JP5022073B2 - 耐炎化炉及び炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
耐炎化繊維の融着を回避するためには、例えば前駆体繊維束に油剤を付与する方法が知られており、それを目的として多くの油剤が検討されている。その中でも、高い耐熱性を有し、かつ融着を効果的に抑えることから、シリコ−ン系油剤がよく用いられている。
耐炎化炉内に滞留する粉塵の大部分は、前記で説明したシリコーン系油剤由来の粉塵であるが、それ以外にも、例えばシリコーン油剤以外の油剤成分の凝集物、前駆体繊維束であるポリアクリロニトリル系繊維束から発生するタール成分の凝集物、前駆体繊維束に付着して耐炎化炉の外から持ち込まれる粉塵、耐炎化炉内に流入する外気に含まれる粉塵、及びそれらの複合物からなる粉塵等も挙げられる。
熱風循環方式の耐炎化炉において、生産効率の向上、及びメンテナンスの低減を図るには、耐炎化炉内の粉塵を如何に低減するかに掛かっている。粉塵を低減するには、粉塵の生成要因を取り除く、或いは生成された粉塵を熱風循環系から排出する等が考えられる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、高品質な炭素繊維を得ることができ、かつ長期的な連続稼動が可能な耐炎化炉及び炭素繊維の製造方法を目的とする。
[1] 以下の熱風循環系と、排出手段とを有する耐炎化炉。
(1)熱風循環系
熱処理室と、熱風循環路とを有し、
熱処理室は、多段の走行域を折り返しながら走行する前駆体繊維束に熱風を吹きつけて耐炎化処理し、
熱風循環路は、熱風を熱処理室内に吹き込み、熱処理室外に排出することにより、熱風を熱風循環系内で循環させる。
(2)排出手段
前駆体繊維束の初期走行域を通過した熱風を、熱風循環系の外に排出する。
[2] 前記排出手段が排ガス燃焼装置と集塵装置とを有する[1]に記載の耐炎化炉。
[3] [1]または[2]に記載の耐炎化炉を用いる炭素繊維の製造方法。
[4] 複数の耐炎化炉を用いた炭素繊維の製造方法において、少なくとも最初の耐炎化処理を行う耐炎化炉が、[1]または[2]に記載の耐炎化炉である炭素繊維の製造方法。
前記熱処理室2内には、前駆体繊維束1の各走行域に配された熱風を吹き込むための熱風吹出口4と、各走行域に配された熱風を熱処理室2外に排出する熱風排出口5及び5aを備えている。また、熱風循環路8の経路途中には、熱風を加熱する加熱器6と、熱風の風速を制御する送風器7とが設けられている。また、前駆体繊維束1から発生するHCN等のガスの濃度を一定値以下に抑えるため、これらのガスを含んだ熱風を、熱風循環系の外に排出するための排気ファン16、及びガスを処理するための排ガス燃焼装置17を設けていてもよい。
前駆体繊維束1は、折り返しながら熱処理室2内を走行している間に、熱風吹出口4から吹き付けられる熱風によって耐炎化処理されて、耐炎化繊維束または予備耐炎化繊維束となる。なお、図示しないが、前駆体繊維束1は紙面に対して垂直な方向に複数本並行するように引き揃えられた幅広のシート状の形態を有している。
熱風排出口5及び5aは、熱風吹出口4と同様に、その吸い込み面に多孔板等の抵抗体を配して圧力損失を持たせてもよいが、持たせなくてもよく、必要に応じて適宜決定される。
なお、本発明の耐炎化炉10に用いられる加熱器6としては、所望の機能を有していれば特に限定されず、例えば電気ヒーター等の公知の加熱器を用いればよい。送風器7に関しても、所望の機能を有していれば特に限定されず、例えば軸流ファン等の公知の送風器を用いればよい。
ここで前駆体繊維束1の初期走行域とは、耐炎化初期に相当する前駆体繊維束1の走行域のことを表す。具体的に、どの走行域までを初期走行域とするかは、耐炎化炉の大きさ、熱処理温度、前駆体繊維束1の種類、耐炎化の進行度合い等によっても異なるが、図1の耐炎化炉10においては、およそ下から2段目までが初期走行域の目安である。
このように、熱風排出手段を備えた耐炎化炉10は、熱エネルギーの損失が少ないという熱風循環方式の利点を有しながら、熱風循環方式の欠点である粉塵の滞留を低減できる。ゆえに、耐炎化炉内の清掃の頻度を低減できるため、従来の耐炎化炉に比べてメンテナンス費用を大幅に軽減できる。また、耐炎化炉の長期的な連続稼動が可能となることで、耐炎化繊維の生産性が向上できる。さらには、粉塵による耐炎化繊維の品質低下を抑えることができるので、高品質な耐炎化繊維束を均一かつ安定して製造できる。
