気相成長装置を用いて成膜を行なう場合、基板と、これを保持し、加熱するサセプタとが設けられた反応室内に、複数の原料ガスを導入する。これらの原料ガスが、加熱された基板上で熱分解反応を起こし、化合物やその固溶体結晶となる。これにより、基板上でエピタキシャル成長などの薄膜成長が行なわれる。
このような気相成長装置では、1回の成長でより多くの基板を処理するために複数の基板を保持するサセプタを備えることが求められる。これに伴い、サセプタに対応した大きさの反応室が必要となる。一方、薄膜成長は、複数の原料ガスが混合し、基板上で反応することによって行なわれる。したがって、各基板に対して均一な特性の薄膜を成長させるには、反応室内での各原料ガスの分布が均一になることが必要となる。
図17は、気相成長装置の一形態を示す断面図である。図17および以降に続く図中では、ガスの流れが矢印で示されている。
図17を参照して、気相成長装置100は、反応室101、サセプタ102およびガス導入管103を含む。サセプタ102は、円盤形状を有する。サセプタ102は、複数の基板104を保持する。複数の基板104は、周方向に配列されている。複数の基板104は、図示しない加熱装置により所定の温度に加熱される。サセプタ102は、図示しないモータにより回転する。
反応室101は、サセプタ102の形状に対応した円筒形状を有する。反応室101の中心には、ガス導入管103が接続されている。原料ガスは、ガス導入管103を通じて反応室101に導入され、反応室101内で気相反応を起こす。反応した後の原料ガスは、サセプタ102の外周に向かって流れ、図示しない排気装置により反応室101の外部へと排気される。
ガス導入管103は、中間多重管106と、中間多重管106から連なるガス方向転換部107とを含む。中間多重管106には、ガス供給部105が接続されている。中間多重管106は、ガス供給部105から流入した複数種類の原料ガスを層別に流す。ガス方向転換部107は、中間多重管106を通過してきた原料ガスの流れを、サセプタ102の外周方向に向かう放射状の流れに変更させる。ガス方向転換部107は、ガス出口108を含む。ガス方向転換部107に流れる原料ガスは、ガス出口108を通じて反応室101に導入される。ガス供給部105は、原料ガスが中間多重管106内のガス流れと平行以外の方向(たとえば、中間多重管106内のガス流れに対して直角方向)から中間多重管106に流入するように、中間多重管106に接続されている。
図18は、図17中の気相成長装置で生じる流速分布の一例を示す図である。図19は、図17中の気相成長装置で生じる流速分布の別の例を示す図である。図中では、原料ガスの流速が矢印の太さで表わされており、矢印が太いほど流速が大きいことを表わす。
図17から図19を参照して、気相成長装置100においては、ガス導入管103を通じて反応室101内に導入される原料ガスの流れに、下記に説明するような乱れが生じる。
中間多重管106内の原料ガスの流れ方向と、中間多重管106に対するガス供給部105の接続方向とが異なる場合、ガス供給部105から中間多重管106に流入する原料ガスの流れには、中間多重管106に対するガス供給部105の接続方向のベクトル成分が残る。このため、ガス方向転換部107から反応室101に導入される原料ガスの流速には、上記ベクトル成分に起因する偏りが生じる。
より具体的には、図18に示すように、ガス供給部105が中間多重管106内のガス流れに直交する方向から中間多重管106に接続される場合、ガス出口108から反応室101に導入される原料ガスの流速は、ガス供給部105が接続される位相で相対的に小さくなり(図中の矢印155)、その反対側の位相で相対的に大きくなる(図中の矢印154)。また、図19に示すように、図18中のガス供給部105に対応するガス供給部105pと、ガス供給部105pとは反対側の位相に配置されるガス供給部105qとが中間多重管106に接続される場合、ガス供給部105pから中間多重管106に流入した原料ガスと、ガス供給部105qから中間多重管106に流入した原料ガスとが互いに衝突する。このため、ガス出口108から反応室101に導入される原料ガスの流速は、ガス供給部105pおよび105qがそれぞれ配置された位相で相対的に小さくなり(図中の矢印164)、その位相から90°ずれた位相で相対的に大きくなる(図中の矢印165)。
