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JP5083965B2 - 鋳造コンプレッサ羽根車 - Google Patents
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Description

本発明は、例えば過給機に使用されるコンプレッサ羽根車などに好適な高強度を有する鋳造コンプレッサ羽根車に関する。
例えば、自動車や船舶等の内燃機関に組み込まれる過給機に使用されるコンプレッサ羽根車は、高温に曝されることのない外気を吸気する部分で利用される。また、コスト的な有利性を考慮し、通常は、例えば、米国材料試験協会(ASTM)規定の354.0合金(Al−9%Si−1.8%Cu−0.5%Mg合金)や355.0合金(Al−5%Si−1.3%Cu−0.5%Mg合金)などのアルミニウム鋳造合金製の鋳造コンプレッサ羽根車が多く使用されている。
近年、内燃機関の燃焼効率をさらに向上させる目的で、過給機をより高速回転させるための種々の検討がなされている。これらの検討によれば、高速回転により、コンプレッサ羽根車に作用する遠心力は増大し、現状は150℃程度の曝露温度が180℃にまで上昇すると予測されている。このため、鋳造コンプレッサ羽根車には、常温においては、破断伸びで5%以上とされる適度な靭性と、更なる高強度が必要となる。
例えば、高強度の鋳造コンプレッサ羽根車としては、特許文献1の実施例において、引張強さや破断伸びは不明であるが、0.2%耐力については、室温で421MPa、温度180℃で298MPaを有する鋳造コンプレッサ羽根車が提案されている。この鋳造コンプレッサ羽根車は、質量%で、Cu:3.2%、Ni:0.89%、Mg:1.22%、Ti:0.31%、Si:0.19%、Fe:1.80%を含み、残部AlでなるAl−Cu−Ni−Mg系合金が使用されている。
特開2005−206927号公報
上述した特許文献1に提案される鋳造コンプレッサ羽根車は、0.2%耐力が室温で421MPaと高く、これに加えて温度180℃でも298MPaと高く、確かに従来の354.0合金などよりも耐熱性が優れている。しかしながら、特許文献1が開示しない破断伸びに関わる不具合が懸念された。具体的には、金属間化合物の析出などにより合金の脆化を引き起こしやすいCu、Ni、Feを多く含み、特にCuやNiよりも脆化への影響が大きいとされるFeを多量に含むことから、上述したように鋳造コンプレッサ羽根車に必要とされる常温での5%以上の破断伸びが得られないことが懸念された。
本発明の目的は、常温において、破断伸びで5%以上とされる適度な靭性と、更なる高強度を得ることができる、鋳造コンプレッサ羽根車を提供することである。
本発明者は、前記課題に鑑み、従来のAl−Cu−Ni−Mg系合金において、常温において破断伸びで5%以上とされる適度な靭性と更なる高強度を有し、望ましくは180℃といった高温においても良好な強度を持たせることを検討した。そして、脆化に関わるCuとNiの含有量の配分を勘案し、Alに対するCu、Ni、Mgの含有量を最適化することにより、前記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを有してなる鋳造コンプレッサ羽根車であって、該鋳造コンプレッサ羽根車は、質量%で、4.5%<Cu≦5.7%、0.8%≦Ni≦2.5%、1.2%≦Mg≦2.5%、0.05%≦Ti≦0.2%、0.2%≦Si≦1.0%、0.05%≦Fe≦0.2%、B≦0.06%、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有し、該不可避的不純物のうちMn、Zn、Pb、Sn、Crはそれぞれ質量%でMn≦0.1%、Zn≦0.1%、Pb≦0.1%、Sn≦0.1%、Cr≦0.1%に規制されており、かつ、常温(25℃)における破断伸びが5%以上、0.2%耐力が360MPa以上を有する、鋳造コンプレッサ羽根車である。
