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JP4980465B2 - 液体攪拌方法、液体攪拌システム、およびカートリッジ - Google Patents
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液体攪拌方法、液体攪拌システム、およびカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、液体攪拌方法および液体攪拌システムに関する。また、本発明は、上記液体攪拌システムに用いられるカートリッジに関する。
健康状態のチェックは、たとえば、血液中の特定成分を分析することで行うことができる。近年、そのような成分分析を行うための、比較的コンパクトな分析装置が開発されている。このような分析装置の中には、成分分析を行うにあたり、血液と希釈液とを混合したり、希釈された血液と試薬とを混合したりするための、液体攪拌機能を備えるものがある。
図18は、従来の液体攪拌方法(下記の特許文献1参照)に用いられるカートリッジXおよび攪拌アーム96を示している。カートリッジXの本体91には、血液94を希釈するための希釈槽92が形成されている。希釈槽92に導入された血液94は、希釈液95とともに攪拌される。攪拌を行うために、希釈槽92内には、磁気を帯びた攪拌用粒子93があらかじめ収容されている。一方、攪拌アーム96は、相互に離間した1対の磁石を備えており、所定の軸芯回りに回転する構成とされている。攪拌アーム96が回転すると、各磁石の磁力により攪拌用粒子93が駆動されて円運動を行い、血液94と希釈液95とが攪拌される。
日本国特許第3135057号公報
成分分析に供される血液94の量は、一般に微量(たとえばμLのオーダー)である。このため、各攪拌用粒子93は微小なものとする必要がある。また、攪拌用粒子93は、血液94の特定成分の分析を妨げるような性状であってはならない。しかしながら、このような要件を満たす攪拌用粒子93を用いることは、カートリッジXのコストを上昇させる一因となる。特に、カートリッジXがディスポーザブルタイプの場合、コストの上昇は実用化の大きな障害となる。
上記従来の液体攪拌方法には、また別の問題もある。上述のとおり、攪拌用粒子93の円運動は、磁力(非接触力)により駆動される。このため、血液94の抵抗力などに起因して、攪拌用粒子93の運動が攪拌アーム96の運動に適切に追従しなくなる。この現象は、特に、攪拌アーム96の回転数が上がるにつれて顕著となる。このような不具合は、攪拌力の向上の妨げとなり、ひいては検体の分析に要する時間を長引かせることになる。
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものである。そこで本発明は、液体の攪拌をより適切に行うことを可能とする技術の提供をその課題とする。
本発明の第1の側面によって提供される液体攪拌方法は、厚み方向と直角である方向における質量分布が不均一である壁を有する攪拌槽に液体を収容し、上記壁に対して所定の周波数範囲内において周波数を変化させながら振動を与えることにより、上記液体に旋回流を生じさせる構成とされている。
上記構成によれば、上記攪拌槽内に上記液体を攪拌させるための物体を挿入する必要がないことに加え、上記液体に生じる旋回流の淀み点を変更することが可能である。これにより、上記液体の攪拌を促進することができる。
好ましくは、上記周波数範囲は、上記壁の振幅が最大値をとる周波数を含んでいる。このような構成によれば、上記壁の振動モードが上記最大値をとる周波数を境に顕著に変化する。これにより、上記液体に生じる旋回流の流動パターンを明りょうに変化させることが可能である。これは、上記液体の攪拌を促進するのに好適である。
好ましくは、上記攪拌槽は、円形であり、上記壁は上記攪拌槽の底面を形成している。このような構成によれば、上記液体に旋回流を生じさせるのに有利である。
