以下、本発明の実施例について図を参照して説明する。
[第1の実施例]
まず、本発明に係る第1の実施例について詳細に説明する。
<フローセルの構成>
図1〜図4に示すように、本実施例に係るフローセル10は、平面視略矩形の第1の基板11と、この第1の基板11上に配置される第2の基板13とから構成されている。これらを積層したフローセル10には、第2の基板13を貫通し試料溶液が導入される導入口14と、第1の基板11と第2の基板13との間に形成された2つの吸引ポンプ17と、この吸引ポンプ17と導入口14とを接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口14に接続し第1の基板11と第2の基板13との間に形成された測定流路15と、一端がこの測定流路15の他端に接続し第1の基板11と第2の基板13との間に形成された抵抗流路16とから構成されている。
≪第1の基板≫
第1の基板11は、例えばBK7などの光学ガラスから構成され、板厚が1mm程度で一辺が16mm程度の平面視略矩形の形状を有している。また、第1の基板11の上面、すなわち第1の基板11の第2の基板13側の表面には、蒸着、スパッタ、メッキ加工などによりAu層11aが設けられている。なお、Au層11aは、上記測定流路15に対応する部分のみに形成するようにしてもよい。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板13は、0.5〜5mm程度の厚さを有する例えばアクリルなどの基板から構成され、第1の基板11に対応した平面形状を有している。このような第2の基板13の一側寄りの略中央部には、貫通孔131が形成されている。また、第2の基板13の下面には、一端が貫通孔131に接続され上記一側とは反対側の他側に向かって延在する平面視略矩形の溝132と、この溝の他端に接続され他側近傍にかけて形成された蛇行溝133と、この蛇行溝133の両側に形成された2つの凹部134とが設けられている。
貫通孔131は、第1の基板の上面を底とする略円柱状の空間からなる導入口14を形成する。
溝132は、第1の基板11の上面とともに、略直方体状の空間からなる測定流路15を形成する。この測定流路15の長手方向に垂直な断面は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の寸法とされる。
蛇行溝133は、複数の屈曲部を有するクランク状の平面形状を有している。この屈曲部は、略円弧状に、すなわち曲線状になだらかに曲げられている。また、蛇行溝133の他端は、第2の基板13の上記他側近傍で分岐しており、それぞれ上記垂直な方向に沿って反対側に延在し隣接する凹部134に接続している。このような蛇行溝133は、第2の基板13と接することにより蛇行した抵抗流路16を形成する。この抵抗流路16は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の断面寸法とされる。
凹部134は、第2の基板13の下面から上面に向けて設けられた平面視略矩形の2つの空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部134aが形成されている。複数の突出部134aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この凹部134は、吸引ポンプとして作用する。このような凹部134は、平面視略矩形に形成され、上記一側寄りの端部および上記他側寄りの蛇行溝133の他端が接続されたのと反対側の角部に、第2の基板13を貫通する空気孔133b〜133eが形成されている。
突出部134aは、X方向およびY方向に沿ってそれぞれ所定間隔離間して規則的に並設されている。本実施例においては、図3に示すように、第2の基板13を第1の基板11上に配設したときに、突出部134aの第1の基板11側の端部134a−1は、第1の基板11と離間するように形成されている。この端部134a−1と基板11との間隔は、毛細管現象が発現する範囲とされる。
上述したような第2の基板13は、例えば、所定のパターンが形成された金型を用いた射出成形加工、レーザ加工、エンドミル等による切削加工などによって、作製することができる。
<フローセルの製造方法>
次に、本実施例に係るフローセル10の製造方法の一例について説明する。まず、第1の基板11上に第2の基板13を載置する。ここで、Au層11aを第1の基板11の一部のみに設けた場合、測定流路15を形成する溝132が上記Au層11aと当接するように、第1の基板11上に第2の基板13を載置する。
このように第1の基板11上に第2の基板13を載置すると、これらを互いに固定する。この固定方法としては、当接する第1の基板11と第2の基板13の縁部に接着剤を塗布したり、第1の基板11と第2の基板13の側部に互いに係合する係合手段を設けたり、第1の基板11と第2の基板13の側部に粘着テープなどを貼付したりすることが上げられる。これにより、第1の基板11と第2の基板13が互いに固定され、導入口14,測定流路15,抵抗流路16および吸引ポンプ17を備えたフローセル10が完成する。
<フローセルの動作>
次に、本実施例に係るフローセル10の動作について説明する。
まず、導入口14に試料溶液が注入されると、この試料溶液は、毛細管現象により測定流路15および抵抗流路16の順で進み、吸引ポンプ17に流入する。この吸引ポンプ17の内部は、複数の突出部134aが形成されているので、この突出部134aが形成されていない場合よりも単位体積当たりの表面積が大きくなっており、毛細管現象が発現する寸法となっている。したがって、吸引ポンプ17内部に流入した試料溶液は、その内部を進行していく。なお、この進行する速度は、突出部134aの外形や間隔などの凹部134の形状や試料溶液にかかる抵抗等によって変化する。
したがって、導入口14に注入された試料溶液は、測定流路15および抵抗流路16を通って吸引ポンプ17に流入し、この吸引ポンプ17内部を進行していく。
ここで、本実施例では、図3に示すように、突出部134aの端部134a−1が第1の基板11と接触していないので、その端部134a−1と第1の基板11との間に空隙が存在している。これにより、柱状部材が毛細管ポンプの空洞の天井と底面とをつなぐように形成された従来の場合よりも、突出部134aを短くした分だけ吸引ポンプ17内部の容積が大きくなるので、平面形状を大きくせずに吸引ポンプ17の容量を大きくすることができる。また、突出部134aの端部134a−1およびこの端部134a−1と当接していた第1の基板11が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食品や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸引ポンプ17内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部134aの端部134a−1が第1の基板11に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸引ポンプ17内部に詰まるのを防ぐことができ安定した動作を実現することができる。
ここで、突出部134aの間隔および端部134−1と第1の基板11との間隔は、吸引ポンプ17内部に侵入した液体に毛細管力が生じる大きさであれば、適宜自由に設定することができる。すなわち、図5A,図5Bに示すように、突出部134aの間隔をa,b、突出部134aのZ方向の長さをc、端部134−1と第1の基板11との間隔をdとすると、これらの値は、吸引ポンプ17内部の液体に毛細管力が働くのであれば、適宜自由に設定することができる。ここで、その液体に夾雑物が含まれる場合、上記値a〜dは、その夾雑物の大きさに応じて適宜設定される。もし、d=0で、液体が突出部134aの隙間のみを流れていく場合、その液体に突出部134aの間隔a,bよりも大きい物質(夾雑物)が含まれると、吸引ポンプ17内部で目詰まりが発生し、フローセル1が使用不可となってしまう。このような場合、間隔dの値をその夾雑物よりも大きくすることにより、目詰まりが起こるのを防ぐことができる。
一例として、液体として搾乳直後(ノンホモジナイズド)の牛乳を用いた場合、牛乳に含まれる最も大きい夾雑物である脂肪球の凝集体の大きさが40μm程度であるので、a=b=25μmとしてもd=100μmであれば、フローセル1は、目詰まりを起こさずに吸引することができる。また、血液の場合、血液中に含まれる最大の細胞である赤血球の大きさが7〜8μm程度であるので、a=b=5μmとしても、d=20μmとすれば、フローセル1は、目詰まりを起こさずに吸引することができる。
なお、本実施例では、溝132が平面視略矩形の形状を有し、かつ第2の基板13の略中央部に設けた場合を例に説明したが、溝132がAu層11a上を通過するのであれば、溝132の形状および設ける位置については上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。したがって、溝132により構成される測定流路15の形状および位置についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、貫通孔131が平面視略円形の形状を有する場合を例に説明したが、貫通孔131の形状は平面視略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、凹部134が平面視略矩形の形状を有する場合を例に説明したが、凹部134の平面形状は略矩形に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、凹部134内部に形成された突出部134aの形状についても、凹部134内部の表面積が増加するのであれば略円柱状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
なお、上述した本実施例において、凹部134を第2の基板13に設けた場合を例に説明したが、その凹部は、第1の基板11に設けるようにしてもよい。この場合、第1の基板11の上面側にその凹部を形成すればよい。このようにしても、上述したのと同等の作用効果を得ることができる。
また、本実施例において、抵抗流路16を設けた場合を例に説明したが、これは設けないようにしてもよい。
[第2の実施例]
次に、本発明に係る第2の実施例について、詳細に説明する。なお、本実施例は、上述した第1の実施例の第1の基板と第2の基板との間にさらにシート状部材を設けたものである。したがって、本実施例において、上述した第1の実施例と同等の構成要素については、同じ名称を付し、適宜説明を省略する。
<フローセルの構成>
図6〜図8に示すように、本実施例に係るフローセル20は、平面視略矩形の第1の基板21と、この第1の基板21上に配設されるシート状部材22と、このシート状部材22上に配設される第2の基板23とから構成されている。これらを積層したフローセル20には、第2の基板23を貫通し試料溶液が導入される導入口24と、シート状部材22と第2の基板23との間に形成された2つの吸引ポンプ27と、この吸引ポンプ27と導入口24とを接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口24に接続し第1の基板21と第2の基板23との間にあるシート状部材22内に形成された測定流路25と、一端がこの測定流路25の他端に接続しシート状部材22と第2の基板23との間に形成された抵抗流路26とから構成されている。
≪第1の基板≫
第1の基板21は、上述した第1の実施例の第1の基板11と同等の形状および構成を有し、上面には、Au層21aが選択的に設けられている。
≪シート状部材≫
シート状部材22は、10μm〜150μm程度の厚さを有する例えば公知の粘着テープなどから構成され、第1の基板21に対応した平面形状を有している。このようなシート状部材22には、略中央部に設けられた平面視略矩形のスリット221と、このスリット221の一端に接続された平面視略円形の開口部222とが形成されている。ここで、スリット221は、長手方向がシート状部材22の何れかの側部と略平行になるように形成されている。
上述したスリット221は、第1の基板21の上面および第2の基板23の下面とともに、略直方体状の空間からなる測定流路25を形成する。この測定流路25の長手方向に垂直な断面は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の寸法とされる。
このようなシート状部材22は、例えば、粘着テープをカッターやレーザなどで所望の形状に加工することにより、作製することができる。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板23は、上述した第1の実施例における第2の基板13から溝132を除いた構成を有し、一側寄りの略中央部には、貫通孔231が形成されている。また、第2の基板23の下面には、略中央から上記一側とは反対側の他側近傍にかけて形成された蛇行溝232と、この蛇行溝232の両側に形成された2つの凹部233とが設けられている。
貫通孔231は、開口部222と同等の平面形状に形成されている。
蛇行溝232は、複数の屈曲部を有し、上記一側と上記他側との距離方向に対して垂直な方向に繰り返し折り曲げられたクランク状の平面形状を有している。その屈曲部は、略円弧状に、すなわち曲線状になだらかに曲げられている。また、蛇行溝232の他端は、第2の基板23の上記他側近傍で分岐しており、それぞれ上記垂直な方向に沿って反対側に延在し隣接する凹部233に接続している。
凹部233は、第2の基板23の下面から上面に向けて設けられ、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部233aが設けられている。複数の突出部233aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この凹部233は、吸引ポンプとして作用する。このような凹部233は、平面視略矩形に形成され、上記一側寄りの端部および上記他側寄りの蛇行溝232の他端が接続されたのと反対側の角部に、第2の基板23を貫通する空気孔233b〜233eが形成されている。
上述した貫通孔231は、開口部222および第1の基板21の上面とともに、第1の基板21の上面を底とする略円柱状の空間からなる導入口24を形成する。
また、上述した蛇行溝232は、第2の基板23とシート状部材22とが接することにより蛇行した抵抗流路26を形成する。この抵抗流路26は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の断面寸法とされる。
また、上述した凹部233における突出部233aは、X方向およびY方向に沿ってそれぞれ所定間隔離間して規則的に並設されている。本実施例においては、図7に示すように、第2の基板23をシート状部材22上に配設したときに、突出部233aの第1の基板11側の端部233a−1はシート状部材22と離間するように形成されている。この端部233a−1とシート状部材22との間隔は、毛細管現象が発現する範囲とされる。
<フローセルの製造方法>
次に、本実施例に係るフローセル20の製造方法の一例について説明する。まず、第1の基板21上にシート状部材22を載置する。ここで、Au層21aを第1の基板21の一部のみに設けた場合、測定流路25を形成するスリット221が上記Au層21a上に位置するように、第1の基板21上にシート状部材22を載置する。
次に、貫通孔231と開口部222とが連続し、かつ蛇行溝232の一端がスリット221の他端内部に位置するように、シート状部材22上に第2の基板23を載置する。
このように第1の基板21、シート状部材22および第2の基板23を積層し、これらを第1の基板21の下面側と第2の基板13の上面側から押圧する。これにより、両面テープなどからなるシート状部材22を介して第1の基板21と第2の基板23が互いに固定され、導入口24,測定流路25,抵抗流路26および吸引ポンプ27を備えたフローセル20が完成する。
<フローセルの動作>
次に、本実施例に係るフローセル20の動作について説明する。
本実施例においても、上述した第1の実施例と同様、吸引ポンプ27内部に複数の突出部233aが形成されているので、導入口24に注入された試料溶液は、吸引ポンプ27に吸引されて、測定流路25および抵抗流路26を通過し、吸引ポンプ27に到達する。
ここで、本実施例においても、図7に示すように、突出部233aの端部233a−1がシート状部材22と接触していないので、その端部233a−1とシート状部材22との間に空隙が存在している。これにより、柱状部材が毛細管ポンプの空洞の天井と底面とをつなぐように形成された従来の場合よりも、突出部233aを短くした分だけ吸引ポンプ27内部の容積が大きくなるので、平面形状を大きくせずに吸引ポンプ27の容量を大きくすることができる。また、突出部233aの端部233a−1およびこの端部233a−1と当接していた第1の基板21が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食品や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸引ポンプ27内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部233aの端部233a−1が第1の基板11に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸引ポンプ17内部に詰まるのを防ぐことができ安定した動作を実現することができる。
なお、本実施例では、突出部233aを第2の基板23側に短く形成することにより、その端部233a−1とシート状部材22との間に空隙を形成するようにしたが、この空隙を形成する構成はこれに限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、図9,図10に示すフローセル30のように、シート状部材22に凹部233の平面形状に対応する開口223を形成するようにしてもよい。この場合、端部233a−1は、第2の基板13側に短くしなくても、その端部233a−1と第1の基板21との間に空隙が形成されるので、図6,図7で示したフローセル20と同様の作用効果を得ることができる。
また、図9,図10に示すフローセル30において、シート状部材22に形成されたスリット221は、第2の基板23に設けるようにしてもよい。この場合、測定流路25の深さは、第2の基板23にスリット221を彫り込む深さによって決まり、吸引ポンプ27の突出部233aの端部233a−1と第1の基板21との間隔は、シート状部材22の厚さによって決まる。したがって、測定流路25の深さと、端部233a−1と第1の基板21の間の空隙の間隔とは、それぞれ独立に設定できるので、それぞれをより容易に所望する大きさに形成することができる。
また、本実施例では、スリット221が平面視略矩形の形状を有し、かつシート状部材22の略中央部に設けた場合を例に説明したが、スリット221がAu層21a上を通過するのであれば、スリット221の形状および設ける位置については上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。したがって、スリット221により構成される測定流路25の形状および位置についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、開口部222が平面視略円形の形状を有する場合を例に説明したが、開口部222が第2の基板23の貫通孔231と連続する位置に存在するのであれば、開口部222の形状は平面視略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例において、抵抗流路26を設けた場合を例に説明したが、これは設けないようにしてもよい。
<フローセルの適用例>
ここで、上述した第1,第2の実施例に例示したフローセルの適用例について簡単に説明する。上述したフローセルは、よく知られた表面プラズモン共鳴現象を利用した測定に用いられる(文献5:特開2001−194298号公報、文献6:特開2002−214131号公報)。表面プラズモン共鳴現象を利用した測定は、測定対象の検体が接触した金属の表面における、エバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴を用いるものである。
この測定では、図11に示すように、光源9001から出射された光を入射側レンズ9002で集光してプリズム9003に入射させ、プリズム9003の測定部9004に密着させているフローセル9005のAu膜に照射する。このAuの薄膜の表面に検体が接触して配置され、Auの薄膜の裏面に、フローセル9005を透過してきた集光光が照射される。このようにして照射された集光光は、Auの薄膜の裏面で反射し、いわゆるCCDイメージセンサなどの撮像素子よりなる光検出部9006で強度(光強度)が測定され、上記共鳴が起こる角度で反射率が低くなる谷が観測される。
このような測定では、Au膜の表面(検出部側)に固定された抗体やDNA断片に、選択的に結合する検体の有無を検出するものであるが、検出部に試料溶液を配置した状態では、対象となる検体と抗体とが反応したことによる変化と、検出部に異物が沈降して堆積した状態による変化との区別がない。これに対し、検出部において試料溶液が流れているようにすることで、異物の沈降が抑制されるようになり、上述した反応による変化を選択的に検出できるようになる。
[第3の実施例]
次に、本発明に係る第3の実施例について詳細に説明する。
<フローセルの構成>
