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JP5099480B2 - 軟磁性金属粉末、圧粉体、および軟磁性金属粉末の製造方法 - Google Patents
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軟磁性金属粉末、圧粉体、および軟磁性金属粉末の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、チョークコイルやトランス、リアクトル、モーターなどの電気電子部品の圧粉磁心として用いた際、低鉄損で良好な電気絶縁性を有する、軟磁性金属粉末や圧粉体、およびその製造方法に関する。
近年、モーターコアやトランスコアなどの電気電子部品において高密度化および小型化と、より精密な制御を小電力で行えることが求められている。このため、これらの電気電子部品に使用される軟磁性材料であって、特に中高周波領域において優れた磁気的特性を有する軟磁性材料の開発が進められている。軟磁性金属粉末を用いて作製される圧粉磁心は、従来から使用されていたフェライト磁心よりも高い飽和磁束密度を有しているため電子部品の小型化には有利である。
しかし、軟磁性金属粉末による圧粉磁心はフェライトと比較して電気抵抗率が低いため渦電流損失が大きい。それ故に、金属系圧粉磁心をコアとして用いた場合特に中高周波域での損失がフェライトコアと比較し大きくなる。またコアの発熱による温度上昇の問題もあり、電子部品としての実用化が困難であった。従来この問題を解決する手段として、損失を低減するために、例えば特許文献1のようにリン酸塩等の絶縁物で被覆することで軟磁性金属粉末表面を高電気抵抗率化し、コア内の渦電流の発生を抑制するという試みが提案されている。また非特許文献1においては、金属粉末の表面をMgO等の酸化物で被覆することにより粉末表面を高抵抗化し渦電流損失を低減する方法が提案されている。これらは、いずれも、粉末表面の電気抵抗を向上させることにより、渦電流損失を低減しコア損失を低減することを目的としている。
ところで、コア全体の鉄損は一般にヒステリシス損失と渦電流損失の和で表される。一般的には、ヒステリシス損失は周波数の一乗、渦電流損失は周波数の二乗にそれぞれ比例して変化する。したがって、高周波域では渦電流損失の寄与がヒステリシス損失の寄与に比較し大きく渦電流損失を低減することがコアの損失を低減するためには効果的な手段となる。一方モーターコアやリアクトルコアなど比較的低中周波で用いられる機器については、渦電流損失だけでなくヒステリシス損失からの寄与も無視することが出来ない。
したがって低中周波域では、渦電流損失だけでなくヒステリシス損失を低減することが、コア損失低減に有効である。
磁性コアのヒステリシス損失は、コアに磁界をオンオフした際のヒステリシスの大きさにより決定される。ヒステリシス損失を低減するためには、磁性粉末の保磁力を出来るだけ小さくすることが必要である。軟磁性粉末の保磁力は、磁界を印加した際の磁壁の
移動の容易さを反映したものであり、粒界や不純物介在物、圧粉磁心の成形時に生じた塑性変形による歪み、転位などがこれを妨げる要因となる。このため低ヒステリシス損失のコアを得るためには、Fe系の磁性粉末においては本来低保磁力の粉末を低圧で成形し、
700℃以上、好ましくは900℃以上の高温において歪取り焼鈍を行うことが望まれる。
しかしながら、特許文献1や非特許文献1等に記載の従来技術においては、800℃以上の高温で熱処理すると、渦電流の発生を抑制するために被覆した絶縁性物質が磁性粉末と反応したり、熱分解等を起こすことにより絶縁皮膜が変質破壊し絶縁性が劣化するために、高温での熱処理を行うことができず、結晶粒径を大きくしたり、加工歪を完全に除去することが出来ないため、ヒステリシス損失を十分に低減させることができないという課題がある。
原料粉末に添加されるCrは粉末製造に際し防錆効果と成形時の加工歪低減に有効な元素であるが、一方で粒内に炭化物や酸化物などの非金属介在物を形成し粉末の保磁力を増加させるという欠点も有する。
