本発明の一実施形態について、図1に示す構成のスイッチング電源装置10を例に挙げて、説明する。
同図に示すように、本実施形態に係るスイッチング電源装置10は、いわゆるハーフブリッジ方式と呼ばれるものであり、主電源電力Piとしての商用交流電力をもとに、負荷としての後述するPA(Public Address)用増幅装置100を駆動するための直流の負荷駆動電力Poを生成する。
具体的には、当該スイッチング電源装置10は、商用交流電力Piが入力される入力端子12を備えている。この入力端子12は、電源(L)側端子12aおよび接地(N)側端子12bから成り、このうちの電源側端子12aは、保護手段としてのヒューズ14および電流制限手段としての突入電流制限用抵抗器16を介して、入力側整流手段としてのダイオードブリッジ整流回路18の一方入力端子18aに接続されている。そして、接地側端子12bは、当該ダイオードブリッジ整流回路18の一方入力端子18aと対を成す他方入力端子18bに直接接続されている。さらに、突入電流制限用抵抗器16と並列に、常開接点(a接点)形のリレー20のスイッチ20aが接続されている。なお、突入電流制限用抵抗器16は、セメント抵抗器16aと温度ヒューズ16bとが直列に接続されたいわゆる温度ヒューズ付きセメント抵抗器と呼ばれるものであるが、これに限らず、例えば温度ヒューズ16bを備えない抵抗器単体のものであってもよい。また、説明するまでもないが、ダイオードブリッジ整流回路18は、4つのダイオード18c,18d,18eおよび18fによって構成されている。
ダイオードブリッジ整流回路18の陽極(+)側出力端子18gは、陽極側の電源ライン22に接続されており、陰極(−)側出力端子18hは、陰極側の電源ライン、言わば基準ラインとしての接地ライン24、に接続されている。そして、これら陽極側の電源ライン(以下、単に電源ラインと言う。)22と接地ライン24との間に、入力側平滑手段としての比較的に容量の大きい2つの電界コンデンサ26および28が、直列に接続されている。詳しくは、一方の電界コンデンサ26の陽極端子が、電源ライン22に接続されており、当該一方の電界コンデンサ26の陰極端子は、他方の電界コンデンサ28の陽極端子に接続されている。そして、この他方の電界コンデンサ28の陰極端子が、接地ライン24に接続されている。
さらに、電源ライン22と接地ライン24との間には、抵抗器30と定電圧ダイオード32とが、直列に接続されている。詳しくは、抵抗器30の一方端子が、電源ライン22に接続されており、当該抵抗器30の他方端子は、定電圧ダイオード32のカソード端子に接続されている。そして、定電圧ダイオード32のアノード端子が、接地ライン24に接続されている。さらに、抵抗器30と定電圧ダイオード32との相互接続点に、NPN型のトランジスタ34のベース端子が接続されている。そして、このトランジスタ34のコレクタ端子は、別の抵抗器36を介して、電源ライン22に接続されており、当該トランジスタ34のエミッタ端子は、ダイオード38のアノード端子に接続されている。なお、これらの抵抗器30,定電圧ダイオード32,トランジスタ34,別の抵抗器36およびダイオード38は、図示しない電源スイッチがONされた直後のいわゆる起動時に、後述するFET(Field Effect Transistor)ドライブ回路40を駆動するための電源電圧Vdを生成する起動時ドライブ電源回路42を、構成する。このため、ダイオード38のカソード端子は、当該FETドライブ回路40内の図示しない電源ラインに接続されている。そして、ダイオード38のカソード端子は、雑音除去用の電界コンデンサ44を介して、接地ライン40にも接続されている。詳しくは、このダイオード34のカソード端子は、電界コンデンサ44の陽極端子に接続されており、当該電界コンデンサ44の陰極端子は、接地ライン24に接続されている。
また、電源ライン22と接地ライン24との間には、スイッチング手段としての2つのFET46および48が直列に接続されている。詳しくは、一方のFET46のドレイン端子が、電源ライン22に接続されており、当該一方のFET46のソース端子は、他方のFET48のドレイン端子に接続されている。そして、この他方のFET48のソース端子が、接地ライン24に接続されている。これら2つのFET46および48は、それぞれのゲート端子にFETドライブ回路40から与えられるスイッチング制御信号Swに従って、後述する如くスイッチング動作する。
さらに、各FET46および48の相互接続点には、電圧変換手段としての高周波トランス50の1次側巻線50aの一端が、接続されている。そして、この高周波トランス50の1次側巻線50aの他端は、上述した入力側平滑手段としての2つの電界コンデンサ26および28の相互接続点に、接続されている。
