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JP5032463B2 - 立体音響再生装置及び立体音響再生用プログラム - Google Patents
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JP5032463B2 - 立体音響再生装置及び立体音響再生用プログラム - Google Patents

立体音響再生装置及び立体音響再生用プログラム Download PDF

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Description

本願は、臨場感のある音響再生を行う立体音響再生装置の技術分野に属する。
近年、センタースピーカ、左右のフロントスピーカまたは左右のリアスピーカなどの複数のスピーカにそれぞれ再生音の役割を持たせ、各スピーカ毎に残響音の付加、周波数特性の変更を行うことにより、音声または音楽などの音を拡声するサラウンドシステムが実用に供されている。
このようなサラウンドシステムの代表的なものに、聴取者の前方にセンタースピーカおよびその左右に配置されるフロントスピーカと、当該聴取者の左右のリアまたは側方に配置されるサラウンドスピーカと、120Hz以下の低域だけを専用に拡声するサブウーファーと、から構成されるドルビー(登録商標)デジタル方式の5.1ch(チャンネル)サラウンド方式が知られており、最近では、サラウンドスピーカ(リアスピーカ)などを用いずにフロントスピーカのみでまたはヘッドホンによってサラウンドシステムを実現するものも製品化されている。
特に、ヘッドホンによってサラウンドシステムを実現するシステムとしては、拡声すべき音響信号の全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するオールパスフィルタを用いてメイン信号やサラウンド信号の信号処理を行い、各信号に音像定位を形成させて臨場感のある音場空間を提供するようになっている(例えば、特許文献1)。
特開2002−262385号公報
しかしながら、上述のサラウンドシステムにあっては、オールパスフィルタを用いることによって簡易な信号処理によりサラウンドシステムを実現するものの、当該サラウンドシステムは、ヘッドホンを用いたサラウンドシステムであって、スピーカ受聴を前提としたシステムでないため、複数の聴取者にて聴取する場合に人数分のヘッドホンが必要になるなど、システムの拡張性に乏しい。
本願は、上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例としては、簡易な信号処理にてサラウンドシステムをフロントスピーカにて実現する立体音響再生装置を提供することにある。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、入力された複数の音響信号に基づいて複数のスピーカを拡声させ、聴取者に対して臨場感のある音場空間を提供する立体音響再生装置であって、前記聴取者の聴取位置に対して右方向から聴取させる音響信号を示す右信号及び左方向から聴取させる音響信号を示す左信号を、聴取位置の前方から拡声させるための信号処理を行う信号処理手段と、前記信号処理された右信号及び左信号を前記聴取位置に対して前方に配置されたスピーカから出力させる出力手段と、を備え、前記信号処理手段が、前記右信号及び前記左信号における全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するオールパスフィルタ処理であって、前方の前記スピーカから拡声された前記右信号の音像を前記聴取者の右側に形成させるとともに、前方の前記スピーカから拡声された前記左信号の音像を前記聴取者の左側に形成させるために前記右信号及び前記左信号夫々に与えるべき複数の周波数成分における遅延に、当該複数の周波数成分毎に前記右信号及び前記左信号夫々における角周波数を乗じることにより、当該遅延を、前記右信号及び前記左信号夫々に与えるべき位相に変換する前記オールパスフィルタ処理を、前記信号処理として前記拡声すべき右信号及び左信号について行い、更に前記オールパスフィルタ処理は、前記右信号及び前記左信号に与えるべき最適な遅延に対応する位相として予め算出された位相が全ての周波数において当該周波数の増加に対して単調減少する周波数特性でない場合に、全ての周波数において当該周波数の増加に対して位相を単調減少させ、且つ聴覚上敏感な周波数帯域である500ヘルツ以上2キロヘルツ以下の前記右信号及び前記左信号に与えるべき遅延に対応した位相と、前記オールパスフィルタ処理後の500ヘルツ以上2キロヘルツ以下の当該右信号及び当該左信号における位相と、の誤差を最小とする前記オールパスフィルタ処理である構成を有している。