特開2003―282316号 魚住学司ほか, 粉体粉末冶金協会平成17年度秋季大会講演概要(2005), p136
以上のように圧粉磁心のコア鉄損低減にはヒステリシス損失と渦電流損失双方の低減が必要であり、そのために低保磁力な磁性粉末と高温熱処理に耐える絶縁被覆技術が要求されている。しかしながら未だ必要十分な、低コア損失を実現する低ヒステリシス損失で高温熱処理に耐える表面高抵抗の軟磁性金属粉末は得られていない。
本発明の目的は上記問題を解決するため、高温熱処理が可能で低ヒステリシス損失、かつ、高電気抵抗の軟磁性金属粉末、圧粉体およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、Cr添加された軟磁性金属粉末に耐熱性絶縁性酸化物を付着させ、好ましくは高温で焼鈍することなどにより、粉末表面にCrリッチな絶縁性被膜を形成することで、上記目的が達成できることを見出した。
即ち、本発明の軟磁性金属粉末は、組成式でFe100−a−bSiCr(重量%で、0≦a≦8)で表される軟磁性金属粉末の表面の一部もしくは全体がSi、Ti、Zr、Alから選ばれる少なくとも一種の絶縁性酸化物により被覆されており、前記軟磁性金属粉末表面のCr濃度が粉末中心部より高いことを特徴とする。また、別の本発明の軟磁性金属粉末は、組成式でFe 100−a−b Si Cr (重量%で、0≦a≦8、0<b≦3)で表される軟磁性金属粉末の表面の一部もしくは全体がSi、Ti、Zr、Alから選ばれる少なくとも一種の絶縁性酸化物により被覆されており、前記軟磁性金属粉末表面のCrがSi、Ti、Zr、Alから選ばれる少なくとも一種と複合酸化物を形成しており、粉末表面のCr濃度が粉末中心部より高いことを特徴とする。
この軟磁性金属粉末の表面の一部もしくは全体が絶縁性酸化物により被覆されており、絶縁性酸化物を含む軟磁性金属粉末全体の酸素量が10質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以上がより好ましい。
絶縁性酸化物の厚さが、1μm以下であるものが好ましい。
本発明の軟磁性金属粉末の製造方法は、組成式でFe 100−a−b Si Cr (重量%で、0≦a≦8、0<b≦3)で表される軟磁性金属粉末をアルコキシド溶液に浸して前記軟磁性金属粉末の表面に酸化物を析出させる工程と、前記工程で得られた軟磁性金属粉末を900℃以上で熱処理することで粉末表面のCr濃度が粉末中心部より高い軟磁性金属粉末を得る工程とを有することを特徴とする。
本発明により製造した軟磁性金属粉末を用いることにより、圧粉磁心(磁性コア)の渦電流損失とヒステリシス損失の双方を大幅に低減することが可能である。
上述の製造方法により絶縁性酸化物を付着させることに加えて、軟磁性金属粉末中に固溶する添加元素であるCrが高温での熱処理により粉末表面へ逆拡散し、粉末表面でCrリッチな酸化物を形成することにより、良好な電気絶縁性が得られる。したがって、従来の絶縁被覆技術と異なり、700℃以上、好ましくは900℃以上の高温焼鈍によっても絶縁被覆が破壊されず、むしろその形成が促進される。
高温焼鈍を行うことによりコア成形時に軟磁性金属粉末に加わった歪みの除去が十分になされるとともに、結晶粒径が大きくなり粉末内での磁壁移動が容易となりヒステリシス損失が大幅に低減される。さらに、上述のとおり軟磁性金属粉末中のCrがその表面に析出することにより、粉末内部のCr濃度は低くなる。したがって、ヒステリシス損失のうち、不可避と考えられていた原料粉末に由来する損失分の低減効果が得られる。
以下に本発明の軟磁性金属粉末およびその製造方法を具体的に説明する。
