以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明のフィルタの故障検出システムを適用する内燃機関の吸気系及び排気系の概略構成を示す図である。エンジン1は4つの気筒17を有するディーゼルエンジンである。各気筒17は吸気マニホールド2を介して吸気通路8に連通する。また、排気マニホールド3を介して排気通路9に連通する。エンジン1は、吸気通路8に設けられたコンプレッサ6及び排気通路9に設けられたタービン7を有し、排気のエネルギーを利用して過給を行うターボチャージャ5を備えている。コンプレッサ6より下流側の吸気通路8には過給された吸気を冷却するインタークーラ4が設けられている。コンプレッサ6より上流側の吸気通路8には吸気の温度を測定する吸気温度センサ19が設けられている。排気マニホールド3には排気中に燃料を添加する燃料添加弁14が設けられている。排気マニホールド3と吸気マニホールド2とは、EGR通路15によって連通している。EGR通路15を介して排気の一部が吸気系に再循環する。EGR通路15には、EGR通路15を介して吸気マニホールド2に流入する排気の量を調節するEGR弁18が設けられている。
タービン7より下流側の排気通路9には、排気中のNOxを吸蔵し還元浄化する吸蔵還元型のNOx触媒12及び排気中の微粒子物質を捕集するウォールフロー型のパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」と称する)13が設けられている。NOx触媒12に所定量のNOxが吸蔵されたと判断された場合には、NOx触媒12に流入する排気の空燃比をリッチ化してNOx触媒12に吸蔵されたNOxを放出させ還元浄化するNOx還元処理を行う。また、フィルタ13に所定量の微粒子物質が捕集されたと判断された場合には、フィルタ13を昇温してフィルタ13に捕集された微粒子物質を酸化除去するフィルタ再生処理を行う。燃料添加弁14による排気への燃料添加、リッチ空燃比による燃焼、ポスト噴射等の既知の制御を実行することによって、NOx還元処理やフィルタ再生処理を行う。
フィルタ13の入口付近の排気通路9には、フィルタ13に流入する排気の温度を測定する温度センサ11が設けられている。また、フィルタ13の出口付近の排気通路9には、フィルタ13から流出する排気の温度を測定する複数の温度センサ10が設けられている。複数の温度センサ10の詳細な設置態様については後述する。
更に、エンジン1の運転状態を制御するECU16が備えられている。ECU16は、温度センサ10や温度センサ11その他の各種センサからの入力を受け、その入力データに基づいてエンジン1の運転状態や運転者の要求を取得し、燃料噴射制御やフィルタ再生処理、NOx還元処理その他の各種機関制御を実行するコンピュータユニットである。
フィルタ再生処理時の過昇温等に起因してフィルタ13の内部に破損等の故障が生じる場合があるので、そのような故障を早期に検出する必要がある。
本実施例では、フィルタ13に流入する排気(以下、「入ガス」という)の温度を変化させた場合のフィルタ13から流出する排気(以下、「出ガス」という)の温度変化のばらつきに基づいて、フィルタ13の故障を検出する。以下、本実施例に係るフィルタ故障検出について説明する。
入ガス温度を変化させると、それに伴って出ガス温度も変化するが、フィルタ13内で排気が通過した箇所における故障の有無によって、出ガス温度の変化の仕方が異なる。具体的には、故障箇所やその近傍を通過する排気は、非故障箇所を通過する排気と比較して、入ガス温度を変化させた場合の出ガス温度の変化量が大きい。
これは、フィルタ13の故障箇所においては、フィルタ13と排気との接触面積が減少するとともに、圧力損失が低下して排気の流速が増加するため、故障箇所やその近傍を通過する排気は、非故障箇所を通過する排気と比較して、排気とフィルタ13との間で行われる熱授受が少ないからである。
従って、フィルタ13内に故障箇所が存在する場合、入ガス温度を変化させた場合の出ガス温度の変化量には、フィルタ13内で排気が通過した位置と故障箇所との位置関係に応じたばらつきが生じる。一方、フィルタ13内に故障箇所が存在しない場合は、入ガス温度を変化させた場合の出ガス温度の変化量は、フィルタ13内で排気が通過した位置によらず略同様であり、出ガス温度の変化量のばらつきは小さい。
この点に着目して、本実施例では、フィルタ13内で排気が通過した位置による、入ガス温度変化に伴う出ガス温度変化量のばらつきに基づいて、フィルタ13の故障の有無を判定する。
「フィルタ13内で排気が通過した位置による出ガス温度変化量のばらつき」は、フィルタ13の出口近傍に設けた複数の温度センサ10による測定値に基づいて取得する。
