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JP5062566B2 - 振動低減機構 - Google Patents
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JP5062566B2 - 振動低減機構 - Google Patents

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Description

本発明は建物等の構造物に適用して好適な振動低減機構、特に錘体のロッキングにより生じる回転慣性質量効果を利用して振動低減効果を得る構造の振動低減機構に関する。
近年、小さな質量で大きな質量効果を発揮できる方策として回転慣性質量(慣性接続要素)を用いる方法が脚光をあび、それを利用する種々の応答低減機構が提案されている。たとえば特許文献1には、免震対象構造物の上下振動を長周期化する上下免震装置において、免震対象構造物の上下動に連動することで上下振動に関与する慣性質量を増加させる質量付加機構を設けた上下免震装置が提案されている。
この種の機構において慣性質量を生むための具体的な装置としては、ボールねじとフライホイール(回転錘)によるものが一般的であり、特許文献1に示される上下免震装置においても所定の質量を有する円盤をボールねじ式の運動変換機構により回転させる構成の慣性質量付加機構を採用している。
特開2004−44748号公報
上記のようなボールねじとフライホイールによる機構は、コンパクト化できるもののボールねじの負担を考慮するとあまり大きな負担力には対応できないものである。
すなわち、そのような機構では負担力の全てがボールねじに作用することからボールねじに座屈等が生じない範囲で使用する必要があり、それにより得られる慣性質量は現実的には1,000ton程度が限界であってそれ以上の高耐力化を図ることは困難であり、したがって大規模構造物には適用し難いものである。
そのため、上記のような機械的なメカニズムによらずに巨大な回転慣性質量効果が得られる有効適切な機構の開発も望まれていた。
上記事情に鑑み、本発明は機械的なメカニズムによることなく高性能かつ高耐力、大きな応答低減効果が得られて、大規模構造物にも適用可能な振動低減機構を提供することを目的とする。
本発明は、水平方向に相対振動する下部構造体と上部構造体との間に、それら下部構造体と上部構造体との間で生じる水平方向の相対振動により加力されてロッキングを生じる錘体を設置し、該錘体のロッキングによる回転慣性質量効果によって前記相対振動を低減せしめる構成の振動低減機構であって、前記錘体の下部を前記下部構造体に対して回転可能に支持するとともに、その回転中心である下部回転中心を該錘体の重心位置ないし重心近傍位置に設定し、前記錘体の上部を前記上部構造体に対して回転可能に支持するとともに、その回転中心である上部回転中心を前記下部回転中心よりも上方に偏位する位置に設定してなることを特徴とする。
なお、本発明において錘体の「下部」とは実質的に「底部」であるが、錘体の「上部」とは「頂部」および「側部」の双方を含むものである。
本発明においては、前記錘体の下部および上部にそれぞれ下部滑り面および上部滑り面を形成するとともに、前記下部構造体および前記上部構造体にはそれぞれ前記下部滑り面および前記上部滑り面を滑動自在に支持する下部座面および上部座面を設け、前記下部滑り面および前記下部座面をいずれも前記下部回転中心を中心とする曲面に形成し、前記上部滑り面および前記上部座面をいずれも前記上部回転中心を中心とする曲面に形成すると良い。
その場合、前記錘体を、前記下部構造体と前記上部構造体との間に生じる相対振動の振動方向に沿う壁面を形成するとともに該壁面の面内においてロッキング可能な壁体とし、該壁体の下部に形成する前記下部滑り面および該下部滑り面を支持する前記下部座面を、前記下部回転中心を通って該壁面に直交する水平軸線を中心線とする凸円弧面および凹円弧面として形成し、該壁体の上部に形成する前記上部滑り面および該上部滑り面を支持する前記上部座面を、前記上部回転中心を通って該壁面に直交する水平軸線を中心線とする凸円弧面および凹円弧面として形成すると良い。
