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JP4960070B2 - 黒色セラミックスおよびこれを用いた時計用装飾部品ならびにその黒色セラミックスの製造方法 - Google Patents
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黒色セラミックスおよびこれを用いた時計用装飾部品ならびにその黒色セラミックスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、装身具用装飾部品,時計用装飾部品,建材用装飾部品,キッチン部品用装飾部品,家電用装飾部品および自動車用装飾部品等に用いられる装飾部品に好適な黒色セラミックスに関するものであり、とりわけ腕時計用ケース,バンド駒に好適に用いられて美しい色調を醸し出す時計用装飾部品に関するものである。
従来より、ヨーロッパにおける時計宝飾展では、濃色系の時計用装飾部品が脚光を浴びており、最近では黒色系の時計用装飾部品が急速に流行しつつある。黒色を採用した装飾部品は、有彩色を採用する装飾品が多い中で、古くからフォーマルカラーとして用いられており、シンプルで洗練された感覚を与えることから根強い評価を得てきている。
このような状況の中で、装飾部品に用いる様々な黒色セラミックスが提案されている。例えば、特許文献1では、安定化剤を含むジルコニア原料100重量部に対し、着色顔料としてCoOを1〜5重量部、Feを0.25〜1.0重量部の割合で添加し、さらにCrを0.25〜1.0重量部の割合で添加した濃色系着色ジルコニアセラミックスが提案されており、実施例では淡青色,濃青色および暗青色のジルコニアセラミックスが記載されている。
また、特許文献2では、Fe,Co,Ni,Cr,Si,Mn,Al,Znの酸化物の少なくとも1種類以上を合量で1〜10重量%、炭素を0.1〜1重量%および安定化剤を含有してなるジルコニア質黒色系焼結体が提案されており、実施例ではFe,FeO,Cr,CoO,NiO,SiO,MnO,AlおよびZnOが酸化物顔料として開示され、これら酸化物顔料が着色剤であることが記載されている。
また、特許文献3では、3−70重量%の酸化イットリウム,酸化マグネシウム,酸化セリウムおよび酸化カルシウムから成る酸化物の群から選ばれる少なくとも1種類の安定化剤で安定化されたジルコニアのマトリックス、および酸化コバルトが25−50重量%、残余が酸化鉄である酸化コバルトと酸化鉄の粉末またはスピネルCoFeの粉末により形成される1−10重量%の顔料から主として成る成型物から作製された焼成物により形成される黒色のジルコニアを主成分とする装飾用物品が記載されている。
特許第2761742号公報 特公平3−9062号公報 特許第3714563号公報
しかしながら、特許文献1に記載された濃色系着色ジルコニアセラミックスは、淡青色,濃青色および暗青色色調を呈するものの、黒色を呈するジルコニアセラミックスではなかったため、黒色が求められる市場に受け入れられるものではなかった。
また、特許文献2に記載されたジルコニア質黒色系焼結体は、ジルコニア本来の高強度や高靱性等の機械的特性を有するものの、均質で深みのある有色感の優れた青色,茶色および灰色を帯びた黒色を呈したものであって、最近の市場で人気の高い、いわゆる極黒色という色調を呈するものではなかった。さらに、ジルコニア質黒色系焼結体を焼成するときに窒素雰囲気で焼成しているため、生産コストが高いという問題もあった。
また、特許文献3に記載された黒色のジルコニアを主成分とする装飾用物品は、ジルコニア本来の高強度や高靱性等の機械的特性を有し、黒色を示してはいるが、わずかながらも青みを呈する色調であって、いわゆる極黒色と呼ばれる黒に近いものではなかった。
本発明は、このような課題に鑑み、極黒色と言われる黒色の色調を醸し出し、高級感が味わえるとともに、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得られる黒色セラミックスおよびこれを用いた時計用装飾部品ならびにその黒色セラミックスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の黒色セラミックスは、安定化剤および着色剤を含むジルコニアセラミックスからなり、前記着色剤が、酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)と、酸化鉄(Fe)および酸化クロム(Cr)であって、前記着色剤の全含有量に対して、前記酸化コバルトの含有量が40〜70質量%、前記酸化鉄の含有量が15〜30質量%および前記酸化クロムの含有量が15〜30質量%であり、表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が3.0以上4.5以下、クロマティクネス指数a*およびb*がそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下であることを特徴とするものである。
