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JP4997433B2 - タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法 - Google Patents
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JP4997433B2 - タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法 - Google Patents

タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法に関する。更に詳しくは、熱膨張の制御が可能であり、光学分野、熱エネルギー分野、電子材料分野で有用なタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法に関する。
構造材料における熱膨張挙動は、加熱により体積が増えることにより変形をもたらし、異物質の接合界面における剥離ないし破壊等の大きな原因となる。特に、高い精度を要求する精密機械部品や光学部品では、かかる熱膨張をどのようにして抑制するかが大きな課題になっており、熱膨張を制御し、可能な限りゼロにしたいという要望がある。
一方、温度の上昇とともに体積が連続的に減少する挙動を「負の熱膨張(負膨張)」といい、このような負膨張を示す材料(負膨張材料)として近年注目されているのがタングステン酸ジルコニウム(ZrW)である。このタングステン酸ジルコニウムは、広い温度で等方的に負の熱膨張を示すセラミックスであり、熱膨張を抑制・制御できるため、光学部品、光学素子、精密機械部品、熱電変換材料、及び各種精密デバイスに利用されるほか、フェルール、光ファイバー・グレーティング等の光フィルター等、熱膨張の制御が重要な課題となっている種々の分野で適用されている。
また、かかるタングステン酸ジルコニウムは、正の熱膨張を示す材料(正膨張材料)と組み合わせて複合体とすることにより、熱膨張係数を制御することができ、温度の変化によって寸法に変化が現れにくくなるため、寸法安定性に優れた材料が得られる。そして、このようなタングステン酸ジルコニウムを含む複合体を得る手段としては、タングステン酸ジルコニウムを含む組成物の焼結体を得るに際して、焼結時の昇温速度を20〜1000℃/分とし、焼結温度を777℃以下とする手段や(例えば、特許文献1を参照。)、タングステン酸ジルコニウムを含む複合体を、2〜50GPaの衝撃波を用いて圧縮固化する手段が提供されている(例えば、特許文献2を参照。)。
特開2003−129149号公報([請求項1]、[0022]) 特開2003−201502号公報([請求項1]、[0029])
しかしながら、前記の手段により得られたタングステン酸ジルコニウムを含む複合体は、緻密な焼結体とはならず、性能上満足のいくものが得られていなかったのが実情であった。また、その製造方法についても効率的なものとはいえず、改善が求められていた。
本発明は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、緻密な構造で熱膨張制御が可能であり、かつ簡便な手段で製造できるタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法を提供することにある。
本発明のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法は、タングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を得る第1の工程と、タングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸マグネシウム粉体を得る第2の工程と、前記タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体と前記タングステン酸マグネシウム粉体を混合し、放電プラズマ焼結により結晶化させる第3の工程を含むことを特徴とする。
本発明のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法は、前記第2の工程で得られるタングステン酸マグネシウム粉体が、タングステン酸マグネシウムのアモルファス粉体を焼結してなるタングステン酸マグネシウムの結晶粉体であることが好ましい。
本発明のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法は、前記タングステンを含む第1の出発物質及び前記タングステンを含む第3の物質が六塩化タングステンであり、前記ジルコニウムを含む第2の出発物質が塩化酸化ジルコニウム・八水和物であり、前記マグネシウムを含む第4の出発物質が塩化マグネシウムであることが好ましい。
本発明のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法は、タングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を得る第1の工程と、タングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸マグネシウム粉体を得る第2の工程と、前記タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体と前記タングステン酸マグネシウム粉体を混合し、放電プラズマ焼結により結晶化させる第3の工程から構成される。かかる本発明にあっては、ゾル・ゲル法により、複合体の前駆体となるタングステン酸ジルコニウム等を、他の一般的な方法と比較して低温で容易に作製できるとともに、後工程でこれらを放電プラズマ焼結により焼結・結晶化させて複合体としているので、両者の熱膨張係数の違いに起因するクラックの発生を効率よく防止することができ、複合体の密度を向上させ、緻密な構造の複合体を得ることが可能となる。また、ゾル・ゲル法と放電プラズマ焼結を併用することにより、後工程の放電プラズマ焼結における保持時間や加熱時間の負荷を低減し、前記した効果を備えた複合体を低温・短時間で簡便に得ることができる。