あるいは、前記錘体を水平各方向にロッキング可能なブロック体とし、該ブロック体の下部に形成する前記下部滑り面および該下部滑り面を支持する前記下部座面を、前記下部回転中心を中心点とする凸球面および凹球面として形成し、該ブロック体の上部に形成する前記上部滑り面および該上部滑り面を支持する前記上部座面を、前記上部回転中心を中心点とする凸球面および凹球面として形成することも考えられる。
また、前記錘体の下部と前記下部構造体との間、および前記錘体の上部と前記上部構造体との間に、前記錘体を回転可能に支持する滑動機構を介装することも考えられる。
さらに、前記錘体の上部と前記上部構造体との間、または前記錘体の下部と前記下部構造体との間に、前記錘体を回転可能に支持しつつ前記上部構造体または下部構造体に対して水平方向に相対変位可能な治具を介装し、該治具と前記上部構造体または下部構造体との間に、それらの間で生じる水平方向の相対振動方向により作動する付加バネを介装することも考えられる。
本発明の振動低減機構は、構造体の水平振動時における層間変形に追随させて錘体をロッキングさせることにより、そのロッキングによる回転慣性質量効果を利用して錘体を回転慣性質量ダンパーとして機能させるものであり、小質量の錘体により巨大な回転慣性質量効果が得られ、構造物の長周期化、地震動入力の低減、遮断振動数における振動低減効果を有効に発揮できる。
特に、錘体を鉄筋コンクリートや鋼材等の一般的な建設資材により形成できるので、従来のボールねじとフライホイールによる機械的なねじ機構による回転慣性質量ダンパーに比べて安価に製作し施工することができるし、応力処理が容易であるので大規模構造物にも支障なく適用可能であり、さらには錘体を構造物内に設置される壁体や収納物として有効利用することも可能である。
また、錘体の質量と寸法、上部回転中心と下部回転中心との間の中心間距離の設定のみで、回転慣性質量を任意にかつ幅広く定めることができるし、さらには錘体のロッキングによる回転慣性質量と付加バネとによる固有振動数の設定によりTMD(チューンド・マス・ダンパー:動吸振器)として機能させることも可能である。
図1〜図2は本発明の振動低減機構の基本的な一実施形態を示すものである。これは建物の架構を構成している柱と梁との間に錘体1をロッキング可能な壁面の形態で設置したものであって、地震時における架構の層間変形に追随して生じる錘体1のロッキングによる回転慣性質量効果を利用して振動低減効果を得るものである。
なお、以下の実施形態は基本的に上下対称形をなしているので、上下に対称配置されている同一構成要素には同一符号を付すが、必要に応じて下部に係わる構成要素には符号に添字Aを付し、上部に係わる構成要素には符号に添字Bを付して両者を区別する。
また、以下の説明において錘体1の「下部」とは実質的に「底部」であるが、錘体1の「上部」とは「頂部」のみならず「側部」を含む場合がある(詳細後述)。
本実施形態における錘体1は鉄筋コンクリート造ないし鉄骨造もしくはそれらを適宜組み合わせた複合構造の壁体であって、その下部および上部がそれぞれ治具2(下部治具2Aおよび上部治具2B)を介して上下の梁3(下部構造体としての下階梁3A、および上部構造体としての上階梁3B)に対して回転可能に支持されることによって、この錘体1が形成する壁面の面内においてロッキング可能に配置されているものである。
すなわち、図1〜図2に示すように、錘体1の下部には凸円弧面とされた滑り面4(下部滑り面4A)が形成されているとともに、下階梁3Aの上面に固定された下部治具2Aには凹円弧面とされた座面5(下部座面5A)が形成されていて、錘体1は下部滑り面4Aを下部座面5Aに対して滑動自在に密着させた状態で下部治具2Aを介して下階梁3Aにより支持され、かつそこでの摩擦抵抗は充分に小さく設定されていて、これにより錘体1は下部治具2Aおよび下階梁3Aに対して滑らかに回転可能とされている。そして、下部治具2Aおよび下階梁3Aに対する錘体1の回転中心である下部回転中心OAは錘体1の重心位置ないし重心近傍位置に設定されていて、下部滑り面4Aおよび下部座面5Aはいずれもその下部回転中心OAを通って錘体1に直交する水平軸線を中心線とする下部回転半径R2の円弧面(円筒面)として形成されている。