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、請求項1から請求項の何れか一項に記載の立体音響再生装置に含まれるコンピュータを、前記信号処理手段として機能させる。
に、本願に好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、5.1chのサラウンドシステム(以下、単に、サラウンドシステムという。)に対して本願の立体音響再生装置を適用した場合の実施形態である。
まず、図1および図2を用いて本実施形態におけるサラウンドシステムの構成について説明する。なお、図1は、本実施形態のサラウンドシステムの構成を示すブロック図であり、図2は、本実施形態のサラウンドシステムにおける各スピーカ配置の説明をするための一例である。
本実施形態のサラウンドシステム100は、図1に示すように、リスニングルーム10、すなわち、聴取者に対して再生される音を提供するための音場空間に設置されるようになっている。また、このサラウンドシステム100は、記録メディアなどの音源を再生することにより、または、テレビジョン信号などの外部から音源を取得することにより、各スピーカに対応するチャンネル(以下、「チャネル」とも言う。)毎に当該各チャンネルに該当するオーディオ信号を出力する音源出力装置110と、当該音源出力装置110から出力された複数チャンネル毎に信号処理を行うとともに、全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するオールパスフィルタを用いたフィルタ処理を行う信号処理装置120と、各チャンネルに対応する各種のスピーカからなるスピーカシステム130と、から構成される。
そして、本実施形態のサラウンドシステム100は、音源を再生または取得する場合に、当該再生されたまたは取得された音に対して所定の信号処理を行うとともに、複数のスピーカからなるスピーカシステム130によって信号処理された音を各スピーカ毎に拡声し、聴取者に対して臨場感(サラウンド感)のある音場空間を提供することができるようになっている。
特に、本実施形態のサラウンドシステム100は、側方または後方に配置するサラウンド用のスピーカ(以下、「サラウンドスピーカ」という。)を設置せずに、当該サラウンドスピーカにて拡声すべきオーディオ信号(以下、「サラウンド信号」という。)に対してオールパスフィルタを用いたフィルタ処理を行い、当該フィルタ処理されたサラウンド信号を聴取位置に対して前方に設けられたスピーカ(以下、「フロントスピーカ」という。)のみによって拡声するようになっている。そして、このサラウンドシステム100は、当該サラウンド信号があたかも側方または後方に設置されたサラウンドスピーカから拡声されたように、当該サラウンド信号の音像定位を制御するようになっている。
音源出力装置110は、例えば、CD(Compact Disc)またはDVD(Digital Versatile Disc)などのメディア再生装置またはデジタルテレビジョン放送を受信する受信装置から構成され、CDなどの音源を再生することにより、または、放送された音源を取得するとともに、5.1chに対応する各チャンネル毎のオーディオ信号をデジタル信号によって信号処理装置120に出力するようになっている。
信号処理装置120には、音源出力装置110から出力された各チャンネル毎のオーディオ信号が入力されるようになっている。また、この信号処理装置120は、システム制御部125の制御の下、入力された各チャンネル毎のオーディオ信号に対して遅延時間の付加、残響時間の付加または各周波数成分の調整を行うとともに、オールパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うようになっており、当該信号処理された各オーディオ信号をアナログ信号に変換して信号レベルを調整するようになっている。そして、この信号処理装置120は、信号レベルが調整された各オーディオ信号をスピーカシステム130の各スピーカに出力するようになっている。
なお、本実施形態における信号処理装置120の構成およびその動作の詳細については、後述する。
さらに、スピーカシステム130は、聴取者の前方正面に配置されるセンタースピーカ131と、聴取者の前方に配置されるとともにセンタースピーカ131の右側または左側に配置されるフロントスピーカ(以下、右側のフロントスピーカを「FRスピーカ」といい、左側のフロントスピーカを「FLスピーカ」という。)132FR、132FLと、聴取者の前方に配置されるとともに、任意の位置に配置される低域再生用スピーカ(以下、「サブウーハ」という。)134と、を有し、例えば、図2に示すように配置されるようになっている。
