本願発明は、誘導加熱を利用して気体や液体などの流体を加熱する誘導加熱装置に関するものである。
誘導加熱により金属を加熱し、加熱された金属に接する気体や液体などの流体を加熱する誘導加熱装置がいくつか提案されている。このような誘導加熱装置においては、流体と接する金属表面が伝熱面となるので、流体への効率的な熱伝達を実現するために、伝熱面の面積を極力大きくするように構成されていた。
例えば特許文献1に記載の誘導加熱装置では、セラミックなどの非磁性体材料からなる筒状ケースの外周にリッツ線などの導線を巻回してコイルを形成し、筒状ケースの内側に発熱体を収納し、コイルに高周波電流を流すことによって発熱体を誘導加熱し、発熱体を収納したケース内側に流体を通すことによって流体を加熱している(特許文献1,図1)。発熱体は、磁性を有するフェライト系ステンレス鋼のJIS(Japanese Industrial Standard)規格で規定されたSUS447J1からなる平板状の第1シートと波形状の第2シートを交互に積層して形成されることで伝熱面の面積を大きくするよう構成されている(図2)。第1シートおよび第2シートはスポット溶接で溶着されて電気的に導通されている。また第2シートの表面には流体の乱流を生じさせるための孔が設けられている。このように構成された誘導加熱装置において、コイルに高周波電流を流すと、シート材が空間を有するように且つ電気的に導通可能に積層され、周辺部に沿った電流より前記周辺部を横切る電流の方が流れやすい形状に形成されているので、伝熱面積を確保でき、ケース内側の中央部の発熱体が周辺部よりも多く発熱する。ケース内を通過する流体は周辺部より中央部で流れやすいため、中央部で発熱する発熱体により均一に加熱される。
一方、流体を加熱するための誘導加熱装置ではないが、例えば特許文献2において、調理を目的として金属製の鍋を誘導加熱によって加熱する誘導加熱装置が開示されている。このような調理目的の誘導加熱装置にあっては、鍋底面の温度を均一にするため、あるいはアルミニウムや銅など電気伝導度の大きい材質からなる鍋を誘導加熱によって加熱するときに生じる浮力を低減するために誘導加熱用のコイルと鍋の間にアルミニウムや銅からなる電気伝導体を設けることが知られている。
特許文献2に記載の誘導加熱装置では、誘導加熱用のコイルと被加熱物であるSUS系の磁性容器の間に、中心孔部から周縁部方向に6つのスリット部を放射状に形成した導電板を用いている。スリット部の一つは導電板の外周縁と結ばれている。このような構成において誘導加熱用のコイルに高周波電流を流すと、導電板を周回する方向に誘導電流が流れるが、誘導電流は外周縁と中心孔を結ぶスリット部で遮断されて、誘導加熱用コイルに流れる高周波電流と同方向に向きを変え、中心孔および外周縁と結ばれていないスリットに沿って流れる。この結果、導電板の中心付近の誘導電流は誘導加熱用のコイルに流れる高周波電流と同方向に流れるため、導電板の中心付近の磁界を強め、被加熱物の底面各部における温度差を小さくする。
また、例えば特許文献3には、調理を目的としてアルミニウムや銅あるいはこれらと同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる被加熱物を誘導加熱する誘導加熱装置が開示されている。この誘導加熱装置は、誘導加熱用の加熱コイルと被加熱物の間にアルミニウムなどの電気導体が設けられている。このような誘導加熱装置では加熱コイルから発生する磁界は、電気導体と被加熱物に鎖交するため、両者に誘導電流が発生し、電気導体に誘導された誘導電流の発生する磁界と被加熱物に誘導された電流の発生する磁界の重畳磁界が加熱コイルの発生する磁界の変化を妨げるように電気導体および被加熱物に誘導電流が流れる。つまり、被加熱物に誘導される電流の分布が、電気導体に誘導電流が発生することにより変わることになるので、この電流分布の変化で加熱コイルの等価直列抵抗が大きくなり、同一出力を得る場合の加熱コイルに流す電流値を小さくすることができ、被加熱物に作用する浮力が低減するとともに、電気導体が被加熱物に働く浮力の一部を分担することで被加熱物に作用する浮力を低減している。また電気導体は加熱コイル電流の流れる方向と平行に周回して流れる誘導電流の分布を制限するために、電気導体の一部に切り欠き、開口、スリットが設けられており、電気導体の発熱量を抑制し、被加熱物を加熱している。但し、鉄系の被加熱物の場合には電気導体を挿入することにより、加熱コイルの等価直列抵抗を大きくするという作用はほとんど得られない。
特開平8−264272号公報
特開平7−211444号公報
特開2003−264054号公報
このような特許文献1に示された誘導加熱装置にあっては、筒状ケースの内側に平板状および波形状の磁性を有するフェライト系ステンレス鋼のシートを積層して収納しているため、これらのステンレス鋼シートを加熱することで伝熱面積を大きくすることができるが、誘導電流がステンレス鋼シートを流れるようにするため、平板状シートと波形状シートをスポット溶接などで溶着して電気的に導通させる必要があり、その結果、多数のステンレス鋼シートをスポット溶接するための製造コストが増大し、スポット溶接部を確実に導通させなければならず、信頼性維持に要するコストも増大するという問題点があった。
一方、特許文献2あるいは3に示された誘導加熱装置にあっては、そもそも気体や液体などの流体を加熱するために設計された構造ではないため、流体を効率よく加熱することはできない。また、仮に流体加熱に用いたとしても誘導加熱用のコイルと被加熱物の間に設けられた電気導体の発熱量をできるだけ小さく抑制し、被加熱物の温度分布を均一化したり、効率よく加熱するために電気導体にスリットを設けたものであるため、流体加熱のための伝熱面積という点では主とした伝熱面は鍋底などの被加熱物であり、電気導体は伝熱面としてほとんど寄与するものではない。
本願発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構造で伝熱面積を増大させ、気体や液体などの流体を効率よく加熱することができる誘導加熱装置を実現することを目的としている。
本願発明に係る実施の形態による誘導加熱装置は、導線を捲回して形成したコイルと、非磁性導電体からなり、前記コイルとの間に流路を形成する少なくとも1つの第1の加熱板と、導電体からなり、前記第1の加熱板との間に流路を形成する第2の加熱板と、前記コイルに高周波電流を供給する高周波電源とを有し、前記第1の加熱板は前記コイルの捲回された前記導線と直交する方向に延びるスリットを有し、前記コイルは、前記高周波電源により高周波電流が供給されたとき磁束を形成し、前記第1の加熱板に設けた前記スリットを透過した磁束により、前記第2の加熱板が加熱されることを特徴とするものである。
本願発明によれば、第1の加熱板のスリットを透過した磁束が、その外側に配置された第2の加熱板にも届くので、全ての加熱板が誘導加熱され、伝熱面積を大きくして流体を加熱することができるといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
本願発明に係る実施の形態1の誘導加熱装置の斜視図である。
図1に示す誘導加熱装置の分解斜視図である。
(a)および(b)は図1に示すコイルの平面図および断面図であって、コイルから生じる磁束の方向を示すものである。
(a)は図1に示す第1の加熱板の斜視図、(b)〜(c)は図1に示す誘導加熱装置の断面図であって、磁束の様子を示す。
図1に示す誘導加熱装置を用いた温風発生装置の側面断面図である。
第1の加熱板の比較例として用いた穿孔加熱板の斜視図である。
