JP5113313B2 - 磁気軸受 - Google Patents
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Description
発明の分野
本発明は、受動及び能動の磁気軸受に関し、詳細には、小型且つ高剛性で負荷容量の大きい磁気軸受に関するが、これに限られるものではない。
【0002】
発明の背景
磁気軸受―――目的及び特質
磁気軸受の目的は、接触を生じることなく、2つの主要軸受部材の間に力を提供することである。したがって、この力は支持力と呼ばれる。任意の軸受の通常の定義と変わりなく、磁気軸受も、1つ又は複数の向きにおいて自由運動を可能にし、一方、別の少なくとも1つの向きにおいては、支持力を発揮する能力を提供する。多くの磁気軸受はロータとステータを分離する回転機械に使用される。磁気軸受は、(適切に設計された場合)エネルギー損失の割合が極めて小さく、部品間に接触がないため潜在的に寿命が極めて長く、且つ、比較的高い温度に耐えることができるという利点を有している。
【0003】
磁気軸受は能動でも受動でもよい。能動磁気軸受は、2つの主要軸受部材の相対位置を検知し、2つの主要軸受部材間の正味の力が適切な大きさ及び方向を有するように、コイルに流れる電流を調整する。受動磁気軸受は、通常、永久磁石からの磁界を伴うが、代わりに、起磁力(MMF)を提供する導体のコイルを使用して構成され得る。しかしながら、これらのコイルを流れる電流は、2つの軸受部材の相対位置の強い関数ではない。受動磁気軸受は、同じ極の反撥に基づいて動作することがしばしばである。
【0004】
単純な見方をすれば、能動磁気軸受は、2つの主要軸受部材間の最少量の相対運動によって、有限量の力を生じることができるという意味において、任意の剛性にすることができる。これに対しては、極端に小さい運動を検知する能力及び閉ループ制御システムを安定化させる必要に関連した限界がある。しかしながら、能動軸受の剛性の方が、等価の受動軸受の剛性よりも一般的に数桁大きいことは広く認められていることである。軸受の剛性は、軸受の許容し得る動的特性のためにも、また、2つの主要軸受部材の相対位置が2つの主要軸受部材間に存在する外部から印加される負荷の影響を受けないようにするためにも、極めて重要である。
【0005】
任意の軸受の他の極めて重要な特質は信頼性である。能動磁気軸受は、感知、制御及び動力電流を必要とする複雑なシステムである。したがって、単純な機械的破損以外の極めて多くの可能な故障モードが存在する。対照的に、受動軸受は極めて頑丈且つ信頼性が高く、機械的破損以外の可能な故障モードが極めて少ない傾向にある。
【0006】
全ての磁気軸受の主要な特質は大きさである。大きさに関連し且つ等しく重要な第2の特質は総重量である。所与の力定格(force rating)の場合、ラジアル磁気軸受の大きさがその回転要素等価物より何倍も大きいことは、広く認められていることである。
【0007】
基本軸受領域及び中央表面
2つの主要軸受部材を備え、その2つの主要軸受部材の間に若干の自由相対運動が提供される軸受を考察する。多くの場合、自由相対運動のうちの少なくとも1つは回転である。原子のスケールを超えるスケールの任意の物理的物体の回転には、その物体の表面における粒子の並進が伴う。幾つかの向きにおいて主要軸受部材の相対運動に抵抗する力を生じるが、何らかの軸の周りの自由回転を許容することができる軸受を提供するためには、並進が少なくとも1つの軸に沿っては逆向きであり且つ少なくとも1つの他の軸に沿っては自由である領域を軸受内に提供することが必要且つ十分である。このような領域は、基本軸受領域と呼ばれる。
【0008】
説明のためには、従来の玉軸受が有用である。玉軸受は、内側レース及び外側レースの相対並進が1つの方向に沿っては強固に抵抗され、内部レース及び外部レースの並進が他の2つの方向に沿っては自由である有限数の基本軸受領域を、玉毎に1つずつ備えている。所与の瞬間における個々の玉の抵抗方向は、接点間の(玉の)直径に沿った方向である。明らかに、この単純な概念モデルは接点における摩擦及び粘性剪断力を無視している。図1は、玉軸受の基本軸受領域を示している。
【0009】
玉軸受の場合における全てのこれらの基本軸受領域の集合的な作用により、1つの軸の周りには自由回転を提供するが、2つの主要軸受部材間の全ての正味の並進及び(アンギュラ・コンタクト玉軸受の場合には)他の2つの直交回転軸の周りの回転に対しては反発する軸受が生じる。
【0010】
円筒ころ軸受に対しても同じ見方をすることができる。各ころは、内部レース及び外部レースの相対並進に対する極めて強固な抵抗力を一方向に生成することができ、回転方向においては極めて自由な運動を許容する。ころは、内部レース及び外部レースの相対運動に対する若干の抵抗力を軸方向に提供するが、この抵抗は通常は使用されない。円筒ころ軸受の場合、個々のころに対して1つの基本軸受領域が存在すると見なすことができる。円錐ころを有するころ軸受の場合、各ころは極めて多数の円板状スライスを備えると見なし、基本軸受領域が表される。図2は、円錐ころ軸受からの基本軸受領域を示している。
【0011】
回転を容易にする全ての軸受に対するこの見方を、静水力学的軸受及び流体力学的軸受に拡張することは簡単である。静水力学的軸受の場合、基本軸受領域を、2つの主要軸受部材間の空洞に加圧流体が供給される個別の位置と見なすことができる。図3は、静水力学的軸受からの基本軸受領域を示したもので、このような個別の位置に対する圧力分布を重ねて示している。流体力学的軸受の場合、2つの主要軸受部材間の潤滑材中間層を、2つの主要軸受部材間に距離を維持するための力を発揮するパッチに分解することができる。図4は、1つのこのようなパッチ及び軸受部材間の相対運動の方向を示したものである。
【0012】
以上の論理に従って、全ての軸受を、比較的自由な相対並進の少なくとも1つの方向と並進を強く反撥する(又は強く反撥することができる)少なくとも1つの方向とを有する複数の組の基本軸受領域に分解することができる。
【0013】
以上の軸受の各例では、基本軸受領域は、2つの主要軸受部材の各々の表面の一部を含む。これらの2つの表面の間には中央表面が存在する。この中央表面は、自由並進の方向を提供する際の軸受領域の作用を、この中央表面の一方の面の他方の面に対する滑りと等価であると見なすことができるよう、任意の滑らかな表面である。中央表面という用語は、本明細書の残余の部分を通して何度も使用される。
【0014】
多くの場合、基本軸受領域は、一方向の自由並進を提供するためにのみ(又は主として)使用される。この方向は中央表面の平面内にある。したがって、図5に従って、基本軸受領域に対する主方向の軸の組を確立することができる。図5において、3つの軸は、
(1)(主)自由相対並進の軸。明確な実際的な理由により、自由相対並進は中央表面における純粋な離散的剪断作用と類似している。この方向は、図5で任意に符号xが付されている。
【0015】
(2)中央表面に対して垂直な軸。この方向は、図5において任意に符号zが付されている。
(3)図5において方向yが付された残りの直交軸
である
以上の全ての場合において、2つの主要軸受部材の2つの表面の間に作用する力は、主に中央表面に対する垂線、即ち図5のz方向に沿った方向である。
【0016】
原子のスケールよりも大きなスケールの実際的な軸受で真に無損失のものはない。玉軸受及びころ軸受には若干の回転抵抗が存在する。静水力学的軸受及び流体力学的軸受の軸受流体には若干の粘性抵抗が存在する。磁気軸受には渦電流損及びヒステリシス損が存在する。したがって、全ての場合において、「自由な」方向xにおいて2つの表面の相対並進に対抗するよう作用する何等かの力の成分が必ず存在する。
【0017】
磁気軸受における磁気応力
磁気軸受の既存の設計の多くは、磁束に空気中を通過させる場合には磁束線の方向に引張りマクスウェル応力が空気中に有効に存在するという事実に、まともに依存している。全てではないが現在入手可能な多くの能動磁気軸受は、この引張り応力に直接基づいて動作する。
【0018】
図6は、引張りマクスウェル応力の作用を恐らくは最も簡単な例で示しており、馬蹄形永久磁石がそれ自体とエアギャップ(2回)と何らかの第2の物体とを通して磁界を駆動する。この例の磁束線は馬蹄形永久磁石の面及び第2の物体の表面に主に垂直であるため、2つのエアギャップ交差の各々に生じる正味の力を、簡単な数式を使用して近似することができる。次いで、これらの2つの離散的な力を基本三角法を使用して結合することにより、磁石と第2の物体との間に結果として生じる総引力の式を生成することができる。
【0019】
能動磁気軸受の最も古い設計は、固体(又は中空)の円筒ロータを中心に置いたエアギャップの円周の周りに配列された、個別に付勢される複数の馬蹄形電磁石を備えている。各馬蹄形電磁石は独自の完全な磁気回路を有しており、個別の電磁石間の相互作用はほとんどない。通常の動作では、各電磁石は、馬蹄形電磁石を通る若干の磁束が常に存在するよう、バイアス磁界を有する。バイアス磁界は、電磁石を流れる電流の直流成分によって提供されることもあるが、磁気回路において永久磁石によって提供され得る。バイアス磁界によって生成される力は、通常、合計するとほぼゼロになる。このため、比較的少量の(追加の)電流を1つの馬蹄形電磁石に流し、その直径方向に対向する馬蹄形電磁石に、この(追加の)電流の負の電流を流すことにより、軸受ステータと軸受ロータとの間に正味の横方向の力が生成される。