このように原料ガスの流速に偏りが発生すると、反応室101において原料ガスの流れに偏りが生じる。このため、気相反応が不均一となり、基板上に成長する薄膜の特性に大きなばらつきが現れる。したがって、薄膜の特性のばらつきを低減させるためには、原料ガスの流れをガス導入管103内で整え、サセプタ102の外周方向に向かう原料ガスの流速を、ガス出口108の全周に渡って均一にする必要がある。
これに対して、原料ガスの流れを整える方法としては、(1)中間多重管106に接続される原料ガス供給の配管、つまりガス供給部105の数を増やす方法、(2)中間多重管106の全長を長くすることによって、原料ガスが中間多重管106を流れる間に流れを均等化させる方法、(3)中間多重管106の上方にバッファタンクを設け、そのバッファタンクに原料ガスを供給し、流れの偏りを抑えた後、中間多重管106に流す方法などが考えられる。
しかしながら、これらの原料ガスの整流手段においては、それぞれ以下に説明する課題がある。(1)については、多数の配管が必要となるため、気相成長装置の配管構造が複雑になる。(2)および(3)については、ガス導入管103に全長の長い管が必要となる、あるいはバッファタンクが必要となるため、装置の大型化が避けられない。さらに、原料ガス種の切り替え時に、ガス導入管103に切り替え前の原料ガスが滞留し、原料ガス種の切り替えがスムーズに実行されないという問題がある。このような問題は、たとえば、化合物半導体における発光素子用の成膜時のような、多層膜を成膜する際に、異なる種類の成膜の切り替えに悪影響を及ぼす。
一方、上述の特許文献1では、ガス供給ヘッドの管径内において反応ガスがサイド(水平)フローに変換される途中に、整流板が配置されている。しかしながら、特許文献1では、整流板が反応ガスが円周方向に放射状に拡散しながら流れる場所に配置されるため、局所的な整流効果は得られるものの、ガス供給ヘッド内のガス流れの全体的な偏りを整える効果は得られない。また、ガス流れを変更する部位の構造は複雑になるため、その部位に整流板を設けるには、ガス供給ヘッドの製作上困難が伴う。
また、上述の特許文献2では、ガス噴き出し口を有する拡散板が、サセプタの上方に配置されている。しかしながら、特許文献2では、複数種類の原料ガスが混合した後の経路上に拡散板が配置されるため、原料ガスの反応による生成物が整流板に付着するおそれがある。この場合、整流板のクリーニングが必要になるなどして、装置の運用が煩雑になる。
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、複数の基板に対して均一な特性の薄膜が形成される気相成長装置および気相成長方法を提供することである。
この発明に従った気相成長装置は、反応室と、反応室に設置されるサセプタと、反応室にガスを導入するガス導入管とを備える。サセプタは、複数の基板を保持する周辺部と、周辺部に取り囲まれた中心部とを含む。ガス導入管は、複数種類のガスを互いに分離して流す多重管構造を有する。ガス導入管は、中心部に向けてガスを流すガス流通部と、ガス流通部に流れるガスを方向転換させ、中心部から周辺部に向かう方向に流すガス方向転換部とを含む。ガスは、ガス流通部におけるガスの流れ方向とは異なる方向からガス流通部に流入する。気相成長装置は、ガス流通部に配置される整流部材をさらに備える。ガス流通部は、ガスが流入する第1部分と、第1部分に接続され、ガス方向転換部に連なる第2部分とを含む。第1部分と第2部分との接続部分に、整流部材が固定されている。
このように構成された気相成長装置によれば、ガス流通部へのガスの流入方向と、ガス流通部におけるガスの流れ方向との不一致に起因したガス流れの乱れを、整流部材によって抑制する。これにより、ガス導入管から反応室に均一な流速分布を有するガスを導入し、複数の基板に対して均一な特性の薄膜を成長させることができる。また、第1部分と第2部分との接続部分に整流部材が固定されるため、より簡易な構成で、整流部材をガス流通部に設けることができる。
また好ましくは、整流部材は、ガス流れに直交する平面内のガスの流量分布の偏りを緩和するように設けられる。このように構成された気相成長装置によれば、ガス流通部にガスの流量分布の偏りを緩和する整流部材を設けることによって、上記効果を奏することができる。