第1の加熱板(SUS304)の開口率と誘導加熱装置各部の温度上昇との関係を示すグラフである。
第1の加熱板(アルミニウム)の開口率と誘導加熱装置各部の温度上昇との関係を示すグラフである。
本願発明の実施の形態2による誘導加熱装置の斜視図である。
(a)および(b)はそれぞれ、図9に示す内側に配置された第1の加熱板および外側に配置された第1の加熱板の斜視図である。
(a)〜(c)は図9に示す誘導加熱装置の断面図であって、磁束の様子を示す。
実施の形態2の変形例による誘導加熱装置の斜視図である。
実施の形態2の別の変形例による誘導加熱装置の斜視図である。
本願発明に係る実施の形態3による誘導加熱装置の斜視図である。
図14に示す誘導加熱装置の分解斜視図である。
本願発明に係る実施の形態4による誘導加熱装置の斜視図である。
本願発明に係る実施の形態5による手乾燥装置の側面断面図である。
図17に示す手乾燥装置に用いられる電源装置の回路構成を示すブロック図である。
前面側および背面側共振回路のインピーダンスの周波数依存性を示すグラフである。
本願発明に係る実施の形態6による誘導加熱装置の斜視図である。
図20に示す誘導加熱装置の分解斜視図である。
図20に示す誘導加熱装置を用いた温風発生装置の側面断面図である。
図20に示す誘導加熱装置の側面断面図である。
実施の形態6の変形例による誘導加熱装置の斜視図である。
図24に示す誘導加熱装置の断面図である。
本願発明に係る実施の形態7による誘導加熱装置の分解斜視図である。
図26に示す誘導加熱装置の部分的な分解斜視図である。
図26に示す誘導加熱装置の断面図である。
実施の形態7の変形例による誘導加熱装置の断面図である。
本願発明に係る実施の形態8によるコイルの分解斜視図である。
図30に示すコイルの断面図である。
符号の説明
1:誘導加熱装置、10:平板状コイル、11:支持板、12:絶縁ケース、14:コイルケース(金属ケース)、18:筒状コイル、20:第1の加熱板、21:スリット、22:外側端(コイル)、23:外周部(第1の加熱板)、26:仕切板、30:第2の加熱板、32:筒型ケース、40:スペーサ、50:電源装置、100:温風発生装置、101:吸気口、102:噴出口、103:ダクト、104:ブロワ、200:手乾燥装置、202:ハウジング、203:ダクト、204:ブロワ、206:手挿入部、208:吸気口、噴出口(噴出ノズル)、210:電気配線、212:噴出口(噴出ノズル)、250:電源装置、252:スイッチング素子、254:ハーフブリッジ回路、256:直流電源、258:ハーフブリッジドライバ、260:制御部、300:手乾燥装置、303:ダクト、P:流路、F:流体フロー、B:磁束。
以下、添付図面を参照して本願発明に係る誘導加熱装置の実施形態を説明する。以下の実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「上下方向」または「左右方向」など)を適宜用いるが、これらは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものでない。また、各添付図面において、同様の構成部品は同様の参照符号を用いて図示されている。
実施の形態1
図1は本願発明の実施の形態1による誘導加熱装置1を示す斜視図であり、図2は図1の誘導加熱装置1の分解斜視図である。実施の形態1に係る誘導加熱装置1は、概略、エナメル線などの導線を渦巻状に捲回して任意の平面形状(図2では円形状)に形成された平板状コイル10と、その両側にスペーサ40により所定の空間を隔てて配置された一対の第1の加熱板20と、コイル10から遠ざかる方向にスペーサ40により所定の空間を隔てて配置された一対の第2の加熱板30とを備える。図2では、平板状コイル10は、板状の支持板11に固定されているように図示されているが、樹脂やセラミックスなどの絶縁物からなる絶縁ケース12の内部に配設してもよいし(図5参照)、捲回された導線を互いに絶縁して接続するなどして、支持板11を用いることなく導線だけで自立可能な平板状コイル10に構成してもよい。
好適には、一対の第1の加熱板20は非磁性オーステナイト系ステンレス鋼からなり、一対の第2の加熱板30は磁性フェライト系ステンレス鋼からなる。ただし、これらに限定されるものではなく、第1の加熱板20の構成材料は、強磁性体でない導電体材料であればよく、好適には体積抵抗率が大きい材料からなり、より好適には大量生産され安価で流通しているものとしてオーステナイト系ステンレス鋼のSUS304であってもよい。また、第2の加熱板30の構成材料は、第1の加熱板20の構成材料と同様のものであってもよいし、非磁性材料でもよいが(非磁性オーステナイト系ステンレス鋼)、好適にはフェライト系ステンレス鋼やマルサント系ステンレス鋼などの強磁性体の金属であり、安価であるという観点から磁性フェライト系ステンレス鋼のSUS430が最も適している。
また、実施の形態1の第1の加熱板20は、図2および図4から明らかなように、中心から放射状に延びる複数のスリット21を有する。各スリット21は、図示したように中心で交わる必要はなく、互いに独立していてもよいが、その内側端はコイル10の内周より半径方向の内側にあり、その外側端22は第1の加熱板20の外周部23に達しないように構成されている。すなわち、第1の加熱板20の外周部23は、スリット21により分断されることなく周方向に連続し、後述のように、第1の加熱板20に生じる周方向の高周波電流がスリット21により遮断されることなく第1の加熱板20全体に一様に流れ、第1の加熱板20を十分かつ均一に加熱することができる。
さらに、コイル10を含む絶縁ケース12、一対の第1の加熱板20、一対の第2の加熱板30、およびスペーサ40は、それぞれ対応する位置に複数のねじ孔を有し、複数のねじ(図示せず)を用いてこれらの構成部品を一体に固定される。このとき、絶縁ケース12と第1の加熱板20との間、ならびに第1の加熱板20と第2の加熱板30との間には、スペーサ40の厚みに相当する所定の間隔が設けられ、これらの加熱板20,30で加熱された気体や液体など流体が流れる流路Pを構成する。また、コイル10を収容する絶縁ケース12の上端および下端を開放して(図示せず)、絶縁ケース12の内部においても流体が流れる流路を構成することにより、絶縁ケース12内のコイル10も同様に流体により冷却することが好ましいが、流体に曝されることによるコイル10の劣化を防ぐために、絶縁ケース12の内部に流路を構成しなくてもよい。またコイル10の両端は、電源装置50に電気的に接続され、これにより高周波電流が供給される。
次に動作について説明する。高周波電流が電源装置50からコイル10に供給されると、コイル10の周囲に高周波磁場が発生する。高周波電流の周波数は、これに限定されないが、20kHz〜100kHz程度が望ましい。図3(a)および図3(b)はコイル10に高周波電流を流したときに形成される高周波磁場の磁束の様子を観念的に示したものである。磁束Bは、図3(a)に示すようにコイル10の表面側ではコイル10の内周側から外周側に放射状に(半径方向に)発生し、図3(b)に示すようにコイル10の外周端で折り返し、コイル10の裏面側ではコイル10の外周側から内周側に向かって中心に戻るように発生する。すなわち、磁束Bは右ねじの法則に従い、コイル10の導線と直交する方向に発生する。そしてコイル10に高周波電流が供給されるとき、高周波電流の極性に依存して磁束の向きも逆転する。なお、図3(b)では磁束に始点と終点があるように示したが、これは説明のためであって、マクスウェル方程式から明らかなように磁束は連続しており、始点や終点は存在しない。
