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JP5032979B2 - 表面加工コーヒー果実を用いたコーヒー生豆の処理方法 - Google Patents
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JP5032979B2 - 表面加工コーヒー果実を用いたコーヒー生豆の処理方法 - Google Patents

表面加工コーヒー果実を用いたコーヒー生豆の処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、コーヒー果実に含まれる資化成分に微生物を接触させて発酵させる発酵工程と、前記発酵工程を経たコーヒー果実からコーヒー生豆を分離回収する回収工程とを包含するコーヒー生豆の処理方法に関する。
コーヒー飲料の製造工程を簡単に説明すると、まず、コーヒー果実(コーヒーノキと呼ばれるアカネ科の植物の果実)からその外皮及び果肉部分を取り除いて、コーヒー生豆を得る(精製工程)。得られたそのコーヒー生豆について熱処理を施すことによりコーヒー焙煎豆が得られる(焙煎工程)。なお、コーヒー特有の味覚や香りの素となる成分(以下、コーヒー香味成分と称する)はこの焙煎工程において生成される。あとはそのコーヒー焙煎豆を粉砕し、熱湯等によりコーヒー香味成分を抽出した抽出液をコーヒー飲料として提供する。
現在、コーヒー飲料は、嗜好飲料としてその需要が増大するなかで、消費者のコーヒー香味に対する嗜好もまた多様化している。
そうした消費者のニーズに対応すべく、多様なコーヒー香味を創出する方法として、従来より一般的に実施される方法には、焙煎工程において、加熱温度や加熱時間等を変更することにより、焙煎度合の異なる種々のコーヒー焙煎豆を作り出す方法が挙げられる。
また別の方法としては、粉砕したコーヒー生豆に麹菌を接種して発酵させたものを焙煎し、生成したコーヒー香味成分を抽出する。次いで、抽出した前記コーヒー香味成分をコーヒー抽出液、コーヒー焙煎豆、粉末コーヒー等のコーヒー製品に添加して、コーヒー香味を強化するという方法がある(特許文献1参照)。
特開平1−112950号公報
焙煎度合の異なる種々のコーヒー焙煎豆を作り出す方法においては、現在、焙煎度合は8段階(ライトロースト〜イタリアンロースト)に分けられており、それぞれの段階毎に酸味や苦味等の異なるコーヒー焙煎豆が得られるが、新たなコーヒー香味を創出するという点においては限界がある。
また、上述した特許文献1に開示される方法においては、従来のコーヒー飲料の製造工程に加えて、生成されたコーヒー香味成分を抽出して、その抽出液を上述のコーヒー製品に添加するという新たな処理工程が必要となり、時間と手間がかかると共に、麹菌を接種して発酵させるためのコーヒー生豆(粉砕したもの)を別途必要とするので原料コストが高くなるという問題が生じていた。なお、この従来の方法は、コーヒー香味を強化する方法であり、新たなコーヒー香味を創出する方法を開示するものではない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、特に原料コストの増大を招く虞もなく、尚且つ新たな処理工程を必要とせず、簡便な操作でコーヒー飲料に新たな品質の高い香味を付与することのできるコーヒー生豆の処理方法を提供するものである。
(構成1)
本発明の第1特徴構成は、コーヒー果実に含まれる資化成分に微生物を接触させて発酵処理させる発酵工程と、前記発酵工程を経たコーヒー果実からコーヒー生豆を分離回収する回収工程とを包含するコーヒー生豆の処理方法であって、前記発酵工程において前記コーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出して前記微生物に発酵処理させるコーヒー生豆の処理方法である点にある。
(構成2)
本発明の第2特徴構成は、前記発酵工程において、その外皮を残した状態で前記コーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出して、前記微生物に発酵処理させる点にある。