【0020】
磁気軸受の現代の設計は、内方に突出したステータ磁極がバック・アイアンの連続したシリンダ上に取り付けられた点で、切り換え型リラクタンス機械のステータに類似したステータ形状を利用する。個々のステータ磁極上にコイルがあり、又は、コイルが2個以上の磁極に連結している。代わりに、電気機械においては数年前まで一般的であった旧式のグラム・リング巻線方法に従って、コアの後部の周囲にコイルが形成される。バイアス磁界を生成するために、ステータ磁極に又はバック・アイアンのシリンダに永久磁石が設けられ得る。このような場合、コイル(又は相)を流れる個々の電流と個々のステータ磁極を通過する磁束の量との関係は、複数の独立の馬蹄形電磁石の単純な配列よりも複雑である。しかし、動作の基本原理は同じであり、磁極当たりの引力は(概ね)磁極面を通過する総磁束の二乗に比例する。
【0021】
多くの磁気−機械装置は基本的に磁束密度によって制限される。鉄を含有している任意の機械の磁束密度は、飽和のために、鉄のいかなる部分においても2テスラを超えることは極めて稀である。(鉄という語は、ここでは、任意の強磁性材料を包含するものとして使用されている。)強磁性材料の最大磁束密度は、用途に対する材料を選定するための重要なパラメータであるが、それだけではない。機械的強度、剛性、(渦電流損に対する)抵抗率及び低磁気ヒステリシス効果は、磁気−機械装置に使用する材料の選定に際して設計者が留意しなければならない他の特性である。結局のところ、鉄又は他の任意の材料に最大磁束密度が存在しないことは当然であるが、鉄に対する(増分)相対透磁率は、低磁束レベルでの1000を超える値から2テスラを超える磁束レベルでの1を少し超える値までにの範囲に入る。
【0022】
鉄を含有する磁気−機械装置の鉄での磁束密度は、磁束が有効に力を生成するエアギャップでの磁束密度よりも必ず高い。エアギャップという用語は、この文章においては、非磁性流体で満たされた又は満たされない空間の領域を意味するために使用されている。この用法は、電気機械の文脈における用語の解釈と一致している。最も一般的には、装置の相対移動が可能な部品間のギャップは、空気によって占有される。
【0023】
エアギャップの磁束密度が制限されるとすると、達成可能なマクスウェル応力の大きさも制限されることになる。エアギャップを通して作用する正味の力又はトルクは、当該エアギャップを通る任意の表面を選択し、磁気応力を当該表面について積分することによって計算され得る。これがなされたならば、全体の力を総エアギャップ面積で除算した結果として、又は、総トルクを回転軸の周りのエアギャップ面積の総第1モーメントで除算した結果として、平均有効エアギャップ応力を導出することができる。平均エアギャップ応力は約0.4MPaに制限される。
【0024】
任意の磁気軸受の設計に関連してみると、重要な要件は、一方向の運動に抵抗することができる何等かの公称力を発生させることができることである。鉄の飽和によって、任意の磁気−機械装置における有効エアギャップ応力が固有に制限されるならば、所与の定格負荷に対するエアギャップの最小動作面積が存在することになる。磁気軸受の設計者が取る1つの手法は、磁束が通過する比較的広くて平らな軸受表面領域を使用することである。磁気軸受の設計者が取るもう1つの手法は、必要なエアギャップ面積を有限長のシャフトで達成することができるよう、直径が比較的大きくて長い軸受表面を使用することである。
【0025】
エアギャップでの所与の磁束密度がBであるとすると、磁束線の方向「r」における引張りマクスウェル応力は、
【0026】
【数1】
によって与えられる。
【0027】
磁気軸受の設計において無視されていることは、rに対して直角の2つの方向「s」及び「t」において、
【0028】
【数2】
で与えられる圧縮応力が有効に存在することである。
【0029】
図7aは、一定のtの平面における1組の磁束線を示している。図7aに描かれている正方形のボックスは、対向する2つの面に作用する張力σrrと、対向する他の2つの面に作用する圧縮(負の張力)σssとを有すると見なされ得る。図7bは、一定のtの同一平面における同じ1組の磁束線を示している。図7bにも、図7aにおけると同じ大きさの正方形のボックスが描かれているが、図7bの正方形のボックスの配向は図7aのボックスの配向に対して45°をなしている。この図では、軸「u」及び「v」は、磁束の方向に対して45°の角度になるように規定される。このボックスの辺上では、実際上純粋な剪断応力が垂直応力の成分なしに作用していることが分かる。この純粋な剪断応力の大きさ「τuv」(図7b)は、図7aのボックスの辺上の垂直応力の大きさと同じである。即ち、
【0030】
【数3】
である。
【0031】
基本軸受領域の考察に戻ると、磁束線の各々がx方向(2つの境界面の自由相対運動が望まれる方向)に対して(少なくとも近似的に)直角をなすように、磁束線が図5の基本軸受領域の2つの境界面の間を通過していることを考察する。この条件が満たされるならば、x方向の2つの主成分の間に力の成分が存在することになる。これらの磁束線がz方向に平行(中央表面に対して垂直)である場合、2つの境界面間の力は応力と面積との積、即ちB2A/2μ0に等しくなる。但し、Bは磁束密度であり、Aは中央表面の面積である。
【0032】
図8に示すように、磁束線が全てxに対して直角であり、垂線zに対して角度αをなしている場合、y方向及びz方向における基本軸受領域の2つの境界面の間に、
【0033】
【数4】
で与えられる力の成分が存在する。
【0034】
図8では、正のFyが上側の境界面を−y方向に引っ張るように作用するとともに、下側の境界面を+y方向に引っ張るように作用する。正のFzは、上側の境界面を−z方向に引っ張るように作用するとともに、下側の境界面を+z方向に引っ張るように作用する。
【0035】
発明の記述
本発明によれば、2つの軸受部材の各々が1組の軸受要素を担持し、一方の軸受部材によって担持された前記軸受要素と、他方の軸受部材に担持された前記軸受要素とが交互に配置され、連続する要素間に3つ以上の実質的に平行な中間ギャップ(interleaf gap)を規定し、それにより、これらのギャップを横切って作用する磁気剪断応力の結果として支持力を発生させることができる磁気軸受が提供される。
【0036】
本発明の最も好ましい実施の形態の際立った特徴は、ここで説明される磁気軸受が、多数の平行な(あるいは概ね平行な)エアギャップからの力の寄与の和として支持力を達成することであり、個々のエアギャップの力の寄与は、磁束線を垂線に対して角度をなしてエアギャップを横切らせることによってもたらされるエアギャップ面積にわたっての磁気剪断応力の積分として生じる。軸受内に任意の時間に存在する磁束線の実質的な部分は、3つ以上の平行なエアギャップにおける有用なエアギャップ剪断応力の生成に有効である。
【0037】
本発明は、
少なくとも2つの突出要素がそれぞれ設けられた第1及び第2の軸受部材であって、2つの軸受部材の連続する要素間に少なくとも3つのギャップを規定するよう突出要素が交互に配置される軸受部材と、
各ギャップを横切って磁気剪断応力を生成し、それにより支持力又は軸受部材間の力を生成するために、磁束線が垂線に対して角度をなして中間ギャップを横切る起磁力(MMF)源と、
を備えた磁気軸受が提供される。
【0038】
本発明は構造が頑丈な軸受を提供し、高剛性の受動磁気軸受を得ることができる。
有利なことに、3つ以上の中間ギャップを横切る少なくとも1組の磁束線が存在するよう、少なくとも1つの起磁力源が配置され、少なくとも大部分の支持力は、中間ギャップを横切って作用する磁気剪断応力の結果として発生する。
【0039】
本発明の好ましい実施の形態においては、3つ以上の中間ギャップの組を横切る1組の磁束線が存在するように起磁力源が配列され、少なくとも大部分の支持力は、中間ギャップの組を横切って作用する磁気剪断応力の結果として発生される。この効果を生成するために、磁束は、交互に配置された軸受要素のスタックを通る際にジグザグ・パターンに従うようになされる。実質的に全ての中間ギャップが前記組の中に含まれることが特に好ましい。図9は、このジグザグ経路を概略的に示している。
【0040】
この配列の結果、重量及び材料の著しい節約が可能であり、したがって、低コスト及び大きい特定の負荷容量が促進される。任意の磁気軸受の重量を決定している大きな要因は、磁束回路を完成するのに必要な材料、つまり、支持力の寄与を生成するのに有用な場合にはギャップの組の一方の側から他方の側へ磁束を導くのに必要な材料である。磁束線の組が全ての(又は多くの)ギャップを横切る配列により、所与の最大支持力能力に対する磁気戻り経路に関連する重量を最小にすることができる。
【0041】
本発明に係る磁気軸受は、多数の(ほぼ)平行なエアギャップの各々に適度な有効剪断応力を存在させることによって、高い負荷容量を達成する。エアギャップに磁気剪断応力を存在させるためには、磁束を提供する起磁力源を設け、角度をなして磁束にエアギャップを横切らせることが必要である。所与の磁束密度に対する最大剪断力は上記角度が45°のときに生じる。したがって、磁束が軸受の種々の中間ギャップを横切る方法を制御できることは有利である。何らかの剪断応力を存在させることができる多くの異なる構成を考えることができる。しかし、磁束の経路を、磁束が自由空間を通して当然取る経路から変更することができる3つの明確な方法が本質的には存在するだけである。その3つの方法とは、(a)何らかの強磁性体を磁路に配置すること、(b)何らかの永久磁石材料を磁路に配置すること、及び(c)何らかの電流を磁路に配置することである。
