回転自在に支持されるプラネタリキャリア74により構成し、プラネタリキャリア74に、一体的に形成した第一プラネタリギア70および第二プラネタリギア72を回転自在に支持し、第一サンギア71からの入力と、第二サンギア73からの入力を、第一プラネタリギア70および第二プラネタリギア72において合成し、プラネタリキャリア74から出力が成される構成としている。これにより、油圧式無段変速装置1の入力軸2と同一軸心上に遊星歯車機構53を配置することでき、これにより、油圧−機械式無段変速装置200をコンパクトに構成することができるのである。また、油圧−機械式無段変速装置200をトランスミッション201・202に採用することにより、油圧−機械式無段変速装置200よりも後段の出力伝達要素(例えば、副変速機構69等)の設計の自由度を向上させるとともに、トランスミッション201・202をコンパクトな構成とすることができるのである。
さらに、第二実施例に示す油圧−機械式無段変速装置200は、前記出力ケース16に出力ギア89を固設している。これにより、出力側斜板12の回転出力を前記遊星歯車機構53を介さずに直接出力ギア89により伝達することもできる構成としている。
次に、第二実施例に係る油圧−機械式無段変速装置200の出力伝達の流れについて説明をする。図7示す如く、第一副変速ギア80は、前進側低速クラッチ86により係脱自在に副変速軸77上に支持されている。そして、前進側低速クラッチ86が「入」状態である場合には、出力ギア89と噛合する第一副変速ギア80から副変速軸77に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が前進方向に低速で駆動される。また、第二副変速ギア81は、後進側クラッチ87により係脱自在に副変速軸77上に支持されている。そして、後進側クラッチ87が「入」状態である場合には、まず出力ギア89から、該出力ギア89と噛合する第一逆転ギア83を介してカウンター軸79に回転出力が伝達され、カウンター軸79上に固設される第二逆転ギア82と噛合する第二副変速ギア81から副変速軸77に出力回転が伝達されて、前記駆動輪35が後進方向に駆動される。さらに、第三副変速ギア93は、前進側高速クラッチ88により係脱自在に副変速軸77上に支持されている。そして、前進側高速クラッチ88が「入」状態である場合には、出力ギア76と噛合する第三副変速ギア93から副変速軸77に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が前進方向に高速で駆動される。つまり、油圧式無段変速装置1の回転出力は、各クラッチ機構86・87・88を選択的に切替えることにより、遊星歯車機構53を介して副変速軸77に伝達することが可能であり、あるいは、遊星歯車機構53を介さずに副変速軸77に伝達することも可能な構成としている。そして、所望する速度域や進行方向に応じて各クラッチ機構86・87・88の切替を行うことにより、作業車両等を前後進自在に駆動する構成としている。
即ち、トランスミッション201は、入力軸2上に可変容量型の油圧ポンプ17と固定容量型の油圧モータ18を備え、油圧モータ18の固定斜板(即ち、出力側斜板12)を回転出力部とした油圧式無段変速装置1と、入力軸2と同心上に配置した遊星歯車機構53により構成する油圧−機械式無段変速装置200を備え、出力側斜板12と、遊星歯車機構53を、一体的に連結し、出力側斜板12による前進側の回転出力を係脱自在に伝達する第一クラッチたる前進側低速クラッチ86と、遊星歯車機構53による前進側の回転出力を係脱自在に伝達する第二クラッチたる前進側高速クラッチ88と、遊星歯車機構53による後進側の回転出力を係脱自在に伝達する第三クラッチたる後進側クラッチ87を備える構成としている。このような構成とすることにより、トランスミッション201の速度範囲を、コンパクトな構成で容易に拡大することができるのである。また、後進方向の最高速度での走行状態から前進方向の最高速度での走行状態に至るまで、連続的に無段変速を行うことができるのである。
