特許文献2のように、配線電極(電極パッド)112に含まれるNi層115は、バリアメタルとして形成されているため、Ni層115の膜は、比較的厚く形成されている。ここでは、下地電極113とAu電極層116とに挟まれたCr層114及びNi層115をまとめて、「中間層117」と呼ぶ。この中間層117には、Ni層115が比較的厚く形成されているので、Ni層115に強い膜応力が生じるおそれがある。そして、Ni層115に生じる膜応力により、電極パッド112全体にその膜応力が伝わってしまい、配線電極112を形成する下地電極113、Cr層114やNi層115、の各層の界面において、その膜応力を吸収できず、各層どうしの接合強度が低下してしまう。特に、各層どうしの接合強度が低下することによって、Ni層115が形成されている部分より下方の層の界面で剥離が生じやすく、このため、配線電極112の電気的接続を充分に確保することができなくなり、弾性表面波装置100の信頼性の確保ができなくなる。
一方、配線電極112と同様の構造を環状電極に用いることができるが、この場合も同様に、環状電極は、中間層117に含まれるNi層115に生じた膜応力により、この環状電極を形成する各層の界面で、剥離を生じるおそれがある。このため、この環状電極を含む環状電極部131は、IDT電極111が形成されている空間の気密性を充分に確保することができなくなる。
そのため、Ni層115に生じる膜応力による剥離をなくすために、電極パッド112や環状電極が形成された段階で弾性表面波素子Sを加熱し、電極パッド112を形成する各層の密着強度を上げることが考えられる。しかし、弾性表面波素子Sを加熱することは、圧電基板110の有する焦電効果により、この圧電基板110上に形成された電極を破壊してしまうおそれがあるため、好ましくない。
また、環状電極部131のNi層115の膜応力が大きくなると、圧電基板110にもその膜応力が伝わり、結果として、圧電基板110に反りが生じてしまう。このことは、フォトリソグラフィで用いるステッパー露光におけるパターン精度、圧電基板110の搬送やステージ上への真空吸着等の弾性表面波装置の製造工程において、多くの不具合を生じる。それに加え、圧電基板110の径が大きくなると、Ni層115に生じた膜応力による反りが、圧電基板110上で拡大されてしまうことから、圧電基板110は、特に、真空吸着の際、割れを生じるおそれがある。
ところで、リフトオフ法を用いて下地電極113上に中間層117を形成し、電極パッド112を形成していく過程では、図11に示すように、まず、中間層117及びAu電極層116を形成する領域以外に、逆テーパーでオーバーハング形状のフォトレジスト膜119が形成される。次いで、このフォトレジスト膜119でマスキングをしながら、Cr層114、Ni層115及びAu電極層116を順に積層していき、電極パッド112が形成される。
このとき、電極パッド112を形成する各層(114,115,116)は、下地電極113上に積層するのと同時に、フォトレジスト膜119上にも順に各層(134,135,136)を積層する。このため、フォトレジスト膜119上に形成されたNi層135に生じる膜応力が、フォトレジスト膜119に伝わる。そして、フォトレジスト膜119に、反りが生じてしまい、この結果、レジスト開口部は、その端部が持ち上がってしまい、設計面積以上に広がってしまう。これにより、下地電極113の設計面積以外の部分に中間層117を形成する材料が付着してしまい、AlもしくはAl合金から成る下地電極113の周囲にバリとなり残ってしまう。このバリが、設計面積以上に大きな面積で付着してしまうと、IDT電極111に短絡してしまう可能性がある。
また、バリが極薄く付着していることから、このバリは、基板や電極への密着性が低く、剥がれやすい。これにより、剥がれてしまったバリは、周囲の電極と短絡しやすく、この結果、弾性表面波装置の特性不良が発生する。そこで、前述のようなNi層115(135)に生じる膜応力を低減するために、Ni層115(135)の膜厚は薄くすればよい。
しかし、Ni層115(135)を極端に薄い膜厚にすると、Ni層115は、本来の目的であるバリアメタルとしての機能を果たさなくなる。本発明は、このような背景のもとになされたもので、半田等の溶融性金属材料に対して、バリアメタルとして充分に機能する電極層を含んだ結合用電極を有しつつ、この電極に生じる膜応力を緩和することができ、気密性や信頼性に優れた弾性表面波装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の弾性表面波装置は、実装基板上に弾性表面波素子をワイヤレスボンディング方式で実装した弾性表面波装置であって、前記弾性表面波素子は、圧電基板の主面に形成された励振電極と、圧電基板の主面に形成され、前記実装基板上の電極と接続されるための結合用電極とを有するものであり、前記結合用電極は、前記圧電基板の主面に、Alを主成分とする金属材料を用いて形成されている下地電極と、前記下地電極上に形成された中間層とを含み、前記中間層は、密着電極層及びバリアメタル電極層が積層されたものであり、前記バリアメタル電極層は、不純物含有層を少なくとも1層含んでいることを特徴とする。
