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JP5042672B2 - 中空部材及びその製造方法 - Google Patents
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JP5042672B2 - 中空部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブとして好適な中空部材及びその製造方法に関する。
自動車を走行させる駆動源である内燃機関においては、シリンダボア内にシリンダスリーブが配設されることがある。この場合、シリンダボア内で往復動作するピストンの側周壁部は、このシリンダスリーブの内周壁に摺接する。
シリンダスリーブは、特許文献1に記載されているように、いわゆる遠心鋳造法によって作製されることがある。すなわち、回転動作する円筒状金型の内部に溶湯を導入すると、遠心力によって溶湯が円筒状金型の内周壁に偏在するようになり、円筒形状体が形成される。この状態で溶湯を冷却固化して得られた円筒形状の予備成形体に対して削り出し等の機械加工を行うことにより、シリンダスリーブが設けられる。なお、シリンダスリーブの外周壁には、塗型材の表面に形成された凹凸形状が転写されることによって、いわゆるスパイニーが形成される。
このシリンダスリーブを金型の所定の位置に配置した後、前記金型に溶湯を注湯して冷却固化すれば(すなわち、鋳造を行えば)、シリンダスリーブが鋳ぐるまれたシリンダブロックが設けられる。この際、前記スパイニーや、前記削り出し等の機械加工によってシリンダスリーブの外周壁に設けられた起伏(例えば、溝状の筋等)、ショットブラスト処理によってシリンダスリーブの外周壁に設けられた凹凸等がアンカーとして機能することにより、シリンダブロックとシリンダスリーブとの接合強度が確保される。
特公昭52−27608号公報
ところで、特許文献1の記載に従って遠心鋳造を行った場合、初晶Siが外周壁側に多量に偏在するため、前記予備成形体の直径方向中腹近傍においては、初晶Siの量が少なくなる。従って、この予備成形体の内周壁側から削り出しを行うと、ピストンが摺接する内周壁の初晶Siの量が少ないシリンダスリーブとなってしまう。換言すれば、Al−Si系合金からなるシリンダスリーブを遠心鋳造で作製する場合、該シリンダスリーブにおけるSiの組成比を制御することが容易ではなく、このために所望の特性を発現させることが困難であるという不具合が顕在化している。
また、シリンダスリーブの更なる強度向上の希求に対応しつつ靭性を確保するべく、組織の改善、具体的には、Al−Si系合金の溶湯が固化する際に析出する初晶Siを微細化することが検討されている。しかしながら、遠心鋳造を行う場合に初晶Siを微細化するためには、円筒状金型の回転数や温度等の鋳造条件を種々変更して最適化を図る必要がある。すなわち、鋳造条件を最適化するための試行錯誤を繰り返し行わなければならない。しかも、量産時には、最適化された鋳造条件を厳密に管理する必要がある。
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、初晶Siを微細化することが可能であり、しかも、作業が簡便で鋳造条件の厳密な管理も不要な中空部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、略円筒体形状をなす積層型の中空部材であって、
外側円筒形状体及び内側円筒形状体を外周側からこの順序で有し、
前記内側円筒形状体と前記外側円筒形状体とが互いに同一種のAl−Si系合金であることを特徴とする。