また、本発明の黒色セラミックスは、上記構成において、前記黒色セラミックスの見掛密度が5.9g/cm以上6.1g/cm以下であることを特徴とするものである。
また、本発明の黒色セラミックスは、上記構成において、前記表面における開気孔率が0.2%以下であることを特徴とするものである。
さらに、本発明の黒色セラミックスは、上記構成において、前記表面における開気孔の最大開口径が50μm以下であることを特徴とするものである。
また、本発明の時計用装飾部品は、上記いずれかの構成の本発明の黒色セラミックスからなることを特徴とするものである。
また、本発明の黒色セラミックスの製造方法は、酸化ジルコニウム(ZrO )91〜97mol%と、酸化イットリウム(Y ),酸化ハフニウム(HfO ),酸化セリウム(CeO ),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)から選ばれる少なくとも1種の安定化剤3〜9mol%とからなる組成100質量部に対し、着色剤と
して酸化コバルト(CoO,Co ,Co のうち少なくともいずれか1種)1〜2.5質量部、酸化鉄(Fe )0.5〜1.0質量部および酸化クロム(Cr )0.5
〜1.0質量部を添加して、黒色系のセラミックボールを用いて、混合粉砕する工程を含む
ことを特徴とする。
本発明の黒色セラミックスによれば、安定化剤および着色剤を含むジルコニアセラミックスからなり、前記着色剤が、酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)と、酸化鉄(Fe)および酸化クロム(Cr)であって、前記着色剤の全含有量に対して、前記酸化コバルトの含有量が40〜70質量%、前記酸化鉄の含有量が15〜30質量%および前記酸化クロムの含有量が15〜30質量%であり、表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が3.0以上4.5以下、クロマティクネス指数a*およびb*がそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下であることから、黒色の複合酸化物であるCoO−Fe−Cr,Co−Fe−CrおよびCo−Fe−Crのいずれかが形成するために、これらが黒色セラミックスの表面における光の反射率が低くなるように作用し、その色調は極黒色と言われる黒色の色調を醸し出すとともに、極黒色の色調にほどよい明るさが発現できるので、神々しい黒色が得られる。その結果、視覚を通じて、高級感,美的満足感および精神的安らぎが得られ、市場での人気が高くなる
また、本発明の黒色セラミックスによれば、見掛密度が5.9g/cm以上6.1g/cm以下であるときには、黒色セラミックスが軽量化できるので、身に付ける装飾部品に用いると、女性の所有者にも好まれるものとなる。
また、本発明の黒色セラミックスによれば、表面における開気孔率が0.2%以下であるときには、気孔が形成する輪郭による色むらが減少して表面における色調が濃くなるため、明度指数L*の値が小さくなり、より質感が増すため、高い美的満足感を得られるものとなる。
さらに、本発明の黒色セラミックスによれば、前記表面における開気孔の最大開口径が50μm以下であるときには、本発明の黒色セラミックスを腕時計用バンド駒に用いると、気孔の輪郭によって他の部分との違いによる色むらが減少するとともに、隣り合うバンド駒との色調の違いがほとんどなくなるため、部品交換をしても色調に違和感を覚えるようなことがない。
また、本発明の黒色セラミックスを用いた本発明の時計用装飾部品によれば、本発明の黒色セラミックスに高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得られるので、身に着けたり身近に置いたりして視覚的な美観が要求される時計用装飾部品としてとりわけ好適に用いることができる。
また、本発明の黒色セラミックスの製造方法によれば、酸化ジルコニウム(ZrO )91〜97mol%と、酸化イットリウム(Y ),酸化ハフニウム(HfO ),酸化セリウム(CeO ),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)から選ばれる少なくとも1種の安定化剤3〜9mol%とからなる組成100質量部に対し、
着色剤として酸化コバルト(CoO,Co ,Co のうち少なくともいずれか1種)1〜2.5質量部、酸化鉄(Fe )0.5〜1.0質量部および酸化クロム(Cr