また好ましくは、ガスが、中心部を中心とする第1位相からガス流通部に流入し、第1位相の反対側の第2位相から流入しない場合に、整流部材は、第1位相で相対的に小さく、第2位相で相対的に大きくなるガスの流量分布の偏りを緩和するように設けられる。このように構成された気相成長装置によれば、整流部材によって、第1位相と第2位相との間で生じるガスの流量分布の偏りを緩和する。
また好ましくは、ガスが、中心部を中心とする第1位相からガス流通部に流入し、第1位相の反対側の第2位相からガス流通部に流入する場合に、整流部材は、第1位相および第2位相で相対的に小さく、第1位相および第2位相からずれた位相で相対的に大きくなるガスの流量分布の偏りを緩和するように設けられる。このように構成された気相成長装置によれば、整流部材によって、第1位相および第2位相と、これらの位相からずれた位相との間で生じるガスの流量分布の偏りを緩和する。
また好ましくは、整流部材は、ガスの流路面積、ガスの流れ方向およびガス流れが受ける抵抗の大きさの少なくともいずれか1つを制御することによって、ガスの流量分布の偏りを緩和する。このように構成された気相成長装置によれば、ガスの流量分布を自在に制御することができる。
この発明に従った気相成長方法は、上述のいずれかに記載の気相成長装置を用いて、複数の基板上に薄膜を成長させる。このように構成された気相成長方法によれば、複数の基板に対して均一な特性の薄膜を成長させることができる。
以上説明したように、この発明に従えば、複数の基板に対して均一な特性の薄膜が形成される気相成長装置および気相成長方法を提供することができる。
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における気相成長装置を示す断面図である。図1を参照して、気相成長装置10では、反応室11に導入された原料ガスAおよび原料ガスBの気相反応により、基板25上に結晶薄膜を形成する。押さえガスCは、反応室11において原料ガスAおよび原料ガスBをサセプタ22上に留める役割を果たす。同時に、押さえガスCは、サセプタ22に対向する反応室11の壁面11cに、生成物が付着することを防ぐ役割を果たす。
気相成長装置10は、下記の構成を備える。なお、図示されていないが、気相成長装置10は、ガス供給装置および排気装置を含む。
気相成長装置10は、反応室11と、サセプタ22と、ガス導入管13とを含む。反応室11は、大気と遮断されている。反応室11の内部で原料ガスAおよび原料ガスBが気相反応を起こすことによって、基板25に対して成膜が行なわれる。反応室11の内部には、サセプタ22とガス導入管13の一部とが配置されている。サセプタ22は、円盤形状を有する。反応室11は、サセプタ22の形状に対応した円筒形を有する。
図2は、図1中のサセプタの上面を示す斜視図である。図1および図2を参照して、反応室11には、複数の基板25が収容されている。複数の基板25は、サセプタ22の上面に配置されている。サセプタ22は、複数の基板25を保持する。
サセプタ22は、周辺部22sと中心部22tとを含む。周辺部22sは、環状に延在する領域に形成されている。中心部22tは、周辺部22sに取り囲まれた領域に形成されている。複数の基板25は、周辺部22sに配置されている。複数の基板25は、周方向に並べられている。複数の基板25は、互いに間隔を設けて配置されている。複数の基板25は、サセプタ22の円周方向に沿って環状に並んで配置されている。なお、複数の基板25を周辺部22sに配置するレイアウトは、図中に示すものに限られず、適宜変更される。
気相成長装置10は、基板加熱用ヒータ26を含む。基板加熱用ヒータ26は、サセプタ22によって保持された複数の基板25を、所定の温度に加熱する。基板加熱用ヒータ26には、ヒータ用電源装置、温度センサ、温度制御装置が接続されている。サセプタ22は、回転軸27を介して回転駆動機構としてのモータ28に接続されている。基板25への成膜時、モータ28が駆動することによってサセプタ22が回転する。
気相成長装置10は、ガス排出部24を含む。ガス排出部24には、図示しない排気装置が接続されている。ガス排出部24は、サセプタ22の周辺部22sの外周上に設けられている。図示しない排気装置が駆動することにより、気相反応後のガスがガス排出部24を通じて反応室11の外部に排出される。