また、錘体1の上部も同様に凸円弧面とされた滑り面4(上部滑り面4B)が形成されているとともに、上階梁3Bの下面に固定された上部治具2Bには凹円弧面とされた座面5(上部座面5B)が形成されていて、錘体1の上部も上部滑り面4Bを上部座面5Bに対して滑動自在に密着させた状態で上部治具2Bを介して上階梁3Bにより支持され、かつそこでの摩擦抵抗も充分に小さく設定されていて、錘体1は上部治具2Bおよび上階梁3Bに対しても滑らかに回転可能とされている。そして、上部治具2Bおよび上階梁3Bに対する錘体1の回転中心である上部回転中心OBは、上記の下部回転中心OAよりも偏位寸法aだけ上方に偏位する位置に設定されており、上部滑り面4Bおよび上部座面5Bはいずれもその上部回転中心OBを通って錘体1に直交する水平軸線を中心線とする上部回転半径R1の円弧面(円筒面)として形成されている。
なお、上部回転半径R1と下部回転半径R2とは同一であっても良いが、必ずしも同一である必要はない。
上記構造による本実施形態の振動低減機構では、図1(a)に示す通常時(静止時)の状態から図1(b)に示すように地震時に架構が層間変形を生じた場合、たとえば図示例のように上階梁3Bが下階梁3Aに対して右方向に水平変位δが生じた場合には、錘体1の上部は上階梁3Bから上部治具2Bを介して水平右方向に加力され、それにより錘体1は加力方向に微小角度だけ回転してロッキングを生じ、それにより錘体1の頂部には水平変位が生じる。
その場合の回転角θおよび錘体1の頂部水平変位uは、架構の水平変位δと、中心間偏位寸法a、上部回転半径R1に基づき、次式となる。
Figure 0005062566
上式から、上部回転半径R1に対して中心間偏位寸法aが充分に小さい場合、錘体1の頂部水平変位uは架構の水平変位δに対して大きく拡大されることが分かる。つまり、架構にわずかな水平変位δが生じるだけで錘体1は大きく回転し、その頂部水平変位uは大きなものとなる。
そして、そのような回転が生じることにより錘体1には大きな回転慣性質量Ψが生じ、それによる回転慣性質量効果により優れた振動低減効果が得られる。すなわち、錘体1の回転慣性モーメントをIpとし、下部回転中心OAを錘体1の重心位置とした場合、錘体1に生じる回転慣性質量Ψは以下となる。
Figure 0005062566
その回転慣性質量Ψは、錘体1の実際の質量に比べて遙かに大きなものとなる。例えば、錘体1が鉄筋コンクリート造の壁体であって厚さ0.5m、幅9m、高さ6mの場合、その質量は65tonに過ぎないが、中心間偏位寸法a=0.5mとした場合には、その壁体の回転により得られる回転慣性質量Ψは2,527tonにもなって実際の質量の数十倍にも拡大されることになり、したがって単なる1面のRC壁のみで大規模建物を対象とする場合に必要とされる1,000tonを超えるような大きな慣性質量を容易に確保することが可能である。
なお、中心間偏位寸法aの値をあまり小さくすると、回転に対する摩擦抵抗や精度誤差の影響が大きくなるので、錘体1の最大寸法の5%以上の値とすることが望ましい。
また、錘体1の回転に伴い上部回転中心OBはわずかに鉛直変位するが、解析上は高次の微小項であるし、通常は水平変位δが中心間偏位寸法aよりも充分に小さいために回転機構上には影響がなく、無視して差し支えない。
上記の実施形態の振動低減機構による得られる基本的な効果を以下に列挙する。
(1)上記の振動低減機構は錘体1のロッキングにより生じる回転慣性質量を利用する回転慣性質量ダンパーとして機能するものであって、その回転慣性質量ダンパーを構造体バネ(構造剛性)と並列配置した構造の応答低減機構であるので、構造物の長周期化、地震動入力の低減、遮断振動数における振動低減効果を有効に発揮できる。
(2)従来一般のボールねじとフライホイールによる機械的な機構による回転慣性質量ダンパーと比較して、回転錘としての錘体1に対する慣性質量の比は小さいものの1,000tonを超えるような巨大な慣性質量効果を容易に実現することができる。