)0.5〜1.0質量部を添加して、黒色系のセラミックボールを用いて、混合粉砕する工程を含むときには、明度が高い粉末の混入を抑制することができ、前記表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が3.0以上4.5以下であるものとすることができる。
以下、本発明の実施の形態の例について説明する。
本発明の黒色セラミックスは、安定化剤および着色剤を含むジルコニアセラミックスからなり、前記着色剤が、酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)であるとともに、前記着色剤の副成分は酸化鉄(Fe)および酸化クロム(Cr)であって、前記着色剤の全含有量に対して、前記酸化コバルトの含有量が40〜70質量%、前記酸化鉄の含有量が15〜30質量%および前記酸化クロムの含有量が15〜30質量%であり、表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が3.0以上4.5以下、クロマティクネス指数a*およびb*がそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下であることを特徴としている。
本発明者らは、装飾的価値を求める所有者に高級感,美的満足感,精神的安らぎ等を与えられ、しかも最近の市場で人気の高い極黒色と言われる色調を醸し出す黒色セラミックスが得られるように種々の検討を重ねた結果、安定化剤および着色剤を含むジルコニアセラミックスからなり、着色剤の主成分を酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)にするとともに、副成分を酸化鉄(Fe)および酸化クロム(Cr)にすることによって、前述の目的を達成できることを突き止めたのである。
すなわち、本発明の黒色セラミックスは、その構成成分を酸化イットリウム(Y),酸化ハフニウム(HfO),酸化セリウム(CeO),酸化マグネシウム(MgO),酸化カルシウム(CaO)等の安定化剤、酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)、酸化鉄(Fe)および酸化クロム(Cr)からなる着色剤ならびにジルコニアからなるマトリックスで構成して、着色剤の主成分である酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)と、副成分である酸化鉄(Fe)および酸化クロム(Cr)とによって装飾的価値を求める所有者に高級感,美的満足感,精神的安らぎ等を与えられ、しかも最近の市場で人気の高い極黒色と言われる色調を醸し出すようにしてある。
なお、本発明で主成分とは着色剤100質量部中で最も比率の高い成分をいい、副成分とは主成分以外の成分をいう。特に、着色剤の主成分は着色剤100質量%中で43質量%以上60質量%以下であることが好適である。
酸化鉄(Fe)の粉末は赤色であり、酸化クロム(Cr)の粉末は緑色であるものの、焼結体中では複合酸化物CoO−Fe−Cr,Co−Fe−CrおよびCo−Fe−Crのいずれかとして存在し、極黒色の色調を醸し出すことができる。
さらに、安定化剤および着色剤の各構成成分は、X線回折装置,蛍光X線分析装置,透過型電子顕微鏡(TEM)等で検出することができる。
また、本発明の黒色セラミックスは、表面のCIE1976L*a*b*色空間におけるクロマティクネス指数a*およびb*の値をそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下とすることによって、表面における光の反射率は低くなるとともに、その色調は極黒色の色調を醸し出す。その結果、視覚を通じて、高級感,美的満足感および精神的安らぎが得られ、市場での高い人気を得ることができる。
ここで、クロマティクネス指数a*は色調の赤から緑の度合いを示す指数であり、クロマティクネス指数a*の値がプラス方向に大きいと色調は赤色になり、その絶対値が小さいと色調は鮮やかさを抑えた渋い色調になり、クロマティクネス指数a*の値がマイナス方向に大きいと色調は緑色になる。クロマティクネス指数a*の値を−0.5以上+0.5以下としたのは、この範囲であると、高級感があって、色調の鮮やかさを抑えた渋い色調が得られるからである。クロマティクネス指数a*の値が−0.5より小さいと色調が緑味がかった黒色となって渋みに欠け、+0.5より大きいと色調が赤味がかった黒色となって、この場合も渋みに欠けるからである。
また、クロマティクネス指数b*は色調の黄から青の度合いを示す指数であり、クロマティクネス指数b*の値がプラス方向に大きいと色調は黄色になり、その絶対値が小さいと色調は鮮やかさを抑えた渋い色調になり、クロマティクネス指数b*の値がマイナス方向に大きいと色調は青色になる。クロマティクネス指数b*の値を−1.0以上+1.0以下としたのは、この範囲であると、クロマティクネス指数a*と同様に、高級感があって、色調の鮮やかさを抑えた渋い色調が得られるからである。クロマティクネス指数a*の値が−1.0より小さいと色調が青みがかった黒色となって渋みに欠け、+1.0より大きいと色調が黄みがかった黒色となって、この場合も渋みに欠けるからである。