この構成により、半田等の溶融性金属材料に対して、バリアメタルとして充分に機能する電極層を含んだ結合用電極を用いて、弾性表面波素子を実装基板上に実装することができる。結合用電極に含まれるバリアメタル電極層が、少なくとも一層以上の不純物含有層を含んだ積層体で形成されることにより、半田等の溶融性金属材料に対して、バリアメタルとして充分に機能する電極層を含んだ結合用電極を有しつつ、バリアメタル電極層の膜応力を緩和することができる。これにより、電極剥離が発生せず、特性不良が生じない結合用電極を有することができるので、気密性に優れ、信頼性に優れた弾性表面波装置を提供することができる。
この結合用電極は、前記励振電極の外周を取り囲む位置に形成されている環状電極であってもよい。また、結合用電極は、前記励振電極に接続されている配線電極であってもよい。
また、前記バリアメタル電極層は、Ni、Cuのうちの少なくとも1つの材料を含んでいることが好ましい。これにより、半田等の溶融性金属の拡散を良好に抑制することができるので、もろい金属間化合物の形成や金属層間の剥離を引き起こしにくく、弾性表面波装置の信頼性を高めることができる。
また、前記不純物含有層は、前記バリアメタル電極層を形成する材料に、炭素,硫黄,酸素のうちの少なくとも1つの材料を不純物として含んでいることが好ましい。これにより、不純物含有層は、バリアメタル電極層に生じる膜応力を低減することができる。また、前記バリアメタル電極層の厚さは、0.5μm〜1.5μmの範囲にあることが好ましい。これにより、バリアメタル層の膜厚が、0.5μmより薄いときのように、半田等の接続金属に対するバリアメタルとしての役割が劣ることもなく、また、1.5μmより厚いときのように、膜応力が著しく大きくなることもない。
また、前記密着電極層は、Cr,Ti,V,Ptのうちの少なくとも1つの材料を含んでいることが好ましい。これにより、下地電極とバリアメタル電極層との密着性を高めることができる。
また、本発明の弾性表面波装置の製造方法は、圧電基板の主面に、励振電極と、実装基板上の電極に接続されるための結合用電極とを形成して弾性表面波素子を作製し、この弾性表面波素子を、前記実装基板上にワイヤレスボンディング方式で実装する弾性表面波装置の製造方法であって、前記結合用電極は、前記圧電基板の主面にAlを主成分とする金属材料を用いて、前記結合用電極の下地電極を形成する第1の工程と、前記下地電極上に、密着電極層を形成する第2の工程と、前記密着電極層上に、バリアメタル電極層と不純物含有層との積層体を形成する第3の工程とにより製造されていることを特徴とする。
この構成により、半田等の溶融性金属材料に対して、バリアメタルとして充分に機能する電極層を含んだ結合用電極を形成することができ、その結合用電極を用いて、弾性表面波素子を実装基板上に実装することで弾性表面波装置を製造することができる。結合用電極に含まれるバリアメタル電極層が、少なくとも一層以上の不純物含有層を含んだ積層体で形成されることにより、半田等の溶融性金属材料に対して、バリアメタルとして充分に機能する電極層を含んだ結合用電極を有しつつ、バリアメタル電極層の膜応力を緩和することができる。これにより、電極剥離が発生せず、特性不良が生じない結合用電極を形成することができるので、結果として、気密性や信頼性に優れた弾性表面波装置を製造することができる。
また、前記下地電極を形成する前の前記圧電基板、前記密着電極層を形成する前の前記下地電極、前記バリアメタル電極層を形成する前の前記密着電極層、前記不純物含有層を含む前記バリアメタル電極層、のうちの少なくとも1つの表面を、アルゴンイオン,酸素イオン,窒素イオンのうちの少なくとも1つによりボンバード処理を施して粗面化することが好ましい。これにより、結合用電極を形成する各層の界面が粗面化されることで、各層に生じる膜応力による反りをさらに抑制することができる。
この結合用電極は、前記励振電極の外周を取り囲む位置に形成されている環状電極であってもよい。また、結合用電極は、前記励振電極に接続されている配線電極であってもよい。
また、前記バリアメタル電極層は、Ni、Cuのうちの少なくとも1つの材料を含んでいることが好ましい。これにより、半田等の溶融性金属の拡散を良好に抑制することができるので、もろい金属間化合物の形成や金属層間の剥離を引き起こしにくく、弾性表面波装置の信頼性を高めることができる。
また、前記不純物含有層は、前記バリアメタル電極層を形成する材料に、炭素,硫黄,酸素のうちの少なくとも1つの材料を不純物として含んでいることが好ましい。これにより、不純物含有層は、バリアメタル電極層に生じる膜応力を低減することができる。
また、前記バリアメタル電極層の厚さは、0.5μm〜1.5μmの範囲にあることが好ましい。これにより、バリアメタル層の膜厚が、0.5μmより薄いときのように、半田等の接続金属に対するバリアメタルとしての役割が劣ることもなく、また、1.5μmより厚いときのように、膜応力が著しく大きくなることもない。
また、前記密着電極層は、Cr,Ti,V,Ptのうちの少なくとも1つの材料を含んでいることが好ましい。これにより、下地電極とバリアメタル電極層との密着性を高めることができる。