ここで、温度センサ10の設置態様について図2に基づいて説明する。図2は、排気通路9の中心軸線に垂直な断面(図1のX−X’断面)による排気通路9の断面図である。複数の温度センサ10は、フィルタ13の下流端から等距離の面上において出ガス温度を測定するように配置する。本実施例では、フィルタ13の下流端は排気通路9の中心軸線に垂直であるとする。従って、排気通路9の中心軸線に垂直な面が、フィルタ13の下流端から等距離の面となる。
図2に示すように、温度センサ10は計5個設けられており(温度センサ10a、10b、10c、10d、10e)、各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eの温度測定部11a、11b、11c、11d、11eは断面X−X’上に位置している。従って、各温度測定部11a、11b、11c、11d、11eは、フィルタ13の下流端から等距離の位置においてフィルタ13から流出する排気の温度を測定する。
図2において、破線A1,A2,A3は、断面X−X’上において排気通路9の中心軸
線から距離R1,R2,R3の等距離線を表している。図2に示すように、温度測定部11aは排気通路9の中心軸線上に配置され、その他の温度測定部11b、11c、11d、11eは等距離線A3上に等間隔で配置されている。
図2において、領域20は、断面X−X’上におけるフィルタ13内の故障箇所に対応する領域を示す。この場合、温度測定部11bが、故障箇所に対応する領域20に最も近い。そのため、温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる出ガス温度の測定値のうち、温度センサ10bによる測定値が、フィルタ13内の故障による影響を最も強く受ける。例えば、入ガス温度を上昇させた場合には、温度センサ10bによる出ガス温度の測定値は、温度センサ10a、10c、10d、10eによる出ガス温度の測定値と比較して高くなると考えられる。
しかしながら、このように複数の温度センサを用いる場合、温度センサ毎の製造上の個体差や経時変化の違いによって温度センサ毎のオフセット誤差等の測定特性にばらつきがある場合がある。そのため、各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値そのものの比較によっては、フィルタ13における故障の有無を正確に判定できない場合がある。この問題について、図3に基づいて説明する。
図3は、入ガス温度を上昇させた場合の、温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる出ガス温度の測定値の時間推移の一例を示す図である。図3の縦軸は温度、横軸は時間を表す。図3に示すように、時刻t0において入ガス温度Tinを上昇させると、それに伴って時刻t0から一定時間遅れて出ガス温度が上昇し始め、時刻t0’の前後で温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる出ガス温度の測定値Ta,Tb,Tc,Td,Teが上昇し始める。
故障箇所に対応する領域20に近い温度センサ10bによる測定値は太い破線Tb’により表している。フィルタ13内に故障箇所が存在しない場合に温度センサ10bによって取得される測定値は、太い実線Tbにより表している。両者を比較すると判るように、故障箇所が存在する場合の測定値Tb’は、故障箇所が存在しない場合の測定値Tbより高い。
しかしながら、温度センサ10による測定値が上昇し始める前(時刻t0〜t0’)のグラフから判るように、出ガス温度が等しいはずの状況において、温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値にばらつきがある。図3の例では、傾向として、温度センサ10a、10c、10d、10eによる測定値は、温度センサ10bによる測定値より高くなっている。
このうち、温度センサ10c、10d、10eによる測定値が温度センサ10bによる測定値より高い傾向は、温度センサ10c、10d、10eによる測定値に係るオフセット誤差が温度センサ10bによる測定値に係るオフセット誤差よりも大きいというこれら温度センサ間の測定特性のばらつきに起因する測定値のばらつきである。
このような温度センサ10毎の測定値のばらつきのために、図3に示すように、フィルタ13内の故障箇所を通過したために高い値になっている温度センサ10bによる測定値Tb’と、温度センサ10bよりもオフセット誤差が大きいために全体的に温度センサ10bによる測定値よりも高い値になっている温度センサ10c、10d、10eによる測定値Tc,Td,Teと、を区別することが困難となっている。温度センサ10毎の測定特性のばらつきは、製造上の個体差や経時変化の相違に起因するランダムなばらつきであり、予測して補正することは困難である。
