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JP5094326B2 - 生体計測装置 - Google Patents
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Description

本発明は,無侵襲的に脳血管障害の検査を行う生体計測装置に関する。
脳血管障害(あるいは脳卒中)は脳の血管の器質的もしくは機能的異常により神経症状をもたらす病態の総称であり,現在日本人の死因の第3位を占めている。脳血管障害のうち7割が脳梗塞すなわち虚血による脳組織の壊死(軟化)で,脳動脈の粥状硬化による脳血栓症と頭蓋外からの塞栓子による脳塞栓症とがある。出血には脳実質内への脳出血とくも膜下腔へのくも膜下出血がある。急性期における検査は血液検査,心電図,X線CT等で行い,補助的にMRI, PET, SPECT, 脳血管撮影を用いている。
また脳の局所的血液量変化は光トポグラフィ法により無侵襲に計測可能である。光トポグラフィ法は可視から赤外領域に属する波長の光を被検体に照射し,被検体内部を通過した複数信号の光を同一の光検出器で検出しヘモグロビン変化量を計測する方法である(特許文献1など)。MRI, PET等の脳機能計測技術に比べ被験者に対する拘束性も低いという特徴を持つ。
特開平9-019408号公報 A. Maki et al., Medical Physics 第22巻,1997−2005頁(1995年) M. L. Schroeter et al., Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism, 第24巻, 1183-1191頁(2004年) M. L. Schroeter et al., Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism, 第25巻, 1675-1684頁(2005年) Castiglioni, P.; Frattola, A.; Parati, G.; Di Rienzo, M. , Engineering in Medicine and Biology Society, 1992. Vol.14. Proceedings of the Annual International Conference of the IEEE Volume 2, Issue , 29 Oct-1 Nov Page(s):465 − 466(1992年) 市丸雄平,小笠原正彦,片山宗一, BME, 8(10) 36−48 (1994年) Themelis, G. et al.: Journal of Biomedical Optics, 第12巻, 014033 (2007年) Rasmussen, P. et al.: Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism, 第27巻, 1082-1093頁 (2007年)
しかし,上記のような脳血管障害の検査は侵襲的な方法を用いたり,侵襲的ではなくても被検査者に大きな負担を強いたりする場合があった。また小さな病巣を見落とす可能性が高かった。したがって,予防的に脳血管障害の検査を行うことが困難であった。また,市販の超音波による血管の硬さの検査装置では,脳そのものを見ていないため,脳を直接測定して,脳梗塞を直接推定することができなかった。複数部位の脈波の位相差に関しても,複数種類の検査装置を用いた場合には,システム依存の時間遅れにより,正確な位相差を計測することが困難であった。
そこで,本発明は脳血液量変動および,心拍数変動を計測してそれらの変動の低周波成分の性質から脳血管の硬さおよびその変化等を評価し,その評価に基づいて障害部位および危険部位を推定し表示する。また,脳血液量変動を計測する同一システムの一部を,脳以外の計測に用いて同時に計測する。
本発明によれば,無侵襲かつ高精度で脳血管障害の検査をすることが可能となる。
以下,図面を用いて本発明の実施例を説明する。