ガス導入管13は、反応室11の中央部に配置されている。ガス導入管13は、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCを反応室11の内部に導入する。ガス導入管13は、複数種類のガスを層別に流す多重管構造を有する。本実施の形態では、2種類の原料ガスと1種類のパージガスとが使用されるため、ガス導入管13は、各ガスを互いに接触させないように3層構造を有する。
ガス導入管13は、互いに区画されたガス流路31、ガス流路32およびガス流路33を形成する。ガス流路31、ガス流路32およびガス流路33には、それぞれ原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCが流通する。ガス流路31は、ガス導入管13が有する多重管構造の中心に形成されている。ガス流路32は、ガス流路31の外周上に形成されている。ガス流路33は、さらにガス流路32の外周上に形成されている。
ガス導入管13は、中間多重管16と、ガス方向転換部17とを含む。中間多重管16は、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCを、図1中の上から下に向けて流す。中間多重管16は、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCを、サセプタ22の中心部22tに向けて流す。中間多重管16は、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCを一方向に流す。中間多重管16は、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCを、周方向に並べられた複数の基板25の中心に向けて流す。
ガス方向転換部17は、中間多重管16から連なって形成されている。ガス方向転換部17は、サセプタ22の直上に配置されている。ガス方向転換部17の一部が、反応室11の内部に配置されている。ガス方向転換部17は、滑らかな曲線で構成されたラッパ状の形状を有する。ガス方向転換部17は、ガス出口18を含む。ガス出口18は、反応室11に開口する。ガス出口18は、環状に延在する。ガス方向転換部17は、中間多重管16に流通するガス流れを、サセプタ22の中心部22tから周辺部22sに向かう方向に変更させる。ガス方向転換部17は、中間多重管16に流通するガス流れを、サセプタ22の周辺部22sに向かう放射状の流れに変更させる。
原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCは、ガス出口18を通じてガス方向転換部17から反応室11に導入される。反応室11に導入された原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCは、サセプタ22の外周に向けて放射状に流れる。
気相成長装置10は、ガス供給部15を含む。ガス供給部15は、ガス入口14を含む。ガス入口14は、図示しないガス供給装置から延びる配管に接続されている。ガス供給部15は、中間多重管16に接続されている。原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCが供給される3つのガス供給部15が、それぞれ、ガス流路31、ガス流路32およびガス流路33に連通するように中間多重管16に接続されている。ガス供給装置から供給される原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCは、ガス供給部15を通じて中間多重管16に流入する。
ガス供給部15は、中間多重管16におけるガスの流れ方向に直交する方向から中間多重管16に接続されている。このような構成により、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCは、中間多重管16におけるガスの流れ方向とは異なる方向、本実施の形態では、中間多重管16におけるガスの流れ方向に直交する方向から中間多重管16に流入する。