好ましくは、上記壁は、上記攪拌槽の周方向における質量分布が不均一とされている。このような構成によれば、円形である上記壁の振動モードを効率よく変化させることができる。
好ましくは、上記壁は、厚みが不均一であることにより、質量分布が不均一とされている。
本発明の第2の側面によって提供されるカートリッジは、液体を攪拌するための攪拌槽と、上記攪拌槽に繋がる微細流路と、を含む。上記攪拌槽は、厚み方向と直角である方向における質量分布が不均一である壁を有している。
好ましくは、上記攪拌槽は、円形であり、上記壁は上記攪拌槽の底面を形成している。
好ましくは、上記壁は、上記攪拌槽の周方向における質量分布が不均一とされている。
好ましくは、上記壁は、厚みが不均一であることにより、質量分布が不均一とされている。
本発明の第3の側面によって提供される液体攪拌システムは、本発明の第2の側面によって提供されるカートリッジと、上記カートリッジの上記壁に対して所定の周波数範囲内において周波数を変化させながら振動を与える加振手段と、を備える。
好ましくは、上記周波数範囲は、上記壁の振幅が最大値をとる周波数を含んでいる。
図1は、本発明に基づく液体攪拌システムを備える分析装置を示す斜視図である。
図2は、本発明に基づく液体攪拌システムに用いられるカートリッジの要部を示す斜視図である。
図3Aは、上記カートリッジの要部を示す斜視図である。
図3Bは、図3Aに示す構造の変形例を示す斜視図である。
図4は、図3Aに示された構造を説明する模式図である。
図5は、底板の膜振動モードを示す図である。
図6は、底板の振動計測結果を示す図である。
図7は、底板の振動計測結果を示す図である。
図8は、旋回流の流動パターンを示す図である。
図9は、攪拌槽における攪拌試験結果を示す図である。
図10は、攪拌槽における攪拌試験結果(ケース1)を示す図である。
図11は、攪拌槽における攪拌試験結果(ケース2)を示す図である。
図12は、攪拌槽における攪拌試験結果(ケース3)を示す図である。
図13は、攪拌槽における攪拌試験結果(ケース4)を示す図である。
図14は、攪拌槽における攪拌試験結果(ケース5)を示す図である。
図15は、攪拌槽における攪拌試験結果(ケース6)を示す図である。
図16は、攪拌槽における攪拌試験結果(ケース7)を示す図である。
図17は、スピーカを用いた加振による振幅分布解析結果を示す図である。
図18は、従来の液体攪拌方法を説明する図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明に基づく液体攪拌方法を採用した検体分析システムを示している。この検体分析システムは、カートリッジAと検体分析装置Bを含んでいる。カートリッジAは、検体分析装置Bに対し、取り外し可能に装填することができる。検体分析の際には、検体をカートリッジAに点着したのち、カートリッジAを検体分析装置Bに装填する。その後、カートリッジA内の検体に対して所定の攪拌処理(後述)が行われ、次いで、検体分析装置Bによる検体の分析が行われる。検体分析装置Bは、たとえば光学的手法により、検体に含まれる特定成分に対する種々の測定を行う。たとえば、検体が血液である場合には、血液中に含まれる血球(白血球、赤血球など)の計数や、ヘモグロビン(Hb)あるいはC反応性蛋白(CRP)などの定量を行うことが可能である。検体は血液に限らず、別のもの(たとえば尿)であってもよい。以下の説明では、検体として血液を想定しているが、本発明がこれによって限定されるわけではない。
カートリッジAは、以下で詳述するように、血液点着部や、希釈液槽、攪拌槽、分析部、および、これらを連結する微細な流路を備えている。カートリッジAは、1回の分析作業を終えると廃却される、いわゆるディスポーザブルタイプとして用いられる。