なお、チャンネルとは、音源出力装置110から出力されるオーディオ信号の信号伝送路をいい、各チャンネルは、他のチャンネルと基本的には異なるオーディオ信号を伝送するようになっている。
次に、上述と同様に図1を用いるとともに、図3および図4を用いて本実施形態の信号処理装置120の構成およびその動作について説明する。なお、図3は、本実施形態の音像制御を説明するための図であり、図4は、本実施形態においてオールパスフィルタを用いた理由を説明するための図である。
通常、サラウンドスピーカが聴取者に対して左側方に設置されている場合に、当該サラウンドスピーカから所定の音が拡声されると、図3(a)に示すように、聴感上、右耳より左耳にて聴取される音のレベルが大きくなり、当該サラウンドスピーカから拡声された音の音像は、当該サラウンドスピーカが設置されている場所に形成される。
一方、図3(b)に示すように、聴取者に対して左前方に設置されたスピーカ、すなわち、左側のフロントスピーカから所定の音が拡声されると、聴感上、左耳にて聴取される音のレベルが右耳より多少大きくなり、当該左フロントスピーカから拡声された音の音像は、当該左フロントスピーカが設置されている場所に形成される。
このため、図3(c)のように、通常、聴取者に対して左側方に設置されたサラウンドスピーカに拡声するサラウンド信号をフロントスピーカにて拡声する場合に、図3(a)と同様に、聴感上、両耳間に生ずる音のレベルを調整すれば、フロントスピーカから拡声された音であっても、その音の音像は、聴取者に対して左側方にサラウンドスピーカが設置された場合と同様に、当該サラウンドスピーカが設置されるべき場所に形成されることになる。
そこで、本実施形態の信号処理装置120は、サラウンド信号を左右のフロントスピーカから拡声させるとともに、聴取位置にて両耳間にて音のレベル差が生ずるように、各周波数成分毎に各フロントスピーカから拡声させる際の遅延時間を付加し、すなわち、左右のフロントスピーカによって所定の位相差を与え、サラウンド信号成分を聴取位置において増幅し、または、打ち消し、フロントスピーカにて拡声した場合であっても、あたかも側方または後方に設置されたサラウンドスピーカから拡声されたように、音像を制御するようになっている。
また、本実施形態の信号処理装置120は、サラウンド信号に対して各周波数成分の位相を変化させる際に、全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するオールパスフィルタを用いるようになっている。
通常、本実施形態において、バンドパスフィルタを用いて所定の周波数帯域毎に位相を変化させることも可能である。しかしながら、バンドパスフィルタでは、図4に示すように、通過させる周波数帯域(通過域)と遮断する周波数帯域(減衰域)を厳密に区切ることができず、通過させる周波数帯域(通過域)と遮断する周波数帯域(減衰域)の間に遷移領域(遷移域)が存在することとなるため、バンドパスフィルタにて位相変化させた各周波数帯域を再度加算する場合に、遷移領域の周波数成分において振幅レベルの差が発生してしまう。
また、バンドパスフィルタを用いる場合には、有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)型のフィルタ処理を行う必要があるため、フィルタ処理を行う際の演算量が多くなってしまう。
そこで、本実施形態の信号処理装置120は、的確にフィルタ処理を行うため、かつ、当該フィルタ処理を行う際の演算量を低減させるため、サラウンド信号に対して各周波数成分の位相を変化させる際に、全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するオールパスフィルタを用いるようになっている。
ただし、本実施形態の信号処理装置120は、オールパスフィルタを適用するために、所定の条件、すなわち、
(1)角周波数ω(rad/秒)=0(×サンプリング周波数fs)のとき、位相特性θ(rad)=0、
(2)角周波数ω(rad/秒)=π×サンプリング周波数fsのとき、位相特性θ(rad)=−Nπ(Nはフィルタの次数)、
(3)角周波数ω(rad/秒)に対して位相特性θ(rad)は単調減少、
の条件を具備させつつ、フィルタ処理を行うようになっている。
具体的には、本実施形態の信号処理装置120は、図1に示すように、各チャンネル成分を有する所定の形式のビットストリームデータが入力され、各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードする際に用いる信号形式のオーディオデータに変換する入力処理部121と、変換されたオーディオデータを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするとともに、各チャンネル毎に信号処理、特に、サラウンド信号に対して全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するフィルタ処理を行い、フロントスピーカから拡声するための信号処理を行う信号処理部200と、を有している。