また、本発明のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法は、第2の工程で得られるタングステン酸マグネシウム粉体として、タングステン酸マグネシウムのアモルファス粉体を焼結してなるタングステン酸マグネシウムの結晶粉体を採用しているので、製造される複合体の焼結密度を更に向上させることが可能となる。
本発明のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法は、タングステンを含む第1の出発物質及びタングステンを含む第3の物質として六塩化タングステンを、ジルコニウムを含む第2の出発物質として塩化酸化ジルコニウム・八水和物を、マグネシウムを含む第4の出発物質として塩化マグネシウムをそれぞれ採用するので、出発原料が安定であり、製造されるタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体をより緻密な構造とすることができる。
以下、本発明を説明する。本発明で得られるタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体(以下、単に「複合体」とすることもある。)は、負膨張材料であるタングステン酸ジルコニウムと正膨張材料であるタングステン酸マグネシウム粉体という相反する熱膨張挙動を備えた材料の結晶粉体により構成されるので、熱膨張挙動が相殺され、温度上昇に対する寸法安定性が良好な機能性セラミックス材料である。
負膨張材料であるタングステン酸ジルコニウムは、温度の変化により、2つの相に転移することが知られている。一般的には、常温でα相が安定であるが、120〜160℃の温度において、α相からβ相に転移する。かかるα相とβ相は、結晶構造及び格子間隔が異なるため、その熱膨張係数に違いがある。α相は立方晶であり、−273〜120℃の温度範囲で、概ね−5.0×10−6〜−9.0×10−6/℃程度の熱膨張係数を有する。β相も立方晶であり、170〜400℃の温度範囲で−3.0×10−6〜−7.0×10−6/℃程度の熱膨張係数を有する。
なお、タングステン酸マグネシウムは、温度の変化による相の転移はなく、熱膨張係数は、5.0×10−6〜7.5×10−6/℃程度となる。
本発明で得られる複合体における熱膨張係数は、焼結条件や結晶状態にもよるが、負膨張材料であるタングステン酸ジルコニウムと、正膨張材料であるタングステン酸マグネシウムの組成バランスにより左右される。タングステン酸ジルコニウム(ZrW)とタングステン酸マグネシウム(MgWO)の組成比(タングステン酸ジルコニウム/タングステン酸マグネシウム)と熱膨張係数との関係を表1に示す。
(組成比と熱膨張係数の関係)
Figure 0004997433
本発明で得られるタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体にあって、熱膨張係数は、−6.0×10−6〜6.0×10−6/℃(表1で、タングステン酸ジルコニウム/タングステン酸マグネシウムが概ね90/10〜10/90)であれば、温度の変化によって寸法に変化が現れにくくなるため、温度上昇に対する寸法安定性に優れた材料となる。特に、熱膨張係数が−1.0×10−7〜1.0×10−7/℃(表1で、タングステン酸ジルコニウム/タングステン酸マグネシウムが概ね70/30〜50/50)であれば、いわゆる略ゼロ膨張材料となり、温度の変化によって寸法に変化がほとんど現れず、温度上昇に対する寸法安定性に極めて優れた材料となる。
そして、かかる複合体は、例えば、タングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸ジルコニウム粉体を得る第1の工程と、タングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸マグネシウム粉体を得る第2の工程と、前記タングステン酸ジルコニウムとタングステン酸マグネシウムを混合し、放電プラズマ焼結により結晶化させる第3の工程を含む製造方法により効率よく得ることができる。
ここで、ゾル・ゲル法とは、一般に、出発原料を溶媒に溶かして溶液として、加水分解や縮重合等の化学反応を経て析出したゾル溶液を凝集させてゲル化物を形成し、かかるゲル化物を熱処理することで内部に残された溶媒を取り除き、さらに必要により焼結処理等で緻密化を促進させることにより、ガラスやセラミックスを得る手段である。本発明にあっては、かかるゾル・ゲル法を用いて、前駆体となるタングステン酸ジルコニウムとタングステン酸マグネシウムを製造することにより、後工程で適用する放電プラズマ焼結における加熱時間や保持温度の負荷を効率よく低減できる。
(1)ゾル・ゲル法によるタングステン酸ジルコニウムの製造(第1工程):
本発明の製造方法を構成する第1工程は、タングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質を、ゾル・ゲル法を用いてタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を製造する工程である。