高周波トランス50は、3つの2次側巻線50b,50cおよび50dを有している。このうち、第1の2次側巻線50bは、出力側整流手段としての両波整流回路52に接続されている。この両波整流回路52は、2つのダイオード52aおよび52bを有しており、このうちの一方のダイオード52aのアノード端子に、第1の2次側巻線50bの一端が接続されており、他方のダイオード52bのアノード端子に、当該第1の2次側巻線50bの他端が接続されている。そして、これらのダイオード52aおよび52bのカソード端子は、相互に接続されており、この相互接続点は、出力端子54を構成する陽極(+)側端子54aに接続されている。また、第2の2次側巻線50bは、センタタップ50eを有しており、このセンタタップ50eは、出力端子54を構成する陰極(−)側端子54bに接続されている。さらに、出力端子54の陽極側端子54aと陰極側端子54bとの間には、出力側平滑手段としての電界コンデンサ56が接続されている。詳しくは、陽極側端子54aに接続された陽極ライン58に、電界コンデンサ56の陽極端子が接続されており、陰極側端子54bに接続された陰極ライン60に、当該電界コンデンサ56の陰極端子が接続されている。
そして、高周波トランス50の第2の2次側巻線50cは、常用ドライブ電源回路62に接続されている。この常用ドライブ電源回路62は、上述した起動時ドライブ電源回路42によってFETドライブ回路40を駆動(起動)した後に、当該起動時ドライブ電源回路42に代えてFETドライブ回路40を駆動するための電源電圧Vdを生成するものであり、低電圧整流手段としての半波整流回路64を備えている。
半波整流回路64は、1つのダイオード64aによって構成されており、このダイオード64aのアノード端子に、第2の2次側巻線50cの一端が接続されている。そして、当該ダイオード64aのカソード端子は、上述した電源ライン22とは別の低電圧電源ライン66に接続されている。なお、第2の2次側巻線50cの他端は、上述した接地ライン24に接続されている。
これら低電圧電源ライン66と接地ライン24との間には、低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68が接続されている。詳しくは、低電圧電源ライン66に、この電界コンデンサ68の陽極端子が接続されており、接地ライン24に、当該電界コンデンサ68の陰極端子が接続されている。
また、低電圧電源ライン66には、上述したリレー20の操作コイル20bと抵抗器70とを介して、NPN型のトランジスタ72のコレクタ端子が、接続されている。そして、トランジスタ72のエミッタ端子は、接地ライン24に接続されている。さらに、低電圧電源ライン66と接地ライン24との間に、2つの抵抗器74および76が直列に接続されており、これら2つの抵抗器74および76の相互接続点に、別の抵抗器78および定電圧ダイオード80を介して、トランジスタ72のベース端子が接続されている。なお、定電圧ダイオード80は、そのアノード端子をトランジスタ72のベース端子に接続し、カソード端子を抵抗器78に接続するように、設けられている。
さらに、抵抗器78と定電圧ダイオード80との相互接続点は、電界コンデンサ82を介して、接地ライン24に接続されている。詳しくは、当該抵抗器78と定電圧ダイオード80との相互接続点に、電界コンデンサ82の陽極端子が接続されており、接地ライン24に、電界コンデンサ82の陰極端子が接続されている。また、抵抗器78と並列に、ダイオード84が接続されている。詳しくは、当該抵抗器78と定電圧ダイオード80との相互接続点に、ダイオード84のアノード端子が接続されており、上述した2つの抵抗器74および76の相互接続点に、ダイオード84のカソード端子が接続されている。
そして、低電圧電源ライン66は、ダイオード86を介して、上述したFETドライブ回路40内の電源ラインに接続されている。詳しくは、低電圧電源ライン66に、ダイオード86のアノード端子が接続されており、当該FETドライブ回路40内の電源ラインに、ダイオード86のカソード端子が接続されている。
高周波トランス50の第3の2次側巻線50dは、ミュート制御回路88に接続されている。このミュート制御回路88については、後で詳しく説明する。
さて、このように構成されたスイッチング電源装置10は、次のように動作する。
即ち、今、上述した電源スイッチがOFFの状態にある、とする。この状態においては、リレー20のスイッチ20aはOFFの状態にある。ここで、電源スイッチがONされると、入力端子12(12aおよび12b)に商用交流電力Piが入力され、つまり実効値が100[V]の商用交流電圧Viが印加される。この商用交流電圧Viは、ヒューズ14および突入電流制限用抵抗器16を介して、ダイオードブリッジ整流回路18の入力端子18aおよび18bに印加される。このように起動時に突入電流制限用抵抗器16を介して商用交流電圧Viが印加されることで、当該突入電流制限用抵抗器16よりも後段、つまりダイオードブリッジ整流回路18以降、への突入電流の流入が防止される(厳密には突入電流の大きさ(ピーク)が抑制される)。