また、熱風排出口5aによって取り込まれた熱風中には、粉塵が多く含まれるため、粉塵を集塵するための集塵装置14を排出手段に備えることが好ましい。
なお、本発明の耐炎化炉10に用いる排ガス燃焼装置13としては、所望の機能を有していれば特に限定されず、公知の排ガス燃焼装置を用いればよい。また、集塵装置14に関しても、所望の機能を有していれば特に限定されず、例えばバグフィルター等の公知の集塵装置を用いればよい。また、排ガス燃焼装置13及び集塵装置14は単数に限定されず、機能分担や性能強化等を目的として複数設けてもよい。
また、本発明の耐炎化炉10、20は炭素繊維の製造工程で複数使用してもよい。さらには、図3に示す従来の耐炎化炉30と組み合わせて用いてもよい。シリコーン油剤由来の揮発物は、その大部分が耐炎化処理の初期において発生するため、複数の耐炎化炉を用いた炭素繊維の製造においては、少なくとも最初の耐炎化処理を行う耐炎化炉に、本発明の耐炎化炉10、20を用いることが好ましい。これにより、前駆体繊維束1からの揮発物を熱処理室2内から効率よく取り除くことができ、製造ライン全体での粉塵の発生を抑制できる。よって、本発明の耐炎化炉10、20を用いれば、複数の耐炎化炉を使用した場合においても、複数の耐炎化炉の長期的な連続運転が可能となる。
また、本発明の耐炎化炉10、20は、主に炭素繊維を得るための前駆体繊維束1の耐炎化処理に好ましく用いられるが、他にも、例えば糸やフィルム、シート等といった各種の熱処理にも使用できる。なお、図3の耐炎化炉30に付した各構成の符号において、図1の耐炎化炉10の各構成と同様の構成には、図1と同じ符号を付して、説明を省略する。
ポリアクリロニトリル系繊維束は、アクリルニトリル系重合体を有機溶剤あるいは無機溶剤に溶解し、通常用いられる方法にて紡糸されるが、特にその紡糸方法、及び紡糸条件に制限はない。
アクリロニトリル共重合体は、アクリロニトリルと共重合しうる単量体とアクリロニトリルとの共重合生成物である。アクリロニトリルと共重合しうる単量体としては、メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、プロピル(メタ)アクリレ−ト、ブチル(メタ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレ−ト等の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等の酸類及びそれらの塩類やマレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、更にはスチレンスルホン酸ソ−ダ、アリルスルホン酸ソ−ダ、β−スチレンスルホン酸ソ−ダ、メタアリルスルホン酸ソ−ダ等のスルホン基を含む重合性不飽和単量体、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン等のピリジン基を含む重合性不飽和単量体等が挙げられるが、これらに限定されない。
このようにして得られた凝固糸は、次いで一次延伸される。一次延伸の方法としては、公知の方法を用いることができるが、好ましくは浴中延伸が用いられる。浴中延伸は、50〜98℃程度の凝固糸を凝固浴中または延伸浴中で延伸する延伸方法である。浴中延伸は、凝固糸に対して1回または2回以上行われる。この他にも、一部空中延伸した後に浴中延伸する等、複数の延伸方法を組み合わせてもよい。また、一次延伸の前後、あるいは一次延伸と同時に、公知の方法による洗浄処理を行ってもよい。
1)紡糸工程油剤:シリコーン系油剤、耐炎化工程油剤:シリコーン系油剤
2)紡糸工程油剤:シリコーン系油剤、耐炎化工程油剤:非シリコーン系油剤
3)紡糸工程油剤:非シリコーン系油剤、耐炎化工程油剤:シリコーン系油剤
特に、シリコーン系油剤は、前駆体繊維束1に対して優れた収束性と工程安定性を与えることができ、さらに耐炎化処理及び炭素化処理における優れた通過性を得ることができ、特に炭素化処理での融着防止に顕著な効果を発揮する。