なお、温度センサ10aによる測定値が温度センサ10b、10c、10d、10eによる測定値よりも高い傾向は、温度測定部11a、11b、11c、11d、11eの断面X−X’上での位置の違いに起因する測定値のばらつきである。このばらつきは、フィルタ13の中央部と周辺部とで通過する排気の流速が異なることや、排気通路9の壁面からの距離によって外気との間の熱授受の量が異なることに起因するばらつきであり、温度センサ10毎の測定特性のばらつきと異なり、予測することができ、予測に基づいて補正を行うことも可能である。このような温度測定部11の位置の違いによる測定値のばらつきを考慮したフィルタ13の故障判定については、実施例2において説明する。
このように、複数の温度センサを用いる場合、各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値そのものの比較によっては、フィルタ13における故障の有無を正確に判定できない場合がある。
そこで、本実施例に係るフィルタ故障検出システムでは、入ガス温度を変化させて、それに伴う出ガス温度の変化量を各温度センサ10による測定値の変化量として取得する。上述したように、フィルタ13に故障箇所が存在する場合、入ガス温度を変化させた場合の出ガス温度の変化量には、フィルタ13内で排気が通過した位置と故障箇所の存在する位置との関係に応じたばらつきが生じるので、上記のようにして取得した出ガス温度の変化量のばらつきに基づいて、フィルタ13の故障の有無を判定することができる。
そして、出ガス温度の変化量は、各温度センサ10による測定値の変化量として取得するので、温度センサ10の測定値に含まれる測定特性に依存する部分は測定値の変化量を算出する段階で相殺される。従って、温度センサ10毎に測定特性にばらつきがあったとしても、温度センサ10による測定値の変化量は、そのばらつきの影響を受けにくい。よって、温度センサ10の測定値の変化量のばらつきは、フィルタ13内の故障の有無を精度良く反映したものとなる。
図4は、入ガス温度を上昇させた場合の、図3の例と同一の測定特性のばらつきを有する温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる出ガス温度の測定値の上昇量の時間推移の一例を示す図である。図4の縦軸は温度上昇量、横軸は時間を表す。縦軸の温度上昇量は、入ガス温度Tinに関しては、入ガス温度を上昇させる処理の開始直前の温度を初期値とした温度上昇量を表し、温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値に関しては、出ガス温度が上昇し始める直前の各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値を初期値とした測定値の変化量を表す。
図4に示すように、時刻t0において入ガス温度の上昇量が増加し始めると、それに伴って時刻t0から一定時間遅れて出ガス温度の上昇量が増加し始め、時刻t0’の前後で各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量ΔTa,ΔTb,ΔTc,ΔTd,ΔTeが増加し始める。
故障箇所に対応する領域20に近い温度センサ10bによる測定値の上昇量は太い破線ΔTb’により表している。同じ状況でフィルタ13内に故障箇所が存在しない場合に取得される温度センサ10bによる測定値の上昇量は、太い実線ΔTbにより表している。両者を比較すると判るように、故障箇所が存在する場合の測定値の上昇量ΔTb’は、故障箇所が存在しない場合の測定値の上昇量ΔTbよりも多い。
図4に示すように、フィルタ13に故障箇所が存在しない場合には、出ガス温度の上昇が開始してから収束するまでの間の一定期間において、各温度センサ10による測定値の上昇量ΔTa,ΔTb、ΔTc、ΔTd、ΔTeは、各温度センサ10が図3の例と同一の測定特性のばらつきを有しているにもかかわらず、略等しい値が得られる。
一方、フィルタ13に故障箇所が存在する場合には、出ガス温度の上昇が開始してから収束するまでの間の一定期間において、故障箇所に対応する領域20に近い温度センサ10bによる測定値の上昇量ΔTb’を除いて、各温度センサ10による測定値の上昇量ΔTa、ΔTc、ΔTd、ΔTeは、略等しい値が得られる。そして、故障箇所に対応する領域20に近い温度センサ10bによる測定値の上昇量ΔTb’は、その他の温度センサ10による測定値の上昇量ΔTa、ΔTc、ΔTd、ΔTeと比較して顕著に大きい値が得られる。