図2は、カートリッジAの一部を示している。また、符号6は、検体分析装置Bに設けられたアクチュエータを示している。アクチュエータ6は、カートリッジAが検体分析装置Bに装填された状態において、カートリッジAの下方に位置する構成とされている。アクチュエータ6は、加振手段の一例であり、たとえばピエゾ素子とこれから延びるカンチレバーとからなる。図2に示すように、カートリッジAは、天板1A、中板1B、および底板1Cが貼り合わされた構造を有している。天板1A,中板1B、および底板1Cは、たとえばポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン樹脂からなる。PDMSからなる板材は、優れた可撓性を有しており、加振力が付加されると容易に振動する。なお、以下の説明から理解されるように、天板1A,中板1Bおよび底板1Cのすべてをシリコーン樹脂から形成することは必ずしも必要ではない。たとえば、底板1Cのみを上記シリコーン樹脂から形成し、天板1Aおよび中板1Bは、たとえばアクリル樹脂などのより硬質な材料によって形成してもよい。
図2に示すように、カートリッジAは、希釈液槽2A、血液槽2B、攪拌槽3、排出槽4、および3つの流路51A,51B,52を含む。流路51Aは、攪拌槽3と希釈液槽2Aとを相互に繋いでおり、流路51Bは、攪拌槽3と血液槽2Bとを、また、流路52は、攪拌槽3と排出槽4とを、それぞれ相互に繋いでいる。このような構成は、たとえば次のような手法で実現可能である。まず、中板1Bの元となる平板に、4つの円形貫通孔(上記各槽2A、2B、3、4に対応)を形成するとともに、上記各流路51A、51B、52に対応する3つの微細なスリット(あるいは溝)を形成する。次いで、このようにして得られた中板1Bの上面に天板1Aを貼り合わせ、中板1Bの下面に底板1Cを貼り合わせる。このようにして、図2に示す多層構造体が得られる。希釈液槽2Aには、血液を希釈するための希釈液が充填される。血液槽2Bには、検体としての血液が蓄えられる。上述のとおり、希釈液槽2Aおよび血液槽2Bは、流路51A,51Bによって攪拌槽3に連結されており、準備された上記希釈液および血液は、これらの流路を介して攪拌槽3に送られる。攪拌槽3では、希釈液および血液が攪拌および混合されることにより、希釈血液が得られる。この希釈血液は、流路52を介して攪拌槽3から排出槽4に送り出される。図2に示すように、天板1Aには、2つの貫通孔21と1つの貫通孔41が形成されている(これらの貫通孔は、天板1Aを中板1Bに貼り合わせる前に形成しておく)。2つの貫通孔21は、希釈液槽2Aおよび血液槽2Bにそれぞれ連通しており、貫通孔41は、排出槽4に連通している。これらの貫通孔21、41は、上述した血液や、希釈液、および希釈血液を送液するために必要な正圧または負圧を付与するために用いられる。
図3Aは、カートリッジAのうち攪拌槽3が形成された部分およびその関連部分を示す斜視図である(図3Aでは天地を逆にしている)。同図に示すように、底板1Cの表面(図2では下面)には、リング状に繋がる複数の厚肉部11〜18が形成されている。各厚肉部11〜18は、底板1Cの表面における円環領域(攪拌槽3の外周に沿って延びる)を八等分した1つのエリア(中心角45度に対応するエリア)を占める構成とされている(すなわち、各厚肉部11〜18の底面積は等しい)。攪拌槽3のサイズは、たとえば、直径が1mmであり、深さが50μmである。底板1Cの厚みは一定であり、たとえば210μmである。厚肉部11〜18のそれぞれの厚み(底板1Cの表面を基準としたときの高さ)は、たとえば、80μm,70μm,60μm,50μm,40μm,30μm,20μm,10μmである。厚肉部11〜18からなるリング状部分は、たとえば、外径が800μmであり、内径が500μmである。上述のとおり、厚肉部11〜18の厚みは段階的に小さくなっているので、厚肉部11〜18の質量も段階的に小さくなっている。なお、上記の説明は、「各厚肉部11〜18と底板1Cとは別部材であり、底板1Cの厚みは一定である」という見方に基づいた記載になっているが、別の捉え方をすることも可能である。たとえば、「各厚肉部11〜18は底板1Cの一部であり、底板1Cの厚みは、リング状厚肉部の個所で不均一とされている」と捉えてもよい。この場合、たとえば厚肉部11が形成された個所における底板1Cの厚みは、290μm(=210μm+80μm)である。図3Bは、図3Aに示す構造の変形例を示している。本発明では、図3Bに示すように、リング状厚肉部の厚みが連続的に変化する構成としてもよい。この場合、リング状厚肉部の上面は、滑らかに傾斜するスロープ状である。