ダイオードブリッジ整流回路18は、自身の入力端子18aおよび18bに印加された商用交流電圧Viを全波整流(ブリッジ整流)する。これによって、ダイオードブリッジ整流回路18の出力端子18gおよび18hに全波整流された最大約141[V]の整流後電圧が現れる。そして、この整流後電圧は、電界コンデンサ26および28に印加される。これにより、当該電界コンデンサ26および28が充電され、それぞれの両端間電圧V1およびV2が増大する。そして、この電界コンデンサ26および2の充電後、当該電界コンデンサ26および28が放電および充電を繰り返すことによる平滑作用によって、電源ライン22と接地ライン24との間に概ね135[V]前後の直流電圧が現れる。
このように電源ライン22と接地ライン24との間に直流電圧が現れることで、起動時ドライブ電源回路42が有効化される。即ち、抵抗器30と定電圧ダイオード32との相互接続点に、当該定電圧ダイオード32のツェナ電圧Vzに応じた電圧が現れる。なお、この電圧(ツェナ電圧)Vzは、例えば6[V]〜7[V]とされている。そして、この電圧Vzがトランジスタ34のベース端子に印加されることで、当該トランジスタ34がONする。これにより、電源ライン22と接地ライン24との間に、抵抗器36,トランジスタ34,ダイオード38および電界コンデンサ44の直流回路が形成され、当該電界コンデンサ44が充電される。これに伴い、電界コンデンサ44の両端間電圧、言い換えれば起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaが、増大する。そして、この起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaが、FETドライブ回路40を駆動し得る大きさになると、この出力電圧Vaを電源電圧Vdとして、FETドライブ回路40が駆動(起動)し、つまりFET46および48を制御するための上述したスイッチング制御信号Swを生成する。
FET46および48は、FETドライブ回路40から与えられるスイッチング制御信号Swに従ってスイッチング動作し、詳しくは交互にON/OFFする。これにより、高周波トランス50の1次側巻線50aに、当該FET46および48のスイッチング動作に応じた周波数、例えば120[kHz]〜130[kHz]、の高周波電圧が現れる。
このように高周波トランス50の1次側巻線50aに高周波電圧が現れると、当該高周波トランス50の第1の2次側巻線50bにも同じ周波数の高周波電圧が現れる。なお、この第1の2次側巻線50bに現れる高周波電圧の大きさは、当該2次側巻線50bの巻数(厳密には当該2次側巻線50bの両端からセンタタップ50eまでの巻数)N2およびN3(=N2)と、1次側巻線50aの巻数N1と、の比率(N1:N2またはN1:N3)によって決まる。本実施形態では、次に説明する出力電圧Voの大きさが、例えば24[V]〜280[V]の範囲内の任意の値になるように、これら1次側巻線50aと2次側巻線50bとの巻数比が決められる。
高周波トランス50の第1の2次側巻線50bに現れた高周波電圧は、両波整流回路52によって全波整流(両波整流)され、さらに電界コンデンサ56によって平滑される。これにより、出力端子54(54aおよび54b)に上述した直流の出力電圧Voが現れる。そして、この出力電圧Voを有する直流の負荷駆動電力Poが、当該出力端子54から出力される。なお、この負荷駆動電力Poの最大値(定格出力)は、後述する負荷としてのオーディオ増幅装置100の容量に合わせて、例えば120[W]〜500[W]とされている。
併せて、高周波トランス50の第2の2次側巻線50cにも、高周波電圧が現れる。この第2の2次側巻線50cに現れる高周波電圧の大きさもまた、当該2次側巻線50cの巻数N4と、1次側巻線50aの巻数N1と、の比率(N1:N4)によって決まり、例えば次に説明する電界コンデンサ68の両端間電圧V3が最終的に約16[V]になるように決定される。
この第2の2次側巻線50bに現れた高周波電圧は、半波整流回路64によって半波整流され、さらに電界コンデンサ68によって平滑される。これにより、電界コンデンサ68の両端間、つまり低電圧電源ライン66と接地ライン24との間に、上述したV3という直流電圧が現れる。
そして、このように低電圧電源ライン66と接地ライン24との間に直流電圧V3が現れることで、トランジスタ72のベース端子に、当該トランジスタ72をONさせるのに必要な電圧が印加される。言い換えれば、トランジスタ72のベース端子に定電圧ダイオード80を介して接続された電界コンデンサ82の両端間電圧V4が、当該トランジスタ72をONさせ得る大きさに達する。すると、トランジスタ72がONし、低電圧電源ライン66と接地ライン24との間に、リレー20の操作コイル20b,抵抗器70および当該トランジスタ72の直流回路が、形成される。これにより、リレー20の操作コイル20bに電流が流れ、当該リレー20の上述したスイッチ20aがONされる。この結果、商用交流電圧Viが、突入電流制限用抵抗器16を介さずに、当該リレー20のスイッチ20aを介して直接的に、ダイオードブリッジ整流回路18の入力端子18aおよび18bに印加されるようになり、当該突入電流制限用抵抗器16(セメント抵抗器16a)による電圧降下、つまり損失が、なくなる。