図12〜図16に示すように、本実施例に係るフローセル40は、平面視略矩形の第1の基板41と、この第1の基板41上に配設される第1のシート状部材42と、この第1のシート状部材42上に配設される第2の基板43と、この第2の基板43上に配設される第2のシート状部材44とから構成されている。これらを積層したフローセル40には、第1のシート状部材42,第2の基板43および第2のシート状部材44を貫通し試料溶液が導入される導入口45と、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された第1の吸引ポンプ48と、第2の基板43と第2のシート状部材44との間に形成された第2の吸引ポンプ49と、第1の吸引ポンプ48と導入口45と接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口45に接続し第1のシート状部材42内に形成され外部装置により測定光等が照射される測定流路46と、一端が測定流路46に他端が第1の吸引ポンプ48に接続し、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された抵抗流路47とから構成されている。
≪第1の基板≫
第1の基板41は、例えばBK7などの光学ガラスから構成され、板厚が1mm程度で一辺が16mm程度の平面視略矩形の形状を有している。また、第1の基板41の上面、すなわち第1の基板41の第1のシート状部材42側の表面には、蒸着、スパッタ、メッキ加工などによりAu層41aが設けられている。なお、Au層41aは、上記測定流路46に対応する部分のみに形成するようにしてもよい。
≪第1のシート状部材≫
第1のシート状部材42は、10μm〜150μm程度の厚さを有する例えば公知の粘着テープなどから構成され、第1の基板41に対応した平面形状を有している。このような第1のシート状部材42には、略中央部に設けられた平面視略矩形のスリット421と、このスリット421の一端に接続された平面視略円形の開口部422とが形成されている。ここで、スリット421は、長手方向が第1のシート状部材42の何れかの側部と略平行になるように形成されている。
上述したスリット421は、第1の基板41の上面および第2の基板43の下面とともに、略直方体状の空間からなる測定流路46を形成する。この測定流路46の長手方向に垂直な断面は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の寸法とされる。
このような第1のシート状部材42は、例えば、粘着テープをカッターやレーザなどで所望の形状に加工することにより、作製することができる。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板43は、0.5〜5mm程度の厚さを有する例えばアクリルなどの基板から構成され、第1の基板41および第1のシート状部材42に対応した平面形状を有している。このような第2の基板43の一側寄りの略中央部には、貫通孔431が形成されている。また、第2の基板43の下面には、略中央から上記一側とは反対側の他側近傍にかけて形成された蛇行溝432と、この蛇行溝432の両側に形成された2つの第1の空洞部433とが設けられている。また、第2の基板43の上面には、図16に示すように、貫通孔431の周囲に形成された第2の空洞部434が設けられている。
貫通孔431は、開口部422と同等の平面形状に形成されている。
蛇行溝432は、複数の屈曲部を有するクランク状の平面形状を有している。この屈曲部は、略円弧状に、すなわち曲線状になだらかに曲げられている。また、蛇行溝432の他端は、第2の基板43の上記他側近傍で分岐しており、それぞれ上記垂直な方向に沿って反対側に延在し隣接する第1の空洞部433に接続している。
第1の空洞部433は、第2の基板43の下面から上面に向けて設けられた平面視略矩形の2つの空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部433aが形成されている。複数の突出部433aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この第1の空洞部433は、第1の吸引ポンプ48として作用する。このような第1の空洞部433は、上記一側寄りの端部に、第1の空洞部433と第2の空洞部434とを連通する空気孔433b,433cが形成されている。また、上記他側寄りの蛇行溝432の他端が接続されたのと反対側の角部には、連通孔433d,433eが形成されている。
第2の空洞部434は、第2の基板43の上面から下面に向けて設けられた平面視略「コ」の字状の空洞からなり、この空洞内にはその底面から上方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部434aが設けられている。複数の突出部434aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この第2の空洞部434は、第2の吸引ポンプ49として作用する。このような第2の空洞部434は、第2の基板43の中央部の周囲を取り囲むように平面視略「コ」の字状に形成され、第2の基板43における上記一側寄りの両端部には、上記空気孔433b,433cの一端が接続されている。一方、上記他側寄りの角部には、連通孔433d,433eの一端が接続されている。
上述した貫通孔431は、第1の基板41の上面、開口部422および後述する第2のシート状部材44の開口部441とともに、第1の基板の上面を底とする略円柱状の空間からなる導入口45を形成する。
また、上述した蛇行溝432は、第2の基板43と第1のシート状部材42とが接することにより蛇行した抵抗流路47を形成する。この抵抗流路47は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の断面寸法とされる。
上述した連通孔433d,433eは、毛細管現象が発現する範囲の断面寸法とされる。一方、上述した空気孔433b,433cは、連通孔433d,433eよりも大きな断面寸法とされる。したがって、空気孔433b,433c内部では試料溶液に働く毛細管力が小さくなるので、試料溶液は、連通孔433d,433eを優先的に流れることとなる。
上述したような第2の基板43は、例えば、所定のパターンが形成された金型を用いた射出成形加工、レーザ加工、エンドミル等による切削加工などによって、作製することができる。
≪第2のシート状部材≫
第2のシート状部材44は、10μm〜150μm程度の厚さを有する例えば公知の粘着テープなどから構成され、第1の基板41、第1のシート状部材42および第2の基板43に対応した平面形状を有している。このような第2のシート状部材44には、上記一側寄りに設けられた平面視略円形の開口部441と、この開口部441の両側でかつ上記一側寄りに設けられた2つの平面視略矩形の孔部442とが形成されている。ここで、孔部442は、長手方向が上記一側の延在方向に沿って形成されており、空気孔433b,433cと同等の平面形状を有する。
このような第2のシート状部材44は、例えば、粘着テープをカッターやレーザなどで所望の形状に加工することにより、作製することができる。
<フローセルの製造方法>
次に、本実施例に係るフローセル40の製造方法の一例について説明する。まず、第1の基板41上に第1のシート状部材42を載置する。ここで、Au層41aを第1の基板41の一部のみに設けた場合、測定流路46を形成するスリット421が上記Au層41aと当接するように、第1の基板41上に第1のシート状部材42を載置する。
次に、貫通孔431と開口部422とが連続し、かつ蛇行溝432の一端がスリット421の他端内部に位置するように、第1のシート状部材42上に第2の基板43を載置する。
次に、開口部441と貫通孔431とが連続し、かつ孔部442が孔部433b、433cと連続するように、第2の基板43上に第2のシート状部材44を載置する。
このように第1の基板41,第1のシート状部材42,第2の基板43および第2のシート状部材44を積層すると、これらを第1の基板41の下面側と第2のシート状部材44の上面側から押圧する。これにより、両面テープなどからなる第1のシート状部材42を介して第1の基板41と第2の基板43が互いに固定されるとともに、第2のシート状部材44により第2の基板43の上面が覆われることによって、導入口45,測定流路46,抵抗流路47,第1の吸引ポンプ48および第2の吸引ポンプ49を備えたフローセル40が完成する。
<フローセルの動作>
次に、本実施例に係るフローセル40の動作について説明する。
まず、導入口45に試料溶液が注入されると、この試料溶液は、毛細管現象により測定流路46および抵抗流路47の順で進み、第1の吸引ポンプ48に流入する。この第1の吸引ポンプ48内部は、複数の突出部433aが形成されているので、この突出部433aが形成されていない場合よりも単位体積当たりの表面積が大きくなっており、毛細管現象が発現する寸法となっている。したがって、第1の吸引ポンプ48内部に流入した試料溶液は、その内部を進行していく。なお、この進行する速度は、突出部433aの外形や間隔などの第1の空洞部433の形状や試料溶液にかかる抵抗等によって変化する。
この第1の吸引ポンプ48に到達した試料溶液は、毛細管現象により、第1の空洞部433内部を蛇行溝432の他端側から空気孔433b,433cに向かって、言い換えると第2の基板43の他側から一側(Y方向の正の向き)に向かって進行する。この過程で、試料溶液は、連通孔433d,433eに到達する。この連通孔433d,433eは、毛細管現象が発現する寸法に形成されている。したがって、連通孔433d,433eに到達すると、試料溶液は、その連通孔433d,433eを通って第2の基板43の上面側に形成された第2の空洞部434により構成される第2の吸引ポンプ49に侵入する。この第2の吸引ポンプ49に侵入すると、試料溶液は、第1の吸引ポンプ48の場合と同様、空気孔433b,433cに向かって、言い換えると第2の基板43の他側から一側(Y方向の正の向き)に向かって進行する。これにより、試料溶液は、第1の吸引ポンプ48および第2の吸引ポンプ49内部を、Y方向の正の向きに向かって進行していく。
Y方向の正の向きに進行していくと、試料溶液は、空気孔433b,433cに到達する。この空気孔433b,433cは、連通孔433d,433eよりも断面積が大きく形成されており、内部に存在する液体に対して毛細管力が少ししか働かない。したがって、空気孔433b,433cに到達すると、試料溶液は、進行を停止または空気孔433b,433c内部を少ししか進行しない。これにより、第1の吸引ポンプ48および第2の吸引ポンプ49による試料溶液の吸引動作は終了する。このとき、第1の吸引ポンプ48および第2の吸引ポンプ49内部に滞留していた空気は、上述したように試料溶液が一様にY方向の正の向きに進行するため、空気孔433b,433cから外部に放出される。これにより、第1の吸引ポンプ48および第2の吸引ポンプ49内部に空気が滞留するのを防ぐことができる。
このように、本実施例によれば、第1の基板と第2の基板との間および第2の基板と第3の基板との間にポンプを形成することにより、平面形状を大きくせずにポンプの容量を大きくすることができる。具体的には、第2の基板43の下面側および上面側に第1の空洞部433および第2の空洞部434を形成し、第1のシート状部材42と第2の基板43との間および第2の基板43と第3のシート状部材44との間に第1の吸引ポンプ48または第2の吸引ポンプ49を設けることにより、フローセル40における吸引ポンプの容量を第2の基板43の厚さ方向に増加させることができるので、結果として、フローセル40の平面形状を大きくせずにポンプの容量を大きくすることができる。
なお、本実施例では、スリット421が平面視略矩形の形状を有し、かつシート状部材42の略中央部に設けた場合を例に説明したが、スリット421がAu層41a上を通過するのであれば、スリット421の形状および設ける位置については上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。したがって、スリット421により構成される測定流路46の形状および位置についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、開口部422が平面視略円形の形状を有する場合を例に説明したが、開口部422が第2の基板43の貫通孔431と連続する位置に存在するのであれば、開口部422の形状は平面視略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、貫通孔431や開口部441の平面形状についても、略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、第1の空洞部433が平面視略矩形、第2の空洞部434が平面視略「コ」の字状の形状を有する場合を例に説明したが、第1,第2の空洞部433,434の平面形状は上記形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、第1,第2の空洞部433,434内部に形成された突出部433a,434aの形状についても、第1,2の空洞部433,434内部の表面積が増加するのであれば略円柱状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、抵抗流路47を設けた場合を例に説明したが、この抵抗流路47は設けず、測定流路46と第1の吸引ポンプ48とを直接に接続するようにしてもよい。また、抵抗流路47の形状、すなわち蛇行溝432の形状についても、上述したクランク状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、第1のシート状部材42を設けるようにしたが、これを設けないようにしてもよい。この場合、第1のシート状部材42に形成された各スリットを第1の基板41または第2の基板43に形成し、これらの側部に係着する部材を設けて互いを接合したり、接着剤などにより互いを接着したりすることにより実現することができる。
[第4の実施例]
次に、本発明に係る第2の実施例について詳細に説明する。なお、本実施例は、上述した第3の実施例で示したフローセルに、さらに第3の基板と第3のシート状部材とを設けたものである。したがって、本実施例において、上述した第3の実施例と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
<フローセルの構成>
図16〜図18に示すように、本実施例に係るフローセル50は、平面視略矩形の第1の基板41と、この第1の基板41上に配設される第1のシート状部材42と、この第1のシート状部材42上に配設される第2の基板43と、この第2の基板43上に配設される第2のシート状部材44と、この第2のシート状部材44上に配設される第3の基板51と、この第3の基板51上に配設される第3のシート状部材52とから構成されている。これらを積層したフローセル50には、第1のシート状部材42,第2の基板43,第2のシート状部材44,第3の基板51,第3のシート状部材52を貫通し試料溶液が導入される導入口45と、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された第1の吸引ポンプ48と、第2の基板43と第2のシート状部材44との間に形成された第2の吸引ポンプ49と、第2のシート状部材44と第3の基板51との間に形成された第3の吸引ポンプ53と、第3の基板51と第3のシート状部材52との間に形成された第4の吸引ポンプ54と、第1の吸引ポンプ48と導入口45と接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口45に接続し第1のシート状部材42内に形成され外部装置により測定光等が照射される測定流路46と、一端が測定流路46に他端が第1の吸引ポンプ48に接続し、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された抵抗流路47とから構成されている。
≪第2のシート状部材≫
上述したように、第2のシート状部材44は、第1の基板41、第1のシート状部材42および第2の基板43に対応した平面形状を有し、上記一側寄りに設けられた平面視略円形の開口部441と、この開口部441の両側でかつ上記一側寄りに設けられた2つの平面視略矩形の孔部442とが形成されている。また、開口部441の両側でかつ上記他側寄りに設けられた連通孔443も形成されている。この連通孔443は、毛細管現象が発現する程度の範囲の寸法となっている。
≪第3の基板の構成≫
第3の基板51は、0.5〜5mm程度の厚さを有する例えばアクリルなどの透明な基板から構成され、第1の基板41等に対応した平面形状を有している。このような第3の基板51の一側寄りの略中央部には、貫通孔511が形成されている。また、第3の基板51の下面には、貫通孔511の周囲に形成された第3の空洞部512が設けられている。また、第3の基板51の上面には、貫通孔511の周囲に形成された第4の空洞部513が設けられている。
第3の空洞部512は、第3の基板51の下面から上面に向けて設けられた平面視略「コ」の字状の空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部512aが形成されている。複数の突出部512aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この第3の空洞部512は、第3の吸引ポンプ53として作用する。このような第3の空洞部512は、第3の基板51の中央部の周囲を取り囲むように平面視略「コ」の字状に形成され、第3の基板51における上記一側寄りの端部には、第3の空洞部512と第4の空洞部513とを連通する空気孔512b,512cが形成されている。また、上記他側寄りの角部には、連通孔512d,512eが形成されている。
第4の空洞部513は、図16によく示されるように、第3の基板51の上面から下面に向けて設けられた平面視略「コ」の字状の空洞からなり、この空洞内にはその底面から上方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部513aが形成されている。複数の突出部513aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この第4の空洞部513は、第4の吸引ポンプ54として作用する。このような第4の空洞部513は、平面視略矩形に形成され、上記一側寄りの端部には、空気孔512b,512cが接続されている。一方、上記他側寄りの角部には、連通孔512d,512eの一端が接続されている。
上述したような第3の基板51は、例えば、所定のパターンが形成された金型を用いた射出成形加工、レーザ加工、エンドミル等による切削加工などによって、作製することができる。
≪第3のシート状部材≫
第3のシート状部材52は、10μm〜150μm程度の厚さを有する例えば公知の粘着テープなどから構成され、第1の基板41等に対応した平面形状を有している。このような第3のシート状部材52には、一側寄りに設けられた平面視略円形の開口部521と、この開口部521の両側でかつ上記一側寄りに設けられた2つの平面視略矩形の孔部522とが形成されている。この孔部522は、上述した空気孔433b、433cと同等の形状に形成されている。
このような第3のシート状部材52は、例えば、粘着テープをカッターやレーザなどで所望の形状に加工することにより、作製することができる。
<フローセルの製造方法>
次に、本実施例に係るフローセル50の製造方法の一例について説明する。まず、第1の実施例と同様の手順により、第1の基板41,第1のシート状部材42,第2の基板43および第2のシート状部材44を積層する。
次に、貫通孔511と開口部441、第3の空洞部512の上記一側寄りの端部とこの端部に対応する孔部442、および、連通孔512d,512eと連通孔443とがそれぞれ連続するように、第2のシート状部材44上に第3の基板51を載置する。
次に、開口部521と貫通孔511、および、孔部522と空気孔512b,512cとがそれぞれ連続するように、第3の基板51上に第3のシート状部材52を載置する。
このように第1の基板41,第1のシート状部材42,第2の基板43,第2のシート状部材44,第3の基板51および第3のシート状部材52を積層すると、これらを第1の基板41の下面側と第3のシート状部材52の上面側から押圧する。これにより、両面テープなどからなる第1のシート状部材42と第2のシート状部材44を介して第1の基板41と第2の基板43および第2の基板43と第3の基板51が互いに固定され、かつ、第3のシート状部材52により第3の基板51の上面が覆われることによって、導入口45,測定流路46,抵抗流路47,第1の吸引ポンプ48,第2の吸引ポンプ49,第3の吸引ポンプ53および第4の吸引ポンプ54を備えたフローセル50が完成する。
このとき、第2の基板43の連通孔433d,433eと、第2のシート状部材44の2つの連通孔443と、第3の基板51の連通孔512d,512eとは、Z方向に沿って連続している。同様に、第2の基板43の空気孔433b、433cと、第2のシート状部材44の孔部442と、第3の基板51の空気孔512b、512cと、第3のシート部材52の孔部522とは、Z方向に沿って連続している。
<フローセルの動作>
次に、本実施例に係るフローセル50の動作について説明する。
上述したように、導入口45に試料溶液が注入されると、この試料溶液は、毛細管現象により測定流路46および抵抗流路47の順で進み、第1の吸引ポンプ48に流入する。この第1の吸引ポンプ48内部は、複数の突出部433aが形成されているので、この突出部433aが形成されていない場合よりも単位体積当たりの表面積が大きくなっており、毛細管現象が発現する寸法となっている。したがって、第1の吸引ポンプ48内部に流入した試料溶液は、その内部を進行していく。なお、この進行する速度は、突出部433aの外形や間隔などの空洞部433の形状や試料溶液にかかる抵抗等によって変化する。