また、この信号処理装置120は、各チャンネルのオーディオ信号に対してデジタル/アナログ(以下、D/Aという。)変換を行うD/A変換器122と、各チャンネル毎に各チャンネルの信号の信号レベルを増幅する電力増幅器123と、各部を操作するための操作部124と、操作部124の操作に基づいて各部を制御するシステム制御部125と、を有している。
なお、例えば、本実施形態のDSP処理部202は、本願の信号処理手段を構成し、電力増幅器123は、本願の出力手段を構成する。
入力処理部121には、各チャンネル成分を有する所定の形式のビットストリームデータが入力されるようになっており、この入力処理部121は、入力されたビットストリームデータを所定形式のオーディオデータに変換し、当該変換されたオーディオデータを信号処理部200に出力するようになっている。
例えば、入力処理部121は、入力されたビットストリームデータを3線式オーディオシリアルインターフェースのオーディオデータに変換するようになっており、具体的には、ビットストリームデータを、ビットクロック信号、LRクロック信号および圧縮音声データに変換して信号処理部200に出力するようになっている。
信号処理部200には、入力処理部121から出力されたオーディオデータが入力されるようになっており、この信号処理部200は、入力されたオーディオデータを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするとともに、各チャンネル毎に所定の信号処理を行い、各チャンネル毎にオーディオ信号をそれぞれ各D/A変換器122に出力するようになっている。
なお、本実施形態における信号処理部200の構成およびその動作の詳細については、後述する。
D/A変換器122には、各チャンネル毎にそれぞれ信号処理が行われた各オーディオ信号が入力されるようになっており、このD/A変換器122は、入力されたデジタル信号である各オーディオ信号をアナログ信号に変換して各電力増幅器123にそれぞれ出力するようになっている。
電力増幅器123には、各チャンネル毎に信号処理されたオーディオ信号が入力されるようになっており、この電力増幅器123は、システムシステム制御部125の制御の下、操作部124よって指定された音量の指示に基づいて各チャンネル毎のオーディオ信号の信号レベルを増幅し、増幅された各オーディオ信号を各チャンネルに対応する各スピーカに出力するようになっている。
操作部124は、各種確認ボタン、選択ボタン及び数字キー等の多数のキーを含むリモートコントロール装置または各種キーボタンにより構成されている。
システム制御部125は、各スピーカよりオーディオ信号を拡声して立体音響再生を行うための全般的な機能を総括的に制御するようになっている。
次に、図5〜図8を用いて本実施形態の信号処理部200の構成およびその動作について説明する。なお、図5は、本実施形態の信号処理部200における構成を示すブロック図であり、図6および図7は、本実施形態において、最適な位相特性に対して設計条件を加味して調整された位相特性θ(rad)について説明するための図である。また、図8は、本実施形態のフィルタ処理部203の構成を示す構成図である。
本実施形態の信号処理部200は、図5に示すように、入力されたオーディオデータを各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードするデコーダ201と、ユーザの操作部124の操作により所定のデジタル信号処理を行うDSP処理部202と、サラウンド信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部203と、フィルタ処理されたサラウンド信号を、フロントスピーカから拡声するためのDSP処理されたオーディオ信号(以下、「メイン信号」という。)に信号レベルを調整しつつ加算する加算処理部205と、から構成される。
デコーダ201には、入力されたオーディオデータ、例えば、ビットクロック信号、LRクロック信号および圧縮音声データが入力されるようになっており、このデコーダ201は、入力されたオーディオデータを、各チャンネル毎のオーディオ信号にデコードし、各チャンネル毎にDSP処理部202に出力するようになっている。
DSP処理部202には、各チャンネル毎にデコードされたオーディオ信号が入力されるようになっており、このDSP処理部202は、システム制御部125の制御の下、操作部124から入力された指示に基づいて所定のデジタル信号処理を行い、信号処理された各チャンネル毎のオーディオ信号をフィルタ処理部203、加算処理部205またはD/A変換部に出力するようになっている。