(構成3)
本発明の第3特徴構成は、前記発酵工程において、その外皮だけを剥いだ状態で前記コーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出して、前記微生物に発酵処理させる点にある。
(構成4)
本発明の第4特徴構成は、前記微生物が、酵母、乳酸菌、カビ、及び不完全菌類からなる群から選択される点にある。
(構成5)
本発明の第5特徴構成は、請求項1〜4のいずれか1項に記載される処理方法により得られたコーヒー生豆である点にある。
(構成6)
本発明の第6特徴構成は、請求項5に記載されるコーヒー生豆を焙煎処理したコーヒー焙煎豆である点にある。
(構成7)
本発明の第7特徴構成は、請求項6に記載されるコーヒー焙煎豆を原料として用いて得られたコーヒー飲料である点にある。
本発明の第1特徴構成に記載のコーヒー生豆の処理方法は、コーヒー果実に含まれる資化成分に微生物を接触させて発酵処理させる発酵工程と、前記発酵工程を経たコーヒー果実からコーヒー生豆を分離回収する回収工程とを包含するコーヒー生豆の処理方法であるため、コーヒー果実からコーヒー生豆を分離回収する精製工程中に本発明を実施することができる。そのため、従来技術と異なり、コーヒー香味成分を抽出し添加するといった新たな工程を設ける必要がなく、簡便に実施することが可能である。
また、ここでいうコーヒー果実とは、大まかにいうと、最も内側に存在するコーヒー生豆と、その周りにあるコーヒー果肉、そしてそのコーヒー果肉の周りを覆う外皮とから構成されるものである。
尚、コーヒー生豆は、発芽に備えて吸水する性質があり、また、酵母等に代表されるある種の微生物は、有機化合物(資化成分)を分解(発酵)してアルコール類、有機酸類、エステル類等(以下、発酵成分と称する)を生成し得ることが知られている。
従って、コーヒー生豆と資化成分との存在下においてある種の微生物の発酵を行うと、生成された発酵成分は、水分と共にコーヒー生豆に吸収され得る。その結果、このようにして得られたコーヒー生豆を焙煎することにより、焙煎工程にて生成される従来のコーヒー香味成分に加えて、発酵により生成された新たな香味成分(発酵成分)を含むコーヒー焙煎豆を得ることができ、そのコーヒー焙煎豆から抽出したコーヒー飲料には新たな品質の高い香り(醸造香やエステリー香など)が付与され得る。
また、本発明においては、資化成分として、主としてコーヒー果実中に含まれるコーヒー果肉(糖分やその他の栄養分を含む部分)を使用するため、外来の資化成分を用意する必要がなく、原料コストが増大する虞もない。
さらに、本発明の特徴として、発酵工程においてコーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出して微生物に発酵処理させるので、果肉内の資化成分が放出され易くなると共に、微生物も果肉内に侵入し易くなるので、果肉を露出していないコーヒー果実(収穫されたもとのコーヒー果実)に微生物を接触させて発酵を実施する場合と比べて、発酵速度をかなり増加させることができる。その結果、発酵工程をより迅速に進めることができるので、他の雑菌類(コーヒー果実に付着し得る酢酸菌等)の繁殖による影響(コーヒー生豆に酢酸が付与されてしまうなど)が少なくてすみ、コーヒー生豆の品質を損なう虞もない。
尚、コーヒー果実からコーヒー生豆を得るための精製工程には、非水洗式と水洗式の二種類が知られている。非水洗式とは、コーヒー果実を収穫後、そのまま乾燥させたものを脱穀して果肉や薄皮等を除去し、コーヒー生豆を得る方法であり、水洗式とは、コーヒー果実を収穫後、水槽に沈めて不純物を除去し、果肉除去機でコーヒー果肉を除去してから、水中に沈めて粘着物を溶かして除去し、さらに、水洗した後に乾燥させたものを脱穀して薄皮等を除去し、コーヒー生豆を得る方法である。