また、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、複数の羽根部が交互に配列された長羽根と短羽根からなる、鋳造コンプレッサ羽根車であっても良い。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、従来の鋳造コンプレッサ羽根車に比べ、常温(25℃)において破断伸びで5%以上とされる適度な伸びを有しつつ360MPa以上の0.2%耐力を有することができる。よって、例えば自動車などに搭載される過給機用のコンプレッサ羽根車に適用することにより、従来よりも高速回転でも使用可能となることが期待できるので、本発明は工業上極めて有益な技術となる。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車における重要な特徴は、従来のAl−Cu−Ni−Mg系合金において、上述した特許文献1のように脆化への影響が大きいとされるFeを添加するのではなく、Cuをさらに添加し、NiとCuの含有量、およびMgの含有量を最適化したことである。
以下、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車における、Alに対する添加元素と各添加元素の含有量の限定理由について詳細に説明する。また、各合金元素の含有量は、特に断らない場合には質量%で示す。
本発明においては、常温での高強度化のために、まずCuおよびMgの含有量を最適化した。CuおよびMgは、Alマトリックス内に固溶することで強度を向上させる固溶強化や、鋳造後に熱処理(例えばT6処理:JIS−H0001)を施すことで強度を向上させる析出強化といった作用効果を有する重要な元素である。
4.5%<Cu≦5.7%
本発明において、Cu含有量は4.5%を超え5.7%以下とし、これにより脆化による破断伸び低下を引き起こすことなく十分な強度を得る。Cuは、上述したように固溶と析出により強度を向上させる効果を有する。しかし、Cuが4.5%以下では固溶と析出の両方を同時に得られず強度向上が不十分になることがある。また、Cuが5.7%を超えると粒界にCuAl(θ相)等の金属間化合物が多量に晶出したり析出したりするので破断伸びを低下させることがある。
1.2%≦Mg≦2.5%
本発明において、Mg含有量は1.2%以上2.5%以下とし、これによりAlマトリックス内にMgを固溶させる。もしくは、MgとSiとで金属間化合物(MgSi)を生成させて固溶させる。これにより、破断伸びを向上させる作用効果を得る。よって、Mg含有量を好適にすることで、適度な破断伸びを有する鋳造合金となることが期待できる。しかし、Mgが1.2%未満では固溶量が少なすぎて固溶強化が期待できない。また、Mgが2.5%を超えると破断伸びを低下させてしまうことがある。好ましくは、1.5%以上、2.0%以下である。
0.8%≦Ni≦2.5%
本発明において、Ni含有量は上述のCuおよびMgの含有量を考慮し、0.8%以上2.5%以下とする。適量のNiを含ませると、Ni系の金属間化合物が生成され、これにより特に高温での強度を向上させることができ、180℃といった将来予想される高温下での使用に有効である。しかし、Niが0.8%未満ではNi系の金属間化合物の晶出量あるいは析出量が不足するので強度の向上が期待できない。また、Niが2.5%を超えると、Ni系の晶出物あるいは析出物が過剰に生成されてしまい破断伸びを低下させることがある。また、NiはCuとで粒界にAlNiCu(Y相)を生成させやすいので、Alマトリックス内のCuの固溶量が不十分となって強度の低下をもたらすことがある。好ましくは、1.0%以上、2.0%以下である。
0.05%≦Ti≦0.2%
本発明において、Tiを0.05%以上0.2%以下で含むと、Alマトリックスが生成される過程で、TiAl等の結晶核が結晶粒界に晶出する。これにより、Alマトリックスの結晶粒の成長を抑制し、Alマトリックスの結晶粒を微細化させる。Alマトリックス自体の結晶粒を微細化することにより、強度のさらなる改善が期待できる。しかし、Tiが0.2%を超えるとTiAl等の晶出が過剰となって破断伸びを低下させることがある。好ましくは、0.05%以上、0.15%以下である。
0.2%≦Si≦1.0%