かかる第1工程にあっては、タングステンを含む第1の出発物質を、不活性化ガス中でアルコールに溶解させ、溶液(以下、「第1の溶液」とすることもある。)として加水分解を進行させる。タングステンを含む第1の出発物質としては、例えば、六塩化タングステン(WCl)、タングステンのアルコキシドであるW(OC、W(O−i−C等が挙げられるが、材料の安定性という点で、六塩化タングステンを使用することが好ましい。
また、第1の出発物質を溶解させるためのアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価のアルコール化合物や多価アルコール化合物等の種々の化合物を用いることができる。また、これらのアルコールは、その1種を単独で使用してもよく、あるいはその2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明にあっては、第1の出発物質を、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス中で、当該アルコール中に溶解させて第1の溶液とすればよい。
ジルコニウムを含む第2の出発物質は、アルコールと酸に溶解させて溶液(以下、「第2の溶液」とすることもある。)として、加水分解を進行させる。ジルコニウムを含む第2の出発物質としては、塩化酸化ジルコニウム・八水和物(ZrOCl・8HO)、ZrCl、ZrO(NO・2HO等、Zr(OC等のジルコニウムのアルコキシドが挙げられる。この中では、材料の安定性という点で、塩化酸化ジルコニウム・八水和物(ZrOCl・8HO)を使用することが好ましい。
第2の出発物質を溶解させるためのアルコールとしては、第1の出発物質を溶解させるアルコールと同様、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価のアルコール化合物や多価アルコール化合物等の種々の化合物を用いることができる。これらのアルコールは、その1種を単独で使用してもよく、あるいはその2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。また、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等を使用することができる、これらの酸は、その1種を単独で使用してもよく、あるいはその2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
次に、第1の出発物質を溶解した第1の溶液と、第2の出発物質を溶解した第2の溶液を混合・撹拌、及び静置することにより、タングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質のゾル溶液を調製する。かかるゾル溶液の調製に際しては、第1の溶液と第2の溶液を、室温で好ましくは24〜72時間、更に好ましくは30〜72時間混合・撹拌して、混合溶液とする。そして、かかる混合溶液を、室温で好ましくは12〜48時間、更に好ましくは24〜48時間静置することにより、溶液中のタングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質の縮重合が起こり、ゾル溶液が形成される。
かかるゾル溶液は、加熱処理を施すことにより、溶液中のタングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質の縮重合が更に進行し、溶媒が除去されることにより、タングステン酸ジルコニウムのゲル化物が形成される。加熱処理によるゲル化物の形成にあっては、オイルバス、ホットプレート等の公知の加熱手段を用いて、加熱温度を80〜100℃とすることが好ましく、90〜100℃とすることが更に好ましい。また、加熱時間は、5〜12時間とすることが好ましく、8〜12時間とすることが更に好ましい。
そして、得られたタングステン酸ジルコニウムのゲル化物を仮焼結処理(いわゆる仮焼きと同意。以下同。)することにより、タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を得ることができる。かかる仮焼結処理は、電気炉等の公知の加熱手段により、加熱温度を400〜450℃とすることが好ましく、430〜450℃とすることが特に好ましい。また、加熱時間は、5〜12時間とすることが好ましく、10〜12時間とすることが特に好ましい。
(2)ゾル・ゲル法によるタングステン酸マグネシウム粉体の製造(第2工程):
本発明の製造方法を構成する第2工程は、タングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質を、ゾル・ゲル法を用いてタングステン酸ジルコニウム粉体を製造する工程である。
ここで、かかる第2工程にあっては、前記した第1工程と同様に、タングステンを含む第3の出発物質を、不活性化ガス中でアルコールに溶解させ溶液(以下、「第3の溶液」とすることもある。)として、加水分解を進行させる。タングステンを含む第3の出発物質としては、第1の出発物質と同様、例えば、六塩化タングステン(WCl)、タングステンのアルコキシドであるW(OC、W(O−i−C等が挙げられるが、材料の安定性という点で、六塩化タングステンを使用することが好ましい。