図1に装置の構成を示す。本装置は計算機112に含まれる入力部,解析部,記憶部,抽出部,さらに脳血液量計測部120,表示部113からなる。なお,計算機112が表示機能を有する場合,表示部113はそれによって代用可能である。
入力部では検査に必要な情報,例えば非検査者の年齢,性別,利き手,現時点での診断,治療暦等の診断情報,特に確定診断結果があるかどうか等が操作者によって入力される。その際示される入力画面の様子を図2に示す。この例では,患者番号で識別しているが,氏名であっても良い。確定診断結果がある場合,1項の□にチェックする。その場合には検査結果は自動的にデータベースに格納される。
局所脳血液量(酸素化ヘモグロビン・脱酸素化ヘモグロビン・総ヘモグロビン)は,脳血液量計測部120において,可視から赤外領域に属する波長の光を被検体頭部に照射し,被検体内部を通過した複数信号の光を同一の光検出器で検出し計測することで得られた。計測期間中に,被検体に対して,刺激・命令提示装置115により,適当な刺激・命令を与えた。刺激・命令提示装置115は,計測制御用計算機111より,制御信号114により制御される。
波長の異なる複数の光源102a〜102d(2種の波長であれば,例えば光源102aと102cは695nm,光源102bと102dは830nm)と,上記複数の光源102a及び102b(102c及び102d)の光を,駆動信号ライン116a及び116b(116c及び116d)を通して,それぞれ互いに異なった周波数で強度変調するための変調器または発振器101a及び101b(101c及び101d)と,強度変調された光をそれぞれ光ファイバー103a及び103b(103c及び103d)を通して結合する結合器104a(104b)からの光を,光照射用光ファイバー105a(105b)を介して被検体である被検者106の頭皮上に照射する複数の光照射手段と,上記複数の光照射手段の光照射位置の近くに上記光照射位置からあらかじめ設定した距離(ここでは30mmとする)の位置に先端が位置するように受光用光ファイバー107a,107b及び受光用光ファイバー107a〜107dのそれぞれに設けられた受光器108a,108bからなる複数の受光手段とが設けられている。受光用光ファイバー107a,107bで,生体通過光を光ファイバーに集光し,それぞれ受光器108a,108bで生体通過光が光電変換される。上記受光手段は被検体内部で反射された光を検出し電気信号に変換するもので,受光器108としては光電子増倍管やフォトダイオードに代表される光電変換素子を用いる。図1では2種の波長を用いるときを説明しているが,3種以上の波長を使用することも可能である。また,光照射手段,受光手段を各々複数配置して,同様の計測をすることも可能である。
受光器108a,108bで光電変換された生体通過光強度を表す電気信号(以下,生体通過光強度信号とする)は,それぞれロックインアンプ109a〜109dに入力される。ロックインアンプ109a〜109dには,発振器[変調器]101a及び101b(101c及び101d)からの参照信号117a〜117dも入力されている。例えば109a,109bでは光源102aと102cの,695nmの光が分離されて出力され,ロックイン処理により取り出し,109c,109dでは光源102aと102cの,830nmの光が分離されて出力される。
ロックインアンプ109a〜109dの出力である分離された各波長の通過光強度信号をアナログ−デジタル変換器(以下ではA/D変換器と記す)110でアナログ−デジタル変換した後に,計測制御用計算機111に送られる。計測制御用計算機111では通過光強度信号を使用して,各検出点の検出信号から非特許文献1に説明されている手続によって酸素化ヘモグロビン濃度,脱酸素化ヘモグロビン濃度および総ヘモグロビン濃度の相対変化量を演算し,複数の計測点の経時情報として記憶装置に格納する)。
尚,ここではロックイン処理を行ってからA/D変換を行う例を記載したが,受光器からの信号を増幅・A/D変換した後に,ロックイン処理をデジタル的に行うことも可能である。
また,ここでは,複数の光を変調方式により分離する実施例を記載したが,これに限定されず,たとえば,複数の光を照射するタイミングを時間的にずらすことで複数光を弁別する時分割方式を用いることもできる。