上述したように本発明においては、コーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出させることから、果肉内の資化成分が放出され易くなると共に、微生物も果肉内に侵入し易くなる。そのため、上述した非水洗式又は水洗式のいずれの場合にも適用することが可能である。例えば、非水洗式の精製工程では、コーヒー果実を収穫後、果肉の一部を露出させて、微生物を噴霧し直接接触させて発酵工程を経た後、乾燥させればよい。また、水洗式の精製工程では、コーヒー果実の収穫後、果肉の一部を露出させて、例えば、水槽に沈めて不純物を除去するときに微生物も一緒に水槽に加えればよい。水槽中に果肉中の糖分などが溶出し易くなっているので、微生物による発酵が促進される。
本発明の第2特徴構成に記載のコーヒー生豆の処理方法は、コーヒー果実の外皮を残した状態で果肉の一部を露出させるので、例えば、収穫したコーヒー果実の表面に鋭利な刃物等で傷をつければ(内部のコーヒー生豆には傷をつけないようにする)、容易に果肉の一部を露出させて前記微生物に発酵処理させることができる。
本発明の第3特徴構成に記載のコーヒー生豆の処理方法は、コーヒー果実を、その外皮だけを剥いで前記コーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出した状態とするので、果肉内の資化成分がより一層放出され易くなると共に、微生物との接触面積もより広くなる。このような状態でコーヒー果実を前記微生物に発酵処理させると、発酵速度をさらに増加させることが可能となる。
本発明の第4特徴構成に記載のコーヒー生豆の処理方法においては、微生物が、酵母、乳酸菌、カビ、及び不完全菌類からなる群から選択される。これらの微生物は、入手も容易で、尚且つ培養や保存等に関しても一般的な方法で対応することができるので扱い易い。
本発明の第5特徴構成に記載のコーヒー生豆は、発酵により生成された新たな香味成分(発酵成分)を含み得る。
本発明の第6特徴構成に記載のコーヒー焙煎豆は、焙煎工程にて生成される従来のコーヒー香味成分に加えて、発酵により生成された新たな香味成分(発酵成分)を含み得る。
本発明の第7特徴構成に記載のコーヒー飲料には、従来のコーヒー香味成分に加えて、発酵により生成された新たな香味成分(発酵成分)に由来する品質の高い香りが付与され得る。
以下に本発明の実施の形態について説明する。
〔実施形態〕
(コーヒー果実)
本発明におけるコーヒー果実とはコーヒーノキの果実を意味し、その構造を概していえば、コーヒー生豆(種子)、果肉(糖分やその他の栄養分を含む部分)及び外皮からなるものである。より詳細には、最も内側にコーヒー生豆が存在し、その周りが順に、銀皮(シルバースキン)、内果皮(パーチメント)、果肉、外皮で覆われている。品種としては、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などが適用可能であり、また、産地についても、ブラジル産、エチオピア産、ベトナム産、グアテマラ産などが適用可能であるが、特に限定されるものではない。尚、本実施形態で使用し得るコーヒー果実には、未乾燥及び乾燥状態のものがあり、コーヒー生豆を1とした場合の重量比は、それぞれ1粒あたり、「コーヒー果実(未乾燥):乾燥コーヒー果実:コーヒー生豆=6:4:1」である。
(資化成分)
本発明における発酵工程にて使用される資化成分としては、例えば、果肉、果汁、糖類、培地などが挙げられるが、好ましくはコーヒー果肉である。但し、本発明でいうコーヒー果肉とは、便宜的に、コーヒー果実(未乾燥又は乾燥状態を問わない)において、そのコーヒー生豆と外皮以外の全ての部分を意味する。
コーヒー果肉は、精製工程を経ていないコーヒー果実の状態のものを使用しても良く、あるいは、精製工程にてコーヒー生豆と分離されたときに得られる果肉の状態で使用することも可能である。また、コーヒー果肉は、未乾燥のものであってもよいし、乾燥させたものであってもよい。なお、コーヒー果肉に限らず、必要に応じて、ぶどう果肉、サクランボ果肉、桃果肉などの他の果肉を使用することも可能であり、コーヒー果肉を含めたこれらの果肉を単独か、あるいは任意に組み合わせて使用しても良い。
