(結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法)
以下、図1を適宜参照しながら、本発明の好適な一実施形態である結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルム(位相差フィルム)の製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、図1の寸法比率、形状は、必ずしも実際の寸法比率、形状とは一致していない。
本実施形態に係る結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法は、主として、不活性ガス雰囲気中で結晶性ポリオレフィン系樹脂の温度を所定値に維持する熱処理工程(S1)、熱処理工程後の結晶性ポリオレフィン系樹脂を溶融混練した後、フィルム状に押出成形し、原反フィルムを得る押出成形工程(S2)、および原反フィルムに対して縦延伸及び横延伸を施す延伸工程(S3)を有する。以下、各工程について説明する。
<S1:熱処理工程>
まず、原料として、ガラス転移温度がTg℃であり、融点がTm℃である結晶性ポリオレフィン系樹脂を、加熱機1(不活性ガス還流型乾燥機)の原料導入口1aから原料タンク1b内へ導入する。
次に、原料タンク1b内を、酸素分圧が500Pa以下である不活性ガス(窒素)で満たして原料タンク1b内を密閉する。好ましくは、酸素分圧を300Pa以下に維持する。酸素分圧が低いほど、結晶性ポリオレフィン系樹脂の混練による劣化を抑制する効果に優れる。なお、不活性ガスとしては、窒素以外に、アルゴン等の希ガス、又は二酸化炭素等を用いることができるが、窒素を用いることが好ましい。また、原料タンク1b内において酸素分圧を500Pa以下とする場合、例えば、原料タンク1b内の不活性ガスの全圧を大気圧(1×105Pa)とし、不活性ガス中の酸素の含有率を5000ppm以下とすればよい。
密閉された原料タンク1b内の窒素を窒素環流管1c内に循環させ、窒素用ヒーター1dを用いて窒素を加熱する。この加熱された窒素からなる雰囲気によって結晶性ポリオレフィン系樹脂を熱処理する。本実施形態では、熱処理中の結晶性ポリオレフィン系樹脂の温度(樹脂全体の温度)Ta℃を、50℃又は(Tg+50)℃のいずれかのうち高い方の温度以上であり、(Tm−10)℃以下である範囲内に2時間以上維持する。好ましくは、熱処理中の結晶性ポリオレフィン系樹脂の温度Taを、50℃又は(Tg+50)℃のいずれかのうち高い方の温度以上であり、(Tm−30)℃以下である範囲内に2時間以上維持する。
上記の窒素雰囲気下において、溶融混練する前の結晶性ポリオレフィン系樹脂の温度をTa℃の範囲内に2時間以上維持することにより、結晶性ポリオレフィン系樹脂の劣化の原因となる酸素を結晶性ポリオレフィン系樹脂から除去することができる。そのため、結晶性ポリオレフィン系樹脂を溶融混練する際に、結晶性ポリオレフィン系樹脂の劣化(酸化分解)を抑制し、低分子量の樹脂など(常温のキシレンに可溶な樹脂など)の生成が抑制される。酸化分解が抑制され、低分子量の樹脂の含有率が小さい結晶性ポリオレフィン系樹脂の溶融体を、フィルム状に押出成形することによって、原反フィルムおよび完成後の位相差フィルムにおけるダイラインの発生を抑制でき、厚み斑の少ないフィルムを得ることが可能となる。
上述した結晶性ポリオレフィン系樹脂の温度Taが、50℃又は(Tg+50)℃のいずれかのうち高い方の温度より小さい場合、結晶性ポリオレフィン系樹脂を構成する分子の運動性が低くなり、該樹脂中に含有される酸素を不活性ガスにより置換する効果が乏しくなる傾向があり、(Tm−10)℃より高い場合、結晶性ポリオレフィン系樹脂が互着し、押出機への供給が困難となるなど悪影響を及ぼす傾向がある。本実施形態では、結晶性ポリオレフィン系樹脂の温度Taを、上記の好適範囲内に維持することによって、これらの傾向を抑制できる。
<輸送工程>
本実施形態では、上記熱処理工程後の結晶性ポリオレフィン系樹脂を、酸素分圧が500Pa以下である窒素雰囲気(不活性ガス雰囲気)中に保持した状態で、輸送管3を通じて、原料タンク1b内から押出機5内へ輸送することが好ましい。また、本実施形態では、輸送中の結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度を(Ta−20)℃以上、好ましくは(Ta−15)℃以上に維持し、且つ表面温度の変動幅を5℃以内(所望の表面温度に対して±2.5℃の範囲内)、好ましくは表面温度の変動幅を3℃以内に維持した状態で、結晶性ポリオレフィン系樹脂を押出機5内へ供給することが好ましい。
すなわち、熱処理工程後から押出成形工程を開始するまでの間、結晶性ポリオレフィン系樹脂を不活性ガス雰囲気中に保持し、且つ結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度を(Ta−20)℃以上に維持し、且つ表面温度の変動幅を5℃以内に維持することが好ましい。
熱処理工程後の結晶性ポリオレフィン系樹脂を、輸送中、上記の窒素雰囲気中に保持し、且つ輸送中の結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度を上記の好適な条件下に維持することによって、輸送中において結晶性ポリオレフィン系樹脂が酸素に曝露され難くなり、また結晶性ポリオレフィン系樹脂中に酸素が取り込まれ難くなる。そのため、熱処理工程により酸素が除去された状態のままで結晶性ポリオレフィン系樹脂を押出機5内へ供給でき、押出機内5で溶融混合練される結晶性ポリオレフィン系樹脂の劣化(酸化分解)を確実に抑制できる。その結果、原反フィルムおよび完成後の位相差フィルムにおけるダイラインの発生を確実に抑制でき、厚み斑の少ないフィルムを得ることが可能となる。