この第1の吸引ポンプ48に到達した試料溶液は、毛細管現象により、第1の空洞部433内部を蛇行溝432の他端側から空気孔433b,433cに向かって、言い換えると第2の基板43の他側から一側(Y方向の正の向き)に向かって進行する。この過程で、試料溶液は、連通孔433d,433eに到達する。この連通孔433d,433eは、毛細管現象が発現する寸法に形成されている。したがって、連通孔433d,433eに到達すると、試料溶液は、その連通孔433d,433eを通って第2の基板43の上面側に形成された第2の空洞部434により構成される第2の吸引ポンプ49に侵入する。
また、連通孔433d,433eの上方には、第2のシート状部材44の2つの連通孔443が連続して形成されている。したがって、連通孔433d,433eを通って第2の空洞部434に侵入した試料溶液は、連通孔443を通って第3の基板51の下面側に形成された第3の空洞部512により構成される第3の吸引ポンプ53に侵入する。
同様に、連通孔443の上方には、第3の基板51の連通孔512d,512eが連続して形成されている。したがって、第3の吸引ポンプ53に侵入した試料溶液は、連通孔512d,512eを通って第3の基板51の上面側に形成された第4の空洞部513により構成される第4の吸引ポンプ54に侵入する。
このようにして、第1の吸引ポンプ48,第2の吸引ポンプ49,第3の吸引ポンプ53および第4の吸引ポンプ54に侵入した試料溶液は、それぞれの内部をY方向の正の向きに向かって進行していく。
Y方向の正の向きに進行していくと、試料溶液は、空気孔433b,433cまたは空気孔512b,512cに到達する。これらの空気孔433b,433c,512b,512cは、連通孔433d,433e,512d,512eなどよりも断面積が大きく形成されており、内部に存在する液体に対して毛細管力が少ししか働かない。したがって、空気孔433b,433c,512b,512cに到達すると、試料溶液は、進行を停止またはそれらの空気孔の内部を少ししか進行しない。これにより、第1の吸引ポンプ48,第2の吸引ポンプ49,第3の吸引ポンプ53および第4の吸引ポンプ54による試料溶液の吸引動作は終了する。このとき、第1の吸引ポンプ48,第2の吸引ポンプ49,第3の吸引ポンプ53および第4の吸引ポンプ54内部に滞留していた空気は、上述したように試料溶液が一様にY方向の正の向きに進行するため、空気孔433b,433c,512b,512cから外部に放出される。これにより、第1の吸引ポンプ48,第2の吸引ポンプ49,第3の吸引ポンプ53および第4の吸引ポンプ54内部に空気が滞留するのを防ぐことができる。
このように、本実施例によれば、第1の基板41,第1のシート状部材42,第2の基板43,第2のシート状部材44,第3の基板51および第3のシート状部材52を積層し、第1のシート状部材42と第2の基板43の間、第2の基板43と第2のシート状部材44の間、第2のシート状部材44と第3の基板51の間、および、第3の基板51と第3のシート状部材52の間に、第1の吸引ポンプ48,第2の吸引ポンプ49,第3の吸引ポンプ53,第4の吸引ポンプ54を形成することにより、フローセル50における吸引ポンプの容量を第2の基板43等の厚さ方向に増加させることができるので、結果として、フローセル50の平面形状を大きくせずにポンプの容量を大きくすることができる。
なお、本実施例においては、第3の基板51の両面に空洞部を設けるようにしたが、下面のみに設けるようにしてもよい。
また、本実施例では、第1の基板41,第1のシート状部材42,第2の基板43,第2のシート状部材44,第3の基板51および第3のシート状部材52を積層するようにしたが、ポンプの容量に応じてさらにシート状部材と基板とを積層するようにしてもよい。この場合、第3の基板51の上に、第2のシート状部材44と第3の基板51をこの組でポンプの容量に応じて数量だけ積層し、最上層の第3の基板51の上に第3のシート状部材52を積層すればよい。これにより、さらに容量の大きなポンプを有するフローセルを実現することができる。
また、図19に示すように、上述した第1の実施例で説明したフローセル40において、第2のシート状部材44上に、第2の基板43および第2のシート状部材44を積層するようにしてもよい。この場合は、第2の基板43と第2のシート状部材44に、それぞれを連続する貫通孔435,445を設ければよい。具体的には、第2の基板43には、蛇行溝432の開放端をZ方向に貫通する貫通孔435を設ける。また、第2のシート状部材44には、第2の基板43上に第2のシート状部材44を載置したときに上記貫通孔に対応する位置に貫通孔445を設ける。これらの貫通孔435,445は、毛細管現象が発現する程度の寸法とされる。このような構成を有するフローセル60において、導入口45に試料溶液が注入されると、この試料溶液は、測定流路46を通過し抵抗流路47に到達する。すると、試料溶液は、抵抗流路47を進行するとともに、抵抗流路47の一端に設けられた貫通孔435およびこれと連続する第2のシート状部材44に設けられた貫通孔444により、各第1の吸引ポンプ48および第2の吸引ポンプ49に侵入し、Y方向の正の向きに進行していく。したがって、このような構成とすることによっても、フローセル60における吸引ポンプの容量を第2の基板43の厚さ方向に増加させることができるので、結果として、フローセル60の平面形状を大きくせずにポンプの容量を大きくすることができる。
なお、図19の場合、最上層の第2のシート状部材44には、貫通孔445を設けなくてよい。
[第5の実施例]
次に、本発明に係る第5の実施例について詳細に説明する。なお、本実施例は、上述した第3の実施例で示したフローセル40の突出部433aおよび434aの端部を開放端としたものである。したがって、本実施例において、上述した第3の実施例と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
<フローセルの構成>
図20に示すように、本実施の形態に係るフローセル70は、第1の基板41と、この第1の基板41上に配設される第1のシート状部材42と、この第1のシート状部材42上に配設される第2の基板43と、この第2の基板43上に配設される第2のシート状部材44とから構成されている。これらを積層したフローセル70には、第3の実施例で示したフローセル40と同様、第1のシート状部材42,第2の基板43および第2のシート状部材44を貫通し試料溶液が導入される導入口45と、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された第1の吸引ポンプ48と、第2の基板43と第2のシート状部材44との間に形成された第2の吸引ポンプ49と、第1の吸引ポンプ48と導入口45と接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口45に接続し第1のシート状部材42内に形成され外部装置により測定光等が照射される測定流路46と、一端が測定流路46に他端が第1の吸引ポンプ48に接続し、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された抵抗流路47とから構成されている。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板43は、一側寄りの略中央部に形成された貫通孔431と、下面の略中央から上記一側とは反対側の他側近傍にかけて形成された蛇行溝432と、この蛇行溝432の両側に形成された2つの第1の空洞部433と、上面の貫通孔431の周囲に形成された第2の空洞部434とが設けられている。
ここで、第1の空洞部433は、第2の基板43の下面から上面に向けて設けられた平面視略矩形の2つの空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部473aが形成されている。この突出部473aの端部は、第2の基板43を水平面上に載置した場合、第2の基板43の下面よりも鉛直上方に位置するように形成されている。したがって、第2の基板43を第1のシート状部材42上に載置したとき、突出部473aは、開放端となる、すなわち突出部473aが第1のシート状部材42に接触せず、これらの間には空間が存在することとなる。このときの突出部473aの端部と第1のシート状部材42の間隔、および、複数の突出部473aの間隔を、毛細管現象が発現する範囲とすることにより、第1の空洞部433は第1の吸引ポンプ48として作用する。
また、第2の空洞部434は、第2の基板43の上面から下面に向けて設けられた平面視略「コ」の字状の空洞からなり、この空洞内にはその底面から上方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部474aが形成されている。この突出部474aの端部は、第2の基板43を水平面上に載置した場合、第2の基板43の上面よりも鉛直下方に位置するように形成されている。したがって、第2の基板43上に第2のシート部材44を載置した場合、突出部474aは、開放端となる、すなわち突出部474aの端部と第2のシート状部材44とが接触せず、これらの間に空間が存在することとなる。このときの突出部474aの端部と第2のシート状部材44の間隔、および、複数の突出部474aの間隔を、毛細管現象が発現する範囲とすることにより、第2の空洞部434は第2の吸引ポンプ49として作用する。
このような構成とすることにより、本実施例にかかるフローセル70は、第3の実施例で示したフローセル40よりも各吸引ポンプ内部の容積が大きくなるので、各吸引ポンプの容量を大きくすることができる。また、各突出部の端部およびこの端部と当接していたシート状部材の部分が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食品や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸引ポンプ内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部の端部がシート状部材に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸引ポンプ内部に詰まるのを防ぐことができる。
[第6の実施例]
次に、本発明に係る第6の実施例について詳細に説明する。なお、本実施例は、上述した第4の実施例で示したフローセル50の突出部433a、434a、512aおよび513aの端部を開放端としたものである。したがって、本実施例において、上述した第4の実施例と同等の構成要素については、同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
<フローセルの構成>
図21に示すように、本実施例に係るフローセル80は、第1の基板41と、この第1の基板41上に配設される第1のシート状部材42と、この第1のシート状部材42上に配設される第2の基板43と、この第2の基板43上に配設される第2のシート状部材44と、この第2のシート状部材44上に配設される第3の基板51と、この第3の基板51上に配設される第3のシート状部材52とから構成されている。これらを積層したフローセル80には、第5の実施の形態で示したフローセル50と同様、第1のシート状部材42,第2の基板43,第2のシート状部材44,第3の基板51,第3のシート状部材52を貫通し試料溶液が導入される導入口45と、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された第1の吸引ポンプ48と、第2の基板43と第2のシート状部材44との間に形成された第2の吸引ポンプ49と、第2のシート状部材44と第3の基板51との間に形成された第3の吸引ポンプ53と、第3の基板51と第3のシート状部材52との間に形成された第4の吸引ポンプ54と、第1の吸引ポンプ48と導入口45と接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口45に接続し第1のシート状部材42内に形成され外部装置により測定光等が照射される測定流路46と、一端が測定流路46に他端が第1の吸引ポンプ48に接続し、第1のシート状部材42と第2の基板43との間に形成された抵抗流路47とから構成されている。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板43は、一側寄りの略中央部に形成された貫通孔431と、下面の略中央から上記一側とは反対側の他側近傍にかけて形成された蛇行溝432と、この蛇行溝432の両側に形成された2つの第1の空洞部433と、上面の貫通孔431の周囲に形成された第2の空洞部434とが設けられている。
ここで、第1の空洞部433は、第2の基板43の下面から上面に向けて設けられた平面視略矩形の2つの空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部473aが形成されている。この突出部473aの端部は、第2の基板43を水平面上に載置した場合、第2の基板43の下面よりも鉛直上方に位置するように形成されている。したがって、第2の基板43を第1のシート状部材42上に載置したとき、突出部473aは、開放端となる、すなわち突出部473aが第1のシート状部材42に接触せず、これらの間には空間が存在することとなる。このときの突出部473aの端部と第1のシート状部材42の間隔、および、複数の突出部473aの間隔を、毛細管現象が発現する範囲とすることにより、第1の空洞部433は第1の吸引ポンプ48として作用する。
また、第2の空洞部434は、第2の基板43の上面から下面に向けて設けられた平面視略「コ」の字状の空洞からなり、この空洞内にはその底面から上方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部474aが形成されている。この突出部474aの端部は、第2の基板43を水平面上に載置した場合、第2の基板43の上面よりも鉛直下方に位置するように形成されている。したがって、第2の基板43上に第2のシート部材44を載置した場合、突出部474aは、開放端となる、すなわち突出部474aの端部と第2のシート状部材44とが接触せず、これらの間に空間が存在することとなる。このときの突出部474aの端部と第2のシート状部材44の間隔、および、複数の突出部474aの間隔を、毛細管現象が発現する範囲とすることにより、第2の空洞部434は第2の吸引ポンプ49として作用する。
≪第3の基板の構成≫
第3の基板51は、一側寄りの略中央部に形成された貫通孔511と、下面の貫通孔511の周囲に形成された第3の空洞部512と、上面の貫通孔511の周囲に形成された第4の空洞部513とが設けられている。
ここで、第3の空洞部512は、第3の基板51の下面から上面に向けて設けられた平面視略「コ」の字状の空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部582aが形成されている。この突出部582aの端部は、第3の基板51を水平面上に載置した場合、第3の基板51の下面よりも鉛直上方に位置するように形成されている。したがって、第3の基板51を第2のシート状部材44上に載置したとき、突出部582aは、開放端となる、すなわち突出部582aが第2のシート状部材44に接触せず、これらの間には空間が存在することとなる。このときの突出部582aの端部と第2のシート状部材44の間隔、および、複数の突出部582aの間隔を、毛細管現象が発現する範囲とすることにより、第3の空洞部512は第3の吸引ポンプ53として作用する。
また、第4の空洞部513は、第3の基板51の上面から下面に向けて設けられた平面視略「コ」の字状の空洞からなり、この空洞内にはその底面から上方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部583aが形成されている。この突出部583aの端部は、第3の基板51を水平面上に載置した場合、第3の基板51の上面よりも鉛直下方に位置するように形成されている。したがって、第3の基板53上に第3のシート部材52を載置した場合、突出部583aは、開放端となる、すなわち突出部583aの端部と第3のシート状部材52とが接触せず、これらの間に空間が存在することとなる。このときの突出部583aの端部と第3のシート状部材52の間隔、および、複数の突出部583aの間隔を、毛細管現象が発現する範囲とすることにより、第4の空洞部513は第4の吸引ポンプ4として作用する。
このような構成とすることにより、本実施例にかかるフローセル80は、第4の実施例で示したフローセル50よりも各吸引ポンプ内部の容積が大きくなるので、各吸引ポンプの容量を大きくすることができる。また、各突出部の端部およびこの端部と当接していたシート状部材の部分が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食品や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸引ポンプ内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部の端部がシート状部材に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸引ポンプ内部に詰まるのを防ぐことができる。
<フローセルの適用例>
上述した第3〜6の実施例に例示したフローセルは、図11を参照して説明した表面プラズモン共鳴現象を利用した測定に用いられる。
[第7の実施例]
次に、本発明に係る第7の実施例について説明する。
一般に、抗原抗体反応の検出など、試料溶液や測定装置の種類によって所望する流速のプロファイルが異なるにもかかわらず、従来の毛細管ポンプを用いた技術では、一度導入口から導入した試料溶液の流速を途中で変化させることができなかった。そこで、本実施例は、液体の流速を変化させることができるフローセルを提供することを目的とするものである。
本実施例に係るフローセルは、開口部と、この開口部に一端が接続された流路と、この流路の他端が接続され、流路を経て到達した液体を表面張力により吸引するポンプ部とが形成された板状部材からなり、ポンプ部は、板状部材内に形成された空洞と、この空洞内に形成された複数の柱状部材とからなり、空洞内の単位体積当たりの表面積が空洞内の位置によって異なることを特徴とする。
上記フローセルにおいて、柱状部材は、板状部材に略平行な空洞の底面から垂設され、底面において所定の第1の方向に沿って形成され、底面における第1の方向に沿った柱状部材の間の第1の領域は、一様に深く彫り込まれているようにしてもよい。ここで、柱状部材は、底面において第1の方向と直交する第2の方向に沿って形成され、第2の方向に沿い、かつ、第1の領域と共通しない底面における柱状部材の間の第2の領域は、第1の領域よりも浅く彫り込まれているようにしてもよい。
また、上記フローセルにおいて、ポンプ部は、空洞内にそれぞれ所定の間隔で柱状部材が形成された複数の領域を有し、所定の間隔は、領域毎に異なるようにしてもよい。
また、上記フローセルにおいて、柱状部材は、開放端を有するようにしてもよい。
本実施例によれば、空洞内の単位体積当たりの表面積を空洞内の位置によって異ならせることにより、導入口から導入された液体の流速を途中で変化させることができる。
<フローセルの構成>
次に、図22〜図26を参照して、本実施例に係るフローセル90の構成について、詳細に説明する。
図22〜図26に示すように、本実施例に係るフローセル90は、平面視略矩形の第1の基板91と、この第1の基板91上に配設されるシート状部材92と、このシート状部材92上に配設される第2の基板93とから構成される。これらは積層され、1つの板状部材を形成する。このようなフローセル90には、第2の基板93を貫通し試料溶液が導入される導入口94と、シート状部材92と第2の基板93との間に形成された2つの吸引ポンプ97と、この吸引ポンプ97と導入口94とを接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口94に接続し第1の基板91と第2の基板93との間にあるシート状部材92内に形成された測定流路95と、一端がこの測定流路95の他端に接続しシート状部材92と第2の基板93との間に形成された抵抗流路96とから構成されている。
≪第1の基板≫
第1の基板91は、例えばBK7などの光学ガラスから構成され、板厚が1mm程度で一辺が16mm程度の平面視略矩形の板状の形状を有している。また、第1の基板91の上面、すなわち第1の基板91のシート状部材92が載置される側の表面には、蒸着、スパッタ、メッキ加工などによりAu層91aが選択的に設けられている。なお、Au層91aは、上記測定流路95に対応する部分のみに形成するようにしてもよいが、全面に形成してもよいことは言うまでもない。
≪シート状部材≫
シート状部材92は、10μm〜150μm程度の厚さを有する例えば公知の粘着テープなどから構成され、第1の基板91に対応した平面形状を有している。このようなシート状部材92には、略中央部に設けられた平面視略矩形のスリット921と、このスリット921の一端に接続された平面視略円形の開口部922とが形成されている。ここで、スリット921は、長手方向がシート状部材92の何れかの側部と略平行になるように形成されている。
上述したスリット921は、第1の基板91の上面(すなわち、シート状部材92と接する面)および第2の基板93の下面(すなわち、シート状部材92と接する面)とともに、略直方体状の空間からなる測定流路95を形成する。この測定流路95の長手方向に垂直な断面は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の寸法とされる。