図4(a)はスリット21を有する第1の加熱板20の斜視図であり、図4(b)および図4(c)は、それぞれ図4(a)のb−b線およびc−c線から見たときの誘導加熱装置1の断面図であって、コイル10に高周波電流を流したときの磁束の様子を示したものである。これらの図面において、磁束の向きを一方向で示したが、図3(a)および図3(b)と同様、高周波電流の極性が変わると磁束の向きも反転する。
図4(b)の断面図では第1の加熱板20のスリット21は形成されず、コイル10で発生した磁束は、第1の加熱板20に達し、第1の加熱板20に誘導電流として渦電流が流れ、第1の加熱板20を誘導加熱する。このとき、第1の加熱板20の構成材料、厚み、および高周波磁場の渦電流の流れ方にも依存するが、第1の加熱板20に達した磁束の大半は、これを透過することができず、第2の加熱板30には到達し得ない(一部の磁束は第1の加熱板20を透過する場合がある。)。一方、図4(c)の断面図においては第1の加熱板20にスリット21が形成されており、コイル10で発生した磁束は第2の加熱板30に達し、第2の加熱板30に誘導電流として渦電流が流れ、第2の加熱板30を誘導加熱する。
以上のようにコイル10に高周波電流を流すと、一対の第1の加熱板20と、一対の第2の加熱板30の合計4枚の加熱板20,30が誘導加熱により発熱し、流路Pに気体や液体などの流体を流すと、各加熱板20,30の表面と裏面が伝熱面となるので合計8面の伝熱面から流体に伝熱され、流体が加熱される。またコイル10も自身の抵抗によるジュール熱(いわゆる銅損)により発熱するが、絶縁ケース12の内部(すなわちコイル10の表面と裏面)も同様に流路として構成されているため、コイル10の発熱も流体に効率よく伝熱するとともに、流体によりコイル10を充分に冷却することができる。またコイル10を絶縁ケース12で完全に覆っている場合であっても絶縁ケース12の外側が流路となっているので、絶縁ケース12を通してコイル10の発熱を流体に伝熱することができる。
ところで、本願発明に係るスリット21を有する第1の加熱板20は非磁性金属板からなるものであったが、磁性金属板からなる第1の加熱板20を用いて誘導加熱装置を作製して、第2の加熱板30の温度上昇に対する影響を確認する実験を行った。すなわち、オーステナイト系ステンレス鋼板SUS304の代わりに、フェライト系ステンレス鋼板SUS430に同様にスリット21を設けた第1の加熱板20を組み込んだ誘導加熱装置1を同一条件で作動させたところ、第1の加熱板20は誘導加熱されたものの、第2の加熱板30は誘導加熱されなかった。この理由は、たとえ第1の加熱板20にスリット21が設けてあっても、コイル10が生じる磁束は強磁性体の第1の加熱板20があることで屈折し、第1の加熱板20の方向に集中するため、磁束がスリット21を透過しないためである。ただし、第1の加熱板20に設けたスリット21の幅を十分大きくすればスリット21を透過する磁束が現れるものと考えられるが、スリット21の幅を大きくすることは第1の加熱板20の伝熱面積を犠牲にする(低減する)ことになる。これは、本願発明の趣旨である伝熱面積を大きくするといった効果を滅却するものであるから、第1の加熱板20は、磁性金属板より非磁性金属板で構成することが好ましい。
なお、特許文献1に記載の発熱体は、磁性を有するフェライト系ステンレス鋼のSUS447J1からなるシートを積層したものをスポット溶接により全体が通電可能となるように構成されているため、コイルから離れたシートにも誘導電流が流れて発熱するが、各シートが通電可能になっていない場合はコイルに近いシートのみが誘導加熱により発熱し、コイルから離れたシートは誘導加熱されないため伝熱面積を大きくすることはできない。換言すると、コイルから離れたシートを発熱させるためには、各シートをスポット溶接して全体的に通電可能に作製しなければならない。
一方、本願発明の誘導加熱装置1においては、コイル10に近い第1の加熱板20はスリット21を設けた非磁性金属板として構成されているので、スリット21を透過した磁束は、コイル10から離れた第2の加熱板30にも達し、第1および第2の加熱板20,30が電気的に接続されていなくても、第1の加熱板20のみならず第2の加熱板30を誘導加熱することができる。すなわち、本願発明に係る誘導加熱装置1によれば、スポット溶接といった特別な製造工程を用いることなく、単に複数の加熱板20,30を所定の位置に配置するだけでよいので、製造コストを極めて低く抑えることができる。
次に、本願発明に係る誘導加熱装置1を用いた温風発生装置100の一例について以下説明する。図5は温風発生装置の概略的構成を示す断面図である。なお、図5の温風発生装置は手乾燥装置であってもよい。図5に示す温風発生装置100は、吸気口101および噴出口102の間を流体連通するダクト103と、ダクト103の内部に配設された上述の誘導加熱装置1(図1)と、ダクト103内に流体フローFを形成するブロワ104と、高周波電源50とを備える。また温風発生装置100は、高周波電源50の駆動条件を制御するための制御回路(図示せず)を有する。
この誘導加熱装置1のコイル10は、直径0.75mmのエナメル線を渦巻状に巻いて、直径140mmの円板状とした後、その表面および裏面に耐熱紙であるノーメックス紙(デュポン社、登録商標)で挟んでラミネート成形してなり、160mm×150mmの平面寸法を有する矩形ケース12内に配設されている。
第1の加熱板20は、160mm×150mmの平面寸法を有する厚さ1mmのSUS304の非磁性ステンレス板に、図4に示すように中心から放射状に延びる長さ65mm×幅1mmの複数(8本)のスリットが互いに45°の角度で離間するように形成したものである。第2の加熱板30は、160mm×150mmの平面寸法を有する厚さ2mmのSUS430の磁性ステンレス板である。スペーサ40は、150mm×5mm×3mmのSUS304の非磁性ステンレス部材であって、矩形ケース12および第1の加熱板20の間、ならびに第1および第2の加熱板30の間に3mmの空間が形成されるように介在させて、ねじなどの任意の適当な固定手段を用いて、矩形ケース12、第1および第2の加熱板20,30とともに一体に固定される。こうして、実施の形態1に係る誘導加熱装置1が構成される。なお、誘導加熱装置1およびダクト103は、第2の加熱板30およびダクト103の内壁の間の間隔が同様に3mmとなるように設計されている。また、コイル10に高周波電流を供給する高周波電源50は、後述するが、一般に誘導加熱装置で使用される任意の形態を有するものであってもよく、例えば共振コンデンサと2個のスイッチング素子により構成されるハーフブリッジ型のインバータであってもよい。
こうして構成された温風発生装置100において、誘導加熱装置1に高周波電源50から高周波電流が供給され、ブロワ104が駆動されると、ブロワ104の吸気口101から吸引された空気は、誘導加熱装置1により加熱されて、温風として噴出口102から排出される。
このような温風発生装置100にあっては、誘導加熱装置1に入力した電気エネルギは誘導加熱装置1によって熱エネルギに変換され、この熱エネルギは空気を温めるとともに、ダクト103またはブロワ104などの周辺部品に対流、伝導、輻射によって伝熱される。したがって、誘導加熱装置1に入力された電気エネルギの大部分は最終的には空気に伝熱されるため、温風発生装置100から排出される空気の温度を測定して、誘導加熱装置1の第1および第2の加熱板20,30に対する伝熱性能を評価することは困難である。第1および第2の加熱板20,30またはダクト103の一部が過剰に加熱されると、これらに隣接するケース12やダクト103を耐熱性または難燃性を有する構成材料を用いて形成する必要がある。一部の構成部品が異常に高温とならないように温風発生装置100を設計することは、その製造コストの増大を抑制する観点から極めて好ましい。したがって、誘導加熱装置1から生じる熱が第1および第2の加熱板20,30に対して、より均一に伝熱されることが好ましい。