輸送中における結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度が(Ta−20)℃未満である場合は、押出機5内で結晶性ポリオレフィン系樹脂を溶融混練する際に、結晶性ポリオレフィン系樹脂の溶融する場所が押出機5内のスクリュー5bの前方(吐出口方向)となり、樹脂の押出量が変動し易くなる傾向があり、表面温度の変動幅が5℃を超える場合、固体状態の結晶性ポリオレフィン系樹脂と押出機5内のスクリュー5bとの摩擦の大きさに分布が生じ、樹脂の押出量が変動し易くなる傾向がある。本実施形態では、輸送中における結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度を上記の好適な条件下に維持することによって、これらの傾向を抑制することができる。
なお、輸送中の結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度は、例えば、K熱電対などの熱電対又は赤外線放射温度計によって測定できる。結晶性ポリオレフィン系樹脂をフィルム状に成形しながら該樹脂の表面温度を測定する方法としては、押出機5上のホッパー7の壁面あるいはホッパー7と押出機5とを繋ぐ接合部に熱電対を取り付け、接合部を通過する結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度を直接測定する方法が挙げられる。また、輸送中の結晶性ポリオレフィン系樹脂の表面温度は、加熱機側から樹脂と共に供給される窒素雰囲気の温度を調整することや、押出機5上のポッパー7の外面に加熱用ヒーターを取り付けることによって、上記の好適範囲に制御することができる。
<S2:押出成形工程>
押出機5は、シリンダー5aと、シリンダー5a内に設置されたスクリュー5bとを備え、加熱機1から供給される結晶性ポリオレフィン系樹脂は、ホッパー7かシリンダー5a内へ導入される。スクリュー5bはモーターと減速機(図示省略)によって駆動される。また、押出機5は、シリンダー5a内の結晶性ポリオレフィン系樹脂を溶融するための加熱装置(図示省略)を備える。この加熱装置とスクリュー5bを作動させて、押出機5内の結晶性ポリオレフィン系樹脂を溶融混練する。
シリンダー5a内の結晶性ポリオレフィン系樹脂を溶融混練する際は、シリンダー5a内を結晶性ポリオレフィン系樹脂と窒素(不活性ガス)とで満たした状態で、結晶性ポリオレフィン系樹脂を溶融混練することが好ましい。これにより、溶融混練中の結晶性ポリオレフィン系樹脂の劣化(酸化分解)を確実に抑制できる。その結果、ダイラインの発生を確実に抑制でき、厚み斑の少ない結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムを得ることが可能となる。また、窒素雰囲気下では、結晶性ポリオレフィン系樹脂中での炭化物の生成が抑制され、得られるフィルムにおける色調変動や焦げの防止効果も期待できる。
シリンダー5a内で溶融混練された結晶性ポリオレフィン系樹脂は、例えばギアポンプ9によってリーフディスクフィルター11へ送り出された後、Tダイ12からフィルム状に押し出される。Tダイ12から押し出された結晶性ポリオレフィン系樹脂を、冷却固化しながら、更に薄いフィルム状に成形して原反フィルムを形成する。
原反フィルムは厚み斑が小さいことが好ましく、原反フィルムの厚みの最大値と最小値との差は5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。原反フィルムの厚み斑が小さいほど、光学的な均一性に優れる位相差フィルムを得易くなる。また、原反フィルムは、光学的に均質な無配向あるいは無配向に近いフィルムであることが好ましく、原反フィルムの面内位相差が50nm以下であることが好ましい。
上述のようなTダイ押出成形法によって原反フィルムを製造する場合、Tダイより押し出された結晶性ポリオレフィン系樹脂の溶融体を冷却し固化させる方法としては、キャスティングロールとエアーチャンバーを用いて冷却する方法、キャスティングロールとタッチロールにより挟圧する方法、キャスティングロールと、該キャスティングロールにその周方向に沿って圧接するよう設けられた金属製の無端ベルトとの間で挟圧する方法などが挙げられる。冷却にキャスティングロールを用いる場合には、透明性に優れる位相差フィルムを得るために、使用するキャスティングロールの表面温度は、0〜30℃であることが好ましい。
キャスティングロールとタッチロールにより挟圧する方法で原反フィルムを製造する場合、ほぼ無配向の原反フィルムを得るために、タッチロールとしては、ゴムロール、または弾性変形可能な金属製無端ベルトからなる外筒と、該外筒の内部に弾性変形可能な弾性体からなるロールとを有し、かつ前記外筒と弾性体ロールとの間が温度調節用媒体により満たされてなる構造のロールを用いることが好ましい。
タッチロールとしてゴムロールを使用する場合は、鏡面状の表面を有する位相差フィルムを得るために、Tダイより押し出された結晶性ポリオレフィン系樹脂の溶融体を、キャスティングロールとゴムロールとの間で支持体とともに挟圧することが好ましい。支持体としては、厚みが5〜50μmの熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムが好ましい。
キャスティングロールと、該キャスティングロールにその周方向に沿って圧接するよう設けられた金属製の無端ベルトとの間で挟圧する方法により原反フィルムを成形する場合、前記無端ベルトは、キャスティングロールの周方向に該キャスティングロールと平行に配置された複数のロールによって保持されていることが好ましい。より好ましくは、無端ベルトが、直径100〜300mmの二本のロールで保持されてなり、無端ベルトの厚みが100〜500μmである。
<S3:延伸工程>
結晶性ポリオレフィン系樹脂を押出成形して得られた原反フィルムに対して、縦延伸と横延伸とを行うことにより、位相差フィルム(結晶性オレフィン系樹脂フィルム)を得る。なお原反フィルムの延伸方法としては、縦延伸と横延伸とを個別に行う逐次二軸延伸、及び縦延伸と横延伸とを同時に行う同時二軸延伸が挙げられる。逐次二軸延伸の場合、原反フィルムの縦延伸を行った後で横延伸を行ってもよく、横延伸を行った後で縦延伸を行ってもよい。以下では、逐次二軸延伸の場合について説明する。