ここで、本発明における「同一種」は、JIS規格等の各種規格において同一の鋳造用合金として分類されるものを指称する。例えば、内側円筒形状体がAC9A相当材からなる場合には、外側円筒形状体もAC9A相当材からなる。この場合において、両者の組成が厳密に一致する必要はない。すなわち、AC9A相当材は22〜24質量%のSiを含有するアルミニウム合金であるが、例えば、Siが22質量%のAC9A相当材で内側円筒形状体を形成し、且つSiが24質量%のAC9A相当材で外側円筒形状体を形成するようにしてもよい。
後述するように、内側円筒形状体は、遠心鋳造によって設けられた外側円筒形状体の内方に遠心鋳造によって設けられる。この際、外側円筒形状体が冷やし金(チラー)として機能することで溶湯の冷却速度が大きくなり、このため、微細な初晶Siが直径方向に略均等に分散する。換言すれば、この中空部材を構成する内側円筒形状体においては、微細な初晶Siが一様に分散して存在する。従って、相違する部位同士であっても諸特性が略同等である。
しかも、例えば、中空部材の内周壁側(内側円筒形状体側)から削り出しを行って薄肉化した場合であっても、上記したように初晶Siが略均等に分散しているので、十分な耐摩耗性等を確保することが可能である。
なお、内側円筒形状体の金属組織における初晶Siの平均粒径は、35μm以下であることが好ましい。この場合、耐摩耗性に優れるとともに強度も良好な中空部材を得ることができる。
ここで、中空部材の好適な例としては、内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブを挙げることができる。
また、本発明は、回転する円筒状金型に溶湯を供給して遠心鋳造により略円筒体形状をなす積層型の中空部材を作製する中空部材の製造方法であって、
回転する円筒状金型にAl−Si系合金の溶湯を供給して遠心鋳造により外側円筒形状体を設ける工程と、
前記円筒状金型を回転させながら、前記溶湯と同一種のAl−Si系合金からなる溶湯を前記外側円筒形状体の内方に供給して遠心鋳造により内側円筒形状体を設け、積層型の予備成形体とする工程と、
を有することを特徴とする。
本発明においては、内側円筒形状体を設ける際に外側円筒形状体がチラーとして機能するため、溶湯の冷却速度が大きくなる。すなわち、初晶Siが大きく成長したり外側円筒形状体側に移動したりする前に溶湯が固化する。従って、微細な初晶Siが略均等に分散した組織を有する内側円筒形状体が得られる。
しかも、同一種の溶湯を2回に分けて円筒状金型に供給するという簡便な作業を行うのみでよいので、中空部材の製造コストが上昇することもない。結局、中空部材を廉価に作製することができる。
この場合、外側円筒形状体の厚みを0.5〜2.0mmとするとともに、該外側円筒形状体の温度が状態図の液相−固相線温度以下となった後、内側円筒形状体となる溶湯を導入することが好ましい。これにより、初晶Siの平均粒径を35μm以下とすることができる。
なお、シリンダスリーブを得るためには、予備成形体の内周壁側から削り出しを行う工程を設けるようにすればよい。
本発明によれば、先に設けた外側円筒形状体をチラーとして機能させながら内側円筒形状体となる溶湯を冷却固化させるようにしているので、該溶湯の冷却速度が大きくなり、その結果、微細な初晶Siが略均等に分散した内側円筒形状体が得られる。すなわち、微細な初晶Siが略一様に分散した組織を有し、このために特性が全体にわたって略同等である内側円筒形状体を具備する中空部材を容易に構成することができる。
以下、本発明に係る中空部材及びその製造法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るシリンダスリーブを設けるための予備成形体10の概略全体斜視図である。この予備成形体10は、内側円筒形状体12と外側円筒形状体14とが積層された積層体であり、且つその長手方向に沿って貫通孔が存在する中空部材である。