図3は、図1中のIII−III線上に沿ったガス供給管の断面図である。図1から図3を参照して、本実施の形態では、中心部22tを中心とする位相X1にガス供給部15が配置されている。
このような気相成長装置10においては、ガス供給装置から配管を通ってガス入口14に到達したガスは、図3中の矢印36に示す方向の流れを持って中間多重管16に流入する。中間多重管16に入ったところでガスの流れは90度下向きに変わり管の中を流れていく。この場合、中心部22tに向かって流れる中間多重管16内のガス流れが、中間多重管16に流入する際の流れ方向成分を保持するため、中間多重管16において、ガス流れに直交する平面内の原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCの流量分布にそれぞれ偏りが生じる。具体的には、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCの各流量分布は、位相X1で相対的に小さくなり、中心部22tに対して位相X1の反対側の位相X2で相対的に大きくなる。
気相成長装置10は、整流板41を含む。整流板41は、中間多重管16に配置されている。整流板41は、中間多重管16の断面形状に対応した円盤状の板である。整流板41には、複数のガス流通孔42が形成されている。整流板41は、中間多重管16におけるガスの流れ方向に直交する平面内で延在する。中間多重管16を流通するガスの全てが、ガス流通孔42を通過する。ガス流通孔42は、円形の開口面を有する。また、ガス流通孔42は、円形以外の形状、たとえば四角形等の多角形の開口面を有してもよい。
整流板41は、中間多重管16における上記流量分布の偏りを緩和させるように設けられている。その具体的な形態について説明すると、ガス流路31〜33の各流路において、ガス流通孔42の数は、位相X1で相対的に多く、位相X2で相対的に少ない。このような構成により、整流板41が配置された平面において、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCの流路面積が、位相X1で相対的に大きくなり、位相X2で相対的に小さくなる。この結果、原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCの上記流量分布の偏りがそれぞれ緩和される。
このように中間多重管16に整流板41を設けることによって、ガスが中間多重管16に流入する際の流れ方向成分が抑制される。整流板41を通過したガスは、ガス方向転換部17を経てサセプタ22の周辺部22sに向けて放射状に流れる。このとき、整流板41により流れが整えられたガス流れは、ガス出口18の全周に渡って流速が均一となる。
この発明の実施の形態1における気相成長装置10は、反応室11と、反応室11に設置されるサセプタ22と、反応室11にガスとしての原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCを導入するガス導入管13とを備える。サセプタ22は、複数の基板25を保持する周辺部22sと、周辺部22sに取り囲まれた中心部22tとを含む。ガス導入管13は、複数種類のガスを互いに分離して流す多重管構造を有する。ガス導入管13は、中心部22tに向けてガスを流すガス流通部としての中間多重管16と、中間多重管16に流れるガスを方向転換させ、中心部22tから周辺部22sに向かう方向に流すガス方向転換部17とを含む。ガスは、中間多重管16におけるガスの流れ方向とは異なる方向から中間多重管16に流入する。気相成長装置10は、中間多重管16に配置される整流部材としての整流板41をさらに備える。
この発明の実施の形態1における気相成長方法は、気相成長装置10を用いて、複数の基板25上に薄膜を成長させる。
このように構成された、この発明の実施の形態1における気相成長装置10および気相成長方法によれば、反応室11に導入されるガスの流速が均一であるため、複数の基板25間で起こる気相反応も均一となる。このため、基板25上に成膜される薄膜の特性を複数の基板25間で均一化できる。これにより、高い歩留まりで効率の良い成膜工程を実現できる。また、整流板41によって薄膜の特性の均一性が確保されるため、中間多重管16の全長を短くできる。これにより、装置の小型化を図ることができる。また、原料ガス種の切り替えを行なう場合であっても、中間多重管16におけるガス滞留を最小化し、高品質な成膜が可能となる。