上述した果肉以外の資化成分としては、果汁(例えば、ぶどう、桃、リンゴ等)、糖類(例えば、サトウキビや甘藷等の植物からとれる単糖、二糖、多糖等)、穀物類(例えば、麦芽を糖化させた麦汁など)、培地等が挙げられるが、微生物が資化可能な成分であれば特に限定されず、果肉を含めたこれらの資化成分を単独か、あるいは任意に組み合わせて使用しても良い。
(コーヒー果肉の露出方法)
コーヒー果実をそのまま用いて、中のコーヒー果肉を資化成分として使用する場合には、発酵速度を増加させるために、コーヒー果実表面の少なくとも一部にコーヒー果肉を露出させる方法が好適である。
コーヒー果肉を露出させる方法としては、収穫したコーヒー果実に鋭利な刃物(例えば、ハサミ、ヤスリ)等で傷を付けても良いし、脱穀装置等を用いて外皮に切れ目が入るようにコーヒー果実に圧力をかけるようにしても良いが、このとき中のコーヒー生豆にまで傷をつけないようにする。また、皮むき機等を使用して、コーヒー果実の外皮のみを剥いて果肉を露出するようにしても良い。なお、コーヒー果実を収穫する際、偶然に傷がついてその果肉の少なくとも一部が露出してしまったものについては、特に上述の果肉の露出操作を行う必要はない。また、精製工程にてコーヒー生豆と分離されたときに得られるコーヒー果肉を使用する場合にも、特に上述の果肉の露出操作を行う必要はなく、別途コーヒー生豆を加えて発酵を行う。
(微生物)
本発明で用いる微生物は上述したような資化成分を資化(発酵)することができる微生物であれば、特に限定されない。
具体的な微生物としては、酵母、乳酸菌、カビ、不完全菌類などが挙げられる。これらの微生物は、入手が容易であり、取り扱い性の容易さから好適に用いることができる。
酵母は、食品としての安全性の面から、食品での使用実績のあるワイン発酵用酵母やビール発酵用酵母といった醸造用酵母を好適に用いることができる。ワイン発酵用酵母としては、例えば、市販の乾燥酵母である、Lalvin L2323株(以下L2323と称する:セティカンパニー社)やCK S102株(以下S102と称する:Bio Springer社)などを用いることができる。通常は、L2323は赤ワイン醸造用、S102はロゼワイン醸造用に用いられる。このように酵母を用いた場合、醸造香といった特徴のある香味を添加することができる。
乳酸菌は、発酵乳、乳酸菌飲料、チーズ発酵乳等の製造に用いられる公知の菌であれば、適用可能である。例えばLactobacillus属の乳酸菌が好適に例示される。
カビは、アカパンカビやペニシリウムや子実体を形成するキノコ類などが適用可能である。
不完全菌類としては、例えば、ゲオトリクム(Geotrichum)属のゲオトリクム キャンディダム(Geotrichum candidum)、ゲオトリクム レクタングラタン(Geotrichum rectangulatum)、及びゲオトリクム クレバニ(Geotrichum klebahnii)等が適用可能である。また、例えば、清酒や焼酎、みそ、醤油といった発酵食品の製造に用いられるコウジカビ(麹菌)等が適用可能である。
本発明において、微生物の種類や発酵条件を選択することによって、様々な香味を添加することができる。従って、望ましい香味を添加することができる微生物を適宜選択して用いることができる。
微生物が乾燥したものである場合は、それぞれの適した方法にそって覆水を行うことができる。例えば、乾燥酵母を用いる場合、37〜41℃に加温した水に20〜30分懸濁してから用いることができる。
本発明における微生物の使用量は、香味の添加の効果が得られれば特に限定されないが、培養時間やコストを考え、適宜設定できる。例えば、コーヒー生豆重量あたりでは、酵母及び乳酸菌の場合では1.0×10cells/gから1.0×1010cells/g、カビの場合は胞子の量として0.01から0.1重量%が適当である。不完全菌の場合は、1.0〜10mg/gが適当である。
(発酵工程)
1.微生物と資化成分との接触方法
本発明において、発酵工程において微生物と資化成分とを接触させる方法には、例えば以下の方法が挙げられる。
(a)直接法