上記説明した温風発生装置100において、コイル10に20kHzの周波数を有する高周波電流を400Wの電力で供給し、ブロワ104の噴出口102が1.1m3/分の空気を排出するように制御したところ、吸気温度に対するコイル10(導線の表面)の上昇温度T
C、第1の加熱板20(2枚の平均)の上昇温度T
1、第2の加熱板30(2枚の平均)の上昇温度T
2、およびダクト103の内側表面の上昇温度T
Dに関し、それぞれ以下のように結果が得られた。なお測定位置は、第1の加熱板20の場合、第1の加熱板20中心から3cm外側の位置であり、コイル10、第2の加熱板30、およびダクト103の測定位置も第1の加熱板20の測定位置に対応する位置である。
このように第1および第2の加熱板20,30は、その上昇温度T
1,T
2がほぼ同程度であり、コイル10に流れる高周波電流によりほぼ均一に誘導加熱されていることが確認された。
次に、スリット21の代わりに、図6のように円形孔24を格子状に配置したもの(以下、「穿孔加熱板25」という。)を第1の加熱板20として用いた温風発生装置100において、上記と同様の測定を行った。具体的には、図6に示すように、板厚1mmの非磁性ステンレスSUS304に、直径が8mmおよび6mmの円形孔24を格子状に配置したものを用意して、温風発生装置100に組み込み、流体フローFの吸気温度に対するコイル10(導線の表面)の上昇温度T
C、穿孔加熱板である第1の加熱板(2枚の平均)の上昇温度T
1、第2の加熱板(2枚の平均)の上昇温度T
2、およびダクト表面の上昇温度T
Dを測定した。このとき、穿孔加熱板に対する円形孔24の開口率(穿孔加熱板25の表面積に対する円形孔24全体が占める面積の比)は、それぞれ約58%および約40%であった。これに対し、図4に示す第1の加熱板20に中心から放射状に延びる長さ65mm×幅1mmの8本のスリット21を設けた場合のスリット21による開口率は、約2.2%である。
表2の結果によれば、穿孔加熱板25である第1の加熱板20は、100K以上の温度上昇が確認されたものの、第2の加熱板30は、開口率によらずあまり昇温していない。すなわち、コイル10からの磁束Bは、第1の加熱板20に数多くの円形孔24を設けても、これを透過せず、第2の加熱板30まで達しないことを示唆するものである。一方、表1の結果によれば、第1の加熱板20にスリット21を設けた場合のスリット21による開口率が約2.2%と比較的に小さくとも、第2の加熱板30は第1の加熱板20と同程度に加熱されていることから、磁束の方向と同じ方向に延びるスリット21は、円形孔24に比して、磁束Bを透過させる効果に与える影響は極めて大きく、本願発明に係る伝熱面積を増大させる効果に顕著に作用することが認められる。
また上記と同様、板厚1mmの非磁性ステンレスSUS304に直径が8mm、6mm、および3mmの円形孔24を格子状に配置したもの穿孔加熱板25に、さらに加えて、中心から放射状に延びる長さ65mm×幅1mmの8本のスリット21を設けたものを作製し、これを第1の加熱板20として用いた温風発生装置100において、上記と同様の測定を行った。すなわち、本願発明によるスリット21を有するとともに、円形孔24による開口率が約58%、約40%、および約33%(孔径3mmの円形孔を有する穿孔加熱板25)の異なる開口率を有する3種類の穿孔加熱板25について、流体フローFの吸気温度に対するコイルの上昇温度T
C、第1の加熱板の上昇温度T
1、第2の加熱板の上昇温度T
2、およびダクト表面の上昇温度T
Dを測定した。なお、上記開口率はスリット21による開口率を含まないものとし、円形孔24を有さず、同様のスリット21のみを有する第1の加熱板20については開口率が0%の穿孔加熱板25として同様の測定を行った(表3)。そして各開口率におけるそれぞれの上昇温度をプロットして図7のグラフを得た。
表2および表3を比較すると、第1の加熱板に円形孔24を設けた場合であっても、第1の加熱板20がスリット21を有するとき(表3)の第1の加熱板20の上昇温度T1は、スリット21を有さない場合(表2)よりも低く、第2の加熱板30の上昇温度T2はより高いことが明らかである。このように、穿孔加熱板25においても同様に、スリット21を設けることにより、第2の加熱板30により高い磁束エネルギを与えて誘導加熱させ、伝熱面積を大きくすることができる。
さらに図7のグラフから理解されるように、開口率が大きくなるにつれ、第1の加熱板20の上昇温度T1はより低く、第2の加熱板30の上昇温度T2はより高くなる。したがって、第1の加熱板20に設けた円形孔24による開口率を制御することにより、第1および第2の加熱板20,30の上昇温度T1,T2を制御することができる。択一的には、第1の加熱板20に設けたスリット21の数および幅によっても第1および第2の加熱板20,30の上昇温度T1,T2を制御することができるが、第1の加熱板20に設けた円形孔24による開口率を制御することにより、第1および第2の加熱板20,30の上昇温度T1,T2を制御できるので、熱設計を行う上でも設計の自由度が増えるといった利点がある。
次に、非磁性ステンレス板の代わりに、アルミニウム板に(160mm×150mm×1mm)に、中心から放射状に延びる長さ65mm×幅1mmの4本のスリット21が互いに90°の角度で離間するように形成し、さらに直径が8mm、6mm、および3mmの円形孔24を格子状に配置したものを作製した(円形孔24による開口率はそれぞれ約58%、約40%、および約33%である。)。そして、これらのアルミニウム製の穿孔加熱板25を第1の加熱板20として用いた温風発生装置100において、上記と同様の測定を行った。図8は、各開口率において、流体フローFの吸気温度に対するコイルの上昇温度TC、第1の加熱板20の上昇温度T1、第2の加熱板30の上昇温度T2、およびダクト103の表面の上昇温度TDのそれぞれの測定結果をプロットしたグラフである。
図8から明らかなように、第1および第2の加熱板20,30の上昇温度T1,T2は同程度であり、両方の加熱板20,30は同等に誘導加熱しているものの、コイル10の上昇温度TCが第1および第2の加熱板20,30の上昇温度T1,T2より大きくなっている。一般に、コイル10が非常に高い温度に達する場合、これを収容するケース12等の周辺部品はより高い耐熱温度を有する材料を用いて形成する必要があり、製造コストをより安価にするためには、コイル10の上昇温度TCを低く抑えることが好ましい。したがって、上述のように、コイル10を含むケース12の上端および下端を開放して、ケース12の内部においても流体が流れる流路を構成して、コイル10を流体により冷却するとともに、アルミニウム板よりむしろ非磁性ステンレス板を用いて第1の加熱板20を構成することがより好ましい。
