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JP4949052B2 - 内部割れを防止した鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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本発明は、内部割れを発生させない最大鋳造速度で鋼の連続鋳造を行う方法に関するものである。
鋼の連続鋳造においては、生産性向上の観点からできるだけ鋳造速度を向上させることが求められている。しかし、鋳造速度を高め過ぎると鋳片に内部割れが発生し、スラブ全体が不良品として廃棄処分される結果となる。このため従来から内部割れを発生させないように鋳造速度の規制が行われているが、鋼種によって内部割れ感受性(内部割れ限界歪εcrで表現される内部割れの発生し易さ)はさまざまであり、内部割れの発生限界を事前に見極めることは困難であった。
従って従来は例えば、鋳造しようとする鋼種のC、P、Sの上限値と最大鋳造速度Vcとの関係を蓄積したデータベースに基づいて、最大鋳造速度Vcが設定されている。しかし、この方法は過去の経験値をベースとするものであるから、鋼種によっては更に高速鋳造が可能であるにもかかわらずそれよりもかなり低速鋳造を行うという生産ロスが生じていたり、設定された最大鋳造速度Vc以下で鋳造したにもかかわらず内部割れを発生させたりする可能性があった。
なお特許文献1には、鋼種による内部割れ感受性が鋼中のMn/Sの比及びCによって変化することに着目し、その請求項に記載された数式によって内部割れ限界歪εcrを計算し、この値を考慮して鋳造条件を設定する方法が開示されている。しかしここで考慮されているのは鋼中のMn、S、Cの3元素に過ぎず、現在生産されている多様な鋼種についての最適鋳造条件をこの式によって決定することは不可能であるうえ、用いられている数式も特定制限条件下における実験式であり、普遍性に乏しい。
また本発明者等の経験によれば、同一の鋼種を連続鋳造しているにもかかわらず、チャージ毎に鋼中の成分値、特にP、S等は微妙に変動しており、チャージによって内部割れの発生状況が変化することがある。このため特許文献1のように、鋳造しようとする鋼のMn、S、Cに関する成分規格値を用いて内部割れ限界歪εcrを計算する方法では、内部割れを完全に防止できないことは特許文献1の実施例にも記載されている通りである。
特開平5-185183号公報
従って本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、過去に鋳造経験のない鋼種を含む多様な鋼種について、内部割れを発生させるおそれのない最大鋳造速度を事前に計算により正確に求め、生産性を可及的に向上させることができる内部割れを防止した鋼の連続鋳造方法を提供することである。
上記の課題を解決するためになされた本発明は、鋼の連続鋳造を行なうに当たり、二次精錬後の鋼の成分値として、C、Si、Mn、P、Sを含む5以上の元素の成分値をチャージ毎に分析し、それらの値からミクロ偏析を計算して求めた固相率より脆化域幅ηを求め、さらに内部割れ限界歪εcrを計算し、連続鋳造時の鋳片各位置で計算される総合歪εtのうちの最大値が計算された内部割れ限界歪εcrを越えない最大鋳造速度Vcを決定して、その最大鋳造速度Vcで連続鋳造を行なうことを特徴とするものである。
本発明においては、ミクロ偏析の計算は、凝固中におけるデンドライト樹間の溶質元素の濃化を、δ/γ間の溶質分配及び固相内の溶質拡散を考慮した数値計算法により行い、得られた凝固完了までの任意温度におけるデンドライト樹間中心部の固相率から脆化域幅ηを求め、これに基づいて内部割れ限界歪εcrを計算することが好ましい。