直接法は、コーヒー生豆の存在下において微生物を資化成分に直接接触させる方法である。例えば、コーヒー果肉を少なくとも一部露出させたコーヒー果実(又は、精製工程にてコーヒー生豆と分離されたときに得られるコーヒー果肉とコーヒー生豆との混合物)に、微生物を噴霧あるいは散布して直接接触させて発酵させる。特に、一部果肉を露出させたコーヒー果実を用いて発酵させる場合、資化される糖分等が果肉中に高濃度で局在するので効率良く発酵が進むと共に、すぐ近傍にコーヒー生豆が存在するので発酵により生成されたアルコール類やエステル類等の発酵成分が速やかにコーヒー生豆中に移行し得る。なお、乾燥させたコーヒー果実(もしくはコーヒー果肉)を使用する場合は、適度に水分を含ませた状態で発酵させても良い。
(b)間接法
間接法は、発酵液を備える発酵槽を用意して、発酵液中にコーヒー生豆、資化成分、及び微生物を加えて、発酵液中に溶出し得る資化成分に微生物を接触させる方法である。例えば、微生物と、コーヒー果肉を少なくとも一部露出させたコーヒー果実(又は、精製工程にてコーヒー生豆と分離されたときに得られるコーヒー果肉とコーヒー生豆との混合物)とを発酵液中に添加して発酵させる。
2.発酵条件
微生物の発酵条件については、発酵が実施され得る条件であれば特に限定されず、必要に応じて発酵に適した条件(例えば、使用する微生物の種類やその菌量(初期菌数)、資化成分の種類や量(濃度)、温度、湿度、pH、酸素又は二酸化炭素濃度、発酵時間等)を適宜設定することができる。また他にも例えば、上記の資化成分以外にも、必要に応じてpH調製剤などの添加剤や窒素源や炭素源を補うための市販の栄養培地などを補助的に添加することもできる。
特に本発明における発酵工程においては、他の微生物(雑菌)の繁殖防止のため、その温度、pH、二酸化炭素濃度等といった条件を制御して発酵させてもよい。例えば、15〜30℃といった他の雑菌の繁殖を抑え得るような低温環境下にて発酵を行わせたり、必要に応じてpH調整剤等(クエン酸、リンゴ酸、乳酸等)を添加し、他の雑菌の繁殖を抑え得るようなpH条件下で発酵を行わせたり、あるいは二酸化炭素濃度(又は酸素濃度)を上げて他の雑菌の繁殖を抑え得る、より嫌気的(又は好気的)な条件下で発酵を実施しても良い。
また、本発明における発酵工程においては、上記の発酵条件(例えば、使用する微生物の種類やその菌量(初期菌数)、資化成分の種類や量(濃度)、温度、湿度、pH、酸素又は二酸化炭素濃度、発酵時間等)を自動及び/又は手動で制御可能な恒温槽、タンク又は貯蔵庫にて発酵工程を行うこともできる。
尚、発酵工程に要する時間は限定されず、添加される香味の質・強さによって、あるいは、微生物や資化成分によって、適宜、選択すればよい。また、資化成分の枯渇を目安に、発酵工程を終了してもよい。
発酵工程を終了させる際には、加熱滅菌する、水洗する、天日干しする、資化成分とコーヒー生豆を分離する、あるいは、焙煎するといった方法を組み合わせることができる。例えば、乾燥機を用いる場合、50〜60℃で1〜3日程度乾燥させることにより、発酵を終了させることができる。
3.発酵工程の一例
ここでは、コーヒー果実を用いて発酵を行う例を説明する。
本発明は、例えば、コーヒー生豆の精製工程中に発酵工程を行うことができる。
コーヒー果実からコーヒー生豆を得るための精製工程には、非水洗式と水洗式の二種類が知られている。
非水洗式とは、コーヒー果実を収穫後、そのまま乾燥させたものを脱穀して外皮、果肉、内果皮、銀皮等を除去し、コーヒー生豆を得る方法である。
水洗式とは、コーヒー果実を収穫後、水槽に沈めて不純物を除去し、果肉除去機で外皮及び果肉を除去してから、水中に沈めて粘着物を溶かして除去し、さらに、水洗した後に乾燥させたものを脱穀して内果皮、銀皮を除去してコーヒー生豆を得る方法である。
非水洗式の精製工程は操作が容易であるが、主に気候が乾燥している地域で適用される。一方、水洗式の精製工程は、主に多雨の地域で適用される。
非水洗式の精製工程では、例えば、コーヒー果実を収穫し、ナイフ等を用いてその表面に傷をつけてコーヒー果肉を一部露出させ、上記の直接法により微生物を接触させて発酵させた後、乾燥させる。