図4は、図3Aに示された部分の力学的構造を説明するためのモデルを示している。このモデルでは、複数のおもり(あるいは質点)M1〜M8が円形に配置され、これらのおもりが、バネを介して円形板1C´に固定されている。おもりM1〜M8はそれぞれ、厚肉部11〜18に対応している。おもりM1に対して上下方向に振動する加振力(図3Aの符号F参照)を付与すると、円形板1C´が振動する。その結果、加振力の周波数に応じて、おもりM1〜M8のうちのいずれかが顕著に振動する。また、加振力の周波数を変えると、別のおもりが顕著に振動するようになる。したがって、加振力の周波数を時間とともに変えることにより、たとえばおもりM1からおもりM8へと、顕著に振動するおもりを順に変更することが可能である。
実際の構造体(図3A)では、厚肉部11〜18(おもりM1〜M8)の振動に加えて、底板1Cの円形部分(攪拌槽3を構成する壁の一つ)における振動が生じる。図5は、その振動モードの例を示している(各モードにおいて、一点鎖線は振動の節を示す)。底板1Cの円形部分に付与する振動の周波数を低い周波数から高い周波数へと上げるにつれて、同図に示すような11モード、21モード、31モード、12モード、22モード、41モードのそれぞれの振動モードが現出する。
以上のように、底板1Cにおける振動は、図4に示されたおもりM1〜M8の振動と図5に示された膜振動との連成振動である。この連成振動の挙動は、底板1Cの形状やサイズ、および、厚肉部11〜18の形状や、サイズ、配置等に依存する。図6および図7は、底板1Cが振動するときの振幅分布状況を調べるために行ったシミュレーションの結果を示している。このシミュレーションでは、図3Aに示すように、加振力Fが厚肉部11に付与された設定にしている。これらの図において、相対的に暗い色調の部分は、振幅が相対的に大きい個所に対応している。したがって、色調が局所的に暗い部分(すなわち、周囲の色調に比較して色調が相対的に暗い部分)は、底板1Cの振幅が極大となる個所を示している。上述のとおり、加振力Fを厚肉部11に付与するという設定であるため、厚肉部11の振幅は、常に、相対的に大きくなっている。図6および図7から理解されるように、周波数が約20Hz増加(あるいは減少)すると、振幅分布が顕著に変化し、特に、底板1Cの振幅が極大となる個所が変わる。なお、本シミュレーションにおいては、加振力Fの周波数の変動範囲を、6852.8Hzから7248.8Hzまでとしたが、この範囲は一例であり、これによって本発明が限定されるわけではない。たとえば、加振力Fの周波数を上記の範囲外である4836.2Hz、4836.2Hz、4876Hz、4975.5Hz、4995Hz、5134.7Hz等に設定してもよい。本シミュレーションでは、これらの周波数において、底板1Cの(少なくとも1部分における)振幅が最大となった。なお、本発明において、厚肉部の個数は8個に限定されず、また、加振力Fの付加対象も厚肉部11に限定されるものではない。
上述した底板1Cの連成振動により、攪拌槽3における血液および希釈液には、旋回流が発生する。図8は、そのような旋回流の代表的な流動パターンを示している。発明者らの実験によれば、たとえば図5に示した11モードに類する連成振動の場合、図8の(a)に示される流動パターンが生じると推測される。連成振動のモードがさらに複雑になると、図8の(b)あるいは(c)で表される流動パターンが生じると推測される。加振力Fの周波数を変化させることにより、攪拌槽3内においてこれらの流動パターンが順に生じたり、それぞれの流動パターンで正転および逆転が繰り返される。
攪拌槽3において血液を希釈した後は、この希釈血液を排出槽4に送る。図1に示す検体分析装置Bは、この希釈血液に対して、血球の計数や、ヘモグロビンあるいはC反応蛋白の測定等を自動的に行う。
次に、上述した液体攪拌方法および液体攪拌システムの作用について説明する。