この場合、内側円筒形状体12はAl−17〜23%Si−2.5%Cu系合金(数字は重量%、以下同じ)、すなわち、A390相当材(Al−17%系合金)又はAC9A相当材(Al−23%系合金)からなり、後述するように、溶湯が冷却固化することで設けられた鋳造品である。なお、その厚みT1は、5〜6mm程度に設定される。
この内側円筒形状体12では、平均粒径が35μm以下の微細な初晶Siが外周壁側(外側円筒形状体14側)に偏在することなく、直径方向に沿って略均等に分散している。その上、初晶Siの粒度分布幅も小さい。換言すれば、内側円筒形状体12の組織は、微細且つ互いに略同寸法の初晶Siが一様に分散した状態となっている。
一方の外側円筒形状体14もまた、Al−17〜23%Si−2.5%Cu系合金、すなわち、A390相当材又はAC9A相当材からなる鋳造品である。すなわち、外側円筒形状体14は内側円筒形状体12と同一種のアルミニウム合金からなり、その内周壁は内側円筒形状体12の外周壁に接合している。なお、外側円筒形状体14の好適な厚みT2は、0.5〜2.0mmの範囲内である。
このように構成された予備成形体10からシリンダスリーブを作製するに際しては、該予備成形体10の内周壁側、すなわち、内側円筒形状体12から削り出しが行われる。換言すれば、内側円筒形状体12は、所定の厚みとなるまで薄肉化される。このように、内側円筒形状体12は、予備成形体10の加工代として設けられる。
上記したように、内側円筒形状体12では、微細且つ互いに略同寸法の初晶Siが直径方向に沿って一様に分散している。このため、加工後の予備成形体10、すなわち、シリンダスリーブにおいては、ピストンが摺接する内周壁にも優れた耐摩耗性が発現する。その上、全体にわたって高強度である。従って、このシリンダスリーブを組み込んだ内燃機関は、優れた耐久性を示す。
次に、このシリンダスリーブの製造方法につき、図2に示す遠心鋳造装置20を使用する場合を例示して説明する。
この遠心鋳造装置20は、略水平方向に沿って横臥した円筒状金型22を有する。該円筒状金型22の外周壁には、該外周壁を周回方向に沿って切り欠くようにして2本の環状溝24、24が設けられており、環状溝24、24の各々の底部には、ローラ対をなすローラ26、26の外周壁がそれぞれ摺接する。すなわち、円筒状金型22は2組のローラ対によって支持されている。
4個のローラ26は図示しない回転駆動源に連結されており、このため、円筒状金型22は、前記回転駆動源の作用下にローラ26の各々が回転動作することに伴って回転する。
円筒状金型22の一端部には円盤状閉塞部材30が嵌着されており、一方、他端部には円環状枠体32が取着されている。円環状枠体32は貫通孔34が設けられることで開口しており、この貫通孔34を介してトラフ36の注湯管38が円筒状金型22の内部に挿入される。
トラフ36の本体には、外側円筒形状体14及び内側円筒形状体12を設けるためのAl−17〜23%Si−2.5%Cu系合金の溶湯Lが収容される。トラフ36の近傍には傾動自在なポット40が配設されており、このポット40を介してトラフ36に溶湯Lが供給される。
シリンダスリーブを製造するに際しては、先ず、溶解炉で調製されたAl−17〜23%Si−2.5%Cu系合金の溶湯Lがポット40に移され、さらに、該ポット40が傾動されることに伴ってトラフ36の本体に移される。その一方で、円筒状金型22の内周壁に塗型材が塗布され、その後、図3に示すように、貫通孔34を介してトラフ36の注湯管38が円筒状金型22の内部に挿入される。
この状態でローラ26の回転が開始され、これに追従して円筒状金型22が回転動作する。その後、Al−17〜23%Si−2.5%Cu系合金の溶湯Lの所定量がトラフ36を介して円筒状金型22の内部に供給され、該円筒状金型22の長手方向に沿って流動する。溶湯Lは、さらに、遠心力の作用によって円筒状金型22の内周壁に円筒体形状をなすように偏在して、外側円筒形状体14を形成する。ここで、本実施の形態では、溶湯Lは、外側円筒形状体14の厚みが0.5〜2.0mmの範囲内となる量で供給される。