本発明で用いる軟磁性金属粉末は、組成式でFe100−a−bSiCr(重量%で、0≦a≦8、0<b≦3)で表されるものが好ましい。該当合金組成中のSiは無くてもよいが、コア損失を低減するために有効な元素であり1重量%以上添加することでその効果が得られる。一方、Si量が増大すると、合金粉末が堅くもろくなり成形性が低下するため8%を上限とする。好ましくは2重量%以上、7重量%以下である。また、Crは酸素との親和力が強く、自身が酸化しやすいために粉末製造プロセスでのFeの防錆と成形時の加工歪低減に効果がある添加元素である。添加料は微量でもよいが、添加量が0.1重量%以上なら十分な防錆効果が得られ好ましい。一方、添加量が3%を超えると粒内に酸化物や炭化物を形成し保磁力が増加して磁気特性上好ましくない。そのため、添加量は3%以下、より好ましくは1.5%以下であることが望ましい。
表面の一部もしくは全体を被覆する絶縁性酸化物の酸素量により、電気抵抗率、圧粉体の強度、ヒステリシス損失が変わる。特に、残留磁束密度などの軟磁気特性とヒステリシス損失の低減を両立させるためには、絶縁性酸化物を含む軟磁性金属粉末全体の酸素量が、粉末全体の質量に比べて10重量%以下となることが好ましい。
球状(アスペクト比が2以下)のFe6.5%Si粉末を用いた場合には、酸素量が0.1〜1.0質量%の範囲の時に、高電気抵抗率、高強度、および低いヒステリシス損失の圧粉体を得ることが可能である。酸素量が0.15〜0.3質量%であると、なお好ましい圧粉体を得ることができる。
偏平形状(アスペクト比が2超)の軟磁性金属粉末を用いた場合、酸素量が1質量%以上であると、高い電気抵抗を持つ圧粉体を得ることができる。2質量%以上がなお好ましい。
この酸素量は、He気流中、黒鉛るつぼ内で絶縁性酸化物が被覆された軟磁性金属粉末を溶解し、発生したCOガスを赤外線吸収法により測定することで求められる。
本発明の軟磁性金属粉末は、不可避不純物として(C、N、P、S、Ni、Mo、Mn、Cu、Al等)が1重量%以下含まれていてもよい。
図5に本発明により製造される軟磁性金属粉末の模式図を示す。
図中1は原料となるFe−Si−Cr系の軟磁性金属粉末である。製造方法としてはガスアトマイズ法、水アトマイズ法、その他の方法などいずれの方法でも構わない。
なお、この模式図中においては粉末形状は球形に模されているが、実際にはその粉末形状や大きさに寄るものではない。球形、扁平形、異形状などいずれの形状においても、本発明の効果は有効である。
図中2は絶縁性酸化物であり、粉末表面全体を覆っている。但し、原料粉末の形状、組成、表面状態やこの製造の条件等により部分的に絶縁性酸化物がなくても絶縁の効果は十分である。逆に、絶縁物酸化物の層の厚みが薄く、金属粉末成分の占める割合が高い方が、圧粉磁心とした場合に高密度となる。したがって高磁束密度のコアが得られるうえに、処理条件も平易で有益である。
絶縁性酸化物の原料としては、Mを金属元素として、メトキシドM(OCH3)n、エトキシドM(OC2H5)n、プロポキシドM(O・n−、i−C3H7)nのようなアルキル鎖長が短いアルコキシドを用いる。金属元素MはMg、Al、Si、Ca、Ti、Sr、Ba、Li、Na、K、St、Ge、Bi、Cu、Y、Zr、Taから選ばれる少なくとも一種の元素である。金属アルコキシドは、1種を単独に用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定した酸化物を形成する元素として、Si、Ti、Zr、Alが特に好ましい。
本発明の製造方法におけるアルコキシド溶液とは、これらの金属アルコキシドをIPA、エタノールなどのアルコールに溶解させたものである。具体的にはSiのアルコキシド溶液であるテトラエトキシシランやテトラメトキシシラン、Tiのアルコキシド溶液であるチタンアルコキシドが好ましい。
金属アルコキシド溶液にアルミナ(Al2 3 )、シリカ(SiO2 )、マグネシア(MgO)等のセラミックス粒子が入っていても良いが、これらの含有量が多いと圧粉磁心の磁気特性が悪化するため、適宜選択して使用する必要がある。