図4は、図3中の整流板の変形例を示す断面図である。図中では、説明を簡単にするため、ガス流路31〜33のうちガス流路32の断面のみが示されている。図4を参照して、本変形例では、ガス流通孔42の数は位相X1および位相X2の間で等しいが、ガス流通孔42の開口面積が、位相X1で相対的に大きく、位相X2で相対的に小さい。このような構成によっても、上記と同様の効果を得ることができる。
図1中では、ガス方向転換部17が滑らかな曲線により構成されるラッパ形状を有しているが、ガス方向転換部の形状はこれに限定されない。たとえば、ガス流れを中間多重管16の先に設けた平板に衝突させ、流れの向きを平板に平行な方向に変えるような構成にしてもよい。
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2における気相成長装置のガス導入管を示す分解組み立て図である。本実施の形態における気相成長装置は、実施の形態1における気相成長装置10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
図5を参照して、本実施の形態では、中間多重管16が、第1部分としての上流部16mと第2部分としての下流部16nとを接いで構成されている。上流部16mには、ガス供給部15が接続されている。下流部16nは、ガス流れ変換部17に連なる。整流板41は、上流部16mと下流部16nとの継ぎ目に固定されている。
図6は、図5中の2点鎖線VIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。図6を参照して、上流部16m、下流部16nおよび整流板41の固定構造について説明する。上流部16mおよび下流部16nは、フランジ部16fを含む。整流板41は、上流部16mおよび下流部16nのフランジ部16fに両側から挟持されるフランジ部41fを含む。フランジ部16fおよび41fには、ボルト62が挿通されるボルト孔が形成されている。整流板41は、ガス流通孔42が形成される整流部41hと、上流部16mおよび下流部16nと接合する接合部41gとを含む。整流板41は、上流部16mおよび下流部16nに両側から挟持された状態で、ボルト62およびナット63によって中間多重管16に固定されている。
接合部41gと上流部16mおよび下流部16nとの間には、それぞれシール部材61が配置されている。シール部材61には、ゴム、樹脂、金属などを材料とするOリングやガスケットが用いられる。このような構成により、各層に流れるガスが上流部16mと下流部16nとの継ぎ目から漏れることを防止できる。
このように構成された、この発明の実施の形態2における気相成長装置によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。加えて、本実施の形態では、1本の中間多重管の内部に整流板41を設ける場合と比較して、簡易な構成で整流板41を設けることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、図3中の整流板41の各種変形例について説明を行なう。なお、本実施の形態で参照する図では、説明を簡単にするため、ガス流路31〜33のうちガス流路31のみが示されている。
図7は、図3中の整流板の第1変形例を示す断面図である。図7を参照して、本変形例では、気相成長装置は、整流板41に替えて整流板71を含む。整流板71には、複数のガス流通孔72が形成されている。複数のガス流通孔72のうちのガス流通孔72rは、ガス流れの上流側から下流側に向かうに従って位相X2から位相X1に近接するように傾斜して延びる。ガス流通孔72rの数は、位相X2側で相対的に多く、位相X1側で相対的に少ない。このような構成によれば、ガスの流れ方向を制御することによって、中間多重管16におけるガスの流量分布の偏りが緩和される。