なお、アルミニウム板を用いて第1の加熱板20を構成したとき、コイル10がより高温となる理由は、アルミニウム板の抵抗がSUS304ステンレス板の抵抗より小さいために、誘導加熱装置1のコイル10に高周波電流を流したときの第1の加熱板20に誘起される抵抗成分が小さく、コイル10が消費する電力の割合が大きくなるためである。誘導加熱装置1のインピーダンス測定から推定すると、第1の加熱板20がSUS304ステンレス板の場合、入力した電力のうち約6〜7%の電力をコイル10で消費するが、アルミニウム板の場合には約20%の電力をコイル10で消費する。コイル10の消費電力を小さく抑えるためには、第1の加熱板20の抵抗を大きくすればよく、そのためには体積抵抗率が大きい材料を使用するか、板厚を薄くすればよい。常温でのSUS304ステンレス板の体積抵抗率は71×10−8Ωmであり、アルミニウム板の体積抵抗率は2.75×10−8Ωmである。非磁性金属で体積抵抗率が大きい材料としては、ニクロム(110×10−8Ωm)、クロメル(70〜100×10−8Ωm)、コンスタンタン(47〜51×10−8Ωm)などがあり、これらを用いてもよいが、板材が安価で入手できるものとしてはオーステナイト系ステンレス鋼が最適である。オーステナイト系ステンレス鋼は常温での体積抵抗率が71〜94×10−8Ωmである。一方、板厚を薄くすればアルミニウムなどの体積抵抗率が小さい材料でも、アルミニウム板の抵抗を大きくすることができる。アルミニウム板であっても板厚を0.1mm以下とすれば、アルミニウム板の抵抗が十分大きくなりコイル10で消費する電力を十分低減できるが、板厚を薄くすると誘導加熱による発熱で変形しやすくなる。そのためアルミニウム板の変形を見込んだ設計が必要になる。しかし、ステンレス鋼より安価なアルミニウムを用いることは低コスト化の点で利点があり、板厚を0.1mm以上として、コイル10で消費する電力を多少大きくしてもコイル10の周囲が流路となっており冷却されるため実施可能である。
さらに、第1の加熱板20のスリット21の幅を1mmではなく5mmとした場合について、上述と同様の測定を行った。すなわち、この第1の加熱板20は、160mm×150mmの平面寸法を有する厚さ1mmのSUS304の非磁性ステンレス板に、図4に示すように、中心から放射状に延びる長さ65mm×幅1mmの複数(8本)のスリットが互いに45°の角度で離間するように形成したものであって、円形孔24は設けられていない。測定結果は表4の通りである。
スリット幅が1mmである場合の表1と、スリット幅が5mmである場合の表4とを比較すると、スリット幅が5mmであるときの第1の加熱板20の上昇温度T1はより小さく、第2の加熱板30の上昇温度T2はより大きい。これはスリット幅を大きくしたことによりスリット21を透過する磁束の量が増加し、第1の加熱板20を誘導加熱する磁束が減少し、第2の加熱板30を誘導加熱する磁束が増大したためである。しかし、スリット幅が5倍になっているにも関わらず、温度上昇の程度はさほど大きくはない。
なお、本実施の形態においては具体的な幾何学的数値を上げて説明したが、各加熱板20,30、コイル10、スペーサ40の寸法などはこれに限るものではない。また同様の構造を実現すればスペーサ40を用いず、加熱板20,30の端部を折り曲げるなどしてスペーサ40を用いることなく流路Pとなる空間を形成してもよい。またコイル10の両面に第1の加熱板20と第2の加熱板30をそれぞれ2枚ずつ設けたが、コイル10の一方の面に第1の加熱板20と第2の加熱板30を設けてもよい。
実施の形態2
図9〜図13を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱装置の実施の形態2について説明する。実施の形態2の誘導加熱装置2は、複数の第1の加熱板20をコイル10の両側のそれぞれに設けた点を除き、実施の形態1と同様の構成を有するので、重複する内容については説明を省略する。
図9は本願発明の実施の形態2の誘導加熱装置2を示す斜視図である。実施の形態2の誘導加熱装置2は、コイル10を収容するケース12の両面に配置された非磁性オーステナイト系ステンレス鋼からなる第1の加熱板20aと(図10(a))、その外側に配置された同等の非磁性材料の材質からなる別の第1の加熱板20bと(図10(b))、さらにその外側に配置された第2の加熱板30とを有する。すなわち第1の加熱板は、コイル10と第2の加熱板30との間に配設された複数の第1の加熱板20a,20bを有し、それぞれの間に流路Pが形成されている。
コイル10により近い第1の加熱板20aは、図10(a)に示すように中心から放射状に延びる長さ65mm×幅1mmの12本のスリットが互いに30°の角度で離間するように形成したものであって、コイル10からより離れて配置された第1の加熱板20bは、図10(b)に示すように中心から放射状に延びる長さ65mm×幅1mmの6本のスリットが互いに60°の角度で離間するように形成したものである。外側配置の第1の加熱板20bのスリット21bは、内側配置の第1の加熱板20aのスリット21aに対し第1の加熱板20aに垂直な方向から見て重なり合う(重畳する)ように形成されている。図11(a)〜図11(c)は、図10(a)および図10(b)のa−a線、b−b線、およびc−c線から見た誘導加熱装置2の断面図である。内側に配置された第1の加熱板20aは、図11(a)に示すようにスリットのないところでは磁束Bを透過することができず、コイル10からの磁束により誘導加熱される。外側に配置された第1の加熱板20bは、図11(b)に示すようにスリット21bのないところでは磁束Bを透過することができず、内側配置の第1の加熱板20aのスリット21aを透過した磁束Bにより誘導加熱される。さらに第2の加熱板30は、両方の第1の加熱板20a,20bのスリット21a,21bを透過した磁束により誘導加熱される。
このように構成された誘導加熱装置2において、第1の加熱板20a,20bにスリット21a,21bを設けることにより、全ての加熱板20a,20b,30を誘導加熱することができ、伝熱面積をさらに増加させることができる。また、外側配置の第1の加熱板20bに設けるスリット21bの幅よりも、内側配置の第1の加熱板20aのスリット21aの幅を広くすることによって確実に第2の加熱板30に磁束が届くようにしてもよい。内側配置の第1の加熱板20aおよび外側配置の第1の加熱板20bに同数のスリット21を互いに重畳するように設けるとともに、前者のスリット21aの幅を後者のスリット21bより幅広に形成し、第1の加熱板20aのスリット21aを透過した磁束Bの一部が第1の加熱板20bを誘導加熱し、残りの磁束Bが第1の加熱板20bを透過して第2の加熱板30を誘導加熱するようにしてもよい。
なお、本実施の形態ではコイル10と第2の加熱板30の間に内側配置および外側配置の2つの第1の加熱板20a,20bを有する誘導加熱装置2について説明したが、磁束Bはコイル10から数センチメートルまでは届くので、より数多くの第1の加熱板20を設けてもよい。
図12は、コイル10の両側にそれぞれ4個の第1の加熱板20と、その外側に第2の加熱板30とを有する誘導加熱装置2を示す斜視図である。このように、さらに数多くの第1の加熱板20を配設して、より大きな伝熱面積を実現することができる。なお、第1の加熱板20の数が多くなると、より外側に配置された第1の加熱板20はコイル10からの距離が遠くなるので、コイル10からの磁束が弱くなり誘導加熱されにくくなる。そこで、図13に示すように、複数のコイル10を用いて複数の第1の加熱板20を誘導加熱してもよい。このとき、第1の加熱板20のそれぞれは、均等に加熱されるように、スリット21の幅を調整することが好ましいが、スリット幅が異なる(形状の異なる)ように複数の第1の加熱板20を形成することはコスト高を招くので、安価に作製するためには、できるだけ同一形状を有する第1の加熱板20を用いて誘導加熱装置2を用いることが好ましい。同一形状を有する第1の加熱板20を用いた場合、コイル10からそれぞれの第1の加熱板20までの距離により上昇温度(T1)が異なるが、加熱された流体は上述の温風発生装置100などの本体装置(図示せず)の内部で攪拌され、本体装置から噴出される流体は一様な温度となり、実際の使用に際しては問題のならない場合が多い。また図12および図13に示す誘導加熱装置2は、第2の加熱板30が最も外側に配置されているが、部品点数を減らして低コスト化を図るために、第1の加熱板20で置換してもよい。