本発明によれば、二次精錬後の鋼の成分値に応じて内部割れ限界歪εcrを計算し、連続鋳造時の総合歪みεtが計算された内部割れ限界歪εcrを越えない最大鋳造速度Vcで連続鋳造を行うので、チャージ毎に変動する鋼の成分値に対応した最大鋳造速度Vcでの連続鋳造が可能となり、生産性を向上させることができる。またC、Si、Mn、P、Sを含む5以上の元素の成分値をチャージ毎に分析し、ミクロ偏析と、固相率との関係から内部割れ限界歪εcrの計算を行うことにより、過去に鋳造経験のない鋼種を含む様々な鋼種に対して事前に精度よく、内部割れを発生させるおそれのない最大鋳造速度Vcを求め、生産性を向上させることができる。
以下に本発明の実施形態を示すが、まず本発明において問題としている鋼の連続鋳造時の内部割れについて説明する。内部割れは、凝固初期において鋳片の固液界面に存在する柱状晶(デンドライト樹)が引張り歪により開口し、そこに濃化液相が侵入する現象と考えられる。図1はこの内部割れ発生機構の模式図であり、左側が鋳片の中心側(高温側)、右側が表面側(低温側)である。
図1中にZDT(Zero Ductility Temperature)として示すのは固相率=1.0となる温度ラインであり、このラインよりも表面側は固相域であり図示のように延性が発現する領域である。またZST(Zero Strength Temperature)として示すのは強度を発現する温度ラインであり、このラインよりも中心側は液相の存在により強度ゼロの領域である。ZSTは固相率=0.7に相当する。これらZDTとZSTとの中間領域、すなわち固相率が0.7〜1.0の領域が脆化域である。
凝固過程においては、図1のように固相域から液相域に向かって柱状晶(デンドライト樹)が生成されていくが、この状態において鋳片に鋳造方向の歪が加えられると、上記したZDTとZSTとの中間の脆化域でデンドライト樹の開口が起こる。この開口を発生させ始める歪が内部割れ限界歪εcrである。従って内部割れ限界歪εcrにより内部割れ感受性を評価することができる。
特許文献1ではこの内部割れ限界歪εcrを実験に基づいて、鋼中成分の(Mn/S)及び(C)の関数として求めている。これに対して本発明では二次精錬後の鋼の成分値をC、Si、Mn、P、S、B、Nの7元素につき分析し、それらの値に応じて内部割れ限界歪εcrをミクロ偏析モデルを用いて計算する。ここでミクロ偏析モデルとは、図1に示した凝固過程におけるデンドライト樹間の溶質元素の濃化をシミュレートするための数学モデルであり、それ自体は1987年の「鉄と鋼」第11号に「炭素鋼のデンドライト間ミクロ偏析に対する合金元素の影響」と題する論文中に掲載されている。ただしこのミクロ偏析モデルを内部割れ限界歪εcrの計算に利用することは、本発明において初めて提案されることであり、以前には行われていない。
以下に、本発明を理解するうえで必要な限度で、ミクロ偏析モデルの概要を説明するが、学術的な詳細は上記論文を参照していただきたい。このミクロ偏析モデルでは、デンドライトの形状を図2に示すように横断面が正六角形で近似する。そして主軸方向の溶質の拡散は無視し、デンドライト間の部分における溶質の三次元拡散を図3に示す三角形OPQの半径方向の一次元拡散で近似する。ここで溶質としては、C、Si、Mn、P、Sを含む5以上の元素を用いることができる。
固/液界面及びδ/γ界面においては、局所平衡が成立し、平衡分配係数に対応した溶質の平衡分配が生じるものとする。定性的には、δからγに変態中にはSi、P、Moなどはγ相(樹間)からδ相(樹芯)へ再分配され、C、Mnなどは逆にδ相からγ相に再分配される。このように凝固の進行に伴って逐次進行する界面濃度の変化をコンピュータを用いて数値計算する。計算はデンドライトの横断面をメッシュに分割し、微小時間刻みで物質収支を計算する方法で行う。このように界面濃度を計算するのは、それが凝固点を大きく変えるからである。そして状態図から求められる液相/δ/γの変態温度(下記の1式、2式)に応じて各相が生じるものとし、逐次計算される界面濃度から、各時点での各相の比率と溶質元素濃度を計算する。