さらに、ダイオード86のカソード端子に現れる電圧、言わば常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbが、上述した起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaよりも大きくなる。すると、起動時ドライブ電源回路42内のトランジスタ34がOFFして、当該起動時ドライブ電源回路42が無効化され、これに代えて、常用ドライブ電源回路62が有効化される。つまり、常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbを電源電圧Vdとして、FETドライブ回路40が駆動するようになる。これにより、FETドライブ回路40を含む本実施形態のスイッチング電源装置10が、起動時から安定時へと移行する。
この起動時から安定時への移行状態を図示すると、例えば図2のようになる。即ち、上述した電源スイッチがONされると、その時点(厳密には起動時ドライブ電源回路42のトランジスタ34がONした時点)t0から、起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaが、指数関数的に増大する。そして、この起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaが、FETドライブ回路40を駆動し得る大きさになると、その時点t1で、当該起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaを電源電圧Vdとして、FETドライブ回路40が駆動し始める。これによって初めて、高周波トランス50の1次側巻線50aに高周波電圧が現れ、これに応じて、当該高周波トランス50の各2次側巻線50b,50cおよび50dに高周波電力が現れる。そして、特に第2の2次側巻線50cに高周波電圧が現れることで、常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の充電が開始され、当該常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbが増大する。なお、電源スイッチがONされた時点t0からFETドライブ回路40が駆動し始める時点t1までの時間Taは、主に起動時ドライブ電源回路42の抵抗器36の抵抗値と当該起動時ドライブ電源回路42の出力部分に設けられた電界コンデンサ44の容量とを含む時定数によって決まり、例えば50[ms]〜60[ms]とされている。
そして、起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaよりも常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbが大きくなると、その時点t2から、当該起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaに代えて、常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbを電源電圧Vdとして、FETドライブ回路40が駆動するようになる。そして、常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の充電が完了すると、その時点t3以降、当該常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbは安定する。なお、電界コンデンサ68の充電が開始された時点(つまりFETドライブ回路40が駆動し始めた時点)t1から当該充電が完了する時点t3までの時間Tbは、主に当該電界コンデンサ68の容量によって決まり、例えば数十[ms]〜百数十[ms]とされている。また、図2においては、起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaよりも常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbが大きくなる時点t2以降も、当該起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaが増大し続けるように表現されているが、これは飽くまで、常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbとの関係を無視した表現である。実際には、時点t2において、起動時ドライブ電源回路42内のトランジスタ34がOFFするので、この時点t2以降、当該起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaは現れなくなる。