本発明によれば、攪拌槽3内の液体に対して、図8に示す様々なパターンの旋回流を生じさせることができる。これらの流動パターンは、それぞれの旋回流の中心(淀み点)の位置が互いに異なる。したがって、これらの流動パターンを併用することにより、攪拌槽3における淀み点の位置を変更させることができ、その結果、液体の一部分が攪拌されないという不具合を回避することが可能である。また、本発明によれば、このような適切な攪拌を、攪拌槽3内に攪拌用粒子(図18の符号93)等をなんら収容させること無く実現することができる。これは、攪拌される液体の汚染防止や、ディスポーザブルタイプとして用いられるカートリッジAのコスト低減に有利である。
さらに、攪拌槽3が円形であることにより、攪拌槽3内に容易に旋回流を生じさせることができる。厚肉部11〜18が円形とされた攪拌槽3に沿ってリング状に配置されていることにより、図6に示すように底板1Cの振幅分布を周波数によって大きく異ならせることが可能である。底板1Cの振幅分布が顕著に異なれば、攪拌槽3内の流動パターンを変更するのに有利である。
攪拌槽3とは反対側において底板1Cに厚肉部(おもり)11〜18を形成している。このため、攪拌槽3に対して所望の場所におもりを比較的容易に配置することができる。
図9は、本発明に基づく液体攪拌方法による攪拌効果を検証した実験結果を示している。本実験においては、攪拌槽3に異なる2種類の液体を導入し、流路52から流出するときの攪拌度合いを攪拌指標Iによって比較した。攪拌指標Iは、上記2種類の液体が完全に分離した状態において0となり、完全に均一になるまで攪拌された状態において1.0となる指標である。
図9(a)は、攪拌槽3において意図的な攪拌がなされなかったケースの試験結果を示している。この場合、攪拌指標Iは、0.31であった。(b)は、底板1Cに固定周波数(f=8900Hz)の加振力Fを付与したケースの試験結果を示している。固定周波数であっても、攪拌槽3内において旋回流が発生していることが確認される。この場合、攪拌指標Iは、0.49であり、旋回流による攪拌効果が認められる。(c)は、周波数を4600Hzから9200Hzの間で変化する加振力Fを付与したケースの試験結果を示している。この周波数範囲には、上述した4836.2Hz、4836.2Hz、4876Hz、4975.5Hz、4995Hz、5134.7Hzという周波数が含まれている。この場合、攪拌槽3の液体には、異なる流動パターンの旋回流が周期的に生じることが確認された。この結果、攪拌指標Iは、0.92にまで上昇する。これは、複数の流動パターンの旋回流を生じさせることにより、淀み点の位置を一定とさせないことによる顕著な攪拌効果によると考えられる。
図10〜図16は、加振力Fの周波数を様々に設定した場合における、攪拌槽3内の流動パターンを模式的に示している。各ケースの加振力Fの条件は、以下の表1に示すとおりである。本試験では、攪拌槽3内に微細なトレーサ粒子を混入した流体を満たし、このトレーサ粒子に光を照射した状態で、加振力Fを与えた様子をビデオ撮影した。図10〜図16は、このビデオ画像に基づき、攪拌槽3に生じる流動パターンを描写したものである。
図10に示すケース1では、加振力Fの周波数を8.9kHzで固定した。この場合、攪拌槽3内に2つの渦が発生した。このときの流動パターンは時間とともに変化することはなかった。この状態は、図9(b)として示されたケースと類似している。攪拌槽3内の流体は攪拌されるが、流動パターンが不変であるために淀み点が生じる。このために、図9(b)のケースでは、攪拌指標Iが0.49にとどまったと推測される。
図11に示すケース2では、加振力Fの周波数を14kHzと20kHzとの間でステップ的に変化させた(すなわち、周波数を交互に14kHzと20kHzとした)。この場合、攪拌槽3内には、1つの大きな渦が発生した。周波数が比較的高いことが要因となって、渦の回転速度は比較的高速であった。図12に示すケース3では、時間の経過とともに周波数を7.8kHzと8.8kHzの間で三角波状に変化(直線的に増加および減少)させたケースである。このケースにおいても流動パターンはほぼ一定であった。