なお、シリコーン系油剤に含まれるシリコーン系化合物としては、アミノ変性シリコーンが好ましく用いられる。アミノ変性シリコーンの中でも、特に側鎖1級アミノ変性シリコーン、側鎖1,2級アミノ変性シリコーン、あるいは両末端アミノ変性シリコーンが好ましく用いられる。
前駆体繊維束1に紡糸工程油剤を付与する方法については特に制限はないが、一般に、油剤と水を含む処理液が入った油剤処理槽に、前駆体繊維束1を浸漬して油剤を付着させるのが、工業的な面から好ましい。
紡糸工程油剤処理による前駆体繊維束1の油剤の付着量は、乾燥した前駆体繊維束1に対して0.1〜3.0質量%が好ましい。油剤の付着量を調整する方法としては、例えば処理液中の油剤濃度の調整、または前駆体繊維束1に浸漬させた処理液をニップロール等によって絞ることで調整できる。
耐炎化工程油剤処理における耐炎化工程油剤の付与方法については特に制限はないが、前記の紡糸工程油剤処理と同様の方法を用いることができる。また、前駆体繊維束1への耐炎化工程油剤の付着量及び付着量の調整方法も、前記の紡糸工程油剤処理に順ずることができる。
なお、前記油剤処理を経た前駆体繊維束1を、水分を多く含んだ状態で耐炎化処理すると、シリコーン系油剤由来の粉塵の発生量が増加する。シリコーン系油剤由来の粉塵発生量と、前駆体繊維束1に含まれる水分との因果関係は明らかではないものの、前駆体繊維束1を充分に乾燥させてから耐炎化処理を行うことが重要である。
前駆体繊維束1の耐炎化条件としては、200〜300℃の熱風中、緊張あるいは延伸条件下で、好ましくは耐炎化処理後の耐炎化繊維の密度が1.30g/cm3〜1.40g/cm3になるまで耐炎化処理するのが好ましい。1.30g/cm3未満では耐炎化の進行度が不充分であり、耐炎化処理後に行われる前炭素化処理及び炭素化処理の際に単糸間の融着を生じやすく、得られる炭素繊維束の品質が低下する。また、耐炎化繊維の密度が1.40g/cm3を超えると、前炭素化処理及び炭素化処理の際に、耐炎化繊維束に酸素が過度に導入され、最終的な炭素繊維の内部構造が緻密にならず、得られる炭素繊維束の品質が低下する。
300〜500℃の温度領域においては、500℃/分以下の昇温速度で前炭素化処理を行うのが、炭素繊維の機械的特性を向上させるために好ましい。より好ましくは300℃/分以下である。
炭素化炉内を満たす不活性雰囲気としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が好ましい。
不活性雰囲気については、窒素、アルゴン、ヘリウム等の公知の不活性雰囲気を採用できるが、経済性の面から窒素が好ましい。
さらに炭素繊維束には、必要に応じて、繊維強化複合材料マトリックス樹脂との親和性及び接着性の向上を目的とした電解酸化処理や酸化処理を行ってもよい。
<含有シリコーン量(Si残存量)測定>
ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束からなる前駆体繊維束1及び耐炎化繊維束の測定サンプルを、縦2cm、横4cm、幅0.5cmのアクリル樹脂製板に隙間無く横方向に均一に巻いてから、通常の蛍光X線分析方法により蛍光X線強度を測定し、含有シリコーン量、すなわちSi残存量(蛍光X線強度、単位:cps)を求めた。なお、測定サンプルの巻き作業は、測定サンプルが全て同一の巻き長になるように慎重に行った。なお、蛍光X線強度の測定器には、蛍光X線分析装置(型式:ZSX100e リガク社製)を用いた。
前駆体繊維束1及び耐炎化繊維束への油剤の付着斑、あるいは測定誤差等を考慮し、測定時間毎のサンプルの測定数はn=10とし、その平均値を求めてSi残存量とした。
前記測定によって求められた前駆体繊維束1のSi残存量をA1、また、前記測定によって得られた耐炎化繊維束のSi残存量をA2とし、下記式(1)で計算して得られた値をSi残存率とした。
Si残存率(%)=A2/A1×100 (1)
アクリロニトリル共重合体を、共重合体濃度が21質量%となるようにジメチルアセトアミドに溶解して紡糸原液とした。この紡糸原液を12000ホールのノズルを用いて濃度70質量%、温度35℃のジメチルアセトアミド水溶液中に吐出して湿式紡糸した。次に、凝固繊維を空中延伸にて1.5倍の延伸を行った後、さらに沸水中で浴中延伸して3倍の延伸を行い、同時に洗浄及び脱溶剤も行った。