このようなシート状部材92は、例えば、粘着テープをカッターやレーザなどで所望の形状に加工することにより、作製することができる。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板93は、0.5〜5mm程度の厚さを有する例えばアクリルなどの基板から構成され、第1の基板91およびシート状部材92に対応した平面形状を有している。このような第2の基板93の一側寄りの略中央部には、貫通孔931が形成されている。また、第2の基板93の下面には、略中央から上記一側とは反対側の他側近傍にかけて形成された蛇行溝932と、この蛇行溝932の両側に形成された2つの空洞部933とが設けられている。
貫通孔931は、開口部922と同等の平面形状に形成されている。
蛇行溝932は、複数の屈曲部を有するクランク状の平面形状を有している。この屈曲部は、略円弧状に、すなわち曲線状になだらかに曲げられている。また、蛇行溝932の他端は、第2の基板93の上記他側近傍で分岐しており、それぞれ上記垂直な方向に沿って反対側に延在し隣接する空洞部933に接続している。
空洞部933は、第2の基板93の下面から上面に向けて設けられ、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部933aが形成されている。複数の突出部933aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この空洞部933は、吸引ポンプとして作用する。このような空洞部933は、平面視略矩形に形成され、上記一側寄りの端部および上記他側寄りの蛇行溝932の他端が接続されたのと反対側の角部に、第2の基板93を貫通する空気孔933b〜933eが形成されている。
ここで、突出部933aは、X方向およびY方向に沿って並設されている。これにより、空洞部933には、第2の基板93の下面側から見た場合、X方向またはY方向に沿った複数の流路が略格子状に形成されることとなる。本実施例において、X方向に沿った流路(以下、X流路という)は、図27に示すように、第2の基板93側に一様に深く彫り込まれている。これに対して、Y方向に沿った流路(以下、Y流路という)は、X流路により第2の基板93側に彫り込まれた部分と浅く彫り込まれた部分とが交互に形成された構成となっている。具体的には、図28に示すように、X1−X1’で示すX流路は、一様に深く彫り込まれている。これに対して、Y1−Y1’で示すY流路は、X流路と共通する部分は深く、突出部933aの間の部分は浅く彫り込まれている。ここで、X流路の延在方向に垂直な方向の断面は、突出部933aをX方向に横切るX2−X2’に示すように、半円弧の形状を有している。Y流路の延在方向に垂直な方向の断面は、突出部933aをY方向に横切るY2−Y2’に示すように、半円弧の形状を有している。
上述した貫通孔931は、開口部922および第1の基板91の上面とともに、第1の基板の上面を底とする略円柱状の空間からなる導入口94を形成する。
また、上述した蛇行溝932は、第2の基板93とシート状部材92とが接することにより蛇行した抵抗流路96を形成する。この抵抗流路96は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の断面寸法とされる。
上述したような第2の基板93は、例えば、所定のパターンが形成された金型を用いた射出成形加工、レーザ加工、または、エンドミル等による切削加工などによって、作製することができる。
<フローセルの製造方法>
次に、本実施例に係るフローセル90の製造方法の一例について説明する。まず、第1の基板91上にシート状部材92を載置する。ここで、Au層91aを第1の基板91の一部のみに設けた場合、測定流路95を形成するスリット921が上記Au層91aと当接するように、第1の基板91上にシート状部材92を載置する。
次に、貫通孔931と開口部922とが連続し、かつ蛇行溝932の一端がスリット921の他端内部に位置するように、シート状部材92上に第2の基板93を載置する。
このように第1の基板91,シート状部材92および第2の基板93を積層すると、これらを第1の基板91の下面側と第2の基板93の上面側から押圧する。これにより、両面テープなどからなるシート状部材92を介して第1の基板91と第2の基板93が互いに固定され、導入口94,測定流路95,抵抗流路96および吸引ポンプ97を備えたフローセル90が完成する。
<フローセルの動作>
次に、本実施例に係るフローセル90の動作について説明する。
まず、導入口94に試料溶液が注入されると、この試料溶液は、毛細管現象により測定流路95および抵抗流路96の順で進み、吸引ポンプ97に流入する。この吸引ポンプ97の内部は、複数の突出部933aが形成されているので、この突出部933aが形成されていない場合よりも単位体積当たりの表面積が大きくなっており、毛細管現象が発現する寸法となっている。本実施例においては、吸引ポンプ97内部に流入した試料溶液には、測定流路95および抵抗流路96内部よりも大きな表面張力が作用するように設定されている。
したがって、導入口94に注入された試料溶液は、測定流路95および抵抗流路96を通って吸引ポンプ97に流入し、この吸引ポンプ97内部を進行していく。なお、この進行する速度は、突出部933aの外形や間隔などの空洞部933の形状や試料溶液にかかる抵抗等によって変化する。
ここで、本実施例では、吸引ポンプ97内部の複数の突出部933aによって形成されたX流路は、基板側に一様に深く彫り込まれている。一方、Y流路は、X流路と共通する深く彫り込まれた部分と浅く彫り込まれた部分とが交互に形成されている。したがって、X流路における試料溶液とY流路における試料溶液とでは、試料溶液と、流路の壁面と、空気とが互いに接する箇所、すなわち試料溶液の液面の縁部におけるその液面の接線の傾きが異なるため、流速も異なる。例えば、図29に示すように、試料溶液の液面の接線l1が流路の延在方向に対して平行に近く、液面が流路の開放端に対して凹面となっている場合、試料溶液は、その開放端に向かって進んでいく。図30Aに示すように流路の開放端がテーパー状に広がり、上述した図29の場合よりも試料溶液の接線l2が流路の延在方向に対して垂直に近くなると、表面張力が小さくなるので、試料溶液の流速は、図29の場合よりも遅くなる。図30Bに示すように、図30Aの場合よりもさらにテーパー角が大きくなり、試料溶液の液面の接線l3が流路の延在方向に対して垂直になると、表面張力がさらに小さくなるまたは働かなくなるので、試料溶液は流速が遅くなるまたは進まなくなる。
このように、試料溶液の流速は、流路の壁面との接触角の大きさに依存する。したがって、一様に深く形成されたX流路では、試料溶液が一様な速度で進行する。一方、図31に示すように深く彫り込まれた部分と浅く彫り込まれた部分とが交互に形成されたY流路では、試料溶液が流速を変化させながら進行する。特に、急激に構造が変化している部分では、表面張力が小さくなるまたは生じなくなるので、試料溶液は、流速が遅くなるまたは進行が止まる。したがって、吸引ポンプ97内部に流入した試料溶液は、X流路を優先的に流れ、Y流路にはX流路を所定量だけ埋めたのちに流れこむ。すなわち、試料溶液は、X流路を進んでからY流路を進み、再度X流路を進行する。
例えば、図32に示すように試料溶液がY方向に向かって進行している場合、X流路に流入した試料溶液は、X流路の延在方向に進行していく(符号a)。このX流路を埋める試料溶液の圧力成分と、このX流路と隣接する何れかのY流路への流入をとどめていた圧力成分との均衡が崩れると、試料溶液は、そのY流路に進行し、隣りのX流路に流入する(符号b)。このX流路に流入した試料溶液は、X流路の延在方向に進行し(符号c,d)、このX流路を埋めるとともに既に埋められたX流路との間のY流路を埋めていく。このような動作を繰り返しながら、試料溶液は、吸引ポンプ97内部を進行していく。
このように試料溶液は、X流路とY流路、すなわちX方向とY方向に交互に進行していく。また、試料溶液は、X方向には滑らかに流れるものの、Y方向には、X流路が満たされたのちY方向への均衡が崩れるまで進行しないので、滑らかには流れない。このため、Y方向に流れる試料溶液の流速は、X方向よりも遅くなる。したがって、試料溶液は、図33に示すように、X方向への早い流れと、Y方向への遅い流れとを交互に繰り返しながら吸引ポンプ97内部を進行していく。これにより、吸引ポンプ97内部の試料溶液に続く抵抗流路96,測定流路95および導入口94内部の試料溶液も、図33に示すようなプロファイルで流れることとなる。
ここで、X,Y方向への流速やその方向に流れる時間は、突出部933aの間隔並びにX流路およびY流路の深さにより制御することができる。したがって、所望する試料溶液の流速のプロファイルに応じて吸引ポンプ97を形成することにより、吸引ポンプ97内部を進行する試料溶液の流速のプロファイルを制御することができるので、吸引ポンプ97の前段を流れる試料溶液のプロファイルをも制御することができる。これにより、導入口94から導入された試料溶液を、この試料溶液や測定装置の種類に応じた所望する流速のプロファイルで、測定流路95内部を流すことができる。
具体例として、本実施例に係るフローセル90において、図27に示すように、突出部933aの間隔が約300μm、X流路の溝の深さが約700μm、Y流路の溝の深さが約400μmの吸引ポンプ97を作成した。この場合、試料溶液がX流路を流れた後、Y流路を通ってその隣のX流路に流れたのを確認することができた。
なお、本実施例において、空洞部933に形成されるX流路およびY流路の延在方向に垂直な方向の断面は、半円弧の形状を有する場合を例に説明したが、その断面の形状は半円弧に限定されず、例えば正弦波の形状など適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、抵抗流路96を設ける場合を例に説明したが、この抵抗流路96は設けず、測定流路95と吸引ポンプ97とを直接に接続するようにしてもよい。また、抵抗流路96の形状、すなわち蛇行溝932の形状についても、上述したクランク状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、第1空洞部933の内部に形成された突出部933aの端部が、第1のシート状部材92と接触する場合を例に説明したが、その端部は開放端となる、すなわちシート状部材と接触しないようにしてもよい。これにより、突出部933aを短くした分だけ吸引ポンプ97内部の容積が大きくなるので、吸引ポンプ97の容量を大きくすることができる。また、突出部933aの端部およびこの端部と当接していた第1のシート状部材92の部分が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食物や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸引ポンプ97内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部933aの端部が第1のシート状部材92に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸引ポンプ97内部に詰まるのを防ぐことができる。
また、本実施例では、スリット921が平面視略矩形の形状を有し、かつシート状部材92の略中央部に設けた場合を例に説明したが、スリット921がAu層91a上を通過するのであれば、スリット921の形状および設ける位置については上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。したがって、スリット921により構成される測定流路95の形状および位置についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、開口部922が平面視略円形の形状を有する場合を例に説明したが、開口部922が第2の基板93の貫通孔931と連続する位置に存在するのであれば、開口部922の形状は平面視略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、空洞部933が平面視略矩形の形状を有する場合を例に説明したが、空洞部933の平面形状は略矩形に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、空洞部933内部に形成された突出部933aの形状についても、空洞部933内部の表面積が増加するのであれば略円柱状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
[第8の実施例]
次に、本発明の第8の実施例について説明する。なお、本実施例は、上述した第7の実施例における吸引ポンプ97を構成する空洞部933の構成を変更したものである。したがって、吸引ポンプ以外の構成に要素については、同じ名称および符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施例において、空洞部933は、第2の基板93の下面から上面に向けて設けられ、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部933aが形成されている。この突出部933aは、X方向およびY方向に沿って所定の間隔で規則的に並設されており、その間隔は、図34に示すように、空洞部933の他側寄りの第1の領域933−1では広く、一側寄りの第2の領域933−2では狭く形成されている。
空洞部933を進行する試料溶液の流速は、空洞部933内部の形状に依存し、単位体積当たりの表面積が大きい、すなわち試料溶液との接触面積が大きいほど早くなる。このため、図34,図35に示すように、突出部933aの間隔が広い第1の領域933−1よりも、突出部933aの間隔が狭い第2の領域933−2の方が、単位体積当たりの表面積が大きいので、進行する試料溶液の流速が早くなる。したがって、所望する試料溶液の流速のプロファイルに応じて空洞部933内部における突出部933aの間隔を制御することにより、吸引ポンプ97内部を進行する試料溶液の流速のプロファイルを制御することができるので、吸引ポンプ97の前段を流れる試料溶液の流速のプロファイルをも制御することができる。これにより、試料溶液や測定装置の種類に応じた所望する試料溶液の流速のプロファイルで、測定流路95内部に試料溶液を流すことができる。
なお、本実施例では、空洞部933が第1の領域933−1と第2の領域933−2という2つの領域を有する場合を例に説明したが、空洞部933を例えば3つや4つなど適宜複数の領域に分割するようにしてもよいことは、言うまでもない。空洞部933を多数の領域に分割した場合、突出部933aの間隔を領域毎に異ならせたり、同じ間隔の領域が存在するようにしたりするようにしてもよい。
また、本実施例では、抵抗流路96を設ける場合を例に説明したが、この抵抗流路96は設けず、測定流路95と吸引ポンプ97とを直接に接続するようにしてもよい。また、抵抗流路96の形状、すなわち蛇行溝932の形状についても、上述したクランク状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、第1空洞部933の内部に形成された突出部933aの端部が、第1のシート状部材92と接触する場合を例に説明したが、その端部は開放端となる、すなわちシート状部材と接触しないようにしてもよい。これにより、突出部933aを短くした分だけ吸引ポンプ97内部の容積が大きくなるので、吸引ポンプ97の容量を大きくすることができる。また、突出部933aの端部およびこの端部と当接していた第1のシート状部材92の部分が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食物や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸引ポンプ97内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部933aの端部が第1のシート状部材92に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸引ポンプ97内部に詰まるのを防ぐことができる。
また、本実施例では、スリット921が平面視略矩形の形状を有し、かつシート状部材92の略中央部に設けた場合を例に説明したが、スリット921がAu層91a上を通過するのであれば、スリット921の形状および設ける位置については上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。したがって、スリット921により構成される測定流路95の形状および位置についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、開口部922が平面視略円形の形状を有する場合を例に説明したが、開口部922が第2の基板93の貫通孔931と連続する位置に存在するのであれば、開口部922の形状は平面視略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、空洞部933が平面視略矩形の形状を有する場合を例に説明したが、空洞部933の平面形状は略矩形に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、空洞部933内部に形成された突出部933aの形状についても、空洞部933内部の表面積が増加するのであれば略円柱状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、シート状部材92を設けるようにしたが、これを設けずに第1の基板91および第2の基板93から構成するようにしてもよい。この場合、シート状部材92に形成された各スリットを第1の基板91または第2の基板93に形成し、これらの側部に係着する部材を設けて互いを接合したり、接着剤などにより互いを接着したりすることにより実現することができる。
<フローセルの適用例>
上述した第7,8の実施例に例示したフローセルは、図11を参照して説明した表面プラズモン共鳴現象を利用した測定に用いられる。
[第9の実施例]
従来の毛細管ポンプでは、柱状部材の間隔は一様に形成され、この毛細管ポンプ内部の試料溶液の進行方向については検討が多くなされていなかった。その結果、例えば毛細管ポンプ内部に空気が滞留してしまうこともあり、このような場合には、毛細管ポンプの容量を最大限に活用することができず、測定流路に所定の量の試料溶液を通過させることができなくなり、結果として、試料溶液の測定が正常に行えないことがあった。
そこで、本実施例は、毛細管ポンプ内部の試料溶液を所望する方向に進行させることができるフローセルを提供することを目的とするものである。
上述したような課題を解消するために、本実施例に係るフローセルは、開口部と、この開口部に一端が接続された流路と、この流路の他端が接続され、流路を経て到達した液体を表面張力により吸引するポンプ部とが形成された板状部材からなり、ポンプ部は、板状部材内に形成された空洞と、この空洞内に周期的に形成された複数の柱状部材とからなり、隣り合う柱状部材同士の間隔は、所定の方向について他の方向より狭いことを特徴とする。ここで、柱状部材は、開放端を有するようにしてもよい。
本実施例によれば、吸入ポンプを構成する空洞内部に設けられた柱状部材を、隣り合う柱状部材同士の間隔が所定の方向について他の方向より狭くすることにより、液体を所定の方向に進行させることができる。
<フローセルの構成>
次に、図36〜図40を参照して、本実施例に係るフローセル100の詳細について説明する。
図36〜図40に示すように、本実施例に係るフローセル100は、平面視略矩形の第1の基板101と、この第1の基板101上に配設されるシート状部材102と、このシート状部材102上に配設される第2の基板103とから構成されている。これらは積層され、1つの板状部材を形成する。このようなフローセル100には、シート状部材102と第2の基板103を貫通し試料溶液が導入される導入口104と、シート状部材102と第2の基板103との間に形成された2つの吸入ポンプ107と、この吸入ポンプ107と導入口104とを接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口104に接続し第1の基板101と第2の基板103との間にあるシート状部材102内に形成された測定流路105と、一端がこの測定流路105の他端に接続しシート状部材102と第2の基板103との間に形成された抵抗流路106とから構成されている。
≪第1の基板≫
第1の基板101は、例えばBK7などの光学ガラスから構成され、板厚が1mm程度で一辺が16mm程度の平面視略矩形の形状を有している。また、第1の基板101の上面、すなわち第1の基板101のシート状部材102側の表面には、蒸着、スパッタ、メッキ加工などによりAu層101aが設けられている。なお、Au層101aは、上記測定流路105に対応する部分のみに形成するようにしてもよい。
≪シート状部材≫
シート状部材102は、10μm〜150μm程度の厚さを有する例えば公知の粘着テープなどから構成され、第1の基板101に対応した平面形状を有している。このようなシート状部材102には、略中央部に設けられた平面視略矩形のスリット1021と、このスリット1021の一端に接続された平面視略円形の開口部1022とが形成されている。ここで、スリット1021は、長手方向がシート状部材102の何れかの側部と略平行になるように形成されている。
上述したスリット1021は、第1の基板101の上面および第2の基板103の下面とともに、略直方体状の空間からなる測定流路105を形成する。この測定流路105の長手方向に垂直な断面は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の寸法とされる。