【0042】
本発明の幾つかの好ましい実施の形態においては、少なくとも1つの中間ギャップを横切る磁路に影響を及ぼすために電流を流させるよう、交互に配置された1つ以上の軸受要素内に導電材料が配列される。代わりに又は加えて、少なくとも1つの中間ギャップを横切る磁路に影響を及ぼすために、交互に配置された軸受要素内に永久磁石材料を分布させてもよい。
【0043】
本発明の更に他の好ましい実施の形態では、少なくとも1つの中間ギャップを横切る磁路に影響を及ぼすために、交互に配置された軸受要素内に透磁率が異なる材料が分布される。こうした場合、この目的のために、強磁性材料が、交互に配置された軸受要素内に適切に分布される。したがって、軸受要素の一方の側から他方の側に通る磁束線が受ける磁気抵抗が当該磁束線の位置の強い関数であるように、強磁性材料が、交互に配置された少なくとも1つの軸受要素内にパターン状に分布されている。磁気抵抗の位置に対する依存性は、少なくとも1つの中間ギャップを横切る磁路に影響を及ぼすよう作用する。
【0044】
少なくとも1つの中間ギャップを横切る磁束に影響を及ぼすこれらの方法の全部又は任意のものは、本発明の一つの実施の形態に組み込まれ得る。図10、図11及び図12は、3つの異なる効果(軸受要素における不均一な透磁率、軸受要素における永久磁石材料、及び、軸受要素の面における電流)がエアギャップを横切る磁路にどう影響するかを概略的に示している。
【0045】
1つ以上の軸受要素に何らかの永久磁石材料又は何らかの電流分布を含む実施の形態においては、個別の起磁力源を設けることが必要又は不要である。
本発明の幾つかの好ましい実施形態では、軸受は能動軸受として構成される。本発明の他の好ましい実施の形態では、軸受は受動軸受として構成される。本発明の更に他の好ましい実施の形態においては、起磁力源は、総磁束鎖交を選択的に調整するための単一のコイルを備えており、この場合、軸受は半能動軸受として構成される。
【0046】
本発明の幾つかの好ましい実施の形態では、軸受は線形軸受として構成される。本発明の他の好ましい実施の形態においては、本発明の軸受は回転軸受として構成される。回転軸受として構成される場合、軸受は、半径方向の支持力又は軸方向の支持力を生成するように配列される。
【0047】
一方の前記軸受部材は、他方の軸受部材より1つ多い交互配置要素を有することが好ましい。これにより軸受の対称性が促進され、少なくとも4つのこうしたギャップが存在することにもなる。剪断応力はこれらのギャップの各々において達成される。複数のギャップを設けることにより、軸受部材間に力を生成するよう作用する総表面積が増加し、高負荷容量の軸受を実現することができる。軸受に存在するギャップの幅は、2つの軸受部材の達成可能な位置合わせによって決定される最小値を有する。
【0048】
交互配置要素の数は、中間ギャップの数、したがって軸受部材間に力を生成するよう作用する総表面積を増すように都合に応じて増すことができる。好ましくは少なくとも6つの、更に好ましくは少なくとも8つ又は10のこのような中間ギャップが存在し、26個又はそれ以上のギャップが存在してもよい。
【0049】
交互配置要素間のギャップは、オプションとして、非磁性流体で充填してもよい。ギャップに空気を充填しても、真空にしてもよい。
強磁性材料の不均一な分布を含む実施の形態においては、1つ以上の強磁性材料によって高透磁率領域が構成され、低透磁率領域は任意の非強磁性材料、例えば、繊維強化樹脂材料等の合成物によって構成され得る。炭素繊維合成物は特に適する。
【0050】
軸受部材間の力は一方向又は双方向に生成される。軸受部材間の力の方向は、ギャップの中央表面に平行な方向であることが好ましい。軸受部材間の力は、ギャップの中央表面に概ね平行の方向に作用する。
【0051】
第1の軸受部材の要素は一緒に取り付けられ、第2の軸受部材の要素も一緒に取り付けられる。これらの要素は機械的プラットフォーム上に取り付けられる。機械的プラットフォームはシャフトであっても、シャフトに取り付けられるスリーブであってもよい。機械的プラットフォームは、要素をその外縁で一緒に保持するシェルであり得る。機械的プラットフォームは、磁気的に短絡することがないよう、非磁性体でできていることが好ましい。
【0052】
第1及び第2の軸受部材の交互配置要素は環状円板であり得る。回転軸受においては、このような円板は回転軸に対して垂直に取り付けられる。このような交互配置する円板は、軸受の回転軸に垂直に作用する支持力を生成するように配置される。
【0053】
第1及び第2の軸受部材の交互配置要素はシリンダであり得る。回転軸受においては、このようなシリンダは、軸受の回転軸と同心状に取り付けられる。このような交互配置シリンダは、磁束を交互配置シリンダ間でジグザグにする方法に応じて、軸受の回転軸に対して同軸に又は垂直に作用する支持力を生成するようになされている。
【0054】
本発明の更に他の実施の形態においては、第1及び第2の軸受部材の交互配置要素は円錐状であり得る。回転軸受においては、このような円錐状要素は、軸受の回転軸と同軸に取り付けられる。このような交互配置円錐状要素は、磁束を交互配置円錐状要素間でジグザグにする方法に応じて、軸受の回転軸に対して同軸に又は垂直に作用する支持力を生成するようになされている。
【0055】
交互配置要素は、環状円板、円筒状又は円錐状要素或いは線形軸受要素のいずれであっても、積層された鋼で構成され得る。抵抗率の大きい粉末冶金合成物の使用や、マトリックス状に埋め込まれ且つ適切に配向された磁気ワイヤの一部を備える複合材料の使用を含む他の構成方法又は材料も可能である。
【0056】
MMF源は、一連の永久磁石、2つの同心状のコイル、又は、Gクランプの形を想起させる4つの同一の片を備えている。また、MMF源は、軸受を通る磁路を完成する働きをする。MMF源は、軸受の一方の端部のみに戻り経路を備えている。
【0057】
第1の軸受部材はロータであり、第2の軸受部材は回転機械のステータであり得る。代わりに、第1の軸受部材はステータであり、第2の軸受部材は回転機械のロータであってよい。MMF源は、設けられるときには、軸受ステータと同じ運動フレーム内にあることが好ましい。
【0058】
磁気軸受は受動磁気軸受であっても、能動磁気軸受であってもよい。磁気軸受は、小型且つ軽量で力容量が大きい能動磁気軸受であり得る。磁気軸受は、小型で高剛性の受動磁気軸受であり得る。本発明は、従来の設計による受動軸受によって提供されるよりも何倍も大きい単位体積当たりの剛性を有する受動軸受を提供する。磁気軸受は、復元スラストを生成することにより相対回転は許容するが相対的な軸方向運動は阻止する小型で高剛性の受動磁気軸受であり得る。磁気軸受は、他の設計による受動磁気スラスト軸受によって提供される単位体積当たりのスラストよりも何倍も大きい単位体積/質量当たりの軸方向スラスト容量を有する受動スラスト軸受であり得る。磁気軸受は実質的に大きい単位体積/質量当たりの軸方向剛性を提供することができ、その軸方向剛性は他の設計による受動磁気スラスト軸受によって提供されるよりもずっと大きい。磁気軸受は、相対回転に対して抵抗をほとんど又は全く提供することなく比較的小量の相対軸方向運動を与えられる実質的軸方向スラストを提供する磁気軸受である。
【0059】
以下、添付の図面を参照して、本発明の若干の好ましい実施の形態について説明するが、これは単なる例にすぎない。
図1〜図12については既に参照済みである。
【0060】
特定の実施の形態「A」――受動ラジアル磁気軸受
図13〜図18は、本発明の第1の実施の形態に係る受動ラジアル磁気軸受を示している。この磁気軸受は、軸受ロータ部材1、軸受ステータ部材2及び起磁力(MMF)源3の3つの主要コンポーネントを備えている。
【0061】
いわゆるラジアル軸受の機能が、相対的な回転を行う2つの軸受部材の所与の相対的横方向位置を維持することであることを認識すると、いずれか一方の軸受部材が固定部材であり、他方の軸受部材が可動部材であることは明らかである。ここでは、また、説明の中のいずれかの個所では、軸受ロータ及び軸受ステータという用語は、2つの軸受部材を区別するためにのみ使用されている。少なくとも回転軸受の場合においては、MMF源が軸受ステータ部材と同じ運動フレーム内にあることが仮定されている。
【0062】
図13は、軸受ロータ1、軸受ステータ2及びMMF源3の片側の断面を示したものである。この図には、MMF源が磁路を完成するよう働いていることも示されている。図13の点線12は磁束の流れの方向を示している。MMF源は、軸受ロータ及び軸受ステータを介して、適度に同極のMMFを提供する。つまり、軸受の任意の断面は、ロータ及びステータを通る磁束の同じパターン及び密度を示す。
【0063】