解析部では,後に詳述するが,計測された上記局所脳血液量のパワースペクトルの解析などを行う。これらの結果は計算機112内の記憶部に渡される。
記憶部では被検査者の計測情報等を一時的に保存しその後の処理を可能とする一方,例えば確定診断がある場合には計測情報をデータベースとして格納する,ということもできる。
計算機112内の抽出部では上記解析部で解析された信号のパワースペクトルおよびそれに関する定量的情報から後述する方法で血管障害に関する情報を抽出する。上記抽出部で抽出された血管障害に関する情報は表示部113で表示される。
なお,図1では計算機111と計算機112は別個に描かれているが,一つの計算機としてもよいことは言うまでも無い。
図3は,脳血液量を計測するためのプローブを模式的に説明する。Cz, T3, T4は脳波計測のため標準的な位置を示す記号(国際10-20法)で,それぞれ,頭頂,左耳直上部,右耳直上部を表す。C3, C4は,それぞれ,CzとT3,CzとT4の中点である。左右各12チャンネルずつ,計24チャンネルの計測が可能である。各チャンネルは計測点に付された番号(以下ではチャンネル番号と記す)で識別する。
上記解析部で得られたパワースペクトルの例を図4に示す。局所脳血液量(Cerebral Blood Volume (CBV))のパワースペクトルである。縦軸はパワースペクトル密度 (Power Spectral Density: PSD) を表す。パワースペクトル密度とはパワーを周波数について積分したとき1になるように正規化したものである。横軸の周波数は時系列データである血圧・心拍数変動をフーリエ変換し得られる時間軸に対応した座標でゼロHzからナイキスト周波数(サンプリング周波数の半分)までの範囲を含む。図4ではその一部分を示している。
Figure 0005094326
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ここでさらに,実施例1の手順で求められた局所脳血液量のパワースペクトルにおいて,心拍基本波成分を抽出し,必要に応じてシステムノイズ部分を除いた後に,半値幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)を計算した結果を同時に表示することも可能である。これにより心拍数の揺らぎとの関係を二次元的に可視化することが可能となり,脳血管系の診断において有用な判断材料を与え得る。
またパワー比算出の際,パワースペクトルの1/fスペクトル成分をあらかじめ除くとより一層正確に血管の性質を評価できる。1/fスペクトル成分は生体特に血圧・心拍数等のパワースペクトルでよく観察される特徴的な周波数を持たないスペクトル構造であり,血圧・心拍数変動が複雑なフィードバック構造から生じていることを示すものと考えられるが,発生メカニズムの詳細は未だ不明である。
1/fスペクトル成分をあらかじめ除く方法は以下のようなものである。まずパワースペクトルを両対数表示でプロットし,低周波数部分を直線で近似する:
〔式2〕(図24を参照)
傾きαは1/fスペクトル成分のべき指数を表す。最小二乗法でこれらのパラメータをα,βを決定し,直線部分を取り除いたスペクトルを計算する。最小二乗法計算を行う際,上記のLF領域,VLF領域のデータは含めないようにする。図7に,低周波成分(例えば,0.0022〜0.022[Hz])における局所脳血液量変動のパワースペクトルを両対数表示したものを最小二乗法により,式1により直線で近似したものを示す。
Figure 0005094326
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〔式3〕(図24を参照)
と表される。
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〔式4〕(図24を参照)であるとき,全身的に動脈硬化が起こりやすく,したがって脳血管障害も起こりやすい傾向がある。閾値TH1は0.1とした。これは医学的には十分な数の被験者を対象とした予備的な検討をもとに決定した。この基準を用いると,表1に挙げた2名の被験者は,Rp値として十分に大きな値を示しており,脳血管障害が起こりやすいとはいえない。