本発明の通信機器は、送信信号を搬送波信号に重畳させてアンテナ送信信号とするミキサと、前記アンテナ送信信号の不要信号を減衰させる請求項1乃至7のいずれかの弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、前記アンテナ送信信号を増幅するとともに増幅された前記アンテナ送信信号をデュプレクサを介してアンテナへ出力するパワーアンプとを具備する送信回路を備えたことを特徴とするものである。また、本発明の通信機器は、アンテナで受信されデュプレクサを通ったアンテナ受信信号を増幅するローノイズアンプと、増幅された前記アンテナ受信信号の不要信号を減衰させる請求項1乃至7のいずれかの弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、前記アンテナ受信信号の搬送波信号から受信信号を分離するミキサとを具備する受信回路を備えたことを特徴とするものである。
上記の構成により、通信機器が落下等しても、気密性に優れ、信頼性に優れた弾性表面波装置を用いているので、弾性表面波装置の破損や特性が劣化することがなく、その結果、耐久性、信頼性の高い通信機器となる。
また、本発明のデバイスは、圧電基板と、前記圧電基板の主面に形成された、弾性表面波を発生させる第1の電極と、実装基板と、前記圧電基板と前記実装基板とを結合させる第2の電極であって、Alを主成分とする金属から成るとともに前記圧電基板の前記主面に形成された下地電極、前記下地電極上に形成された密着電極層、及び前記密着電極層上に形成されるとともに第1の金属層と前記第1の金属層よりも不純物を多く含有する第2の金属層を含むバリアメタル電極層を含む第2の電極とを備えたことを特徴とする。
この構成により、半田等の溶融性金属材料に対して、バリアメタルとして充分に機能するバリアメタル電極層を含んだ第2の電極を用いて、弾性表面波を発生させる第1の電極が形成された圧電基板を実装基板上に実装することができる。第2の電極に含まれるバリアメタル電極層が、第1の金属層とそれよりも不純物を多く含有する第2の金属層を含む積層体で形成されることにより、半田等の溶融性金属材料に対して、バリアメタルとして充分に機能するバリアメタル電極層を含んだ第2の電極を有しつつ、バリアメタル電極層の膜応力を緩和することができる。これにより、電極剥離が発生せず、特性不良が生じない第2の電極を有することができるので、気密性に優れ、信頼性に優れたデバイスを提供することができる。
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる弾性表面波素子の平面図である。弾性表面波素子S1は、圧電基板1と、櫛歯状電極を有するIDT電極8と、IDT電極8への電気信号の入出力用の配線電極12と、IDT電極8と配線電極12とを接続するための引き出し配線9と、IDT電極8の周囲を気密封止するための環状電極11とを備えている。また、圧電基板1には、そのIDT電極8が形成されている側(主面)のIDT電極8や引き出し配線9上に保護膜10が形成されている。
圧電基板1は、例えば、36°Yカット−X伝搬のLiTaO3単結晶、64°Yカット−X伝搬のLiNbO3単結晶、又は、45°Xカット−Z伝搬のLiB4O7単結晶等の圧電性を有する材料を用いて形成されている。これにより、圧電基板1は、電気機械結合係数を大きく、かつ、群遅延時間温度係数を小さくすることができる。
また、圧電基板1の厚みは、好ましくは、0.3〜0.5mm程度である。このため、その厚みが0.3mm未満で薄く形成されたときのように、圧電基板1が脆くなることもなく、逆に、その厚みが0.5mmを超えて厚く形成されたときのように、材料コストが大きくなることもない。
IDT電極8は、弾性表面波の発生のための励振電極である。IDT電極8は、互いに噛み合うような櫛歯状に形成されている。IDT電極8は、好ましくは、その対数が50〜200であり、電極指の幅が0.1〜10μmであり、電極指の間隔が0.1〜10μmであり、電極指の交差幅が10〜80μmである。そして、IDT電極8は、弾性表面波共振器や弾性表面波フィルタとしての所期の特性を良好に得るために、0.2〜0.4μmの厚みを有する。なお、IDT電極8は、発生される弾性表面波を反射し効率よく共振させるために、弾性表面波の伝搬路の両端に、反射器を設けた構造としてもよい。
また、IDT電極8は、Al−Cu系のAl合金の金属材料を用いて形成されている。Al−Cu系のAl合金に加えられるCu以外の金属には、Ti,Ta,W,Mo等の金属が用いられることもある。なお、IDT電極8は、Ti,Ta,W,Mo等の金属を含むAl合金をそれぞれ積層して、形成されたものでよい。
また、IDT電極8は、複数の電極指を平行に配列したスリット型の反射器にも適用できる。なお、IDT電極8は、図1のように、2重モード弾性表面波共振器フィルタとラダー型弾性表面波フィルタが混在した弾性表面波フィルタを構成する例を示したが、2重モード弾性表面波共振器フィルタまたはラダー型弾性表面波フィルタを構成するものであってもよい。
IDT電極8は、複数の引き出し配線9によって、複数の配線電極12と接続されている。IDT電極8と引き出し配線9とは、絶縁性の保護膜10で覆われている。
配線電極12は、導電性の金属材料で形成されている。配線電極12が、半田等の溶融性金属材料により、この配線電極12と対向する位置に形成されている実装基板(図示せず)上の配線接続電極(図示せず)と接合されることで、弾性表面波素子S1内のIDT電極8と、実装基板に接続されている外部配線(図示せず)とが、電気的かつ機械的に接続される。