軸受ロータ1は、図14に示すように、単一の機械的プラットフォーム5に取り付けられた多数の円形ロータ板軸受要素4を備えている。ロータ板軸受要素4の中央平面は、回転軸に対して垂直である。機械的プラットフォーム5は、シャフトに嵌め合わせることができるスリーブである。軸受ロータ1の機械的プラットフォームは非磁性体からなる。これは、機械的プラットフォームが、ロータ板軸受要素4及びステータ板軸受要素6を通過してこれらの軸受要素によって規定される中間ギャップ11を通る1組の磁束線12を磁気的に短絡することがないようにするためである。
【0064】
軸受ステータ2は、図15に示すように、単一の機械的プラットフォーム7に取り付けられた多数の円形ステータ板軸受要素6を備える。ロータ板軸受要素と同様、ステータ板軸受要素の中央平面も、回転軸に対して垂直である。機械的プラットフォーム7は、ステータ板軸受要素をその外径部で一体に保持するシェルである。軸受ステータ2の機械的プラットフォーム7は非磁性体からなる。これは、機械的プラットフォーム7が、ロータ板軸受要素及びステータ板軸受要素を通過するように意図された磁束を磁気的に短絡することがないようにするためである。
【0065】
全てのロータ板軸受要素4は互いに類似しており、また、全てのステータ板軸受要素6も、2つの端板軸受要素がMMF源3と一体である向きにおいて異なっている点を除き互いに類似している。任意の単一のロータ板軸受要素4は、ステータ板軸受要素6とほぼ同一であるように見える。主な相違は、ロータ板軸受要素4の最も内側及び最も外側の直径の方がステータ板軸受要素6の最も内側及び最も外側の直径よりも若干小さいことである。図16はロータ板軸受要素4を示しており、図17はステータ板軸受要素6を示している。これらのプレート軸受要素の各々は、比較的透磁率の小さい1組の環状の領域9によって隔てられた1組の環状の高透磁率領域8を備えている。高透磁率領域8の半径方向の間隔は、ロータ板軸受要素とステータ板軸受要素とで同じであり、高透磁率領域8は、極めておおざっぱに近似すると、ステータ板軸受要素及びロータ板軸受要素の低透磁率領域9と同じ半径方向深さを有する。簡単にするために、この半径方向の間隔の寸法は図では誇張されている。実際、高透磁率領域8の半径方向のピッチは、大まかには、軸受ロータ1と軸受ステータ2との間で許容される最大の相対的横方向運動の3倍のオーダーである。ロータ板軸受要素とステータ板軸受要素の間のエアギャップの寸法は、典型的には、この半径方向深さの半分程である。
【0066】
図18は、軸受ロータと軸受ステータとの組み合わせの横断面を示しており、断面の面において軸受ロータと軸受ステータとの間に或る程度の横方向不整列が存在している。ロータ板軸受要素4及びステータ板軸受要素6のみが、これらの板軸受要素における高透磁率領域8及び低透磁率領域9と共に示されている。高透磁率領域8は明らかに整列されていない。MMF源の効果は、ロータ板軸受要素4とステータ板軸受要素6とのスタック及びそれらの間のエアギャップを通して磁束を軸方向に駆動しようとすることである。高透磁率領域部分が整列している場合には、比較的高密度の磁束が通るが、ロータとステータとの間に生成される力は極めて小さい。高透磁率領域の部分が整列していない場合には、両端間の軸方向磁路の総磁気抵抗が大きく、この磁路に沿って流れる磁束は、「ジグザグな」軌道に従がわざるを得ない。図18は、このジグザグ軌道を大まかに表す線10を含んでいるが、これは、交互に配置されたロータ板軸受要素4とステータ板軸受要素6とのスタックを磁束が軸方向に通過しようとするからである。磁束が一定の角度で各エアギャップを通るということは、何らかの有用な剪断応力が存在するということを意味し、この剪断応力の効果はロータ及びステータを横方向(半径方向)の整列へ引き戻そうとすることである。
【0067】
図19は、MMF源における一定の軸方向MMFに対する軸受ロータと軸受ステータとの間の相対的横方向変位の関数としての静的復元力の典型的なグラフを示している。明らかに、何らかの相対変位δmaxが存在し、相対変位δmaxを超えたところでは、変位がさらに大きくなると、追加の力はほとんで利用することができない。この偏向δmaxは、ロータ板軸受要素又はステータ板軸受要素上の隣接する高透磁率領域の中心間の平均半径方向距離の1/4にほぼ等しい。したがって、軸受ロータと軸受ステータとの間の最大の予測される相対的な偏向は、ロータ板軸受要素及びステータ板軸受要素における高透磁率領域の半径方向の間隙に対して最下限を提供する。
【0068】
軸受に存在するエアギャップの厚さは、軸受ステータに対する軸受ロータの達成可能な軸方向位置合わせによって決定される最小値を有する。軸受が有効であるためには、高透磁率領域間の半径方向の間隔は、平均エアギャップの厚さより実質的に大きくなければならず、典型的には2〜10倍大きくなければならない。したがって、達成可能な軸方向位置合わせは、別の小さい範囲を高透磁率領域の半径方向の間隔に効果的に配置する。
【0069】
ロータ円板及びステータ円板の軸方向の厚さは、2つの別個の下限、即ち、円板における剪断応力(τrθ)と、これらの軸方向の厚さがエアギャップの軸方向の厚さより実質的に厚くなければならないこととを有する。ロータ円板及びステータ円板の厚さは、半径に関して変化する。剪断応力に耐えるとの理由で、ロータ板軸受要素は、その内径部分が特に厚く、外径に向かって例えば一様に漸次薄くなる。ステータ板軸受要素の厚さは、小さな半径での最小の厚さに対する要件と、他の半径での生産的エアギャップの維持に対する要件とによってほぼ決定される。ステータ板軸受要素の厚さは、交互に配置されたロータ板軸受要素に対して平行な側面ギャップを提供するよう変化する。
【0070】
MMF源に存在する実際のMMFは、多数の形態のうちの任意の1つの形態を取ることができる。MMF源は、図20に示すように、戻り経路中に積み重ねられた一連の永久磁石を備えていることが多い。図21は、極めて類似した効果を奏するために2つの同心のコイルをどう使用するかを示している。図22は、所与の軸受に対して、Gクランプの配置において想起される4個の同一の部材からMMF源をどう構成するかを示したものである。図22には、1つのGクランプの片側のみが示されている。
【0071】
ロータ板軸受要素、ステータ板軸受要素又はその両方における高透磁率領域8自体は永久磁石材料であってよい。ロータ板軸受要素4の低透磁率領域9は、各ロータ板軸受要素における安定性及び機械的一体性を促進するために、炭素繊維(又は他の繊維)の合成物として作成されることが多い。
【0072】
特定の実施の形態「B」――受動アキシャル磁気軸受
図23〜図27は、本発明の第2の実施の形態による受動アキシャル磁気軸受を示している。ここで説明する磁気軸受は、相対回転に対して抵抗をほとんど又は全く提供することなく比較的小量の相対軸方向運動を与えられる実質的軸方向スラストを提供する磁気軸受である。軸受は、軸受ロータ部材21、軸受ステータ部材22及びMMF源23の3つの主要コンポーネントを備えている。
【0073】
図23は、軸受ロータ、軸受ステータ及びMMF源の片側の断面図を示している。この図には、MMF源が磁路を完成するよう働くことも示されている。図23の点線は磁束の流れの方向を示している。MMF源は、軸受ロータ21及び軸受ステータ22を介して、適度に同極のMMFを提供する。つまり、断面の面における回転軸を含む軸受の任意の断面は、ロータ及びステータを通る磁束のほぼ同じパターン及び密度を多かれ少なかれ示している。
【0074】
軸受ロータ21は、図24に示すように、単一の機械的プラットフォーム25に取り付けられた多数の同心の円筒ロータ板軸受要素24を備える。図24は軸受ロータ21の断面であり、断面の面は回転軸を含む。機械的プラットフォーム25は概ね円板状であり、ロータ板軸受要素及びステータ板軸受要素を通過するように意図された磁束を磁気的に短絡しないよう、非磁性体でできている。
【0075】
ロータ板軸受要素24の各々は、相対透磁率が小さい1組のリング状領域29によって一定の間隔で隔てられた、相対透磁率が大きい1組のリング状領域28を備えている。
【0076】
軸受ステータ22は、図25に示すように、単一の機械的プラットフォーム27に取り付けられた多数の同心の円筒ステータ板軸受要素26を備える。図25は、軸受ステータ22の片側の断面を示したもので、断面の面は回転軸を含んでいる。図25に示す機械的プラットフォーム27は概ね円板形状であり、ロータ及びステータ板軸受要素を通過するように意図された磁束を磁気的に短絡することがないよう非磁性体からなる。
【0077】
ステータ板軸受要素26の各々は、相対透磁率が小さい1組のリング状領域29によって一定の間隔で隔てられた、相対透磁率が大きい1組のリング状領域28を備えている。
【0078】
図26は、軸受ロータ21と軸受ステータ22との組合せの片側の断面を示しており、断面の面において軸受ロータ21と軸受ステータ22との間に或る程度の軸方向不整列が存在している。ロータ板軸受要素24及びステータ板軸受要素26のみが、これらの板軸受要素における高透磁率領域28及び低透磁率領域29と共に示されている。高透磁率領域28は明らかに整列されていない。MMF源の効果は、ステータ板軸受要素24、ロータ板軸受要素26及びそれらの間のエアギャップのスタックを通して半径方向に磁束を駆動することである。高透磁率領域部分が整列している場合には、ロータ板軸受要素24及びステータ板軸受要素26を交互に配置する配列によって、比較的磁気抵抗の小さい経路が磁束に提供され、ロータとステータの間には正味の力がほとんど生成されない。高透磁率領域部分が整列されていない場合には、両端間の軸方向磁路の総磁気抵抗が大きいため、磁束は、「ジグザグの」軌道に従わざるを得ない。図26は、このジグザグの軌道を大まかに表す線30を含んでいる。これは、磁束が、交互に配置されたロータ板軸受要素とステータ板軸受要素とのスタックを半径方向に通過しようとするからである。磁束が角度をなして各エアギャップを通るということは、何らかの有用な剪断応力が存在し、この剪断応力の効果がロータ及びステータを軸方向の整列へ引き戻そうとすることを意味している。