その後、紡糸工程油剤の水分散液が入った油剤処理槽に凝固糸を浸漬し、紡糸工程の油剤を1.0質量%付着させた後、140℃の加熱ローラにて乾燥緻密化し、加圧水蒸気中にて3倍延伸し、単繊維繊度1.2dtexのポリアクリロニトリル系繊維束を得た。
前記で用いた紡糸工程油剤の水分散液は、以下の原料と方法を用いて調整された。まず、油剤主剤には両末端アミノ変性シリコーン(25℃での粘度450cSt、アミノ当量5700)、油剤乳化物にはノニオン系乳化剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル[エチレンオキサイド:12モル、HLB:13.9])を用い、これらの混合物にイオン交換水を加え、ホモミキサーで乳化し、さらに乳化粒径が0.3μmになるよう高圧ホモジナイザーで圧力を調整して二次乳化を行うことで調整し、紡糸工程油剤の水分散液とした。
まず、1回目の耐炎化処理、すなわち予備耐炎化処理として、図2に示す本発明の耐炎化炉20を用いた。熱処理室2内の温度は231℃に設定し、前駆体繊維束1を15分間かけて緊張下に耐炎化処理した。なお、前駆体繊維束1の初期走行域に相当する熱処理区画2a内の走行時間は225秒であった。
2週間にわたり前記の耐炎化処理を継続したが、耐炎化炉20及び従来の耐炎化炉30において、多孔板の目詰まりは発生しなかった。
(比較例1)
1回目の耐炎化処理に図3の従来の耐炎化炉30を用いた以外、すなわち4台の耐炎化炉30に前駆体繊維束1を連続投入した以外は、実施例1と同様の条件にして、密度1.35g/cm3の耐炎化繊維束を得た。また、得られた耐炎化繊維束のSi残存率は79.9%であった。
この状態にて耐炎化処理を継続したが、運転開始1週間目になって、1回目の耐炎化処理に用いていた従来の耐炎化炉30で、前駆体繊維束1の糸切れが多発した。運転を停止して従来の耐炎化炉30内を観察すると、熱風吹出口4に設けた多孔板に粉塵による目詰まりが発生しており、熱風吹出口4がほぼ閉塞していた。
また、本発明の耐炎化炉は、熱風循環系内の粉塵の滞留を低減できるので、熱風吹出口の閉塞が起こりにくい。従って、本発明の耐炎化炉を用いた炭素繊維の製造方法によれば、熱風の循環が長期にわたり安定して行われるので、前駆体繊維束の糸切れを低減できる。また、粉塵が低減されるので、前駆体繊維束への粉塵の付着も低減される。ゆえに、高品質な炭素繊維を得ることができる。
複数の耐炎化炉を用いた炭素繊維の製造において、少なくとも最初の耐炎化処理を行う耐炎化炉に本発明の耐炎化炉を用いれば、前駆体繊維束から発生する揮発物を熱風循環系の外に排出できるため、最初の耐炎化炉及びそれ以降の耐炎化炉おける糸切れや発火を減少できる。これにより、高品質な耐炎化繊維を得ることができ、以って高品質な炭素繊維が製造できる。
2 熱処理室
2a、2b 熱処理区画
3 ガイドロール
4 熱風吹出口
5、5a 熱風排出口
6 加熱器
7 送風器
8 熱風循環路
9 仕切り板
10、20 耐炎化炉
11 排出路
12、16 排気ファン
13、17 排ガス燃焼装置
14 集塵装置
15 外気取り入れ口
30 従来の耐炎化炉
Claims (4)
- 以下の熱風循環系と、排出手段とを有する耐炎化炉。
(1)熱風循環系
熱処理室と、熱風循環路とを有し、
熱処理室は、多段の走行域を折り返しながら走行する前駆体繊維束に熱風を吹きつけて耐炎化処理し、
熱風循環路は、熱風を熱処理室内に吹き込み、該熱処理室内における前駆体繊維束の初期走行域以外から熱風を熱処理室外に排出することにより、熱風を熱風循環系内で循環させる。
(2)排出手段
前駆体繊維束の初期走行域を通過した熱風を、熱風循環系の外に排出する。 - 前記排出手段が排ガス燃焼装置と集塵装置とを有する請求項1に記載の耐炎化炉。
- 請求項1または2に記載の耐炎化炉を用いる炭素繊維の製造方法。
- 複数の耐炎化炉を用いた炭素繊維の製造方法において、少なくとも最初の耐炎化処理を行う耐炎化炉が、請求項1または2に記載の耐炎化炉である炭素繊維の製造方法。
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