水洗式の精製工程では、例えば、コーヒー果実を収穫し、ナイフ等を用いてその表面に傷をつけてコーヒー果肉を一部露出させ、水槽に沈めて不純物を除去するときに、上記の間接法により微生物を一緒に水槽(発酵槽)に添加して発酵させる。傷を付けて果肉を露出してあるので水槽中に果肉中の糖分など(資化成分)が溶出し易くなっており、微生物による発酵が促進される。またあるいは、収穫したコーヒー果実を水槽に沈める前か、もしくは、水槽に沈めて不純物を除去した後のコーヒー果実を水槽から出してそのコーヒー果肉を除去する前に、上述の直接法又は間接法によって発酵を実施するようにしても良い。
なお、本発明はまた、コーヒー果実の収穫前に、木に生っている状態で果肉を露出させて上記直接法により発酵させてもよい。
発酵工程を終了したコーヒー果実は、その後、水等で微生物を洗い流して分離してからか、あるいは微生物を付着させたままで、通常の精製工程に沿って果肉が除去され、脱穀されてコーヒー生豆が分離される(1粒のコーヒー果実からコーヒー生豆は1粒或いは2粒採取される)。
このようにして分離されたコーヒー生豆は、通常の方法で焙煎処理することが可能であり、焙煎度合の異なる種々のコーヒー焙煎豆(ライトロースト〜イタリアンロースト)を得ることができる。
得られたコーヒー焙煎豆は、粉砕して加水し、濾材により濾過抽出することによってレギュラーコーヒーとして飲用に供することができるほか、工業用原料としてインスタントコーヒー、コーヒーエキス、缶コーヒーなどに使用することが可能である。
〔その他の実施形態〕
1.本発明において、上記間接法により微生物と資化成分とを接触させる際、微生物と、資化成分及びコーヒー生豆とを見かけ上分離させた状態で発酵させても良い。例えば、コーヒー生豆と資化成分とを袋にまとめて、その袋ごと発酵液中に沈めて、微生物を発酵槽に添加して発酵させても良い。この場合使用される袋は、微生物は通過しない(もしくは通過し難い)が、資化成分と発酵成分は通過し得る(もしくは通過し易い)微小な孔を複数設けてあるフィルター素材等で構成されている。
より具体的には、例えば、果肉を一部露出させたコーヒー果実をまとめて前記袋に入れて発酵液に沈めると、コーヒー果実から溶出し前記袋の孔を通過した資化成分を微生物が資化(発酵)し、生成された発酵成分が再び前記孔を通ってコーヒー生豆に吸収される。
この場合、微生物をコーヒー果実と直接接触させていないので、発酵工程終了後、コーヒー果実と微生物とを容易に分離することが可能であり、その後の精製工程がより速やかに行われ得る。なお、逆に微生物を前記袋に入れるような構成としても良いし、あるいは発酵槽を前記フィルター素材等で微生物画分とコーヒー生豆及び資化成分画分(コーヒー果実画分)に仕切るような構成としても良い。
以下、本発明について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
コーヒー果実の果肉を露出させる方法としては以下の通りの方法で行ったが、いずれの方法においても中のコーヒー生豆を傷付けることなく、果肉を露出させることが可能であった。
1.外皮から果肉が露出するようにはさみで傷ける。
2.外皮から果肉が露出するようにヤスリで傷ける。
3.木槌でたたいて(生豆が割れないように)果肉に切れ目を入れる。
4.パルピングマシン(皮むき機)を通す。
木槌を用いて果肉を一部露出させたコーヒー果実(果肉一部露出)と露出させていないコーヒー果実(露出なし)をそれぞれ水に浸漬し発酵させる前の液中に含まれる資化成分(単糖類及び遊離アミノ態窒素)を評価した。それぞれ、100gのコーヒー果実を100mlの水に浸漬して、攪拌した後の液について評価した。
単糖類については、液体クロマトグラフィーで分析した。装置は、島津製作所製のHPLC一式を用いた。カラムとしてはShowdex KS−802を用い、示差屈折率計の感度8×10−5UFSで検出した。移動相0.8ml/min水、カラム温度は80℃。絶対検量線で定量した。また、遊離アミノ態窒素は、ニンヒドリン比色法を用いて測定した。