縦延伸方法としては、二つ以上のロールの回転速度差により原反フィルムを延伸する方法や、ロングスパン延伸法が挙げられる。ロングスパン延伸法とは、二対のニップロールとその間にオーブンを有する縦延伸機を用い、該オーブン中で原反フィルムを加熱しながら二対のニップロールの回転速度差により延伸する方法である。光学的な均一性が高い位相差フィルムを得るためには、ロングスパン縦延伸法を用いることが好ましく、特にエアーフローティング方式のオーブンを用いることが好ましい。エアーフローティング方式のオーブンとは、オーブン中に原反フィルムを導入した際に、原反フィルムの両面に上部ノズルと下部ノズルから熱風を吹き付けることが可能な構造である。複数の上部ノズルと下部ノズルがフィルムの流れ方向に交互に設置されている。オーブン中、原反フィルムが上部ノズルと下部ノズルのいずれにも接触しないようにしながら、原反フィルムを延伸する。この場合の延伸温度(すなわち、オーブン中の雰囲気の温度)は、90℃以上、(結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点Tm+10)℃以下であることが好ましい。オーブンが2ゾーン以上に分かれている場合、それぞれのゾーンの温度設定は同じでもよいし、異なってもよい。
縦延伸倍率は、限定はされないが、通常1.01〜3倍であり、光学的な均一性により優れる位相差フィルムを得るためには、1.5〜3.0倍であることが好ましい。
横延伸方法としては、テンター法が挙げられる。テンター法は、チャックでフィルム幅方向の両端を固定した原反フィルムを、オーブン中でチャック間隔を広げて延伸する方法である。テンター法においては、予熱工程を行うゾーン、延伸工程を行うゾーン、及び熱固定工程を行うゾーンにおける各オーブン温度を独立に調節をすることができる装置を使用する。横延伸倍率は、通常、2〜10倍であり、得られる位相差フィルムの光学的な均一性が高いという観点から、4〜7倍であることが好ましい。
横延伸の予熱工程は、原反フィルムを幅方向に延伸する工程の前に設置される工程であり、原反フィルムを延伸するのに十分な高さの温度まで原反フィルムを加熱する工程である。ここで予熱工程での予熱温度は、オーブンの予熱工程を行うゾーン内の雰囲気の温度を意味する。通常、得られる位相差フィルムの位相差の均一性を良好にするために、予熱温度を、(結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点Tm−10)℃〜(結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点Tm+10)℃の範囲内で設定することが好ましく、(結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点Tm−5)℃〜(結晶性ポリオレフィン系樹脂の融点Tm+5)℃の範囲内で設定することがより好ましい。
横延伸の延伸工程は、原反フィルムを幅方向に延伸する工程である。この延伸工程での延伸温度(オーブンの延伸工程を行うゾーン内の雰囲気の温度)は、予熱温度より低い温度としても良いし、予熱温度より高い温度としても良いし、予熱温度と同じ温度としてもよい。通常、予熱された原反フィルムを予熱工程よりも低い温度で延伸することにより、原反フィルムを均一に延伸できるようになり、その結果、位相差の均一性が優れた位相差フィルムが得られるため、延伸温度は、予熱工程における予熱温度より5〜20℃低いことが好ましく、7〜15℃低いことがより好ましい。
横延伸の熱固定工程とは、延伸工程終了時におけるフィルム幅を保った状態で原反フィルムをオーブン内の所定温度の雰囲気内を通過させる工程である。熱固定温度は、延伸工程における延伸温度より低い温度としても良いし、延伸温度より高い温度としても良いし、延伸温度と同じ温度としてもよい。通常、原反フィルムの位相差や光軸など光学的特性の安定性を効果的に向上させるために、熱固定温度は、延伸工程における延伸温度よりも10℃低い温度から延伸温度よりも30℃高い温度までの範囲内であることが好ましい。
横延伸の工程は、更に熱緩和工程を有してもよい。この工程は、テンター法においては通常、延伸ゾーンと熱固定ゾーンとの間に設けられ、他のゾーンから独立して温度設定が可能な熱緩和ゾーンにおいて行われるか、熱固定工程を行うゾーンで行われる。具体的には、熱緩和は、延伸工程において原反フィルムを所定の幅に延伸した後、チャックの間隔を数%、好ましくは0.1〜10%だけ狭くし、無駄な歪を取り除くことで行われる。
(位相差フィルム)
上述の製造方法によって得られる位相差フィルムに要求される位相差は、該位相差フィルムが組み込まれる液晶表示装置の種類により異なるが、通常、面内位相差R0は30〜300nmである。後述する垂直配向モード液晶ディスプレイに使用する場合は、視野角特性に優れるという観点から、面内位相差R0が40〜70nmであり、厚み方向位相差Rthは、90〜230nmであることが好ましい。位相差フィルムを製造する際の延伸倍率と、製造する位相差フィルムの厚みを制御することにより、所望の位相差を有する位相差フィルムを得ることができる。また、位相差フィルムの厚みは、通常10〜100μmであり、好ましくは10〜60μmである。また、位相差フィルムの厚みは、基準厚さ(製品スペック)に対する公差が約±1μm以内であることが好ましい。
また、位相差フィルムは、フィルム面内(500mm幅×500mm長さの面内)の位相差の最大値と最小値との差が10nm以下であることが好ましく、フィルムの幅方向500mmの光軸を測定した場合、光軸が−1°以上+1°以下であることが好ましく、光学的な均一性が高い位相差フィルムであることが好ましい。