このようにして外側円筒形状体14が形成される間、該外側円筒形状体14の外周壁には、塗型材のスパイニーが転写される。その一方で、Al−17〜23%Si−2.5%Cu系合金の溶湯Lがポット40に補充される。
溶湯Lの円筒状金型22への導入が終了して外側円筒形状体14の温度が状態図の液相−固相線温度以下となるのに必要な所定時間、例えば、ある条件下において好適には8〜25秒が経過した直後(換言すれば、外側円筒形状体14の温度が状態図の液相−固相線温度以下となった直後)、ポット40を傾動させて溶湯Lをトラフ36の本体に移す。これに追従し、図5に示すように、トラフ36の注湯管38を介して円筒状金型22の内部に溶湯Lが導入される。導入された溶湯Lは、その流動性によって円盤状閉塞部材30側まで展開する。勿論、溶湯Lを導入する間、円筒状金型22の回転動作は続行される。
溶湯Lは、遠心力によって外側円筒形状体14の内周壁に添着するように偏在し、これにより、図6に示すように、内側円筒形状体12が形成される。その結果、内側円筒形状体12の外方に外側円筒形状体14が積層され、且つ外側円筒形状体14の内周壁が内側円筒形状体12の外周壁に接合した予備成形体10が得られる。
内側円筒形状体12が冷却固化する際には、外側円筒形状体14が冷やし金(チラー)として機能する。このため、本実施の形態では、一般的な遠心鋳造に比して溶湯Lの冷却速度が大きくなる。すなわち、初晶Siが大きく成長する前に溶湯Lが固化するので、初晶Siが微細な組織が得られる。初晶Siの平均粒径は、概ね35μm以下である。
また、冷却速度が大きいので、溶湯L中のSiが遠心力によって外周壁側に移動する前に固化が起こる。従って、初晶Siが偏在することが抑制され、内側円筒形状体12の直径方向に沿って略均等に分散する。このように、外側円筒形状体14をチラーとして機能させることで、微細且つ互いに略同寸法の初晶Siが一様に分散した内側円筒形状体12を得ることができる。
次に、円筒状金型22の一端部から円環状枠体32を取り外した後、この端部側から、内側円筒形状体12と外側円筒形状体14とが接合した予備成形体10を引き抜いて塗型材とともに取り出す。その後、外側円筒形状体14の外周壁に付着した塗型材をショットブラスト処理等によって除去し、さらに、内側円筒形状体12の内周壁側から所定量の加工代を除去する削り出しを行えば、初晶Siが略均等に分散した内側円筒形状体12を具備するシリンダスリーブが得られる。
内側円筒形状体12を遠心鋳造によって設ける際、仮に初晶Siが外側円筒形状体14側に若干偏在し、直径方向の中腹部よりも内側(内側円筒形状体12の内周壁側)で初晶Siの量がやや少なくなったとしても、上記したように、削り出しが予備成形体10の内周壁側から行われるので、Siの量が少ない部位が加工代として除去される。結局、初晶Siの量が十分なシリンダスリーブを得ることが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、高強度で且つ耐摩耗性に優れたシリンダスリーブを作製することができる。
また、本実施の形態では、外側円筒形状体14をチラーとして機能させて初晶Siの微細化を図るようにしているので、円筒状金型の回転数や温度等の鋳造条件を厳密に管理する必要がない。
このようにして得られたシリンダスリーブは、自動車用の内燃機関を構成するシリンダブロックを鋳造成形するための鋳造金型のキャビティに配置される。そして、このキャビティに対し、シリンダブロックとなる金属溶湯が導入される。最終的に、シリンダブロックにシリンダスリーブが鋳ぐるまれ、これにより、内燃機関が構成される。この鋳ぐるみの際、シリンダスリーブ(外側円筒形状体14)の外周壁に存在するスパイニーがアンカーとして機能し、これにより、シリンダスリーブとシリンダブロックとの間に十分な接合強度が確保される。