第3の出発物質を溶解させるためのアルコールも、前記した第1工程と同様に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価のアルコール化合物や多価アルコール化合物等の種々の化合物を用いることができる。また、これらのアルコールは、その1種を単独で使用してもよく、あるいはその2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明にあっては、第3の出発物質を、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス中で、当該アルコール中に溶解させて第3の溶液とするようにすればよい。
マグネシウムを含む第4の出発物質は、第1工程のジルコニウムを含む第3の出発物質と同様、アルコールと酸に溶解させて溶液(以下、「第4の溶液」とすることもある。)として、加水分解を進行させる。マグネシウムを含む第4の出発物質としては、塩化マグネシウム(MgCl)、Mg(C・4HO、MgCl・6HO、Mg(OCH5)等のマグネシウムのアルコキシドが挙げられる。この中では、材料の安定性という点で、塩化マグネシウム(MgCl)を使用することが好ましい。
第4の出発物質を溶解させるためのアルコールとしては、第1の出発物質及び第3の出発物質を溶解させるアルコールと同様、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1価のアルコール化合物や多価アルコール化合物等の種々の化合物を用いることができる。これらのアルコールは、その1種を単独で使用してもよく、あるいはその2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。また、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等を使用することができる、これらの酸は、その1種を単独で使用してもよく、あるいはその2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
次に、第1工程と同様に、第3の出発物質を溶解した第3の溶液と、第4の出発物質を溶解した第4の溶液を混合・撹拌、及び静置することにより、タングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質のゾル溶液を調製する。かかるゾル溶液の調製に際しては、第3の溶液と、第4の溶液を、室温で好ましくは24〜72時間、更に好ましくは30〜72時間混合・撹拌して混合溶液とする。そして、かかる混合溶液を、室温で好ましくは12〜48時間、更に好ましくは24〜48時間静置することにより、溶液中のタングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質の縮重合が起こり、ゾル溶液が形成される。
かかるゾル溶液は、第1工程と同様に、加熱処理を施すことにより、溶液中のタングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質の縮重合が更に進行して、溶媒が除去されることにより、タングステン酸マグネシウムのゲル化物が形成される。かかる加熱処理によるゲル化物の形成は、第1工程と同様に、オイルバス、ホットプレート等の公知の加熱手段を用いて、加熱温度を好ましくは80〜100℃、更に好ましくは
90〜100℃として、加熱時間を好ましくは5〜12時間、更に好ましくは8〜12時間として、加熱処理を施せばよい。
そして、得られたタングステン酸マグネシウムのゲル化物を仮焼結処理することにより、タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を得ることができる。かかる仮焼結処理は、電気炉等の公知の加熱手段により、加熱温度を好ましくは400〜450℃、更に好ましくは430〜450℃として、加熱時間を好ましくは5〜12時間、更に好ましくは10〜12時間とすればよい。
なお、本発明の製造方法にあっては、得られたタングステン酸マグネシウムのアモルファス粉体を更に焼結して、結晶化させることが好ましい。タングステン酸マグネシウムを結晶粉体とすることにより、製造される複合体の焼結密度を更に向上させることができる。タングステン酸マグネシウムを焼結させる手段としては、特に制限はなく、例えば、常圧での加熱焼結、加圧状態での加熱焼結のほか、後記する放電プラズマ焼結を行って焼結・結晶化させるようにしてもよい。下記の条件によれば、得られるタングステン酸マグネシウムの結晶粉体の熱膨張係数は、50〜400℃の温度範囲で、概ね6.0×10−6〜7.5×10−6/℃程度に制御することができる。
タングステン酸マグネシウムの結晶粉体を得るにあたり、保持温度としては、600〜
850℃とすることが好ましく、750〜850℃とすることが更に好ましい。また、か
かる温度の保持時間としては、30分以上とすることが好ましく、60分以上とすること
が更に好ましい。昇温速度としては50〜200℃/時とすることが好ましく、50〜1
00℃/時とすることが更に好ましい。
加圧状態での加熱焼結や放電プラズマ焼結におけるプレス圧力としては、20〜100MPaとすることが好ましく、50〜100MPaとすることが更に好ましい。なお、これらはアルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
(3)放電プラズマ焼結によるタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造(第3工程):
本発明の製造方法を構成する第3工程は、第1の工程で得られたタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体と、第2の工程で得られたタングステン酸マグネシウム粉体を混合し、放電プラズマ焼結により焼結・結晶化させる工程である。