上述の位相差フィルムは、種々の偏光板や液晶層などと積層されて、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistant:PDA)、パソコン、大型テレビ等の液晶表示装置用として、好適に使用できる。位相差フィルムを積層して使用する液晶表示装置(LCD)としては、光学補償ベンド(Optically Compensated Bend:OCB)モード、垂直配向(Vertical Alignment:VA)モード、横電界(In−Plane Switching:IPS)モード、薄膜トランジスター(Thin Film Transistor:TFT)モード、ねじれネマティック(Twisted Nematic:TN)モード、超ねじれネマティック(Super Twisted Nematic:STN)モードなど種々のモードの液晶表示装置が挙げられる。特に、本実施形態の製造方法によって得られる位相差フィルムは、VAモードの液晶表示装置に使用された場合に視野角依存性を改良する効果を奏する。
液晶表示装置は一般に、2枚の基板とそれらの間に挟持される液晶層とを有する液晶セルの両側に、それぞれ偏光板が配置されており、その一方の外側(背面側)に配置されたバックライトからの光のうち、液晶セルとバックライトの間にある偏光板の透過軸に平行な直線偏光だけが液晶セルへ入射するようになっている。位相差フィルムは、背面側偏光板と液晶セルとの間および/または表側偏光板と液晶セルとの間に、粘着剤を介して配置することができる。また、偏光板は、通常、ポリビニルアルコールからなる偏光フィルムを保護するために、2枚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどの保護フィルムで、接着剤を介して偏光フィルムを挟持した構成を有する。位相差フィルムは、表側偏光板および/または背面側偏光板の液晶セル側の保護フィルムの代わりとして、接着剤で偏光フィルムに貼合される。このように、位相差フィルムは、光学補償フィルム(位相差フィルム)と保護フィルムの両方の役割を果たすことも可能である。
(結晶性ポリオレフィン系樹脂)
本実施形態の結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムの原料である結晶性ポリオレフィン系樹脂は、JIS K7122に従う示差走査熱量測定おいて、−100〜300℃の範囲に観測される結晶の熱量が1J/gより大きい結晶融解ピーク、または結晶化熱量が1J/gより大きい結晶化ピークを有するポリオレフィン系樹脂である。この結晶性ポリオレフィン系樹脂は、2種類以上の異なる結晶性ポリオレフィン系樹脂の混合物であってもよいし、上述した結晶性ポリオレフィン系樹脂の熱量特性を損なわない程度であれば、他の樹脂や添加剤を適宜含有してもよい。
結晶性ポリオレフィン系樹脂は、従来位相差フィルム用材料として用いられてきたポリカーボネート樹脂に比べて安価であり、また、リサイクル性、耐溶剤性に優れ、焼却してもダイオキシン等が発生せず、環境を悪化させることがない点において、位相差フィルム用材料として好適である。
結晶性ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体、1種類以上のオレフィンと当該オレフィンと重合可能な1種類以上の重合性モノマーとの共重合体、または重合体の変性物が挙げられる。結晶性ポリオレフィン系樹脂は、2種類以上の異なる結晶性ポリオレフィン系樹脂の混合物でもよいし、結晶性ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂や添加剤を適宜含有してもよい。
結晶性ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素原子数4〜20のα−オレフィン、環状オレフィンなどが挙げられる。
炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、具体的には、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン、1−オクテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテン、2−メチル−3−エチル−1−ヘプテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタダセン、1−オクタテセン、1−ノナデセンなどが挙げられる。
環状オレフィンとしては、例えば、通常ノルボルネンと呼ばれているビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンや、6−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジアルキルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、1−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、及び7−アルキルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンのような、メチル基、エチル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が導入されたノルボンネン誘導体、ジメタノオクタヒドロナフタレンとも呼ばれているテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−アルキルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、及び8,9−ジアルキルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンのような、ジメタノオクタヒドロナフタレンの8位及び/又は9位に炭素数3以上のアルキル基が導入されたジメタノオクタヒドロナフタレン誘導体、1分子内に1個又は複数個のハロゲンが導入されたノルボルネンの誘導体、及び8位及び/又は9位にハロゲンが導入されたジメタノオクタヒドロナフタレンの誘導体などが挙げられる。