図8は、図3中の整流板の第2変形例を示す断面図である。図8を参照して、本変形例では、気相成長装置は、整流板41に替えて整流板73を含む。整流板73には、複数のガス流通孔74が形成されている。位相X2側に配置されたガス流通孔74の開口幅Dは、位相X1側に配置されたガス流通孔74の開口幅Dよりも大きい。このような構成によれば、整流板73によって、位相X2におけるガス流れがより大きく絞られる。このため、ガスの流路面積の制御を通じて、中間多重管16におけるガスの流量分布が緩和される。
図9は、図3中の整流板の第3変形例を示す断面図である。図10は、図9中の整流部材を示す斜視図である。図9および図10を参照して、本変形例では、気相成長装置は、整流板41に替えて整流部材76を含む。整流部材76は、衝立(ついたて)76a,76b,76c,76d,76eから構成されている。衝立76a〜76eは、位相X1側から位相X2に向けて順に配置されている。衝立76a〜76eは、中間多重管16におけるガスの流れ方向に沿って延在する。衝立76a〜76eは、互いに間隔を隔てて配置されており、その間をガスが流れる。ガスの流れ方向に沿った衝立76a〜76eの全長をLとするとき、位相X1側に配置された衝立76aの全長Lよりも、位相X2側に配置された衝立76eの全長Lの方が大きい。
このような構成により、中間多重管16を流通するガス流れが整流部材76から受ける抵抗の大きさは、位相X1側よりも位相X2側の方で大きくなる。これにより、ガス流れが整流部材76から受ける抵抗の制御を通じて、中間多重管16におけるガスの流量分布が緩和される。
図11は、図3中の整流板の第4変形例を示す断面図である。図12は、図11中のXII−XII線上に沿った中間多重管の断面図である。図13は、図11中の整流部材の部品図である。
図11から図13を参照して、本変形例では、気相成長装置は、整流板41に替えて整流部材81を含む。整流部材81は、格子状に組み合わされた複数のX板81xと複数のY板81yとから構成されている。X板81xおよびY板81yは、それぞれ、図11中のx軸方向およびy軸方向に延在する。x軸方向は、位相X1と位相X2とを結ぶ方向に一致する。複数のX板81xは、互いに間隔を設けてy軸方向に配列されている。複数のY板81yは、互いに間隔を設けてx軸方向に配列されている。
X板81xには、複数の溝82が形成されている。Y板81yには、そのY板81yに交差する複数のX板81xの溝82がそれぞれ嵌め合わされる複数の溝83が形成されている。溝82が中間多重管16におけるガス流れに対して傾斜して形成されることにより、位相X2側の端に配置されたY板81yは、ガス流れの上流側から下流側に向かうに連れて位相X2から位相1に近接する方向に傾くように設けられる。位相X2側から位相X1側に配列されたY板81yの傾きは、位相X1に向かうほど小さくなる。位相X1側の端に配置されるY板81yは、ガスの流れ方向に沿って延在するように設けられる。
このような構成によれば、ガスの流れ方向を制御することによって、中間多重管16におけるガスの流量分布の偏りが緩和される。図8に示す形態と比較して、ガスが流通する孔の開口率を大きく設定できるため、整流部材81で受ける抵抗を小さくできる。このため、原料ガス種を切り替えて成膜する工程に好適である。
このように構成された、この発明の実施の形態3における気相成長装置によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
(実施の形態4)
図14は、この発明の実施の形態4における気相成長装置のガス導入管を示す断面図である。図15は、図14中のXV−XV線上に沿ったガス導入管の断面図である。図15中では、説明を簡単にするため、ガス流路31〜33のうちガス流路32の断面のみが示されている。本実施の形態における気相成長装置は、実施の形態1における気相成長装置10と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
図14および図15を参照して、本実施の形態では、気相成長装置10が、ガス導入部15pおよび15qを含む。ガス導入部15pは、位相X1に配置され、ガス導入部15qは、位相X1とは反対側の位相X2に配置されている。つまり、本実施の形態では、ガスが互いに対向する位相X1および位相X2から中間多重管16に流入する。
この場合、ガス導入部15pおよび15qから中間多重管16に入った原料ガスは、ガス導入部15pとガス導入部15qとの中間付近で衝突する。この衝突により、ガスの流れ方向は、ガスの流入方向の直交方向(図15中の位相X3および位相X4方向)に変化する。