環状電極11は、IDT電極8を取り囲む位置に形成されている。そして、環状電極11が、半田等の溶融性金属材料により、この環状電極11と対向する位置に形成されている実装基板上の環状接続電極(図示せず)と接合されることで、弾性表面波素子S1と実装基板とが、機械的に接続される。
IDT電極8及び引き出し配線9は、スパッタリング法、蒸着法又はCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)等の薄膜形成法を用いて、Alを主成分とするAl合金により、形成される。そして、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングされ、所定の形状となる。
保護膜10は、CVD法又は蒸着法等の薄膜形成法を用いて、SiO2膜、SiN膜、Si膜等の絶縁体により形成される。
このようにして、弾性表面波素子S1は、上記のようなIDT電極8を少なくとも一対備えている。この弾性表面波素子S1は、所望の特性を得るために、複数対のIDT電極8を、直列接続、並列接続等の接続方式で接続したものを備えることができる。
図2は、図1における環状電極11のA−A’線での拡大断面図である。図3は、図1における配線電極12のB−B’線での拡大断面図である。
環状電極11は、Al合金から形成されている下地電極2と、下地電極2上に形成されている密着電極層3と、密着電極層3上に積層されているバリアメタル電極層4と、環状電極11の最表層を形成しているAu電極層6とを含んでいる。図2の例では、バリアメタル電極層4は5層の積層体となっている。バリアメタル電極層4の母材のみからなる母材層4Aが3層あり、それらに挟まれる形で2層の不純物含有層4Bが積層されている。例えば、不純物含有層4Bはバリアメタル電極層4の母材に不純物を添加して形成する。ここでは、下地電極2とAu電極層6とに挟まれた密着電極層3及びバリアメタル電極層4をまとめて、「中間層7」と呼ぶ。
下地電極2は、スパッタリング法、蒸着法又はCVD法等の薄膜形成法を用いて、Alを主成分とするAl合金により、形成される。下地電極2の厚みは、0.2μm〜0.4μmである。そして、フォトリソグラフィ法によりパターニングされ、所定の形状となる。
密着電極層3は、下地電極2との密着性を高めるために、Cr,Ti,V,Pt等を含む材料が用いられる。とりわけ、先に挙げた材料のうち、CrやTiを用いて密着電極層3が形成された場合、Al合金で形成されている下地電極2との密着性を高めることができる。また、密着電極層3の厚みは、0.01μm〜0.03μmである。
バリアメタル電極層4は、半田の拡散を抑制するために、NiやCuを含む材料が用いられる。これにより、半田の拡散を良好に抑制することができるので、もろい金属間化合物の形成や金属層間の剥離を引き起こしにくく、弾性表面波装置の信頼性を高めることができる。とりわけ、先に挙げた材料のうち、Niを用いてバリアメタル電極層4が形成された場合、Cuを用いた場合に比べて、半田の拡散速度を遅くすることができ、リフロー時に半田が下地電極2まで拡散する半田食われを、さらに抑制できる。
また、バリアメタル電極層4に積層されている不純物含有層4Bは、バリアメタル電極層4に生じる膜応力を低減するために、主な材料として、Niが用いられ、不純物として、炭素,硫黄,酸素等の物質が添加されている。とりわけ、不純物含有層4Bに含ませる不純物として、炭素や酸素を用いた場合、不純物含有層4Bは、中間層7に生じる膜応力を低減することができる。特に、不純物として炭素を用いた場合、不純物含有層4Bを含む環状電極11の電気抵抗が低減されるため、不純物含有層4Bは、弾性表面波素子S1の挿入損失を良好に向上することができる。
炭素が不純物として用いられた場合の不純物濃度は3.0〜3.5重量%程度であり、硫黄及び酸素についてもそれぞれ炭素と同程度かそれ以下の濃度である。なお、炭素,硫黄,酸素の不純物が自然に混入する場合の不純物濃度はppmのオーダーであり、きわめて小さい値となる。
不純物含有層4Bを含むバリアメタル電極層4全体としての膜厚は、0.5μm〜1.5μmの範囲で形成されていることが好ましい。このとき、バリアメタル層4の膜厚が、0.5μmより薄いときのように、半田等の接続金属に対するバリアメタルとしての役割が劣ることもなく、また、1.5μmより厚いときのように、膜応力が著しく大きくなることもない。
また、不純物含有層4Bを含むバリアメタル電極層4は、図2のようにそれらの界面が明確に区別できる構成でなくてもよく、バリアメタル電極層4の厚み方向において不純物の濃度が徐々に変化する構成であってもよい。即ち、バリアメタル電極層4の厚み方向において不純物の濃度に勾配がある構成であってもよい。このような構成は、例えば、バリアメタル電極層4をスパッタリング法や蒸着法等の薄膜形成法によって形成する際に、成膜装置内の雰囲気中における不純物の濃度を徐々に変化させることによって形成でき、また、スパッタリング法で形成する際に不純物の濃度に勾配があるターゲットを用いて形成することができる。