(3)錘体1は鉄筋コンクリートや鋼材ないしそれらの組合せにより安価に製作でき(但し、それらに限定されるものではなく、所望の質量が得られるものであれば適宜の材料が採用可能である)、質量と寸法の設定により回転慣性質量が定まるものであって、下部回転中心OAと上部回転中心OBの双方の回りで回転できるという条件を満たすことのみで巨大な慣性質量が得られるので、従来の機械的なねじ機構によるものよりも安価に製作し施工することができる。
(4)下部回転中心OAと上部回転中心OBとの間の中心間偏位寸法aと錘体1の回転慣性モーメントによって慣性質量が決定されるので、中心間偏位寸法aの値を調整することで慣性質量を任意にかつ幅広く設定することができる。
(5)錘体1と上下の梁3との間での力は円弧状の滑り面4と座面5との間で伝達されるが、その伝達面積は必要に応じて大きくとることができるから、従来のボールねじの断面積だけで負担力を全て処理する機械的な機構と比較して単位面積当たりの応力は小さくなり、応力処理が容易である。
(6)建物内に設置される壁体や収納物を錘体1として有効利用することが可能であり、その場合には格別の制震機構を設置することによる有効面積の減少を防止することができる。
以上、本発明の基本的な一実施形態について説明したが、以下に他の実施形態を説明する。
上記実施形態では、錘体1の上下をいずれも滑り支承により支持することとして、錘体1に形成した滑り面4を治具2に形成した座面5に対して直接密着させた状態で滑動させる構成とし、それによっても摩擦係数をたとえばμ=0.04程度以下と充分に小さく設定することができるが、滑り支承に代えて適宜の滑動機構を錘体1と治具2との間に介装することも考えられる。
たとえば、図3(a)に示すようなローラ支承による滑動機構10を錘体1に固定するとともに、治具2にはそれが転動可能なレールを取り付ける(あるいは逆に滑動機構10を治具2の要所に固定し、錘体1にレールを取り付けても同様である)ことにより、単なる滑り支承による場合に比べて摩擦係数をさらに低減させることができ、たとえばμ=0.006以下とすることも可能である。
また、図3(b)に示すように円弧状に湾曲させたガイドレール11にスライダー12を滑らかにスライド可能に組み付けた構成のリニアガイドと称される滑動機構13も好適に採用可能であり、これによればμ=0.006程度以下とできるばかりでなく、1台当たりの耐荷重を1000tonf程度にもでき、しかも圧縮力のみならず引張力に対しても抵抗できるので錘体1の浮き上がりを防止することも可能である。
さらに、滑り支承による場合にも、たとえば図3(c)に示すように滑り板14に対して滑り材15を滑らせる構成の市販製品を採用すれば、μ=0.013程度以下、耐荷重2,000tonf以上とすることが可能である。
なお、滑り支承や上記で例示したような滑動機構における摩擦係数μの設定は、錘体1を有効にロッキングさせるように設定した上で適度の摩擦抵抗を与えるように設定することも考えられ、そのようにすればそれら滑り支承や滑動機構自体を摩擦ダンパーとしても機能させることも可能であってそれにより錘体1のロッキングを有効に減衰させることが可能となる。
上記実施形態では、錘体1の上下をそれぞれ治具2を介して上下の梁3に対して支持するものとし、錘体1の上下の滑り面4および治具2に形成する座面5をいずれも円弧面(円筒面)としたが、要は錘体1の上下をいずれも回転可能に支持し、かつ層間変形により錘体1を加力して(構造体から錘体1に対して座面5および滑り面4を介して力を伝達して)ロッキングを生じさせれば良いのであって、その限りにおいて滑り面4や座面5は必ずしも単純な円弧面とすることに限るものではなく、たとえば図4に示すような変形例が考えられる。
図4(a)に示すものは上部滑り面4Bの頂部を平坦面としたもの、(b)に示すものは下部滑り面4Aの中央部を省略したもの、(c)に示すものは下部治具2Aを2分割したものである。さらに、最も基本的な構成として(d)に示すように梁3自体に座面5を直接形成して実質的に治具2を省略する(ただし、座面5の形成による梁3の断面欠損は考慮する必要はある)、あるいは治具2と梁3とを予め一体に形成した形態とすることも考えられる。