このように、フィルタ13に故障箇所が存在する場合には、入ガス温度の上昇に伴う各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量のばらつきは、故障箇所が存在しない場合と比較して大きくなる。そして、各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量のばらつきは、各温度センサ10の測定特性のばらつきの影響を受けにくい。従って、各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量のばらつきは、フィルタ13における故障の有無を精度良く反映した量としてフィルタ13の故障判定に用いることができる。
本実施例におけるフィルタの故障検出処理について、図5及び図6に基づいて説明する。図5及び図6は、本実施例に係るフィルタの故障検出処理のフローチャートである。このフローチャートはエンジン1の運転中ECU16によって繰り返し実行される。
ステップS101において、ECU16は、フィルタ13の故障検出処理を実行する条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、フィルタ13の温度が所定温度以上で安定していて、入ガス温度センサ11及び温度センサ10a、10b、10c、10d、10eが全て正常であり、フィルタ13に流入する排気の流量が所定流量以上であり、それまでにフィルタ13の異常が検出されていない場合に、故障検出処理を実行する条件が成立していると判定する。入ガス温度センサ11及び温度センサ10a、10b、10c、10d、10eが正常か否かは別途実行される処理により判定するが、公知のセンサ異常検出ルーチンを利用することができるので、ここでは詳細な説明は割愛する。なお、フィルタ13の故障検出処理をフィルタ13の再生処理と同時に実行するようにシステムを構成することもできる。その場合には、フィルタ13における微粒子物質の捕集量が所定量以上であることも条件に加えても良い。ステップS101で肯定判定された場合、ECU16はステップS102の処理に進む。それ以外の場合、本フローチャートの処理を一旦終了する。
ステップS102において、ECU16は、排気昇温制御を実施中であるか否かを判定する。本ステップの初回の処理時は排気昇温制御は行われていないので、否定判定され、その場合ECU16はステップS103の処理に進む。肯定判定された場合、ECU16は図6のステップS105の処理に進む。
ステップS103において、ECU16は、排気昇温制御を開始する。具体的には、燃料添加弁14による排気中への燃料添加、ポスト噴射、EGR弁18を閉弁することによるEGRカット等を実行する。排気昇温制御としては既知の制御を利用することができるので、ここでは詳細な説明は割愛する。ステップS103の処理を実行するECU16が、本発明における温度変化手段に相当する。
ステップS104において、ECU16は、入ガス温度の初期値Tin(t0)と、各温度センサ10による測定値の初期値Ti(t0)(i=a、b、c、d、e)を取得する。入ガス温度の初期値Tin(t0)は入ガス温度センサ11による測定値から取得する。
以上説明したフローチャートの処理を実行することにより、入ガス温度を上昇させる制御が実施中となるので、次回のこのフローチャートの実行時にステップS102において肯定判定され、ECU16はステップS105の処理に進む。
図6のステップS105において、ECU16は、時刻tMにおける入ガス温度Tin(tM)を取得し、続くステップS106において、時刻tMにおける各温度センサ10による測定値Ti(tM)(i=a、b、c、d、e)を取得する。ここで、時刻tMは、図4に示すように、入ガス温度の上昇に伴う温度センサ10による測定値の上昇が開始する時刻t0’から略収束する時刻t0’’までの期間内の所定の時刻である。図4から判るように、この期間内は、フィルタ13の故障箇所を通過した排気と非故障箇所を通過した排気とで、出ガス温度の上昇量の時間推移の挙動が大きく異なり、且つ、非故障箇所を通過した排気の温度上昇量の時間推移の挙動が略一致しているので、フィルタ13に故障箇所が存在する場合には、各温度センサ10の測定値の上昇量の間のばらつきが顕著に現れる。従って、精度良くフィルタ13の故障を検出することができる。
ステップS107において、ECU16は、各温度センサ10による測定値の初期値からの上昇量ΔTi(i=a、b、c、d、e)を取得する。具体的には、ステップS106で取得した時刻tMにおける各温度センサ10による測定値Ti(tM)(i=a、b、c、d、e)と、ステップS104で取得した各温度センサによる測定値の初期値Ti(t0)(i=a、b、c、d、e)と、の差を算出する。