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本実施例では,CBVに現れる心拍成分を抽出するとき簡単のために固定のバンドパスフィルタを用いた。正確に抽出を行うためには次のように行っても良い。まずCBVの変動データからパワースペクトルを求め,0.5-2.0Hzの範囲の最も強いピークの周波数を心拍の基本周波数f0とする。次に,通過域[f0-0.5 Hz, f0+0.5 Hz]のバンドパスフィルタを施し,心拍成分pCBVを得る。この方法を用いることで,より正確に心拍成分を抽出できるようになる。
また,この計算の過程で算出された1/fスペクトル成分における指数αの値も血管の硬さに関連した情報を含んでいる。これは前記複雑なフィードバック調節機構が加齢などにより,部分的に壊れた場合,よりランダムな性質を有することに起因すると考えられる。実際,非特許文献4,5などによれば,低周波帯域における1/f揺らぎ現象は,年齢や疾患に関係する。非特許文献4では若年層と老年層の被験者グループ間で,動脈血圧変動に現れる1/fスペクトルを解析し,老年層被験者では指数αの値が有意に大きくなっていることが示されている。
Figure 0005094326
αを求めるときに用いるパワースペクトルの周波数範囲は,0.02[Hz]付近以下にするのが望ましいが,パワースペクトルを用いた周波数範囲全体を用いても良い。
今後,1/f揺らぎ成分の発生メカニズムがより解明されれば,α等の結果を,より具体的な診断の支援に用いることができるようになることが期待される。
Figure 0005094326
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このように,局所脳血液量変動のみから,全身性・脳血管系の両方の動脈硬化状態を見積もり,両者を用い脳梗塞等の,動脈硬化に起因する脳血管障害の診断を行うことが可能となる。処理のフローを図14に示す。
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上記の脳血管障害に関する情報の抽出で用いられた閾値等はデータ蓄積によって改善することができる。本装置はそのための自動調整機能を有する。調整手順を図16にまとめた。まず,確定診断を行ったデータの各チャンネルを,上述したように「問題なし」,「要注意(経過を見守る)」,「精密検査を要する」の3段階に分類する。前記記憶部に格納されたパワー比の情報に基づき,閾値TH1を最適化する。TH1は第1段階とその他を分離する閾値であるが,それぞれの群の正答率の平均が最大になるようにTH1を決定する。次に閾値TH2を最適化する。TH2は第2段階と第3段階を分離する閾値である。それぞれの群に対する正答率の最大になるようにTH2を決定する。このように確定診断情報と合わせることによって,より適切なしきい値に変更していくことが可能である。
実施例1において,図17のように,頭部における局所脳血液量変動の計測に追加して,同システムにおけるチャンネルの一部からなる,頭部以外に設置する局所血液量変動計測部により,被検体の頭部以外の場所(例えば,心臓,脊椎,上腕,橈骨動脈,指尖部)の局所血液量変動を計測する。両計測部位は,同時に計測される。同一システムによる多点の同時計測により,システム依存の時間遅れ等に左右されることなく,各計測点での位相差・時間差を計測することができる。図17と図1との相違点は,光ファイバー103bと光照射用光ファイバー105bが,被検体の頭部以外の場所(例えば,心臓,脊椎,上腕,橈骨動脈,指尖部)に設置されている点である。
複数部位における脈波の位相差・時間差を求めるために,各計測部位における脈波の時刻(心電図のR波時刻に相当する時刻)を算出する必要がある。図18に,脈波時刻列の算出フローを示す。まず,局所血液量時系列データのパワースペクトル等から,心拍の基本周波数f0を求め,通過域[f0-0.5 Hz, f0+0.5 Hz]のバンドパスフィルタを施す。得られたデータに対し,3次スプライン等の適当な補間を行う。次に,ヒルベルト変換を用いて,補間データの各サンプリング時点における位相を求める。そして,求めた位相列より,脈波が極大値となる時刻を求め,次に,脈波極大の各時刻間にて,最小値をとる時刻を求める。その最小値をとる各時刻周り3点で2次曲線によるフィッティングを行い,極小値をとる時刻をR波時刻とする。各計測部位で得られたR波時刻をもとに,各計測部位間での位相差・時間差を算出可能となる。