また、第1の工程で得られたタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体と第2の工程で得られたタングステン酸マグネシウム粉体を混合するには、湿式混合や乾式混合等の公知の混合手段を採用することができる。このうち、湿式混合における溶媒としては、非水系の溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤や、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を使用することが好ましい。溶剤の使用量は、例えば、スラリー粘度として概ね5Pa・s程度になるようにすればよい。また、湿式混合や乾式混合にあっては、通常の撹拌処理に加えて、例えば、ボールミル、振動ミル、遊星ミル等の公知のミル装置を用いて混合するようにしてもよい。
本発明の第3工程にあっては、前記のようにして混合されたタングステン酸ジルコニウムとタングステン酸マグネシウムの混合物を放電プラズマ焼結で焼結、結晶化させる。放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS法ともよばれる。)は、粉末の圧縮成形体に低電圧で直流パルス電圧を投入し、火花放電現象により粉体の間隙で瞬時に発生する数千から1万℃程度の放電プラズマの高エネルギーを熱拡散・電界拡散等へ効果的に適用させて、粉体の焼結を行う方法である。
本発明にあっては、タングステン酸ジルコニウムとタングステン酸マグネシウムの複合化に際して加圧圧縮した状態でパルス通電を行うことにより、粉体間をパルス大電流が通過することによる粉末表面の急激なジュール加熱、原料合金微粉間隙で生じる放電プラズマによる表面活性化、クリーニング作用、放電点及びジュール発熱点の移動等によって、原料合金微粉の表面付近のみが急速に発熱し、加熱されることになる。本発明の製造方法として放電プラズマ焼結を採用することにより、一般的な焼結と比較してはるかに急速な昇温が可能であり、複合体の焼結密度を格段に向上でき、また、負膨張材料であるタングステン酸ジルコニウムと、正膨張材料であるタングステン酸マグネシウムを焼結・結晶化させて複合体とするに際し、両者の熱膨張係数の違いに起因するクラックの発生を効率よく防止することができる。放熱プラズマ焼結を実施する装置としては、例えば、放電プラズマ焼結装置(ドクターシンターSPS−1050:SPSシンテックス(株)製)等を使用することができる。
放電プラズマ焼結は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、放電プラズマ焼結におけるプレス圧力としては、10〜200MPaとすることが好ましく、50〜100MPaとすることが更に好ましい。
保持温度としては、タングステンの分解温度(777℃)を考慮して、500〜750℃とすることが好ましく、600〜650℃とすることが更に好ましい。また、かかる温度の保持時間としては、10分以上とすることが好ましく、30分以上とすることが更に好ましい。また、昇温速度としては50〜200℃/分とすることが好ましく、50〜100℃/分とすることが更に好ましい。
かかる本発明のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法は、ゾル・ゲル法によりタングステン酸ジルコニウム粉体及びタングステン酸マグネシウム粉体を調製しているので、複合体の前駆体となるこれらタングステン酸ジルコニウム等を、他の一般的な方法と比較して低温で容易に作製することが可能となり、また、負膨張材料であるタングステン酸ジルコニウムと、正膨張材料であるタングステン酸マグネシウムを放電プラズマ焼結により焼結・結晶化させて複合体としているので、両者の熱膨張係数の違いに起因するクラックの発生を効率よく防止して、複合体の密度を向上させ、緻密な構造の複合体を得ることができる。更には、ゾル・ゲル法と放電プラズマ焼結を併用することにより、後工程の放電プラズマ焼結における保持時間や加熱時間の負荷を低減し、前記した効果を備えた複合体を低温・短時間で得ることが可能となる。
本発明で得られるタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体は、機能性セラミックス材料として用いることができ、当該粉状の複合体を成形ないしは焼結成形して備えるようにした成形体は、加熱に対する寸法安定性に優れるため、熱膨張の制御が重要な課題となっている光学分野、熱エネルギー分野、電子材料分野等において、光ファイバー用フェルール、光ファイバー・グレーティング等の光フィルター、光ファイバー用被覆体、半導体部品,精密電子部品,光導波路等の精密デバイス、または燃料電池用セパレータ等の熱電変換材料、精密光学部品、光学素子等に使用することができる。
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
例えば、本発明の複合体の製造方法における、タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体やタングステン酸マグネシウム粉体を得る手段としてのゾル・ゲル法は、前記の内容には限定されず、タングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質よりタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を、あるいはタングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質よりタングステン酸マグネシウム粉体を得ることができるゾル・ゲル法を採用するのであれば、特に制限はない。