また、本発明の黒色セラミックスは、表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*の影響を受け、明度指数L*の値が適正な範囲にあると、神々しい黒色が得られ、高級感が増して、美的満足感もより高くなる。
ここで、明度指数L*とは色調の明暗を示す指数であり、明度指数L*の値が大きいと色調は明るく、明度指数L*の値が小さいと色調は暗くなる。
本発明の黒色セラミックスでは、明度指数L*が3.0以上4.5以下であることが好適である。この範囲では極黒色の色調にほどよい明るさが発現して、神々しい黒色が得られるため、高級感が増して、美的満足感もより高くなる。
そして、表面のCIE1976L*a*b*色空間におけるクロマティクネス指数a*およびb*の値ならびに明度指数L*の値は、JIS Z 8722−2000に準拠して測定することで求められる。例えば、色彩色差計(旧ミノルタ社(製)CR−221)を用い、光源をCIE標準光源D65に、照明受光方式を条件a((45−n)〔45−0〕)に、測定径を3mmに設定して測定することができる。測定するのに適当な広さの場所が無い場合には、任意の場所を研磨加工して測定すればよい。
また、本発明の黒色セラミックスは、見掛密度の影響を受け、見掛密度の値が高くなると、開気孔は少なくなって開気孔の端面からの結晶粒の脱粒が抑制されるので、一方、見掛け密度の値が低くなると、黒色セラミックス自体の重さを軽量化することができるので、見掛密度が5.9g/cm以上6.1g/cm以下であることが好適である。なお、見掛密度は、JIS R 1634−1998に準拠して求めればよい。
ところで、本発明の黒色セラミックスでは、表面における開気孔は明度指数L*の値に影響を及ぼす。開気孔が多いと開気孔が形成する輪郭による色むらの影響を受けて表面の色調は薄くなるため、明度指数L*の値は大きくなる。一方、開気孔が少ないと開気孔の影響をほとんど受けず、開気孔が形成する輪郭による色むらの影響が減少し、明度指数L*の値は小さくなる。表面における開気孔率を0.2%以下にすることで、より好まれる明度となる。さらに、明度指数L*の値を3.0以上4.0以下とするのが好適であり、この場合には開気孔率は0.1%以下とすることが好ましい。
なお、表面における開気孔率は、JIS R 1634−1998に準拠して求めればよい。
また、本発明の黒色セラミックスは、表面における開気孔の最大開口径の影響を受け、その値は小さいほど商品価値が高く、前記最大開口径は50μm以下であることが好適である。最大開口径が50μm以下であると、気孔が形成する輪郭による色むらが減少するとともに、この黒色セラミックスが腕時計用バンド駒である場合、隣り合うバンド駒との色調の違い(均質性)が保ちやすくなるため、部品交換をしても違和感を覚えるようなことがない。開気孔の最大開口径については、金属顕微鏡を用いて測定することができる。具体的には、倍率を100倍とし、黒色セラミックスの表面から1箇所当たりの面積を1235μm×926μmに設定した範囲を5箇所抜き取り、その中で最も大きい開気孔の径を測定することで求められる。
なお、焼結助剤として作用し、焼結工程における相転移を抑制するために酸化チタン(TiO)を添加してもよい。その添加割合は、黒色セラミックス100質量%に対して、0.3質量%以下であることが好適である。
また、黒色セラミックス中の不可避不純物としては、酸化アルミニウム(Al)や酸化珪素(SiO)などが黒色セラミックス中で青色系の複合酸化物であるアルミン酸コバルト(CoAl)や珪酸コバルト(CoSiO)となって、これら不可避不純物が表面の色調に悪影響を及ぼすので、黒色セラミックス100質量%に対して、アルミン酸コバルト(CoAl)は0.4質量%以下であり、珪酸コバルト(CoSiO)は0.1質量%以下であることが必要である。
なお、これら酸化物以外の不可避不純物としては、水銀,ニッケル,錫,亜鉛,パラジウム等のアレルギー金属がある。これらアレルギー金属は黒色セラミックス100質量%に対して、それぞれ0.1質量%以下であり、合計で0.5質量%以下であることが好適である。
なお、上記酸化物の不可避不純物および上記金属の不可避不純物の各比率については、蛍光X線分析装置を用いて半定量分析により求めることができる。
また、本発明の時計用装飾部品は、本発明の黒色セラミックスからなることが好ましく、その一例として、時計用ケースや時計用バンド駒がある。