続くステップS108及びS109において、ECU16は、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきを取得する。本実施例では、各温度センサ10による測定値の上昇量ΔTi(i=a、b、c、d、e)のうち、最大のものと最小のものとの差を、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきとして算出する。
まず、ステップS108において、ECU16は、ステップS107で取得した各温度センサ10による測定値の上昇量のうちの最大値ΔTmaxと最小値ΔTminとを取得する。
そして、ステップS109において、ECU16は、ステップS108で取得した各温度センサ10による測定値の上昇量の最大値ΔTmaxと最小値ΔTminとの差|ΔTmax−ΔTmin|を、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきΔTfinとする。
ステップS110において、ECU16は、ステップS109で取得した各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきΔTfinが所定の閾値より大きいか否かを判定する。ここで、所定の閾値は、フィルタ13に故障箇所が存在するか否かを判定するための、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきの基準値である。この閾値は、フィルタ13に故障箇所が存在しない場合に、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきとして現れ得る最大の値を予め実験等により調べて、その値に基づいて定める。この閾値は、ステップS103の排気昇温制御の目標排気温度や、エンジン1の負荷や回転数等の運転状態に応じた値を設定しても良い。
ステップS110においてばらつきΔTfinが閾値より大きい場合、ECU16は、ステップS111に進み、フィルタ13に故障箇所が存在すると判定する。この時、運転者にフィルタ13の故障を通知するMILを点灯する等の処理を行うこともできる。一方、ステップS110においてばらつきΔTfinが閾値以下の場合、ECU16は、ステップS112に進み、フィルタ13に故障箇所は存在しないと判定する。
ステップS106〜ステップS112の処理を実行するECU16が、本発明における検出手段に相当する。
以上説明したフローチャートの処理を実行することにより、温度センサ10a、10b、10c、10d、10eの測定特性にばらつきがある場合においても、各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量に基づいて、精度良くフィルタ13の故障を検出することができる。
次に、実施例2について説明する。本実施例では、温度センサ10の設置態様が実施例1と異なっている。図7は、本実施例における温度センサ10の設置態様を示した図である。実施例1の温度センサ10の設置態様との相違点は、実施例1では、周辺部の温度センサ10b、10c、10d、10eの温度測定部11b、11c、11d、11eは全て、中心軸線からの距離がR3の等距離線A3上に配置されていたのに対し、本実施例では、周辺部の温度センサ10b、10c、10d、10eのうち、温度センサ10bの温度測定部11bは中心軸線からの距離がR3の等距離線A3上に配置される一方、温度センサ10c、10d、10eの温度測定部11c、11d、11eは中心軸線からの距離がR2の等距離線A2上に配置されている点である。
このように断面X−X’上での温度測定部11の位置が異なる場合、入ガス温度を上昇させたときの温度センサ10による測定値の変化量に、温度測定部11の位置の相違に起因するばらつきが生じる場合がある。
例えば、排気通路9を流れる排気は排気通路9の壁面を介して外気との間で熱授受を行うが、排気通路9内で排気が流れる位置が排気通路9の壁面に近いほど、この外気との間で行われる熱授受の量が多い傾向がある。入ガス温度を上昇させる場合には、排気通路9内で排気が流れる位置が排気通路9の壁面に近いほど(言い換えると、排気通路9の中心軸線からの距離が長いほど)、外気への放熱が多くなり、出ガス温度の上昇量が少なくなる。
従って、図8に示すように、入ガス温度を上昇させた場合の温度センサ10による測定値の上昇量は、温度センサ10の温度測定部11の位置が排気通路9の中心軸線から外周側になるほど少なくなる傾向がある。