図13〜図16にそれぞれ示すケース4〜ケース7では、攪拌槽3内において少なくとも2つの流動パターンが繰り返されるものとなった。このような流動パターンであれば、攪拌槽3内において淀み点が一箇所にとどまることがなく、攪拌槽3全体が満遍なく攪拌される。これらのケースは、図9(c)に示されたケースと類似する。図9(c)の攪拌指標Iが0.92まで高められた要因は、流動パターンが変化することによるものと考えられる。
本発明において、加振手段としては、上述したピエゾ素子とカンチレバーとによる接触式の構成に限らない。たとえば、スピーカ(振動膜)を用いた非接触の構成を採用してもよい。図17は、上記底板1Cに類似の不均一な質量分布を有する壁に対して、スピーカを用いて加振力Fを付与した場合における振動応答の解析結果を示している。この壁は、厚みが140μmであり、厚肉部の厚みが50〜400μmの範囲とされたものである。加振力Fの周波数は、1216Hzから1295Hzまで変化させた。同図においては、白色に近い領域ほど振幅が大である。このような非接触の加振手段によっても、周波数を変化させることにより壁の振幅分布を異ならせることが可能であり、流動パターンが異なる旋回流を液体に生じさせうる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。たとえば、厚肉部11〜18の配置は、リング状に限定されず、加振力Fの周波数変化によって振動モードが明りょうに変化する配置であればよい。底板1Cの質量分布を不均一とする手段としては、底板1Cと一体的に厚肉部11〜18を形成することに限定されない。たとえば、複数の金属製の部材を離散的に底板1Cに付着させてもよい。また、底板1Cに対して比較的密度が高い塗料を離散的かつ不均一に印刷してもよい。さらには、厚みが一定である底板1Cの密度分布を局所的に不均一としてもよい。攪拌槽3は、円形のものに限定されず、収容した液体に旋回流を生じさせるのに適した形状であればよい。不均一な質量分布が与えられる壁は、底板1Cのみならず、攪拌槽3を形成する他の壁であってもよい。

Claims (11)

  1. 厚み方向と直角である方向における質量分布が不均一である壁を有する攪拌槽に液体を収容し、
    上記壁に対して所定の周波数範囲内において周波数を変化させながら振動を与えることにより、上記液体に旋回流を生じさせる、液体攪拌方法。
  2. 上記周波数範囲は、上記壁の振幅が最大値をとる周波数を含んでいる、請求項1に記載の液体攪拌方法。
  3. 上記攪拌槽は、円形であり、上記壁は上記攪拌槽の底面を形成している、請求項1に記載の液体攪拌方法。
  4. 上記壁は、上記攪拌槽の周方向における質量分布が不均一とされている、請求項3に記載の液体攪拌方法。
  5. 上記壁は、厚みが不均一であることにより、質量分布が不均一とされている、請求項1に記載の液体攪拌方法。
  6. 液体を攪拌するための攪拌槽と、
    上記攪拌槽に繋がる微細流路と、を含み、
    上記攪拌槽は、厚み方向と直角である方向における質量分布が不均一である壁を有している、カートリッジ。
  7. 上記攪拌槽は、円形であり、上記壁は上記攪拌槽の底面を形成している、請求項6に記載のカートリッジ。
  8. 上記壁は、上記攪拌槽の周方向における質量分布が不均一とされている、請求項7に記載のカートリッジ。
  9. 上記壁は、厚みが不均一であることにより、質量分布が不均一とされている、請求項6に記載のカートリッジ。
  10. 請求項6に記載のカートリッジと、
    上記カートリッジの上記壁に対して周波数を変化させながら振動を与える加振手段と、
    を備える、液体攪拌システム。
  11. 上記振動の周波数範囲は、上記壁の振幅が最大値をとる周波数を含んでいる、請求項10に記載の液体攪拌システム。
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