このようなシート状部材102は、例えば、粘着テープをカッターやレーザなどで所望の形状に加工することにより、作製することができる。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板103は、0.5〜5mm程度の厚さを有する例えばアクリルなどの基板から構成され、第1の基板101およびシート状部材102に対応した平面形状を有している。このような第2の基板103の一側寄りの略中央部には、貫通孔1031が形成されている。また、第2の基板103の下面には、略中央から上記一側とは反対側の他側近傍にかけて形成された蛇行溝1032と、この蛇行溝1032の両側に形成された2つの空洞部1033とが設けられている。
貫通孔1031は、開口部1022と同等の平面形状に形成されている。
蛇行溝1032は、複数の屈曲部を有するクランク状の平面形状を有している。この屈曲部は、略円弧状に、すなわち曲線状になだらかに曲げられている。また、蛇行溝1032の他端は、第2の基板103の上記他側近傍で分岐しており、それぞれ上記垂直な方向に沿って反対側に延在して隣接する空洞部1033に接続している。
空洞部1033は、第2の基板103の下面から上面に向けて設けられた平面視略矩形の2つの空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部1033aが形成されている。複数の突出部1033aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この空洞部1033は、吸引ポンプとして作用する。このような空洞部1033は、平面視略矩形に形成され、上記一側寄りの端部および上記他側寄りの蛇行溝1032の他端が接続されたのと反対側の角部に、第2の基板103を貫通する空気孔1033b〜1033eが形成されている。
突出部1033aは、X方向およびY方向に沿ってそれぞれ所定間隔離間して規則的に並設されている。本実施例において、突出部1033aは、図41に示すように、X方向に距離a、Y方向に距離b(>a)だけ離間して配列している。
上述した貫通孔1031は、開口部1022および第1の基板101の上面とともに、第1の基板の上面を底とする略円柱状の空間からなる導入口104を形成する。
また、上述した蛇行溝1032は、第2の基板103とシート状部材102とが接することにより蛇行した抵抗流路106を形成する。この抵抗流路106は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の断面寸法とされる。
このような第2の基板103は、例えば、所定のパターンが形成された金型を用いた射出成形加工、レーザ加工、エンドミル等による切削加工などによって、作製することができる。
<フローセルの製造方法>
次に、本実施例に係るフローセル100の製造方法の一例について説明する。まず、第1の基板101上にシート状部材102を載置する。ここで、Au層101aを第1の基板101の一部のみに設けた場合、測定流路105を形成するスリット1021が上記Au層101aと当接するように、第1の基板101上にシート状部材102を載置する。
次に、貫通孔1031と開口部1022とが連続し、かつ蛇行溝1032の一端がスリット1021の他端内部に位置するように、シート状部材102上に第2の基板103を載置する。
このように第1の基板101、シート状部材102および第2の基板103を積層すると、これらを第1の基板101の下面側と第2の基板103の上面側から押圧する。これにより、両面テープなどからなるシート状部材102を介して第1の基板101と第2の基板103が互いに固定され、導入口104,測定流路105,抵抗流路106および吸入ポンプ107を備えたフローセル100が完成する。
<フローセルの動作>
次に、本実施例に係るフローセル100の動作について説明する。
まず、導入口104に試料溶液が注入されると、この試料溶液は、毛細管現象により測定流路105および抵抗流路106の順で進み、吸入ポンプ107に流入する。この吸入ポンプ107の内部は、複数の突出部1033aが形成されているので、この突出部1033aが形成されていない場合よりも単位体積当たりの表面積が大きくなっており、毛細管現象が発現する寸法となっている。本実施例においては、吸引ポンプ107内部の試料溶液の液面に作用する表面張力が、導入口104内部の試料溶液の液面に作用する表面張力よりも大きくなるように、突出部1033aの形状や間隔等が設定されている。
したがって、導入口104に注入された試料溶液は、測定流路105および抵抗流路106を通って吸入ポンプ107に流入し、この吸入ポンプ107内部を進行していく。なお、この進行する速度は、突出部1033aの外形や間隔などの空洞部1033の形状や試料溶液にかかる抵抗等によって変化する。
ここで、吸入ポンプ107に流入した試料溶液は、表面張力により吸入ポンプ107内部を進行していく。この進行する向きは、試料溶液にかかる表面張力や突出部1033aの間隔等に依存する。例えば、図41に示すように、突出部1033aがX方向に距離a、Y方向に距離b(>a)だけ離間している場合において、符号αで示す四隅が突出部1033aで囲まれた平面視略矩形の領域からX方向およびY方向に同様に液体が進行していくとする。液体がX、Yの両方向に距離aだけ進行したとき、X方向に進行した液体はα領域の隣(X方向)に存在する突出部1033aに到達するが、Y方向に進行した液体はα領域の隣(Y方向)に存在する突出部1003aに到達しない。このため、X方向に進行して隣の突出部1003aに到達した液体は、その突出部1003aにより作用する表面張力により、Y方向に進行した液体をもX方向に引き寄せる。このような動作を繰り返すことにより、吸引ポンプ107に流入した液体は、X方向に進行していく。このように試料溶液がX方向に進行し、X方向に沿って並設された1の突出部1033a群と、これと隣り合う他の突出部1033a群との間の領域(以下、X溝という)を満たすと、試料溶液はY方向に進行し、隣のX溝を満たしていく。したがって、試料流体は、図42に示すように、Y方向に併設されたX溝β1〜β4を、この順番で1つずつ満たしながらY方向に進行していく。
このように、突出部1033aのX方向とY方向の間隔を適宜設定することにより、吸入ポンプ107内部における試料溶液の進行方向を制御することができる。したがって、フローセルの構成に応じて突出部1033aを設けることにより、フローセル内部に空気が滞留するのを防ぐことができるので、毛細管ポンプの容量を最大限に活用することができる。これにより、測定流路を所定の量の試料溶液を通過させることができ、結果として、試料溶液の測定を正常に行うことができる。
例えば、図36に示すフローセル100の場合、空洞部1033のY方向の正の側の端部およびY方向の負の側における蛇行溝1032の他端が接続されたのと反対側の角部に、空気孔1033b〜1033eが設けられている。この場合、空洞部1033内部に空気の滞留を防ぐには、例えば、突出部1033aを、X方向およびY方向に沿い、かつX方向よりもY方向の間隔の方が長くなるように形成すればよい。これにより、抵抗流路106から吸入ポンプ107に流入した試料溶液は、まず、X方向に流れていくので、抵抗流路106や抵抗流路106近傍に存在する空気は、空気孔1033b、1033cから排出される。また、試料溶液は、X方向の溝を埋めながらY方向に進行するので、吸入ポンプ107内部に存在していた空気は、試料溶液によりY方向に押し出されてゆき、最終的に空気孔1033d,1033eから排出される。このように突出部1033aを形成することにより、吸入ポンプ107内部に空気が滞留するのを防ぐことができる。
また、一例として、突出部1033aは、図43に示すように形成するようにしてもよい。この図43の場合、突出部1033aは、X方向の正の向きに45度で交わる第1の方向と、Y方向の正の向きに45度(X方向の正の向きに135度)で交わる第2の方向とに沿い、かつ第1,第2の方向に隣り合う突出部1033aの間隔がそれぞれ同じとなるように形成されている。このような場合であっても、試料溶液は、表面積の大きい方、すなわち、突出部1033aの間隔が狭い方に進行していく。したがって、試料溶液は、Y方向の負の側から吸入ポンプ107内部に侵入すると、突出部1033aの間隔が狭い方、すなわち、Y方向に隣接する突出部1033aの方向ではなく、Y方向の正負の向きに45度傾いた方向に隣接する突出部1033aの方向に進行する。これにより、試料溶液は、図43に示すように、Y方向に突出した略三角形の形状で吸入ポンプ107内部をY方向に進行していく。
具体例として、図43に示すパターンにおいて、突出部1033aの直径を約200μm、Y方向の正負の向きに45度傾いた方向における突出部1033aの間隔を約200μmとした吸入ポンプ107を有するフローセル100を作製した。この場合において、図43に示すように、試料溶液がY方向に突出した略三角形の形状で吸入ポンプ107内部をY方向に進行していくのを確認することができた。
なお、本実施例では、第1空洞部1033の内部に形成された突出部1033aの端部が、第1のシート状部材102と接触する場合を例に説明したが、その端部は開放端となる、すなわちシート状部材と接触しないようにしてもよい。これにより、突出部1033aを短くした分だけ吸入ポンプ107内部の容積が大きくなるので、吸入ポンプ107の容量を大きくすることができる。また、突出部1033aの端部およびこの端部と当接していたシート状部材102の部分が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食品や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸入ポンプ107内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部1033aの端部がシート状部材102に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸入ポンプ107内部に詰まるのを防ぐことができる。
また、本実施例では、スリット1021が平面視略矩形の形状を有し、かつシート状部材102の略中央部に設けた場合を例に説明したが、スリット1021がAu層101a上を通過するのであれば、スリット1021の形状および設ける位置については上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。したがって、スリット1021により構成される測定流路105の形状および位置についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、開口部1022が平面視略円形の形状を有する場合を例に説明したが、開口部1022が第2の基板103の貫通孔1031と連続する位置に存在するのであれば、開口部1022の形状は平面視略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、空洞部1033が平面視略矩形の形状を有する場合を例に説明したが、空洞部1033の平面形状は略矩形に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、空洞部1033内部に形成された突出部1033aの形状についても、空洞部1033内部の表面積が増加するのであれば略円柱状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、抵抗流路106を設けた場合を例に説明したが、この抵抗流路106は設けず、測定流路105と吸入ポンプ107とを直接に接続するようにしてもよい。また、抵抗流路106の形状、すなわち蛇行溝1032の形状についても、上述したクランク状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、シート状部材102を設けるようにしたが、これを設けずに第1の基板101および第2の基板103から構成するようにしてもよい。この場合、シート状部材102に形成された各スリットを第1の基板101または第2の基板103に形成し、これらの側部に係着する部材を設けて互いを接合したり、接着剤などにより互いを接着したりすることにより実現することができる。
<フローセルの適用例>
上述した第9の実施例に例示したフローセルは、図11を参照して説明した表面プラズモン共鳴現象を利用した測定に用いられる。
[第10の実施例]
次に、本発明に係る第10の実施例について説明する。
毛細管ポンプを備えた測定チップの適用例について簡単に説明する。毛細管ポンプを備えたフローセルなどの測定チップは、よく知られた表面プラズモン共鳴現象を利用した測定などに用いられる(文献5,6参照)。表面プラズモン共鳴現象を利用した測定は、測定対象の検体が接触した金属の表面における、エバネッセント波と表面プラズモン波との共鳴を用いるものである。
この測定では、図11に示すように、光源9001から出射された光を入射側レンズ9002で集光してプリズム9003に入射させ、プリズム9003の上面部9004に密着させているフローセル9005の測定部として機能するAu膜に照射する。フローセル9005にはAuの薄膜が形成されており、このAuの薄膜の表面に検体が接触して配置され、Auの薄膜の裏面に、フローセル9005を透過してきた集光光が照射され、Auの薄膜の裏面で反射される。このとき、表面プラズモン共鳴現象により検体の有無に応じて所定方向の反射光の強度が弱くなる。そこで、いわゆるCCDイメージセンサなどの撮像素子よりなる光検出部9006で強度(光強度)を測定すると、上記共鳴が起こる角度で反射率が低くなる谷が観測される。
このような測定は、Au膜の表面(検出部側)に固定された抗体やDNA断片に、選択的に結合する検体の有無を検出するものである。検出部に単に試料溶液を配置した状態では、対象となる検体と抗体とが反応したことによる変化と、検出部に異物が沈降して堆積した状態による変化とを区別することができないので、検出部において試料溶液が流れているようにすることで、異物の沈降を抑制し、上述した反応による変化を選択的に検出できるようにしている。
しかしながら、上述したような測定において、一定の濃度の検体を含む試料を一定の流速で供給して抗原抗体反応等の応答を調べる場合、反応の経過時間(試料を流す時間)と、検体と抗体の反応によって得られる信号の変化量(SPR角度の変化量)とは非線形な関係になる。また、反応の経過時間と信号の変化量は、検体の濃度や検体と抗体の組み合わせ等で異なるため、検体の定量判定を行うには分析を行う必要があり、リアルタイムで判定するのが困難であった。
そこで、本実施例は、容易に測定結果の分析を行うことができるフローセルを提供することを目的とする。
上述したような課題を解消するために、本実施例に係るフローセルは、開口部と、この開口部に一端が接続された流路と、この流路の他端が接続され、流路を経て到達した液体を表面張力により吸引するポンプ部とが形成された板状部材からなり、流路は、液体に対して測定が行われる測定部を有し、ポンプ部は、板状部材内に形成された空洞と、この空洞内に形成された複数の柱状部材とからなり、空洞内の単位体積当たりの表面積が流路との接続点からの距離に対して変化することを特徴とする。ここで、空洞内の単位体積当たりの表面積は、液体の特性に応じて変化しているようにしてもよい。
本実施例によれば、空洞内の単位体積当たりの表面積が流路との接続点からの距離に対して変化しているので、この変化に伴って流路を流れる流体の流速が変化するとともに、測定部を流れる流体の測定結果も変化する。したがって、この測定結果が所定のプロファイルとなるように流路との接続点からの距離に応じて上記空洞内の単位体積当たりの表面積を予め設定しておくことにより、容易に測定結果の分析を行うことができる。
<フローセルの構成>
次に、図44〜図47を参照して、本実施例に係るフローセル110の詳細について説明する。
図44〜図47に示すように、本実施例に係るフローセル110は、平面視略矩形の第1の基板111と、この第1の基板111上に配設されるシート状部材112と、このシート状部材112上に配設される第2の基板113とから構成されている。これらは積層され、1つの板状部材を形成する。このようなフローセル110には、シート状部材112および第2の基板113を貫通し試料溶液が導入される導入口114と、シート状部材112と第2の基板113との間に形成された2つの吸引ポンプ117と、この吸引ポンプ117と導入口114とを接続する流路とが設けられている。この流路は、一端が導入口114に接続し第1の基板111と第2の基板113との間にあるシート状部材112内に形成された測定流路115と、一端がこの測定流路115の他端に接続しシート状部材112と第2の基板113との間に形成された抵抗流路116とから構成されている。
≪第1の基板≫
第1の基板111は、例えばBK7などの光学ガラスから構成され、板厚が1mm程度で一辺が16mm程度の平面視略矩形の形状を有している。また、第1の基板111の上面、すなわち第1の基板111のシート状部材112側の表面には、メッキ加工、蒸着、スパッタなどによりAu層111aが設けられている。なお、Au層111aは、上記測定流路115に対応する部分のみに形成するようにしてもよい。
≪シート状部材≫
シート状部材112は、10μm〜150μm程度の厚さを有する例えば公知の粘着テープなどから構成され、第1の基板111に対応した平面形状を有している。このようなシート状部材112には、略中央部に設けられた平面視略矩形のスリット1121と、このスリット1121の一端に接続された平面視略円形の開口部1122とが形成されている。ここで、スリット1121は、長手方向がシート状部材112の何れかの側部と略平行になるように形成されている。
上述したスリット1121は、第1の基板111の上面および第2の基板113の下面とともに、略直方体状の空間からなる測定流路115を形成する。この測定流路115の長手方向に垂直な断面は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の寸法とされる。
このようなシート状部材112は、例えば、粘着テープをカッターやレーザなどで所望の形状に加工することにより、作製することができる。
≪第2の基板の構成≫
第2の基板113は、0.5〜5mm程度の厚さを有する例えばアクリルなどの基板から構成され、第1の基板111およびシート状部材112に対応した平面形状を有している。このような第2の基板113の一側寄りの略中央部には、貫通孔1131が形成されている。また、第2の基板113の下面には、略中央から上記一側とは反対側の他側近傍にかけて形成された蛇行溝1132と、この蛇行溝1132の両側に形成された2つの空洞部1133とが設けられている。
貫通孔1131は、開口部1122と同等の平面形状に形成されている。
蛇行溝1132は、複数の屈曲部を有するクランク状の平面形状を有している。この屈曲部は、略円弧状に、すなわち曲線状になだらかに曲げられている。また、蛇行溝1132の他端は、第2の基板113の上記他側近傍で分岐しており、それぞれ上記垂直な方向に沿って反対側に延在し隣接する空洞部1133に接続している。
空洞部1133は、第2の基板113の下面から上面に向けて設けられた平面視略矩形の2つの空洞からなり、この空洞内にはその天井から下方に向かって突出した略円柱状の複数の突出部1133aが形成されている。複数の突出部1133aの間隔を毛細管現象が発現する範囲とすることにより、この空洞部1133は、吸引ポンプ117として作用する。このような空洞部1133は、平面視略矩形に形成され、上記一側寄りの端部および上記他側寄りの蛇行溝1132の他端が接続されたのと反対側の角部に、第2の基板113を貫通する空気孔1133b〜1133eが形成されている。
突出部1133aは、X方向およびY方向に沿って併設されている。隣り合う突出部1133aとの間隔や直径は、試料溶液のフローセル110内部における所望の流速プロファイルや粘性などフローセル110に導入される試料溶液の特性に応じて、空洞部1133の位置により異なるように形成されている。これにより、空洞部1133内部の単位体積当たりの表面積は、試料流体の所望の流速プロファイルや試料流体の特性に応じて、空洞133内部の位置により異なるようになっている。
上述した貫通孔1131は、開口部1122および第1の基板111の上面とともに、第1の基板の上面を底とする略円柱状の空間からなる導入口114を形成する。
また、上述した蛇行溝1132は、第2の基板113とシート状部材112とが接することにより蛇行した抵抗流路116を形成する。この抵抗流路116は、水溶液に対して毛細管現象が発現する範囲の断面寸法とされる。
上述したような第2の基板113は、例えば、所定のパターンが形成された金型を用いた射出成形加工、レーザ加工、エンドミル等による切削加工などによって、作製することができる。
<フローセルの製造方法>
次に、本実施例に係るフローセル110の製造方法の一例について説明する。まず、第1の基板111上にシート状部材112を載置する。ここで、Au層111aを第1の基板111の一部のみに設けた場合、測定流路115を形成するスリット1121が上記Au層111aと当接するように、第1の基板111上にシート状部材112を載置する。
次に、貫通孔1131と開口部1122とが連続し、かつ蛇行溝1132の一端がスリット1121の他端内部に位置するように、シート状部材112上に第2の基板113を載置する。
このように第1の基板111、シート状部材112および第2の基板113を積層すると、これらを第1の基板111の下面側と第2の基板113の上面側から押圧する。これにより、両面テープなどからなるシート状部材112を介して第1の基板111と第2の基板113が互いに固定され、導入口114,測定流路115,抵抗流路116および吸引ポンプ117を備えたフローセル110が完成する。
<フローセルの動作>
次に、本実施例に係るフローセル110の動作について説明する。