固/液界面温度=1536-78(%C)-7.6(%Si)-4.9(%Mn)-34.4(%P)-38(%S)・・・・1式
δ/γ界面温度=1392+1122(%C)-60(%Si)+12(%Mn)-140(%P)-160(%S)・・・・2式
なおこれらの式中の(%C)などは、各溶質の含有率を質量%で表示した値を意味する。なお、C、Si、Mn、P、S以外の元素Xに対してモデルを適用する場合は、Fe-X二元系における固/液界面温度、δ/γ界面温度のX濃度に対する傾きから、近似的に1式、2式の係数を決めることができる。
このミクロ偏析モデルは、凝固工程中におけるデンドライト内の溶質分布及び溶質の濃化による液相線温度の低下により決定される固液の割合を求めるために作成されたモデルであるが、本発明ではこのミクロ偏析の計算によって求められる凝固工程中における各相の比率から固相率を求め、固相率=1.0なる温度としてZDT,固相率=0.7なる温度としてZSTを求める。上記の式からも明らかなように、界面温度及び界面温度から計算されるこれらの値は二次精錬後の鋼中のC、Si、Mn、P、S、B、N等の値によって変化するのであるが、ミクロ偏析モデルを用いることによって、正確にZDTとZSTを求めることが可能となる。
次にZDTとZSTから、それらの間の脆化域幅ηを次の式により求める。
η=[1.0-{(ZDT-T0)/ (ZST-T0)}1.291]×d・・・・・3式
ただしT0はスラブ表面温度、dは凝固シェル厚(mm)である。
本発明者等の研究によれば、脆化域幅ηと前記した内部割れ限界歪εcrとの間には図4に示すとおりの関係がある。そこで次の4式により内部割れ限界歪εcrを計算する。
εcr=6.02×η-2.13・・・・・・・・4式
連続鋳造工程においては、鋳片の曲げ戻し変形による歪、バルジング歪、ロールのミスアライメントに起因する歪などが鋳片に加わり、これらの総和を総合歪εtと呼ぶ。総合歪εtは連続鋳造中の鋳片各位置において計算される。様々な鋼種について実績調査を行った結果、図5に示すように、ミクロ偏析モデルを用いて計算された内部割れ限界歪εcrが総合歪εt以下であれば、内部割れが発生しないことが確認された。
従って、連続鋳造時の総合歪みεtの最大値が計算された内部割れ限界歪εcrを越えないように鋳造条件を設定すればよい。連続鋳造設備が同一であれば、総合歪みεtは鋳造速度にほぼ比例して増加する。そこで総合歪みεtの最大値が計算された内部割れ限界歪εcrを越えないように最大鋳造速度Vcを決定し、その最大鋳造速度Vcで連続鋳造を行うことにより、内部割れを発生させない限界付近での鋳造が可能となり、生産性を最大限にまで引き上げることができる。
なお、連続鋳造設備の個性によって総合歪みεtと鋳造速度との関係が異なるため、計算された内部割れ限界歪εcrと最大鋳造速度Vcとの関係を一般式により表現することは困難である。しかしばらつきを無視して概略的に表現すれば、出願人会社の連続鋳造設備においては、内部割れ限界歪εcrが0.06%の場合の最大鋳造速度Vcは1.0mpmであり、0.2%では1.4mpm、0.4%では1.8mpm、0.6%では2.2mpm程度である。
以上に説明した本実施形態の各ステップをブロック図にまとめると、図6のようになる。本発明によれば、過去に鋳造経験のない鋼種を含む多様な鋼種について、内部割れを発生させるおそれのない最大鋳造速度Vcを事前に計算により正確に求め、生産性を可及的に向上させることができる。次に本発明の実施例を示す。
一般厚板用40kg鋼について、本発明を適用した。この鋼種は、0.13%C-0.10%Si-0.85%Mn-0.02%P-0.01%Sを標準組成とするもので、従来、最大鋳造速度Vc=1.3m/minとして連続鋳造されていたものである。本発明によりミクロ偏析モデルを用いて内部割れ限界歪εcrを計算すると、εcr=0.23%となった。そこでVc=1.4m/minへの増速を実施し、内部割れを発生させることなく連続鋳造が可能であることを確認した。