そのため、本実施例のように周辺部の温度センサ10b、10c、10d、10eの温度測定部11b、11c、11d、11eの位置が中心軸線からの等距離ではない構成では、温度センサ10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量のばらつきには、フィルタ13内の故障の有無とは異なる要因によるばらつきが含まれることになるので、温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきに基づくフィルタ13の故障検出を精度良く行えない可能性がある。
例えば、図7に示すように、断面X−X’上でフィルタ13内の故障箇所に対応する領域20に最も近い位置に温度センサ10bの温度測定部11bがある場合、入りガス温度の上昇に伴って取得される各温度センサ10による測定値の上昇量には、温度センサ10bによる測定値の上昇量がその他の温度センサ10a、10c、10d、10eによる測定値の上昇量と比較して大きい、というばらつきが生じる。そして、そのばらつきの度合(実施例1の場合、測定値の上昇量の最大値と最小値との差)が閾値より大きいことに基づいて、フィルタ13の故障を検出することができる。
しかしながら、温度センサ10bの温度測定部11bは、その他の温度センサ10a、10c、10d、10eの温度測定部11a、11c、11d、11eよりも排気通路9の外壁に近いため、温度センサ10bによる測定値の上昇量は外気への放熱の影響で減少する。そのため、図9に示すように、温度センサ10bによる測定値の上昇量ΔTb’(一点鎖線で表示)は、周辺部のその他の温度センサ10c、10d、10eによる測定値の上昇量ΔTc、ΔTd、ΔTe(太い実線で表示)と比較して大差ないものとなり、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつき(実施例1の例では測定値の上昇量の最大値と最小値との差ΔTmax)が閾値より大きい値とならず、結果としてフィルタ13に故障箇所は存在しないという誤判定を招く可能性がある。
そこで、本実施例では、周辺部の温度センサ10bと周辺部のその他の温度センサ10c、10d、10eとの断面X−X’上での位置の相違に基づいて、温度センサ10bによる測定値の上昇量を補正するようにした。具体的には、温度センサ10bによる測定値の上昇量に対して増加補正を行う。補正量は、フィルタ13に故障が存在しない場合の温度センサ10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量が略等しくなるように定める。
このような補正をすることにより、図9に示すように、温度センサ10bによる測定値の補正後の上昇量ΔTb’’(太い破線で表示)は、周辺部のその他の温度センサ10c、10d、10eによる測定値の上昇量ΔTc、ΔTd、ΔTe(太い実線で表示)と比較して大幅に大きい値となり、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきΔTmax’が閾値より大きくなり、フィルタ13に故障箇所が存在すると適切に判定することが可能となる。
このように、断面X−X’上での各温度測定部11の位置の相違に応じて、各温度センサ10による測定値の上昇量を補正することにより、入ガス温度を上昇させた場合に取得される各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきから、各温度センサ10の温度測定部11の位置の相違による外気と排気との間の熱授受に起因するばらつきの影響を排除することができる。これにより、本実施例のように周辺部の温度センサ10b、10c、10d、10eが中心軸線から等距離の位置に配置されていない場合であっても、精度良くフィルタ13の故障を検出することができる。
なお、断面X−X’上での中央部の温度センサ10aと周辺部の温度センサ10b、10c、10d、10eとの位置の相違に応じて、温度センサ10aによる測定値の上昇量や温度センサ10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量を補正するようにしても良い。その場合、例えば、温度センサ10aによる測定値の上昇量を減少補正し、温度センサ10bによる測定値の上昇量を上記説明のように増加補正することによって、フィルタ13に故障が存在しない正常時に全ての温度センサ10による測定値の上昇量が略等しくなるようにすると良い。或いは、温度センサ10bによる測定値の上昇量を上記説明のように増加補正し、温度センサ10c、10d、10eによる測定値の上昇量を温度センサ10bの測定値の上昇量の補正量よりも少ない量だけ増加補正することによって、フィルタ13に故障が存在しない正常時に全ての温度センサ10による測定値の上昇量が略等しくなるようにしても良い。