環状電極11は、スパッタリング法や蒸着法等の薄膜形成法を用いて、下地電極2上に、密着電極層3と、バリアメタル電極層4と、Au電極層6とが順に形成される。また、環状電極11の所定の形状を得るために、リフトオフ法が用いられる。このリフトオフ法を用いた環状電極11(結合用電極)の形成過程は、後述する。
また、図13に示すように、密着電極層3とAu電極層6との間に、1層のみの母材層4Aと1層のみの不純物含有層4Bとの組合せから成るバリアメタル電極層4が形成されている場合であっても、中間層7に生じる膜応力を充分に低減し得る。
なお、配線電極12は、環状電極11と同様、下地電極2上に中間層7とAu電極層6とを順に積層して、形成したものでよい(図3参照)。これにより、配線電極12と環状電極11とを、同一工程で形成することができる。
図4は、実装基板60に弾性表面波素子S1を実装している弾性表面波装置90の断面図である。
弾性表面波装置90に含まれる実装基板60は、基体61と、環状接続電極66と、配線接続電極62とを備えている。また、環状接続電極66上には、環状電極11と直接的に接合するための環状封止材65が形成されており、配線接続電極62上には、配線電極12と接合するための接続体63が形成されている。なお、結合用電極としての環状電極11は、半田や導体バンプ等の接続部材(環状封止材65)を介して環状接続電極66に直接的に環状接続電極66に接続されている。即ち、環状電極11は環状接続電極66にボンディングワイヤ等のワイヤを用いないフリップチップ方式等によって接続されている。
基体61は、例えば、セラミック基板と枠状セラミック基板とを積層することで形成されてもよく、単に一枚のセラミック基板として形成されてもよい。
配線接続電極62及び環状接続電極66は、基体61の上に電解めっき又は無電解めっき法等によって形成される。
なお、接続体63は、ここでは、配線接続電極62上に形成される場合を示したが、配線電極12上に形成されてもよい。
環状接続電極66上に形成されている環状封止材65及び配線接続電極62上に形成されている接続体63は、スクリーン印刷等の印刷法を用いて、半田ペースト,Au−Snペースト等の金属材料を形成する。環状封止材65及び接続体63は、また、ディスペンサー法を用いて、その金属材料を塗布することにより、同時に形成することもできる。
なお、この環状封止材65は、ここでは環状接続電極66上に形成される場合を示したが、環状電極11上に形成されてもよい。
配線接続電極62上に形成されている接続体63は、たとえば、フォトリソグラフィ法、印刷法、ディスペンサー法を用いて、エポキシ系樹脂に銀フィラー等の導電性フィラーを混入した異方性導電樹脂を塗布して、形成される。接続体63の材料となるエポキシ系樹脂は、必要以上に樹脂が広がらないように、粘度を高めるため、添加剤としてチクソ性付与剤を添加したり、フィラーの量で粘度を調整してもよい。なお、接続体63は、弾性表面波素子S1の電極腐食が起こらないよう、不純物イオン濃度を極力低減したものが好ましい。接続体63は、また、フォトリソグラフィ法を用いて、異方性導電樹脂を塗布して形成してもよい。
また、本発明のデバイスは、圧電基板1と、圧電基板1の主面に形成された、弾性表面波を発生させる第1の電極(図1のIDT電極8に相当する)と、実装基板と、圧電基板1と実装基板とを結合させる第2の電極(図1の環状電極11(結合用電極)に相当する)であって、Alを主成分とする金属から成るとともに圧電基板1の主面に形成された下地電極2、下地電極2上に形成された密着電極層3、及び密着電極層3上に形成されるとともに第1の金属層(図2のバリアメタル電極層4の母材層4Aに相当する)と第1の金属層よりも不純物を多く含有する第2の金属層(図2の不純物含有層4Bに相当する)を含むバリアメタル電極層4を含む第2の電極とを備えた構成である。この構成においても、図1〜図5に示した弾性表面波装置と同様の作用効果を奏するデバイスが得られる。
弾性表面波を発生させる第1の電極は、弾性表面波を発生させる電極であればよく、IDT電極8に限定されるものではないが、例えば、1個以上のIDT電極8、または1個以上のIDT電極8及びその両端に形成された反射器電極から成るものである。圧電基板1と実装基板とを結合させる第2の電極は、環状電極11(結合用電極)に限定されず、1個以上のパッド状の電極等であってもよい。
本発明のデバイスは、携帯電話等の通信機器に内蔵される弾性表面波装置としての使用に限定されるものではなく、弾性表面波を利用した各種装置として使用でき、例えば、発振装置、周波数フィルタ装置、光導波路装置、光変調装置、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)装置等に適用できる。
弾性表面波装置90は、以下の手順で製造される。
まず、弾性表面波素子S1は、IDT電極8が形成された主面側を基体61の上面に対面させるフェースダウン構成として、実装基板60上に載置固定される。
配線電極12は、その配線電極12に対向した位置に形成されている配線接続電極62と、接続体63を介して接続される。また、環状電極11は、その環状電極11に対向した位置に形成されている環状接続電極66と、環状封止材65を介して接続される。そして、弾性表面波素子S1は、それを載置した実装基板60とともにリフロー炉に入れられる。接続体63や環状封止材65は、リフロー溶融し、その後、リフロー炉から取り出されて常温まで冷やされ固まる。そして、配線電極12、配線接続電極62及び接続体63から配線電極部92が形成され、環状電極11、環状接続電極66及び環状封止材65から環状電極部91が形成される。これにより、弾性表面波素子S1と実装基板60とが、電気的かつ機械的に接続される。