実施の形態3
図14および図15を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱装置の実施の形態3について説明する。実施の形態3の誘導加熱装置3は、内側配置の第1の加熱板20aおよび第2の加熱板30に起伏(凹凸)を与え、伝熱面積を増大させた点を除き、実施の形態2と同様の構成を有するので、重複する内容については説明を省略する。
上述のように、図14および図15に示す誘導加熱装置3は、コイル10を収容するケース12と、非磁性金属板(例えばSUS304からなる金属板)を波形に折り曲げた(凹凸を与えた)放射状のスリット21aを有する第1の加熱板20aと、その外側に平板の非磁性金属板にスリット21bを放射状に設けた第1の加熱板20bと、さらにその外側に磁性金属板(例えばSUS430からなる金属板)を波形に折り曲げて連続的な起伏を設けた第2の加熱板30とを有する。
このように構成された誘導加熱装置3において、コイル10に高周波電流を供給すると、上記実施の形態1および2と同様、第1の加熱板20a,20bおよび第2の加熱板30が誘導加熱される。ただし、本実施の形態では内側配置の第1の加熱板20aおよび第2の加熱板30は、連続した波形形状に成形されており、平板の金属板に比較し、流体との接触面積(伝熱面積)を増大させることができるため、伝熱効果を改善することができる。
また、内側配置の波形形状を有する第1の加熱板20aおよび同様に波形形状を有する第2の加熱板30(以下、これらをまとめて「波形金属板」ともいう。)は、コイル10を固定する平坦な支持板11(またはコイル10を収容するケース12)および外側配置の平坦な第1の加熱板20bとの間において、山と山の間(あるいは谷と谷の間)に流路を形成する。したがって、実施の形態3に係る誘導加熱装置3は、流路を形成するために、別部材としてのスペーサを必要としない。実施の形態1および2で示したようにスペーサ40を用いて波形金属板と平板金属板(外側配置の平面状の第1の加熱板20)を固定することにより流路を形成したとき、誘導加熱により波形金属板の温度が上昇して、平板金属板がその平行な面において波形金属板より大きく熱膨張して反り返り、流路を安定した形状に維持しにくくなることがある。したがって、コイル10を固定する平坦な支持板11、第1の加熱板20a,20b、および第2の加熱板30は、スペーサ40を介して固定することなく、図14および図15で示すように単に積層するように構成することが望ましい。より好適には、熱膨張しにくい絶縁物を用いて平板の第1の加熱板20bを形成して、波形金属板の第1の加熱板20aおよび第2の加熱板30が反らないようにしてもよい。ただし、平板の第1の加熱板20bは、絶縁物より非磁性の金属材料を用いて形成した方が、伝熱面積は増大させることができるので好ましい。
実施の形態4
図16を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱装置の実施の形態4について説明する。図16は本願発明の実施の形態4による誘導加熱装置4を示す透視斜視図である。実施の形態4に係る誘導加熱装置4は、概略、セラミックスなどの絶縁体からなる筒型ケース32と、その外側に巻回された筒状コイル18と、筒型ケース32の内部に所定の間隔で配置された非磁性金属板(例えばSUS304からなる金属板)からなる複数の加熱板20とを有する。図示しない高周波電源から筒状コイル18に高周波電流が供給されると、筒型ケース32の長手方向(図16の上下方向)に高周波磁場が発生する。そして複数の加熱板20のそれぞれには、筒状コイル18が形成する高周波磁場の磁束Bの方向(筒型ケース32の長手方向)と同じ方向に延びる複数のスリット21が設けられている。このとき、筒状コイル18からの高周波磁場の磁束Bの一部は筒状コイル18に最も隣接した加熱板20を誘導加熱するが、一部はその加熱板20に設けられたスリット21を透過し、より内側にある加熱板20に達して、これを誘導加熱する。なお、加熱板20は実施の形態1で説明した第1の加熱板20と同様のオーステナイト系ステンレス鋼のSUS304が最も好ましい。
なお、本実施の形態では加熱板20は平板としたが、実施の形態3に示したように波形に折り曲げた加熱板20にスリット21を設けたものであってもよい。また筒型ケース32は円筒断面に限るものではなく、矩形断面を有する中空体であってもよい。
実施の形態5
実施の形態1〜3による誘導加熱装置1〜3は、平板状のコイル10と複数の平板状の加熱板20,30との組み合わせにより構成されているため、薄型で伝熱面積が大きい流体加熱用の誘導加熱装置をえることができる。こうした誘導加熱装置は、さまざまな装置の熱源として利用することができるが、一例として実施の形態1による誘導加熱装置1を組み込んだ手乾燥装置200について以下説明する。シースヒータを用いた典型的な手乾燥装置については、例えば特開平10−75915号公報に記載され、その開示内容は参考のためにここに一体のものとして統合される。
図17は、実施の形態5に係る手乾燥装置200を示す側面断面図である。この手乾燥装置200は、概略、ハウジング202と、高圧空気を発生する高圧空気発生装置であるブロワ204と、電源装置250とを備える。ハウジング202は、手挿入部206と、周辺空気を取り込むための吸気口208と、誘導加熱装置1で加熱された空気を外部に噴出する噴出口(噴出ノズル)212a,212bと、吸気口208と噴出口210a,210bとの間を流体連通し、手挿入部206の前面側に設けられた前面側ダクト203aと、背面側に設けられた背面側ダクト203bとを有する。前面側ダクト203aおよび背面側ダクト203bの内部にはそれぞれ、実施の形態1の誘導加熱装置1と同様の前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bが配設されている。誘導加熱装置1a、1bは電気配線210a,210bによって電源装置250に電気的に接続され、電源装置250から誘導加熱装置1a、1bに高周波電流が供給される。また電源装置250はブロワ204および誘導加熱装置1a、1bを制御するための制御回路(図示せず)を有する。
こうして構成された手乾燥装置200において、ブロワ204が作動すると吸気口208から空気を吸い込み、前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bが空気を加熱した後、加熱された高圧で高速の空気噴流Fが前面側ノズル212aおよび背面側ノズル212bから噴出される。このとき、手乾燥装置200の使用者が手挿入部206に濡れた手を挿入して引き出すと、前面側ノズル212aおよび背面側ノズル212bから噴出される空気噴流(温風)Fにより、手に付いた水滴を吹き飛ばし、手を速やかに乾燥させることができる。