図1は本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示しており、(a)は時計用ケースの表側から見た斜視図、(b)は時計用ケースの裏側から見た斜視図である。また、図2は本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。また、図3は本発明の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。なお、これらにおいて同じ部位を示す場合は同じ参照符号を付してある。
図1に示す時計用ケース10Aは、ムーブメント(駆動機構)(不図示)を収容する凹部11と、腕に時計を装着するための時計用バンド(不図示)を固定する足部12とを備え、凹部11は厚みの薄い底部13と厚みの厚い胴部14とからなる。
また、図2に示す時計用ケース10Bは、ムーブメント(駆動機構)(不図示)が入る穴部15と、胴部14には腕に時計を装着するための時計用バンド(不図示)を固定する足部12とを備えている。
また、図3に示す時計用バンド50を構成するバンド駒は、ピン40が挿入される貫通孔21を有する中駒20と、中駒20を挟むようにして配置され、ピン40の両端が差し込まれるピン穴31を有する外駒30とから構成されており、中駒20の貫通孔21にピン40が挿入され、挿入されたピン40の両端が外駒30のピン穴31に差し込まれることにより、中駒20と外駒30とが順次連結され、時計用バンド50が構成される。
これら、時計用ケース10A,10Bと時計用バンド50を構成するバンド駒とは、本発明の黒色セラミックスを用いることにより、装飾部品としての高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができるものとなる。
なお、本発明の黒色セラミックスでは、表面のビッカース硬度(Hv)が長期信頼性に影響を与える要因の一つとなり、ビッカース硬度(Hv)が8GPa以上であることが好適である。ビッカース硬度(Hv)をこの範囲にすることで、表面は傷が入りにくくなるので、ガラスまたは金属からなる塵埃のような硬度の高い物質と接触しても容易に装飾面に傷が生じることがないからである。表面のビッカース硬度(Hv)はJIS R 1610−2003に準拠して測定することができる。
なお、本発明の時計用装飾部品を始めとする各種装飾部品に用いる黒色セラミックスの表面とは、装飾部品の装飾的価値が要求される面を指し、装飾的価値が要求されない面を含む必要はないので、全ての面を指すものではない。例えば、本発明の黒色セラミックスを時計用ケースに用いる場合では、この時計用ケースの外側の面は、鑑賞の対象となるものでもあり装飾的価値が要求される表面であるが、時計の駆動機構が嵌め込まれる内側の面は、通常は外観を構成するものではないので、特段の理由により装飾的価値が求められない限りは、本発明でいう表面には該当しない。
次に、本発明の黒色セラミックスの製造方法の一例を説明する。
本発明の黒色セラミックスを得るには、まず、酸化ジルコニウム(ZrO)の粉末91〜97mol%と、安定化剤として酸化イットリウム(Y),酸化ハフニウム(HfO),酸化セリウム(CeO),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)から選ばれる少なくとも1種の粉末3〜9mol%からなる混合粉末100質量部に対し、着色剤として酸化コバルト(CoまたはCo)の粉末1〜2.5質量部、酸化鉄(Fe)の粉末0.5〜1.0質量部および酸化クロム(Cr)の粉末0.5〜1.0質量部と、溶媒である水とを加え、振動ミル,ボールミル等で混合粉砕する。ここで、混合粉砕に用いられるボールは、黒色系または白色系のいわゆる無彩色系のセラミックボールを用いることが重要で、このボールは黒色セラミックスの表面におけるクロマティクネス指数a*およびb*をそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下とするための重要な要素である。
たとえば、上記黒色系のセラミックボールは、酸化ジルコニウム(ZrO)91〜97mol%と、酸化イットリウム(Y),酸化ハフニウム(HfO),酸化セリウム(CeO),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)から選ばれる少なくとも1種の安定化剤3〜9mol%とからなる組成100質量部に対し、着色剤として酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)1〜2.5質量部、酸化鉄(Fe)0.5〜1.0質量部および酸化クロム(Cr)0.5〜1.0質量部を含有するものである。
また、上記白色系のセラミックボールは、酸化ジルコニウム(ZrO)91〜97mol%と、酸化イットリウム(Y),酸化ハフニウム(HfO),酸化セリウム(CeO),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)から選ばれる少なくとも1種の安定化剤3〜9mol%とからなる組成100質量部からなるものである。