内燃機関においては、シリンダスリーブの内周壁にピストンが摺接する。このシリンダスリーブの内周壁は、上記したように初晶Siに富むA390相当材(Al−17%Si系合金)又はAC9A相当材(Al−23%Si系合金)からなる内側円筒形状体12であり、このため、耐摩耗性に優れる。
以上のように、本実施の形態によれば、シリンダブロックとの接合強度が大きく、且つピストンが摺接する内周壁の耐摩耗性が良好なシリンダスリーブを構成することができる。
図7に示されるような遠心鋳造装置50を構成し、溶湯Lを円筒状金型22に導入するようにしてもよい。以下、この実施形態について説明する。
この場合、円環状枠体32の貫通孔34には、注湯管52が通されている。換言すれば、該注湯管52は、貫通孔34を介して円筒状金型22の内部に挿入される。
注湯管52は、4本の棒状ヒータ54で囲繞されている。すなわち、各々の中央貫通孔に注湯管52が通された第1挟持板56、第1貫挿支持板58、第2貫挿支持板60、第2挟持板62の各々は、該注湯管52の先端側からこの順序で位置決め固定されており、各棒状ヒータ54の両端部は、この中の第1挟持板56及び第2挟持板62で挟持されている。また、第1貫挿支持板58及び第2貫挿支持板60は、前記中央貫通孔の周囲に形成された小貫通孔に各棒状ヒータ54を通すことで、その中腹部を支持している。
図8に示すように、注湯管52は、供給管64を介して溶湯保持炉66に連結されている。すなわち、供給管64は、注湯管52に連結されたフレキシブルチューブ68と、溶湯保持炉66から延在して略逆L字型をなす逆L字管70とが互いに連結されることで、注湯管52から溶湯保持炉66にわたって橋架されている。
一方、溶湯保持炉66の底面には車輪72が設けられており、各車輪72は、作業ステーションの床に敷設された案内レール74に摺動自在に係合している。すなわち、溶湯保持炉66は、車輪72が回転した際に案内レール74に沿って変位する。
溶湯保持炉66の内部には断熱材76が収容されており、この断熱材76に囲繞されるようにして溶湯収容容器78が挿入されている。この溶湯収容容器78の内部には図示しない浸漬ヒータが挿入されており、該溶湯収容容器78に貯留されたAl−17〜23%Si−2.5%Cu系合金の溶湯Lは、前記浸漬ヒータによって加温されるとともに前記断熱材76によって保温される。
また、溶湯収容容器78の上端部の一部には溶湯を導入するための開口が設けられ、該開口は、蓋部材80で封止されている。
蓋部材80には2本の貫通孔が設けられており、この中の1本には、上記したように、前記供給管64を構成する逆L字管70が通されている。逆L字管70の先端部は、溶湯Lに浸漬されている。また、残余の1本には、図示しないアルゴンガス供給源に連結されたガス導入管82が通されており、該ガス導入管82は、溶湯Lの液面から若干離間している。
このように構成された遠心鋳造装置50によって予備成形体10を製造するに際しては、先ず、円筒状金型22の内周壁に塗型材が塗布される。その後、ローラ26の回転が開始され、これに追従して円筒状金型22が回転動作する。その一方で、前記アルゴンガス供給源からアルゴンガス(不活性ガス)が供給され、ガス導入管82を経由した後、溶湯保持炉66を構成する溶湯収容容器78の内部に放出される。
溶湯収容容器78内では、溶湯Lがアルゴンガスによって押圧される。アルゴンガスの圧力がさらに上昇すると、溶湯Lは、逆L字管70を上昇してフレキシブルチューブ68を経由した後、注湯管52に到達する。このように、本実施の形態においては、不活性ガスで溶湯Lを押圧することで溶湯保持炉66から円筒状金型22へ移液するようにしているので、大気を巻き込み難く、勿論、不活性ガスも巻き込み難い。