分析値からも明らかなように、コーヒー果実を傷つけることによって、微生物の資化成分としての糖類、窒素源が浸漬直後から発酵液中に多く抽出されていることが明確である。
上記実施例2の浸漬液に、発酵に用いる微生物(ゲオトリクム スピーシーズ(Geotrichum sp.)SAM2421株 国際寄託番号:FERM BP−10300)を接種し、室温で静置して発酵を行った。発酵2日後の液について、有機酸を液体クロマトグラフィーを用いて分析した。装置は、島津製作所のHPLC一式を用いた。カラムとしてはShim−pack SCR−102Hを用い、電気伝導度検出器 CDD−6Aで検出した。カラムオーブンの温度は40℃とし、p−トルエンスルホン酸を含むTrisバッファーで反応と溶出を行った。絶対検量線で定量した。結果を表2に示す。
分析結果から明らかなように、発酵により生成される有機酸(乳酸及び酢酸)は、果肉を一部露出させた場合において、より多く生成され得ることが確認された。
上記実施例3における発酵後のコーヒー果実を発酵液から取り出し、水切りしたのち、55℃の乾燥器で48時間乾燥させた後、果肉及び外皮を取り除き、コーヒー生豆を取得した。得られたコーヒー生豆のうち100gを家庭用全自動珈琲豆焙煎機(CRPA−100 トータス株式会社)で深煎りボタン操作により焙煎した。焙煎時間は約25分程度であった。
次いで、コーヒー官能専門のパネラー5名によって、焙煎豆の官能評価を行った。各コーヒー焙煎豆30gを粉砕せずにそのままの形状で専用の官能グラスに入れ、ガラスの蓋をした。官能時に蓋をずらし、醸造香、エステリー香、焙煎香の3種類を評価した。通常のブラジル産サントス豆(焙煎豆)を基準(コントロール)として、それより大きい数字が強い、小さい数字が弱いことを示すこととして、1点から5点までを0.1点刻みで評価した。5名の評価点の平均値であらわした。結果を以下の表3に示す。
果肉を露出させたサンプルでは、コントロールや露出なしのサンプルに比較して、焙煎香は同等であるにもかかわらず、華やかな香りの成分である、醸造香やエステリー香の生成が促進されていた。
上記実施例4における各焙煎豆について、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて香気成分を分析した。各焙煎豆を粉砕せずにそのままの形状でGC用サンプルチューブに5gずつ入れ、ヘッドスペースの気体を測定した。装置は「Agilent 7694 HeadspaceSampler」「Agilent6890 GC System」を用いた。試料導入は60℃、15分保持、スプリット10:1、使用カラムはCP7673wax(長さ25mm×内径0.25mm、膜厚1.2μm)とした。温度条件は40℃5分保持、10℃/分で220℃まで昇温し、220℃で20分間保持した。検出器としてMSD、FIDを用いた。結果を以下の表4に示す。
果肉を露出させたサンプルでは、露出なしのサンプルに比較して、華やかな香りの一端を担う酢酸メチルや酢酸エチルといった低沸点成分の生成が多かった。一方で、アルコール臭の原因となるエタノールの生成は抑えられていた。これは微生物(ゲオトリクム(Geotrichum))の生育が良かったためと考えられた。
(コーヒー抽出液の官能評価)
上記実施例4における各焙煎豆を用いてコーヒー抽出液を調製した。焙煎豆を細挽きにし、粉砕豆12gに対して熱湯を100g加えて攪拌した。カップテストの定法に従って、浮き上がったコーヒーを取り除き、上澄み液の官能評価を行った。コーヒー専門パネラー5名により実施した。評価項目は、香り(醸造香、エステリー香)、味(苦味、ボディ感)の4種類とした。対照区(コントロール)としては、ブラジル産サントス豆のコーヒー抽出液を用いた。それより大きい数字が強い、小さい数字を弱いことを示すこととして、1点から5点までを0.1点刻みで評価した。評価点の平均値で表した。結果を以下の表5に示す。果肉を露出させたサンプルでは、コントロールや露出なしのサンプルに比較して、香り、味ともに良好なものであった。
(コーヒー抽出液の成分分析結果(GC))