例えば、DSP処理部202は、操作部124により、教会、スタジアム、または特定のホールなどの音場設定(以下、単に、「音場設定」という。)が行われた場合に、当該音場にて、入力されたオーディオデータが拡声されるように、各チャンネル毎に遅延処理、周波数特性の補正処理、任意のオーディ信号における他のチャンネルのオーディオ信号への加算処理などデジタル信号処理を行うようになっている。
なお、本実施形態では、サラウンド信号に対してフィルタ処理を行うつつ、メイン信号に加算するため、このDSP処理部202は、サラウンド信号については加算処理部205およびフィルタ処理部203に、メイン信号については加算処理部205にそれぞれ出力するようになっている。
また、センタースピーカ131から拡声されるオーディオ信号(以下、「センタ信号」という)およびサブウーハ134から拡声されるオーディオ信号(以下、「ウーハ信号」という。)には、フィルタ処理を行う必要がないので、このDSP処理部202は、センタ信号およびウーハ信号をそれぞれD/A変換器122に直接的に出力するようになっている。
フィルタ処理部203は、サラウンド信号毎に設けられ、各サラウンド信号毎に、各周波数成分の遅延量が付加されたサラウンド信号(以下、「サラウンド生成信号」という。)を生成し、加算処理部205に出力する。
加算処理部205は、当該サラウンド生成信号を遅延量が付加されていないサラウンド信号(以下、「サラウンド通常信号」という。)に加算しつつ、メイン信号に加算するようになっている。
本実施形態の各フィルタ処理部203には、それぞれ、各サラウンド信号が入力されるようになっている。また、この各フィルタ処理部203は、入力されたサラウンド信号に対して各周波数成分に遅延処理を行う場合に、当該遅延処理を位相変化とみなし、最適な遅延量を位相に換算してフィルタ処理を行うようになっている。そして、この各フィルタ処理部203は、実験により算出された最適な位相特性に対して上述のオールパスフィルタの設計条件に適合させた位相特性、すなわち、各位相差(位相値)を用いて全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するフィルタ処理を実行するようになっている。
具体的には、本実施形態の各フィルタ処理部203は、フィルタ処理を行う場合に、遅延時間に角周波数ω(rad/秒)を乗算して位相値に換算し、当該換算された各周波数成分の位相値を用いて入力されたサラウンド信号に対して各周波数成分の位相を変化させるフィルタ処理を行うようになっている。
また、本実施形態では、実験により算出された最適値に対して上述のオールパスフィルタの設計条件に適合させる位相値を用いてフィルタ処理を行うため、特に、設計条件として角周波数ω(rad/秒)に対して位相特性θ(rad)を単調減少させるため、最適と算出された位相特性が周波数の増加に対して単調減少するよう調整しており、本実施形態のフィルタ処理部203は、当該調整された位相特性(位相値)を用いることによって、フィルタ処理を行うようになっている。
例えば、本実施形態では、図6(a)および同図(b)に示すように、最適な位相特性θ(rad)が単調減少でない場合には、当該位相特性θ(rad)が単調減少になるように、すなわち、位相特性θ(rad)が単調減少であり、かつ、元の特性との誤差がなるべく小さくなるような位相特性を示すように、当該位相特性を調整し、本実施形態のフィルタ処理部203は、当該調整された位相特性を用いることによって、フィルタ処理を行うようになっている。
なお、最適な位相特性θ(rad)が単調減少でない場合に、例えば、図7(a)および同図(b)に示すように、聴感上最も敏感である500Hz〜2kHzを中心に位相特性θ(rad)を調整してもよい。特に、この周波数帯域において、図7(b)に示すように、その位相特性が増加する場合であっても、全体的には単調減少となるように位相特性を調整し、当該調整された位相特性を用いてフィルタ処理を行うようにしてもよい。これにより、本実施形態では、さらに的確に音像制御を行うことができるようになる。
一方、本実施形態の各フィルタ処理部203は、図8に示すように、例えば、n列縦続接続した2次の無限インパルス応答(IIR:Infinite Impulse Response)フィルタを用いて構成し、全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するフィルタ処理を実行するようになっている。
なお、図8において、(Z−1)は、サンプリングの1周期だけ遅延させる遅延素子を示し、AおよびBは、所定の係数を示す。
加算処理部205には、各メイン信号、各サラウンド信号および各フィルタ処理部203から出力されたサラウンド信号が入力されるようになっており、システム制御部125の制御の下、サラウンド信号をメイン信号に加算し、当該各メイン信号をそれぞれの各D/A変換器122に出力するようになっている。