図9に示すように、注湯管52は、その先端が円盤状閉塞部材30の近傍に位置するまで円筒状金型22の内部に挿入されている。このため、溶湯Lは円盤状閉塞部材30の近傍に導出され、その後、円環状枠体32側に向かって流動する。
溶湯Lが導出される間、円筒状金型22の回転動作が続行される。このため、溶湯Lは、図10に示すように、遠心力の作用によって円筒状金型22の内周壁に偏在して外側円筒形状体14を形成する。外側円筒形状体14の厚みが0.5〜2.0mmの範囲内となる量の溶湯Lが供給されると、該溶湯Lの供給が一旦停止される。
そして、外側円筒形状体14の温度が状態図の液相−固相線温度以下となった直後、溶湯Lの導入を再開して内側円筒形状体12を形成する。なお、この導入再開に先立ち、棒状ヒータ54を予め発熱させておく。棒状ヒータ54の総発熱量は、例えば、約30kWに設定すればよい。
この場合、溶湯Lは、予備成形体10の最終的な厚みが5〜6mmの範囲内となる量で供給され、その結果、棒状ヒータ54と予備成形体10の内周壁とのクリアランスは約5mmとなる。上記したように、溶湯Lが大気やその他のガスを巻き込んだとしてもその量は極めて僅かであるので、予備成形体10には気泡(内部欠陥)が生じ難い。なお、前記クリアランスが5mmである場合、巻き込み量は極めて微量であることが本発明者らによって確認されている。
次に、注湯管52が円筒状金型22の内部に滞在した状態で溶湯Lの冷却固化が行われる。上記したように棒状ヒータ54が予め発熱されているため、冷却固化の最中、内側円筒形状体12の内周壁は棒状ヒータ54によって加温されることになる。その一方で、内側円筒形状体12の外周壁は、先に固化した外側円筒形状体14に接触している。従って、内側円筒形状体12における冷却速度は、外周壁側で大きく且つ内周壁側で小さくなる。
内側円筒形状体12にこのような熱勾配が生じることにより、仮に溶湯Lにアルゴンガスが巻き込まれて気泡が生じたとしても、この気泡は、外周壁側に比して冷却速度が小さく固化に時間を要する内周壁側に移動することができる。
一方、外周壁側では冷却速度が大きいので、初晶Siが大きく成長して粗大化することが抑制される。すなわち、本実施の形態によれば、外周壁側に微細な初晶Siが分散し、且つ内周壁側に欠陥が集中した内側円筒形状体12が得られる。
次に、溶湯保持炉66に力を付与し、これにより該溶湯保持炉66を案内レール74に沿って円筒状金型22から離間する方向に変位させる。勿論、この際には、溶湯保持炉66の底面に設けられた車輪72が回転する。
上記した溶湯保持炉66の変位に追従して、注湯管52及び棒状ヒータ54が円筒状金型22の外部に導出される。また、溶湯保持炉66は、最終的に溶湯補給ステーションまで変位され、変位停止後に溶湯収容容器78に溶湯Lが補給される。
次に、円筒状金型22の一端部から円環状枠体32を取り外した後、この端部側から予備成形体10を引き抜いて塗型材とともに取り出す。その後、該予備成形体10の外周壁に対してショットブラスト処理等を施して塗型材を除去し、さらに、削り出しを内周壁側から行えば、欠陥が集中した内周壁側が除去され、且つ微細な初晶Siが略均等に分散した外周壁側が残留する。すなわち、内部欠陥が極めて少なく、且つ微細な初晶Siに富むために高強度で且つ耐摩耗性に優れたシリンダスリーブが得られる。勿論、このシリンダスリーブの外周壁には、塗型材の表面の凹凸が転写されることでスパイニーが形成されている。
なお、内側円筒形状体12及び外側円筒形状体14の双方の材質をAl−17〜23%Si−2.5%Cu系合金とする場合、両者の成分組成を厳密に一致させる必要は特にない。すなわち、例えば、A390相当材は、Siが17〜18%であるアルミニウム合金であるが、Siが17%であるA390相当材からなる外側円筒形状体14を設け、且つSiが18%であるA390相当材からなる内側円筒形状体12を設けるようにしてもよい。