また、外気と排気との間の熱授受の影響による出ガスの温度上昇量の低下は、外気温度と排気温度との差の影響も受ける。図10は、排気と外気との温度差と、排気通路9の壁面から温度測定部11までの距離が異なる2つの温度センサ10による測定値の上昇量の差と、の関係を示す図である。図10に示すように、排気と外気との温度差が大きいほど、温度測定部11の位置の相違による測定値の上昇量の差は大きくなる。例えば、図10において、排気昇温制御を開始してからΔt2経過後の排気の温度は、Δt1(<Δt2
)経過後の排気の温度より高くなっており、従って排気と外気との温度差もより大きくなっているので、例えば温度センサ10bによる測定値の上昇量と、温度センサ10c、10d、10eによる測定値の上昇量と、の差も、排気昇温制御開始後Δt1経過した時点よりΔt2経過した時点の方が大きくなる。
従って、断面X−X’上での温度測定部11の位置の相違に応じて温度センサ10による測定値の上昇量を補正する場合に、その補正量を排気と外気との温度差による影響をも考慮して定めるようにしても良い。そうすることにより、より精度良くフィルタ13の故障を検出することができる。
なお、本実施例では、排気昇温制御の開始後所定期間にわたって温度センサ10による測定を複数回行う。そして、各回の測定において、直前の測定により得られた測定値と今回の測定により得られた測定値との差を算出し、それを当該測定回における各温度センサ10による測定値の変化量とする。このようにして取得した各温度センサ10による測定値の変化量のうち最大値と最小値との差を算出する。そして、この差を全測定にわたって積算し、これを各温度センサ10による測定値の変化量のばらつきの度合とする。このようにして算出したばらつきの度合と閾値との比較に基づいて、フィルタ13の故障を判定する。
ここで、所定期間とは、実施例1の図4において説明した時刻t0’(入ガス温度の上昇に伴う温度センサ10による測定値の上昇が開始する時刻)から時刻t0’’(温度センサ10による測定値の上昇が略収束する時刻)までの期間であり、フィルタ13の故障箇所を通過した排気と非故障箇所を通過した排気とで、出ガス温度の上昇量の時間推移の挙動が大きく異なり、且つ、非故障箇所を通過した排気の温度上昇量の時間推移の挙動が略一致する期間である。この期間内で取得した出ガス温度上昇量には、フィルタ13内に存在する故障箇所に起因するばらつきが顕著に現れるので、精度良くフィルタ13の故障を検出することができる。
測定回数Nを予め定めておき、所定期間を回数Nで除した時間間隔(t0’’−t0’)/N毎に、温度センサ10による測定を実行する。
本実施例に係るフィルタ故障検出処理について、図11のフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートは、実施例1で説明した図5のフローチャートのステップS102において肯定判定された場合、すなわち、フィルタ13の故障検出実行条件が成立し、且つ、排気昇温制御が実施中であると判定された場合に、実行される処理内容を示す。
ステップS205において、ECU16は、時刻tjにおける入ガス温度Tin(tj)を取得し、続くステップS206において、時刻tjにおける各温度センサ10による測定値Ti(tj)(i=a、b、c、d、e)を取得する。ここで、時刻tjは、上述した所定期間内で行われる複数回の測定のうち、j番目の測定を行う時刻を表す。
ステップS207において、ECU16は、前回(時刻tj−1)取得した各温度センサ10による測定値Ti(tj−1)(i=a、b、c、d、e)からの上昇量ΔTi(tj)を取得する。ここでは、ステップS205で取得した時刻tjにおける各温度センサ10による測定値Ti(tj)と、前回(時刻tj−1)のこのフローチャート処理時のステップS205で取得した時刻tj−1における各温度センサ10による測定値Ti(tj−1)と、の差を算出する。
ステップS208において、ECU16は、ステップS207で取得した各温度センサ
10による測定値の上昇量を補正するための補正量Tcori(tj)(i=a、b、c、d、e)を算出する。ここでは、各温度センサ10の温度測定部11が排気通路9の壁面に近いほど上昇量ΔTi(tj)を増加補正するとともに、排気と外気との温度差が大きいほど当該増加補正の補正量が大きくなるように、各温度センサ10の温度測定部11と排気通路9の壁面との距離と、排気と外気との温度差と、に応じて予め定められた関係から補正量Tcori(tj)を算出する。排気と外気との温度差は、ステップS205で取得した時刻tjにおける入ガス温度Tin(tj)と、吸気温度センサ19によって測定される吸気温度との差として算出する。
ステップS209において、ECU16は、ステップS207で取得した各温度センサ10による測定値の上昇量ΔTi(tj)をステップS208で算出した補正量Tcori(tj)により補正し、各温度センサ10による測定値の補正後の上昇量ΔTfini(tj)(i=a、b、c、d、e)を算出する。