上記実施例6における各コーヒー抽出液10mlをGC用サンプルチューブに入れてGC分析を行った。ほかの測定条件は前述の方法に準じた。結果を表6に示す。
コーヒー抽出液においても、果肉を露出させたサンプルでは、露出なしのサンプルに比較して、華やかな香りの一端を担う酢酸メチルや酢酸エチルといった低沸点成分の生成が多かった。
ワイン酵母( LALVIN EC1118)を用いて、果肉を一部露出させたコーヒー果実(果肉一部露出)と露出させていないコーヒー果実(露出なし)を直接法で発酵を行った。沖縄産コーヒーチェリーについて、はさみ又はヤスリを用いて表面に傷を設け果肉の一部を露出させた。それぞれ1kgに対して、0.1gの乾燥酵母を20mlの温水に復水し、直接散布した。3L容の三角フラスコ中で室温(20〜30℃)で2〜5日間発酵させた。発酵終了後45℃の乾燥機で72時間乾燥させた後、果肉および外皮を取り除き、コーヒー生豆を取得した。一方、表面を加工せずに果肉の露出のない果実についても同様に処理した。
得られたコーヒー生豆のうち100gを家庭用全自動珈琲豆焙煎機(CRPA−100 トータス株式会社)で深煎りボタン操作により焙煎した。焙煎時間は約25分程度であった。次いで、実施例4と同様の方法で官能評価を行った。結果を以下の表7に示す。
果肉を露出させたサンプルでは、傷つけの方法によらず、コントロール(ブラジル産サントス豆)や露出なしのサンプルに比較して、焙煎香は同等であるにもかかわらず、華やかな香りの成分である、醸造香やエステリー香の生成が促進されていた。すなわち、ワイン酵母を用いた場合においても、本処理方法は有効であることが判った。
上記実施例8にて得られた各焙煎豆のコーヒー抽出液の官能評価を行った。上記焙煎豆を用いてコーヒー抽出液を調製した。焙煎豆を細引きにし、粉砕豆12gに対して熱湯を100g加えて攪拌した。得られたコーヒー抽出液について、実施例6と同様の方法で官能評価を行った。結果を以下の表8に示す。
果肉を露出させたサンプルでは、コントロール(ブラジル産サントス豆のコーヒー抽出液)や露出なしのサンプルに比較して、香り、味ともに良好なものであった。すなわち、ワイン酵母を用いた場合においても、本処理方法は有効であることが判った。また、露出方法としては、ヤスリによる傷つけは、はさみによる傷つけよりさらに有効であった。
本発明は、精製や焙煎といったコーヒー果実の加工処理業を始めとして、本発明によって処理されたコーヒー生豆の焙煎豆から種々の製品(レギュラーコーヒー、インスタントコーヒー、缶コーヒー、コーヒーアロマ等)を製造する、コーヒー飲料類の製造業においても非常に有用であり、このような産業のさらなる発展に寄与し得るものである。

Claims (7)

  1. コーヒー果実に含まれる資化成分に微生物を接触させて発酵処理させる発酵工程と、前記発酵工程を経たコーヒー果実からコーヒー生豆を分離回収する回収工程とを包含するコーヒー生豆の処理方法であって、
    前記発酵工程において前記コーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出して前記微生物に発酵処理させるコーヒー生豆の処理方法。
  2. 前記発酵工程において、その外皮を残した状態で前記コーヒー果実の果肉を少なくとも一部露出して、前記微生物に発酵処理させる請求項1記載のコーヒー生豆の処理方法。
  3. 前記発酵工程において、その外皮だけを剥いだ状態で前記コーヒー豆の果肉を少なくとも一部露出して、前記微生物に発酵処理させる請求項1記載のコーヒー生豆の処理方法。
  4. 前記微生物が、酵母、乳酸菌、カビ、及び不完全菌類からなる群から選択される請求項1に記載のコーヒー生豆の処理方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載される処理方法により得られたコーヒー生豆。
  6. 請求項5に記載されるコーヒー生豆を焙煎処理したコーヒー焙煎豆。
  7. 請求項6に記載されるコーヒー焙煎豆を原料として用いて得られたコーヒー飲料。
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