また、金属アルコキシド溶液に絶縁性粘性物質を添加しても良い。この絶縁性粘性物質は、セラミックス粒子と共に添加することでその沈殿を防ぎ、金属アルコキシド溶液中に均一分散させる。その結果、軟磁性粉末の絶縁性が高まるという効果が得られる。絶縁性粘性物質には、合成粘性物質や、半合成粘性物質、天然粘性物質など、いずれも適宜用いることができる。合成粘性物質は、陽イオン系、陰イオン系、非イオン系などいずれも使用可能である。半合成粘性物質には、例えばセルロール誘電体系粘性物質であるメチルセルロースなどが使用できる。天然粘性物質には植物粘質物と動物粘質物のどちらでも使用可能であり、アラビアゴムやゼラチンなどが使用できる。
これらのアルコキシド溶液と前記原料粉末を混合する。混合の際、アルコキシド溶液の濃度が極端に小さいと金属粉末表面に付着する酸化物が十分ではなくなるため本発明の効果が得られない。したがって、アルコキシド溶液の濃度は10mmol/L以上必要である。濃度に上限はないが、あまり高いと金属粉末に付着せずに廃棄される分が増えるため、製造コスト上問題がある。さらにより均一で緻密な酸化物を付着させるには、現実的には5mol/L程度以下が望ましい。また、処理時間は前記アルコキシド溶液と原料粉末とを混合する時間のことであるが、短すぎると反応がほとんど進まず絶縁物を付着させることが出来ないため、30分以上が好ましい。処理時間に上限はないが、反応が平衡に達するとそれ以上の付着はあまりのぞめないため効果がない。したがって、現実的には30分から5時間の範囲が好ましい。上述するアルコキシド溶液はpHにより反応の形態と速度が変化する。本目的にはpH6.0から12、好ましくはpH8.3から10.5であることがより望ましい。pHが6以下では、磁性粉末より溶液中にFeの溶出が起こるため好ましくない。またpHが10.5以上では、付着量が過剰になり膜厚が増大し過ぎてしまう。この付着量は軟磁性金属粉末の酸素量とほぼ比例するため、合金組成や粉末形状により好ましい量を被覆する必要がある。
軟磁性粉末をアルコキシド溶液から取り出した後、粉末を乾燥させる。成形後に熱処理をする際、金属粉末に残留した溶媒や水などの蒸発による密度低下等を防ぐ効果がある。温度で10分〜5時間程度行うことが好ましい。乾燥工程は一般的なもので、大気中、真空中、不活性雰囲気中いずれでもよく、溶媒や水が蒸発する温度(50℃〜300℃)で30分から10時間乾燥させれば良い。
上記工程により原料粉末とアルコキシド溶液を混合した時点ではCrの濃度勾配は生じない。900℃以上における熱処理工程を経て、中心部よりも表面側のCr濃度が高い本発明の軟磁性金属粉末を得ることが可能である。Cr濃化部位のイメージを図5中番号3で示す。熱処理温度は、原料粉末の焼結温度よりも低く、1000℃以上であるとより有効である。粉末表面に濃化したCrは酸化し、酸化物を形成する。この粉末を圧粉磁心に用いると、コア強度の向上が見られる。アルコキシド溶液により付着させた酸化物と前述のCrとが互いに混ざり合い、複合酸化物を形成することによると考えられる。
なお、圧粉磁心として本発明の軟磁性金属粉末を用いる場合、成形後に700℃以上の熱処理工程を行うことが可能である。これにより、本発明の軟磁性金属粉末製造のための熱処理工程とコアの歪取り焼鈍工程を同一にして、高温で歪取り焼鈍を行うことが可能である。熱処理の時間は粉末状態、コア成形後いずれも30分から2時間程度でよい。熱処理雰囲気は非酸化性雰囲気が好ましい。
(実施例1)
Fe−6.5%Si−1%Crからなる組成で、平均粒径が40μmの軟磁性原料粉末500gを、テトラアルコキシシラン(関東化学)/IPA溶液100mLと混合し、プロペラ攪拌機を用いて、3時間攪拌した。その後、軟磁性粉末とテトラアルコキシシラン/IPA溶液を分離し、100℃で1時間乾燥させた。得られた軟磁性粉末に、バインダーとして3%PVA水溶液を0.5wt%、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合した。こうして得られた軟磁性粉末を室温下で1200MPaで圧縮成形し、外径14mm、内径8mm、高さ4.5mmのリング試料を作製し、これを窒素ガス中、1000℃で2時間の熱処理を行った。