このような手乾燥装置200の手挿入部206は、図17の紙面の垂直方向(奥行き方向)に両手を挿入できる幅を有し、上下方向に手首まで挿入できる深さを有することが好ましい。また手挿入部206は、図17の紙面で左右方向に使用者に圧迫感を与えない程度に広い間隔を有することが好ましい。ただし、手乾燥装置200の設置スペース(占有面積)をできるだけ小さくするためには、手挿入部206の左右方向の間隔は小さい方が望ましい。したがって図17の左右方向において、手乾燥装置200の手挿入部206の間隔を広くするとともに、手乾燥装置200全体の奥行きを小さくするためには、前面側ダクト203aおよび背面側ダクト203bの内部に配設された誘導加熱装置1a、1bを極力薄く設計することが必要であり、本願発明の誘導加熱装置は極めて好適である。
例えば実施の形態1に係る誘導加熱装置1において、コイル10の厚みが2mm、コイル10と第1の加熱板20との間の空間(流路)が3mm、第1の加熱板20の厚みが1mm、第1および第2の加熱板30の間の空間(流路)が3mm、第2の加熱板の厚みが2mmであるので、誘導加熱装置1全体の厚みは20mmである。さらに誘導加熱装置1とダクト203との間に3mmの空間(流路)を設けたとき、ダクト203の奥行きは26mmとなる。また、気流が通る空間(流路)を2mmとすれば、ダクト203の奥行きは20mmとなる。本願発明の誘導加熱装置1は薄型であるが、伝熱面積が大きいので、誘導加熱装置1の温度が過剰に高くなることなく、空気を十分に加熱することができる。
なお、前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bを個別に制御して、前面側ノズル212aおよび背面側ノズル212bから噴出される空気の温度が互いに異なるようにしてもよい。使用者は通常、手の平が前面側ノズル212aに対向するようにして手を手挿入部206に挿入するので、前面側ノズル212aから噴出された温風は手の平に当たり、背面側ノズル212bから噴出された温風は手の甲に当たる。一般に、手を洗ったとき水滴は手の甲より手の平に多く付着する。また、前面側ノズル212aおよび背面側ノズル212bから噴出される空気の温度が同じであるとき、手の甲は手の平より熱く感じ、使用者に不快感を与える場合がある。したがって、短時間で手を乾燥させるためには、前面側ノズル212aから噴出される空気の温度を背面側ノズル212bから噴出される空気の温度より高くすることが好ましい。これを実現するために、前面側誘導加熱装置1aに供給される電力が背面側誘導加熱装置1bに供給される電力より大きくなるように、それぞれに高周波電流を供給する独立した2つの電源装置250を設けて、個別に制御するようにしてもよい。このとき、手乾燥装置200は、前面側ノズル212aおよび背面側ノズル212bから噴出される空気の温度を使用者が調整できるように構成してもよい。
ただし、前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bのための2つの電源装置250を設けて、個別に制御することは、手乾燥装置200の製造コストを引き上げることになる。そこで択一的には、並列に接続された前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bに単一の電源装置250で高周波電流を供給するとき、前者のコイル10の巻数を後者のものより多くするか、あるいは両者を直列に接続した場合には、前者のコイル10の巻数を後者のものより少なくことにより、前面側ノズル212aから噴出される空気の温度を背面側ノズル212bから噴出される空気の温度より高くするように手乾燥装置200を構成してもよい。
さらに択一的には、コイル10の巻数等、同様に構成された2つの誘導加熱装置1a、1bが異なる電力を消費するように、単一の電源装置250を構成することができる。図18は、前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bにそれぞれ異なる電力を供給する電源装置250の回路構成を示すブロック図である。この電源装置250は、IGBTなどのスイッチング素子252a,252bが直列に接続されたハーフブリッジ回路254を有する。ハーフブリッジ回路254には直流電源256から直流電圧が供給され、ハーフブリッジ回路254のスイッチング素子252a,252bによりスイッチングされ所定の矩形波電圧がハーフブリッジ回路254の出力段に出力される。ハーフブリッジ回路のスイッチング素子252a,252bはハーフブリッジドライバ258により駆動され、ハーフブリッジドライバ258は制御部260により制御される。直流電源256とハーフブリッジ回路254との間にはコンデンサ262が接続され、必要に応じて電流を平滑化してハーフブリッジ回路254に供給する。ハーフブリッジ回路254の出力端には、共振コンデンサC1が直列に接続された前面側誘導加熱装置1aと、共振コンデンサC2が直列に接続された背面側誘導加熱装置1bとが並列に接続されている。
次に動作を説明する。前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bのインダクタンスは異なっていてもよいが、同じであるとして以下説明する。図18に示す電源装置250は、2つの共振回路、すなわち直列接続された前面側誘導加熱装置1aおよび共振コンデンサC1による前面側共振回路RC1と、直列接続された背面側誘導加熱装置1bおよび共振コンデンサC2による背面側共振回路RC2とを有する。共振コンデンサC1とC2の静電容量は互いに異なり、図19は、前面側共振回路RC1および背面側共振回路RC2のインピーダンスの周波数依存性を示すグラフである。それぞれのインピーダンスの極小値が、各共振回路の共振周波数である。前面側共振回路RC1の共振周波数より高い周波数f1の矩形波電圧がハーフブリッジ回路から出力され、前面側誘導加熱装置1aおよび背面側誘導加熱装置1bに供給されると、前面側共振回路RC1のインピーダンスが背面側共振回路RC2のインピーダンスより小さいので、前面側誘導加熱装置1aは背面側誘導加熱装置1bより大きい電流が供給され、より大きい電力を消費する(より発熱量は大きい)。そして、ハーフブリッジ回路254から出力される矩形波電圧の周波数をf1からf2に上げたとき、同様に前面側共振回路RC1のインピーダンスは背面側共振回路RC2のインピーダンスより小さいが、両者のインピーダンスの差異は、矩形波電圧の周波数がf1の場合より小さくなる。すなわち、ハーフブリッジ回路254から出力される矩形波電圧の周波数を調整するとともに、そのデューティ比を制御することにより、一方の誘導加熱装置の消費電力を一定に保ったまま、他方の誘導加熱装置の消費電力を制御することができる。
実施の形態6
上記実施の形態ではコイルの両側にそれぞれ複数の加熱板を設けた誘導加熱装置について述べたが、本実施の形態ではコイルの両側にそれぞれ単一の加熱体が配置されたより簡便な構成を有する誘導加熱装置について以下説明する。
図20は本願発明に係る実施の形態6による誘導加熱装置6を示す斜視図であり、図21は図20に示す誘導加熱装置6の分解斜視図である。実施の形態6の誘導加熱装置6は、実施の形態1と同様のコイル10と、スペーサ40を介して所定の間隔で離間して配置された加熱板20とを有し、コイル10と加熱板20との間に流路Pを形成している。加熱板20は、フェライト系ステンレス鋼のSUS430などの磁性金属が望ましいが、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS304などの非磁性金属であってもよい。実施の形態1と同様、コイル10に高周波電流を供給すると加熱板20は誘導加熱される。そして、コイル10と加熱板20との間の流路Pに空気などの流体を流すことにより、加熱板20から空気に熱が伝達される(空気が加熱される)。このように、各加熱板20の表面および裏面が伝熱面として空気に伝熱するので、コイル10と加熱板20の間に流路Pを設けない場合と比較して伝熱面積を2倍に増大することができる。熱の伝達効率を改善するために、コイル10で生じた熱も空気に直接的に伝達させて、コイル10も同様に空気フローに曝される(空気により冷却する)ことが好ましい。このとき、コイル10が空気流に曝されると、コイル10の絶縁被覆が空気中の粉塵によって破損しやすくなる。したがってコイル10は、樹脂やガラス、セラミックスなどの絶縁物で被覆されることが望ましい。