図19に,実際に局所血液量変動計測部を用いて,心臓直上と頭部(前頭前野)と脊椎上(腰位置)と橈骨動脈直上(右手,左手)に設置したプローブにより5箇所を同時計測したときの,酸化ヘモグロビン濃度変化の計測データを示す(ただし,Heart:心臓直上,PFC:前頭前野,Spine:脊椎上(腰位置),R Rad:右手橈骨動脈,L Rad:左手橈骨動脈)。各計測部位1チャンネルずつの,酸化ヘモグロビンデータの時間変化(10秒間)を表示している。各計測部位とも,縦軸の単位は[mMmm]である。本実験データにおいて,図18に示した方法で脈波時刻を各計測部位について求め,位相差の平均値を求めたところ,心臓直上における計測データに対し,前頭前野,脊椎(腰椎),右手橈骨動脈,左手橈骨動脈の計測データから得られる脈波の時間遅れはそれぞれ,14.1msec,18.5msec,-7.14msec,-39.5msecとなった。このように,ある計測部位(例えば,心臓)における脈の位相を時間軸の基準にして,他の計測部位の計測データの解析を行うことが可能となる。
また,5分間の連続計測を行い,呼吸を目視により検出し,マークを入れることで,これらの計測データには,呼吸に同期した成分があることも実験により確認した。呼吸を同時に計測することにより,呼吸成分を取り除き,より高精度に脈波の解析を行うことも可能となる。
本実施例においては,同時に計測される局所脳血液量変動に載る脈波(以下,脳内脈波と記す)と,頭部以外の場所の局所血液量変動に載る脈波(以下,特定部位脈波)の位相差または時間差(伝達時間)を,動脈硬化等の脳血管障害の診断に用いる。脳内脈波と特定部位脈波は,ともに心臓の拍動という同じ由来を持つため,周期変動はほぼ同じであるはずである。また,心臓からの距離は,頭部のどの位置であってもさほど変わらないため,心拍の伝達の仕方が同じであると仮定すると,特定部位脈波と脳内脈波との位相差の空間分布は,マップ上で連続的となるはずである。よって,もし位相差がマップ上で不連続的変化を示していたとすれば,脳内における心拍の伝達の仕方が場所により異なることを意味し,その原因の一つとして,動脈の硬化状態が不連続的に分布していることが考えられる。
実際の診断においては,脳内脈波と特定部位脈波の位相差の分布(二次元マップ)を表示部にて表示し,マップ上で不連続変化をしていたら動脈硬化の確率が高いと診断し,診断結果を表示する。脳内脈波と特定部位脈波の位相差の分布と結果の表示例を図20に,連続性判断を含む本実施例全体のフローを図21に示す。つまり,頭部と頭部以外の場所における局所血液量変動の計測を行った後に,頭部における隣り合うチャンネル間全ての組み合わせで,位相差または時間差の差分を算出する。そして,計算結果に対しデータの標準化を行い,二次元マップ上に数値でまたは白黒の濃淡でまたは,表にして表示する。その計算結果の中で,一つでも,しきい値(TH4)以上のものがあれば,そのチャンネル組を数値で表示する。無ければ,動脈硬化に関しては,「問題なし」ということを表示する。
TH4は,例えば以下のように定める。標準化した差分値の分布が正規分布に従うと仮定した場合に,生じる確率が5%以下の差分値を取ったときに,動脈硬化の可能性が高いと診断する。正規分布表の両側確率より,1.96以上の標準化された差分値となる確率は5%となるため,TH4=1.96と決めることができる。
以上のように,標準化された差分値がTH4以上であれば動脈硬化の可能性が他の場所に比較して相対的に高いと判断する。そうでなければ問題なしと判断する。脳内脈波と特定部位脈波の位相差の平均に個人差があることを考慮した決定方法である。このしきい値の決定方法に関しては,頭部の二次元マップ上における,一被験者内での相対的な動脈硬化の起こり易さに関する評価であり,個人間での比較には,多くの被験者の計測値や,年齢平均値などを用いる必要がある。しきい値TH4の決定方法はこれに限らず,他の妥当な方法を用いても良い。