これとは別の観点から、上述した入力側平滑手段としての2つの電界コンデンサ26および28それぞれの両端間電圧V1およびV2と、常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の両端間電圧V3と、当該常用ドライブ電源回路62内の別の電界コンデンサ82の両端間電圧V4と、に注目すると、例えば図3(a)のようになる。
即ち、電源スイッチがONされた時点t0で、入力側平滑手段としての2つの電界コンデンサ26および28の充電が開始され、それぞれの両端間電圧V1およびV2が増大する。そして、各電界コンデンサ26および28の充電が完了すると、それぞれの両端間電圧V1およびV2は安定する。さらに、上述の如く時点t1においてFETドライブ回路40が駆動し始めると、常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の充電が開始され、当該電界コンデンサ68の両端間電圧V3が増大する。そして、この電界コンデンサ68の充電が完了すると、当該電界コンデンサ68の両端間電圧V3は安定し、ひいては常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbが安定する。これは、図2に示した時点t3における状態に相当する。
また、時点t1においては、常用ドライブ電源回路62内の別の電界コンデンサ82の充電も開始されるので、当該電界コンデンサ82の両端間電圧V4も増大する。ただし、この電界コンデンサ82の両端間電圧V4は、他の電界コンデンサ26,28および68の両端間電圧V1,V2およびV3に比べて、緩やかに増大し、その増大速度は、主に当該電界コンデンサ82の容量とこれに直列に接続された抵抗器78の抵抗値とを含む時定数によって決まる。そして、この電界コンデンサ82の両端間電圧V4の大きさが所定値Vr以上になると、その時点t4で、常用ドライブ電源回路62内のトランジスタ72がONし、リレー20の操作コイル20bに電流が流れ、ひいては当該リレー20のスイッチ20aがONする。これにより、商用交流電圧Viが、突入電流制限用抵抗器16を回避(バイパス)して、直接的にダイオードブリッジ整流回路18の入力端子18aおよび18bに印加されるようになる。なお、電界コンデンサ82の充電が開始された時点t1から当該電界コンデンサ82の両端間電圧V4が所定値Vr以上になる時点t4までの時間Tcは、上述の時間Tbよりも大きく、例えば0.5[s]程度とされている。そして、この0.5[s]程度という時間Tcは、主に電界コンデンサ82の容量とこれに直列接続された抵抗器78の抵抗値とを含む上述の時定数によって決まる。
このように時点t4において商用交流電圧Viが突入電流制限用抵抗器16を回避することで、当該突入電流制限用抵抗器16による電圧降下がなくなる。これに伴い、入力側平滑手段としての電界コンデンサ26および28の両端間電圧V1およびV2が、当該突入電流制限用抵抗器16による電圧降下に応じた分だけ増大し、常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の両端間電圧V3もまた、同様に、増大する。なお、この時点t4においては、常用ドライブ電源回路62内の別の電界コンデンサ82の両端間電圧V4も増大するが、この電界コンデンサ82の容量とこれに直列に接続された抵抗器84の抵抗値とを含む上述の時定数が比較的に大きいため、当該電界コンデンサ82の両端間電圧V4は、他の電界コンデンサ26,28および68の両端間電圧V1,V2およびV3に比べると、急激には増大しない。また、抵抗器84に並列接続されているダイオード84は、上述した電源スイッチがOFFされたときに、即座に、当該ダイオード86および抵抗器76経由で電界コンデンサ82を放電させるためのものであり、これによって、当該電源スイッチがOFFされた直後に再びONされたとしても、上述の時間Tcが確保される。
ところで、ここまでのスイッチング電源装置10の動作に関する説明は、飽くまで当該スイッチング電源装置10が無負荷状態にあるかそれに近い状態にある場合、つまり出力端子54に何らの負荷も接続されていないか比較的に容量の小さい負荷が接続されている場合、の説明である。ここで、1つの仮定として、例えば、図1に示した構成において高周波トランス50の第3の2次側巻線50dとミュート制御回路88とが設けられておらず、併せて、比較的に容量の大きい負荷、具体的には負荷駆動電力Poの最大値に応じた容量を持つ負荷、が出力端子54に接続されており、この言わば過負荷状態で、上述した電源スイッチがONされる、とする。この場合、次のような不都合が生じる。