これに対して、本実施の形態では、中間多重管16に整流板91が配置されている。整流板91には、複数のガス流通孔92が形成されている。ガス流路31〜33の各流路において、ガス流通孔92の数は、位相X1および位相X2で相対的に多く、位相X3および位相X4で相対的に少ない。このような構成により、中間多重管16における原料ガスA、原料ガスBおよび押さえガスCの流量分布の偏りがそれぞれ緩和される。
図16は、ガスの流入位置とガスの流量が大きくなる位置との関係を模式的に表わす図である。図16(A)を参照して、ガスが等間隔に配置された位相A1,B1,C1から中間多重管16に流入する場合、位相A1と位相B1との中間にある位相U1、位相B1と位相C1との中間にある位相U2、位相C1と位相A1との中間にある位相U3の各位置で、ガスの流量が大きくなる。
図16(B)を参照して、ガスが等間隔に配置された位相A2,B2,C2,D2から中間多重管16に流入する場合、位相A2と位相B2との中間にある位相V1、位相B2と位相C2との中間にある位相V2、位相C2と位相D2との中間にある位相V3、位相D2と位相A2との中間にある位相V4の各位置で、ガスの流量が大きくなる。
図16(C)を参照して、ガスが位相A3と、位相A3の両側に90°ずれて配置された位相B3および位相C3から中間多重管16に流入する場合、位相A3と位相B3との中間にある位相W1、位相A3と位相C3との中間にある位相W3、位相A3の反対側に配置される位相W2の各位置で、ガスの流量が大きくなる。
図16(A)〜図16(C)の各気相成長装置において、中間多重管16における流量分布の偏りを緩和させるように整流部材が設けられる。
図16中において、各流入位置から流入するガス流量が均等である場合は、隣接する流入位置からの距離がほぼ等距離にある位相でガス流量が多くなる、という流量分布の偏りが発生する。このため、流量分布の偏りを緩和すべく、その位相付近の上流から下流へのガス流通を相対的に減少させる整流分布を有する整流部材が設けられる。
一方、ガスの流入位置が単数である場合には、流入位置の反対側にある位相でガス流量が多くなる。この場合、その流入位置に隣接する流入位置はそれ自身であるから、その流入位置から時計回りの向きおよび半時計回りの向きに距離がほぼ等しくなる位相で、ガス流量が多くなっていることになる。
この点は、多重管の最も内側に配置される最内管であっても、その外側に配置されるがゆえに、周方向の時計回りの向きと半時計回りの向きとのベクトルを有するガス流れに分かれる外管であっても、同様である。
但し、最内管では、流入位置から管内の中央部を通るガス流があるため、流入位置からほぼ等距離にある位相を中心とする周方向のガス流量分布は、最内管と外管とでは若干異なる。つまり、横軸を位相、縦軸を流量としたグラフを書くと、流入位置からほぼ等距離にある位相を中心とする山形の曲線が引かれるが、山形のピーク高さや裾野広さ、斜面の形などが、最内管と外管とで異なってくる。このため、それぞれの管のガス流量分布の傾向に応じた整流分布を持つ整流部材が用いられる。
なお、各流入位置から流入するガス流量が均等でない場合は、隣接する流入位置からの距離がほぼ等距離にある位相から、そのガス流量比等のバランスに応じて位置ずれした位相でガス流量が多くなる、という流量分布の偏りが発生する。このため、その位置ずれを考慮した整流分布を有する整流部材が用いられる。
このように構成された、この発明の実施の形態4における気相成長装置によれば、実施の形態1に記載の効果を同様に得ることができる。
なお、以上に説明した実施の形態1〜4においては、3層のガス流路で構成された多重管について述べたが、これ以外の層の数の多重管を構成してもよい。また、実施の形態1〜4における気相成長装置の構造を適宜組み合わせて、新たな気相成長装置を構成してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 気相成長装置、11 反応室、13 ガス導入管、16 中間多重管、16m 上流部、16n 下流部、17 ガス方向転換部、22 サセプタ、22s 周辺部、22t 中心部、25 基板、41,71,73 整流板、76,81 整流部材。