図22は図20の誘導加熱装置6を組み込んだ手乾燥装置300を示す側面断面図である。図22に示す手乾燥装置300は、実施の形態5の図17で示す手乾燥装置200とほぼ同様のものである。また図23は、図22の太い破線Aで囲った部分を示す拡大断面図であって、図20の誘導加熱装置6とほぼ同様のものを示す。図23に示す誘導加熱装置6は、加熱板20とダクト303との間にも所定の間隔を設けて、両者間に流路Pを形成しており、合計4個の流路Pを形成している。すなわち実施の形態6に係る誘導加熱装置6は、1個のコイル10で2個の加熱板20を誘導加熱し、2個の加熱板20の表裏両面がそれぞれ伝熱面(合計4面)として機能するように構成されている。したがって、限定的な数のコイル10と加熱板20を用いて、より数多くの伝熱面を実現することができるので、伝熱効率がより高く小型の誘導加熱装置6を安価に製造することができる。
図24は、図20に示した誘導加熱装置6を複数個、スペーサ41を介して並列に配置したものの斜視図であり、図25は、これを水平面(流路Pと直交する面)に平行な面で切断したときの断面図である。このように構成された誘導加熱装置(図24および図25)によれば、図20に示した誘導加熱装置6と同様の作用・効果を実現でき、多数の伝熱面を有するので、より効率的に空気に伝熱して温風を得ることができる。
なお、図20に示した複数の誘導加熱装置6は、スペーサ41を用いて互いに離間するように配置されているが、これに限定されるものではなく、所定の間隔で設けた溝部を有する外枠(図示せず)に複数の誘導加熱装置6のそれぞれを当該溝部に嵌合するように配設して離間させてもよい。
実施の形態7
図26は本願発明に係る実施の形態7による誘導加熱装置7を示す分解斜視図であり、図27は図26の誘導加熱装置7の部分的な分解斜視図である。誘導加熱装置7のコイル10は実施の形態6とほぼ同一のものであるが、誘導加熱装置7の加熱板20は平板状ではなく、波形に折り曲げて形成されているため、誘導加熱装置7のコイル10と加熱板20との間にはスペーサを設けることなく、山と山の間(隣接するピーク間)に流路Pが形成されている。図28は、図26および図27に示した誘導加熱装置7を水平面(流路Pと直交する面)に平行な面で切断したときの断面図である。図28の左側半分の一部領域Lにおいては、それぞれの加熱板20の山と山が一致する(向き合う)ように配置され、図28の右側半分の一部領域Rにおいては、それぞれの加熱板20の山と谷が一致する(向き合う)ように配置されているが、流路Pの方向が一定であれば、複数の加熱板20を任意の位置に配置してもよい。
しかしながら、複数のコイル10それぞれの捲回方向は同一であることが好ましい。これは、コイル10と加熱板20の間に流路Pとなる空間を有することに起因して発生する漏れ磁束が互いのコイルの磁束を弱め合うためである。例えば、複数のコイル10のうちの1つのコイル10の捲回方向を他のものと逆方向にすると、同方向にした場合に比べて、同じ電力を入力したときコイル10自身の温度上昇が大きくなり、すなわちコイル10からのジュール熱が増大した。本実施の形態においても、コイル10と加熱板20との間の流路Pに空気を流して、コイル10からの熱も空気に伝熱されるものの、コイル10の表面は絶縁物で被覆されているので、より効率的に熱を空気に伝熱するためには、投入電力に対するコイル10からのジュール熱より加熱板20からの誘導加熱の割合を大きくすることが好ましい。
このように、実施の形態7によれば、平板を波形に折り曲げて加熱板20を構成することにより、平板に比較して伝熱面積を増大させ、空気への伝熱効率を改善することができる。
図29は、図28に示す誘導加熱装置7の変形例を示す同様の断面図である。図28の誘導加熱装置7においては、隣接するコイル10の間には単一の加熱板20が配設されているのに対し、図29に示す誘導加熱装置7では、隣接するコイル10の間には、2つの加熱板20および仕切板26が設けられている。仕切板26は、2つの波形加熱板20により挟持され、これらの間隔を保持するものであり、金属板からなることが好ましいが、ガラス、セラミックス、または樹脂などの絶縁材料からなる板であってもよい。仕切板26が金属板であっても誘導加熱により生じる熱は小さいが、むしろ誘導加熱された波形の加熱板20から伝熱されやすい。このとき仕切板26は、流路Pの一部を構成するので、空気への伝熱面として機能する。したがって図29に示す誘導加熱装置は、図28に示すものに比して、より数少ないコイル20でより数多くの加熱板20を誘導加熱する(伝熱面をより増大させる)ことができるので、安価に伝達効率の高い誘導加熱装置を実現することができる。
実施の形態8
上記実施の形態では、コイル10は樹脂やセラミックスなどの絶縁材料からなる絶縁ケース12に収納されるものとして説明したが、本実施の形態によるコイル10は金属材料からなるコイルケース14に収容される点を除き、上記実施の形態と同様の構成を有するので、上記実施の形態の誘導加熱装置に用いられる任意のコイルと置換することができる。すなわち、実施の形態8のコイルは実施の形態6,7のみならず、実施の形態1〜7に係るコイルすべてに適用することができる。
図30および図31を参照して、実施の形態8のコイル10について以下説明する。図30は実施の形態8によるコイル10を示す分解斜視図であり、図31は図30のコイルを水平面に平行な面で切断したときの断面図である。実施の形態8のコイル10は、エナメル線などの導線を渦巻状に捲回して形成され、一対の金属材料からなるコイルケース14a,14bに挟持され(図30)、一体に固定される(図31)。コイルケース14a,14bは、好適には、アルミニウムなどの非磁性金属からなり、図30に示すように、コイル10の中心付近から放射状に延びる複数のスリット21を有し、上記実施の形態と同様、コイル10で生じた磁束がコイルケース14a,14bを透過し、コイル10から離れて配置された加熱板を誘導加熱することができる。またコイル10からの磁束により、コイルケース14a,14bも同様に誘導加熱されるが、スリット21の本数を多くし、あるいはその幅を大きくすることにより、コイルケース14a,14bで生じる熱を抑制することができる。なお上記実施の形態おいて、コイル10は流路Pに面するように構成されているので、この実施の形態によるコイルケース14a,14bを、流体を加熱するための伝熱面として有効に利用することもできる。また詳細図示しないが、コイル10とコイルケース14a,14bとの間には、樹脂などの絶縁材料からなる絶縁シート(図示せず)を配置してもよい。またスリット21は、絶縁物で塞いだとしても磁束に対してはスリットが存在することと同じなのでよい。
以上のように、実施の形態8によれば、コイル10を金属製のコイルケース14a,14b内に配置することにより、流体中に含まれる粉塵からコイル10の実質的な全体表面を保護することができ、粉塵による摩耗などに起因するコイル10の劣化を防止して、より長寿命で信頼性のより高いコイル10を実現することができる。