まず、導入口114に試料溶液が注入されると、この試料溶液は、毛細管現象により測定流路115および抵抗流路116の順で進み、吸引ポンプ117に流入する。この吸引ポンプ117の内部は、複数の突出部1133aが形成されているので、この突出部1133aが形成されていない場合よりも単位体積当たりの表面積が大きくなっており、毛細管現象が発現する寸法となっている。本実施例においては、吸引ポンプ117内部の試料溶液の液面に作用する表面張力が、導入口114内部の試料溶液の液面に作用する表面張力よりも大きくなるように、突出部1133aの形状や間隔等が設定されている。したがって、導入口114に注入された試料溶液は、測定流路115および抵抗流路116を通って吸引ポンプ117に流入し、この吸引ポンプ117内部を進行していく。
吸引ポンプ117に流入した試料溶液は、表面張力により吸引ポンプ117内部を進行していくが、試料溶液にかかる表面張力の大きさは、単位体積当たりの表面積の大きさに依存する。単位体積当たりの表面積が大きいと、試料溶液にかかる表面張力が大きくなるため、試料溶液は、あたかも強い吸引力で吸入されるかのように速い流速で吸引ポンプ117内部を進行する。したがって、測定流路115においても、試料溶液は速い速度で流れることとなる。逆に、単位体積当たりの表面積が小さいと、試料溶液にかかる表面張力が小さくなり、試料溶液は低い流速で吸引ポンプ117内部を進行する。したがって、測定流路115においても、試料溶液は低い速度で流れることとなる。このように、測定流路115を流れる試料溶液の流速は、吸引ポンプ117内部の単位体積当たりの表面積に依存する。このため、吸引ポンプ117内部において、単位体積当たりの表面積を変化させると、この変化に応じて測定流路115を流れる試料溶液の流速も変化することとなる。
フローセル110内部において試料溶液にかかる抵抗を無視した場合、例えば、図48Aに示すように突出部1133aの直径および間隔を一様に形成すると、試料溶液は、図49Aに示すように一様な流速で流れていく。一方、図48Bに示すように、突出部1133aの直径および間隔を符号aで示す領域から符号dで示す領域に向かって徐々に小さくなるように形成すると、図50Aに示すように試料流体の流速は徐々に速くなる。このように、突出部1133aの直径および間隔を適宜設定することにより、吸引ポンプ117内部における試料溶液の流速のプロファイルを制御することができる。したがって、フローセル110の用途や試料溶液の特性に応じて流速のプロファイルを設定することにより、測定結果の分析を容易に行うことができるようなる。この原理について、以下に説明する。
図11に示したような測定装置において、フローセル110の測定流路115に抗体やDNA断片を固定し、これに選択的に結合する検体の有無(生体反応量)を検出する場合、図48Aに示すように直径および間隔が一様に形成された突出部1133aを有するフローセル110を用いて測定を行うと、フローセル110の測定流路115における流速は、図49Aに示すように一定となる。このように一定の流速で測定を行うと、生体反応量は、一般に図49Bに示す指数関数のような曲線のプロファイルを描く。すなわち、生体反応量は、最初は多いが、時間の経過とともに徐々に少なくなっていく。
通常、上述した測定装置では、試料溶液に検出対象物質が含まれているか、検出対象物質の量がしきい値を超えるか否かなどについて、測定結果を基に検出している。図49Bに示す指数関数のようなプロファイルの測定結果では、しきい値と測定値との比較などを肉眼で行うことが困難であるので、測定結果の分析に手間がかかっていた。ここで、もし、測定結果やしきい値が直線などの単純なプロファイルであれば、肉眼であっても測定結果の分析を容易に行うことが可能である。そこで、本実施例では、試料溶液の特性に応じて吸引ポンプ117内部の突出部1133aの直径や間隔を設定し、試料溶液の流速を変化させることにより生体反応量をも変化させて、測定結果が所望するプロファイルを描くようにした。
一例として、図50Bに示すように、一次関数の反応プロファイルが得られる流速プロファイルが得られるように、突出部1133aの直径や間隔を設定すればよい。具体例として、測定結果が図49Bのような曲線のプロファイルを描いた場合には、図50Bに示すように、図49Bのプロファイルをその一次関数に対して線対称に変換し、これが流速となるよう突出部1133aの直径や間隔を設定すればよい。すなわち、最初は流速が遅く、徐々に流速が早くなるように、測定流路115との接続点からの距離に応じて突出部1133aの直径や間隔を変化させる。この場合、例えば、図48Bに示すように、試料溶液の上流側から下流側に向かって、突出部1133aの密度が上がるような構造にすることにより、図50Aに示すような流速のプロファイルを実現することができる。
したがって、例えば、モデルとなる試料溶液やしきい値に相当する試料溶液の測定結果のプロファイルが一次関数を描くように、測定流路115との接続点からの距離に応じて突出部1133aの直径や間隔を設定し、測定流路115内の試料流体の流速を制御することにより、測定結果の分析を容易に行うことができる。具体的には、図51に示すように、試料溶液の測定結果のしきい値が符号αで示す直線のプロファイルを描くように突出部1133aが設けられたフローセル110を予め形成しておき、このフローセル110を用いて試料溶液の測定を行う。得られた測定結果を、上述した直線αで示すプロファイルと比較すると、測定結果が直線αよりも上側にある場合は、その試料流体の生体反応量がしきい値以上であり、逆に下側にある場合は、その生体反応量がしきい値以下であることを示すこととなる。このように、モデルとなる試料溶液やしきい値に相当する試料溶液の測定結果のプロファイルを一次関数などの所定の形状を描くようにすることにより、測定結果を肉眼等で容易に分析することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、測定結果が所定のプロファイルに対応するように、例えば測定結果のプロファイルがその所定のプロファイルの上側または下側の何れに位置するかを判定するだけで、測定結果がしきい値以上か以下かを判別することができる。なお、検体濃度によっても測定結果のプロファイルは変化するが、フローセル110を予め様々な濃度に応じて設定したり、異なる検体に対しても測定結果が全て同じプロファイルを描くようにフローセル110を設定しておけば、判定を全て同じプロトコルで行うことができる。これは、フローセル110が基準となる測定結果のデータを集積しているということになる(例えば、予め設定した所定のプロファイルが基礎のデータとなる)。
また、上述したように肉眼での判定のみならず、測定装置においてもその判定を容易に行うことができる。すなわち、従来では、測定結果のプロファイルを指数関数等でフィッティングし、これから傾きを求めて検体の濃度を測るというプロトコルを用いて測定結果を判定していたので、演算処理等に手間がかかり、測定装置にもある程度の処理能力を備えていることが求められていた。しかしながら、本実施例にかかるフローセル110によれば、しきい値の判定を行う場合、例えば一次関数の上側または下側の何れかを判定すればよいだけなので、従来よりも演算負荷を低減することができる。また、濃度や検体を変更した場合であっても、測定結果が所定のプロファイルに対応するようフローセル110を設定しておくことにより、測定装置においては、従来のプロトコルをそのまま用いることができるので、アップデート等が不要となる。
また、本実施例に係るフローセル110は、試料溶液に含まれる検体の濃度が低い場合に特に有効である。これは、測定結果、すなわち抗原抗体反応量が、フローセル110内部を流れる試料流体の流速に依存するからである。検体濃度が十分に高い場合には、流速が遅くても抗原抗体反応により消費される検体の数より多くの検体が供給され、流速の影響が見られない。しかしながら、検体濃度が低い場合には、単位時間当たりの反応によって消費できる検体数が流れてくる検体数よりも多くなるため、反応量が流速(供給される検体数)に比例することになる。そこで、本実施例のように、吸引ポンプ117内部の突出部1133aの幅や間隔を調整し、フローセル110内部を流れる試料流体の流速のプロファイルを制御することにより、抗原抗体反応量が流速に依存する検体濃度領域の試料流体を用いる場合であっても、所望するプロファイルの測定結果を得ることができ、結果として容易に測定結果の分析を行うことができる。
なお、予め設定する測定結果のプロファイルは、上述したような一次関数に限定されず、適宜自由に設定することができる。また、一次関数のプロファイルを取得する手法についても、上述したような線対称に変換する手法に限定されず、例えば所定の係数や関数を測定結果に乗算するなど、各種手法を適宜自由に用いることができる。
また、本実施例では、フローセル110が全体として平面視略矩形の形状を有する場合を例に説明したが、フローセル110の平面形状はこれに限定されず、フローセル110を搭載する測定装置等の形状に応じて、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、抵抗流路116を設ける場合を例に説明したが、この抵抗流路116は設けず、測定流路115と吸引ポンプ117とを直接に接続するようにしてもよい。また、抵抗流路116の形状、すなわち蛇行溝1132の形状についても、上述したクランク状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、第1空洞部1133の内部に形成された突出部1133aの端部が、第1のシート状部材112と接触する場合を例に説明したが、その端部は開放端となる、すなわちシート状部材と接触しないようにしてもよい。これにより、突出部1133aを短くした分だけ吸引ポンプ117内部の容積が大きくなるので、吸引ポンプ117の容量を大きくすることができる。また、突出部1133aの端部およびこの端部と当接していた第1のシート状部材112の部分が露出することとなるので、大きな表面積を保つのみならず、場合によっては表面積をさらに大きくすることが可能となり、この場合には吸引力をさらに大きくすることができる。また、例えば飲食物や体液などの夾雑物を含む試料溶液をフローセルに注入する場合、従来では、その夾雑物が吸引ポンプ117内部に詰まってしまうことがあった。しかしながら、上述したように突出部1133aの端部が第1のシート状部材112に接触しないようにすることにより、これらの間に空隙が形成されるので、この空隙を夾雑物が通過することが可能となり、結果として、その夾雑物が吸引ポンプ117内部に詰まるのを防ぐことができる。
また、本実施例では、スリット1121が平面視略矩形の形状を有し、かつシート状部材112の略中央部に設けた場合を例に説明したが、スリット1121がAu層111a上を通過するのであれば、スリット1121の形状および設ける位置については上述した場合に限定されず、適宜自由に設定することができる。したがって、スリット1121により構成される測定流路115の形状および位置についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、開口部1122が平面視略円形の形状を有する場合を例に説明したが、開口部1122が第2の基板113の貫通孔1131と連続する位置に存在するのであれば、開口部1122の形状は平面視略円形に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、導入口114の形状についても、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、空洞部1133が平面視略矩形の形状を有する場合を例に説明したが、空洞部1133の平面形状は略矩形に限定されず、適宜自由に設定することができる。同様に、空洞部1133内部に形成された突出部1133aの形状についても、空洞部1133内部の表面積が増加するのであれば略円柱状の形状に限定されず、適宜自由に設定することができる。
また、本実施例では、シート状部材112を設けるようにしたが、これを設けずに第1の基板111および第2の基板113から構成するようにしてもよい。この場合、シート状部材112に形成された各スリットを第1の基板111または第2の基板113に形成し、これらの側部に係着する部材を設けて互いを接合したり、接着剤などにより互いを接着したりすることにより実現することができる。
[第11の実施例]
次に、本発明に係る第11の実施例について説明する。
近年、マイクロTAS、マイクロコンビナトリアルケミストリー、化学IC、化学センサ、バイオセンサ、微量分析、電気化学分析、QCM分析、SPR分析、ATR分析等の微量の液体を用いた測定・分析が広く利用されている。
例えば、文献5に記載されたSPR分析では、液体中に存在する原因菌を検知するために、この原因菌に由来する抗原に反応する抗体を配置した検出部を設け、この検出部上に測定対象となる液体を流通させ、抗原抗体反応を起こさせて、この反応を表面プラズモン共鳴(SPR)法によって検出する。
このように微量の液体を流通させる手段として、例えば文献4に記載されているように、合成樹脂等の板材に対して微細加工を施して様々なパターンの溝等を形成し、毛細管現象を利用した毛細管ポンプによって液体を移送するフローセルが使用されている。
ここで、文献4に記載された毛細管ポンプを用いたフローセルにおいては、シリコン基板(一の基板)に微小な溝を設け、これにポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる基板(他の基板)を積層させることによって流路を形成し、この流路の一端を毛細管ポンプに接続している。ここで、PDMSはシリコンゴムの一種であって弾力性に富んでいるので、流路となる溝を形成した一の基板の上に他の基板を積層した際に、他の基板が十分に弾性変形することによって溝の側壁と他の基板とが密着して空隙が生じることがなくなり、流路からの液体の漏れが防止される。
また、アクリル樹脂等の剛性のある基板の間に弾性部材からなるシール部材を挟み込むことによっても、溝の側壁と他の基板との間に空隙が生じることがなくなり、液体の漏れ等を防止することが可能となる。
しかしながら、PDMSからなる基板を用いた場合、原料費が高く、フローセルの製作コストが増加してしまう。また、例えば表面プラズモン共鳴装置の所定の場所にこのフローセルを載置した場合に、基板自体が弾性変形することによって抗体が配設された検出部が所定の位置に配置されなくなるといった問題があった。さらに、基板自体の剛性が低いために変形し易く、流路が潰れてしまうおそれがあった。
また、シール部材を使用した場合、部品点数が増加するとともに薄いシール部材を取り扱うのが困難であって、やはり、フローセルの製造コストが増加するといった問題があった。
本実施例は、このような事情を考慮してなされたもので、剛性のある基板を用いて液体の漏れのない流路を形成し、この流路に液体を確実に流通させることが可能なフローセルを提供することを目的とするものである。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本実施例に係るフローセルは、第1の基板と、この第1の基板に積層される第2の基板と、を有し、前記第1の基板と前記第2の基板との間に複数の柱状部材が立設されており、これら複数の柱状部材は、その外周面に接触した液体に作用する表面張力が互いに異なる第1柱状部材と第2柱状部材とを備え、前記複数の柱状部材によって前記第1柱状部材の並設方向に液体が流通する流路が形成されていることを特徴としている。
この構成のフローセルによれば、第1の基板と第2の基板との間に、その外周面に接触した液体に作用する表面張力が互いに異なる第1柱状部材と第2柱状部材とを備えた複数の柱状部材が立設され、前記複数の柱状部材によって前記第1柱状部材の並設方向に液体が流通する流路が形成されているので、第1の基板や第2の基板に溝を設けることなく、第1柱状部材と第2柱状部材との前記表面張力の差を利用して流路を形成することができる。
詳述すると、第1柱状部材と第2柱状部材とで前記表面張力に差を設けることで、第1柱状部材の並設方向に向けて液体を選択的に移送し、第2柱状部材が設けられた部分への液体の流れ込みを防止しているのである。このように表面張力差を利用しているので、流路となる第1柱状部材の列の側方に空隙が形成されていても液体は第1柱状部材の列に沿って流れることになり、液体の漏れが発生しないのである。よって、第1の基板と第2の基板とを密着させなくても液体の漏れを防止したフローセルを提供することが可能となる。
ここで、前記第1柱状部材の表面を親水性とし、前記第2柱状部材の表面を疎水性とする構成を採用することが好ましい。
この場合、第1柱状部材の表面が親水性とされているので、液体の濡れ性がよく、液体が第1柱状部材側へと流れることになる。一方、第2柱状部材の表面が疎水性とされているので、液体の濡れ性が悪く液体をはじくことになり、第2柱状部材側への液体の侵入を防止することができる。これにより、第1柱状部材の並設方向に向けて流路が形成されることになる。
また、前記第1柱状部材は、前記流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に生じる形状および配置とされ、前記第2柱状部材は、表面張力が離散的に生じる形状および配置とされた構成を採用することが好ましい。
この場合、第1柱状部材は、前記流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用する形状および配置とされているので、この表面張力によって液体が流路の延在方向に向けて流れることになる。一方、前記第2柱状部材は、表面張力が離散的に生じる形状および配置とされているので、液体が第2柱状部材側に侵入することを防止できる。
ここで、前記第1柱状部材の突出方向に直交する断面のアスペクト比が1より大きく、前記第1柱状部材の断面の長手方向が前記流路の延在方向に向けられている構成を採用することが好ましい。
この場合、前記第1柱状部材の断面のアスペクト比が1より大きく、つまり、前記第1柱状部材の断面が長手方向に伸びる形状をなしており、この長手方向が前記流路の延在方向に向くように、前記第1柱状部材が配設されているので、前記流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用する部分が多く存在することになり、この表面張力によって液体が流路の延在方向に向けて流れることになる。
また、前記流路の延在方向に直交する断面において、前記第1柱状部材が少なくとも1つ配置されていることが好ましい。
この場合、前記流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用することになり、この表面張力によって液体を流路の延在方向に向けて確実に移送させることができる。
前記流路の延在方向に並設された前記第1柱状部材の列が、少なくとも一対形成され、これら一対の前記第1柱状部材の列の間に、前記柱状部材が配置されない通路部が形成される構成を採用してもよい。
この場合、通路部を挟んで配設された一対の前記第1柱状部材の列によって液体が吸引されることになり、この吸引力によって通路部を液体が流れることになる。また、前記柱状部材が配置されない通路部が形成されているので、この通路部に、液体の測定・分析を行う際に使用する検出部を設けることが可能となる。
また、この通路部に、前記流路の延在方向に延びるガイド突条部を形成してもよい。 この場合、ガイド突条部の表面に作用する表面張力が流路に延在する方向に連続的に作用することになり、液体が流路に沿って流れ易くなる。
さらに、前記流路の一部に、前記第1の基板側に前記柱状部材が配設されない空隙部が形成される構成を採用してもよい。
この場合、第1の基板側の空隙部に、液体の測定・分析を行う際に使用する検出部を設けることができ、複数の柱状部材に干渉することなく検出部にて液体の測定・分析を行うことができる。
また、前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方が、光を透過する材料で構成されることが好ましい。
この場合、第1の基板の外側から光を入射させることが可能となり、例えば表面プラズモン共鳴法のように光を用いた測定・分析を行うことができる。
さらに、前記流路に前記液体を導入する導入口と、前記流路内の前記液体を吸引するポンプ部と、を備える構成とすることが好ましい。
この場合、導入口から導入された液体をポンプ部で吸引することによって、流路内に液体を確実に流通させることができる。また、外部にポンプ等の部材を設けることなく液体を流通することができるので、このフローセルを用いた測定・分析を簡単に行うことができる。
本実施例によれば、剛性のある基板を用いて液体の漏れのない流路を形成し、この流路に液体を確実に流通させることが可能なフローセルを提供することができる。
<フローセルの構成>
次に、本発明の第11の実施例であるフローセルの詳細について、図52、図53および図54を参照して説明する。
本実施例であるフローセル120は、第1の基板1220と、この第1の基板1220に積層される第2の基板1230と、第1の基板1220と第2の基板1230との間に形成された流路1212と、を有している。
第1の基板1220は、剛性が比較的高く、かつ、光を透過可能な材料で構成されており、本実施例では透明なガラス基板で構成されている。この第1の基板1220は、矩形平板状をなし、第2の基板1230に対向配置される対向面1221とこの対向面1221に対して平行な底面1222とを備えており、対向面1221および底面1222は平滑な平面とされている。
また、対向面1221の中央部付近には、検出する物質に反応する検出部1223が設けられている。本実施例では、この検出部1223は、対向面1221に形成された厚さが100nm以下の金属膜と、この金属膜の上に塗布された抗体膜と、を備えている。