本発明においては、Mg含有量を考慮し、Si含有量を1.0%以下とする。SiはMgと結び付いてMgSiを生成する。このMgSiを溶体化処理によりAlマトリックス内へ固溶させ、次いで時効処理により均一かつ微細に析出させることにより、常温での強度がさらに向上することが期待できる。しかし、Siが1.0%を超えるとAlマトリックス内に固溶しきれないSiが析出物として粒界に残存し、これにより破断伸びを劣化させることがある。また、Siは、Mgに対して優先的に結合するため、Alマトリックス内に固溶するMg量が減少することとなり、破断伸びや強度を低下させることがある。こうなると、適度な伸びと強度が望まれる鋳造コンプレッサ羽根車の用途には致命的である。一方、Siが0.2%未満では、Mgとで生成される金属間化合物(MgSi)による固溶強化が得られず、破断伸びをさらに向上させる作用効果が得られない。
0.05%≦Fe≦0.2%
Feは、過剰に含むと脆化を引き起こしやすい元素であるが、適量に含むと強度の向上が期待できる。また、Feは鋳造過程において混入しやすい元素でもある。よって、本発明においては、CuとNiの含有量を考慮し、Feを0.05%以上0.2%以下で含有させる。好ましくは、0.1%以上、0.2%以下である。
B≦0.06%
本発明においては、Tiの原料として純Tiを使用するよりもTiBを使用することでコスト面で格段に有利となる。この場合には、Ti含有量の20%程度のBを含むように調整することが望ましい。これにより、BはTiB等を生成し、Alマトリックスの結晶粒の微細化を促進させるといった、Tiの作用効果をより高めるように作用する。例えば、Ti含有量が0.05%〜0.2%である場合、Bは0.001%〜0.06%となるように調整することが望ましい。この場合、0.06%を超えてBを含ませても効果の向上は期待できず、TiB等が多量に晶出することとなって伸びを低下させることがある。
上述したいずれの元素も、Alに対して適量を含むことによって有効な作用効果が得られる元素である。これらの元素以外の残部は、構造用合金として軽量であって比強度に優れるマトリックスとなるAlと、不可避的不純物である。特に溶解などの製造過程で含まれやすい元素としてMn、Zn、Pb、Sn、Crがある。これらの不純物元素は、多量に含むと上述した添加元素の作用を阻害するため、Mn≦0.1%、Zn≦0.1%、Pb≦0.1%、Sn≦0.1%、Cr≦0.1%に規制することが必要である。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、上述した組成の溶湯を鋳造して得ることができる。そして、得られた鋳造羽根車に対し、溶体化処理の後に時効処理を各々の処理条件を調整し、熱処理として、例えばT6処理(JIS−H0001)を施すことにより、常温(25℃)において、破断伸びが5%以上、0.2%耐力が360MPa以上を有する鋳造コンプレッサ羽根車を得ることができる。なお、鋳造コンプレッサ羽根車の製造過程において、前記熱処理を施す前にHIP処理(熱間静水圧加圧処理)を施すこともできる。
このように、常温(25℃)において、破断伸びが5%以上、0.2%耐力が360MPa以上を有する本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、従来のAl−Cu−Ni−Mg系合金では強度が不十分で適用できなかった高速回転領域での使用に耐えることができる鋳造コンプレッサ羽根車となる。
次に、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車の形状について説明する。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを有してなる。また、複数の羽根部は、長羽根と短羽根とが交互に配列されたものであってよい。
図1、図2に、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車の一例を模式的に示す。鋳造コンプレッサ羽根車1(以下、羽根車1という)は、ハブ軸部2と、該ハブ軸部2から半径方向に延在するとともにハブ面4とディスク面5を有するハブディスク部3、前記ハブ面4に配設された複数の羽根部とを含む羽根車形状体である。また、この羽根車1の羽根部は、長羽根6と、短羽根となるスプリッタ羽根7とが交互に配列され、各々が複雑な空力学的曲面形状のブレード面を表裏に有している。このように空力学的に複雑な曲面形状を有することにより、例えば過給機において吸気および圧縮の効率を高めることができ、内燃機関の燃焼効率の向上に寄与できる。