ところで、環状電極部91は、弾性表面波素子S1の主面と、実装基板60の実装面とにより、IDT電極8を取り囲む位置に振動空間67を形成する。この振動空間67は、気密封止されている。この振動空間67は、IDT電極8の酸化等による劣化を抑制するために、低湿度の空気を封入し密閉することが好ましい。また、酸化等による劣化をさらに抑制するために、前記の空気に換えて、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを封入し、密閉してもよい。
次いで、ポッティング法や印刷法等により、弾性表面波素子S1の他方主面や周囲面に樹脂64を塗布し、この樹脂64を加熱硬化する。そして、各弾性表面波素子S1間の分離位置でダイシングすることにより、弾性表面波装置90が完成する。
この弾性表面波装置90は、環状電極部91や樹脂64が、振動空間67の外周部を取り囲んでいるので、気密性、耐湿性を充分に確保でき、信頼性に優れている。
また、環状電極11の中間層7として用いるバリアメタル電極層4には、内部に少なくとも一層以上の不純物含有層4Bを介在しているので、バリアメタル電極層4は、そこに生じる膜応力を緩和することができる。これにより、環状電極11は、膜応力による電極剥離を生じるおそれが少なく、振動空間67の気密性を充分に確保することができる。
さらに、弾性表面波装置90は、環状電極部91を形成する各層において、膜応力が生じにくいことにより、弾性表面波装置90に反りが発生しにくいので、その振動空間67を設計どおりの寸法で正確に製作することができる。これにより、より詳細な設計をすることができるので、弾性表面波装置90は、薄型化や小型化をしつつも、信頼性を高くすることができる。
以下では、環状電極11と配線電極12との製造方法を説明する。また、ここからは、環状電極11と配線電極12とをまとめて、単に、結合用電極Eとして説明する。
図5は、結合用電極Eの製造方法を説明するための拡大断面図である。この実施形態では、結合用電極Eを形成する各層の界面が粗面化されており、そのため、各層に生じる膜応力をさらに吸収することができる。ここでは、この層表面を粗面化する過程も含め、結合用電極Eの製造方法を説明する。
結合用電極E(環状電極11や配線電極12)は、Al合金からなる下地電極2と、下地電極2上に形成された密着電極層3及びバリアメタル電極層4を含む中間層7と、配線電極12の最表層に形成されるAu電極層6とを含んでいる。また、バリアメタル電極層4には、バリアメタル電極層の母材層4Aとバリアメタル電極層の母材層4Aとの間に、1層以上の不純物含有層4Bが積層されている(この実施形態では、合計で2層)。
まず、下地電極2は、スパッタリング法、蒸着法やCVD法等の薄膜形成法を用いて、Alを主成分とするAl合金等の金属材料を被膜して、圧電基板1上に形成される。そして、フォトリソグラフィ法によりパターニングされ、所定の形状となる。
次いで、密着電極層3及びバリアメタル電極層4を形成する中間層7とその最上部にあるAu電極層6とは、この順に、スパッタリング法又は蒸着法等の薄膜形成法を用いて形成される。
バリアメタル電極層4の形成時、スパッタリング成膜中に、炭素や硫黄の濃度の高いNiターゲット材に切替えてスパッタリングすることにより、そのとき形成されたバリアメタル電極層4に、炭素や硫黄の濃度の高い不純物含有層4Bが形成される。ターゲット材の不純物濃度は、炭素で3.0〜3.5重量%程度であり、硫黄、酸素もそれぞれ同程度である。
なお、不純物含有層4Bを含むバリアメタル電極層4の形成方法として、上述の方法以外に、スパッタリングガスとして使用するAr等の不活性ガス中に、炭素や硫黄を不純物ドーピングガスとして混合する方法を用いてもよい。
また、不純物含有層4Bを含むバリアメタル電極層4は、バリアメタル電極層4をスパッタリング法によって形成する際に、スパッタリングの停止期間(インターバル)を設けることによって形成することもできる。即ち、1層目のバリアメタル電極層の母材層4Aを形成した後に、スパッタリングを一旦停止し、その後再開する操作を行う。そうすると、1層目のバリアメタル電極層の母材層4Aは、ターゲットに含まれる不純物をほぼそのまま含むことになるので、ターゲットの不純物の濃度と同程度の低い濃度の不純物を含むものとなる。一方、スパッタリングを再開して形成された2層目のバリアメタル電極層の母材層4Aは、再開時に雰囲気中の不純物を取り込んで形成されるため、ターゲットの不純物の濃度と雰囲気中の不純物の濃度とを足し合わせた高い濃度の不純物含有層4Bが最初に形成され、その後ターゲットの不純物の濃度と同程度の低い濃度の不純物を含む母材層4Aが形成される。これにより、1層目のバリアメタル電極層の母材層4Aと2層目のバリアメタル電極層の母材層4Aとの間に不純物含有層4Bが形成されることになる。このような停止期間を設けたスパッタリング法によって不純物含有層4Bを形成すると、不純物の濃度に勾配が形成され易くなる。