第2の基板1230は、例えばポリマー等の合成樹脂で構成されている。この第2の基板1230は、概略矩形平板状をなし、第1の基板1220に対向配置される対向面1231とこの対向面1231に平行に延びる上面1232とを備えている。
第2の基板1230の対向面1231には、断面円形をなす複数の柱状部材1240が立設されている。これら複数の柱状部材1240は、外周面に接触した液体に作用する表面張力が互いに異なる第1柱状部材1241と、第2柱状部材1242とを有している。
本実施例では、図53に示すように、第1柱状部材1241が、第2の基板1230の一の端面(図53において下側)から他の端面(図53において上側)に向かって配列されており、この第1柱状部材1241の列が6列設けられている。一方、第2柱状部材1242は、これら第1柱状部材1241の列の側方にそれぞれ配設されており、第2柱状部材1242の列がそれぞれ9列設けられている。
なお、本実施例では、図53に示すように、第1柱状部材1241および第2柱状部材1242が等間隔に配設されている。また、図54に示すように、第1柱状部材1241は、その突出高さが、第2柱状部材1242よりも低くされている。
ここで、第1柱状部材1241は、その表面に親水性処理が施されている。また、第2柱状部材1242は、その表面が疎水性を有している。なお、第1柱状部材1241の表面を親水性とするためには、例えば日本油脂株式会社製の「Lipidure」等の市販の親水性コーティング剤を塗布すればよい。
このような第1の基板1220と第2の基板1230とが積層されることによって、本実施例であるフローセル120が形成される。ここで、第2柱状部材1242が第1の基板1220の対向面1221に当接される。ここで、第2柱状部材1242と第1の基板1220の対向面1221とを、互いに密接させる必要はない。
そして、第1の基板1220と第2の基板1230の間に位置する第1柱状部材1241および第2柱状部材1242によって、液体が流通する流路1212が形成される。
ここで、第1柱状部材1241の表面は親水性処理が施されていて液体との濡れ性が良いため、液体を吸い込むように表面張力が作用することになる。また、第2柱状部材1242の表面が疎水性とされていて液体との濡れ性が悪いため、液体をはじくように表面張力が作用することになる。
よって、流路1212内に導入された液体は、濡れ性の良い第1柱状部材1241が配設された方向に侵入し、濡れ性の悪い第2柱状部材1242が配設された側には侵入しない。これにより、液体は、第1柱状部材1241が配列された方向に向けて選択的に移送される。
また、図54に示すように、第1柱状部材1241は、その突出高さが短くされているので、第1の基板1220の対向面1221との間に空隙が形成され、検出部1223に第1柱状部材31の先端が当接しない構成とされている。
<フローセルの使用例>
次に、本実施例であるフローセルの使用例について説明する。
本実施例であるフローセルは、表面プラズモン共鳴測定装置9101の測定チップとして使用される。
まず、第1の基板1220の検出部1223に、抗原に反応する抗体を塗布しておく。
図55に示すように、表面プラズモン共鳴測定装置9101は、半円柱状をなすプリズム9102を有し、このプリズム9102の上に本実施例であるフローセル120を固定する固定部9103と、プリズム9102を通じてフローセル120の検出部1223にレーザ光を入射するレーザ入射部9104と、この検出部1223で反射されたレーザ光を検知するレーザ検知部9105とを備えている。
本実施例であるフローセル120を、第1の基板1220の底面1222がプリズム9102側を向くようにして固定部9103に固定する。
フローセル120の流路1212に液体を導入すると、液体が第1柱状部材1241の配列方向に沿って流通し、検出部1223の上を液体が通過することになる。
この液体に抗原が存在した場合には、流路1212を流通する液体中の抗原と検出部1223に塗布された抗体とが抗原抗体反応を起こし、検出部1223表面の屈折率を変化させる。その変化を表面プラズモンとエバネッセント波が共鳴する周波数の変化として検出することで、抗原の有無を判断する。
このような構成とされた本実施例であるフローセル120によれば、第2の基板1230の対向面1231に、第1柱状部材1241と、この第1柱状部材1241の外側に位置した第2柱状部材1242とが立設され、第1柱状部材1241の表面に親水性処理が施され、第2柱状部材1242の表面が疎水性とされているので、第1柱状部材1241と第2柱状部材1242とでは、外周面に接触した液体に作用する表面張力が互いに異なることになる。
ここで、第1柱状部材1241の表面が親水性とされているので、濡れ性がよく、液体が第1柱状部材1241側へと流れる。一方、第2柱状部材1242の表面が疎水性とされているので、濡れ性が悪く液体をはじくことになり、第2柱状部材1242側への液体の侵入は防止される。このようにして、第1柱状部材1241の配列方向に向けて流路1212が形成されることになる。
こうして形成された流路1212においては、流路1212の外側に第2柱状部材1242が配設されていることから、流路1212の外側部分に第1の基板1220と第2の基板1230の間の隙間が生じていても液体は第1柱状部材1241の配列方向に沿って流れることになり、この隙間からの液体の漏れが発生しない。このため、第1の基板1220と第2の基板1230とを密着させることなく、液体の漏れを防止したフローセル120を提供することが可能となる。したがって、第1の基板1220と第2の基板1230との間に弾性変形するシール部材等を介装する必要がなく、また、対向面1221の面粗度を必要以上に向上させる必要はなく、このフローセル120を安価に製作することができる。
また、第1柱状部材1241の突出高さが第2柱状部材1242の突出高さよりも低くされ、検出部1223に第1柱状部材1241の先端が接触しない構成とされているので、液体の測定を行う際に、第1柱状部材1241に光が干渉することがなく、かつ、センサ表面での反応を阻害することがなく、液体の測定・分析を精度良く行うことができる。
さらに、本実施例では、第1柱状部材1241にのみ親水性処理を施して第2柱状部材1242との表面張力の差を形成しており、つまり、親水性処理を行うことによって第1柱状部材1241と第2柱状部材1242とをそれぞれ形成しているので、等間隔に配列された柱状部材1240の任意の位置に親水性処理を施すことで第1柱状部材1241とし、残りの部分を第2柱状部材1242として、任意の方向、位置に流路1212を形成することができる。
[第12の実施例]
次に、本発明の第12の実施例について図56、図57および図58を参照して説明する。この第12の実施例においては、第1柱状部材1341と第2柱状部材1342との形状と配置が、第11の実施例と異なっている。
第1柱状部材1341は、図56および図57に示すように、その突出方向に直交する断面形状が概略長円状をなしており、長手方向長さと短手方向長さとの比、いわゆるアスペクト比γ1が1よりも大きくなるように設定されている。第1柱状部材1341は、第1柱状部材1341の長手方向が流路1312の延在方向に向くように配置されている。また、第1柱状部材1341は、流路1312の延在方向に向けて3列形成されており、中央列の第1柱状部材1341が左右列の第1柱状部材1341に対して流路1312の延在方向位置が異なるように配設されている。これにより、流路1312の延在方向に直交する断面には、少なくとも1つの第1柱状部材1341が存在することとなる。
第2柱状部材1342は、図56および図57に示すように、その突出方向に直交する断面形状が真円状をなしており、長手方向長さと短手方向長さとの比、いわゆるアスペクト比γ2が1に設定されている。そして、この第2柱状部材1342は、図57に示すように、平面視して、どの方向に向けても非連続的となるように配列されている。
このような構成とされた第12の実施例であるフローセル130においては、第1柱状部材1341の長手方向に表面張力が連続的に作用することになり、第1柱状部材1341の短手方向や第2柱状部材1342が配設された部分では表面張力がどの方向に向けても離散的に作用することになる。すると、液体は、表面張力が連続的に作用する第1柱状部材1341の長手方向に沿って選択的に侵入することになり、第1柱状部材1341および第2柱状部材1342によって流路1312が形成されることになる。
そして、表面張力が離散的に作用する第2柱状部材1342側には液体が侵入しないことになる。よって、第1の基板1320と第2の基板1330との間に弾性変形するシール部材等を介装する必要がなく、また、第1の基板1320の対向面1321の面粗度を必要以上に向上させる必要はなく、このフローセル130を安価に製作することができる。
また、本実施例では、流路1312の延在方向に直交する断面において第1柱状部材1341が少なくとも1つ配置されるように構成されているので、流路1312の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用することになり、この表面張力によって液体を流路1312の延在方向に向けて確実に移送させることができる。
[第13の実施例]
次に、本発明の第13の実施例について図59、図60および図61を参照して説明する。この第13の実施例においては、第1柱状部材1441と第2柱状部材1442との配置が、第11の実施例と異なっている。
この第13の実施例であるフローセル140においては、第1の基板1420と第2の基板1430との間に、流路1412の延在方向に並設された第1柱状部材1441の列が6列形成されており、6列の第1柱状部材1441の列の中央部に柱状部材1440が配置されない通路部1443が形成されている。つまり、通路部1443の側方に、それぞれ第1柱状部材1441の列が3列ずつ配置されているのである。また、第1柱状部材1441の側方には第2柱状部材1442が形成されている。
ここで、第1柱状部材1441の表面に親水性処理が施されて親水性とされ、第2柱状部材1442の表面は疎水性とされており、第1柱状部材1441と第2柱状部材1442とでは、外周面に接触した液体に作用する表面張力が互いに異なるように構成されている。
このような構成とされた第13の実施例であるフローセル140においては、通路部1443を挟んで配設された一対の第1柱状部材1441の列によって液体が吸引されることになり、この吸引力によって通路部1443を液体が流れることになる。また、柱状部材1440が配置されない通路部1443が形成されているので、この通路部1443に検出部1423を設けることが可能となる。
なお、図62および図63に示すように、通路部1443に流路1412の延在方向に延びるとともに柱状部材1440よりも突出高さが低くされたガイド突条部1444を形成してもよい。この場合、ガイド突条部1444の表面に作用する表面張力が流路1412に延在する方向に連続的に作用することになり、液体が流路1412に沿ってさらに流れ易くなる。
以上、本発明のに係る一実施例であるフローセル120〜140について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第1の基板をガラス基板で構成し、第2の基板を合成樹脂で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、樹脂材料、金属、セラミックス等で構成されたものであってもよい。
また、表面プラズモン共鳴法に利用されるフローセルとして説明したが、これに限定されることはなく、他の分析等に使用してもよい。
さらに、疎水性の柱状部材を形成し、この柱状部材の表面に親水性処理を施して第1柱状部材と第2柱状部材とを形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば第1の基板を疎水性材料で構成して第2柱状部材を立設し、第2の基板を親水性材料で構成して第1柱状部材を立設してもよい。逆に、第1の基板を親水性材料で構成して第1柱状部材を立設し、第2の基板を疎水性材料で構成して第2柱状部材を立設してもよい。
また、第2の基板の対向面に立設された複数の柱状部材によって流路を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、対向面に凹溝部を設けて、この凹溝部内に複数の柱状部材を配設して流路を形成してもよい。
また、流路に液体を導入する導入口を設け、この導入口から液体を圧入するように構成してもよい。
さらに、流路の一端に液体を導入する導入口を設け、流路の他端に、毛細管ポンプ部を設けて、導入口から毛細管ポンプ部へと液体が流通するように構成してもよい。
[第14の実施例]
次に、本発明に係る第14の実施例について説明する。
近年、マイクロTAS、マイクロコンビナトリアルケミストリー、化学IC、化学センサ、バイオセンサ、微量分析、電気化学分析、QCM分析、SPR分析、ATR分析等の微量の液体を用いた測定・分析が広く利用されている。
例えば、文献5に記載されたSPR分析では、液体中に存在する原因菌を検知するために、この原因菌由来の抗原に反応する抗体が配置された検出部を設け、この検出部上に測定対象となる液体を流通させ、抗原抗体反応を起こさせて、この反応を表面プラズモン共鳴(SPR)法によって検出する。
微量の液体を流通させる手段として、例えば文献4に記載されているように、合成樹脂等の板材に対して微細加工を施して様々なパターンの溝等を形成し、毛細管現象を利用した毛細管ポンプによって液体を移送するフローセルが使用されている。この文献4に記載されたフローセルにおいては、シリコン基板に微小な溝を設け、これにポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる基板を積層させることによって流路を形成し、この流路の一端を毛細管ポンプに接続している。
また、アクリル樹脂等の剛性のある基板の間に弾性部材からなるシール部材を挟み込むことによって構成されたフローセルも提案されている。
しかしながら、従来のように、基板に微小な溝等を形成するためには高精度の加工を行う必要があり、フローセルの製作コストが非常に高くなっていた。
また、流路からの液漏れを防止するためには、一の基板と他の基板を隙間なく密着させる必要があるが、接着剤等を使用したり、熱溶着したりする際において、一の基板と他の基板との面粗度を精度良く一致させることは困難であった。また、一の基板と他の基板とを密着させるために高圧力下で接合することも考えられるが、この場合、フローセルの製造コストが大幅に増加してしまうことになる。
よって、従来では、PDMSのような弾性材からなる基板を用いたり、弾性材からなるシール部材を介装したりする必要があり、フローセルの製造コストがさらに増加する傾向にあった。
本実施例は、このような事情を考慮してなされたもので、低コストで製作可能であり、かつ、流路近傍を密着させるように接合することが可能なフローセルおよびフローセルの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本実施例のフローセルは、第1の基板と、この第1の基板の上に積層される第2の基板と、を有し、前記第1の基板には、前記第2の基板に対向する対向面から立設する複数の第1柱状部材が形成され、前記第2の基板には、前記第1の基板に対向する対向面から立設する複数の第2柱状部材が形成されており、これら前記第1柱状部材と前記第2柱状部材とが互いに咬合された接合部によって、前記第1の基板と前記第2の基板とが接合されており、前記第1柱状部材と前記第2柱状部材とが咬合されない非接合部に、液体を流通する流路が形成されていることを特徴としている。
この構成のフローセルによれば、第1の基板の対向面に複数の第1柱状部材が立設され、前記第2の基板の対向面に複数の第2柱状部材が立設されており、これら第1柱状部材と第2柱状部材とが互いに咬合された接合部を備えているので、接着剤等を用いることなく、第1の基板と第2の基板とを接合して一体化することができる。
また、第1柱状部材と第2柱状部材とが咬合されない非接合部が設けられ、この非接合部に液体を流通する流路が形成されているので、2枚の基板を完全に密閉した構造を用いることなく液体の流路を形成することができる。また、流路の近傍に接合部を配置することによって流路近傍で第1の基板と第2の基板とを接合することが可能となる。
ここで、前記非接合部に、前記第1柱状部材を前記流路の延在方向に沿って配列し、この第1柱状部材の列と前記接合部との間に、前記第2柱状部材を配列し、前記非接合部に前記第1柱状部材および前記第2柱状部材を、その外周面に接触した液体に作用する表面張力が互いに異なる構成とすることが好ましい。
この場合、第1柱状部材と第2柱状部材とで前記表面張力に差を設けることで、第1柱状部材の配列方向に向けて液体を選択的に移送し、第2柱状部材が設けられた部分への液体の流れ込みを防止することにより、非接合部に流路を形成することができる。
また、前記非接合部に配列された前記第1柱状部材の表面が親水性とされ、この第1柱状部材の列と前記接合部との間に配列された前記第2柱状部材の表面が疎水性とされていることが好ましい。
この場合、前記非接合部に配列された第1柱状部材の表面が親水性とされているので、液体の濡れ性がよく、液体が第1柱状部材側へと流れることになる。これにより、第1柱状部材の配列方向に向けて流路が形成されることになる。一方、第1柱状部材の列と接合部との間に配設された第2柱状部材の表面が疎水性とされているので、液体の濡れ性が悪く液体をはじくことになり、第2柱状部材側への液体の侵入を防止することができる。これにより、第1の基板と第2の基板とを接合部で接合することによって、流路からの液体の漏れを防止したフローセルを提供することが可能となる。
さらに、前記第1の基板の表面全体が親水性とされ、前記第2の基板の表面全体が疎水性とされている構成を採用してもよい。
この場合、親水性の基板と疎水性の基板とを用いることにより、第1柱状部材や第2柱状部材に親水性処理や疎水性処理を施すことなく、比較的簡単に前述のフローセルを製作することが可能となる。
また、前記非接合部において、前記流路の延在方向に沿って配列された前記第1柱状部材は、前記流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に生じる形状および配置とされ、前記第1柱状部材の列と前記接合部との間に配列された前記第2柱状部材は、表面張力が離散的に生じる形状および配置とされた構成を採用することが好ましい。
この場合、第1柱状部材は、前記流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用する形状および配置とされているので、この表面張力によって液体が流路の延在方向に向けて流れることになる。一方、第1柱状部材の列と前記接合部との間に配列された前記第2柱状部材は、表面張力が離散的に生じる形状および配置とされているので、液体が第2柱状部材側に侵入することを防止できる。
ここで、前記第1柱状部材の断面のアスペクト比が1より大きく、前記第1柱状部材の断面の長手方向が前記流路の延在方向に向けられている構成を採用することが好ましい。 この場合、前記第1柱状部材の断面のアスペクト比が1より大きく、つまり、前記第1柱状部材の断面が長手方向に伸びる形状をなしており、この長手方向が前記流路の延在方向に向くように、前記第1柱状部材が配設されているので、前記流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用することになり、この表面張力によって液体が流路の延在方向に向けて流れることになる。
また、前記非接合部に、前記流路の延在方向に並設された前記第1柱状部材の列が、少なくとも一対形成され、これら一対の前記第1柱状部材の列の間に、前記第1柱状部材および前記第2柱状部材が配置されない通路部が形成されていてもよい。
この場合、通路部を挟んで配設された一対の前記第1柱状部材の列によって液体が吸引されることになり、この吸引力によって通路部を液体が流れることになる。また、前記第1柱状部材および前記第2柱状部材が配置されない通路部が形成されているので、この通路部に、液体の測定・分析を行う際に使用する検出部を設けることが可能となる。
前記流路に、前記流路の延在方向に延びるガイド突条部を形成してもよい。
この場合、ガイド突条部によって表面張力が流路に延在する方向に連続的に作用することになり、液体が流路に沿って流れ易くなる。
また、前記第1の基板または前記第2の基板は、光を透過する材料で構成されていてもよい。
この場合、第1の基板または前記第2の基板の外側から光を入射させることが可能となり、例えば表面プラズモン共鳴法のように光を用いた測定・分析を行うことができる。
さらに、前記流路に前記液体を導入する導入口と、前記流路内の前記液体を吸引するポンプ部と、を備える構成とすることが好ましい。
この場合、導入口から導入された液体をポンプ部で吸引することによって、流路内に液体を確実に流通させることができる。また、外部にポンプ等の部材を設けることなく液体を流通することができるので、このフローセルを用いた測定・分析を簡単に行うことができる。
また、本実施例のフローセルの製造方法は、前述のフローセルの製造方法であって、第1の基板の前記対向面に立設された複数の第1柱状部材と、第2の基板の前記対向面に立設された複数の第2柱状部材とを、互いに咬合させることによって第1の基板と第2の基板とを接合するとともに、前記第1柱状部材と前記第2柱状部材とが咬合されない非接合部に液体が流通される前記流路を形成することを特徴としている。
この構成のフローセルの製造方法によれば、接着剤等を用いることなく、第1の基板と第2の基板とを接合して一体化することが可能となり、低コストでフローセルを製作することができる。
本実施例によれば、低コストで製作可能であり、かつ、流路近傍を密着させるように接合することが可能なフローセルおよびフローセルの製造方法を提供することができる。