【0079】
軸受に存在するエアギャップの厚さは、軸受ステータ22に対する軸受ロータ21の達成可能な横方向位置合わせによって決定される最小値を有する。軸受が有効であるためには、高透磁率領域間の軸方向の間隔は、エアギャップの平均の厚さより実質的に大きくなければならない。そうすると、達成可能な横方向位置合わせは、有効なことに、高透磁率領域の軸方向の間隔に対する下限を小さくする。一層近接して配置された高透磁率領域を使用することにより、より剛性の大きいアキシャル軸受を作ることができるが、利用可能な軸方向の力の量に大きく影響することはない。軸方向の間隔がエアギャップに対して狭くなり過ぎると、利用可能な軸方向の力が弱められる。
【0080】
円筒状のロータ板軸受要素24及び円筒状のステータ板軸受要素26の半径方向の厚さは、2つの別個の下限、即ち、シリンダにおけるの剪断応力(τzθ)と、円筒状の板軸受要素の半径方向の厚さをエアギャップの半径方向の厚さより実質的に厚くしなければならないこととを有する。ステータ板軸受要素及びロータ板軸受要素の厚さは、軸方向の位置に関して変化する。剪断応力に耐えるとの理由で、ロータ板軸受要素は、その根元の部分、即ち、軸受ロータ21の機械的プラットフォーム25に近い部分が特に厚くなっている。同じことが、同じ理由でステータ板軸受要素26にも妥当する。
【0081】
MMF源23に存在する実際のMMFは、多数の形態のうちの任意の1つの形態を取ることができる。多くの場合、MMF源は、MMF源23の「円筒状」部分において軸方向に配向された戻り経路又はMMF源23の「円板状」部分に半径方向に配向された戻り経路に積み重ねられた一連の永久磁石を備えている。図27は、同極の磁束を駆動するために巻かれたコイル31を提供することによって、如何にしてMMFが申し分なく生成されるかを示したものである。
【0082】
ロータの低透磁率領域は、ロータ板軸受要素24及びステータ板軸受要素26の機械的一体性、特に耐高速回転性に関する一体性を向上させるために、炭素繊維(又は他の連続繊維)の合成物として生成されることが多い。
【0083】
図23においては、軸受の両端においてMMF源を通る磁束に対する半径方向の戻り経路が存在する限り、MMF源は2つの側面を有する構成として示されている。多くの例においては、軸受の一方の端部にのみ戻り経路が存在し得る。ロータ板軸受要素24及びステータ板軸受要素26の高透磁率領域の断面は、図では矩形として示されている。力偏向曲線の所望の形状に依存して、これらの断面の形状は異なり得る。図24及び25においては、ロータ板軸受要素及びステータ板軸受要素の低透磁率領域は、高透磁率領域と同じ寸法を有するように見える。一般に、これは必ずしも同じである必要はない。少なくとも若干の場合、MMF源における極めて厚い戻り経路の要件を緩和するためには、低透磁率領域に対する高透磁率領域の軸方向の長さを低減するという見方の方が強い。図26では、シャフトは磁気回路の一部である。一般に、シャフトは磁気回路の一部を形成していても、形成していなくてもよい。シャフトが非磁性である場合、磁気回路を完成するために内側スリーブを設けなければならない。このスリーブは、ロータ又はステータに物理的に接続される。明らかに、少なくとも若干の場合にはスリーブをシャフトに接続することが賢明である。ロータ板軸受要素、ステータ板軸受要素又はその両方における高透磁率領域自体は、半径方向の同極の磁化で磁化された永久磁石材料から作られ得る。このような場合、MMF源と呼ばれる要素が磁気回路に対する何らかの正味のMMFに寄与することが必要又は不要であり、その場合、その役割は単に磁気回路を完成することである。
【0084】
特定の実施の形態「C」―――能動ラジアル磁気軸受
図28〜図35は、本発明の第3の実施の形態に係る能動ラジアル磁気軸受を示している。この磁気軸受は、軸受ロータ部材33、軸受ステータ部材34、外部MMF源35及び内部MMF源36の4つの主要コンポーネントを備えている。この実施の形態では、内部MMF源及び外部MMF源は、軸受ステータと同じ運動フレームに存在する。
【0085】
図28は、軸受ロータ、軸受ステータ、外部MMF源及び内部MMF源の断面を示している。この断面は回転軸に平行に取られている。図28の点線は、磁束の流れの方向を示す。MMF源は、軸受を通る2極のMMFパターンを生成する。つまり、角度θの任意の直径線が与えられると、この直径線に沿って軸受を横切る正味のMMFは、cos(θ+φ(t))に従って変化する。但し、φ(t)は何らかの時間依存型の位相ずれである。この図においては、MMF源35、36は磁路を完成する、即ち、磁束を円周方向に導く働きを行うことも示されている。
【0086】
図29は、軸受ロータ、軸受ステータ、外部MMF源35及び内部MMF源36の回転軸に垂直な断面を示している。1組の同心の環が明らかであり、それぞれの環は相対透磁率が小さい領域37と相対透磁率が大きい領域38(強磁性材料/合成物)とを交互に有する。最も内側の環及び最も外側の環とを除いては、図29の交互の環はそれぞれ軸受ステータ及び軸受ロータに属している。
【0087】
最も内側の環は内部MMF源36の断面を示し、最も外側の環は外部MMF源35の断面を示している。これらのMMF源における巻線の詳細は、簡単にするために図では省略されている。2極のMMFを生成するためのMMF源の巻線を設計する仕事は、回転電気機械の設計の完全に標準的な部分であり、電気機械産業から利用可能な事実上全てのオプションは、現在の状況に適用可能である。
【0088】
また、図29は、軸受を通る磁束が所与の瞬時において取る幾つかの経路39を示している。この磁束における強いジグザグのパターンは、各々の個々のエアギャップを横切る実質的なエアギャップ剪断応力が、(この実例においては)軸受ロータを引き下げるとともに軸受ステータを引き上げるよう作用することを明確に意味している。(磁束線は、磁路の磁気抵抗を最小にするよう有効に直線になろうとする。)
図29から明らかなように、この瞬間に、軸受の上半分を通る磁束の任意の有意の通過を阻止する極めて大きい磁気抵抗が存在する。この領域を通るには、磁束は、幾つかの低透磁率領域全部を横切らなければならない。この瞬間において、軸受の下半分を通る適度に磁気抵抗の小さい幾つかの経路が存在しており、或る有限量の磁束がこの経路を通る。軸受の下半分おいてこの磁束によってこの瞬間に生じる軸受ロータと軸受ステータとの間の力の正味の量は小さい。
【0089】
図30は、軸受ステータ34及び2つのMMF源35、36の回転軸に垂直な断面を示している。全てのステータ要素の高透磁率領域38の半径方向の整列が示されている。図31は、軸受ステータ34の、回転軸に平行で回転軸を含む断面を示している。これは、軸受ステータが、単一の機械的プラットフォーム41に取り付けられた多数のステータ・シリンダ40からどのように構成されるかを明確に示している。軸受ステータ34の機械的プラットフォーム41は、ロータ要素及びステータ要素を通るよう意図された磁束を磁気的に短絡することがないよう、非磁性体からなる。
【0090】
図32は、軸受ロータ33の回転軸に垂直な断面を示している。全てのロータ要素の高透磁率領域38の半径方向の整列が示されている。図33は、軸受ステータ33の回転軸に平行な断面を示している。これは、軸受ロータ33が、単一の機械的プラットフォーム43に取り付けられた多数のロータ・シリンダ42を備えることを明確に示している。この機械的プラットフォーム43も、ロータ要素及びステータ要素を通るよう意図された磁束を磁気的に短絡することがないよう、非磁性体からなる。
【0091】
各ステータ・シリンダ40上の高透磁率領域38の数は同じであり、これらの領域は偶数の角増分で隔てられる。一般的に、この数はNSで表される。各ロータ・シリンダ42上の高透磁率領域38の数は同じであり、これらの領域も偶数の角増分で隔てられる。一般的に、この数はNRで表される。2つの数NS及びNRは1だけ異なり、現在の例ではNS=20、NR=21である。
【0092】
任意の所与の瞬間において、軸受ステータ34と軸受ロータ33の間に実質的な力を生成することができる1つの方向が存在する。ステータのフレームの方からこの方向を見た場合、この方向は、ステータ及びロータの相対回転速度をNR倍した周波数で回転する。この「方向」をロータのフレームの方から見た場合には、この方向は、ステータ及びロータの相対回転速度をNS倍した周波数で回転する。したがって、例えば、この実施の形態のステータが静止し、ロータが毎秒100サイクルで回転している場合、任意の所与の方向においてロータにインパルスを加えることができる個別の機会が、毎秒2100回存在する。印加するMMF磁界の大きさ及び方向を変えることにより、極めて強い周波数成分の力を、この例の場合には最大1050Hzの周波数に対して任意の方向に達成することができる。一般的には、(エイリアシングの前の)周波数限度は、NRΩ/2であり、Ωはシャフトの回転速度である。