ステップS210において、ステップS209で算出した各温度センサ10による測定値の上昇量ΔTfini(tj)(i=a、b、c、d、e)のうちの最大値ΔTmax(tj)及び最小値ΔTmin(tj)を取得する。
ステップS211において、ECU16は、ステップS210で取得した各温度センサ10による測定値の上昇量の最大値ΔTmax(tj)と最小値ΔTmin(tj)との差を算出し、これをj番目の測定における各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきΔTfin(tj)とする。
ステップS212において、ECU16は、前回(j−1番目)の測定までに算出した各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきの積算値に、今回(j番目)の測定で算出した各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきΔTfin(tj)を加算する。
ステップS213において、ECU16は、所定回数(N回)の測定が完了したか否かを判定する。測定回数jが所定回数Nに達していない場合は、一旦このフローチャートの処理を抜け、上述した測定時間間隔経過後に再び本フローチャートの処理を実行して測定を行う。測定回数jが所定回数Nに達した場合は、ステップS214の処理に進む。
ステップS214において、ECU16は、全N回分の各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきの積算値が、所定の閾値より大きいか否かを判定する。この閾値は、フィルタ13に故障箇所が存在するか否かを判定するための、各温度センサ10による測定値の上昇量のばらつきのN回分の積算値の基準値であり、フィルタ13に故障箇所が存在しない場合に算出され得る積算値の最大値に基づいて定める。この閾値は、ステップS103の排気昇温制御の目標排気温度や、エンジン1の負荷や回転数等の運転状態に応じた値を設定しても良い。
ステップS214においてばらつきの積算値が閾値より大きい場合、ECU16は、ステップS215に進み、フィルタ13に故障箇所が存在すると判定する。この時、運転者にフィルタ13の故障を通知するMILを点灯する等の処理を行うこともできる。一方、ステップS214においてばらつきの積算値が閾値以下の場合、ECU16はステップS216に進み、フィルタ13に故障箇所は存在しないと判定する。
ステップS205〜ステップS216の処理を実行するECU16が、本発明における検出手段に相当する。
以上説明したフローチャートの処理を実行することにより、温度センサ10a、10b、10c、10d、10eの温度測定部11a、11b、11c、11d、11eの位置の相違による測定値の上昇量のばらつきの影響を排除して、各温度センサ10a、10b、10c、10d、10eによる測定値の上昇量に基づいて、精度良くフィルタ13の故障を検出することができる。
以上説明した各実施例は本発明の一実施形態であり、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて種々の組み合わせや変形が可能である。例えば、上記実施例は中央部に1つの温度センサ及び周辺部に5つの温度センサを配置した例について説明したが、温度センサの配置及び個数はこれに限られない。特に、実施例2で説明した補正を行うことにより、どのような不規則的なセンサ配置にも対応することができる。逆に、排気通路の壁面からの距離や中心軸線からの距離が等距離の位置に温度センサを配置して補正処理を省略することにより、フィルタの故障検出処理を簡単化することもできる。入ガス温度センサ11は本発明の実施には必ずしも必須の構成要素ではない。フィルタ13の出ガス温度の変化量を複数箇所で測定できれば良い。実施例2では温度センサの位置による補正と、外気と排気との温度差による補正と、の両方の補正を行う場合を説明したが、必ずしも両方の補正を行う必要もない。また、上記各実施例は排気昇温制御によりフィルタ入ガスを昇温させた場合の温度センサによる測定値の上昇量のばらつきに基づいてフィルタの故障判定をする例について説明したが、原理的には排気の温度を下降させた場合の温度センサによる測定値の低下量のばらつきに基づく故障検出も可能である。但し、フィルタ入ガス温度をより大きく変化させた方が、フィルタの故障検出の精度が高くなるので、その点で入ガス温度を上昇させた方が検出精度を高めやすい。実施例2で説明した補正処理は、実施例2の温度センサによる測定値の上昇量のばらつきの積算値に基づく故障検出だけでなく、実施例1の故障検出にも適用可能である。