オレフィンと重合可能な1種類以上の重合性モノマーとしては、例えば、芳香族ビニル化合物、ビニルシクロヘキサンのような脂環式ビニル化合物、極性ビニル化合物、ポリエン化合物などが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン及びその誘導体などが挙げられ、スチレン誘導体としては、スチレンに他の置換基が結合した化合物であって、例えば、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンのようなアルキルスチレン、ヒドロキシスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンジルアセテート、o−クロロスチレン、p−クロロスチレンのような、スチレンのベンゼン環に水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、ハロゲンなどが導入された置換スチレン、4−ビニルビフェニル、4−ヒドロキシ−4′−ビニルビフェニルのようなビニルビフェニル系化合物、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンのようなビニルナフタレン系化合物、1−ビニルアントラセン、2−ビニルアントラセンのようなビニルアントラセン化合物、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジンのようなビニルピリジン化合物、3−ビニルカルバゾールのようなビニルカルバゾール化合物さらには、アセナフチレン化合物などが挙げられる。
極性ビニル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリルレート、エチルアクリレートなどのアクリル系化合物、酢酸ビニル、塩化ビニルなどが挙げられる。
ポリエン化合物としては、例えば、共役ポリエン化合物、非共役ポリエン化合物等が挙げられる。共役ポリエン化合物としては、例えば、脂肪族共役ポリエン化合物および脂環式共役ポリエン化合物等が挙げられ、非共役ポリエン化合物としては、例えば、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環式非共役ポリエン化合物、芳香族非共役ポリエン化合物等が挙げられる。これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等の置換基によって置換されていてもよい。
結晶性ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状ポリエチレン(エチレン・α−オレフィン共重合体)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体共重合体等のポリプロピレン系樹脂、エチレン・環状オレフィン共重合体、エチレン・ビニルシクロヘキサン共重合体、ポリ(4−メチルペンテン−1)、ポリ(ブテン−1)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
結晶性ポリオレフィン系樹脂の変性物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、アクリル酸、メタクリル酸、テトラヒドロフタル酸、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の変性用化合物で変性された結晶性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
<ポリプロピレン系樹脂>
本発明の効果を得易いという観点では、結晶性ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリエチレン系樹脂、またはポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体、及びこれらの混合物等が挙げられる。
プロピレンとの共重合体を形成するα−オレフィンとしては、上述したα−オレフィンの中でも、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが好ましく、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3−ジメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ペンテン、2,3,4−トリメチル−1−ブテン、2−メチル−3−エチル−1−ブテン、1−オクテン、5−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、2−プロピル−1−ヘプテン、2−メチル−3−エチル−1−ヘプテン、2,3,4−トリメチル−1−ペンテン、2−プロピル−1−ペンテン、2,3−ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が好ましい。これらの中でも、特に共重合性の観点から、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンがより好ましく、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
本発明の効果を得易いという観点では、ポリプロピレン系樹脂として、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体が好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂が、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとの共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