【0093】
明らかに、この軸受は、定常的な力の代わりに1組のインパルスを供給することによって動作するため、ロータ共振又はステータ共振が励振される可能性が若干存在する。そのため、軸受の位置及び軸受支持特性を慎重に選択しなければならない。MMF源において電流波形を正しく整形することにより、NRΩ/2を超える正味の相対的な力の高調波成分を、任意の低レベルに低減することができる。
【0094】
軸受のロータ・シリンダとステータ・シリンダとの間に存在するエアギャップの厚さは、明らかに、軸受が受け入れるものと期待される許容可能な横方向不整列によって決定される最小値を有する。通常、最小のエアギャップは、この最小値より何倍も大きい。この実施の形態では、隣接するロータ・シリンダとステータ・シリンダとの間のエアギャップは、半径の増加とともに、ほぼ比例して増加する。
【0095】
図29、図30及び図31は、7つの能動エアギャップのみが存在することを示している。実際の実施態様では、エアギャップの数は実質的にもっと多い。場合によっては、もっと少数のエアギャップが存在することも考えられる。しかし、その場合には、一層慣用されている軸受設計の方が高い力能力を持つことができる。
【0096】
以上の説明では、内部MMF源36は、ロータ・シリンダ及びステータ・シリンダを通る磁束を駆動するために何らかのMMFを提供する際に活動状態であり、外部MMF源35と同じ運動フレームに固定されている。内部MMF源は、磁界に対して正味のMMFを必ずしも提供する必要はなく、その場合、内部MMF源はロータと共に自由に回転することができる。内部MMF源は、その場合、軸受の中心部分を横切って磁束を導くだけの働きをする環状の積層物の単なるスタックを備えることができる。代わりに、内部MMF源によって十分なMMFが提供される場合、外部MMF源は正味のMMFを提供する必要はなく、その場合、外部MMF源はロータと共に自由に回転することができる。外部MMF源は、その場合、軸受の外部円周の周りに磁束を導くだけの働きをする環状の積層物の単なるスタックを備えることができる。
【0097】
図29、図30及び図31には、ロータ・シリンダ40及びステータ・シリンダ42の半径方向の厚さが一定の厚さとして示されているが、若干の最適な場合には、半径方向の厚さは軸方向の長さに沿って変化し得る。支持力は長さに沿って累積されるため、場合によっては、ロータとステータとの上のシリンダの根元(いずれの場合においても機械的プラットフォームの近く)の半径方向の厚さを、先端部分よりも大きくする必要がある。
【0098】
外部MMF源35が磁気回路に対して正味のMMFを提供するよう設計する場合、このコンポーネントを最も外側のステータ・シリンダと一体にし、このステータ・シリンダの低透磁率領域が巻線で占有されるようにすることが賢明である。同様に、内部MMF源36が磁気回路に対して正味のMMFを提供するよう設計する場合、このコンポーネントを最も内側のステータ・シリンダと一体にし、このステータ・シリンダの低透磁率領域が巻線で占有されるようにすることが賢明である。図34及び図35は、これらの状況を示している。
【0099】
図28においては、ステータ・シリンダではなくロータ・シリンダが内部MMF源36に隣接している。内部MMF源と最も内側のステータ・シリンダとが1つの一体のユニットである場合、それらの間にロータ・シリンダが存在しないことは明らかである。
【0100】
特定の実施の形態「D」―――能動ラジアル磁気軸受
図36〜図40は、本発明の第4の実施の形態に係る能動ラジアル磁気軸受を示している。この磁気軸受は、軸受ロータ部材50、軸受ステータ部材51及び2つのMMF源52の4つの主要コンポーネントを備えている。
【0101】
この実施の形態においては、軸受を通る磁束の正味の方向は軸方向にある。これは、既に説明した、磁束の正味の方向が軸に対して直角である実施の形態とは対照的である。ここで説明する実施の形態においては、2つのMMF源は同じであり、軸受ステータと同じ運動フレームに存在する。
【0102】
図36は、軸受ロータ50、軸受ステータ51及び2つのMMF源52の断面を示している。この断面は回転軸に平行に取られている。図36の線は、磁束の流れの方向を示している。磁気回路は、MMF源52内で内部的に完成している。MMF源は、軸受を通る2極のMMFパターンを生成する。つまり、磁束は軸受の一方の面に沿って軸方向に押され、他方の面に沿って戻る。
【0103】
軸受ステータ51は、中央表面が互いに平行で回転軸に垂直な1組のステータ板軸受要素53(図38)を備えている。これらのステータ板軸受要素53は円板形であり、図37に示すように、高透磁率のセクタ54と低相対透磁率のセクタ55とが交互に配置されている。ステータ板軸受要素は共通の機械的プラットフォーム56によって機械的に1つに結合される(図38)。機械的プラットフォームは、磁気回路の短絡を防止するために非磁性体からなる。図37は、NS個(この場合、NS=20)の高相対透磁率セクタ54を有する単一のステータ板軸受要素を示している。
【0104】
軸受ロータ50は、中央表面が互いに平行で回転軸に対して垂直な1組のロータ板軸受要素57(図40)を備えている。これらのロータ板軸受要素57は円板形であり、図39に示すように、高透磁率セクタ54と低相対透磁率セクタ55とが交互に配置されている。ロータ板軸受要は、シャフトに嵌合するためのスリーブ又は回転機械自体のロータのシャフトであり得る共通の機械的プラットフォーム58によって機械的に1つに結合される(図40)。機械的プラットフォームは、磁気回路の短絡を防止するために非磁性体からなる。図39は、NR個(この場合、NR=21)の高相対透磁率セクタ54を有する単一のロータ板軸受要素を示している。
【0105】
この軸受の動作原理は、第3の実施の形態に関連して上で説明した軸受の動作原理と同じである。任意の所与の瞬間において、ステータとロータとの間に実質的な力を生成することができる1つの方向が存在する。ステータのフレームからこの方向を見た場合、この方向は、ステータとロータとの相対回転速度をNR倍した周波数で回転する。この方向をロータのフレームから見た場合、この方向は、ステータとロータとの相対回転速度をNS倍した周波数で回転する。したがって、例えば、この実施の形態のステータが静止し、ロータが毎秒100サイクルで回転している場合、任意の所与の方向にロータにインパルスを加えることができる個々の機会が、毎秒2100回存在する。印加されるMMF磁界の大きさ及び方向を変えることにより、極めて強い周波数成分の力を、この場合には最大1050Hzの周波数に対して任意の方向に達成することができる。一般的には、周波数限度(エイリアシングの前の)はNRΩ/2であり、Ωはシャフトの回転速度である。
【0106】
明らかに、この軸受は、定常的な力の代わりに1組のインパルスを供給することによって動作するため、ロータ共振又はステータ共振が励振される可能性が若干存在する。そのため、軸受の位置及び軸受支持特性を慎重に選択しなければならない。MMF源における電流波形を正しく整形することにより、正味の相対的な力の高調波成分を最小化することができる。
【0107】
軸受のこの実施の形態におけるロータ板軸受要素とステータ板軸受要素との間に存在するエアギャップの厚さは、明らかに、軸受が受け入れると期待される許容可能な軸方向不整列によって決定される最小値を有する。通常、最小のエアギャップは、この最小値より何倍も大きい。この実施の形態では、隣接するロータ板軸受要素とステータ板軸受要素との間のエアギャップは、半径の増加とともに、ほぼ比例して増加する。このエアギャップの増加は、主として、ロータ板軸受要素の軸方向の厚さの対応する減少によって適応される。ステータ板軸受要素の軸方向の厚さも、半径とともに変化し得る。
【0108】
特定の実施の形態「E」―――能動ラジアル磁気軸受
図41〜図45は、本発明の第5の実施の形態に係る磁気軸受を示している。この磁気軸受も、上記の実施の形態における磁気軸受と同様、適度の多数の有効剪断応力を(ほぼ)平行なエアギャップの各々に存在させることによって、高負荷容量を達成する。
【0109】
この実施の形態の軸受は、各エアギャップの少なくとも一方の側の層に電流を分布させることによって、エアギャップ内の磁束に必要な傾斜を持たせている。各エアギャップの他方の側には、別の電流分布又は永久磁石材料の分布が存在する別の層が設けられる。所与の層に電流分布が存在するか、永久磁石材料の分布が存在するかにかかわらず、正味の効果は、層の内部における位置によって変化する軸方向MMFを層において提供することである。
【0110】
この軸受は、上記第4の実施の形態で説明した軸受と構成が類似しているが、磁束を方向付ける手段がまったく異なる。つまり、永久磁石の分布及び電流の分布に基づいているのに対して、第4の実施の形態では、高強磁性透磁率領域に基づいて磁束の方向付けがなされる。
【0111】
この実施の形態の磁気軸受は、軸受ロータ部材60、軸受ステータ部材61及び2つの外部MMF源62の3つの主要コンポーネントを備える(図41)。2つの外部MMF源62は、この場合も、軸受ステータと同じ運動フレームに存在している。
【0112】