図20では,位相差を白黒の濃淡で表した例であり,具体的な数値をこのような二次元マップ上に配置することも可能である。このことにより,各計測点における血管の硬化度の情報に加え,その二次元的な配置を考慮した診断をすることができる。また,連続性の有無に関しては,計算機による自動判断のため,医師あるいは装置のオペレータの見落としを防ぐ効果もある。
本実施例に示したように,局所血液量変動を計測するための装置において,計測部位を頭部以外の場所へ拡張し,頭部の計測と同時に計測を行うことにより,他の計測システムを用いること無しに,脳内脈波と特定部位脈波の位相差を計測することが可能となる。
尚,本実施例で用いた,頭部以外に設置する局所血液量変動計測部の代わりに,心電図または光電式容積脈波記録(フォトプレチィスモグラフィ)または観血式血圧計などを用いても同様の解析を行うことが可能である。
実施例4において,脳内脈波と特定部位脈波との位相差または時間差を,ある時点に限定せずに経時的に記録することで,時間的変化を計測することも可能である。このように脳内脈波と特定部位脈波との位相差を時系列データとして得ることにより,時間的な揺らぎを計測することができる。適当な時間幅にて分散あるいは標準偏差を計算し,分散あるいは標準偏差が小さいとき,時間的揺らぎが小さいことを表す。このことは血管の硬化度や閉塞状態の情報を含んでおり,分散あるいは標準偏差が小さい,つまり時間的揺らぎが小さいときには,血管が硬い可能性が高く,動脈硬化の確率が高い。よって,例えば二次元マップ上に脳内脈波と特定部位脈波との位相差の分散を表示し,事前に設定した閾値以下の計測点に関して,動脈硬化の確率が高いこと,脳梗塞に注意の判断をし,それを表示することが可能である。結果の表示は,図20の位相差分布を,分散あるいは標準偏差の分布に置き換えたものと同様となる。疾患等の判断については,処理のフローを図22に示す。脳内脈波と特定部位脈波との位相差または時間差を,経時的に記録した後に,各チャンネルで,分散または標準偏差を求める。次に,各チャンネルの分散または標準偏差の計算結果に対しデータの標準化を行い,二次元マップ上に数値でまたは白黒の濃淡でまたは,表にして表示する。その中で,分散または標準偏差に関し,あるしきい値(分散か標準偏差かにより異なる。TH5とする)以下のものがあるかどうかを調べる。分散または標準偏差が小さいことは,脈波の揺らぎが小さい,つまり動脈硬化の可能性がより高いことを意味する。そして,しきい値TH5以下のチャンネルがあれば,そのチャンネル番号を表示し,無ければ,動脈硬化に関しては「問題なし」ということを表示する。
TH5は,例えば以下のように定める。標準化した測定値(分散または標準偏差)の分布が正規分布に従うと仮定した場合に,測定値が小さい方に片側確率5%以下の値であったときに,動脈硬化の可能性が高いと診断する。正規分布表の片側確率より,-1.645以下の標準化された測定値となる確率は5%となるため,TH5=-1.645と決めることができる。
以上のように,位相差・時間差の分散または標準偏差を標準化したデータが,TH5(分散か標準偏差かで値は異なる)以下であれば動脈硬化の可能性が他の場所に比較して相対的に高いと判断する。そうでなければ問題なしと判断する。脳内脈波と特定部位脈波の位相差の時間的分布の平均に個人差があることを考慮した決定方法である。このしきい値の決定方法に関しては,頭部の二次元マップ上における,一被験者内での相対的な動脈硬化の起こり易さに関する評価であり,個人間での比較には,多くの被験者の計測値や,年齢平均値などを用いる必要がある。しきい値TH5の決定方法はこれに限らず,他の妥当な方法を用いても良い。
また,実施例4に示した判断を併用することにより,脳血管障害の診断の確実性を高めることが可能となる。
実施例4と同様,本実施例で用いた,頭部以外に設置する局所血液量変動計測部の代わりに,心電図または光電式容積脈波記録(フォトプレチィスモグラフィ)または観血式血圧計などを用いても同様の解析を行うことが可能である。