上記したようなスパッタリングの再開時に雰囲気中の不純物が取り込まれることの詳細な作用機構については明確ではないが、本発明者の実験によってスパッタリングの再開時に不純物含有層4Bが形成されることが確認されている。
ところで、結合用電極Eの各層が形成される前には、アルゴンイオン,酸素イオン,窒素イオンの少なくとも1種のイオンにより、少なくとも1層の界面をボンバードして、その表面を清浄化する方法が用いられる。これにより、結合用電極Eにおいてボンバードされた層の表面は、粗面化される(図では、全ての層の表面において、ボンバードされている)。特に、結合用電極Eを形成する各層の界面が粗面化されることで、各層に生じる膜応力による反りをさらに抑制することができる。
以下では、リフトオフ法により、弾性表面波素子上の結合用電極Eを製造するときの過程を説明する。
図6は、リフトオフ法により結合用電極Eが形成されたときの拡大断面図である。結合用電極Eには、上述のように、下地電極2上に中間層7及びAu電極層6が、順に形成されている。
まず、圧電基板1上には、中間層7を形成する領域以外に、逆テーパーでオーバーハング形状のフォトレジスト膜22が形成される。次いで、このフォトレジスト膜22でマスクをしながら、密着電極層3、バリアメタル電極層4、Au電極層6を順に積層することで、結合用電極Eが形成される。このとき、結合用電極Eが形成されるのと同時に、フォトレジスト膜22上にも、Cr層23、Ni層24、Au層25が積層する。このNi層24は、バリアメタル電極層4と同様に、不純物含有層を内在している。これにより、結合用電極E形成時のリフトオフ工程において、Ni層24の膜応力が低減され、フォトレジスト膜22で形成されている開口部が持ち上がるおそれが少ない。よって、結合用電極Eの形成時に、バリを発生することが少なく、ほぼ設計どおりの位置に密着電極層3、バリアメタル電極層4、Au電極層6とを形成することができるので、この結合用電極Eの製造方法を用いることで、バリによる短絡不良の発生を少なくすることができ、結果として、歩留り率を向上することができる。
なお、ここでは、結合用電極Eは、リフトオフ法を用いて形成したが、他にも、フォトリソグラフィ法等のメタルマスクを使用する薄膜形成法を用いて形成してもよい。
本発明の弾性表面波装置は、携帯電話,PHS(Personal Handy Phone)等の通信機器のバンドパスフィルタ及び通信機器に適用することができる。このバンドパスフィルタは、アンテナ送信信号をデュプレクサを介してアンテナへ出力する送信回路を備えた通信機器の送信回路に用いられるバンドパスフィルタであって、本発明の弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタである。また、このバンドパスフィルタは、アンテナ受信信号をデュプレクサを介して受信しアンテナ受信信号の搬送波信号から受信信号を分離する受信回路を備えた通信機器の受信回路に用いられるバンドパスフィルタであって、本発明の弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタである。
また、本発明の通信機器は、送信信号を搬送波信号(キャリア信号)に重畳させてアンテナ送信信号とするミキサと、アンテナ送信信号の不要信号を減衰させる本発明の弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、アンテナ送信信号を増幅するとともに増幅されたアンテナ送信信号をデュプレクサを介してアンテナへ出力するパワーアンプとを具備する送信回路を備えた通信機器である。また、本発明の通信機器は、アンテナで受信されデュプレクサを通ったアンテナ受信信号を増幅するローノイズアンプと、増幅されたアンテナ受信信号の不要信号を減衰させる本発明の弾性表面波装置を含むバンドパスフィルタと、アンテナ受信信号の搬送波信号から受信信号を分離するミキサとを具備する受信回路を備えた通信機器である。
図12に、通信機器である携帯電話に組み込まれる、バンドパスフィルタを有する高周波回路のブロック回路図の1例を示す。送信信号(高周波信号)をミキサ220によって搬送波信号に重畳させてアンテナ送信信号とし、バンドパスフィルタである弾性表面波装置221によりその不要信号が減衰され、パワーアンプ222で増幅された後、アイソレータ223と弾性表面波分波器(デュプレクサ)215を通り、アンテナ214から放射される。また、アンテナ214で受信されたアンテナ受信信号は、弾性表面波分波器215を通りローノイズアンプ216で増幅され、バンドパスフィルタである弾性表面波装置217でその不要信号が減衰された後、アンプ218で再増幅され、ミキサ219で低周波信号に変換される。
本発明の通信機器は、上記の送信回路及び受信回路の少なくとも一方を備えていればよく、両方を備えていてもよい。
本発明のバンドパスフィルタ及び通信機器は、本発明の弾性表面波装置を有していることから、耐久性に優れ、高い信頼性を有するものとなる。
以下、上述の実施形態に沿って作成した弾性表面波装置S1について、製造及び測定をおこなった結果を説明する。
圧電基板1は、36°Yカット−X伝搬のLiTaO3結晶を用いた。圧電基板1は、そのチップサイズが1.1mm×1.5mmであった。また、実装基板60は、そのチップサイズが70mm×70mmであり、厚さ250μmのアルミナ基板を用いた。このアルミナ基板に、無電解めっき法を用いて、合計1μm膜厚のAu及びNiを形成した。