図41は、軸受ロータ60、軸受ステータ61及び外部MMF源62の断面を示している。この断面は回転軸に平行に取られている。磁束の流れの正味の方向は、図41に矢印を用いて示してある。外部MMF源62は、軸受を通る2極のMMFパターンを生成する。つまり、角度θの任意の直径線が与えられると、この任意の直径線に沿って任意の瞬間に軸受を横切って発生する正味のMMFは、位相角φに対してcos(θ+φ)に比例するが、当該直径線に沿った位置には無関係である。また、外部MMF源は、磁路を完成するように、つまり、軸受の両端において磁束を円周方向に導くよう働く。
【0113】
軸受ロータ60は多数のロータ円板63をスタックの形で備え、軸受ステータ61も多数のステータ円板64をスタックの形で備えている(図42)。ロータ円板63及びステータ円板64は、上で適用した意味において「層」であり、したがって、全て軸方向MMFを提供するようになされている。
【0114】
図42は、軸受が如何にして正味の横方向の力を達成するかを概略的に示している。磁束線は、軸受を切断しているステータ円板64及びロータ円板63に沿って交互に軸方向に通る。個々のステータ円板64は、(概ね)cos(θ+φ)に従って変化する軸方向MMFパターンを提供する。但し、φは位相角である。個々のロータ円板63は、(概ね)cos(2θ+Ψ)に従って変化する軸方向MMFパターンを提供する。但し、Ψは位相角である。図42では、φはゼロに設定され、また、Ψは−45°に設定されている。
【0115】
ステータ円板64の中心を軸方向にθ=0°で通る磁束線は、当然、隣接するロータ円板63の中心(又はその近傍)をθ=45°で通過しようとし、ステータ円板64の中心を再度通る際にθ=0°の線に戻る。同様に、ステータ円板64の中心をθ=180°で通る磁束線は、当然、隣接するロータ円板63の中心(又はその近傍)をθ=135°で通過しようとし、ステータ円板64の中心を再度通る際にθ=180°の線に戻る。対称になっているため、面θ=±90°には正味の軸方向の磁束は存在しない。磁束パターンを一方の側から見ると、全ての磁束線がロータ円板63に入るように大きくなり、次いでロータ円板63の他方の側を離れるときに小さくなることが分かる。この挙動が、全てのロータ円板をステータ円板に対して下方へ引くよう働く実質的な平均剪断応力を生成するのに必要な角度を磁束に提供する。
【0116】
この実施の形態は、ロータ円板63に対しては永久磁石材料の分布を用い、ステータ円板64に対しては半径方向電流の分布を用いる。磁束の軸方向の通過を実質的に妨害することなしに構造に剛性及び強度を持たせるよう、磁鉄が使用される。磁鉄は、この場合においては磁束の方向付けには実質的に寄与しない。この点はこれまでの実施の形態とは異なる。
【0117】
外部MMF源62はそれぞれ、歯付きの円板65(図43)と1組の巻線とを備えている。歯付きの円板は、平らに巻かれた薄い積層磁鉄の単一コイル、又は、隣接するシリンダ間に極めて薄い絶縁層を有する1組の薄い同心のシリンダを備えた積層構造をしている。この構造は、歯付きの円板65を交番磁束が最小の渦電流損で軸方向及び円周方向に通ることができることを保証する。半径方向の磁束成分は不要であるため、歯付きの円板65内を半径方向に通過しようとする磁束がずっと大きな渦電流損を生じることは問題ではない。図43は、歯付きの円板65の正面図及び側面図を示している。
【0118】
図43には、多数の歯を連結する単一のMMF源コイル66が示されている。このコイルにおける導体の数及びこれらの導体の絶縁厚さは、このコイルに予測される電圧降下及び電流負荷によって支配される。MMF源コイル66は直列に接続されて複数のグループをなし、これらのグループは、円板形電気機械の構成における標準の慣例に従って並列に接続されて複数の相をなす。各外部MMF源62の巻線の組は、回転する2極軸方向磁界が生成できるよう、少なくとも2つの独立した相を備えている。つまり、磁気軸受の軸に平行であり角度θで位置し、且つ、2つの外部MMF源の間に達する半径rに位置する任意の直線が与えられると、外部MMF源の対によって寄与される当該直線に沿う正味のMMFは、ほぼcos(θ+φ)によって決定され、半径には無関係である。この場合、角度φは、巻線の組における相電流の値に依存して0と2πの間の任意の値に制御され得る位相角である。
【0119】
図44は単一のステータ円板67を示している。各ステータ円板67は、ステータ円板巻線となされた1組のステータ円板コイル68を担持する。ステータ円板は軸方向に比較的薄い。その構造のため、交番磁束は最小の渦電流損で軸方向に通ることができる。この実施の形態においては、その構成は、密な渦巻きを作るよう平らに巻かれた薄い積層磁鉄でできている。ステータ円板67の各側には歯が機械加工されており、これらの歯にステータ円板コイル68が嵌め込まれ、ステータ円板67の一方の側のステータ円板コイル68の組は、ステータ円板67の他側のステータ円板コイル68のミラー・イメージである。ステータ円板コイルは直列に接続されて複数のグループをなし、これらのグループは並列に接続されて、MMF源コイルから形成される巻線に使用されるのと同じパターンの複数の相をなす。
【0120】
各ステータ円板67の相は、これらの相が付勢されたときに磁束密度の軸方向成分が磁気軸受に沿う軸方向位置と適度に一様になるように、外部MMF源62の複数の相と電気的に接続される。軸受ロータ60全体が磁気的に不活性である場合、軸受内の磁束は、ほぼ全ての位置で軸方向において優勢であり、その分布は近似的にcos(θ+φ)で表される。但し、角度φは、巻線の組における相電流の値に依存して0と2πの間の任意の値に制御され得る位相角である。
【0121】
図45は、単一のロータ円板69及び4極パターンの軸方向磁化を示している。この実施の形態では、ロータ円板は、ロータ円板69の一方の側から他方の側へ軸方向に通る任意の磁束線に寄与する正味のMMFがcos(2θ+Ψ)に従って変化するように、軸方向に磁化された永久磁石材料の分布を備える。但し、角度Ψは、ロータの回転角度によって制御される位相角である。ロータの基準位置ではΨ=0である。
【0122】
ロータの任意の所与の角度位置において、適切な方法でMMF源コイル66及びステータ円板コイル68を付勢することにより2つの直交方向の力を生成することができるということは、図42から理の当然である。
【0123】
特定の実施の形態「F」―――受動ラジアル磁気軸受
ここで第6の実施の形態について説明する。第6の実施形態は、永久磁石材料を使用した前の実施の形態とは対照的に、ロータ円板63における軸方向MMFの必要なパターンがこの場合には1組の巻線を使用して生成される点を除き、上で説明した第5の実施の形態と同じである。
【0124】
ロータ円板63の巻線の形状は、ロータ円板63の磁極数が常に±2だけステータ円板の極数(5)と異ならねばならない点を除き、ステータ円板64と極めて類似している。前の実施の形態におけると同様に、好ましい極数は、ステータ磁界に対しては2極であり、ロータ磁界に対しては4極である。ロータ円板63とステータ円板64との巻線間の重要な相違の1つは、ロータ円板上の軸方向MMFの分布をロータ円板に対して回転させる必要がないことであり、したがって、ロータには2個以上の電気相が不要である。全てのロータ円板63の巻線は、各ロータ円板が軸方向MMFの同様の分布を常に生成するように、一緒に電気的に接続される。
【0125】
上で説明した第5及び第6の実施の形態は、軸受を通る有効磁束の優勢な方向は軸方向であり、したがって、平行なエアギャップはロータ円板63とステータ円板64の間にある円板形状のエアギャップであることを前提にしている。実際、平行なエアギャップが平行なロータとステータ・シリンダとの間に位置して円筒状であるシステムに対して同じ思想を展開することは、概念的に簡単である。その場合の磁束の優勢な方向は半径方向であり、2つのMMF源は、直径が最小のロータ・シリンダの内側に1つの(恐らくは固体の)シリンダを備え、直径が最大のロータの外側に1つの中空のシリンダを備えることになる。この形状の変更は、概念的には、外部MMF源62の1つを円錐形にしてその平均径を大きくし、その内側に収められたロータ円板63とステータ円板64を同様に円錐形にして他方の外部MMF源にすることを考察することによって開始される。
【0126】
全てのロータ円板63は、同じ数NRの磁極を有しており、これらの磁極は、各ロータ円板に対して同じ角度で配向される。同様に、全てのステータ円板64も同じ数NSの磁極を有しており、これらの磁極は、各ステータ円板及び外部MMF源62に対して同じ角度で配向される。上記の実施の形態の場合、NS=2、NR=4である。以下の制約、即ち
|NR−NS|=2、
NR.NS≠0
が遵守されることを条件として、任意の対の磁極数{NS、NR}によって所望の正味の横方向の力を生成することができる。
【0127】
一般に、ステータ円板における交番磁束の周波数を最小化し、したがって損失を最小化するためにステータ円板64の磁極数を小さくすることは魅力的である。磁極数を多くすると、活動状態である銅の比率が増し、歯付きの円板65に必要な軸方向深さが小さくなるが、所与のシャフト速度に対する磁束の交番周波数が増し、活動状態のコントローラの更新率を高くする必要がある。
【0128】