ランダム共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が例示される。具体的には、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体として、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。これらの中でも、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセンランダム共重合体が好ましい。
上述したポリプロピレン系樹脂の共重合体では、コモノマー由来の構成単位の含量が、共重合体全体に対して0重量%超40重量%以下であることが好ましく、0重量%超30重量%以下であることがより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂が、2種類以上のコモノマーとプロピレンとの共重合体である場合には、共重合体に含まれる全てのコモノマー由来の構成単位の合計含量が、前記範囲であることが好ましい。コモノマー由来の構成単位の含量を上記の好適範囲内とすることによって、得られるフィルムの透明性と耐熱性とをバランスさせることができる。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定される値で通常0.1〜200g/10分であり、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは1〜10g/10分である。MFRがこのような範囲のプロピレン系重合体を用いることにより、縦延伸および横延伸時の原反フィルムの垂れさがりが少なくなり、均一に延伸しやすい。
ポリプロピレン系樹脂の分子量分布は、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比で定義され、通常1〜20である。MnおよびMwは、溶媒に140℃のo−ジクロロベンゼンを用い、標準サンプルにポリスチレンを用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定される。
ポリプロピレン系樹脂の製造方法としては、公知の重合用触媒を用いてプロピレンを単独重合する方法や、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のモノマーとプロピレンとを共重合する方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて電子供与性化合物等の第3成分とを組み合わせた触媒系、及びメタロセン系触媒等が挙げられる。
プロピレン系重合体の製造に用いる触媒系としては、これらの中で、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物と電子性供与性化合物とを組み合わせた触媒系が最も一般的に使用できる。より具体的には、有機アルミニウム化合物としては、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物およびテトラエチルジアルモキサンが挙げられ、電子供与性化合物としては、好ましくはシクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが挙げられる。マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須成分とする固体触媒成分としては例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては例えば、特許第2587251号、特許第2627669号、特許第2668732号に記載された触媒系が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂の製造に用いる重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素化合物に代表される不活性溶剤を用いる溶剤重合法、液状のモノマーを溶剤として用いる塊状重合法、気体のモノマー中で行う気相重合法等が挙げられ、好ましくは塊状重合法または気相重合法である。これらの重合法は、バッチ式であってもよく、連続式であってもよい。
ポリプロピレン系樹脂の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックのどの形式であってもよい。ポリプロピレン系樹脂は、耐熱性の点からシンジオタクチック、あるいはアイソタクチックのプロピレン系重合体であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂は、分子量やプロピレン由来の構成単位の割合、タクチシティーなどが異なる2種類以上のポリプロピレン系ポリマーのブレンドでもよいし、ポリプロピレン系ポリマー以外のポリマーや添加剤を適宜含有してもよい。
(添加剤)
本実施形態で用いる結晶性ポリオレフィン系樹脂には、ダイラインの発生を抑制し、得られるフィルムの厚み斑を抑制するという効果を阻害しない範囲内で公知の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収材、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤(HALS)や、1分子中に例えばフェノール系とリン系の酸化防止機構と有するユニットを有する複合型の酸化防止剤などが挙げられる。紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、ヒドロキシトリアゾール系などの紫外線吸収剤や、ベンゾエート系など紫外線遮断剤などが挙げられる。帯電防止剤は、ポリマー型、オリゴマー型、モノマー型などが挙げられる。滑剤としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどの高級脂肪酸アミドや、ステアリン酸などの高級脂肪酸、及びその金属塩などが挙げられる。造核剤としては、例えばソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、ポリビニルシクロアルカンなどの高分子系造核剤等が挙げられる。アンチブロッキング剤としては球状、あるいはそれに近い形状の微粒子が無機系、有機系に関わらず使用できる。これらの添加剤は、複数種を併用してもよい。