即ち、過負荷状態で電源スイッチがONされると、出力端子54から負荷へ大きな電流が流れる。このとき、入力端子12から電流制限用抵抗器16を介して流れる電流も大きくなるので、当該電流制限用抵抗器16によって大きな電圧降下が生じる。すると、この電流制限用抵抗器16による大きな電圧降下によって、例えば図3(b)に示すように、入力側平滑手段としての電界コンデンサ26および28の両端間電圧V1およびV2が、図3(a)に示した無負荷状態時(正常時)と比べて大きく低下する。これに伴い、常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の両端間電圧V3もまた、同様に、大きく低下する。このため、常用ドライブ電源回路62内の別の電界コンデンサ82の両端間電圧V4、言い換えればリレー20のスイッチ20aをONさせるタイミングを見計らうために一種監視している監視電圧V4が、所期の通りに上昇せず、極端には、いつまで経っても所定値Vr以上にならないことがある。この結果、リレー20のスイッチ20aがONせずに、電流制限用抵抗器16を介して大きな電流が流れ続け、当該電流制限用抵抗器16が破損する恐れがある。
そればかりか、常用ドライブ電源回路62の出力電圧Vbもまた、所期の通りに上昇せず、いつまで経っても起動時ドライブ電源回路42の出力電圧Vaよりも大きくならないことがある。そうすると、リレー20のスイッチ20aがONしないことを含め、起動時から安定時への移行が正常に行われないことになる。しかも、このとき、起動時ドライブ電源回路42内のトランジスタ34はONし続けており、当該トランジスタ34のコレクタ端子に接続されている抵抗器36は約130[V]という大きな電圧降下を負担している状態にあるので、この状態が続くと、当該抵抗器36までもが破損する恐れがある。
このような不都合を解消するべく、本実施形態においては、図1に示したように、高周波トランス50に第3の2次側巻線50dが設けられると共に、この第3の2次側巻線50dにミュート制御回路88が接続されており、さらに、負荷である増幅装置100が図4に示すように構成されている。
即ち、図4に示すように、増幅装置100は、オーディオ信号Saを増幅するためのパワーアンプ回路102を備えている。このパワーアンプ回路102によって増幅された増幅後オーディオ信号Sa’は、図示しないスピーカラインを介して、図示しない1台または複数台のスピーカに供給される。ただし、パワーアンプ回路102の入力側には、いわゆるバッファ用(インピーダンス変換用)としての2つのプリアンプ回路104および106が設けられている。さらに、これら2つのプリアンプ回路104および106の間には、ミュート回路108が設けられている。ミュート回路108は、切換接点(c接点)形のリレー200のスイッチによって構成されており、次に説明するミュート制御回路88から与えられるミュート制御信号Smに従って、前段のプリアンプ回路104の出力側と後段のプリアンプ回路106の入力側との間を切断するいわゆるミュートONの状態と、これら両者間を接続するミュートOFFの状態と、に切り換わる。なお、ミュートONの状態においては、後段のプリアンプ回路106の入力側は、基準電位としての接地電位に接続される。また、この図4には明示していないが、パワーアンプ回路102と各プリアンプ回路104および106とは、スイッチング電源装置10から供給される負荷駆動電力Poを電源電力として駆動する。
一方、ミュート制御回路88は、図5に示すように、上述した図1における常用ドライブ電源回路62と同様の構成とされている。即ち、当該ミュート制御回路88は、低電圧整流手段としての半波整流回路202を備えている。この半波整流回路202は、1つのダイオード202aによって構成されており、詳しくは、当該ダイオード202aのアノード端子に、第3の2次側巻線50dの一端が接続されている。そして、ダイオード202aのカソード端子は、このミュート制御回路88専用の低電圧電源ライン204に接続されている。なお、第3の2次側巻線50dの他端は、ミュート制御回路88専用の接地ライン206に接続されている。
低電圧電源ライン204と接地ライン206との間には、低電圧平滑手段としての電界コンデンサ208が接続されている。詳しくは、低電圧電源ライン204に、この電界コンデンサ208の陽極端子が接続されており、接地ライン206に、当該電界コンデンサ208の陰極端子が接続されている。
併せて、低電圧電源ライン204と接地ライン206との間には、2つの抵抗器210および212が直列に接続されている。そして、これら2つの抵抗器210および212の相互接続点に、別の抵抗器214および定電圧ダイオード216を介して、NPN型のトランジスタ218のベース端子が接続されている。なお、定電圧ダイオード216は、そのアノード端子をトランジスタ218のベース端子に接続し、カソード端子を抵抗器214に接続するように、設けられている。
さらに、抵抗器214と定電圧ダイオード216との相互接続点は、電界コンデンサ220を介して、接地ライン206に接続されている。詳しくは、当該抵抗器214と定電圧ダイオード216との相互接続点に、電界コンデンサ220の陽極端子が接続されており、接地ライン206に、電界コンデンサ220の陰極端子が接続されている。また、抵抗器214と並列に、ダイオード222が接続されている。詳しくは、当該抵抗器214と定電圧ダイオード216との相互接続点に、ダイオード222のアノード端子が接続されており、上述した2つの抵抗器210および212の相互接続点に、ダイオード222のカソード端子が接続されている。