ステータ円板64は、実質的な損失なしに交番磁束を軸方向に通過させることが必要である。上記の特定の実施の形態においては、記述のように、ステータ円板を積層鋼のロールとして構成することができる。抵抗率の大きい粉末冶金合成物の使用や、軸方向に配向された磁気ワイヤの大部分からなる複合材料の使用を含む他の構成方法も可能である。
【0129】
図41は、ロータの内径が必ず小さいということを意味するものと解釈してはならない。実際に、内径に制限はなく、大きな内径でも良好に動作する。
特定の実施の形態「G」―――線形磁気軸受
図46は線形軸受を示しており、低透磁率材料製の第1の軸受部材71を備える台70は、間隔を隔てた1組の長方形プレート要素72を担持している。強磁性材料と非強磁性材料との複数の交互のストリップで形成された各プレート要素72は、強磁性材料と非強磁性材料との複数の交互のストリップで形成され且つ間隔を置いた細長いリボン要素75と交互に配置されている。間隔を置いた細長いリボン要素75は低透磁率材料の第2の軸受部材74に担持されており、リボン要素75と第2の軸受部材74は台70を支持するレールを構成する。
【0130】
台70の一部を形成する永久磁石73は、交互に配置された要素72、75の間のギャップをジグザグに横切る磁束線76を生じるとともに、台をレール上に支える力を生成する磁気剪断応力を生じる。側面間の支持力は、別の方法で生成される。
【0131】
この実施の形態においては、磁石73及びMMF源を、ステータやレール74、75の上ではなく、「ロータ」即ち台70上に取り付けることが好都合である。線形軸受の場合、一般に、主MMF源を2つの軸受部材のうちの短い方に取り付けることが好都合である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 玉軸受からの基本軸受領域を示す図である。
【図2】 円錐ころ軸受からの基本軸受領域を示す図である。
【図3】 静水力学的軸受からの基本軸受領域を示す図である。
【図4】 流体力学的軸受からの基本軸受領域における流体くさび及び相対運動を示す図である。
【図5】 軸zが中央表面に対して垂直である、基本軸受表面領域毎の主(直交)方向を示す図である。
【図6】 馬蹄形永久磁石が、それ自体とエアギャップ(2回)と何らかの第2の物体とを通して磁界を駆動する、最も単純な引張りマクスウェル応力の作用を示す図である。
【図7】 図7aは、空気中の磁界の所与の平面における垂直応力を示す図であり、図7bは、空気中の磁界の所与の平面における剪断応力を示す図である。
【図8】 z軸に対して角度αで通る磁束を示す図である。
【図9】 平行なエアギャップを「ジグザグな」パターンで通る磁束を示す図である。
【図10】 高透磁率領域によって導かれている磁束の束を示す図である。
【図11】 永久磁石によって導かれている磁束の束を示す図である。
【図12】 電流の線によって導かれる磁束の束を示す図である。
【図13】 本発明の第1の実施の形態に係る受動ラジアル軸受の片側の断面図である。
【図14】 図13の軸受ロータの片側の断面図である。
【図15】 図13の軸受ステータの片側の断面図である。
【図16】 図13のロータ板軸受要素の平面図である。
【図17】 図13のステータ板軸受要素の平面図である。
【図18】 図13〜図17の軸受全体の断面図である。
【図19】 軸受ロータと軸受ステータとの間の相対的な横方向の変位の関数としての静的復元力のプロットである。
【図20】 図13〜図19のMMF源の第1の実施の形態を示す略図である。
【図21】 図13〜図19のMMF源の第2の実施の形態を示す略図である。
【図22】 図13〜図19のMMF源の第3の実施の形態を示す略図である。
【図23】 本発明の第2の実施の形態に係る受動アキシャル・スラスト軸受の片側の断面図である。
【図24】 高透磁率領域(環)を暗い長方形で示す、図23に示す軸受の軸受ロータの断面図である。
【図25】 高透磁率領域(環)を暗い長方形で示す、図23に示す軸受の軸受ステータの断面図である。
【図26】 反作用が如何にして発生するかを示す、何等かの軸方向変位を有する、図23に示す軸受の軸受ステータ及び軸受ロータの断面図である。
【図27】 図23に示す軸受の同極MMFに寄与する3つの主要コンポーネント、特にコイル(8)を示す略図である。
【図28】 矢印を有する垂直の点線が磁束線を示す、本発明の第3の実施の形態に係る能動ラジアル軸受の交互配置されたシリンダの実施の形態の回転軸に平行な断面図である。
【図29】 磁束の部分経路をジグザグの点線で示す、図28の実施の形態の回転軸に垂直な断面図である。
【図30】 図28の実施の形態の軸受ステータ及びMMF源の回転軸に垂直な断面図である。
【図31】 図28の実施の形態の軸受ステータの回転軸に平行な断面図である。
【図32】 図28の実施の形態の軸受ロータの回転軸に垂直な断面図である。
【図33】 図28の実施の形態の軸受ロータの回転軸に平行な断面図である。
【図34】 図28に示す軸受の最も外側のステータ板軸受要素と一体の外部MMF源を示す図である。
【図35】 図28に示す軸受の最も内側のステータ板軸受要素と一体の内部MMF源を示す図である。
【図36】 本発明の第4の実施の形態に係る能動ラジアル軸受の交互配置された円板の実施の形態の回転軸に平行な断面図である。
【図37】 図36の軸受の単一のステータ板軸受要素の正面図である。
【図38】 図36の軸受のステータの断面図である。
【図39】 図36の軸受の単一のロータ板軸受要素の正面図である。
【図40】 図36の軸受のロータの断面図である。
【図41】 本発明の第5の実施の形態に係る能動ラジアル軸受の交互配置された円板の実施の形態の主要コンポーネントを示す略図である。
【図42】 ジグザグな磁束線が如何にして円板間の各ギャップに良好な実用剪断応力を生成するかを示す、図41の軸受の動作原理を示す略図である。
【図43】 図41の軸受と共に使用するためのMMF源の実施の形態の正面図及び側面図である。
【図44】 図41の軸受と共に使用するための単一のステータ円板の正面図及び側面図である。
【図45】 4極軸方向磁化を示す、図41の軸受と共に使用するための単一のロータ円板の正面図及び側面図である。
【図46】 第6の実施の形態である、本発明に従って構成された線形軸受の実施の形態の断面図である。
【図47】 本発明に従って構成された線形軸受の実施の形態の断面図である。
Claims (13)
- 2つの軸受部材の各々が1組の軸受要素を担持し、
一方の前記軸受部材に担持された前記軸受要素と、他方の前記軸受部材に担持された前記軸受要素とが交互に配置されて、連続する前記軸受要素の間で3つ以上の実質的に平行な中間ギャップを規定し、
これらのギャップを横切って作用する磁気剪断応力の結果として支持力を発生させることができ、
1つ又は複数の交互に配置された前記軸受要素内に導電材料が配置され、少なくとも1つの前記中間ギャップを横切る磁束の経路に影響を及ぼすよう電流を流す
磁気軸受。 - 少なくとも1つの起磁力源が、3つ以上の前記中間ギャップを横切る少なくとも1組の磁束線が存在するように配置され、前記支持力の少なくとも大部分が、前記中間ギャップを横切って作用する磁気剪断応力の結果として発生する、請求項1に記載の磁気軸受。
- 前記起磁力源が、3つ以上の前記中間ギャップの組を横切る1組の磁束線が存在するように配置され、前記支持力の少なくとも大部分が、前記1組の中間ギャップを横切って作用する磁気剪断応力の結果として発生する、請求項1に記載の磁気軸受。
- 実質的に全ての前記中間ギャップが前記組に含まれる、請求項3に記載の磁気軸受。
- 少なくとも1つの前記中間ギャップを横切る磁束の経路に影響を及ぼすよう、少なくとも1つの交互に配置された前記軸受要素内に永久磁石材料が分布される、請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の磁気軸受。
- 前記軸受要素の一方の側から他方の側に通る磁束線が受ける磁気抵抗が当該磁束線の位置の強い関数になるように、少なくとも1つの交互に配置された前記軸受要素内に強磁性材料のパターンが分布され、位置に対する磁気抵抗のこの依存性が、少なくとも1つの前記中間ギャップを横切る磁束の経路に影響するよう働く、請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の磁気軸受。
- 前記軸受が能動軸受である、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の磁気軸受。
- 前記軸受が受動軸受である、請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の磁気軸受。
- 前記軸受が回転軸受として構成される、請求項1〜8のうちのいずれか1つに記載の磁気軸受。
- 前記軸受が線形軸受として構成される、請求項1〜9のうちのいずれか1つに記載の磁気軸受。
- 第1と第2の軸受部材の交互配置要素が、回転軸に垂直に取り付けられた環状円板である、請求項9に記載の磁気軸受。
- 第1と第2の軸受部材の交互配置要素が、軸受の回転軸に同軸に取り付けられたシリンダである、請求項9に記載の磁気軸受。
- 一方の前記軸受部材が、他方の前記軸受部材より1つ多い交互配置要素を有する、請求項1〜12のうちのいずれか1つに記載の磁気軸受。
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