なお、図4(a)〜(c)は錘体1の上部または下部の一方のみを例示するに留めたが、図示を略した他方に対しても同様に変形して良いことは言うまでもなく、また必要であればたとえば上部を(a)に示す構成として下部を(b)〜(d)のいずれかに示す構成とする等、様々な組合せが可能であるし、これらと図3(a)〜(c)に例示したような滑動機構とを任意に組み合わせることも勿論可能である。
また、錘体1としての壁体も必ずしも単純な平板状のものである必要はなく、所望の質量を確保できかつ上下を回転可能に支持できるものであれば錘体1全体の形状は任意であり、たとえば所望位置に窓や出入り口等に使用する開口部を形成しても支障がない。特に、錘体1の中央部の質量は回転慣性質量効果を得る上ではあまり寄与しないし、下部回転中心OAおよび上部回転中心OBは単に仮想中心であってそれらの位置に実際に回転軸やピンの類を設ける必要もないから、錘体1としての壁体を建物内に壁面として設置する場合にその中央部を切り欠いて窓用の開口部を形成することは何らの支障がないばかりか、寧ろ錘体1に好適な質量分布を持たせることになって回転慣性モーメントを稼ぐ点からは合理的である。
さらに、上記実施形態は錘体1を壁体の形態としてその面内でのロッキングのみを想定したものであるが、錘体1を水平各方向にロッキング可能な立体形状のブロック体とすることも可能であり、その例を図5に示す。
図5(a)は錘体1を円盤状としてその上下を正方形盤状の治具2により支持するようにし、錘体1の上下に滑り面4を凸球面状に突出させ、治具2には凹球面状の座面5を形成したものである。この場合においては、上下の滑り面4としての凸球面およびそれを支持する上下の座面5としての凹球面の中心点は、上記実施形態において説明した上部回転中心OBおよび下部回転中心OAの位置に合致させることは当然であり、それら上部回転中心OBと下部回転中心OAとの間には適正な中心間偏位寸法aを確保することも当然である。
これによれば、錘体1としてのブロック体を水平各方向へのロッキングが可能な状態で支持することが可能であり、これにより水平各方向への回転慣性質量効果が得られて各方向の振動低減効果が得られるものである。従来一般の機械的な回転慣性質量ダンパーは1方向にのみ有効であり、各方向に有効とする場合には各方向に対応する複数のダンパーを設置する必要があるが、上記のようなブロック体を各方向にロッキングさせる構造とすることによりこれ1台で各方向へのダンパー効果が有効に得られる。
図5(b)、(c)はその変形例であって、(b)は錘体1を正方形盤状としたもの、(c)は上部の滑り面4の頂部を図4(a)に示したものと同様に平坦にしたものである。さらに図5(d)に示すものは、錘体1の上下を略角錐台形状に突出させて滑り面4および座面5を2方向の円筒面(寄せ棟形式の2方向のカマボコ状)により形成したものであり、これによっても水平2方向へのロッキングが可能であり同様の効果が得られる。
いずれにしても錘体1としてのブロック体は完全中実である必要はなく、所望の質量を有するものであれば内部に中空部(空洞)を有するものであっても良く、特に回転慣性質量効果にあまり寄与しない中心部は空洞部とすることも合理的であるので、ブロック体を中空箱状としてその内部空間を有効活用することも考えられる。たとえば、錘体1としてのブロック体を周囲の壁面と天井面と床面とによる中空箱状のユニットとして、それ自体を室として機能させることも可能である。
上記実施形態では上下の治具2をいずれも上下の梁3に対して固定したが、それらのいずれか一方を梁3に対して付加バネおよび付加減衰を介して相対変位可能とすることも考えられ、その場合の例を図6に示す。
図6(a)は上部治具2Bを上階梁3Bに対して固定せずにその長さ方向(=振動方向=錘体1への加力方向)に変位可能に配置し、上部治具2Bの両端と両側の柱20との間に付加バネ21および付加減衰22を介装したものである。
この場合、錘体1により構成される回転慣性質量ダンパーは付加バネ21に対して直列配置されたうえで構造体バネ(構造剛性)に対して並列配置されることになり、この錘体1による回転慣性質量と付加バネ21とによる振動系をTMD(チューンド・マス・ダンパー:動吸振器)と同様に機能させることができる。