そしてさらに、低電圧電源ライン204には、上述したリレー200の操作コイル200aと抵抗器224とを介して、トランジスタ218のコレクタ端子が接続されており、当該トランジスタ218のエミッタ端子は、接地ライン206に接続されている。そして、リレー200の操作コイル200aから、これと対を成す図4に示したミュート回路108に対して、上述したミュート制御信号Smが与えられる。ミュート回路108は、このミュート制御信号Smに従って、厳密にはリレー200の操作コイル200aに電流が流れるか否かに応じて、ミュートONまたはミュートOFFの状態になる。
即ち、今、上述した電源スイッチがOFFの状態にある、とする。この状態においては、当然に、図5におけるリレー200の操作コイル200aには電流は流れていない。そして、このようにリレー200の操作コイル200aに電流が流れていないときには、図4におけるミュート回路108は、ミュートONの状態にある。つまり、当該ミュート回路108の後段にあるプリアンプ回路106の入力側は、接地電位に接続されている状態にある。
ここで、電源スイッチがONされる、とする。この時点t0(図2および図3参照)では、まだ、高周波トランス50の1次側巻線50aに高周波電圧は現れないので、当該高周波トランス50の各2次側巻線50b,50cおよび50dにも高周波電圧は現れない。従って、ミュート制御回路88内のリレー200の操作コイル200aにも電流は流れず、ミュート回路108は、依然としてミュートONの状態にある。
そして、電源スイッチがONされた時点t0から上述した50[ms]〜60[ms]という時間Taが経過した時点t1になると、FETドライブ回路40が駆動し始め、高周波トランス50の1次側巻線50aに高周波電圧が現れる。そして、この高周波トランス50の各2次側巻線50b,50cおよび50dにも高周波電力が現れる。このうち、第3の2次側巻線50dに現れる高周波電圧の大きさは、当該2次側巻線50dの巻数N5と、1次側巻線50aの巻数N1と、の比率(N1:N5)によって決まる。なお、第3の2次側巻線50dの巻数N5は、第2の2次側巻線50cの巻数N4と同じ(N5=N4)とされている。
この第3の2次側巻線50dに現れた高周波電圧は、半波整流回路202によって半波整流され、さらに低電圧平滑手段としての電界コンデンサ208によって平滑される。これにより、この低電圧平滑手段としての電界コンデンサ208の両端間、つまり低電圧電源ライン204と接地ライン206との間に、V5という直流電圧が現れる。なお、この直流電圧V5は、最終的には上述した常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の両端感電圧V3と同じ大きさ(V3=V5)になり、つまり約16[V]になる。
このように低電圧電源ライン204と接地ライン206との間に直流電圧V5が現れることで、トランジスタ218のベース端子に、当該トランジスタ218をONさせるのに必要な電圧が印加される。言い換えれば、トランジスタ218のベース端子に定電圧ダイオード216を介して接続された電界コンデンサ220の両端間電圧V6が、当該トランジスタ218をONさせ得る大きさに達する。すると、トランジスタ218がONし、低電圧電源ライン204と接地ライン206との間に、リレー200の操作コイル200a,抵抗器224および当該トランジスタ218の直流回路が、形成される。これにより、リレー200の操作コイル200aに電流が流れ、ミュート回路108がミュートONからミュートOFFの状態に切り換わる。
ここで、図には示さないが、ミュート回路108がミュートONからミュートOFFの状態に切り換わる時点、つまりミュート制御回路88内のトランジスタ218がONする時点を、t5とすると、この時点t5は、上述した常用ドライブ電源回路62内のトランジスタ72がONする時点t4(図3(a)参照)よりも後になる。言い換えれば、FETドライブ回路40が駆動し始めた時点t1から当該ミュート制御回路88内のトランジスタ218がONする時点t5までの時間をTdとすると、この時間Tdは、FETドライブ回路40が駆動し始めた時点t1から常用ドライブ電源回路62内のトランジスタ72がONする時点t4までの上述した0.5[s]程度という時間Tcよりも長く、例えば1[s]〜2[s]とされている。なお、この1[s]〜2[s]という時間Tdは、主に電界コンデンサ220の容量とこれに直列接続された抵抗器214の抵抗値とを含む時定数によって決まる。