本実施例では実施例2において簡便な手法で分離された局所脳血液量変動の1Hzから1.5Hzの帯域に存在する脈波成分の形状から脳内の局所血流量分布を推定する。脈波成分局所血流量(pCBF)は局所脳血液量(pCBV)とは異なる物理量であるが,近似的にpCBVの時間微分すなわち傾きをpCBFとすることができる。本実施例で用いた光源の波長領域では主として毛細血管の情報を見ている(例えば,非特許文献7)ために観測される脈波は,形状が大動脈のそれとは異なっている。脈動において血管径変化は無視でき,上記近似は妥当なものと考えられる。非特許文献6にあるように脈波の各ビートで,その傾きの最大値を対応する局所脳血流量値とした。傾きは次の手順で計算した。各計測位置(チャンネル)でサンプリング間隔が10ミリ秒になるようにスプライン補間を施した。傾きは,10ミリ秒ごとに,各点と前後5点(計11点)を直線近似し求めた。各ビートに対し,傾きの最大値を各チャンネルで記録した。記録された値から,例えば,カーネル推定により局所血流量の分布密度関数を求めた。図23に脳内脈波形状から推定した脳血流量分布を示す。下部にヒト頭部上のプローブ位置を四角で示した。吹き出し内のグラフの配置は,ヒト頭部上に四角で表したプローブ配置領域内におけるチャンネルの配置に一致する。各チャンネル位置に局所血流量の分布密度関数を示した。横軸は血流量値,縦軸は分布密度を表す。局所血流量の平均値を太い縦線で,標準偏差を太い横線で併せて表示している。この例では後部頭頂領域に血流量の低下を認めるが症状は軽微である。
本発明は,脳血管障害の検査装置に用いることができる。
生体計測装置の構成。 生体計測装置の情報入力画面。 計測プローブ配置の例。 局所脳血液量(CBV)のパワースペクトル低周波成分。 による動脈硬化の診断結果を頭部で二次元上にマッピングした結果の例。 をにより動脈硬化等の脳血管障害の診断支援を行うフロー。 CBVパワースペクトル両対数グラフにおける,1/fα直線への最小二乗フィッティングの例。 心拍数変動を求めるフロー。 各計測部位Rp(Systemic)の平均値のみから,動脈硬化を判断するフロー。 CBV,pCBVのパワースペクトル。 Rp(Systemic)の二次元分布と,その平均値から動脈硬化度の判定結果の表示。 1/fαのαによる,加齢・病態の判断のフロー。 1/f揺らぎから加齢・病態を判断する結果の表示例。 局所脳血液量変動のみから全身・脳血管状態判定までのフロー。 pCBV,心拍数のパワースペクトル。 閾値TH1, TH2 の調整手順。 脳と心臓・脊椎等の局所血液量変動を同時計測するときの構成図。 脈波時刻列の算出フロー。 局所血液量変動計測部を用いて,心臓直上と頭部(前頭前野)と脊椎上(腰位置)と橈骨動脈直上(右手,左手)に設置したプローブにより5箇所を同時計測したときの,酸化ヘモグロビン濃度変化の計測データ(バンドパスフィルタを適用し,補間後)。 脳内脈波と特定部位脈波の位相差の分布の表示例。 脳と心臓・脊椎等の局所血液量変動を同時計測して脳疾患等の診断支援をするときのフロー。 脳内脈波と特定部位脈波との位相差または時間差を,経時的に記録して脳疾患等の診断支援をするときのフロー。 脳内脈波形状から推定した脳血流分布表示例。 明細書中の式。
符号の説明
101:発振器[変調器],102:光源,103:光ファイバー,104:結合器,105:光ファイバー,106:計測対象(被検者),107:受光用光ファイバー,108:受光器,109:ロックインアンプ,110:アナログ・デジタル(A/D)変換器,111:計測制御用計算機,112:計算機,113:表示部,114:制御信号,115:刺激・命令呈示装置,116:光源駆動信号,117:発振器[変調器]からの参照信号,120:脳血液量計測部。

Claims (13)

  1. 被検体の脳血液量の変動に応じた情報を取得し、前記情報に対応した前記脳血液量の変動を示す第一の信号を出力する計測部と、
    前記第一の信号が入力される演算部と、
    を有し、
    前記演算部は、
    前記第一の信号に基づいて、第一のパワースペクトルと、心拍数変動を示す第二の信号を取得し、
    前記第二の信号に基づいて、第二のパワースペクトルを取得し、