同一の鋼種について、あるチャージの二次精錬後の鋼の成分値を分析したところ、0.13%C-0.10%Si-0.85%Mn-0.02%P-0.008%Sであった。本発明によりミクロ偏析モデルを用いて内部割れ限界歪εcrを計算すると、εcr=0.26%となった。そこでVc=1.5m/minへの増速を実施し、内部割れを発生させることなく連続鋳造が可能であることを確認した。
同一の鋼種について、別のチャージの二次精錬後の鋼の成分値を分析したところ、0.13%C-0.10%Si-0.85%Mn-0.015%P-0.008%Sであった。本発明によりミクロ偏析モデルを用いて内部割れ限界歪εcrを計算すると、εcr=0.31%となった。そこでVc=1.6m/minへの増速を実施し、内部割れを発生させることなく連続鋳造が可能であることを確認した。
B含有80kgハイテンについて、本発明を適用した。この鋼種は、0.18%C-0.20%Si-1.50%Mn-0.02%P-0.005%S-0.002%Bを標準組成とするものである。従来、B含有鋼はVc=1.0m/minで鋳造していた。本発明によりミクロ偏析モデルを用いて内部割れ限界歪εcrを計算すると、εcr=0.06%となった。そこで、Vc=1.1m/minへの増速を実施し、内部割れを発生させることなく連続鋳造が可能であることを確認した。
高N含有低炭素鋼について、本発明を適用した。この鋼種は、0.06%C-0.02%Si-0.25%Mn-0.020%P-0.015%S-0.0120%Nを標準組成とするものである。従来、同じ組成でNを含有しない鋼種と同じVc=2.2mpmで鋳造していたが、内部割れが3%程度発生して生産ロスが発生していた。本発明によりミクロ偏析モデルを用いて内部割れ限界歪εcrを計算すると、εcr=0.5%となった。そこで、Vc=2.0mpmへの減速を実施し、内部割れの発生をなくすことができた。
上記したように、本発明によれば二次精錬後の鋼の成分値に応じて最大鋳造速度Vcを内部割れを発生させることのない範囲で最大限まで増速することができ、生産性の向上を図ることが可能となる。また本発明は過去に鋳造実績のない鋼種に対しても適用可能であり、事前に最適な最大鋳造速度Vcを設定することが可能となる。
内部割れ発生機構の模式図である。 ミクロ偏析モデルにおけるデンドライトの形状を示す図である。 ミクロ偏析モデルにおける溶質の三次元拡散を示す図である。 脆化域幅ηと内部割れ限界歪εcrとの関係を示すグラフである。 内部割れ限界歪εcrと、総合歪εtと、内部割れ発生との関係を示すグラフである。 本実施形態のステップを示すブロック図である。

Claims (2)

  1. 鋼の連続鋳造を行なうに当たり、二次精錬後の鋼の成分値として、C、Si、Mn、P、Sを含む5以上の元素の成分値をチャージ毎に分析し、それらの値からミクロ偏析を計算して求めた固相率より脆化域幅ηを求め、さらに内部割れ限界歪εcrを計算し、連続鋳造時の鋳片各点で計算される総合歪εtのうちの最大値が計算された内部割れ限界歪εcrを越えない最大鋳造速度Vcを決定して、その最大鋳造速度Vcで連続鋳造を行なうことを特徴とする内部割れを防止した鋼の連続鋳造方法。
  2. ミクロ偏析の計算は、凝固中におけるデンドライト樹間の溶質元素の濃化を、δ/γ間の溶質分配及び固相内の溶質拡散を考慮した数値計算法により行い、得られた凝固完了までの任意温度におけるデンドライト樹間中心部の固相率から脆化域幅ηを求め、これに基づいて内部割れ限界歪εcrを計算することを特徴とする請求項1に記載の内部割れを防止した鋼の連続鋳造方法。
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