また、比較として、実施例1と同じ原料粉末を製造し、テトラアルコキシシラン/IPA溶液を用いた絶縁処理の代わりに、水ガラス1.4wt%、カオリン1.3wt%、及び、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合したもの(比較例1)、および、アモルファスシリカ1.5wt%、カオリン0.5wt%、及び、潤滑剤ステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合したもの(比較例2)を用意した。こうして得られた軟磁性粉末を、実施例1と同様に圧縮成形および熱処理を行った。こうして得られた圧粉磁心のコア損失を測定した。コア損失の測定には岩崎通信機社製BHアナライザー(製品名SY8232)を用い、励起磁束密度50mT、周波数50kHzにおける値を測定した。表1に記す。
また、リング状試料を樹脂に埋め込み研磨し、その断面の元素分析を行った。実施例1のEPMAによる線分析結果を図1(a)に、比較例1の線分析結果を図1(b)にそれぞれ示す。図1(a)、図1(b)共に、Feの濃度が減少している部分が軟磁性粉末の端部を測定したものであり、その間の測定部分は軟磁性粉末の内部を測定した部分である。軟磁性粉末の端部でFeが減少してCrが多く検出されている。Crのピーク間、即ち粉末内部を示す領域を拡大するとCr濃度に若干の勾配があり、また、Crのピークが見られる位置でOが検出されていることから金属粉末の表面側に濃化したCrが酸化物として存在していると考えられる。
一方、図1(b)に示したように、比較例1の軟磁性粉末はむしろ金属粉末の表面側でCr量がわずかに減少している。
表1に示したように、同じ1000℃で熱処理をしたにもかかわらず、比較例1に比べて実施例1はコア鉄損が低く、高密度である。これは、本発明の軟磁性金属粉末およびその製造方法によるものである。高温熱処理による成形歪みの除去と粉末内部のCr濃度減少によるヒステリシス損失の減少、および、アルコキシド溶液により付着させた絶縁性酸化物(実施例1ではシリカ)と粉末表面のCr濃度が増加し酸化物を形成することによる渦電流損失の減少の効果であると考えられる。
(実施例2,3)
実施例1で用いたテトラアルコキシシランのアルコキシド溶液の代わりに、テトラメトキシシラン、チタンイソプロポキシドのアルコキシド溶液を用いて実験を行った。実施例1と同様の原料粉末500gを、それぞれテトラメトキシシラン(関東化学)/IPA溶液100mL、チタンイソプロポキシド(関東化学)/IPA溶液100mLと混合し、プロペラ攪拌機を用いて3時間攪拌した。その後、軟磁性粉末とそれぞれの溶液を分離し、100℃で1時間乾燥させた。得られた軟磁性粉末に、バインダーとして3%PVA水溶液を0.5wt%、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合した。
以降は実施例1と同様にして圧粉磁心を圧縮成形し、コア損失を測定した。測定した結果を表1に併記する。実施例1と同様にコア鉄損が低く、高密度であることが解る。
(実施例4,5)
成形後の熱処理温度によるヒステリシス損失の影響を調べた。実施例1と同じ原料粉末500gを、テトラアルコキシシラン/IPA溶液100mLと混合し、プロペラ攪拌機を用いて3時間攪拌した。その後、軟磁性粉末とテトラアルコキシシラン/IPA溶液を分離し、100℃で1時間乾燥させた。得られた軟磁性粉末に、バインダーとして3%PVA水溶液を0.5wt%、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.3wt%混合した。こうして得られた軟磁性粉末を室温下で1200MPaで圧縮成形し、外径14mm、内径8mm、高さ4.5mmのリング試料を作製し、これを窒素ガス中、800℃、850℃、900℃、1000℃、1100℃の条件で2時間の熱処理を行った。結果を図4に示す。