具体的には、本実施形態の加算処理部205は、フィルタ処理された各サラウンド生成信号を左右異なる成分のサラウンド通常信号に、信号レベルを調整しつつ、加算するとともに、各サラウンド生成信号が加算されたサラウンド通常信号を左右異なる成分のメイン信号に加算するようになっている。
例えば、本実施形態の加算処理部205は、左サラウンドスピーカにて拡声すべき左側のサラウンドスピーカ用のサラウンド信号(以下、「左サラウンド信号」という。)に対しては、フィルタ処理された右側のサラウンドスピーカ用のサラウンド生成信号(以下、「右サラウンド生成信号」という。)を加算し、かつ、FLスピーカ132FLに出力するメイン信号(以下、「左メイン信号」という。)に加算するようになっている。また、本実施形態の加算処理部205は、右サラウンドスピーカにて拡声すべき右サラウンドスピーカ用のサラウンド信号(以下、「右サラウンド信号」という。)に対しては、フィルタ処理された左サラウンドスピーカ用のサラウンド生成信号(以下、「左サラウンド生成信号」という。)を加算し、かつ、FRスピーカ132FRに出力するメイン信号(以下、「右メイン信号」という。)に加算するようになっている。
以上本実施形態の信号処理装置120は、入力された複数のオーディオ信号に基づいて複数のスピーカを拡声させ、聴取者に対して臨場感のある音場空間を提供する信号処理装置120であって、聴取者の聴取位置に対して右方向から聴取させるオーディオ信号を示す右サラウンド信号および左方向から聴取させるオーディオ信号を示す左サラウンド信号を、聴取位置の前方から拡声させるための信号処理を行う信号処理部200と、信号処理された右サラウンド信号および左サラウンド信号を聴取位置に対して前方に配置されたスピーカから出力させる電力増幅器123と、を備え、信号処理部200が、拡声すべき右サラウンド信号および左サラウンド信号の全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するフィルタ処理を行うことによって、前方のスピーカから拡声された右サラウンド信号の音像を聴取者の右側に形成させるとともに、前方のスピーカから拡声された左サラウンド信号の音像を聴取者の左側に形成させるための信号処理を行う構成を有している。
この構成により、本実施形態の信号処理装置120は、拡声すべき右サラウンド信号および左サラウンド信号の全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するフィルタ処理を行うことによって、前方のスピーカから拡声された右サラウンド信号の音像を聴取者の右側に形成させるとともに、前方のスピーカから拡声された左サラウンド信号の音像を聴取者の左側に形成させるための信号処理を行う。
したがって、本実施形態の信号処理装置120は、サラウンドスピーカを配置することなく、左サラウンド信号および右サラウンド信号の音像をそれぞれサラウンドスピーカが存在すべき位置に形成することができるとともに、バンドパスフィルタおよび有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)型のフィルタ処理などバンドパスフィルタを用いた遅延処理(フィルタ処理)に比べ、演算量を低減することができ、およびフィルタ処理における振幅レベルの不整合性を生じさせないので、簡易な信号処理にてサラウンドシステム100をフロントスピーカのみよって実現することができる。
また、本実施形態の信号処理装置120は、信号処理部200が、オールパスフィルタの設計条件を具備する位相特性を用いてフィルタ処理を行う構成を有している。
この構成により、本実施形態の信号処理装置120は、フィルタ処理を行う際にオールパスフィルタを用いることができるので、バンドパスフィルタおよび有限インパルス応答型のフィルタ処理などバンドパスフィルタを用いた遅延処理に比べ、演算量を低減することができるとともに、フィルタ処理における振幅レベルの不整合性を生じさせない。
なお、上述した実施形態では、聴取者に対してサラウンド音場としての音場空間を提供するサラウンドシステム100に対して本願を適用した場合(図3参照)について説明したが、これ以外に、例えば図9に例示するように、現実のフロントスピーカの位置よりも聴取者から見てより外側に拡がった位置に仮想の音像が定位するような音場空間を提供する音響システムに対して本願を適用することも可能である。
この場合には、信号処理部200における処理に供される遅延量等のパラメータを、予め設定されている仮想音像の位置(図9参照)から音が聞こえる各パラメータとなるように設定することとなる。