なお、着色剤として添加した組成式がCoまたはCoで表される酸化コバルトの粉末は、黒色を呈し、後の焼成工程中に温度895℃以上でその一部が分解し、黒色セラミックス中では組成式がCoOで表される酸化コバルトとして存在するが、各組成式がCoO,Co,Coで表される酸化コバルトは共存することもあり得る。
また、前記表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が3.0以上4.5以下であるものとするためには、明度が高い粉末の混入を抑制するため、黒色系のセラミックボールを用いることが好適である。
この原料を混合粉砕した後、結合剤としてパラフィンワックスを所定量添加し、所望の成形法、例えば、乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法等により円板,平板,円環体等の所望形状に成形する。そして、得られた成形体を必要に応じて脱脂した後、大気雰囲気中にて温度1300℃以上1500℃以下で焼成し、焼結体を得る。
なお、本発明の黒色セラミックスの見掛密度は加熱焼結温度の影響を受け、この温度を高くすると、見掛密度は高くなる。黒色セラミックスの見掛密度を5.9g/cm以上6.1g/cm以下にするには、加熱焼結温度を1350℃以上1500℃以下にすることが好適である。加熱焼結温度が1350℃より低いと、焼結が不十分となって黒色セラミックスの見掛密度を5.9g/cm以上とすることができなくなるからであり、加熱焼結温度が1500℃を超えると焼結体の結晶が異常な粒成長を起こし、機械的特性が低下するとともに、焼成コストが高くなるからである。加熱焼結温度を1350℃以上1500℃以下とすることで、見掛密度を5.9g/cm以上6.1g/cm以下にできるとともに、焼成コストも下げられる。
そして、得られた焼結体をバレル研磨することにより、焼結体の表面は極黒色の色調を醸し出す美しい装飾面となって、本発明の黒色セラミックスを得ることができる。
なお、黒色セラミックスの製品形状が複雑形状の場合には、予め乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法,射出成形法等によってブロック形状または製品形状に近い形状に成形し、焼成して、製品形状になるように研削加工を施した後、バレル研磨を行なってもよい。あるいは最初から射出成形法によって製品形状とし、焼成後に、バレル研磨を行なってもよい。
ここで、バレル研磨をする前に必要に応じて研削加工,ラップ加工等を行なってもよい。例えば、平均粒径1μm以下の小さいダイヤモンドペーストを錫製のラップ盤に供給してラップ加工してもよい。また、バレル研磨では、遠心バレル研磨機を用い、メディアとグリーンカーボランダム(GC)を遠心バレル研磨機に投入し、湿式で24時間程度行なえばよい。
また、成形法として乾式加圧成形法を選択した場合は、成形圧力は表面における開気孔率、開気孔の最大開口径およびビッカース硬度(Hv)に影響を与える。成形圧力を高くすると、開気孔率および最大開口径を小さくし、ビッカース硬度(Hv)を高くすることができる。本発明の黒色セラミックスを得るには、成形圧力を49MPa以上196MPa以下とすることが好適である。成形圧力を49MPa以上とするのは、成形圧力を49MPa未満にすると、黒色セラミックスの表面における開気孔率が0.2%を超えたり、ビッカース硬度(Hv)が12GPa未満になったりするからである。
また、成形圧力を196MPa以下としたのは、196MPaを超えると成形型の寿命が短くなるからである。成形圧力を49MPa以上196MPa以下とすることで、成形型の寿命が長くなるとともに、黒色セラミックスの表面における開気孔率を0.2%以下にし、またビッカース硬度(Hv)を12GPa以上にすることができる。
特に、成形圧力を96MPa以上にすると、表面における開気孔の最大開口径を50μm以下とすることができるので、より好適である。
以上のようにして得られる本発明の黒色セラミックスは、高級感があって、美的満足感を得ることができ、その結果、視覚を通じて精神的安らぎを得ることができるので、特に美しい色調として評価の高い極黒色を醸し出す時計用ケース,時計用バンド駒等の時計用装飾部品を始め、ブローチ,ネックレス,イヤリング,リング,ネクタイピン,タイタック,メダル,ボタン等の装身具用装飾部品や、床,壁,天井を飾るタイルあるいはドアの取手等の建材用装飾部品や、スプーン,フォーク等のキッチン部品用装飾部品、その他の家電用装飾部品、自動車用装飾部品として好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、酸化ジルコニウム(ZrO)の粉末97mol%と、安定化剤として酸化イットリウム(Y)の粉末3mol%とからなる混合粉末100質量部に対し、表1に示す着色剤と、溶媒である水とを加え、振動ミルで混合粉砕した。混合粉砕に用いるセラミックボールの種類および色、さらに黒色セラミックス(焼結体)中の着色剤の比率は、表1に示す通りとした。