すなわち、付加バネ21のバネ定数k0、錘体1の回転慣性質量Ψ、振動抑制対象振動数f0(振動抑制対象角振動数ω0)の場合、それらの間に次式の関係が成り立つように各諸元を設定する。
Figure 0005062566
上式は、錘体1による回転慣性質量Ψと付加バネ21とによる振動系の固有振動数を振動抑制対象振動数f0に同調させることを意味し、そのような設計とすることによりその振動数での共振特性を大幅に改善して応答低減を図ることができる。特に、振動抑制対象振動数f0を構造物(建物)の固有1次振動数とすることにより、地震時における構造物の固有1次振動数での応答低減を有効に図ることができる。
図6(b)はその変形例であって、付加バネ21としての積層ゴムと付加減衰22としてのオイルダンパーを上階梁3Bと上部治具2Bとの間に介装したものであり、この場合も同様の同調により同様の効果が得られる。
なお、付加減衰22は上記のように付加バネ21に対して並列に設置するばかりでなく、錘体1と上部治具2Bとの間に設置しても良く、その場合は上述したように錘体1と上部治具2Bとの間の滑り支承(あるいは上述した適宜の滑動機構)における摩擦係数を適正に設定して所望の減衰性能を持たせることにより、それ自体を付加減衰22として機能させることも考えられる。
また、上部治具2Bに代えて下部治具2Aに対して同様の構成を採用することによっても(つまり図6の天地を逆にした構成とすることによっても)、同様の効果が得られる。
以上で説明した各実施形態では、いずれも錘体1の下部(底部)と上部(頂部)をそれぞれ回転可能に支持して錘体1をロッキングさせるようにしたが、要は地震時における架構の層間変形により錘体1を加力してロッキングさせれば良く、その限りにおいては必ずしも錘体1の頂部に対して加力することに限らず、図7に示すように錘体1の側部を加力することでも良い。つまり、本発明において錘体の「下部」とは実質的に「底部」を意味するが、錘体の「上部」とは「頂部」を意味するのみならず「側部」を含めた範囲を意味するものであって、本発明における錘体の「上部」とは「頂部」と「側部」の双方を含むものである。
すなわち、図7に示す実施形態では、上部滑り面4Bを錘体1の頂部にではなく両側部に凸円弧面として形成して錘体1の頂部は平坦に形成するとともに、上部治具2Bを上階梁3Bに固定することに代えて両側の柱20の中間部に固定し、その上部治具2Bの先端を上部滑り面4Bに対して滑動可能に当接させるようにしている。これにより、層間変形が柱20および上部治具2Bを介して錘体1に伝達されて錘体1の側部が加力され、これによっても上記実施形態と同様に錘体1をロッキングさせることができ、同様の効果が得られる。
但し、この場合は、上記実施形態と同様に上部回転中心OBを下部回転中心OAよりも上方に偏位させておくことはもとより、錘体1を効果的にロッキングさせるためには少なくとも上部回転中心OBの位置よりも上部を水平方向に加力する必要があるので、上部治具2Bの設置位置(つまり錘体1を加力するための側部の位置)はそのような範囲で設定する必要がある。
また、この場合は、上部治具2Bの先端の上部座面5Bを単に錘体1の側部に滑動可能に当接させておくだけで加力がなされるから、図示例のように上部座面5Bは平坦面としておくことで充分であるが、上記実施形態と同様に上部座面5Bも凹円弧面として上部滑り面4Bに対して密着させた状態で滑動自在に支持することでも良い。
いずれにしても、錘体1への加力が柱20を介してなされる関係上、上部治具2Bの固定位置の後方には中間梁23を設けて柱20を補剛することが好ましい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、要は錘体1を回転慣性質量ダンパーとして機能させるようにロッキング可能に設置する構成とする限りにおいて、上記各実施形態を様々に組み合わせることをはじめとしてさらに適宜の設計的変形や応用が可能であることはいうまでもない。
本発明の一実施形態である振動低減機構を示す概略構成図である。 同、錘体としての壁体とその上下を支持する治具を示す図である。 本発明の他の実施形態を示すもので、錘体を支持するための好適な滑動機構の例を示す図である。 同、滑り面や治具の変形例を示す図である。 同、錘体としてのブロック体の例を示す図である。 同、治具を付加バネを介して設置する場合の例を示す図である。 同、錘体の側部を加力する場合の構成例を示す図である。