以下、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車につき、実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本実施例では、上述した図1、図2に示す羽根車1と同等形状を有する鋳造コンプレッサ羽根車をプラスターモールド鋳造法により製造した。
具体的には、まず、羽根車1に対応する形状を有するゴム模型を製作し、このゴム模型を用いて石膏からなる鋳造用鋳型を製作した。次に、この鋳造用鋳型に、溶解して脱ガス処理したアルミニウム鋳造合金の溶湯を吸上げ式の吸引鋳造法により鋳造した。そして冷却後、鋳造用鋳型を除去し、長羽根6とスプリッタ羽根7およびハブ軸部2が一体に形成された鋳造羽根車を得た。表1における実施例および比較例とも、不回りやヒケ、ピンホールといった鋳造不具合もなく、鋳造羽根車を得ることができた。なお、表1に示す実施例および比較例の化学組成は、最終的に得られた鋳造コンプレッサ羽根車の組成である。
Figure 0005083965
本実施例においては、前記鋳造羽根車に鋳造欠陥が内在していた場合を鑑みて、前記鋳造羽根車に鋳造欠陥があったとしても機械特性を損ねない程度に微小化しておくために、念のため得られた前記鋳造羽根車に対してHIP処理(熱間静水圧加圧処理)を525℃、103MPa、2hで実施した。
次に、得られた前記鋳造羽根車に対してT6処理(溶体化処理および時効処理)を実施した。T6処理を実施するにあたり、溶体化処理では生産性を考慮し、できる限り保持する時間を短縮できるように選定した。具体的には、ブリスター等を生じ難いと推測される温度であって、できる限り高い温度と考えられる540℃を選定し、12h保持した。これに対し、時効処理では、常温(25℃)での破断伸びを少なくとも5%以上にすることができると推測される180℃を選定し、8h保持した。
上述した製造方法により、表1に示す化学組成を有する鋳造コンプレッサ羽根車を得ることができた。得られた羽根車1は、例えば自動車のディーゼルエンジン用コンプレッサ羽根車に適用できる形状を有するものであって、最大径φ80mm(ハブディスク部3)、全高55mm(ハブ軸部2)、長羽根6とスプリッタ羽根7の合計枚数12枚、羽根先端肉厚0.4〜0.6mmの寸法を有するものである。
次に、得られた羽根車1のハブディスク3の最大径近傍の厚肉部分から丸棒引張試験片を採取し、常温(25℃)における破断伸びと0.2%耐力を測定した。測定結果は表1に併記して示す。これらの試験法についてはJIS−Z2241、G0567に記載され、測定した伸びは破断後の標点距離の永久伸びで定義される破断伸びである。
以上、本発明の鋳造コンプレッサ羽根車は、常温(25℃)において適度な靭性を有するとされる5.0%以上の破断伸びを有し、360MPa以上の0.2%耐力を有することができた。本実施例により、Alに対するCu、Ni、Mgなどの添加元素の含有量をより適正化することにより、従来よりも機械特性が良好な鋳造コンプレッサ羽根車が得られることがわかった。
本発明の鋳造コンプレッサ羽根車の一例を示す斜視図である。 図1に示す鋳造コンプレッサ羽根車の模式的側面図である。
符号の説明
1.鋳造コンプレッサ羽根車
2.ハブ軸部
3.ハブディスク部
4.ハブ面
5.ディスク面
6.長羽根
7.スプリッタ羽根

Claims (2)

  1. ハブ軸部と、該ハブ軸部から半径方向に延在するとともにハブ面とディスク面を有するハブディスク部と、前記ハブ面に配設された複数の羽根部とを有してなる鋳造コンプレッサ羽根車であって、該鋳造コンプレッサ羽根車は、質量%で、4.5%<Cu≦5.7%、0.8%≦Ni≦2.5%、1.2%≦Mg≦2.5%、0.05%≦Ti≦0.2%、0.2%≦Si≦1.0%、0.05%≦Fe≦0.2%、B≦0.06%、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有し、該不可避的不純物のうちMn、Zn、Pb、Sn、Crはそれぞれ質量%でMn≦0.1%、Zn≦0.1%、Pb≦0.1%、Sn≦0.1%、Cr≦0.1%に規制されており、かつ、常温(25℃)における破断伸びが5%以上、0.2%耐力が360MPa以上を有することを特徴とする鋳造コンプレッサ羽根車。
  2. 複数の羽根部が交互に配列された長羽根と短羽根からなることを特徴とする請求項1に記載された鋳造コンプレッサ羽根車。
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