表1に示す着色剤の比率は、蛍光X線分析装置を用い、半定量分析により求めた値である。
この原料を混合粉砕した後、結合剤としてパラフィンワックスを所定量添加し、乾式加圧成形法により圧力98MPaでバンド駒の中駒20と外駒30との成形体を作製し、得られた成形体を1450℃で焼成し、焼結体を得た。そして、得られた焼結体とともに、メディアとグリーンカーボランダム(GC)を遠心バレル研磨機に投入し、湿式で24時間バレル研磨して、バンド駒を得た。
そして、色彩色差計(旧ミノルタ社(製)CR−221)を用い、光源をCIE標準光源D65に、照明受光方式を条件a((45−n)〔45−0〕)に、測定径を3mmに設定して、JIS Z 8722−2000に準拠して表面の色調を測定した。
また、色調については、20歳代〜50歳代の各年代についてヨーロッパ人男女5名ずつ計40名のモニターに、高級感,美的満足感および精神的安らぎの3項目でアンケート調査を実施し、この項目に対して「感じる」と回答したモニターの比率を表1に示し、この比率が80%以上を良好であると評価した。
Figure 0004960070
表1に示す結果からわかるように、クロマティクネス指数a*およびb*がそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下の範囲外である試料No.1,2,13,14は、色調が極黒色と言えないために、モニターを十分満足させることができなかった。
一方、クロマティクネス指数a*およびb*がそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下である試料No.3〜12は、色調が極黒色を呈しているために、モニターに高級感,美的満足感,精神的安らぎを与えられる良好な結果であった。
特に、酸化コバルトが着色剤100質量%中において43質量%以上60質量%以下である試料No.5〜10は、高級感,美的満足感,精神的安らぎのいずれの評価も、この範囲外である試料No.3,4,11,12より高く好適である。
また、着色剤の比率が同じであって、セラミックボールの色が異なる試料No.3と試料No.4とを、試料No.5と試料No.6とを、試料No.7と試料No.8とを、および試料No.9と試料No.10とを比べると、白のセラミックボールを用いた試料より黒のセラミックボールを用いた試料の方が明度指数L*が低く、しかも3.0以上4.5以下であるため、上記いずれの評価も高く好適である。
(実施例2)
まず、酸化ジルコニウム(ZrO)の粉末97mol%と、安定化剤として酸化イットリウム(Y)の粉末2.5mol%および酸化ハフニウム(HfO)の粉末0.5mol%とからなる混合粉末100質量部に対し、表2に示す着色剤と、溶媒である水とを加え、振動ミルで黒色のジルコニアボールを用いて混合粉砕した。なお、一部の試料には、不可避不純物の影響を調べるために、不純物として、酸化アルミニウム(Al),酸化珪素(SiO)の粉末を意識的に添加し、焼結体における影響を調べた。これら酸化物の粉末は、酸化コバルト(CoO)の存在下で加熱すると、それぞれ酸化コバルト(CoO)と反応をして、青色系の複合酸化物であるアルミン酸コバルト(CoAl),珪酸コバルト(CoSiO)を生成する。
焼結体における着色剤および不純物の比率は、表2に示す通りで、蛍光X線分析装置を用いて半定量分析により求めた値である。
この原料を混合粉砕した後、結合剤としてパラフィンワックスを所定量添加し、乾式加圧成形法により表2に示す圧力でバンド駒の中駒20と外駒30の成形体を作製し、得られた成形体を表2に示す温度で焼成し、焼結体を得た。そして、得られた焼結体とともに、メディアとグリーンカーボランダム(GC)を遠心バレル研磨機に投入し、湿式で24時間バレル研磨して、バンド駒を得た。
そして、このバンド駒の見掛密度およびバンド駒表面の開気孔率をJIS R 1634−1998に準拠して測定した。
また、表面における開気孔の最大開口径については、金属顕微鏡を用いて測定した。具体的には、倍率を100倍とし、前記表面から1箇所当たりの面積を1235μm×926μmに設定した範囲を5箇所抜き取り、その中で最も大きい開気孔の径を測定し、その値を最大開口径とした。
併せて、上記測定範囲で脱粒を観察し、脱粒が観察されたものを△、観察されなかったものを○で示した。
そして、色彩色差計(旧ミノルタ社(製)CR−221)を用い、実施例1に示す方法で表面の色調を測定した。
また、色調についても、実施例1と同様のアンケート調査を実施した。