<フローセルの構成>
次に、本発明の第14の実施例であるフローセルの詳細について、図64から図66を参照して説明する。
本実施例であるフローセル150は、第1の基板1520と第2の基板1530とが積層された構造とされ、その内部に液体が流通される流路1512を備えている。
第1の基板1520は、図64に示すように、矩形平板状をなし、第2の基板1530に対向配置される対向面には、円柱状をなす複数の第1柱状部材1522が立設されている。ここで、この第1の基板1520は、例えばポリマー樹脂等の合成樹脂からなり、その表面全体が親水化処理によって親水性を示し、第1柱状部材1522の外表面も親水性を備えている。
複数の第1柱状部材1522は、第1の基板1520の一方の端面側(図64において右下側)から他方の端面側(図64において左上側)に向かって配列されている。ここで、第1の基板1520の側方側(図64において左右側)には、第1柱状部材1522bがそれぞれ5列ずつ配列された接合領域1523が形成されており、これら接合領域1523の内側に、第1柱状部材1522aが3列ずつ配列された非接合領域1524が設けられている。
第2の基板1530は、図64に示すように、矩形平板状をなし、第1の基板1520に対向配置される対向面には、円柱状をなす複数の第2柱状部材1532が立設されている。ここで、この第2の基板1530は、剛性が比較的高く、かつ、光を透過可能な材料で構成されており、本実施例では、透明なポリマー樹脂からなり、その表面全体が疎水性を有しており、第2柱状部材1532の外表面も疎水性を備えている。
これら複数の第2柱状部材1532は、第2の基板1530の一方の端面側(図64において右上側)から他方の端面側(図64において左下側)に向かって配列されている。ここで、第2の基板1530の側方側(図64において左右側)には、第2柱状部材1532がそれぞれ6列ずつ配列された接合領域1533が設けられ、この接合領域1533の内側に、第2柱状部材1532が3列ずつ配列された非接合領域1534が設けられている。
また、第2の基板1530の対向面の中央部付近、つまり、非接合領域1534の中央部には、検出する物質に反応する抗体を備えた検出部1536が設けられている。本実施例では、この検出部1536は、対向面に形成された厚さが100nm以下の金属膜と、この金属膜の上に塗布された抗体膜と、を備えている。
このような第1の基板1520と第2の基板1530とが、それぞれの対向面同士が対向した状態で積層される。このとき、接合領域1523、1533においては、図65に示すように、第1の基板1520の第1柱状部材1522bの間に第2の基板1530の第2柱状部材1532が入り込むようにして、第1柱状部材1522bと第2柱状部材1532とが互いに咬合して接合部1513が形成されることになる。このように接合部1513が形成されることにより、第1の基板1520と第2の基板1530とが接合され、本実施例であるフローセル150が形成される。
ここで、図65に示すように、第2の基板1530の非接合領域1534に配設された第2柱状部材1532の列の間に、第1の基板1520の非接合領域1524に配設された第1柱状部材1522aの列が配置され、第1柱状部材1522aおよび第2柱状部材1532とが咬合していない非接合部1514が形成されることになる。
そして、この非接合部1514には、第1の基板1520の非接合領域1524に配設された第1柱状部材1522a、第2の基板1530の非接合領域1534に配設された第2柱状部材1532により、流路1512が画成されることになる。また、流路1512の中央部分には、第1柱状部材1522、第2柱状部材1532が配設されない通路部15が形成されており、この通路部15に検出部1536が配設されることになる。
次に、このように構成されたフローセル150における液体の流れについて説明する。 まず、流路1512に液体が導入される。すると、非接合部1514(非接合領域1524)に配設された第1柱状部材1522aの表面は親水性とされていて液体との濡れ性が良いため、導入された液体を吸い込むように表面張力が作用することになる。また、非接合部1514(非接合領域1534)に配設された第2柱状部材1532の表面が疎水性とされていて液体との濡れ性が悪いため、液体をはじくように表面張力が作用することになる。
すると、液体は、濡れ性の良い第1柱状部材1522aが配設された方向に侵入し、濡れ性の悪い第2柱状部材1532が配設された側には侵入しない。これにより、液体は、第1柱状部材1522aが配列された側に向けて選択的に侵入していき、流路1512内を液体が流通することになる。
次に、本実施例であるフローセル150の使用例について説明する。
本実施例であるフローセル150は、表面プラズモン共鳴測定装置9201の測定チップとして使用される。
まず、第2の基板1530の検出部1536に、抗原に反応する抗体を塗布しておく。
図67に示すように、表面プラズモン共鳴測定装置9201は、半円柱状をなすプリズム9202を有し、このプリズム9202の上に本実施例であるフローセル150を固定する固定部9203と、プリズム9202を通じてフローセル150の検出部1536にレーザ光を入射するレーザ入射部9204と、この検出部1536で反射されたレーザ光を検知するレーザ検知部9205とを備えている。
本実施例であるフローセル150を、第2の基板1530がプリズム9202側となるようにして固定部9203に固定する。
フローセル150の流路1512に液体を導入すると、液体が第1柱状部材1522aの配列方向に沿って流通し、検出部1536の上を液体が通過することになる。
この液体中に抗原が存在した場合には、流路1512を流通する液体中の抗原と検出部1536に塗布された抗体とが抗原抗体反応を起こし、検出部1536表面の屈折率を変化させる。その変化を表面プラズモンとエバネッセント波が共鳴する周波数の変化として検出することで、抗原の有無を判断する。
このような構成とされた本実施例であるフローセル150によれば、第1の基板1520の対向面に複数の第1柱状部材1522が立設され、第2の基板1530の対向面に複数の第2柱状部材1532が立設されており、これら第1柱状部材1522と第2柱状部材1532とが互いに咬合された接合部1513を備えているので、この接合部1513によって第1の基板1520と第2の基板1530とを接合してフローセル150を構成することができる。
また、第1柱状部材1522と第2柱状部材1532とが咬合されない非接合部1514が設けられており、この非接合部1514に液体が流通される流路1512が形成されているので、2枚の剛性を有する基板を完全に密着させる程度の極めて高い面粗度を必要とせず、また、面粗度の不一致を補償するような工程(例えば、高圧力下での接合等)を必要とせず、流路1512を有するフローセル150を低コストで製作することができる。さらに、流路1512の近傍に接合部1513が配置されているので、流路1512近傍において第1の基板1520と第2の基板1530とを確実に接合することができ、より確実に流路1512を形成することができる。
また、非接合領域1524(非接合部1514)に配列された第1柱状部材1522aが、流路1512の延在方向に沿って配列され、この第1柱状部材1522aの列と接合部1513との間に、第2柱状部材1532が配列されており、第1柱状部材1522aの表面が親水性とされ、第2柱状部材1532の表面が疎水性とされているので、第1柱状部材1522aの表面の濡れ性がよく、流路1512に導入された液体が第1柱状部材1522a側へと選択的に流れることになる。これにより、第1柱状部材1522aの配列方向に向けて流路1512が形成されることになる。一方、第1柱状部材1522aの列と接合部1513との間に配設された第2柱状部材1532の表面が疎水性とされているので、濡れ性が悪く液体をはじくことになり、第2柱状部材1532側への液体の侵入を防止することができる。よって、第1の基板1520と第2の基板1530とが完全に密着していなくても液体の漏れを防止したフローセル150を提供することができる。
さらに、非接合領域1524(非接合部1514)に、流路1512の延在方向に配列された3列の第1柱状部材1522aの列が一対形成され、これら一対の第1柱状部材1522aの列の間に、第1柱状部材1522および第2柱状部材1532が配置されない通路部15が形成されており、この通路部15に検出部1536が設けられているので、第1柱状部材1522および第2柱状部材1532に干渉されることなく検出部1536で測定・検知を行うことができる。
また、第1の基板1520の表面全体が親水化処理により親水性とされ、第2の基板1530の表面全体が疎水性とされており、これら第1の基板1520と第2の基板1530とを積層させてフローセル150を構成しているので、第1柱状部材1522や第2柱状部材1532に対して個別に親水性処理や疎水性処理を施す必要がなく、比較的簡単に本実施例であるフローセル10を製作することができる。
[第15の実施例]
次に、本発明の第15の実施例について図68から図70を参照して説明する。この第15の実施例においては、第1柱状部材1622と第2柱状部材1632の配置および非接合部1614に配置された第1柱状部材1622aの形状と配置が、第14の実施例と異なっている。
第1の基板1620は、図68に示すように、矩形平板状をなし、第2の基板1630に対向配置される対向面には、複数の第1柱状部材1622が立設されている。ここで、この第1の基板1620は、例えばポリマー樹脂等の合成樹脂からなり、その表面全体が親水化処理により親水性を示しており、第1柱状部材1622の外表面も親水性を備えている。
複数の第1柱状部材1622は、第1の基板1620の一方の端面側(図68において右下側)から他方の端面側(図68において左上側)に向かって配列されている。第1の基板1620の側方側(図68および図69において左右側)には、円柱状をなす第1柱状部材1622bがそれぞれ8列ずつ配列された接合領域1623が形成されており、これら接合領域1623の内側に、第1柱状部材1622aが3列配列された非接合領域1624が形成されている。
また、図70に示すように、非接合領域1624(非接合部1614)に位置する第1柱状部材1622aは、接合領域1623(接合部1613)に位置する第1柱状部材1622bよりも、その突出高さが低くされている。
ここで、非接合領域1624に配列された第1柱状部材1622aは、後述する流路1612の延在方向に向けて表面張力が連続的に生じる形状および配置とされている。詳述すると、非接合領域1624に配列された第1柱状部材1622aは、図68および図69に示すように、その突出方向に直交する断面形状が概略長円状をなしており、長手方向長さと短手方向長さとの比、いわゆるアスペクト比γ1が1よりも大きくなるように設定されている。この第1柱状部材1622aは、その断面の長手方向が、流路1612の延在方向に向くように配列されている。また、3列配列された第1柱状部材1622aのうち中央列の第1柱状部材1622aは、左右列の第1柱状部材1622aに対して流路1612の延在方向位置が異なるように配列されている。これにより、流路1612の延在方向に直交する断面には、少なくとも1つの第1柱状部材1622aが存在することとなる。
第2の基板1630は、図68に示すように、矩形平板状をなし、第1の基板1620に対向配置される対向面には、円柱状をなす複数の第2柱状部材1632が立設されている。ここで、この第2の基板1630は、剛性が比較的高く、かつ、光を透過可能な材料で構成されており、本実施例では、透明なポリマー樹脂からなり、その表面全体が疎水性を有しており、第2柱状部材1632の外表面も疎水性を備えている。
これら複数の第2柱状部材1632は、第2の基板1630の一方の端面側(図68において右上側)から他方の端面側(図68において左下側)に向かって配列されている。ここで、第2の基板1630の側方側(図68および図69において左右側)には、第2柱状部材1632がそれぞれ9列ずつ配列された接合領域1633が形成されており、この接合領域1633の内側に、3列ずつの第2柱状部材1632が配設された非接合領域1634が設けられている。
また、第2の基板1630の対向面の中央部付近、つまり、非接合領域1634の中央部には、検出する物質に反応する抗体を備えた検出部1636が設けられている。本実施例では、この検出部1636は、対向面に形成された厚さが100nm以下の金属膜と、この金属膜の上に塗布された抗体膜と、を備えている。
ここで、非接合領域1624に配列された第1柱状部材1622aの列と接合領域1623との間に配列された第2柱状部材1632は、表面張力が離散的に生じる形状および配置とされている。詳述すると、第2柱状部材1632は、図68および図69に示すように、その突出方向に直交する断面形状が真円状をなしており、長手方向長さと短手方向長さとの比、いわゆるアスペクト比γ2が1に設定されている。つまり、非接合領域1624に配置された第1柱状部材1622aの前記断面のアスペクト比γ1が第2柱状部材1632の前記断面のアスペクト比γ2よりも大きくなる(γ1>γ2)ように設定されているのである。
このような第1の基板1620と第2の基板1630とが、それぞれの対向面同士が対向した状態で積層される。このとき、接合領域1623、1633においては、図69に示すように、第1の基板1620の第1柱状部材1622bの間に第2の基板1630の第2柱状部材1632が入り込むようにして、第1柱状部材1622bと第2柱状部材1632とが互いに咬合して接合部1613が形成される。このように接合部1613が形成されることにより、第1の基板1620と第2の基板1630とが接合され、本実施例であるフローセル160が形成される。
ここで、図69に示すように、第2の基板1630の非接合領域1634に配設された第2柱状部材1632の列の間に、第1の基板1620の非接合領域1624に配設された第1柱状部材1622aの列が配置され、第1柱状部材1622aおよび第2柱状部材1632が咬合していない非接合部1614が形成されることになる。
そして、この非接合部1614には、第1の基板1620の非接合領域1624に配設された第1柱状部材1622a、第2の基板1630の非接合領域1634に配設された第2柱状部材1632により、流路1612が画成されることになる。ここで、非接合領域1624に配列された第1柱状部材1622aは、接合領域1623に配列された第1柱状部材1622bよりも突出高さが低くされていることから、図70に示すように、この第1柱状部材1622aの突端は第2の基板1630から離間した位置に配置され、空隙が形成されることになる。また、この空隙の部分に検出部1636が配置されている。
このような構成とされた第15の実施例であるフローセル160においては、非接合部1614(非接合領域1624)に配設された第1柱状部材1622aの前記断面の長手方向に沿って表面張力が連続的に作用することになり、第1柱状部材1622aの短手方向や第2柱状部材1632が配設された部分では表面張力が離散的に作用することになる。すると、流路1612内に導入された液体は、表面張力が連続的に作用する第1柱状部材1622aの長手方向に沿って液体が選択的に侵入し、表面張力が離散的に作用する第2柱状部材1632側には液体が侵入しないことになる。加えて、第1柱状部材1622aの表面が親水性とされ、第2柱状部材1632の表面が疎水性とされているので、液体は第1柱状部材1622aの配列方向に向けて流通することになる。
また、本実施例では、流路1612の延在方向に直交する断面において第1柱状部材1622aが少なくとも1つ配置されるように構成されているので、流路1612の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用することになり、この表面張力によって液体を流路1612の延在方向に向けて確実に移送させることができる。
さらに、図70に示すように、この第1柱状部材1622aの突端が第2の基板1630から離間した位置に配置され、空隙が形成されており、この空隙の部分に検出部1636が配置されているので、第1柱状部材1622や第2柱状部材1632に干渉することなく、検出部1636で液体の測定・検知を行うことができる。
[第16の実施例]
次に、本発明の第16の実施例について図71および図72を参照して説明する。
第1の基板1720は、矩形平板状をなし、第2の基板1730に対向配置される対向面には、複数の第1柱状部材1722が立設されている。ここで、この第1の基板1720は、剛性が比較的高く、かつ、光を透過可能な材料で構成されており、その表面全体が親水化処理により親水性を示し、第1柱状部材1722の外表面も親水性を備えている。
複数の第1柱状部材1722は、第1の基板1720の一方の端面側から他方の端面側に向かって配列されている。ここで、第1の基板1720の側方側には、第1柱状部材1722がそれぞれ5列ずつ配列された接合領域が設けられており、これら接合領域の内側には、第1柱状部材1722が3列ずつ配列された非接合領域が設けられている。
ここで、本実施例では、この非接合領域のうち3列ずつ配列された第1柱状部材1722の間に第1柱状部材1722の配列方向に沿って延びる一対のガイド突条部1725が設けられており、この一対のガイド突条部1725の間に、検出する物質に反応する抗体を備えた検出部1726が設けられている。なお、図72に示すように、このガイド突条部1725の突出高さは、第1柱状部材1722の突出高さよりも低くされている。
第2の基板1730は、矩形平板状をなし、第1の基板1720に対向配置される対向面には、円柱状をなす複数の第2柱状部材1732が立設されている。ここで、この第2の基板1730は、剛性が比較的高く、かつ、光を透過可能な材料で構成されており、本実施例では、透明なポリマー樹脂からなり、その表面全体が疎水性を有しており、第2柱状部材1732の外表面も疎水性を備えている。
これら複数の第2柱状部材1732は、第2の基板1730の一方の端面側から他方の端面側に向かって配列されている。ここで、第2の基板1730の側方側には、第2柱状部材1732がそれぞれ6列ずつ配列された接合領域が設けられ、この接合領域の内側に、3列の第2柱状部材1732が配設された非接合領域が設けられている。
このような第1の基板1720と第2の基板1730とが、それぞれの対向面同士が対向した状態で積層される。このとき、接合領域においては、図71に示すように、第1の基板1720の第1柱状部材1722bの間に第2の基板1730の第2柱状部材1732が入り込むようにして、第1柱状部材1722bと第2柱状部材1732とが互いに咬合して接合部1713が形成されることになる。このように接合部1713が形成されることによって、第1の基板1720と第2の基板1730とが接合され、本実施例であるフローセル170が形成される。
ここで、図71に示すように、第2の基板1730の非接合領域に配設された第2柱状部材1732の列の間に、第1の基板1720の非接合領域に配設された第1柱状部材1722aが配置され、第1柱状部材1722aおよび第2柱状部材1732とが咬合していない非接合部1714が形成されることになる。
そして、この非接合部1714には、第1の基板1720の非接合領域に配設された第1柱状部材1722a、第2の基板1730の非接合領域に配設された第2柱状部材1732により、流路1712が形成される。また、流路1712の中央部分には、第1柱状部材1722a、第2柱状部材1732が配設されない通路部1715が形成されており、この通路部1715に位置する部分に検出部1726が配設されている。そして、この通路部1715にガイド突条部1725が配設されている。
このような構成とされた第16の実施例であるフローセル170においては、通路部1715を挟んで配設された第1柱状部材1722aの列によって液体が吸引されることになり、この吸引力によって通路部1715を液体が流れることになる。ここで、この通路部1715に、流路1712の延在方向に延びるガイド突条部1725が形成されているので、ガイド突条部1725によって表面張力が連続的に作用し、液体が流路1712に沿ってさらに流れ易くなる。
以上、本発明の一実施例であるフローセル150〜170について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第1の基板および第2の基板をポリマー樹脂等の合成樹脂で構成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の合成樹脂、ガラス、金属、セラミックス等で構成されたものであってもよい。
また、第15の実施例において、非接合領域1624に配置される第1柱状部材1622aを断面形状が概略長円状をなすものとして説明したが、これに限定されることはなく、流路1612の延在方向に向けて表面張力が連続的に生じる形状および配置とされていればよい。例えば、第1柱状部材1622aを流路1612の延在方向に延びる突条としてもよい。この場合でも、突条をなす第1柱状部材1622aによって流路の延在方向に向けて表面張力が連続的に作用することになり、流路1612を形成することができる。
また、第1柱状部材および第2柱状部材が、突出方向においてその断面形状が一定とされたものを図示して説明したが、これに限定されることなく、例えば円錐台等のように突出方向において断面形状や大きさが異なるものであってもよい。特に、突出方向に向けて漸次縮径する円錐台状とした場合、第1の基板と第2の基板とを積層する際の位置調整が簡単となる。
また、流路を形成した部分に第1柱状部材および第2柱状部材を配設したものとして説明したが、これに限定されることはなく、これら第1柱状部材および第2柱状部材を配設せずに、画成された空間を流路として使用してもよい。
さらに、表面プラズモン共鳴法に利用されるフローセルとして説明したが、これに限定されることはなく、他の分析等に使用してもよい。