より具体的には、信号処理部200の処理によって生じさせる両耳間の音のレベル差を、仮想音像の位置にスピーカを配置した場合に生ずる両耳間の音のレベル差に一致させるように、各パラメータを設定すればよい。
この構成より、例えば通常のステレオ信号(サラウンド音場用のサラウンド信号以外のステレオ信号)を再生する場合でも、対応する音像を現実のフロントスピーカの位置よりもより外側に定位させることで、より広がりのあるステレオ信号の再生を実現するこができる。
本願に係る一実施形態のサラウンドシステムにおける構成を示すブロック図である。 一実施形態のサラウンドシステムにおける各スピーカ配置の説明をするための一例である。 一実施形態の音像制御を説明するための図である。 一実施形態においてオールパスフィルタを用いた理由を説明するための図である。 一実施形態の信号処理部における構成を示すブロック図である。 一実施形態において、最適な位相特性に対して設計条件を加味して調整された位相特性θ(rad)について説明するための図(I)である。 一実施形態において、最適な位相特性に対して設計条件を加味して調整された位相特性θ(rad)について説明するための図(II)である。 一実施形態のフィルタ処理部の構成を示す構成図である。 変形形態の音像制御を説明するための図である。
符号の説明
100 サラウンドシステム
110 音源出力装置
120 信号処理装置
122 D/A変換器
123 電力増幅器
124 操作部
125 システム制御部
130 スピーカシステム
131 センタースピーカ
132 FL(フロント左)スピーカ
133 FR(フロント右)スピーカ
136 サブウーハ
200 信号処理部
201 デコーダ
202 DSP処理部
203 フィルタ処理部
205 加算処理部

Claims (5)

  1. 入力された複数の音響信号に基づいて複数のスピーカを拡声させ、聴取者に対して臨場感のある音場空間を提供する立体音響再生装置であって、
    前記聴取者の聴取位置に対して右方向から聴取させる音響信号を示す右信号及び左方向から聴取させる音響信号を示す左信号を、聴取位置の前方から拡声させるための信号処理を行う信号処理手段と、
    前記信号処理された右信号及び左信号を前記聴取位置に対して前方に配置されたスピーカから出力させる出力手段と、
    を備え、
    前記信号処理手段が、前記右信号及び前記左信号における全ての周波数成分の位相のみを一体的に調整するオールパスフィルタ処理であって、前方の前記スピーカから拡声された前記右信号の音像を前記聴取者の右側に形成させるとともに、前方の前記スピーカから拡声された前記左信号の音像を前記聴取者の左側に形成させるために前記右信号及び前記左信号夫々に与えるべき複数の周波数成分における遅延に、当該複数の周波数成分毎に前記右信号及び前記左信号夫々における角周波数を乗じることにより、当該遅延を、前記右信号及び前記左信号夫々に与えるべき位相に変換する前記オールパスフィルタ処理を、前記信号処理として前記拡声すべき右信号及び左信号について行い、
    更に前記オールパスフィルタ処理は、前記右信号及び前記左信号に与えるべき最適な遅延に対応する位相として予め算出された位相が全ての周波数において当該周波数の増加に対して単調減少する周波数特性でない場合に、全ての周波数において当該周波数の増加に対して位相を単調減少させ、且つ聴覚上敏感な周波数帯域である500ヘルツ以上2キロヘルツ以下の前記右信号及び前記左信号に与えるべき遅延に対応した位相と、前記オールパスフィルタ処理後の500ヘルツ以上2キロヘルツ以下の当該右信号及び当該左信号における位相と、の誤差を最小とする前記オールパスフィルタ処理であることを特徴とする立体音響再生装置。
  2. 請求項1に記載の立体音響再生装置において、
    前記出力手段が、前記オールパスフィルタ処理された右信号及び左信号を、前記臨場感のある音場空間を形成する際に主成分となるメイン信号と同一のスピーカから出力させることを特徴とする立体音響再生装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の立体音響再生装置において、
    前記右信号及び前記左信号は、夫々、前記音場空間をサラウンド音場空間とするための右サラウンド信号及び左サラウンド信号であることを特徴とする立体音響再生装置。
  4. 請求項1又は請求項に記載の立体音響再生装置において、
    前記右信号及び前記左信号は、夫々、前記音場空間をサラウンド音場以外のステレオ音場とするための右ステレオ信号及び左ステレオ信号であることを特徴とする立体音響再生装置。
  5. 請求項1から請求項の何れか一項に記載の立体音響再生装置に含まれるコンピュータを、前記信号処理手段として機能させることを特徴とする立体音響再生用プログラム
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