また、見掛密度が5.9g/cm以上6.0g/cm以下、表面における開気孔率および開気孔の最大開口径がそれぞれ0.2%以下および50μm以下である時計用バンド駒を連結した時計用バンドを準備し、時計用バンド駒の1箇所のみを試料No.15〜27と置き換え、色調に違和感を覚えるかどうかアンケート調査を実施した。
以上の方法で得られた測定値および調査結果を表3に示す。
Figure 0004960070
Figure 0004960070
表2および表3に示す結果からわかるように、成形圧力が33MPaと低い試料No.17は適切に成形することができなかった。
また、見掛密度が5.9g/cm未満の試料No.15は黒色セラミックスの表面の結晶粒の脱粒が観察されたのに対し、見掛密度が5.9g/cm以上の試料No.16,18〜27は脱粒が観察されず、良好であった。
また、見掛密度が6.1g/cm以下の試料No.16,18〜26が軽量化されていることは言うまでもなく、試料No.15の脱粒は、商品価値を著しく損なうものでもない。
表面における開気孔率が0.2%以下の試料No.16,18〜27は、表面における色調が濃くなったため、明度指数L*の値が小さく、美的満足感は開気孔率が0.2%より大きい試料No.15より高く、良好であった。
表面における開気孔の最大開口径が50μmを超える試料No.15,18、不純物であるアルミン酸コバルト(CoAl)が0.4質量%を超える試料No.22、および同じく不純物である珪酸コバルト(CoSiO)が0.1質量%を超える試料No.24を時計用バンドに新たに組み込むと、色調に違和感を覚えるモニターもいたが、最大開口径が50μm以下である試料No.16,19〜21,23,25〜27は、時計用バンドに新たに組み込んでも色調に違和感を覚えるモニターはなく、良好であった。
(a)は本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示す、時計用ケースを表側から見た斜視図であり、(b)は(a)の時計用ケースを裏側からみた斜視図である。 本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。 本発明の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。
符号の説明
10A,10B:時計用ケース
11:凹部
12:足部
13:底部
14:胴部
15:穴部
20:中駒
21:貫通孔
30:外駒
31:ピン穴
40:ピン
50:時計用バンド

Claims (6)

  1. 安定化剤および着色剤を含むジルコニアセラミックスからなり、前記着色剤が、酸化コバルト(CoO,Co,Coのうち少なくともいずれか1種)と、酸化鉄(Fe)および酸化クロム(Cr)であって、前記着色剤の全含有量に対して、前記酸化コバルトの含有量が40〜70質量%、前記酸化鉄の含有量が15〜30質量%および前記酸化クロムの含有量が15〜30質量%であり、表面のCIE1976L*a*b*色空間における明度指数L*が3.0以上4.5以下、クロマティクネス指数a*およびb*がそれぞれ−0.5以上+0.5以下および−1.0以上+1.0以下であることを特徴とする黒色セラミックス。
  2. 前記黒色セラミックスは、見掛密度が5.9g/cm以上6.1g/cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の黒色セラミックス。
  3. 前記表面における開気孔率が0.2%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色セラミックス。
  4. 前記表面における開気孔の最大開口径が50μm以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の黒色セラミックス。
  5. 請求項1乃至請求項のいずれかに記載の黒色セラミックスからなることを特徴とする時計用装飾部品。
  6. 請求項1〜4に記載の黒色セラミックスの製造方法であって、酸化ジルコニウム(ZrO )91〜97mol%と、酸化イットリウム(Y ),酸化ハフニウム(HfO ),酸化セリウム(CeO ),酸化マグネシウム(MgO)および酸化カルシウム(CaO)から選ばれる少なくとも1種の安定化剤3〜9mol%とからなる組成100質量部に対し、着色剤として酸化コバルト(CoO,Co ,Co のうち少なくともいずれか1種)1〜2.5質量部、酸化鉄(Fe )0.5〜1.0質量部および酸化クロム(Cr )0.5〜1.0質量部を添加して、黒色系のセラミックボールを用いて、混合粉砕する工程を含むことを特徴とする黒色セラミックスの製造方法。
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