以上、本発明の一実施形態に係る結晶性ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例では、結晶性ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂の一種であるプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いた。なお、ポリプロピレン系樹脂のガラス転移温度Tgは0℃であり、融点Tmは136℃であった。
このポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)、エチレン含有量、及びキシレン可溶成分量(CXS)を、以下に示す方法でそれぞれ測定した。
<メルトフローレート(MFR)>
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、JIS K7210に従って測定した。試験温度、公称荷重は、JIS K7210の附属書B表1に従った。試験温度を230℃とし、荷重を21.18Nとして測定した。測定の結果、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は8g/10分であった。
<エチレン含有量>
上述のプロピレン−エチレンランダム共重合体(ポリプロピレン系樹脂)について、「高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行、第616頁)」に記載されているIRスペクトル測定を行い、共重合体中のエチレン由来の構成単位の含量を求めた。測定の結果、ポリプロピレン系樹脂全体におけるエチレンの含有量は5重量%であった。
<キシレン可溶成分量(CXS)>
ポリプロピレン系樹脂1gを沸騰キシレン100mlに完全に溶解させた後、キシレンを20℃に降温し、同温度で4時間静置した。その後、濾過により析出物と濾液とに分別し、濾液からキシレンを留去して生成した固形物を減圧下70℃で乾燥して、残存物を得た。ポリプロピレン系樹脂の重量(1g)に対して、得られた残存物の重量の百分率を求め、この値をポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶成分量(CXS)とした。なお、分子量の小さい樹脂成分ほどキシレンに溶解し易いことから、CXSが大きいほど、ポリプロピレン系樹脂における低分子量樹脂成分の含有量が多いことになる。測定の結果、ポリプロピレン系樹脂のCXSは4.0%であった。
上述のポリプロピレン系樹脂を原料として、以下に示す製造方法で、ポリプロピレン系樹脂フィルム(原反フィルム)を作成した。まず、図1の原料タンク1b内に、窒素を主成分し、酸素含有率が800ppm、酸素分圧が80Paである不活性ガスと、ポリプロピレン系樹脂とを供給した。そして、原料タンク1b内の酸素分圧を80Paに維持した状態で、原料タンク1bを密閉した。次に、原料タンク1b内の窒素を窒素環流管1c内に循環させ、窒素用ヒーター1dで加熱し、加熱された窒素雰囲気下で、3時間、ポリプロピレン系樹脂全体の温度(以下、樹脂温度と記す。)を60℃に維持する熱処理を行った。
3時間60℃に維持した後のポリプロピレン系樹脂を、窒素を主成分し、酸素含有率が800ppm、酸素分圧が80Paである不活性ガス雰囲気中に保持した状態で、加熱機内から押出機内へ輸送した。なお、輸送中のポリプロピレン系樹脂の表面温度(以下、樹脂表面温度と記す。)は45℃に維持し、表面温度の変動幅を5℃以内に維持した。
次に、ポリプロピレン系樹脂を押出機内において溶融混練した。溶融混練後、Tダイからフィルム状に押出成形されたポリプロピレン系樹脂を、100rpmで回転する成形用ロールによって更に成形し、実施例1の原反フィルムを得た。なお、Tダイから押し出されたポリプロピレン系樹脂の温度(以下、押出温度と記す。)は250℃であった。
得られた原反フィルムのキシレン可溶成分量(CXS)を上述の方法で測定した。CXSは4.8%であった。
(実施例2)
加熱機内でポリプロピレン系樹脂全体を樹脂温度60℃に維持する時間(以下、熱処理時間と記す。)、樹脂表面温度、および押出温度を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の原反フィルムを作製した。また、実施例2の原反フィルムに対して、実施例1と同様の方法でCXSの測定を行った。結果を表1に示す。
(比較例1、2)
比較例1、2では、加熱機内の雰囲気を、酸素分圧が20000Paである空気(窒素の体積分率:約80%、酸素の体積分率:約20%である大気)として、ポリプロピレン系樹脂全体を樹脂温度60℃に維持した。また、比較例1、2では、熱処理時間、樹脂表面温度、および押出温度を表1に示す値とした。これらの事項以外は実施例1と同様の方法で、比較例1、2の原反フィルムを作製した。また、比較例1、2の原反フィルムに対して、実施例1と同様の方法でCXSの測定を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、酸素分圧が80Paである窒素雰囲気中でポリプロピレン系樹脂全体の温度を60℃に維持した実施例1、2では、空気中でポリプロピレン系樹脂全体の温度を60℃に維持した比較例1、2に比べて、CXSが小さいことが確認された。この結果から、実施例1、2の原反フィルムでは、比較例1、2に比べて、ポリプロピレン系樹脂の劣化(酸化分解)が抑制され、ダイラインの原因となる低分子量樹脂成分(キシレンに可溶な成分)の生成が抑制されていることが確認された。