要するに、電源スイッチがONされた時点t0から1[s]〜2[s]という時間Tdが経過するまで、ミュート回路108は、常にミュートONの状態にある。そして、このミュートONの状態にあるときには、たとえ当該ミュート回路108の前段にあるプリアンプ回路104にオーディオ信号Smが入力されているとしても、このオーディオ信号Smは、後段のプリアンプ回路106およびパワーアンプ回路102には入力されない。従って、これら後段のプリアンプ回路106およびパワーアンプ回路102は、駆動していないのと略同様の状態になる。特にパワーアンプ回路102の消費電力(負荷容量)は、増幅装置100全体の消費電力の大部分を占めるので、このパワーアンプ回路102を含む増幅装置100全体の消費電力が大きく抑制される。この結果、スイッチング電源装置10にとっては、無負荷状態であるのと略等価な状態が、強制的に形成される。そして、この略無負荷状態にある時間Td内において、スイッチング電源装置10は、上述した要領で、起動時から安定時へと移行する。つまり、当該起動時から安定時への移行が確実に行われる。
このように、本実施形態によれば、スイッチング電源装置10の起動時に無負荷状態が強制的に形成されることで、当該起動時から安定時へと確実に移行される。つまり、負荷である増幅装置100の状態に拘わらず、スイッチング電源装置10の起動が常に適切に行われる。また、起動時に突入電流制限用抵抗器16を介して大きな電流が流れ続けることもないので、当該起動時における突入電流制限用抵抗器16の破損も確実に防止される。さらに、起動時に大きな電圧降下を負担する起動時ドライブ電源回路42内の抵抗器36の破損も確実に防止される。
なお、上述したように、図5のミュート制御回路88は、図1における常用ドライブ電源回路62と同様の構成とされている。このように両者の構成が統一されることで、ミュート制御回路88によって規定される時間Tdと、常用ドライブ電源回路62によって規定される時点Tcと、の相互関係、つまりTd>Tcという関係、の構築が容易になる。つまり、ミュート制御回路88内の抵抗器214の抵抗値と電界コンデンサ220の容量とを含む時定数と、常用ドライブ電源回路62内の抵抗器78の抵抗値と電界コンデンサ82の容量とを含む時定数と、の調整(設定)によって、当該Td>Tcという関係が、容易に構築される。
また、図5のミュート制御回路88において、抵抗器214に並列接続されているダイオード222は、上述した電源スイッチがOFFされたときに、即座に、電界コンデンサ220を放電させるためのものである。これにより、電源スイッチがOFFされた直後に再びONされたとしても、上述の時間Tdが確保される。
本実施形態においては、図4に示したミュート回路108として、リレー200のスイッチを用いたが、これに限らない。例えば、半導体スイッチ等の他のスイッチ手段によって、ミュート回路108を構成してもよい。この場合、ミュート回路108とミュート制御回路88とを絶縁しつつ、当該ミュート制御回路88からミュート回路108に対してミュート制御信号Smを伝送させるための信号伝送手段として、フォトカプラ等の絶縁型の手段を用いるのが、望ましい。
また、ミュート回路108として、後段のプリアンプ回路106の入力側を接地電位に接続することによって、つまりパワーアンプ回路102へのオーディオ信号Saの入力を遮断することによって、ミュートONの状態になるものを採用したが、これに限らない。例えば、パワーアンプ回路102に入力されるオーディオ信号Saを減衰させることで、ミュートONの状態になるものを採用してもよい。
さらに、ミュート回路108の構成によっては、バッファ用としての2つのプリアンプ回路104および106の一方または両方を設けなくてもよい場合がある。ただし、パワーアンプ回路102を含む増幅装置100全体の動作の安定性および安全性を考慮すると、これらのプリアンプ回路104および106を設けるのが、望ましい。
そして、本実施形態においては、起動時に、ミュート回路106をミュートONの状態にすることによって、無負荷状態を形成することとしたが、これに限らない。例えば、パワーアンプ回路102の出力側に、スピーカライン(スピーカ)との間を開閉するスイッチ回路を設け、このスイッチ回路を開成させることによって、無負荷状態を形成してもよい。或いは、パワーアンプ回路102を含む増幅回路100への負荷駆動電力Poの供給を停止することによって、無負荷状態を形成してもよい。
また、図5に示したミュート制御回路88の構成は、飽くまで一例であって、これに限定されない。特に、上述した時間Tdについては、図5に示した構成以外の遅延回路によって設定するようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、常用ドライブ電源回路62内の電界コンデンサ82の両端間電圧V4を言わば監視することで、リレー20のスイッチ20aをONさせるタイミングを見計らうこととしたが、これに限らない。例えば、当該常用ドライブ電源回路62内の低電圧平滑手段としての電界コンデンサ68の両端間電圧V3や、入力側平滑手段としての電界コンデンサ26および28の両端間電圧V1およびV2を監視することで、リレー20のスイッチ20aをONさせるタイミングを見計らってもよい。また、出力電圧Voを監視することで、当該タイミングを見計らってもよい。
そして、本実施形態においては、スイッチング電源装置10を例に挙げて説明したが、シリーズ電源装置等の他の電源装置にも、本発明を適用することができる。負荷についても、PA用の増幅装置100に限らず、これ以外の装置でもよい。