図6のように、IDT電極8から引き出された下地電極2及び環状電極11を形成する部分以外に、リフトオフ法を用いるため、フォトレジスト膜22でマスキングした。そして、スパッタリング法を用いて、結合用電極E(配線電極12及び環状電極11)を形成した。
結合用電極Eは、下地電極2をAl−Cu合金で形成し、密着電極層3をCrで形成し、バリアメタル電極層4をNiで形成し、最表層の電極層6をAuで形成した。
また、結合用電極Eを形成する各電極層の厚さは、下地電極2が約180nmであり、密着電極層3が約20nmであり、不純物含有層4Bを含めたバリアメタル電極層4が約1μmであり、電極層6が約200nmであった。
バリアメタル電極層4の内部には、スパッタリング法を用いた成膜中に、炭素及び硫黄濃度の高いNiターゲット材に切替えてスパッタリングすることで、2層の炭素及び硫黄濃度の高い不純物含有層4Bを含むことができた(図2参照)。
実装基板60の配線接続電極62及び環状接続電極66の上部には、予め、スクリーン印刷法を用いて、接続体63及び環状封止材65となる半田ペーストを塗布した。塗布した半田ペーストの線幅は、約100μmであった。
そして、対向する配線接続電極62と配線電極12とが接続する位置に、フェースダウンで載置した後、リフロー炉で240℃の温度で5分間、リフロー溶融し、その後、溶融した半田を常温で硬化した。
次いで、弾性表面波素子S1の上部には、ポッティング法を用いてエポキシ樹脂64を塗布した後、乾燥炉で150℃の温度で5分間、加熱硬化させた。
最後に、各チップ間の分離位置でダイシングすることにより、個々の弾性表面波素子S1を形成して、2.5mm×2.0mmの弾性表面波装置90が完成した。このときの弾性表面波装置90の高さは、約0.7mmであった。
図7は、結合用電極Eの表面から深さ方向への層を構成する金属元素のSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry:二次イオン質量分析法)の分析結果を示すグラフである。
図8は、従来技術としての接合用電極(電極パッド)112(図9参照)の表面から深さ方向への層を構成する金属元素のSIMSの分析結果を示すグラフである。
SIMSとは、加速して細く絞った一次イオンビーム(酸素、セシウム等のイオンビーム)を真空中で資料に照射し、スパッタリングにより、資料表面から飛び出す粒子のうち、二次イオンを電場で引き出して資料分析を行う方法である。そして、標準サンプルと比較することによって、絶対濃度を換算する。
図7において、中間層7(図2参照)では、バリアメタル電極層4は、Ni層の中に、炭素(C)と硫黄(S)の不純物ピークが観察される(200sec〜300sec付近と、400sec〜500sec付近)。よって、バリアメタル電極層4は、Ni層が2層の不純物含有層4Bが介在した積層体となっていることがわかる。その不純物含有層4Bでは炭素の濃度は約3.16重量%であり、硫黄の濃度は約0.5重量%である。
一方、図8において、中間層117(図9参照)では、バリアメタル電極層115は、単一のNi層で形成されていることがわかる。
以下では、本発明の一実施形態の結合用電極Eと、従来技術としての接合用電極(電極パッド)112とにかかる膜応力を比較する。
表1は、結合用電極Eの中間層7と、接合用電極(電極パッド)112の中間層117とにかかる膜応力を測定した結果を示す。
表1では、本発明の一実施形態として、中間層7に含まれるバリアメタル電極層4に、炭素と硫黄とを不純物として含んだ不純物含有層4Bを有する結合用電極Eと(図2参照)、従来の技術として、図10のように、中間層117に含まれるNi層115に、不純物含有層を含まない接合用電極112とを比較している。
このとき、結合用電極Eでは、電極構造の膜応力が189N/m2であった。それに比べて、接合用電極112では、電極構造の膜応力が882N/m2であった。結果として、本発明にかかる結合用電極Eを用いたことにより、膜応力を約1/4に低減できた。よって、結合用電極Eは、膜応力に起因する各電極層界面における膜剥離を防止することができ、弾性表面波装置の信頼性を向上させることができた。
さらに上記の膜応力測定のために作製したのと同じ弾性表面波装置S1及び比較用サンプルを用い、自由落下試験により機械的な耐性を評価した。各試験サンプルは1.8メートルの高さからコンクリート表面へ自由落下させた。耐久性試験での、自由落下繰り返し回数は、10,30,50,100回。それぞれのセットごとに弾性表面波装置S1、比較サンプル共に30個用意し試験用サンプルとした。フィルタ特性が劣化したサンプルを不良とし、それぞれのセット毎に累積不良数を求めた。結果を表2に示す。
弾性表面波装置S1では、100回の繰り返し自由落下を行っても、一つも不良品が出なかった。一方、比較用サンプルでは、30回の繰り返し自由落下で既に不良が発生した。これらのデータは前述の膜応力測定結果を補完するとともに、より現実的にこの実施例による弾性表面波装置S1の従来技術に対する優位を示すものである。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。