(実施例3)
実施例3では、実施例1、2と同様のポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体)に対して、以下に示す熱重量分析(ThermoGravimetric Analysis)を行った。なお、熱重量分析には、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製の熱分析設備TG/DTA220を用いた。
熱重量分析では、以下に示す熱処理工程と、それに続く加熱工程とを連続して実施した。
まず、熱処理工程では、ポリプロピレン系樹脂を50℃/分の昇温速度で60℃まで昇温させた。次に、ポリプロピレン系樹脂の温度を2時間にわたり60℃に維持した。なお、熱処理工程では、熱分析設備内に窒素ガスを500ml/分の流量で供給し、ポリプロピレン系樹脂を窒素雰囲気中に保持した。
また、熱処理工程では、ポリプロピレン系樹脂が保持される雰囲気(熱処理雰囲気)の酸素分圧(単位:Pa)を測定した。結果を表2に示す。なお、酸素分圧は、熱処理雰囲気のガスを飯島電子工業株式会社製「微量酸素分析計RO−102」により分析して、熱処理雰囲気の酸素濃度を測定し、酸素濃度と大気圧から算出した値である。
次に、加熱工程では、ポリプロピレン系樹脂の温度を20℃/分の昇温速度で60℃から550℃まで変化させた。なお、加熱工程では、熱分析設備内に窒素ガスを500ml/分の流量で供給し、ポリプロピレン系樹脂を窒素雰囲気中に保持した。
また、加熱工程では、ポリプロピレン系樹脂の温度を60℃から550℃まで変化させる際に、各温度におけるポリプロピレン系樹脂の重量を測定した。この測定により、ポリプロピレン系樹脂の温度と、その温度におけるポリプロピレン系樹脂の重量との関係を示す曲線(TG曲線)を求めた。このTG曲線から、60℃におけるポリプロピレン系樹脂の重量(初期重量)に対してポリプロピレン系樹脂の重量が5%減少した時点におけるポリプロピレン系樹脂の温度(TG5)、及び初期重量に対してポリプロピレン系樹脂の重量が10%減少した時点におけるポリプロピレン系樹脂の温度(TG10)を求めた。TG5及びTG10を表2に示す。
また、熱処理雰囲気の酸素分圧と同様の方法を用いて、加熱工程においてポリプロピレン系樹脂が保持される雰囲気(加熱雰囲気)の酸素分圧を測定した。実施例3における加熱雰囲気の酸素分圧は20Paであった。また、後述する実施例3〜5、比較例3〜7においても、加熱雰囲気の酸素分圧は20Paであった。
(実施例4)
ポリプロピレン系樹脂の温度を60℃に維持する時間(熱処理時間)を5時間としたこと以外は実施例3と同様に、実施例4の熱重量分析を行った。実施例4の熱処理雰囲気の酸素分圧、TG5及びTG10を表2に示す。
(実施例5)
熱処理雰囲気が、空気と窒素を混合して酸素分圧を400Paとした混合気体であること以外は実施例3と同様に、実施例5の熱重量分析を行った。実施例5の熱処理雰囲気の酸素分圧、TG5及びTG10を表2に示す。
(比較例3)
熱処理時間を1時間としたこと以外は実施例3と同様に、比較例3の熱重量分析を行った。比較例3の熱処理雰囲気の酸素分圧、TG5及びTG10を表2に示す。
(比較例4)
熱処理雰囲気を、酸素素分圧が20900Paである空気としたこと以外は実施例4と同様に、比較例4の熱重量分析を行った。比較例4の熱処理雰囲気の酸素分圧、TG5及びTG10を表2に示す。
(比較例5)
熱処理雰囲気が、空気と窒素を混合して酸素分圧を1000Paとした混合気体であること以外は実施例3と同様に、比較例5の熱重量分析を行った。比較例5の熱処理雰囲気の酸素分圧、TG5及びTG10を表2に示す。
(比較例6)
熱処理雰囲気が、空気と窒素を混合して酸素分圧を130Paとした混合気体であり、熱処理時間が0.5時間であること以外は実施例3と同様に、比較例6の熱重量分析を行った。比較例6の熱処理雰囲気の酸素分圧、TG5及びTG10を表2に示す。
(比較例7)
熱処理時間を1時間とした以外は実施例5と同様に、比較例7の熱重量分析を行った。比較例7の熱処理雰囲気の酸素分圧、TG5及びTG10を表2に示す。
(TG5及びTG10の技術的意義)
加熱工程では、ポリプロピレン系樹脂の温度を60℃から550℃まで変化させる際に、ポリプロピレン系樹脂の重量が減少する。これは、加熱工程においてポリプロピレン系樹脂が熱劣化(酸化分解)して、ダイラインの原因となる低分子量樹脂成分がポリプロピレン系樹脂中に生成し、この低分子量樹脂成分がポリプロピレン系樹脂から放出されることに起因する。そして、TG5及びTG10が低いことは、ポリプロピレン系樹脂が熱劣化し易く、このような樹脂から形成された原反フィルムではダイラインが発生し易い事を意味する。また、TG5及びTG10が高いことは、ポリプロピレン系樹脂が熱劣化し難く、このような樹脂から形成された原反フィルムではダイラインが発生し難い事を意味する。換言すれば、TG5及びTG10が高いポリプロピレン系樹脂ほど熱安定性に優れている。
以上のことから、TG5及びTG10は高いほど好ましい。具体的には、表2において、TG5は420℃より高いことが好ましく、TG10は430℃より高いことが好ましい。
(評価)
表2に示すように、熱処理工程において酸素分圧が500Pa以下である不活性ガス雰囲気中でポリプロピレン系樹脂の温度を60℃に2時間以上維持した実施例3〜5では、比較例4〜7に比べて、TG5及びTG10が高く、TG5は420℃より高く、TG10は430℃より高いことが確認された。すなわち、実施例3〜5では、比較例4〜7に比べて、ポリプロピレン系樹脂の熱劣化が抑制され、ダイラインの原因となる低分子量樹脂成分がポリプロピレン系樹脂中に生成し難いことが確認された。