符号の説明
OA 下部回転中心
OB 上部回転中心
1 錘体
2 治具
2A 下部治具
2B 上部治具
3 梁
3A 下階梁(下部構造体)
3B 上階梁(上部構造体)
4 滑り面
4A 下部滑り面
4B 上部滑り面
5 座面
5A 下部座面
5B 上部座面
10 滑動機構
11 ガイドレール
12 スライダー
13 滑動機構
14 滑り板
15 滑り材
20 柱
21 付加バネ
22 付加減衰
23 中間梁

Claims (6)

  1. 水平方向に相対振動する下部構造体と上部構造体との間に、それら下部構造体と上部構造体との間で生じる水平方向の相対振動により加力されてロッキングを生じる錘体を設置し、該錘体のロッキングによる回転慣性質量効果によって前記相対振動を低減せしめる構成の振動低減機構であって、
    前記錘体の下部を前記下部構造体に対して回転可能に支持するとともに、その回転中心である下部回転中心を該錘体の重心位置ないし重心近傍位置に設定し、
    前記錘体の上部を前記上部構造体に対して回転可能に支持するとともに、その回転中心である上部回転中心を前記下部回転中心よりも上方に偏位する位置に設定してなることを特徴とする振動低減機構。
  2. 請求項1記載の振動低減機構であって、
    前記錘体の下部および上部にそれぞれ下部滑り面および上部滑り面を形成するとともに、前記下部構造体および前記上部構造体にはそれぞれ前記下部滑り面および前記上部滑り面を滑動自在に支持する下部座面および上部座面を設け、
    前記下部滑り面および前記下部座面をいずれも前記下部回転中心を中心とする曲面に形成し、
    前記上部滑り面および前記上部座面をいずれも前記上部回転中心を中心とする曲面に形成してなることを特徴とする振動低減機構。
  3. 請求項2記載の振動低減機構であって、
    前記錘体を、前記下部構造体と前記上部構造体との間に生じる相対振動の振動方向に沿う壁面を形成するとともに該壁面の面内においてロッキング可能な壁体とし、
    該壁体の下部に形成する前記下部滑り面および該下部滑り面を支持する前記下部座面を、前記下部回転中心を通って該壁面に直交する水平軸線を中心線とする凸円弧面および凹円弧面として形成し、
    該壁体の上部に形成する前記上部滑り面および該上部滑り面を支持する前記上部座面を、前記上部回転中心を通って該壁面に直交する水平軸線を中心線とする凸円弧面および凹円弧面として形成してなることを特徴とする振動低減機構。
  4. 請求項2記載の振動低減機構であって、
    前記錘体を水平各方向にロッキング可能なブロック体とし、
    該ブロック体の下部に形成する前記下部滑り面および該下部滑り面を支持する前記下部座面を、前記下部回転中心を中心点とする凸球面および凹球面として形成し、
    該ブロック体の上部に形成する前記上部滑り面および該上部滑り面を支持する前記上部座面を、前記上部回転中心を中心点とする凸球面および凹球面として形成してなることを特徴とする振動低減機構。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動低減機構であって、
    前記錘体の下部と前記下部構造体との間、および前記錘体の上部と前記上部構造体との間に、前記錘体を回転可能に支持する滑動機構を介装してなることを特徴とする振動低減機構。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動低減機構であって、
    前記錘体の上部と前記上部構造体との間、または前記錘体の下部と前記下部構造体との間に、前記錘体を回転可能に支持しつつ前記上部構造体または下部構造体に対して水平方向に相対変位可能な治具を介装し、該治具と前記上部構造体または下部構造体との間に、それらの間で生じる水平方向の相対振動方向により作動する付加バネを介装してなることを特徴とする振動低減機構。
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