なお、本発明で得られるタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体を製造するにあっては、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、焼結助剤、結合剤(バインダー)等を適宜添加することができる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造:
下記(1)〜(3)により、タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体を製造した。
(1)タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体の製造:
ジルコニウムとタングステンのモル比がジルコニウム/タングステン=1/2となるように、塩化酸化ジルコニウム・八水和物(キシダ化学(株)製、純度99%)を10.15g、六塩化タングステン(キシダ化学(株)製、純度99%)を25.00gそれぞれ秤量した。秤量後、六塩化タングステンを、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス中でエタノール250mlに撹拌しながら溶解させて第1の溶液とした。一方、塩化酸化ジルコニウム・八水和物は、大気中で2−ブタノール100mlと混合し、さらに4N酢酸50mlを入れて、撹拌させて溶解させ、第2の溶液とした。
得られた第1の溶液と第2の溶液を混合して、室温で30時間撹拌してゾル溶液とした。かかるゾル溶液を42時間放置した後、80℃のオイルバスで撹拌しながら9時間加熱して水分を蒸発させてゲル化させた。得られたゲル化物を、電気炉を用いて450℃で12時間仮焼結処理(仮焼き)することにより、平均粒径が約0.1μmのタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を約8.0g得た。
得られたタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体のX線回折スペクトルを図1に示す。図1に示すように、当該粉体のX線回折スペクトルはいわゆるハローパターンを示しており、得られた粉体はアモルファス粉体であることが確認できた。なお、X線回折スペクトルについて、横軸は、X線源としてCuKα線を用いた場合の回折角であり、一方、縦軸は、回折X線の強度を示す。後記する図2、図3及び図5のX線回折スペクトルも同様である。
(2)タングステン酸マグネシウムの結晶粉体の製造:
マグネシウムとタングステンのモル比がマグネシウム/タングステン=1/1となるように、塩化マグネシウム(キシダ化学(株)製、純度99%)を6.01g、六塩化タングステン(キシダ化学(株)製、純度99%)を25.00gそれぞれ秤量した。秤量後、六塩化タングステンを、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス中でエタノール250mlに撹拌しながら溶解させて第3の溶液とした。一方、塩化酸化ジルコニウム・八水和物は、大気中で2−ブタノール100mlと混合し、さらに4N酢酸50mlを入れて撹拌させて溶解させ、第4の溶液とした。
得られた第3の溶液と第4の溶液を混合して、室温で30時間撹拌してゾル溶液とした。このゾル溶液を42時間放置した後、80℃のオイルバスで撹拌しながら9時間加熱して水分を蒸発させてゲル化させた。得られたゲル化物について、電気炉を用いて450℃で12時間仮焼結処理することにより、平均粒径が約0.1μmのタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を約5.0g得た。
得られたタングステン酸マグネシウムのアモルファス粉体を、1気圧のアルゴンガス雰囲気下、一軸加圧成形して、下記の条件で焼結した。なお、保持温度としては、450℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃の7種類の温度でそれぞれ実施した。
(焼結条件)
プレス圧力 : 50MPa
保持温度 : 450℃、600℃、650℃、700℃、750℃、
800℃及び850℃
保持時間 : 60分
昇温速度 : 100℃/時
得られたタングステン酸マグネシウムの結晶粉体のX線回折スペクトルを図2(保持温度を450℃とした場合の結果)及び図3(保持温度を600〜850℃とした場合の結果)に示す。図2に示すように、保持温度を450℃として処理したものは、明確なピークが見られないアモルファス粉体であったが、図3に示すように、保持温度を600℃とするとアモルファス粉体の結晶化に起因するピークが確認でき、焼結温度を上昇させるにつれて結晶化が進みピークが明確となっていった。一方、800℃と850℃ではピークの差はほとんど認められず、ゾル・ゲル法で調製したタングステン酸マグネシウムのアモルファス粉体を少なくとも600℃で焼結処理し、好ましくは800℃以上で焼結することにより、タングステン酸マグネシウムの結晶粉体を調製できることが確認できた。
また、図4は、保持温度を800℃として焼結したタングステン酸マグネシウムの結晶粉体の熱膨張挙動を示す図である。図4より、当該粉体の熱膨張係数は、50〜300℃の温度範囲で6.92×10−6/℃であることが分かった。
(3)タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造:
(1)で得られたタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体と、(2)で得られたタングステン酸マグネシウムの結晶粉体(保持温度を700℃のもの)を乾式混合した。この混合粉体を、グラファイト製金型(治具径φ20mm)に充填し、1気圧のアルゴンガス雰囲気下、放電プラズマ放電焼結装置(ドクターシンターSPS−1050:SPSシンテックス(株)製)を用いて、下記の条件で放電プラズマ焼結して、タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の結晶粉体を得た。
なお、タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体とタングステン酸マグネシウムの結晶粉体の組成比は、タングステン酸ジルコニウム/タングステン酸マグネシウム=20/80(実施例1−a)、40/60(実施例1−b)、50/50(実施例1/c)、60/40(実施例1−d)、及び80/20(実施例1−e)の5種類とした。また、ブランクとして、(2)で得たタングステン酸マグネシウムの結晶粉体と(1)で得たタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体もそれぞれ同条件で放電プラズマ焼結して、順に参考例1、参考例2とした。
(放電プラズマ焼結の条件)
プレス圧力 : 50MPa
保持温度 : 600℃
保持時間 : 10分
昇温速度 : 100℃/分
実施例1−a〜実施例1−e及び参考例1、参考例2の焼結粉体のX線回折スペクトルを図5に示す。図5の結果より、実施例1−a〜実施例1−eの複合体については、反応物であるタングステン酸ジルコニウムやタングステン酸マグネシウムのピークは確認されず、それぞれの配合割合に対応した複合ピークが見られた。よって、タングステン酸ジルコニウムとタングステン酸マグネシウムは結晶化された状態で複合体とされていることが確認できた。
また、実施例1−a〜実施例1−eの複合体の密度をアルキメデス法で測定したが、いずれの複合体も理論密度に対して略相違ない相対密度であり、焼結が良好になされ緻密な構造であることが確認できた。
更には、図6にタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の熱膨張挙動を示す。複合体の熱膨張挙動は、タングステン酸ジルコニウムの配合比率が高くなるにしたがって熱膨張が正から負へと変化しており、熱膨張が制御できることが明らかになった。
なお、参考例1以外で見られる160℃付近での熱膨張係数の変化は、タングステン酸ジルコニウムのα−β相転移によるものと考えられる。図6から求めた熱膨張係数の結果を表2に示す。
(熱膨張係数)
Figure 0004997433
本発明は、熱膨張の制御を必要とする、光学分野、熱エネルギー分野、電子材料分野等で有用なタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法を提供可能とする。
タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体のX線回折スペクトルを示す図である。 450℃で焼結処理したタングステン酸マグネシウム粉体のX線回折スペクトルを示す図である。 600〜850℃で焼結処理したタングステン酸マグネシウム粉体のX線回折スペクトルを示す図である。 タングステン酸マグネシウムの結晶粉体の熱膨張挙動を示す図である。 タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体のX線回折スペクトルを示す図である。 タングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の熱膨張挙動を示す図である。

Claims (3)

  1. タングステンを含む第1の出発物質とジルコニウムを含む第2の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体を得る第1の工程と、
    タングステンを含む第3の出発物質とマグネシウムを含む第4の出発物質をゾル・ゲル法によりタングステン酸マグネシウム粉体を得る第2の工程と、
    前記タングステン酸ジルコニウムのアモルファス粉体と前記タングステン酸マグネシウム粉体を混合し、放電プラズマ焼結により結晶化させる第3の工程を含むことを特徴とするタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法。
  2. 前記第2の工程で得られるタングステン酸マグネシウム粉体が、タングステン酸マグネシウムのアモルファス粉体を焼結してなるタングステン酸マグネシウムの結晶粉体であることを特徴とする請求項1に記載のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法。
  3. 前記タングステンを含む第1の出発物質及び前記タングステンを含む第3の物質が六塩化タングステンであり、
    前記ジルコニウムを含む第2の出発物質が塩化酸化ジルコニウム・八水和物であり、
    前記マグネシウムを含む第4の出発物質が塩化マグネシウムであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタングステン酸ジルコニウム−タングステン酸マグネシウム複合体の製造方法。
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