熱処理温度が900℃以上になるとヒステリシス損失はより小さくなり、1000℃以上ではその傾向が顕著である。なお、800℃で熱処理を行った場合でも、他の粉末処理方法と比較すればヒステリシス損失は小さい値である。
(実施例6)
表2に被覆の厚さと損失の関係を示した。アルコキシド/IPA溶液のアルコキシド濃度を変えることにより、皮膜の厚さを変えた。皮膜厚さが0.2μmのものが図2(a)、皮膜厚さが1.0μmのものが図2(b)に示すものである。図3は図2の模式図である。通常であれば、被覆が厚い方が絶縁性を確保できるため、渦電流損失を抑えることができるが、本発明の軟磁性粉末は、渦電流損失は被覆厚さに因らず一定であるため、被覆は薄い方が好ましいという特徴を持つ。特に皮膜の厚さが1μm以下になると、顕著にその効果が得られる。被覆が厚くなると密度が減少し、それに伴いヒステリシス損失がわずかに増加する傾向が見られる。
(実施例7)
アルコキシド溶液による絶縁性酸化物の被覆処理と、それによる酸素量との関係を調べた。実施例1で行ったように、Fe−6.5%Si−1%Crからなる組成で、平均粒径が40μmの球状な軟磁性原料粉末500gを、テトラアルコキシシラン(関東化学)/IPA溶液100mLと混合し、プロペラ攪拌機を用いて、3時間攪拌した。軟磁性粉末とテトラアルコキシシラン/IPA溶液を分離し、100℃で1時間乾燥させた。この軟磁性原料粉末とテトラアルコキシシランの混合および攪拌を繰り返し、酸素量の増加について測定した。図6に示すとおり、処理回数にほぼ比例して酸素量が増加する。
また、軟磁性原料粉末の表面を絶縁性酸化物が覆った面積率(被覆率)と酸素量との関係について調べたところ、図7に示すように、酸素量が0.6wt%であればほぼ全体を覆った絶縁性酸化物が得られていることが解った。
コア断面のEPMA線分析結果である。 本発明の軟磁性金属粉末の断面観察写真である。 図2の模式図である。 熱処理温度とヒステリシス損失との関係を示す図である。 本発明による軟磁性金属粉末の模式図である。 絶縁性酸化物の被覆状態と、軟磁性粉末全体の酸素量との関係を示す図である。 絶縁性酸化物の被覆状態と、軟磁性粉末全体の酸素量との関係を示す図である。
符号の説明
1 原料粉末(軟磁性粉末)、2 絶縁性酸化物、3 Cr濃化部位

Claims (5)

  1. 組成式でFe100−a−bSiCr(重量%で、0≦a≦8、0<b≦3)で表される軟磁性金属粉末の表面の一部もしくは全体がSi、Ti、Zr、Alから選ばれる少なくとも一種の絶縁性酸化物により被覆されており、前記軟磁性金属粉末表面のCr濃度が粉末中心部より高いことを特徴とする軟磁性金属粉末。
  2. 組成式でFe 100−a−b Si Cr (重量%で、0≦a≦8、0<b≦3)で表される軟磁性金属粉末の表面の一部もしくは全体がSi、Ti、Zr、Alから選ばれる少なくとも一種の絶縁性酸化物により被覆されており、前記軟磁性金属粉末表面のCrがSi、Ti、Zr、Alから選ばれる少なくとも一種と複合酸化物を形成しており、粉末表面のCr濃度が粉末中心部より高いことを特徴とする軟磁性金属粉末。
  3. 前記絶縁性酸化物の厚さが、1μm以下であるとともに、前記絶縁性酸化物を含む軟磁性金属粉末全体の酸素量が0.6〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟磁性金属粉末。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の軟磁性金属粉末を用いたことを特徴とする圧粉体。
  5. 組成式でFe 100−a−b Si Cr (重量%で、0≦a≦8、0<b≦3)で表される軟磁性金属粉末をアルコキシド溶液に浸して前記軟磁性金属粉末の表面に酸化物を析出させる工程と、
    前記工程で得られた軟磁性金属粉末を900℃以上で熱処理することで粉末表面のCr濃度が粉末中心部より高い軟磁性金属粉末を得る工程とを有することを特徴とする軟磁性金属粉末の製造方法。
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