また、第二実施例に係る油圧−機械式無段変速装置200を用いて、図8に示すトランスミッション202のように構成することも可能である。図8に示す如く、第一副変速ギア94は、低速クラッチ96により係脱自在に副変速軸77上に支持されている。そして、低速クラッチ96が「入」状態である場合には、出力ギア76と噛合する第一副変速ギア94から副変速軸77に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が低速域において前進方向または後進方向に駆動される。また、第二副変速ギア95は、高速クラッチ97により係脱自在に副変速軸77上に支持されている。そして、高速クラッチ97が「入」状態である場合には、出力ギア89と噛合する第二副変速ギア95から副変速軸77に出力回転が伝達され、前記駆動輪35が高速域において前進方向に駆動される。このように、カウンター軸を備えず、また、2系統のクラッチ機構96・97でトランスミッション202を構成すれば、図7に示すトランスミッション201と同様に容易に前後進の切替を可能としながら、トランスミッション201に比してよりコンパクトなトランスミッションの構成とすることができる。つまり、トランスミッション201の構成とする場合と同様に、図8に示すトランスミッション202の構成とする場合も、所望する速度域や進行方向に応じて各クラッチ機構96・97の切替を行う構成としている。そして、副変速機構69からデフ機構34を介して駆動輪35に回転出力が伝達されて、作業車両等を前後進自在に駆動する構成としている。
即ち、トランスミッション202は、入力軸52上に可変容量型の油圧ポンプ67と固定容量型の油圧モータ68を備え、油圧モータ68の固定斜板(即ち、出力側斜板12)を回転出力部とした油圧式無段変速装置51と、入力軸52と同心上に配置した遊星歯車機構53により構成する油圧−機械式無段変速装置200を備えるトランスミッション202であって、出力側斜板12と、遊星歯車機構53を、一体的に連結し、出力側斜板12による前進側の回転出力を係脱自在に伝達する第一クラッチたる高速クラッチ97と、遊星歯車機構53による前進側または後進側の回転出力を係脱自在に伝達する第二クラッチたる低速クラッチ96を備える構成としている。このような構成とすることにより、トランスミッション202の速度範囲を、コンパクトな構成で容易に拡大することができるのである。また、後進方向の最高速度での走行状態から前進方向の最高速度での走行状態に至るまで、連続的に無段変速を行うことができるのである。
次に、本発明の第二実施例に係る油圧−機械式無段変速装置200の出力状況について説明をする。まず、図7に示すトランスミッション201の構成とした場合の出力状況を説明する。図4に示す如く、油圧式無段変速装置51は、エンジン15の出力回転をa(図3中の線図α)とした場合に、入力側斜板6の傾斜角に対応して、出力回転が0〜2a(図3中の線図X)の範囲で可変となる構成としている。そして、前進側低速クラッチ86が「入」状態である場合には、油圧式無段変速装置51の出力を直接取り出す構成となるため、係る場合には、トランスミッション201からの出力状況は、図4中に示す線図Xの範囲となる。
一方、後進側クラッチ87が「入」状態である場合には、図4中の線図Yに示す如く、出力側斜板12の角度に応じて、出力が−2a〜0の範囲で可変となる構成としている。さらに、前進側高速クラッチ88が「入」状態である場合には、図4中の線図Zに示す如く、出力側斜板12の角度に応じて、出力が2a〜4aの範囲で可変となる構成としている。そして、各線図(線図X乃至線図Z)の端点を、図4に示す如く点Aおよび点Bで一致させる構成とすることにより、各クラッチ機構86・87・88を適宜切替えて、後進方向への最高速度での走行状態から前進方向への最高速度での走行状態に至るまで連続的に無段変速を行うことができる構成としている。このように、油圧式無段変速装置51の出力側斜板12と遊星歯車機構53を一体的に構成することにより、油圧−機械式無段変速装置200の構成をコンパクトに維持しながら、その出力範囲を容易に拡大することが可能となる。
このように、第一および第二実施例に示す如く、油圧式無段変速装置1・51の出力側斜板12と遊星歯車機構3・53を一体的に構成する例を示したが、遊星歯車機構の構成の如何に係わらず、出力側斜板と遊星歯車機構を一体的に構成することにより、油圧−機械式無段変速装置100・200をコンパクトな構成とすることができ、また、油圧−機械式無段変速装置100・200よりも後段となる伝達要素(即ち、副変速機構19・69等)の構成に自由度を持たせることが可能となるのである。そして、トランスミッション101・102・201・202に例示するように、さまざまなバリエーションのトランスミッションを構成することが可能となるのである。