    前記第一のパワースペクトルから、予め与えられた第一の周波数帯域におけるパワー強度と第二の周波数帯域におけるパワー強度との比である第一のパワー強度比を演算し、
    前記第二のパワースペクトルから、前記第一の周波数帯域におけるパワー強度と前記第二の周波数帯域におけるパワー強度との比である第二のパワー強度比を演算し、
    前記第一のパワー強度比と前記第二のパワー強度比との大小関係にしたがって、脳血管の状態に関する情報を出力することを特徴とする生体計測装置。
  2. 前記脳血管の状態に関する情報は、前記第一のパワー強度比と前記第二のパワー強度比との差分に応じて、予め設定及び保持されている所定の基準値ごとに分類されることを特徴とする請求項1記載の生体計測装置。
  3. 前記生体計測装置は、前記第二のパワー強度比と予め登録された参照データとの相対関係によって、前記脳血管の状態に関する情報を抽出することを特徴とする請求項1記載の生体計測装置。
  4. 前記相対関係は、前記第二のパワー強度比と前記参照データとの差または比の少なくとも何れか一つであることを特徴とする請求項3記載の生体計測装置。
  5. 前記第一のパワー強度比および前記第二のパワー強度比は、前記第一の周波数帯域中のパワースペクトル密度の平均と前記第二の周波数帯域中のパワースペクトル密度の平均との比として、それぞれ取得されることを特徴とする請求項1記載の生体計測装置。
  6. 前記第一および第二のパワー強度比は、前記第一および第二のパワースペクトルそれぞれの1/fスペクトル成分を除く処理をして算出されることを特徴とする請求項1記載の生体計測装置。
  7. さらに前記演算結果を表示する表示部を備え、
    前記演算部は前記被検体の脳血管の状態に関する情報を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1記載の生体計測装置。
  8. 前記計測部は、複数の計測点を測定するための複数の光源と複数の光検出器を有しており、
    前記表示部は、前記脳血管の状態に関する情報を頭部の前記複数の計測点のチャンネルごとに表示することを特徴とする請求項7記載の生体計測装置。
  9. 被検体の脳血液量の変動に応じた情報を取得し、前記脳血液量の変動を示す信号を出力する計測部と、
    前記被検体の頭部以外の場所の血液量の変動に応じた情報を計測し、前記頭部以外の部位の血液量の変動を示す信号を出力する特定部位血液量変動計測部と、
    前記脳血液量の変動を示す信号及び前記頭部以外の部位の血液量の変動を示す信号が入力される演算部と、
    を有し、
    前記演算部は、
    前記脳血液量の変動を示す信号を解析して前記脳血液の脈波に基づく信号を取得し、
    前記頭部以外の部位の血液量の変動を解析して脳以外の部位の脈波に基づく信号を取得し、
    前記脳の脈波に基づく信号と前記脳以外の部位の脈波に基づく信号との位相差または時間差を解析して出力することを特徴とする生体計測装置。
  10. 前記計測部は、
    被検体の頭部に光を照射する光源と、
    前記被検体内部を通過した前記光源からの光を検出する光検出器と、
    を少なくとも有することを特徴とする請求項1または9の何れかに記載の生体計測装置。
  11. さらに前記演算結果を表示する表示部を備え、
    前記表示部は、前記複数の脈波の位相差または時間差の分布図を表示することを特徴とする請求項9記載の生体計測装置。
  12. 前記演算部は、前記位相差または時間差の波形に不連続変化があれば、動脈硬化の確率が高いことを前記表示部に表示させることを特徴とする請求項11記載の生体計測装置。
  13. 前記生体計測装置は、前記計測部および/または前記特定部位血液量変動計測部で計測された計測結果、または前記演算部での演算結果のうち少なくとも一つを記憶する記憶部を有し、
    前記演算部は前記記憶部に記憶された情報を参照して、前記被検体の計測部位ごとの脳血管の状態に関する情報を抽出することを特徴とする請求項1または9に記載の生体計測装置。
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