また、上記した実施の形態は、シリンダスリーブを構成する内側円筒形状体12及び外側円筒形状体14の材質としてA390相当材又はAC9A相当材を例示して説明しているが、両者の材質は特にこれに限定されるものではなく、ADC10やADC12等、別種のアルミニウム合金であってもよい。
さらに、外側円筒形状体14の厚みT2は、0.5〜2.0mmの範囲内に特に限定されるものではなく、内側円筒形状体12の冷却速度を制御して所望の組織が得られるように設定される。
さらにまた、中空部材としてシリンダスリーブの予備成形体10を例示して説明したが、特にこれに限定されるものではなく、如何なる部材であってもよい。
本実施の形態に係るシリンダスリーブを設けるための予備成形体の概略全体斜視図である。 図1に示す予備成形体を作製するための遠心鋳造装置の要部概略構成図である。 図2の遠心鋳造装置を用いて外側円筒形状体を設けている状態を示す長手方向断面説明図である。 外側円筒形状体が設けられた状態における遠心鋳造装置の直径方向断面説明図である。 図2の遠心鋳造装置を用いて内側円筒形状体を設けている状態を示す長手方向断面説明図である。 内側円筒形状体が設けられた状態における遠心鋳造装置の直径方向断面説明図である。 別の遠心鋳造装置の要部概略構成図である。 図7の遠心鋳造装置を構成する注湯管及び溶湯保持炉の概略構成を示す一部縦断面要部構成説明図である。 図7の遠心鋳造装置を構成する円筒状金型に溶湯の導入を開始した状態を示す円筒状金型の長手方向に沿う断面説明図である。 円筒形状体を内周壁側から棒状ヒータで加温している状態を説明する円筒状金型の長手方向に沿う断面説明図である。
符号の説明
10…予備成形体 12…内側円筒形状体
14…外側円筒形状体 20、50…遠心鋳造装置
22…円筒状金型 26…ローラ
36…トラフ 38、52…注湯管
40…ポット 54…棒状ヒータ
64…供給管 66…溶湯保持炉
72…車輪 74…案内レール
76…断熱材 78…溶湯収容容器
82…ガス導入管 L…溶湯

Claims (5)

  1. 略円筒体形状をなす積層型の中空部材であって、
    外側円筒形状体及び内側円筒形状体を外周側からこの順序で有し、
    前記内側円筒形状体と前記外側円筒形状体とが互いに同一種のAl−Si系合金であり、
    内側円筒形状体の金属組織中の初晶Siの平均粒径が35μm以下であることを特徴とする中空部材。
  2. 請求項1記載の中空部材において、当該中空部材は、内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブであることを特徴とする中空部材。
  3. 回転する円筒状金型に溶湯を供給して遠心鋳造により略円筒体形状をなす積層型の中空部材を作製する中空部材の製造方法であって、
    回転する円筒状金型にAl−Si系合金の溶湯を供給して遠心鋳造により外側円筒形状体を設ける工程と、
    前記円筒状金型を回転させながら、前記溶湯と同一種のAl−Si系合金からなる溶湯を前記外側円筒形状体の内方に供給して遠心鋳造により内側円筒形状体を設け、積層型の予備成形体とする工程と、
    を有することを特徴とする中空部材の製造方法。
  4. 請求項記載の製造方法において、前記外側円筒形状体の厚みを0.5〜2.0mmとし、且つ該外側円筒形状体の温度が状態図の液相−固相線温度以下となった後に前記内側円筒形状体となる溶湯を導入することを特徴とする中空部材の製造方法。
  5. 請求項又は記載の製造方法において、さらに、前記予備成形体の内周壁側から削り出しを行い、内燃機関を構成するシリンダブロックのボア内に配設されるシリンダスリーブとする工程を有することを特徴とする中空部材の製造方法。
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